説明

マンデル酸アミド誘導体の製造方法及びその中間体

【課題】光学活性なマンデル酸アミド誘導体の製造方法及びその中間体の提供。
【解決手段】(II)の化合物より、(III)又は(IV)の化合物を経由することで、(I)の光学活性マンデル酸アミド誘導体を、2工程で純度良く、効率的に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品として有用な光学活性なマンデル酸アミド誘導体の製造方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
部分発作及び/又は全般発作の種々てんかん発作に対する治療薬若しくは予防薬として有用な下記(Ia)の化合物は、特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、例えば化合物(Ia)を、光学カラムを用いた光学分割により製造する方法が具体的に記載されている。
【0003】
【化1】

【0004】
[式中の定義は、下記項1に記載の定義と同義である]
【0005】
上記従来法では、非特許文献1に記載の方法に従い(RS)−マンデル酸誘導体(A)のカルボキシル基をエステル化し、非特許文献2に記載の方法に従いフェニルボロン酸試薬とカップリングした後にアンモニアと反応させることによりラセミ体のマンデル酸アミド化合物(D)を3工程で得ており、加えて光学活性体を得るためには光学カラムによる分割が必要であることから、工業的製法としては適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2010/055911号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem. Pharm. Bull., 29, 1475 (1981)
【非特許文献2】Chem. Rev., 95, 2457 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部分発作及び/又は全般発作の種々てんかん発作に対する治療薬若しくは予防薬として有用な光学活性なマンデル酸アミド誘導体(I)の工業的に優れた製造方法及びその中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、下記式(II)の化合物とホウ素試薬等を反応し、下記式(III)の化合物を経由するか、又は、化合物(II)をアミド化し、化合物(IV)を経由することで、2工程で目的の化合物(I)を純度良く、効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、下記式(III)を経由する工程においては、下記式(III’)を経由する方法でも化合物(I)を純度良く、効率的に製造できることを見出した。本明細書において、例えば化合物(I)とは、式(I)で表される構造式の化合物又はその塩を表す。
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、R、R、R、R、R、R、R及びXは、下記項1に記載の定義と同義である。]
【0012】
すなわち、本発明は、以下の医薬品として有用なマンデル酸アミド誘導体の製造方法及びその中間体を提供するものである。
【0013】
[項1] 下記式(I):
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−又はシアノを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、ここにおいて、R、R及びRのうちいずれか2つの基が、2’−メチル及び3’−メチルのときは、残りの基は水素原子以外の基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−、シアノ又はニトロを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル又はC3−6シクロアルキルを表し、該アルキル、シクロアルキル−アルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
nは、0〜2の整数を表す]で表される化合物を製造する方法であって、下記の方法を特徴とする製造方法;
(1)下記式(II):
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフレート(CFSO−)を表し、R及びRは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩と、
下記式(V):
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はC1−6アルキルを表し、ここにおいて、R及びRがアルキルのとき該アルキル同士は結合して環を構築していてもよく、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩と、若しくは、
下記式(VI):
【0020】
【化6】

【0021】
[式中、Mは、すず、亜鉛又はマグネシウムを表し、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とを反応させて、
下記式(III):
【0022】
【化7】

【0023】
[式中、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とし、
下記式(VII):
【0024】
【化8】

【0025】
[式中、RおよびRは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とを反応させるか、又は、
(2)化合物(II)と化合物(VII)とを反応させて、
下記式(IV):
【0026】
【化9】

【0027】
[式中、R〜R及びXは、上記と同義である] で表される化合物又はその塩とし、次に化合物(V)又は化合物(VI)とを反応させる方法。
【0028】
[項2] 化合物(II)と化合物(V)とを遷移金属触媒存在下で反応させて、化合物(III)を得、次いで化合物(VII)とを反応させて、化合物(I)を製造する、項1に記載の製造方法。
【0029】
[項3]化合物(II)と化合物(V)とを反応させて、化合物(III)を得、次いで化合物(VII)とを縮合剤存在下で反応させて、
化合物(I)を製造する、項1又は項2に記載の製造方法。
【0030】
[項4] 化合物(II)と化合物(VII)とを縮合剤存在下で反応させて、化合物(IV)を得、次いで化合物(V)とを反応させて、化合物(I)を製造する、項1に記載の製造方法。
【0031】
[項5] 化合物(II)と化合物(VII)とを反応させて、得られる化合物(IV)と化合物(V)とを遷移金属触媒存在下で反応させて、化合物(I)を製造する、項1又は項4に記載の製造方法。
【0032】
[項6] Rが、水素原子である、項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0033】
[項7] R及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−3アルキル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシである、項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【0034】
[項8] R、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、
及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、
が、水素原子、メチル又はエチルであり、
が水素原子である、項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0035】
[項9] 下記式(III):
【0036】
【化10】

【0037】
[式中、
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−又はシアノを表し、該アルキル又は該アルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、ここにおいて、R、R及びRのうちいずれか2つの基が、2’−メチル及び3’−メチルのときは、残りの基は水素原子以外の基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−、シアノ又はニトロを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
nは、0〜2の整数を表す]の化合物又はその塩基付加塩。
【発明の効果】
【0038】
本願製造法は、従来の製造方法に比べて、以下a)及びb)に示す点において工業的に優れた製造方法である。
a)光学活性な化合物を原料に用いて、かつ、異性化を生じることなく合成することにより、特許文献1と比較して工程数を短縮することが可能となる。
b)カラム等による光学分割の工程を行うことなく、大量合成が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の製造方法を以下に詳しく説明する。
【0040】
本発明の製造方法
化合物(III)の製法
【0041】
【化11】

【0042】
(式中、R〜R及びXは、上記項1に記載の定義と同義である。)
化合物(III)は、例えば化合物(II)と式(V)で表される置換フェニルボロン酸等のホウ素試薬又は式(VI)で表される置換フェニルトリブチルすず等とを有機金属試薬存在下クロスカップリング反応することにより製造できる。
【0043】
例えば、化合物(II)と各種置換フェニルボロン酸との反応は、通常、適当な溶媒中で、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムに代表されるパラジウム触媒等の遷移金属触媒下、クロスカップリング反応させることにより行われる。パラジウム触媒としては、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムなどの0価触媒、またはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム・ジクロリド、酢酸パラジウム、ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウム・ジクロリドなどの2価触媒を用いることができ、中でもテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム及びビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウムが好ましい。これらカップリング反応においては、上記試薬の他に炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)やリン酸カリウム等の無機塩基、あるいはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、さらには塩化リチウム、フッ化セシウム等の無機塩共存下で行うこともできる。
【0044】
各種ホウ素試薬等の使用量は、化合物(II)に対して通常0.8〜2当量であり、好ましくは、0.9〜1.5当量、さらに好ましくは、0.9〜1.2当量である。また、化合物(II)に対するパラジウム触媒等の遷移金属触媒の使用量は、化合物(II)に対して通常0.001〜0.5当量であり、好ましくは、0.005〜0.2当量、さらに好ましくは、0.01〜0.1当量である。
【0045】
溶媒の具体例としては、原料化合物の種類や用いる試薬の種類に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することが出来る。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは60〜150℃である。反応時間は、通常1〜48時間程度であり、好ましくは、2〜36時間、さらに好ましくは、3〜24時間である。
【0046】
化合物(II)は市販されているものを使用するか、公知の方法、例えば、J. Am. Chem. Soc., 31, 9024 (2002) に記載の方法に従って製造したものを使用することができる。各種ホウ素試薬等は市販されているものを使用するか、或いは公知の方法に従って製造したものを使用することができる。
【0047】
化合物(I)の製法(1)
【0048】
【化12】

【0049】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記項1に記載の定義と同義である。)
【0050】
化合物(I)は、化合物(III)と式(VII)で表されるアンモニア又はアミンとを反応させることにより製造できる。
【0051】
化合物(I)は、例えば化合物(III)とアンモニア又は各種アミンとを縮合剤の存在下で反応させることによって製造される。縮合剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・1塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスファート、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート メタンアミニウム、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、又は、これら縮合剤と、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、化合物(III)のアミド化反応は、化合物(III)を反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、活性エステル、酸無水物、酸ハライド等)に変換し、アンモニア又は各種アミンと反応させることによっても行うことができる。活性エステルの具体例としては、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル等が挙げられる。酸無水物の具体例としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、イソ吉草酸、ピバリン酸等との混合酸無水物が挙げられる。
【0053】
化合物(VII)において、R及びRが共に水素原子であるとき、すなわち、アンモニアであるとき、本反応の試薬としては、反応系内にアンモニアを発生することができる試薬であれば、特に限定されないが、例えば、アンモニアガス、アンモニア水溶液、アンモニアアルコール溶液、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。化合物(III)に対するアンモニア又は各種アミンの使用量は、化合物(III)に対して通常0.8〜2当量であり、好ましくは、0.9〜1.5当量、さらに好ましくは、0.9〜1.2当量である。また、化合物(III)に対する各種縮合剤等の使用量は、化合物(III)に対して通常0.8〜5当量であり、好ましくは、0.9〜3当量、さらに好ましくは、0.9〜2当量である。
【0054】
化合物(III)とアンモニア又は各種アミンとの反応は、溶媒中又は無溶媒下に行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。なお、アンモニア又は各種アミンは、水溶液又は塩酸塩等の酸付加塩の形で使用され、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。本反応は通常塩基の存在下で行われることもあり、使用される塩基の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、又は、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約−30℃〜約150℃、好ましくは約−10℃〜約70℃である。反応時間は、0.5時間〜24時間程度であり、好ましくは、0.5〜18時間、さらに好ましくは、0.5〜12時間である。
【0055】
化合物(IV)の製法
【0056】
【化13】

【0057】
(式中、R、R、R、R及びXは、上記項1に記載の定義と同義である。)
【0058】
化合物(IV)は、化合物(II)を用いて「化合物(I)の製法(1)」に記載した方法と同様の方法により製造することができる。
【0059】
化合物(I)の製法(2)
【0060】
【化14】

【0061】
(式中、R、R、R、R、R、R、R及びXは、上記項1に記載の定義と同義である。)
【0062】
化合物(I)は、化合物(IV)を用いて「化合物(III)の製法」に記載した方法と同様の方法により製造することができる。
【0063】
本明細書における用語について以下に説明する。
【0064】
「アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素を意味し、例えば、「C1−3アルキル」又は「C1−6アルキル」とは炭素原子数が1〜3又は1〜6の基をそれぞれ意味する。その具体例として、「C1−3アルキル」の場合には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等が、「C1−6アルキル」の場合には、前記に加えて、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0065】
「C3−6シクロアルキル」とは、炭素原子数が3〜6の単環式飽和炭化水素を意味する。その具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等が挙げられる。
【0066】
「C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル」とは、炭素数が3〜6の単環式飽和炭化水素が、炭素数1〜3の直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素上に結合する基を意味する。その具体例としては、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、1−シクロプロピルエチル、2−シクロプロピルエチル、1−シクロプロピルプロピル、2−シクロプロピルプロピル、1−シクロブチルエチル、2−シクロブチルエチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0067】
「C1−6アルコキシ」とは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数が1〜6のアルコキシを意味する。その具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0068】
「1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ」とは、上記アルコキシの1個ないし3個の置換可能な水素原子がフッ素原子で置換されたものを意味する。具体的には、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシ、4−フルオロブトキシ、4,4,4−トリフルオロブトキシ等が挙げられる。
【0069】
「C1−6アルキル−S(O)−」とは、下記の基が結合した直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数が1〜6のアルキルを意味する。nが0のときはアルキルチオ(例えば、メチルチオ、エチルチオ等)、nが1のときはアルキルスルフィニル(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル等)、nが2のときはアルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル等)をそれぞれ意味する。
【0070】
1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル(メチル、エチルを含む)、アルキル−S(O)−、アルコキシ、シクロアルキル及びシクロアルキル−アルキルの具体例としては、トリフルオロメチル、フルオロエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメトキシ、2−フルオロシクロプロピル、(2−フルオロシクロプロピル)メチル等が挙げられる。なお、アルキルの炭素数が1のときは、置換されてもよいフッ素原子の数は、3以下である。
【0071】
〜Rとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1−6アルキル、フッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−又はシアノが挙げられるが(該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよい)、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチルチオ、メタンスルホニル又はシアノが挙げられる。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノが挙げられ、さらに好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメチルが挙げられ、特に好ましくは、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチルが挙げられる。
【0072】
及びRとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−、シアノ又はニトロが挙げられるが(該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよい)、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル、エチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチルチオ、メタンスルホニル又はシアノが挙げられる。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル、エチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノが挙げられ、さらに好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシが挙げられ、特に好ましくは、水素原子又はフッ素原子が挙げられる。
【0073】
及びRとしては、水素原子、C1−6アルキル、C4−7シクロアルキルアルキル又はC3−6シクロアルキルが挙げられる(該アルキル、シクロアルキルアルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよい)。Rとして好ましくは、水素原子、メチル、エチル又はシクロプロピルが挙げられる。特に好ましくは、水素原子又はメチルが挙げられる。Rとして好ましくは、水素原子、メチル又はエチルが挙げられる。特に好ましくは、水素原子又はメチルが挙げられる。
【0074】
nとしては、0〜2の整数が挙げられるが、好ましくは、0又は2が挙げられる。特に好ましくは、2が挙げられる。
【0075】
Xとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフレート(CFSO−)が挙げられる。好ましくは、塩素原子、臭素原子が挙げられる。特に好ましくは、塩素原子が挙げられる。
【0076】
及びRとしては、水素原子又はC1−6アルキルが挙げられ、R及びRがアルキルのとき該アルキル同士は結合して環を構築していてもよい。好ましくは、水素原子又はメチルが挙げられ、さらに好ましくは、水素原子である。Mとしては、すず、亜鉛又はマグネシウムが挙げられ、好ましくは、すず又は亜鉛が挙げられ、さらに好ましくは、すずが挙げられる。
【0077】
なお、本明細書において記載の簡略化のために、次に挙げる略号を用いることもある。Me:メチル、t−:tert−、s−:sec−、i−:イソ−、THF:テトラヒドロフラン、NMP:N−メチルピロリドン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド(今回は使用なし)
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、化合物の同定は、NMRスペクトル(300MHz又は400MHz)等によって行った。また、光学純度(%ee)は、以下の条件における高速液体クロマトグラフィーで得られた測定結果(面積比)から算出した。
Chiral HPLC (ダイセル社製Chiralpak AS-H, 0.46cmI.D. x 25cmL, 移動相:Hex/i-PrOH/TFA=40/60/0.1、流量:1.0ml/min、温度:40℃、波長:254nm).
【実施例】
【0079】
実施例1
(2R)−ビフェニル−2−イル(ヒドロキシ)エタン酸の製造:
【0080】
【化15】

【0081】
窒素雰囲気下、R−(−)−2−クロロマンデル酸(500mg)、フェニルボロン酸(561mg)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(280mg)及び炭酸カリウム(1.50g)をDMF(5ml)中で混合して120℃で攪拌した。4時間後、反応液に水(10ml)を加えてセライトで濾過し、濾液をジエチルエーテル(5ml×2回)で洗浄した。水層に1mol/L塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチル(10ml×3回)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=50/50〜100/0)で精製して標記化合物(520mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 4.98 (1H, s), 5.64-5.89 (1H, br m), 7.22-7.28 (1H, m), 7.33-7.51 (8H, m), 12.48-12.73 (1H, br m).
【0082】
実施例2
(2R)−2−(ビフェニル−2−イル)−2−ヒドロキシエタンアミドの製造:
【0083】
【化16】

【0084】
実施例1の化合物(520mg)、炭酸アンモニウム(390mg)及び2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート メタンアミニウム(1.53g)のDMF(5ml)溶液に、トリエチルアミン(1.2ml)を加え、室温にて攪拌した。1時間後、反応液に水(25ml)を加え、酢酸エチル(10ml×3回)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して、溶媒を減圧留去し粗結晶を得た。得られた粗結晶をジエチルエーテルで洗浄して標記化合物(320mg、99.7%ee)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 4.92 (1H, d), 6.02 (1H, d), 7.24-7.26 (1H, m), 7.33-7.50 (8H, m), 7.57-7.60 (2H, m).
【0085】
実施例3
(2R)−ビフェニル−2−イル(ヒドロキシ)エタン酸の製造:
【0086】
【化17】

【0087】
(R)−2−クロロマンデル酸(10.0g)、フェニルボロン酸(9.8g)、炭酸カリウム(粉末)(22.2g)及びNMP(100ml)の混合液を窒素置換し、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(1g)を加え、窒素雰囲気下130℃に加熱した。1時間後、反応液を室温に戻し、水(300ml)を加え、不要物をろ去した。ろ液をトルエン(200ml×2回)で洗浄した後、水層を1N塩酸で酸性にし、酢酸エチル(300ml×3回)で抽出した。有機層を水(400ml×2回)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して、ろ液を減圧留去し、標記化合物(12.8g)を粗生成物として得た。
【0088】
実施例4
メチル (2R)−ビフェニル−2−イル(ヒドロキシ)アセテートの製造:
【0089】
【化18】

【0090】
実施例3の粗生成物(12.8g)をメタノール(200ml)に溶かし、0℃にて塩化アセチル(5.7ml)を滴下した後、室温にて20時間攪拌した。溶媒を留去し標題化合物を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.68 (3H, s), 5.23 (1H, s), 7.27-7.42 (5H, m).
【0091】
実施例5
(2R)−2−(ビフェニル−2−イル)−2−ヒドロキシエタンアミドの製造:
【0092】
【化19】

【0093】
実施例4の粗生成物をメタノール(200ml)に溶かし、0℃にてアンモニア水(300ml)を滴下した。滴下後、反応液を室温にて19時間攪拌した。メタノールを留去し、析出した結晶をろ取し、水で洗浄し、乾燥して粗結晶を得た。このものをイソプロパノール(80ml)で再結晶し、生成物8.10g(2段階66%収率)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明により、式(I)で表されるマンデル酸アミド誘導体及び式(III)又は式(IV)で表される中間体を、式(II)で表される安価な化合物から短工程で効率的に製造することができる。従って、工業的な生産にも対応できる製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):

[式中、
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−又はシアノを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、ここにおいて、R、R及びRのうちいずれか2つの基が、2’−メチル及び3’−メチルのときは、残りの基は水素原子以外の基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−、シアノ又はニトロを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル又はC3−6シクロアルキルを表し、該アルキル、シクロアルキル−アルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
nは、0〜2の整数を表す]で表される化合物を製造する方法であって、下記の方法を特徴とする製造方法;
(1)下記式(II):

[式中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフレート(CFSO−)を表し、R及びRは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩と、
下記式(V):

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はC1−6アルキルを表し、ここにおいて、R及びRがアルキルのとき該アルキル同士は結合して環を構築していてもよく、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩と、若しくは、
下記式(VI):

[式中、Mは、すず、亜鉛又はマグネシウムを表し、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とを反応させて、
下記式(III):

[式中、R〜Rは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とし、
下記式(VII):

[式中、RおよびRは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とを反応させるか、又は、
(2)化合物(II)と化合物(VII)とを反応させて、
下記式(IV):

[式中、R〜R及びXは、上記と同義である]で表される化合物又はその塩とし、次に化合物(V)又は化合物(VI)とを反応させる方法。
【請求項2】
化合物(II)と化合物(V)とを遷移金属触媒存在下で反応させて、化合物(III)を得、次いで化合物(VII)とを反応させて、化合物(I)を製造する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
化合物(II)と化合物(V)とを反応させて、化合物(III)を得、次いで化合物(VII)とを縮合剤存在下で反応させて、
化合物(I)を製造する、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
化合物(II)と化合物(VII)とを縮合剤存在下で反応させて、化合物(IV)を得、次いで化合物(V)とを反応させて、化合物(I)を製造する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
化合物(II)と化合物(VII)とを反応させて、得られる化合物(IV)と化合物(V)とを遷移金属触媒存在下で反応させて、化合物(I)を製造する、請求項1又は請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
が、水素原子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−3アルキル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、
及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、
が、水素原子、メチル又はエチルであり、
が水素原子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
下記式(III):


[式中、
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−又はシアノを表し、該アルキル又は該アルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、ここにおいて、R、R及びRのうちいずれか2つの基が、2’−メチル及び3’−メチルのときは、残りの基は水素原子以外の基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1−6アルコキシ、C1−6アルキル−S(O)−、シアノ又はニトロを表し、該アルキル又はアルキル−S(O)−は、1〜5個のフッ素原子で置換されていてもよく、
nは、0〜2の整数を表す]の化合物又はその塩基付加塩。

【公開番号】特開2013−100279(P2013−100279A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231882(P2012−231882)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】