説明

マルチ渦流量計

【課題】 圧力計と流量変換器とを一体に形成し、圧力計を流量計とともに流路に着脱することのできるマルチ渦流量計を提供すること
【解決手段】 流管2内を流れる被測定流体を渦発生体7により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を検出する渦式検出手段9と,感温センサ10と加熱感温センサ11の機能を有する熱式検出手段12とを備える流量変換器と共に圧力計5を変換器ケース40に一体に設け,マルチ渦流量計の挿脱によって圧力計5を流管2の挿入孔3に挿脱可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えてなるマルチ渦流量計に係り、圧力計と流量変換部とを一体に形成し、流量計と一体に着脱自在に構成してなるマルチ渦流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流管に流れる被測定流体の流量を計測するために、渦流量計や熱式流量計が用いられている。
【0003】
渦流量計は、周知のように、流体の流れの中に渦発生体を配設したとき、所定のレイノルズ数範囲では、渦発生体から単位時間内に発生するカルマン渦の数(渦周波数)が気体、液体に関係なく流量に比例することを利用したもので、この比例定数はストローハル数と呼ばれている。渦検出器としては、熱センサ、歪みセンサ、光センサ、圧力センサ、超音波センサ等が挙げられ、これらは渦による熱変化、揚力変化等を検出することが可能なものになっている。渦流量計は、被測定流体の物性に影響されずに流量を測定できる簡易な流量計であって、気体や液体の流量計測に広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
熱式流量計は、感温センサ(流体温度検出センサ)と加熱感温センサ(加熱側温度センサ)とを備えて構成されており、温度センサと加熱センサの機能を有する加熱感温センサ(流速センサ(ヒータ))の温度が感温センサで計測される温度に対して一定の温度差になるように制御されている。これは、被測定流体を流した時にヒータから奪われる熱量が質量流量と相関があるからであって、ヒータに対する加熱電力量から質量流量が算出されるようになっている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
下記特許文献3には、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えてなるマルチ渦流量計の技術が開示されている。マルチ渦流量計は、微少流量から大流量まで精度よく計測することができ、この点が特に他の流量計よりも優れている。
【0006】
マルチ渦流量計は、流管の流路を流れる被測定流体の流れの状況に応じて渦流量計の機能と熱式流量計の機能とが使い分けられるようになっている。すなわち、微少流量域や低流量域では、熱式流量計の機能によって計測がなされ、高流量域では、渦流量計の機能によって計測がなされるようになっている。
【0007】
このようなマルチ渦流量計にあって、流量が低くても流管内の圧力が上昇すると渦差圧が高くなり、これによって流量計の機能を切り替える際の判断基準となる下限流量を下げることが可能であることを見出した。この渦流量計の利点を活かすために、できるだけこの渦流量計の機能を用いて流量を測定するためには、流管内の圧力変動を把握する圧力計を備えることがマルチ渦流量計には必要である。
【0008】
下記特許文献4には、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えてなるマルチ渦流量計の技術が開示されている。この特許文献4は、流量変換器に、渦検出器及び熱式検出手段と共に配線される配管内圧力測定用の圧力計を一体に設ける構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2869054号公報
【特許文献2】特許第3644936号公報
【特許文献3】特許第4158980号公報
【特許文献4】特許第4089831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4は、渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器を有する渦式検出手段を備え、流路に突出する感温センサ及び加熱感温センサを有する熱式検出手段を備え、流量変換器を備えるマルチ渦流量計にあって、配管内圧力測定用の圧力計を流路に形成し、流量変換器に一体に設けた構成となっている。
このように従来のマルチ渦流量計は、圧力計を流量変換器に一体に設ける構成とはいっても、圧力計を流路に形成しているため、マルチ渦流量計の挿脱とともに一緒に挿脱できるような一体構成にはなっていなかった。
このため、マルチ渦流量計に異常が生じ、マルチ渦流量計の交換が必要になった場合、圧力計とは別個にマルチ渦流量計を交換することになり、既設の圧力計と組み合わせるために交換後のマルチ渦流量計に対し改めて調整を行わなければならないという問題が生じている。
【0011】
本発明は、圧力計と流量変換器とを一体に形成し、圧力計を流量計とともに流路に着脱することのできるマルチ渦流量計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためなされた請求項1に記載のマルチ渦流量計は、流管の流路に設けられており、管断面が角形状となる筒状に形成され、被測定流体が流れる方向に沿って伸びるように形成され、前記被測定流体を通過させる測定管と,
前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管の被測定流体が流れる部分であって、前記測定管の被測定流体が流入する側の開口部分中央に位置するように設けられる渦発生体と,
前記測定管内の前記渦発生体の下流側に配置される受圧板と前記受圧板内部に埋設された圧力検出素子板とからなり前記渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を受圧板を介して圧力検出素子板により検出してカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器と,
を有する渦式検出手段を備え,
棒状の温度センサによって構成する感温センサと温度センサと加熱センサの機能を有する棒状の流速センサによって構成する加熱感温センサを前記流路の流れ方向に垂直に配置する熱式検出手段を備えるとともに,
更に変換器ケースを有し、該変換器ケースの内部にマイクロコンピュータを有する流量変換器を備えるマルチ渦流量計において,
前記マルチ渦流量計は、前記流管に形成する挿入孔に自在に着脱が可能となる挿入型を形成するとともに、前記変換器ケースに前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口を設け、前記圧力導入口から導入される流管内の圧力を計測する圧力計を、前記流量変換器と共に前記変換器ケース内に一体に設け,
前記被測定流体が流れる前記流管に形成する挿入孔へ前記マルチ渦流量計の挿脱と共に前記圧力計を前記流管に挿脱可能に構成したことを特徴としている。
【0013】
上記課題を解決するためなされた請求項2に記載のマルチ渦流量計は、請求項1に記載のマルチ渦流量計の前記変換器ケースにフランジ状の固定部を形成するとともに、該固定部に前記マルチ渦流量計を支持する軸部を設け,
前記軸部を挿通する筒部と、前記筒部の一端に、前記固定部と接合するフランジを備え、前記筒部の他端に、該筒部と前記流管に形成する挿入孔が連通するように前記流管の外周面に固着する取付部を設けてなる取付部材を備え,
前記取付部材の筒部の内壁面と前記変換器ケースに設けられる軸部の外周面との間に、前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する前記圧力導入口に連通する連通路を形成し、前記被測定流体が流れる前記流管に形成する挿入孔へ前記マルチ渦流量計の挿脱と共に前記圧力計を前記流管に挿脱可能に構成した前記流管の挿入孔から前記連通路を介して導入される前記流管内を流れる被測定流体の一部を前記圧力導入口を介して前記圧力計に導入し、前記流管内を流れる被測定流体の圧力を計測するようにしたことを特徴としている。
【0014】
上記課題を解決するためなされた請求項3に記載のマルチ渦流量計は、流管の流路に設けられており、管断面が角形状となる筒状に形成され、被測定流体が流れる方向に沿って伸びるように形成され、前記被測定流体を通過させる測定管と,
前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管の被測定流体が流れる部分であって、前記測定管の被測定流体が流入する側の開口部分中央に位置するように設けられる渦発生体と,
前記測定管内の前記渦発生体の下流側に配置される受圧板と前記受圧板内部に埋設された圧力検出素子板とからなり前記渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を受圧板を介して圧力検出素子板により検出してカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器と,
を有する渦式検出手段を備え,
棒状の温度センサによって構成する感温センサと、温度センサと加熱センサの機能を有する棒状の流速センサによって構成する加熱感温センサを前記流路の流れ方向に垂直に配置する熱式検出手段を備えるとともに,
更に変換器ケースを有し、該変換器ケースの内部にマイクロコンピュータを有する流量変換器を備えるマルチ渦流量計において,
前記マルチ渦流量計は、前記流管に形成する挿入孔に自在に着脱が可能となる挿入型を形成するとともに、前記変換器ケースに前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口を設け、前記圧力導入口から導入される前記流管内を流れる被測定流体の圧力を計測する圧力計を、前記流量変換器と共に前記変換器ケース内に一体に設けると共に、前記変換器ケースにフランジ状の固定部を形成し、該固定部に前記マルチ渦流量計を支持する軸部を設け,
前記流管と略同径の流通管を設け、前記流通管に前記渦検出器、前記感温センサ及び加熱感温センサを挿入するための挿入孔を形成すると共に、該流通管の両端に前記流管と接続するフランジをそれぞれ備え、前記流管に着脱可能に構成してなる中継管路を備え,
前記軸部を挿通する筒部と、前記筒部の一端に、前記固定部と接合するフランジを備え、前記筒部の他端に、該筒部と前記中継管路の挿入孔とが連通するように前記中継管路の外周壁面に固着する取付部を設けてなる取付部材を備え,
前記圧力計と前記マルチ渦流量計を装着する前記取付部材を取り付けた前記中継管路を、前記被測定流体が流れる前記流管の途中に挿脱可能に接続し、前記流管内を流れる被測定流体の圧力及び流量を計測するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流量変換器を収納する変換器ケースに圧力計を収納し、圧力計をマルチ渦流量計と一体化することにより、被測定流体が流れる流管にマルチ渦流量計の着脱と共に圧力計を一緒に着脱することができる。さらに、流管の口径の大小に拘わらず、1つのサイズの流量計で対応でき、1つのサイズの流量計によってあらゆる口径の流管に共通して用いることができ、コストダウンを計ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、流量変換器を収納する変換器ケースに圧力計を収納し、圧力計をマルチ渦流量計と一体化し、取付部材を介して被測定流体が流れる流管に着脱するため、既設の流管に渦検出器、感温センサ及び加熱感温センサを挿入する挿入孔を形成し、この挿入孔に取付部材を取り付けるだけで、圧力計とマルチ渦流量計を一体化した流量計を装着することができ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、中継管路を接続してなる既設の流管に圧力計とマルチ渦流量計を一体化した流量計を装着する場合に、既設の流管に接続されていない別な中継管路に挿入孔を形成し、該挿入孔に取付部材を装着して、圧力計とマルチ渦流量計を一体化した流量計を予め装着した一体型の中継管路を用意しておけば、既設の流管に挿入孔を形成することなく、この中継管路を交換するだけで容易に既設の流管に圧力計とマルチ渦流量計を一体化した流量計を装着することができ、メンテナンスも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のマルチ渦流量計の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に図示のマルチ渦流量計の一部断面全体図である。
【図3】図1に図示の取付部材の全体斜視図である。
【図4】図3に図示の取付部材に取り付けた図2に図示のマルチ渦流量計を流管に取り付けた状態を示す一部を断面した正面図である。
【図5】図1に図示のマルチ渦流量計を図3に図示の取付部材に装着して流管に取り付けた状態を示す一部を断面した側面図である。
【図6】図3に図示の取付部材を中継管路に取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【図7】図2に図示のマルチ渦流量計を図3に図示の取付部材に装着して図6に図示の中継管路に取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
流管内を流れる被測定流体を通過させる測定管と,測定管に設けられる渦発生体と,渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を検出してカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器とからなる渦式検出手段と,温度センサによって構成する感温センサと温度センサと加熱センサの機能を有する流速センサによって構成する加熱感温センサを流路の流れ方向に垂直に配置する熱式検出手段とを備え,流量変換器を備える変換器ケースを有してなるマルチ渦流量計を流管の挿入孔に自在に着脱が可能となる挿入型を形成するとともに変換器ケースに圧力導入口を設け、圧力導入口を介して流管内を流れる被測定流体を導入して被測定流体の圧力を計測する圧力計を、流量変換器と共に変換器ケース内に一体に設け,マルチ渦流量計の挿脱と共に圧力計を流管の挿入孔に挿脱可能に構成することによって実現する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態の実施例1について図1〜図5を用いて説明する。
図1は本発明のマルチ渦流量計の全体構成を示す図、図2は図1に図示のマルチ渦流量計の一部断面全体図、図3は図1に図示の取付部材の全体構成を示す斜視図、図4は図3に図示の取付部材に取り付けた図2に図示のマルチ渦流量計を流管に取り付けた状態を示す一部断面全体構成図、図5は図1に図示のマルチ渦流量計を図3に図示の取付部材に装着して流管に取り付けた状態を示す一部を断面した側面図である。
【0021】
図1〜図5において、引用符号1は本発明のマルチ渦流量計(圧力計一体形マルチ渦流量計)を示している。このマルチ渦流量計1は、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えるように構成されている。また、マルチ渦流量計1は、流管2に貫通形成した挿入孔3に検出部4を差し込む挿入式の流量計として構成されている。
このマルチ渦流量計1は、測定管6、渦発生体7、及び渦検出器8を有する渦式検出手段9と、感温センサ10及び加熱感温センサ11を有する熱式検出手段12と、渦式検出手段9及び熱式検出手段12、及び圧力計5からの出力信号に基づいて被測定流体(図示省略)の流速又は流量を算出する流量変換器13とを備えて構成されている。この渦式検出手段9と熱式検出手段12とによって検出部4が構成されている。
以下、図1〜図5を参照しながら各構成について説明する。
【0022】
流管2は、円筒形のものであって、本形態においては、水平方向に伸びるように配管されている(垂直方向に伸びるように配管してもよいものとする)。流管2の内部には、被測定流体が矢線P方向に流れる流路14が形成されている。流管2の上部には、円形に貫通形成した挿入孔3が形成されている。
【0023】
検出部4は、測定管6と渦発生体7と渦検出器8とを有する渦式検出手段9、及び、感温センサ10と加熱感温センサ11とを有する熱式検出手段12の各流量検出部分を総称するものであって、このような検出部4は、図5に示されるように、例えば流管2の流路14の上部に配置されている。検出部4は、流管2の管断面の全体でなく、管断面の一部に存在するように構成されている。本発明のマルチ渦流量計1は、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えているのにもかかわらず、検出部4が小型になるように形成されている。
【0024】
測定管6は、管断面が四角形状となる筒状に形成されている。測定管6は、被測定流体が流れる矢線P方向に沿って伸びるように配置形成されている。測定管6は、連結筒部15を介して軸部16の底壁に連成されている。連結筒部15は、測定管6の上壁中央に連成されている。このような連結筒部15には、渦発生体7と温度センサ保持部17とが形成されている(本形態では一体に形成されているが、この限りでないものとする)。
【0025】
渦発生体7は、測定管6の内部に渦を発生させるための部分であって、被測定流体の流れに対向するように、その形状が形成されている。渦発生体7は、本形態において、三角柱形状に形成されている(形状は一例であるものとする。特許文献1の特許第2869054号公報には幾つかの例が開示されている)。渦発生体7は、測定管6の被測定流体が流入する側の開口部分に形成されている。また、渦発生体7は、その開口部分の中央に位置するように形成されている。さらに、渦発生体7は、測定管6の上記上壁及び下壁に一体となるように形成されている。
【0026】
ここで、渦発生体7により生じる渦について説明する。渦は、測定管6の上記開口部分に流入する被測定流体が渦発生体7によって生じる運動量変化の大きい位置から剥離するもので、渦発生体7の断面が本形態のように三角形状の場合は、三角形エッジ部が剥離点となる。渦発生体7から剥離し流出する渦は、カルマンの安定渦条件に従って、千鳥状に交互に発生し、一定の渦間距離及び渦列間距離を保った渦列を形成しながら流出する。渦間距離は、単位時間当たりに発生する渦の数、すなわち、渦周波数と、所定時間内に、例えば、基準タンク等の基準容器に流入した流体から求めた流量に基づいて算出された単位時間当たりの流速とから求めることができる。
【0027】
温度センサ保持部17は、測定管6の下壁から水平方向に、言い換えれば測定管6の両側壁からそれぞれ突出するように形成されている。温度センサ保持部17は、平面視の形状が三角形となるように形成されている。温度センサ保持部17は、測定管6に恰もヒレがあるような形状に形成されている。このような温度センサ保持部17の三角形頂部近傍には、感温センサ10、加熱感温センサ11の各先端が差し込まれる穴(符号省略)が形成されている。温度センサ保持部17は、渦検出器8の両側に感温センサ10と加熱感温センサ11とが位置するように配置形成されている。
【0028】
渦検出器8は、渦検出のためのセンサであって、ここでは受圧センサが用いられている。渦検出器8は、測定管6内の渦発生体7の下流側に配置される受圧板(センサ受圧板)を有している。渦検出器8は、振動管内に圧電素子或いは歪みゲージを有する圧力検出素子板を備えている。渦検出器8は、渦発生体7により生じるカルマン渦に基づく変動圧力(交番圧力)を受圧板において検出するように構成されている。受圧板は、振動管の一端から伸びるように配置形成されている。
【0029】
渦式検出手段9は、測定管6と渦発生体7と渦検出器8の受圧板とを流管2に挿入して、流管2内を流動する被測定流体の流速又は流量を求めるために設けられている。流管2内を流動する被測定流体の流速又は流量は、測定管6内を流れる被測定流体の流速又は流量を、流管2の部分流速又は部分流量として算出することにより求められている。これは、流管2の管断面の全体ではなく、その一部について測定しても、流れが均一ならば、その全体流量を推定することができることに基づいている。すなわち、直管を流れる整流された流体の流速分布は、レイノルズ数の関数として与えられるので、流管2の中心部から或る距離の位置での流速を流管2内の平均流速に換算することができる。
【0030】
熱式検出手段12を構成する感温センサ10及び加熱感温センサ11は、共に既知のものが用いられている。ここでは、具体的な構成について、その説明を省略する。本形態の感温センサ10は、棒状の温度センサであり、同じく棒状の加熱感温センサ11は、温度センサと加熱センサの機能を有する流速センサ(ヒータ)であるものとする。感温センサ10及び加熱感温センサ11は、その先端側が感温部分、中間が固定部分として構成されている。感温センサ10及び加熱感温センサ11は、軸部16の貫通孔にそれぞれ差し込まれて固定されている。
【0031】
感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分は、流管2の流路14に突出しており、最先端部分は温度センサ保持部17によって保持されている。各感温部分は、測定管6の近傍に配置されている。感温センサ10及び加熱感温センサ11は、渦検出器8と共に横一列に並んで配置されている(配置は一例であるものとする。渦検出に影響を来さないように配置すれば他でもよいものとする)。尚、感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分を温度センサ保持部17から更に突出するように長くしてもよいものとする(外部から流管2に伝わる熱の作用を避けるため)。
この感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分は、変換器ケース40の底壁を構成するフランジ状の固定部43に取り付けられる軸部16に挿入するようになっている。
【0032】
検出部4は、流管2の挿入孔3の上部に図3に図示の取付部材20を介して取り付けられている。この取付部材20は、軸部16を挿通する断面円形の筒部21を有している。この筒部21の一端には、変換器ケース40に設けられるフランジ状の固定部43と接合するフランジ22が設けられている。そして、この筒部21の他端には、筒部21と流管2に形成する挿入孔3とが連通するように流管2の外周面に固着する取付部23が設けられている。
この筒部21の長さは、検出部4を装着し、検出部4の感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分が、流管2の流路14に突出する長さに設定されている。
この取付部23は、流管2の外周面に溶接等によって流管2内を流れる被測定流体(図示省略)が漏出することがないように密に固着されている。
【0033】
渦式検出手段9及び熱式検出手段12からの出力信号に基づいて流管2内を流れる被測定流体の流速又は流量を算出する流量変換器13は、図2に示す如く、変換器ケース40に収納されている。
この変換器ケース40は、流量変換器13を収納するケース本体41と、ケース本体41の開口部分に上から覆う本体カバー42とを有している。この本体カバー42は、ケース本体41にパッキン(不図示)を挟んだ状態で取り付けられている。
そして、このケース本体41の底壁には、下方に突出し、感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分を収納する軸部16が組み付けられている。
【0034】
また、ケース本体41の底壁を構成するフランジ状の固定部43には、取付部材20、筒部21に連通し、流管2内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口44が設けられている。
このケース本体41の底壁を構成するフランジ状の固定部43には、固定部43に形成される圧力導入口44を塞ぐように、流管2内を流れる被測定流体の圧力を圧力導入口44から導入して圧力を測定する圧力計5が取り付けられ、変換器ケース40に渦式検出手段9及び熱式検出手段12と一体に取り付けられている。
【0035】
そして、このケース本体41の底壁は、取付部材20の筒部21の一端に形成されるフランジ22に変換器ケース40を固定するフランジ状の固定部43で構成されている。この固定部43は、取付部材20の筒部21の一端に形成されるフランジ22に接合し、取付部材20のフランジ22側からボルト45によって組み付けるようになっている。
この変換器ケース40の内部には、渦式検出手段9及び熱式検出手段12からの出力信号に基づいて流管2内を流れる被測定流体の流速又は流量を算出する流量変換器13を構成するマイクロコンピュータを備えている。
【0036】
また、取付部材20には、取付部材20の筒部21の内壁面と、感温センサ10及び加熱感温センサ11の各感温部分を装着した変換器ケース40の底壁に組み付けられる軸部16の外壁面との間には、流管2内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口44に連通する連通路24が形成されている。
このように圧力計5には、流管2内を流れる被測定流体の一部を取付部材20の連通路24に導入し、この連通路24に導入された流管2内を流れる被測定流体の圧力を圧力導入口44を介して導入して、流管2内を流れる被測定流体の圧力の測定を行っている。
【0037】
流量変換器13には、感温センサ10及び加熱感温センサ11の各リードと、渦検出器8の伝送線と圧力センサの伝送線が接続されており、流量演算が行われる。また、流量変換器13には伝送ケーブル46が接続されており、電源供給及び流量信号出力が行われる。この伝送ケーブル46は、変換器ケース40のケース本体41の一側壁に接続されている。
このように変換器ケース40の筒部21の一端に設けられるフランジ状の固定部43をフランジ22から取り外し、変換器ケース40を取り出すと、渦式検出手段9及び熱式検出手段12と、圧力計5とを一体にして取り外すことができる。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明を実施するための形態の実施例2について図6〜図7を用いて説明する。
図6は本発明のマルチ渦流量計の取付部材を中継管路に取り付けた状態を示す全体斜視図、図7は図2に図示のマルチ渦流量計を図3に図示の取付部材に装着して図6に図示の中継管路に取り付けた状態を示す正面図である。
【0039】
実施例2が実施例1と異なる点は、実施例1が取付部材20を被測定流体が流れる流管2に孔を設け、この孔にマルチ渦流量計を直接取り付けているのに対し、実施例2は、所定の長さの中継管路に取付部材20を取り付け、圧力計5、渦式検出手段9及び熱式検出手段12が装着してある中継管路を予め用意しておき、被測定流体が流れる既設の流管2の一部を切り取り、あるいは、被測定流体が流れる複数の管路を繋ぎ合わせて連接して形成される流管2の一部の中継管路を切り放して、前記予め用意してある中継管路を取り付けることによって容易に取付ができるようにした点である。
【0040】
図6において、マルチ渦流量計1は、中継管路50の流通管51を流れる被測定流体の流れの状況に応じて渦流量計の機能と熱式流量計の機能とが使い分けられるようになっている。すなわち、微少流量域や低流量域では、熱式流量計の機能によって計測がなされ、高流量域では、渦流量計の機能によって計測がなされるようになっている。本発明のマルチ渦流量計1は、熱式流量計の機能における高流量域計測と、渦流量計の機能における低流量域計測とがある程度ラップするようになっており、流量変換器13で切り換えが行われるようになっている。
【0041】
中継管路50は、流管2の中間に着脱自在に取り付けられて(流管2の中間に限らず、端部に取り付けても可)、この内部に流通管51を形成する、例えば図示のような筒状の構造体として形成されている。
すなわち、中継管路50は、被測定流体が流れる流管2と略同径の流通管51を有している。この流通管51の壁面には、渦検出器8、感温センサ10及び加熱感温センサ11を挿入するための挿入孔52が形成されている。
また、流通管51の両端には、被測定流体が流れる流管2と接続するためのフランジ53,54が設けられている。
【0042】
このように中継管路50の両端には、それぞれ継ぎ手が形成されており、この中継管路50は、流管2に着脱可能に構成されている。このような挿入孔52が形成されている箇所の中継管路50の外部には、流量変換器13を収納し、底壁が取付部材20の筒部21の一端に形成されるフランジ22に変換器ケース40を固定するフランジ状の固定部43で構成されるケース本体41と、ケース本体41の開口部分に上から覆う本体カバー42とを有する変換器ケース40が筒部21の一端に形成されるフランジ22を備える取付部材20を介して取り付けられている。
この中継管路50に形成される流通管51は、断面円形状に形成されており、この流通管51には、流管2内を流れる被測定流体が矢印Pの方向に流れるようになっている。
【0043】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1………………………マルチ渦流量計
2………………………流管
3………………………挿入孔
4………………………検出部
5………………………圧力計
6………………………測定管
7………………………渦発生体
8………………………渦検出器
9………………………渦式検出手段
10……………………感温センサ
11……………………加熱感温センサ
12……………………熱式検出手段
13……………………流量変換器
14……………………流路
15……………………連結筒部
16……………………軸部
17……………………温度センサ保持部
20……………………取付部材
21……………………筒部
22……………………フランジ
23……………………取付部
24……………………連通路
40……………………変換器ケース
41……………………ケース本体
42……………………本体カバー
43……………………固定部
44……………………圧力導入口
45……………………ボルト
50……………………中継管路
51……………………流通管
52……………………挿入孔
53,54……………フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流管の流路に設けられており、管断面が角形状となる筒状に形成され、被測定流体が流れる方向に沿って伸びるように形成され、前記被測定流体を通過させる測定管と,
前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管の被測定流体が流れる部分であって、前記測定管の被測定流体が流入する側の開口部分中央に位置するように設けられる渦発生体と,
前記測定管内の前記渦発生体の下流側に配置される受圧板と前記受圧板内部に埋設された圧力検出素子板とからなり前記渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を受圧板を介して圧力検出素子板により検出してカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器と,
を有する渦式検出手段を備え,
棒状の温度センサによって構成する感温センサと、温度センサと加熱センサの機能を有する棒状の流速センサによって構成する加熱感温センサを前記流路の流れ方向に垂直に配置する熱式検出手段を備えるとともに,
更に変換器ケースを有し、該変換器ケースの内部にマイクロコンピュータを有する流量変換器を備えるマルチ渦流量計において,
前記マルチ渦流量計は、前記流管に形成する挿入孔に自在に着脱が可能となる挿入型を形成するとともに、前記変換器ケースに前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口を設け、前記圧力導入口から導入される流管内の圧力を計測する圧力計を、前記流量変換器と共に前記変換器ケース内に一体に設け,
前記被測定流体が流れる前記流管に形成する挿入孔へ前記マルチ渦流量計の挿脱と共に前記圧力計を前記流管に挿脱可能に構成した
ことを特徴とするマルチ渦流量計。
【請求項2】
前記請求項1に記載のマルチ渦流量計において,
前記変換器ケースにフランジ状の固定部を形成するとともに、該固定部に前記マルチ渦流量計を支持する軸部を設け,
前記軸部を挿通する筒部と、前記筒部の一端に、前記固定部と接合するフランジを備え、前記筒部の他端に、該筒部と前記流管に形成する挿入孔が連通するように前記流管の外周面に固着する取付部を設けてなる取付部材を備え,
前記取付部材の筒部の内壁面と前記変換器ケースに設けられる軸部の外周面との間に、前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する前記圧力導入口に連通する連通路を形成し、前記被測定流体が流れる前記流管に形成する挿入孔へ前記マルチ渦流量計の挿脱と共に前記圧力計を前記流管に挿脱可能に構成した前記流管の挿入孔から前記連通路を介して導入される前記流管内を流れる被測定流体の一部を前記圧力導入口を介して前記圧力計に導入し、前記流管内を流れる被測定流体の圧力を計測するようにした
ことを特徴とするマルチ渦流量計。
【請求項3】
流管の流路に設けられており、管断面が角形状となる筒状に形成され、被測定流体が流れる方向に沿って伸びるように形成され、前記被測定流体を通過させる測定管と,
前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管の被測定流体が流れる部分であって、前記測定管の被測定流体が流入する側の開口部分中央に位置するように設けられる渦発生体と,
前記測定管内の前記渦発生体の下流側に配置される受圧板と前記受圧板内部に埋設された圧力検出素子板とからなり前記渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変動圧力を受圧板を介して圧力検出素子板により検出してカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器と,
を有する渦式検出手段を備え,
棒状の温度センサによって構成する感温センサと、温度センサと加熱センサの機能を有する棒状の流速センサによって構成する加熱感温センサを前記流路の流れ方向に垂直に配置する熱式検出手段を備えるとともに,
更に変換器ケースを有し、該変換器ケースの内部にマイクロコンピュータを有する流量変換器を備えるマルチ渦流量計において,
前記マルチ渦流量計は、前記流管に形成する挿入孔に自在に着脱が可能な挿入型を形成するとともに、前記変換器ケースに前記流管内を流れる被測定流体の一部を導入する圧力導入口を設け、前記圧力導入口から導入される前記流管内を流れる被測定流体の圧力を計測する圧力計を、前記流量変換器と共に前記変換器ケース内に一体に設けると共に、前記変換器ケースにフランジ状の固定部を形成し、該固定部に前記マルチ渦流量計を支持する軸部を設け,
前記流管と略同径の流通管を設け、前記流通管に前記渦検出器、前記感温センサ及び加熱感温センサを挿入するための挿入孔を形成すると共に、該流通管の両端に前記流管と接続するフランジをそれぞれ備え、前記流管に着脱可能に構成してなる中継管路を備え,
前記軸部を挿通する筒部と、前記筒部の一端に、前記固定部と接合するフランジを備え、前記筒部の他端に、該筒部と前記中継管路の挿入孔とが連通するように前記中継管路の外周壁面に固着する取付部を設けてなる取付部材を備え,
前記圧力計と前記マルチ渦流量計を装着する前記取付部材を取り付けた前記中継管路を、前記被測定流体が流れる前記流管の途中に挿脱可能に接続し、前記流管内を流れる被測定流体の圧力及び流量を計測するようにした
ことを特徴とするマルチ渦流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−137741(P2011−137741A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298486(P2009−298486)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】