説明

マルチ回線制御装置及び通信システム

【課題】 十分な帯域を安価に提供できる通信システムを提供する。
【解決手段】 通信システムは、2つのマルチ回線制御装置を対向させる。2つのマルチ回線制御装置を、複数のベストエフォート回線と、1つのバックアップ用の帯域保証型回線とで接続する。ベストエフォート回線は帯域保証されていないが、ベストエフォート回線が複数あれば、回線状態が良好なものもそれなりにある。そのため、回線状態が良好なベストエフォート回線を複数選んでデータ通信に利用することとし、ベストエフォート回線を用いながら、帯域保証を達成しようとした。但し、利用することとしたベストエフォート回線だけでは、帯域保証し得ないときには、バックアップ用の帯域保証型回線も利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチ回線制御装置及び通信システムに関し、例えば、ベストエフォート回線を用いたデータ通信に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の回線を利用した回線サービスの方法が提案されている。例えば、メイン回線について設定した帯域を越えるトラフィックは、従量課金の回線を転送することが提案されている(特許文献1参照)。また例えば、従量課金の回線(ISDNなど)をメイン回線のバックアップ回線にすることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−122265号公報
【特許文献2】特開2003−18153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の回線を利用したからといって、十分な帯域が得られないことがある。特に、帯域保証がないベストエフォート回線を利用している場合には、十分な帯域が得られないことが多い。
【0005】
また、信頼性を確保しようとした場合、メイン回線は、高価な専用回線を選択せざるを得なかった。
【0006】
そのため、十分な帯域を安価に提供できる通信システムが望まれており、その通信システムを実現するためのマルチ回線制御装置も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、2つの通信装置間のデータ通信を実行させる通信システムにおいて、(1)複数のベストエフォート回線と、少なくとも1つのバックアップ回線とに接続されている、それぞれが上記一方の通信装置を収容している、互いに対向している第1及び第2のマルチ回線制御装置を備え、(2)少なくとも上記第1のマルチ回線制御装置が、(2−1)上記各ベストエフォート回線と上記バックアップ回線の回線状態の情報を収集する回線状態収集手段と、(2−2)収集された回線状態情報に基づいて、安定性がある上記ベストエフォート回線を開放予約すると共に、安定性が低い上記ベストエフォート回線を閉塞予約する開放・閉塞決定手段と、(2−3)開放予約された全ての上記ベストエフォート回線のスループットを表す回線状態情報に基づき、開放予約された全ての上記ベストエフォート回線だけで、所定の通信帯域を確保できるか判断し、上記バックアップ回線の開放・閉塞予約を行うバックアップ開放・閉塞決定手段と、(2−4)収容している上記通信端末からのデータを、開放予約された上記ベストエフォート回線及び上記バックアップ回線を用いて、対向する上記第2のマルチ回線制御装置に送出するデータ振分け手段とを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明は、複数のベストエフォート回線と、少なくとも1つのバックアップ回線とが接続されているマルチ回線制御装置であって、(1)上記各ベストエフォート回線と上記バックアップ回線の回線状態の情報を収集する回線状態収集手段と、(2)収集された回線状態情報に基づいて、安定性がある上記ベストエフォート回線を開放予約すると共に、安定性が低い上記ベストエフォート回線を閉塞予約する開放・閉塞決定手段と、(3)開放予約された全ての上記ベストエフォート回線のスループットを表す回線状態情報に基づき、開放予約された全ての上記ベストエフォート回線だけで、所定の通信帯域を確保できるか判断し、上記バックアップ回線の開放・閉塞予約を行うバックアップ開放・閉塞決定手段と、(4)収容している通信端末からのデータを、開放予約された上記ベストエフォート回線及び上記バックアップ回線を用いて、対向するマルチ回線制御装置に送出するデータ振分け手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な帯域を安価に提供できる通信システム及びマルチ回線制御装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係るマルチ回線制御装置の機能的な内部構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係るマルチ回線制御装置におけるベストエフォート回線の安定性の評価基準の一例を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態に係るマルチ回線制御装置が実行する、回線の開放・閉塞の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態の変形実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。
【図7】第3の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下、本発明によるマルチ回線制御装置及び通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0012】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、第1の実施形態の通信システム1は、サーバ2及び通信端末としてのパソコン3間のデータ通信サービスを提供するものである。通信システム1は、対向する第1の実施形態のマルチ回線制御装置4−1及び4−2と、論理的な1つの帯域保証型回線5とを備えている。論理的な1つの帯域保証型回線5はM本のベストエフォート回線6−1〜6−Mと、バックアップ用の帯域保証型回線7とによって、ユーザから見て論理的な1つの帯域保証型回線を構成している。なお、サーバ2は、マルチ回線制御装置4−1にLAN8−1経由で収容されており、パソコン3は、マルチ回線制御装置4−2にLAN8−2経由で収容されている。
【0014】
第1の実施形態の通信システム1は、ベストエフォート回線の1本ずつは帯域保証し得るものではないが、その時点でのM本のベストエフォート回線6−1〜6−Mで提供できる帯域(スループット)の総和(回線全体のスループット)は、所定の帯域(後述する閾値)を超えることが大半であり、M本のベストエフォート回線6−1〜6−Mを同時に利用した通信(マルチリンク通信)では、上述の所定帯域を保証帯域と銘打って良いという考え方に基づいてなされたものである。
【0015】
いずれかのベストエフォート回線6−mに障害が発生した場合には、M本のベストエフォート回線6−1〜6−Mで達成できる保証帯域を達成できない恐れもあり、そこで、バックアップ用の帯域保証型回線7を準備しておくこととした。一般的に、帯域保証型回線は従量課金方式を適用していることが多いが、バックアップ用の帯域保証型回線7が従量課金方式を採用しているか否かは問われない。
【0016】
ここで、ベストエフォート回線6−1〜6−Mとしては、例えば、インターネットの回線を挙げることができる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係るマルチ回線制御装置4(4−1、4−2)の機能的な内部構成を示すブロック図である。マルチ回線制御装置4は、その一部を、CPUと、CPUが実行するソフトウェアで構成することもできるが、機能的には、図2で表すことができる。
【0018】
図2において、マルチ回線制御装置4は、回線制御部10と、LAN制御部11と、データ振分・統合転送制御部12とを有する。以下の説明において、どちらのマルチ回線制御装置4−1、4−2の要素であるかを明らかにしたい場合には、符号4−1、4−2と同様に、符号末尾に、「−1」又は「−2」を付与する。
【0019】
回線制御部10は、ベストエフォート回線6−1〜6−Mやバックアップ用の帯域保証型回線7を終端し、回線との間でデータの送受信を行うものである。
【0020】
LAN制御部11は、LAN8(8−1、8−2)を終端し、LAN8との間でデータの送受信を行うものである。
【0021】
データ振分・統合制御部12は、LAN8側からのデータを、複数に振り分けて複数の回線(ベストエフォート回線6−1〜6−Mやバックアップ用の帯域保証型回線7のうちの複数回線)に転送させたり、複数の回線からのデータを統合してLAN8側に転送したり、このような転送のための前準備の処理を行ったりするものである。
【0022】
データ振分・統合転送制御部12は、中央制御部20、回線状態監視部21、回線状態情報管理部22、回線開放・閉塞制御部23及びデータ入出力制御部24を有する。
【0023】
中央制御部20は、当該データ振分・統合転送制御部12の全体を制御するものである。
【0024】
回線状態監視部21は、各ベストエフォート回線6−1〜6−M(バックアップ用帯域保証型回線7が後述する代替ベストエフォート回線として設定されている場合を含む)のスループットやレスポンスやパケットロス率等の回線状態情報を、対向するマルチ回線制御装置の回線状態監視部と連携しながら、常時測定する機能を担っている。
【0025】
回線状態監視部21−1は、対向するマルチ回線制御装置4−2の回線状態監視部21−2との間で、予め取り決めていた状態通知パケットを予め取り交わした時間に授受する。回線状態監視部21は、定期的に連続した複数個の状態通知パケットを各ベストエフォート回線6−1〜6−Mに送出する。回線状態監視部21は、状態通知パケットを受信した場合は、即座に受信した回線から1つの受信パケットにつき、1つの応答パケットを返信する。
【0026】
回線状態監視部21は、状態通知パケットの授受で、以下の4つの情報を把握する。
【0027】
各ベストエフォート回線6−1〜6−Mのスループットを、送出した複数個の状態通知パケット数と応答パケット数の割合を算出し、状態通知パケット数の送出レート(若しくは、ベストエフォート回線についての最大帯域)にその割合を乗算して算出する。なお、応答パケットを待ち受ける上限時間を設定しておき、この上限時間を越えて返信されてきた応答パケットは、有効な応答パケットとしては取り扱わずにスループットを計算する。
【0028】
各ベストエフォート回線6−1〜6−Mのレスポンスとして、送信した複数個の状態通知パケットに対して、その状態通知パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの応答時間(レスポンスタイム)を計時し、応答時間の最大値、平均値、最小値を取得する。
【0029】
各ベストエフォート回線6−1〜6−Mのパケットロス率として、予めマルチ回線制御装置4-1及び4−2間で取り決めた時間帯に受信する予定のパケット数(状態通知パケットだけを対象としても良く、状態通知パケット及び応答パケットを対象とするようにしても良い)に対する、実際に到達したパケット数での比でパケットロス率を計算する。
【0030】
各ベストエフォート回線6−1〜6−Mのレスポンス、パケットロス率の情報を元に、予め定められている回線安定性の評価基準に基き、安定性を取得する。なお、安定性の取得にスループットを利用するようにしても良い。
【0031】
図3は、ベストエフォート回線の安定性の評価基準の一例を示す説明図である。レスポンス(応答時間)がばらついている場合には、レスポンス(平均応答時間)の長短によらずに、パケットロス率から安定性が決定される。レスポンス(応答時間)がばらついていない場合には、レスポンス(平均応答時間)の長短とパケットロス率の大小との組み合わせによって安定性が決定される。レスポンス(応答時間)がばらつき度合いの判定方法は任意であるが、例えば、(最大値−最小値)/平均値を指標として用いることができる。なお、第1の実施形態とは異なり、レスポンスの分散を求めて、ばらつき度合いを判断するようにしても良い。
【0032】
なお、バックアップ用帯域保証型回線7が後述する代替ベストエフォート回線として設定され、代替のベストエフォート回線として利用されている場合に、バックアップ用帯域保証型回線に対しては、安定性を算出しないようにしても良い。
【0033】
回線状態情報管理部22は、各ベストエフォート回線6−1〜6−Mの回線状態情報を元に、ベストエフォート回線全体の回線状態情報を集計し、管理し、必要ならば障害を通知する機能を担っている。また、回線状態情報管理部22は、各ベストエフォート回線6−1〜6−Mの回線状態情報を元に、予め設定した閾値を適用し、ベストエフォート回線のそれぞれの利用可否を判断し、利用可能なベストエフォート回線のみで、縮退利用することができるようにする機能を担っている。
【0034】
回線状態情報管理部22は、具体的には、例えば、以下のような処理を実行する。
【0035】
回線状態情報管理部22は、各ベストエフォート回線のスループットを用い、その合計値として、回線全体のスループットを算出する。但し、安定性が低いベストエフォート回線のスループットは集計(合計対象)から除外する。この回線全体のスループットの算出は、定期的に実行され、回線全体のスループットが管理される。
【0036】
また、回線状態情報管理部22は、安定性が低いベストエフォート回線については回線障害が発生したとみなして、図示しないネットワーク管理システム(NMS)に対して、障害通知を行う(例えば、SNMPトラップにより通知する)。
【0037】
さらに、回線状態情報管理部22は、安定性が低いベストエフォート回線を除いたベストエフォート回線に対して、各ベストエフォート回線のスループットの割合で、順番に、データを送出することに決定する。例えば、ベストエフォート回線6−1、6−2、6−3が安定性が中以上であり、これらベストエフォート回線6−1、6−2、6−3のスループットがそれぞれ、2Mbps、3Mbps、5Mbpsの場合には、データ送信時に、ベストエフォート回線6−1へ2パケット、ベストエフォート回線6−2へ3パケット、ベストエフォート回線6−3へ5パケット、ベストエフォート回線6−1へ2パケット、…送出することを繰返し行うことに決定する。なお、スループットの割合を維持できるのであれば、送出方法は、上記のような方法に限定されるものではない。
【0038】
回線開放・閉塞制御部23は、1又は複数のベストエフォート回線が回線輻輳などによりスループットが低下した場合には、バックアップ用帯域保証型回線7を接続して、データ通信帯域を確保する機能を担うものである。回線開放・閉塞制御部23による具体的な処理は、例えば、以下の通りである。
【0039】
回線開放・閉塞制御部23は、回線全体のスループットが、予め設定された閾値内であるか否かを判定し、その判定結果に応じて動作を切り替える。
【0040】
回線全体のスループットが閾値を超えている場合には、回線開放・閉塞制御部23は、バックアップ用帯域保証型回線7が接続されているかをチェックし、バックアップ用帯域保証型回線7が接続されている場合には、バックアップ用帯域保証型回線7のスループット(上述した状態通知パケットの授受を通じて測定したものであっても良く、また、帯域保証型であるので測定動作をすることなく予め定められている固定値を適用しても良い)を回線全体のスループットから減算し、その減算後の回線全体のスループットが閾値を超えている場合には、バックアップ用帯域保証型回線7を切断し、後述する代替ベストエフォート回線という設定を解除する。また、バックアップ用帯域保証型回線7を適用しなくても良くなったので、全体回線障害が復旧したとみなし、復旧通知を、図示しないネットワーク監視システムに通知する(例えば、通知には、SNMPトラップを利用する)。
【0041】
回線全体のスループットが閾値を超えており、しかも、バックアップ用帯域保証型回線7が接続されていない場合には、回線開放・閉塞制御部23は、現在、開放されているベストエフォート回線でのデータ通信を継続すると判断する。
【0042】
これに対して、回線全体のスループットが閾値以下の場合には、回線開放・閉塞制御部23は、バックアップ用帯域保証型回線7が接続されているか否かを判別する。バックアップ用帯域保証型回線7が接続されている場合には、バックアップ用帯域保証型回線7を利用しても、所定の帯域(閾値)を確保できないので、回線開放・閉塞制御部23は、全体回線障害(帯域不足)とみなし、全体回線障害を、図示しないネットワーク監視システムに通知する(例えば、通知には、SNMPトラップを利用する)。
【0043】
バックアップ用帯域保証型回線7が接続されていない場合には、回線開放・閉塞制御部23は、バックアップ用帯域保証型回線7を接続させ、次回の状態通知パケットの授受から、代替ベストエフォート回線として設定(エントリー)させ、バックアップ起動の全体回線障害とみなし、バックアップ起動の全体回線障害を、図示しないネットワーク監視システムに通知する(例えば、通知には、SNMPトラップを利用する)。
【0044】
データ入出力制御部24は、中央制御部20の制御下で、ベストエフォート回線6-1〜6−Mやバックアップ用帯域保証型回線7(代替ベストエフォート回線)のうち、回線開放状態にある回線を利用して、データの入出力を実行するものである。データ入出力制御部24−1は、サーバ2からのLAN制御部11−1経由のデータ(パケット)を、回線制御部10−1を経由して、ベストエフォート回線6-1〜6−Mやバックアップ用帯域保証型回線7(代替ベストエフォート回線)などに振り分けて送出し、ベストエフォート回線6-1〜6−Mやバックアップ用帯域保証型回線7からの回線制御部10−1を経由したデータ(パケット)を、一系列に統合してLAN制御部11−1を経由してサーバ2に送出する。データ入出力制御部24−2は、パソコン3からのLAN制御部11−2経由のデータ(パケット)を、回線制御部10−2を経由して、ベストエフォート回線6-1〜6−Mやバックアップ用帯域保証型回線7(代替ベストエフォート回線)などに振り分けて送出し、ベストエフォート回線6-1〜6−Mやバックアップ用帯域保証型回線7からの回線制御部10−2を経由したデータ(パケット)を、一系列に統合してLAN制御部11−2を経由してパソコン3に送出する。
【0045】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する2つのマルチ回線制御装置4−1及び4−2を、論理的な帯域保証型回線5を挟んで対向させた第1の実施形態に係る通信システム1の動作を説明する。
【0046】
マルチ回線制御装置4−1及び4−2間を、予め、ベストエフォート回線6−1〜6−Mと、バックアップ用の帯域保証型回線7とで接続しておく。
【0047】
サーバ2及びパソコン3間のデータ通信は、そのときに、開放されているベストエフォート回線や代替ベストエフォート回線(帯域保証型回線7)が利用されて実行される。
【0048】
そこで、以下では、マルチ回線制御装置4(4−1、4−2)が実行する、回線の開放・閉塞の制御動作を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4は、回線の開放・閉塞の制御動作の面からのみ動作を整理して示したフローチャートである。
【0049】
マルチ回線制御装置4は、一定周期で、ベストエフォート回線6−1〜6−M(や帯域保証型回線7)の回線状態情報を収集する(ステップ100)。そして、各ベストエフォート回線6−1〜6−Mの安定性をチェックし(ステップ101)、安定性が「高」や「中」である回線について「開放予約」すると共に(ステップ102)、安定性が「低」である回線について「閉塞予約」する(ステップ103)。
【0050】
さらに、マルチ回線制御装置4は、回線全体のスループットを閾値と比較する(ステップ104)。
【0051】
回線全体のスループットが閾値を超えて十分である場合には、マルチ回線制御装置4は、バックアップ用帯域保証型回線7の現状の利用有無(開放又は閉塞)やバックアップの必要性などを判断する(ステップ105)。バックアップ用帯域保証型回線7が利用されている場合であって、仮にバックアップ用帯域保証型回線7を閉塞しても、その閉塞後の回線全体のスループットが閾値を超えている場合には、マルチ回線制御装置4は、バックアップ用帯域保証型回線7について「閉塞予約」する(ステップ106)。バックアップ用帯域保証型回線7が利用されていない場合や、バックアップ用帯域保証型回線7が利用されている場合であって、仮にバックアップ用帯域保証型回線7を閉塞すると、その閉塞後の回線全体のスループットが閾値以下になる場合には、バックアップ用帯域保証型回線7の開放・閉塞状態を現状のままとする。
【0052】
一方、回線全体のスループットと閾値との比較で、回線全体のスループットが閾値を超えて十分である場合には、マルチ回線制御装置4は、バックアップ用帯域保証型回線7の現状の利用有無を判断する(ステップ107)。バックアップ用帯域保証型回線7が利用されていない場合には、マルチ回線制御装置4は、バックアップ用帯域保証型回線7について「開放予約」する(ステップ108)。バックアップ用帯域保証型回線7が利用されている場合には、マルチ回線制御装置4は、バックアップ用帯域保証型回線7の現状の開放状態を維持する。
【0053】
そして、今回(この周期)の見直しにより予約された「開放」、「閉塞」の状態に、ベストエフォート回線6−1〜6−Mや帯域保証型回線7の状態を設定し、次の見直し周期を待ち受ける(ステップ109)。
【0054】
ベストエフォート回線6−1〜6−Mや帯域保証型回線7のうち、以上のような回線の開放・閉塞の制御動作を通じて「開放」状態に設定されている回線が、その回線について測定されたスループットの割合で、サーバ2及びパソコン3間のデータ通信に利用される。
【0055】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、複数のベストエフォート回線のうち、安定性が良好なものだけを用い、必要に応じて、帯域保証型回線をバックアップとして適用し、所定帯域(閾値)以上の帯域を確保してデータの転送を実行できるようにしたので、信頼性を確保しつつ、安価に高帯域の回線容量(回線全体のスループット)を得ることができる。
【0056】
その結果、回線サービスのコストが高価であるという理由で、ビジネス採算性が取れないと判断され、ビジネス機会を失っていたISPのビジネスも、本技術により、障壁が低くなり、実現可能なものも増えることが期待できる。
【0057】
併せて、より一層のネットワーク利用が増え、回線サービス全体のコストも低減化されることも期待できる。
【0058】
(B)第2の実施形態
次に、本発明によるマルチ回線制御装置及び通信システムの第2の実施形態を説明する。
【0059】
上述した第1の実施形態の通信システム1は、論理的な1つの帯域保証型回線5を挟んで対向するマルチ回線制御装置4−1、4−2が1対1であった。
【0060】
第2の実施形態の通信システムは、論理的な1つの帯域保証型回線5を挟んで対向するマルチ回線制御装置が1対Nのものである。以下では、説明の簡単化のために、論理的な1つの帯域保証型回線5を挟んで対向するマルチ回線制御装置が1対2の場合を説明する。
【0061】
図5は、第2の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0062】
図5において、第2の実施形態の通信システム1Aは、サーバ2及び通信端末としてのパソコン3a、3b間のデータ通信サービスを提供するものである。各パソコン3a、3bに対応して、マルチ回線制御装置4−2a、4−2bが設けられており、パソコン3aは、マルチ回線制御装置4−2aにLAN8−2a経由で収容され、パソコン3bは、マルチ回線制御装置4−2bにLAN8−2b経由で収容されている。
【0063】
サーバ2側のマルチ回線制御装置4−1は、状態通知パケットを授受する対向する2つのマルチ回線制御装置4−2a、4−2bを、IPアドレスなどで識別することができる。
【0064】
マルチ回線制御装置4−1は、マルチ回線制御装置4−2aに対する、第1の実施形態で説明したような動作プロセスと、マルチ回線制御装置4−2bに対する、第1の実施形態で説明したような動作プロセスとを、独立して並行的に実行することができるようになされている。
【0065】
2つのマルチ回線制御装置4−2a及び4−2bはそれぞれ、第1の実施形態におけるマルチ回線制御装置4−2と同様に動作する。
【0066】
以上のように、第2の実施形態によれば、複数のベストエフォート回線を用いて、1対2の回線構成を構築でき、通信システムをより柔軟に構成することが可能となる。実際上、1つのサーバが複数の通信端末にサービスを提供することは多く、このようなサービスの実現性を向上できている。
【0067】
以上では、論理的な1つの帯域保証型回線5を挟んで対向するマルチ回線制御装置が1対2(1対Nの例)の場合を説明したが、N対Nの場合にも適用することができることは勿論である。
【0068】
さらに、図6に示すように、論理的な1つの帯域保証型回線5を介して、N個(図6は3個の例)のマルチ回線制御装置4−1〜4−3のフルメッシュの構成とすることもできる。
【0069】
マルチ回線制御装置4−1は、状態通知パケットを授受するマルチ回線制御装置4−2及び4−3をIPアドレスなどで識別し、マルチ回線制御装置4−2及び4−3に対する、第1の実施形態で説明したような動作プロセスをそれぞれ、独立して並行的に実行することができるようになされている。同様に、マルチ回線制御装置4−2も、状態通知パケットを授受するマルチ回線制御装置4−1及び4−3をIPアドレスなどで識別し、マルチ回線制御装置4−1及び4−3に対する、第1の実施形態で説明したような動作プロセスをそれぞれ、独立して並行的に実行することができ、マルチ回線制御装置4−3も、状態通知パケットを授受するマルチ回線制御装置4−1及び4−2をIPアドレスなどで識別し、マルチ回線制御装置4−1及び4−2に対する、第1の実施形態で説明したような動作プロセスをそれぞれ、独立して並行的に実行することができるようになされている。
【0070】
(C)第3の実施形態
次に、本発明によるマルチ回線制御装置及び通信システムの第3の実施形態を説明する。
【0071】
図7は、第3の実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。なお、図示を簡単にするため、図7はベストエフォート回線の数が3本の場合を例示している。
【0072】
図7において、第3の実施形態の通信システム1Bは、第1の実施形態の通信システム1に比較すると、第1の実施形態におけるマルチ回線制御装置4−1が、2つのサブ回線制御部4S1及び4S2と、メイン回線制御部4Mとの組に置き換わった点が異なっている。言い換えると、第3の実施形態では、マルチ回線制御装置(4−1)が、2つのサブ回線制御部4S1及び4S2と、メイン回線制御部4Mとで構成されている。
【0073】
サブ回線制御部4S1はベストエフォート回線6−1及び6−2を収容し、サブ回線制御部4S2はベストエフォート回線6−3とバックアップ用の帯域保証型回線7を収容している。メイン回線制御部4Mは、2つのサブ回線制御部4S1及び4S2を収容し、また、LAN8−1経由でサーバ2に接続している。
【0074】
この第3の実施形態の場合、図2に示したデータ振分・統合制御部12の機能は、メイン回線制御部4M及び2つのサブ回線制御部4S1、4S2が協働して実行する。
【0075】
第3の実施形態の通信システム1Cは、ベストエフォート回線6−1〜6−3やバックアップ用帯域保証型回線7を、2つのサブ回線制御部4S1及び4S2に分けて収容することにより、一方のサブ回線制御部4S1又は4S2に障害が発生しても、回線利用を可能としたものである。
【0076】
サブ回線制御部4S1は、収容しているベストエフォート回線6−1及び6−2のそれぞれに対して、所定周期で、状態通知パケットを送出し、それに対する応答パケットを受信して、ベストエフォート回線6−1及び6−2についての回線状態情報を取得するものである。サブ回線制御部4S1は、メイン回線制御部4Mに対し、予め定められている時間毎に、ベストエフォート回線6−1及び6−2についての回線状態情報を送出する。
【0077】
同様に、サブ回線制御部4S2は、収容しているベストエフォート回線6−3及びバックアップ用の帯域保証型回線7のそれぞれに対して、所定周期で、状態通知パケットを送出し、それに対する応答パケットを受信して、ベストエフォート回線6−3及びバックアップ用の帯域保証型回線7についての回線状態情報を取得するものである。サブ回線制御部4S2は、メイン回線制御部4Mに対し、予め定められている時間毎に、ベストエフォート回線6−3及びバックアップ用の帯域保証型回線7についての回線状態情報を送出する。
【0078】
メイン回線制御部4Mは、全ての回線(ベストエフォート回線6−1〜6−3及びバックアップ用の帯域保証型回線7)の回線状態情報に基づいて、第1の実施形態と同様にして、全ての回線のそれぞれに対して、回線の開放、閉塞を決定すると共に、開放状態の全ての回線については、それぞれのスループットに基づいて、データ(パケット)の送出割合と送出パターンとを決定する。
【0079】
メイン回線制御部4Mは、サーバ2からパソコン3へ向かうデータについて、そのタイミングで利用する回線がベストエフォート回線6−1又は6−2であれば、そのデータを回線を指定してサブ回線制御部4S1に与え、サブ回線制御部4S1は、指定されたベストエフォート回線6−1又は6−2にデータを送出する。また、メイン回線制御部4Mは、サーバ2からパソコン3へ向かうデータについて、そのタイミングで利用する回線がベストエフォート回線6−3又はバックアップ用の帯域保証型回線7(代替ベストエフォート回線)であれば、そのデータを回線を指定してサブ回線制御部4S2に与え、サブ回線制御部4S2は、指定されたベストエフォート回線6−3又はバックアップ用の帯域保証型回線7にデータを送出する。
【0080】
サブ回線制御部4S1は、開放状態のベストエフォート回線6−1又は6−2から、パソコン3からサーバ2へ向かうデータが与えられたときには、メイン回線制御部4Mに与え、サブ回線制御部4S2も、開放状態のベストエフォート回線6−3又はバックアップ用の帯域保証型回線7(代替ベストエフォート回線)から、パソコン3からサーバ2へ向かうデータが与えられたときには、メイン回線制御部4Mに与える。メイン回線制御部4Mは、開放状態の各回線から与えられたデータを統合して、サーバ2に送出する。
【0081】
例えば、サブ回線制御部4S1に障害が発生したとする。このとき、サブ回線制御部4S1からメイン回線制御部4Mに、予め定められている時間毎に与えられるはずの、ベストエフォート回線6−1及び6−2についての回線状態情報がメイン回線制御部4Mに与えられない。このことにより、メイン回線制御部4Mは、サブ回線制御部4S1の障害発生を認識する。メイン回線制御部4Mは、サブ回線制御部4S1に収容されているベストエフォート回線6−1及び6−2を使用不可とし、残っているベストエフォート回線6−3及びバックアップ用の帯域保証型回線7を用いた、サブ回線制御部4S2だけを経由したデータ転送に切り替える。
【0082】
第3の実施形態によっても、信頼性を確保しつつ、安価に高帯域の回線容量(回線全体のスループット)を得ることができるという効果を奏する。
【0083】
さらに、第3の実施形態によれば、論理的な1つの帯域保証型回線5を構成する複数の回線を、異なるサブ回線制御部に分けて収容するようにしたので、マルチ回線制御装置の故障で全く通信ができなくなるような事態を避けることができる。
【0084】
(D)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0085】
上記各実施形態では、バックアップ回線として1つの回線を用意したものを示したが、複数の回線をバックアップ回線として用意するようにしても良い。複数の回線をバックアップ回線とした場合、回線全体のスループットの増加度合いを考慮しつつ、開放状態にするバックアップ回線を徐々に増やしていくようにすれば良い。
【0086】
上記各実施形態においては、バックアップ回線が帯域保証型回線であるものを示したが、バックアップ回線の全て又は一部として、ベストエフォート回線を適用するようにしても良い。
【0087】
上記各実施形態では、通信システムのエンドの装置がサーバやパソコンの場合を示したが、エンドの装置がこれに限定されないことは勿論である。
【0088】
上記各実施形態においては、論理的な1つの帯域保証型回線5が保証する最小帯域に等しい閾値を、回線全体のスループットと比較し、バックアップ回線の開放の有無などを判断するものを示したが、論理的な1つの帯域保証型回線5が保証する最小帯域より小さい値を閾値として処理を行うようにしても良い。このようにした方が、論理的な1つの帯域保証型回線5による帯域保証をより確実なものとすることができる。
【0089】
上記各実施形態では、対向するマルチ回線制御装置がそれぞれ独立に、回線の開放、閉塞を決定するものを示したが、決定結果を相互に通知し合い、2つのマルチ回線制御装置が共に開放と決定した回線のみをデータ通信に利用するようにしても良い。また、一方のマルチ回線制御装置だけが回線の開放、閉塞を決定し、その決定内容を他方のマルチ回線制御装置に通知し、他方のマルチ回線制御装置も、その決定内容で開放の回線のみをデータ通信に適用するようにしても良い。
【0090】
上記第3の実施形態では、複数の回線を、2つのサブ回線制御部4S1、4S2に振り分けて、回線制御部の障害に対応できるようにしたものを示したが、全ての回線を収容するマルチ回線制御装置を2系設け、1系を運用系、他の1系を待機系とした冗長構成を採用して、障害に対応するようにしても良い。
【符号の説明】
【0091】
4、4−1〜4−3、4−2a、4−2b…マルチ回線制御装置、4M…メイン回線制御部、4S1、4S2…サブ回線制御部、5…論理的な帯域保証型回線、6−1〜6−M…ベストエフォート回線、7…バックアップ用の帯域保証型回線、10…回線制御部、11…LAN制御部、12…データ振分・統合転送制御部、20…中央制御部、21…回線状態監視部、22…回線状態情報管理部、23…回線開放・閉塞制御部、24…データ入出力制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの通信装置間のデータ通信を実行させる通信システムにおいて、
複数のベストエフォート回線と、少なくとも1つのバックアップ回線とに接続されている、それぞれが上記一方の通信装置を収容している、互いに対向している第1及び第2のマルチ回線制御装置を備え、
少なくとも上記第1のマルチ回線制御装置が、
上記各ベストエフォート回線と上記バックアップ回線の回線状態の情報を収集する回線状態収集手段と、
収集された回線状態情報に基づいて、安定性がある上記ベストエフォート回線を開放予約すると共に、安定性が低い上記ベストエフォート回線を閉塞予約する開放・閉塞決定手段と、
開放予約された全ての上記ベストエフォート回線のスループットを表す回線状態情報に基づき、開放予約された全ての上記ベストエフォート回線だけで、所定の通信帯域を確保できるか判断し、上記バックアップ回線の開放・閉塞予約を行うバックアップ開放・閉塞決定手段と、
収容している上記通信端末からのデータを、開放予約された上記ベストエフォート回線及び上記バックアップ回線を用いて、対向する上記第2のマルチ回線制御装置に送出するデータ振分け手段とを有する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
上記バックアップ回線が、帯域保証型回線であることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
上記第1のマルチ回線制御装置は、複数のベストエフォート回線とバックアップ回線とを複数のサブ回線制御部に振り分けて接続したものであり、
いずれかのサブ回線制御部に障害が生じたときには、そのサブ回線制御部に接続されていない、上記ベストエフォート回線又はバックアップ回線に対して、開放予約又は閉塞予約を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
複数のベストエフォート回線と、少なくとも1つのバックアップ回線とが接続されているマルチ回線制御装置であって、
上記各ベストエフォート回線と上記バックアップ回線の回線状態の情報を収集する回線状態収集手段と、
収集された回線状態情報に基づいて、安定性がある上記ベストエフォート回線を開放予約すると共に、安定性が低い上記ベストエフォート回線を閉塞予約する開放・閉塞決定手段と、
開放予約された全ての上記ベストエフォート回線のスループットを表す回線状態情報に基づき、開放予約された全ての上記ベストエフォート回線だけで、所定の通信帯域を確保できるか判断し、上記バックアップ回線の開放・閉塞予約を行うバックアップ開放・閉塞決定手段と、
収容している通信端末からのデータを、開放予約された上記ベストエフォート回線及び上記バックアップ回線を用いて、対向するマルチ回線制御装置に送出するデータ振分け手段とを有する
ことを特徴とするマルチ回線制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77905(P2013−77905A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215353(P2011−215353)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】