説明

ミシンの糸巻き装置

【課題】巻き始めの糸を係止して、保持力を高めたクランプ部でも容易に糸を挟持することができるミシンの糸巻き装置を実現する。
【解決手段】ミシンの糸巻き装置10において、巻き始めの糸Tの一端を回転部材2に係止する前に、その糸Tを抵抗付与部材5に掛架することで、回転部材2の糸係止部2aに向けて引き出す糸Tに抵抗を加えることができるので、回転部材2の糸係止部2aとクランプ部材7の糸掛部7aの間の締め付けがきつく、糸係止部2aと糸掛部7aの間に糸Tを挟み込み難い状態であっても、抵抗付与部材5に掛架された糸Tを糸係止部2aに向けて引き出す際には、その糸Tに抵抗付与部材5から抵抗が付与されることにより糸Tが繰り出され過ぎることはなく、糸Tに適切に力を掛けることができ、糸Tを糸係止部2aと糸掛部7aの間に容易に挟み込んで係止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの糸巻き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンモータにより回転駆動されるミシンの主軸から駆動力を得て、ボビンに下糸を巻き付けるミシンの糸巻き装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この糸巻き装置は、糸を保持するクランプ部を備えており、そのクランプ部に糸の一端を挟み込み、ボビンを糸巻軸にセットして回転させることで、糸の巻き付けを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−183706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この糸巻き装置で、巻き始めを硬く巻いて糸巻き量を増加させようとした場合、クランプ部の保持力が弱いため、巻き始めの糸の一端がクランプ部から引き出されてしまい、巻き始めを硬く巻くことができなかった。
その対策として、クランプ部の保持力を高めることで、巻き始めの糸がクランプ部から引き出されないようにすることがある。
しかしながら、保持力を高めたクランプ部に糸を挟み込むときには、糸供給源側の糸により強い張力が掛かっている必要がある。すなわち、糸に掛かる負荷(張力)が従来の糸調子によるものだけでは、糸供給源から糸が繰り出されるだけとなり、糸をクランプ部に挟持することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、巻き始めの糸を係止して、保持力を高めたクランプ部でも容易に糸を挟持することができるミシンの糸巻き装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ミシンの糸巻き装置であって、
ミシン機枠に固定されたベース材と、
前記ベース材に回動可能に支持されると共に、ボビンを着脱可能に保持する軸部を有し、糸巻き時に回転する回転部材と、
前記回転部材に装着され、所定の糸供給源から供給されて前記ボビンに巻かれる糸の一端側を前記回転部材に係止するために、その糸を前記回転部材との間に挟み込むクランプ部材と、
前記糸が前記回転部材に係止される前に、前記糸供給源から前記クランプ部材に向かう前記糸を屈曲または挟持することにより、前記糸に一時的に抵抗を加える抵抗付与部材と、
を備えたこと特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記抵抗付与部材は、前記糸供給源から前記回転部材および前記クランプ部材に向かう前記糸を屈曲させるように案内する案内部と、前記案内部を通過した前記糸を前記ベース材の係合面との間で挟持する挟持部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記軸部に対して接離可能に軸支され、前記軸部に保持された前記ボビンに巻かれた糸に当接して、その糸巻き量の厚みに応じて糸巻き量が適量になったことを検出する糸巻き量検出部材を備え、
前記抵抗付与部材は、前記糸巻き量検出部材と一体に回動するように軸支されており、前記ボビンに糸巻きを開始する際に、前記糸巻き量検出部材を前記軸部側に回動させることに伴い、前記抵抗付与部材が回動して当該抵抗付与部材に掛架されていた前記糸が外れる配置に切り替わることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記糸巻き量検出部材が、前記ボビンに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出した際に、前記抵抗付与部材を所定の回転角度で止める当接面を前記ベース材に形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記糸巻き量検出部材が、前記ボビンに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出した際に、前記回転部材を所定の回転角度で止めるストッパ機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2に記載の発明によれば、ミシンの糸巻き装置において糸が回転部材に係止される前に、抵抗付与部材が糸に一時的に抵抗を加えるため、回転部材に向けて糸を糸供給源側から引き出す際に、糸が繰り出され過ぎることはないので、その糸に適切に力を掛けることができ、糸を回転部材とクランプ部材の間に容易に挟み込むことができる。
そして、巻き始めの糸の一端を回転部材との間に挟み込むためのクランプ部材を強力なものに変えても、回転部材に係止する糸に抵抗付与部材が抵抗を加えることによって、その糸が繰り出され過ぎないように調整でき、片手でも確実に糸を回転部材とクランプ部材の間に挟み込むことが可能になる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ミシンの糸巻き装置において軸部に保持されたボビンへの糸の巻き付けを開始する際、糸巻き量検出部材をボビンに巻かれる糸の周面に当接させるために軸部側に回動させると、その糸巻き量検出部材と一体に抵抗付与部材が回動してその抵抗付与部材に掛架されていた糸が外れるので、速やかに糸の巻き付けを行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、簡単な構成で抵抗付与部材を所定の回転角度で止めることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、糸巻き量検出部材がボビンに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出することに伴い、ストッパ機構が回転部材を所定の回転角度で止めることで、常に同じ姿勢で回転部材を止めることができる。
そして、所定の回転角度であって同じ姿勢で止まった回転部材であれば、その回転部材における糸を係止する部分が常に同じ配置になっているので、次回の糸巻きを行う際に、回転部材の角度を調節することなく糸を回転部材に係止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】糸巻き装置を備えたミシンを示す正面図である。
【図2】ミシンの糸巻き装置を示す斜視図である。
【図3】糸巻き装置の抵抗付与部材に糸を掛架した状態を示す説明図である。
【図4】抵抗付与部材から糸を外して糸巻きを開始する過程を示す説明図であり、抵抗付与部材の案内部から糸が外れる状態を示す説明図(a)と、抵抗付与部材の挟持部から糸が外れる状態を示す説明図(b)と、回転部材に保持されたボビンに糸巻きを開始する状態を示す説明図(c)である。
【図5】ミシンの糸巻き装置でボビンに糸を巻き終えた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明に係るミシンの糸巻き装置10を備えるミシン100を示す正面図である。
ミシン100は、図1に示すように、駆動源となる図示しないミシンモータから主軸(図示省略)を介して駆動力が伝達され、上糸が通された縫い針101を上下に駆動する針駆動機構、その針駆動機構に同期して針板102上に載置される布等の被縫製物を布押さえ103で押さえつつ搬送する布送り機構、針板102の下方において上糸を下糸に交絡させる釜機構等を備えている。これらミシンの機構は従来公知のものと同様であるので、本実施形態では詳述しない。
このミシン100の釜機構における釜に下糸が巻かれたボビンが収容されるようになっており、そのボビンに予め下糸を巻き付けるための糸巻き装置10がミシン100に備えられている。
【0018】
ミシンの糸巻き装置10は、図1に示すように、ミシン100の機枠の側面に配設されており、その糸巻き装置10の近傍には糸調子20が配設されている。
【0019】
糸巻き装置10は、図2に示すように、ミシン100の機枠に固定された基材であるベース材1と、ベース材1に回転可能に支持される回転部材2と、ベース材1に回動可能に支持されるレバー3と、レバー3に固定されてそのレバー3と一体に回動する糸巻き量検出部材4と抵抗付与部材5とを備えている。
なお、ベース材1は、ミシン100の機枠表面に固定されており、後述する駆動軸6aと支持軸3aは、ミシン100の機枠内に延在している。
また、ベース材1には、レバー3回動方向に沿って形成された係合面1aと、係合面1aに連続すると共に係合面1aと直交する当接面1bを有している。当接面1bは、図2、図3に示すように、糸巻き量検出部材4が、ボビンBに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出して、糸巻き量検出部材4と抵抗付与部材5が反時計方向に回転した際に、抵抗付与部材5に当接して、糸巻き量検出部材4と抵抗付与部材5を所定の回転角度で係止する。さらに、係合面1aは、所定の回転角度で係止された抵抗付与部材5の挟持部5bに対向して配置され、案内部5aを通過した糸Tを挟持することができる。
【0020】
回転部材2は、図2に示すように、略円盤形状を呈しており、ボビンBを着脱可能に保持する軸部6を有している。この回転部材2は、軸部6を軸心にして回転部材2を回転させる駆動軸6aに連結され、糸巻き時に回転する。駆動軸6aは、図示しないミシンモータにより回転駆動される主軸(図示省略)の駆動力を得て、回転部材2を回転させるようになっている。
また、回転部材2には、回転部材2との間に糸を挟み込むクランプ部材7が固着されている。この回転部材2の外周側には僅かな段差がつけられた糸係止部2aが設けられており、クランプ部材7の突出端には略V字型の切欠が形成された糸掛部7aが設けられており、糸係止部2aに糸掛部7aを合わせた配置にクランプ部材7が取り付けられている。
そして、所定の糸供給源(例えば、糸調子20側)から供給されて、軸部6に保持されているボビンBに巻かれる糸の一端側を回転部材2とクランプ部材7の間に挟み込み、その糸を回転部材2に係止するようになっている。なお、本実施形態では、糸を回転部材2とクランプ部材7とで挟む保持力を高めるために、回転部材2とクランプ部材7の間の締め付けをきつく設計してある。
【0021】
レバー3は、図2に示すように、支持軸3aに軸支されており、その支持軸3aを軸心に回動する。
糸巻き量検出部材4は、図2に示すように、レバー3の表面側に固定されており、レバー3と一体に回動する。糸巻き量検出部材4は、レバー3が時計回りに回動した際に、軸部6に近接した配置に切り替わり、軸部6に保持されたボビンBに巻かれた糸に当接する糸押え4aを有している。
抵抗付与部材5は、図2に示すように、ベース材1とレバー3の間に配されるように、レバー3の裏面側に固定されており、レバー3と一体に回動する。抵抗付与部材5は、糸供給源(例えば、糸調子20側)から回転部材2の糸係止部2aに向かう糸を屈曲させるように案内する案内部5aと、その案内部5aを通過した糸をベース材1の係合面1aとの間に挟む挟持部5bとを有している。
案内部5aは、球面を有する略ドーム形状を呈しており、その球面部分で糸が滑りやすくなっているが、この案内部5aの一部に糸を掛けるための糸溝5c(図3参照)が形成されており、その糸溝5c部分に糸を掛けることができるようになっている。
そして、抵抗付与部材5は、ボビンBに巻かれる糸が回転部材2に係止される前に、この抵抗付与部材5に掛架された糸に一時的に抵抗を加えるようになっている。
なお、このレバー3は、例えば、支持軸3aを介して図示しない付勢機構に連結されており、その付勢機構によるバネの付勢力によってレバー3が回動するようになっている。例えば、レバー3が所定の支点より時計回り方向に位置する際には、そのレバー3が時計回りに回動するように付勢され、レバー3が所定の支点より反時計回り方向に位置する際には、そのレバー3が反時計回りに回動するように付勢されるようになっている。ここでのレバー3の支点とは、軸部6に保持されているボビンBに適量の糸巻き量で巻き付けられた糸に、糸巻き量検出部材4の糸押え4aが当接する状態に回動したレバー3の配置に相当する。
【0022】
また、図2に示すように、駆動軸6aには、係合溝8aが形成されたカム部材8が配設されており、支持軸3aには、係合爪9aが形成された爪部材9が配設されている。
そして、レバー3が反時計回りに回動しきった配置(図2の配置)で、レバー3とともに反時計回りに回動した爪部材9がカム部材8の周面に接触するようになっており、爪部材9の係合爪9aがカム部材8の係合溝8aに入り込むことで、カム部材8とともに駆動軸6aの回転を止めるようになっている。例えば、係合爪9aが係合溝8aに入り込んで爪部材9がカム部材8に係合した際、図示しないミシンの主軸の駆動を停止することなく、その主軸からの駆動力が駆動軸6aに伝達されることを断ち、駆動軸6aとともに回転部材2の回転を止めるようになっている。なお、爪部材9がカム部材8に係合したタイミングで、図示しないミシンの主軸の駆動を停止することで、駆動軸6aとともに回転部材2の回転を止めてもよい。
特に、駆動軸6aに配設されたカム部材8と支持軸3aに配設された爪部材9とは、回転部材2を止めるストッパ機構として機能するようになっており、このストッパ機構は、回転部材2の回転を停止させる際、回転部材2の糸係止部2aが上方となる所定の回転角度で回転部材2を止めることができる。
【0023】
糸調子20は、例えば、一対の糸調子皿と、互いの糸調子皿同士を押圧するバネと、バネの押圧力を調整する調整ネジ等を備えている。
この糸調子20は、一対の糸調子皿の間を通過する糸に負荷を掛けて、糸に付与する張力を調整するようになっている。
【0024】
次に、ミシンの糸巻き装置10によって、ボビンBに糸Tを巻き付ける際の手順について説明する。
【0025】
ミシン100における糸巻き装置10は、図2に示すように、爪部材9とカム部材8が係合しており、回転部材2の糸係止部2aが上方となる所定位置(回転角度)に止まった停止状態になっている。また、レバー3が反時計回りに回動しきったこの配置において、抵抗付与部材5はベース材1と接しており、抵抗付与部材5の糸溝5cは案内部5aにおける図中左下側の面にある。
そして、所定の糸供給源から供給された糸Tを糸調子20に通し、その糸調子20から糸巻き装置10に向かって糸Tを引く。
【0026】
まず、図3に示すように、糸調子20側から引き出した糸Tを、抵抗付与部材5の案内部5aの糸溝5cに掛ける。
この案内部5aに糸Tを掛けた後、案内部5aよりも上にある挟持部5b側へ糸Tを引き、その糸Tを抵抗付与部材5の挟持部5bとベース材1との間に挟む。
ここで、抵抗付与部材5の案内部5aは、回転部材2の糸係止部2aよりも下側に位置しているので、糸調子20から糸係止部2aに向かう糸Tが案内部5aによって屈曲されるようになる。また、案内部5aから挟持部5bに向かった糸Tは、抵抗付与部材5における案内部5aのある表面から反対側の裏面に回り込み、挟持部5bとベース材1との間で押さえられるようになる。こうして抵抗付与部材5に糸Tが略N字形状に掛架されるようになっている。
【0027】
このように抵抗付与部材5の案内部5aと挟持部5bに掛架した糸Tを回転部材2の糸係止部2aに向かって引き、その糸Tの一端を糸係止部2aと糸掛部7aの間に挟み込む。
その際、糸Tは抵抗付与部材5に略N字形状に掛架されているので、その引かれた糸Tは抵抗付与部材5から摩擦などの抵抗が付与されることになって、糸調子20側から糸Tを繰り出し難くなっている。
そのため、回転部材2の糸係止部2aとクランプ部材7の糸掛部7aの間の締め付けがきつく、糸係止部2aと糸掛部7aの間に糸Tを挟み込み難い状態であっても、強く引いた糸Tが繰り出され過ぎることはなく、その糸Tが弛むようなことはないので、糸Tに適切に力を掛けて、糸Tを糸係止部2aと糸掛部7aの間に容易に挟み込むことができる。
そして、回転部材2の糸係止部2aとクランプ部材7の糸掛部7aの間に糸Tの一端を係止した後、ボビンBを回転部材2の軸部6に取り付ける。
【0028】
次いで、ボビンBへの糸Tの巻き付けを開始するため、レバー3を時計回りに回動させて、爪部材9とカム部材8との係合を解除する。なお、レバー3を所定の支点より時計回り方向に回動させれば、図示しない付勢機構によってレバー3は回動されて、糸巻き量検出部材4の糸押え4aがボビンBの中心軸に当接するまで、レバー3と一体に糸巻き量検出部材4と抵抗付与部材5が回動する。
このレバー3の時計回りの回動に関して、図4(a)(b)(c)に基づき、段階的に説明する。
【0029】
レバー3が時計回りに回動して、抵抗付与部材5が時計回りに回動することに伴い、抵抗付与部材5の案内部5aの配置が切り替わり、案内部5aとともに糸溝5cの向きが変わる。そして、図4(a)に示すように、案内部5aの配置が切り替わることによって、まず、案内部5aに掛かった糸Tの位置がずれて、案内部5aの糸溝5cから糸Tが抜ける。その糸溝5cから抜けた糸Tは、案内部5aの球面部分を滑るようにして、案内部5aから外れる。
【0030】
さらに、レバー3が時計回りに回動すると、図4(b)に示すように、ベース材1から抵抗付与部材5が離間して隙間が開くことで、抵抗付与部材5の挟持部5bとベース材1とに挟まれていた糸Tが外れる。
このようにレバー3が時計回りに回動することで、糸巻き量検出部材4が軸部6のボビンB側に回動するとともに抵抗付与部材5も回動し、その抵抗付与部材5に掛架されていた糸Tが外れる配置に切り替わる。そして、回転部材2の糸係止部2aに係止された糸Tには、糸調子20によって張力が付与されるようになる。
【0031】
このレバー3が時計回りに回動しきると、図4(c)に示すように、レバー3とともに時計回りに回動した糸巻き量検出部材4の糸押え4aがボビンBの中心軸に当接する。また、レバー3とともに時計回りに回動した爪部材9がカム部材8から離間し、その係合が解除されて、図示しないミシンの主軸の駆動力が駆動軸6aに伝達され、駆動軸6aが回転駆動する。
【0032】
次いで、駆動軸6aの回転駆動によって、回転部材2及び軸部6が回転して、回転部材2及び軸部6とともに回転するボビンBに糸Tが巻き付けられる。
この回転部材2が回転してボビンBに糸Tが巻き付けられる過程で、糸巻き量検出部材4の糸押え4aはボビンBに巻かれた糸Tに当接し続けており、糸巻き量の厚みが増すことに応じて、糸押え4はボビンBの中心軸から離間するように押し返される。
そして、ボビンBの糸巻き量が徐々に増すことに連れて、糸押え4は回転部材2の軸部6から離間することで糸巻き量検出部材4が反時計回りに回動し、その糸巻き量検出部材4とともにレバー3も反時計回りに回動される。
このボビンBに適量となる糸巻き量の糸Tが巻き付けられた際、そのボビンBに巻かれた糸Tの周面に当接している糸巻き量検出部材4(糸押え4)と一体に回動したレバー3が所定の支点に達するので、図示しない付勢機構によるレバー3の付勢方向が時計回りから反時計回りに切り替わる。そして、図5に示すように、レバー3と一体に糸巻き量検出部材4と抵抗付与部材5が反時計回りに回動するとともに、爪部材9も反時計回りに回動して、爪部材9とカム部材8とが係合する。つまり、ボビンBに巻かれた糸Tの周面に当接していた糸巻き量検出部材4の糸押え4aが、そのボビンBにおける糸巻き量が適量に達したことを検出したことに伴い、図示しない付勢機構によるレバー3の付勢方向が時計回りから反時計回りに切り替わり、爪部材9とカム部材8とが係合するようになっている。
この爪部材9とカム部材8が係合したことで、回転部材2の回転が止まってボビンBへの糸巻きが終了する。そして、回転部材2の糸係止部2aが上方となる所定の回転角度で止まった状態で、糸巻き装置10は停止状態となる。
こうしてミシンの糸巻き装置10におけるボビンBへの糸巻き作業が完了する。
【0033】
以上のように、ミシンの糸巻き装置10は、巻き始めの糸Tの一端を回転部材2に係止する前に、その糸Tを抵抗付与部材5に掛架することで、回転部材2の糸係止部2aに向けて引き出す糸Tに抵抗を加えることができる。
そして、回転部材2の糸係止部2aとクランプ部材7の糸掛部7aの間の締め付けがきつく、糸係止部2aと糸掛部7aの間に糸Tを挟み込み難い状態であっても、抵抗付与部材5に掛架された糸Tを糸係止部2aに向けて引き出す際には、その糸Tに抵抗付与部材5から抵抗が付与されることにより糸Tが繰り出され過ぎることはないので、糸Tに適切に力を掛けることができ、糸Tを糸係止部2aと糸掛部7aの間に容易に挟み込んで係止することができる。
つまり、糸巻き装置10において巻き始めの糸Tを挟み込むためのクランプ部材7を強力なものに変えても、回転部材2に係止する糸Tに抵抗付与部材5が抵抗を加えることによって、その糸Tが繰り出され過ぎないように調整でき、片手でも確実に糸Tを糸係止部2aと糸掛部7aの間に係止することが可能になる。
【0034】
また、この糸巻き装置10においてボビンBへの糸Tの巻き付けを開始する際、糸巻き量検出部材4の糸押え4aをボビンBの中心軸に巻かれる糸Tの周面に当接させるために、レバー3を時計回りに回動させることで、そのレバー3とともに抵抗付与部材5を回動させて、その抵抗付与部材5に掛架されていた糸Tを外すことができる。
つまり、ボビンBへの糸巻きを開始するようにレバー3を回動させれば、糸Tに抵抗を加えていた抵抗付与部材5から糸Tが外れるので、ボビンBに糸Tを巻き付ける際には、糸Tは糸調子20を通じて繰り出されるようになり、その糸調子20によって糸Tに付与される張力に応じた糸巻きを行うことができる。
そして、ボビンBに巻かれた糸Tの周面に当接している糸巻き量検出部材4の糸押え4aが、そのボビンBにおける糸巻き量が適量に達したことを検出すると、回転部材2の回転が止めてボビンBへの糸巻きが終了するので、この糸巻き装置10は適量の糸TをボビンBに巻くことができる。
【0035】
特に、糸巻き装置10のクランプ部材7を従来よりも強力なものにすることができるので、従来よりも強い張力を付与して糸Tを巻くことができ、糸TをボビンBにきつく巻き付けることによって、ボビンBに対する糸巻き量を増加させることができる。その結果、ミシン100におけるボビンBの交換回数を減らしてミシン100の稼働効率を上げることができ、そのミシン100の生産性の向上を図ることが可能になる。
【0036】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ベース材
1a 係合面
1b 当接面
2 回転部材
2a 糸係止部
3 レバー
3a 支持軸
4 糸巻き量検出部材
4a 糸押え
5 抵抗付与部材
5a 案内部
5b 挟持部
5c 糸溝
6 軸部
6a 駆動軸
7 クランプ部材
7a 糸掛部
8 カム部材(ストッパ機構)
8a 係合溝
9 爪部材(ストッパ機構)
9a 係合爪
10 糸巻き装置(ミシンの糸巻き装置)
20 糸調子
100 ミシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン機枠に固定されたベース材と、
前記ベース材に回動可能に支持されると共に、ボビンを着脱可能に保持する軸部を有し、糸巻き時に回転する回転部材と、
前記回転部材に装着され、所定の糸供給源から供給されて前記ボビンに巻かれる糸の一端側を前記回転部材に係止するために、その糸を前記回転部材との間に挟み込むクランプ部材と、
前記糸が前記回転部材に係止される前に、前記糸供給源から前記クランプ部材に向かう前記糸を屈曲または挟持することにより、前記糸に一時的に抵抗を加える抵抗付与部材と、
を備えたこと特徴とするミシンの糸巻き装置。
【請求項2】
前記抵抗付与部材は、前記糸供給源から前記回転部材および前記クランプ部材に向かう前記糸を屈曲させるように案内する案内部と、前記案内部を通過した前記糸を前記ベース材の係合面との間で挟持する挟持部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のミシンの糸巻き装置。
【請求項3】
前記軸部に対して接離可能に軸支され、前記軸部に保持された前記ボビンに巻かれた糸に当接して、その糸巻き量の厚みに応じて糸巻き量が適量になったことを検出する糸巻き量検出部材を備え、
前記抵抗付与部材は、前記糸巻き量検出部材と一体に回動するように軸支されており、前記ボビンに糸巻きを開始する際に、前記糸巻き量検出部材を前記軸部側に回動させることに伴い、前記抵抗付与部材が回動して当該抵抗付与部材に掛架されていた前記糸が外れる配置に切り替わることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの糸巻き装置。
【請求項4】
前記糸巻き量検出部材が、前記ボビンに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出した際に、前記抵抗付与部材を所定の回転角度で止める当接面を前記ベース材に形成したことを特徴とする請求項3に記載のミシンの糸巻き装置。
【請求項5】
前記糸巻き量検出部材が、前記ボビンに巻き付けられた糸巻き量が適量になったことを検出した際に、前記回転部材を所定の回転角度で止めるストッパ機構を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のミシンの糸巻き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105837(P2012−105837A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257385(P2010−257385)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】