説明

ミシン

【課題】 下糸残量を正確に把握して縫いを実行できるミシンを提供する。
【解決手段】
形状の縫製或いは色替えまでに必要な下糸量を縫い目データ記憶装置2のデータに基づいて算出し、下糸残量測定装置3により下糸残量を測定し、下糸不足予測装置4により下糸不足位置を予測する。下糸残量が下糸量下限値未満の場合、告知装置8にその旨の告知をさせる。下糸残量が必要下糸量よりも大きい場合、通常の縫製と同様に色替え位置で自動停止し、終了する。
下糸残量が必要下糸量よりも少ない場合、停止位置決定装置5は途中停止位置を決定し、ここでミシンの稼働を停止して、下糸残量を再度測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンの下糸量を検出し、その絶対的不足や、上糸交換に伴う色替えまでに必要な下糸量の不足、などを作業者に告知することが従来から行われている。
この下糸量の検出は、ミシン稼働中に行うことは難しく、ミシン停止中に行うように構成されているのが普通である。そして縫製開始時に下糸量を検出し、該検出量に基づいて、下糸不足の予測と告知を行っている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−329287
【特許文献2】特開平6−182070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、縫製開始時の1回の下糸量検出に基づく下糸不足予測であるため、誤差が大きく、残量があるにも関わらず、不足の告知をしたり、残量がなくなるまで告知をしなかったりする不具合が多かった。そのため、不必要な下糸交換作業を行ったり、或いは空縫いが生じたりする問題が生じていた。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、縫製すべき形状の縫製に必要な縫い目データを与える縫い目データ付与装置と、下糸残量を測定する下糸残量測定装置と、該下糸残量が測定された時、該下糸残量が所定の下限下糸量未満であるか否か、下限下糸量以上である場合は更に前記縫い目データと該下糸残量とから前記形状を縫製するに下糸が不足するか否か予測し、不足する場合には下糸不足位置を予測する下糸不足予測装置と、前記下糸不足位置に基づいて、縫いを停止すべき位置を決定する停止位置決定装置と、前記停止位置に達した時にミシンを中途停止させる中途停止制御装置と、前記下糸が下限下糸量未満である場合に、その旨を告知する告知装置と、前記下糸残量測定装置に、縫製開始時と前記中途停止時に下糸残量を測定させ、下糸が下限下糸量以上である場合には、ミシンを稼働させ、前記中途停止中の時は停止を解除してミシンを再稼働させる、制御装置と、を備えたことを特徴とする。
前記停止位置決定装置は、縫製開始後の1回目においては、下糸不足位置よりも縫い目数の少ない手前位置に停止位置を決定する、ことが望ましい。また、2回目以降の場合には、下糸不足位置を停止位置に決定することが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のミシンによれば、縫製開始時に下糸が不足することが予想されるときは、途中でミシンを自動停止させて、下糸残量を測定し、その時の下糸残量に応じて告知或いは縫いの継続を判断するため、正確に下糸残量を把握した縫製が可能になり、不要な下糸交換作業や空縫いなどを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の構成と動作を示す説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態は、刺繍装置を備えたミシンに本発明を適用した例である。
図1において制御装置1はミシン全体の制御を行っており、外部入出力装置90を介してDCモータドライバ93、DCモータ94、縫い機構95と接続し、縫いを実行する。また、XYモータドライバ96、XYモータ97により刺繍枠を移動させて刺繍縫いも行えるように構成されている。更に、振幅/送りモータドライバ98と振幅/送りモータ99によりジグザグ縫いを行えるようになっている。また表示装置91、タッチパネル92、を備え作業者が種々の指令を入力できるように構成されている。
【0009】
制御装置1には縫い目データ記憶装置2が接続されており、縫製すべき模様などの縫い目データが記憶されている。この縫い目データは針落ち点の位置情報が含まれており、この縫い目データから縫製に必要な下糸量を算出できるようになっている。
下糸残量測定装置3は、ボビンに巻かれた下糸の量を測定する。この実施形態では、機械的に測定する構成になっており、ミシン停止時に測定できるように構成されている。制御装置1は、下糸残量測定装置3に指令を出して、縫製の開始時点で下糸量を測定させ、また中途停止時に、その時点の下糸量(残量)を測定させるように構成されている。中途停止時の測定については後述する。
なお、下糸残量測定装置3により測定される下糸量は誤差があるため、予めこの誤差を見込んで、測定された下糸量よりも所定パーセント少ない値を下糸残量とすることが可能である。
【0010】
下糸不足予測装置4は、下糸残量測定装置3で測定された下糸残量が、縫製継続不可能な下限下糸量未満か否かを最初に判断する。そして下限下糸量以上の場合、縫い目データ記憶装置2の縫い目データと下糸残量測定装置3で測定した下糸残量に基づいて、縫製すべき模様等の形状を当該下糸残量で縫い完成できるか否か予測する。また、該下糸残量で模様のどこまで縫えるのかを予測する。具体的には、当該模様を縫製可能な針数(針落ち点の数)を予測する。即ち、模様のどの部分(位置)まで縫えるかを予測する。以下下糸不足予測装置4で予測する縫製可能な針数、針落ち点の数などをすべて「位置」と表現する。また、下糸残量により縫製可能な位置、即ち下糸残量が不足する位置を下糸不足位置と称する。
なお、この実施形態では、ボビンに完全に下糸がなくなる状態ではなく、所定の長さ、例えば4mなどの基準を設け、該長さ以下に下糸残量がなった時に、これを下限下糸量としている。下糸残量が下限下糸量に達した時に縫製不可と判断し、この時の位置を下糸不足位置と判断している。
【0011】
制御装置1は、下糸不足予測装置4で予測した位置、或いはその手前でDCモータドライバ93とXYモータドライバ96を制御してミシンの稼働を中途停止させるように構成されている。
停止位置決定装置5は、中途停止させる位置を決定するもので、下糸不足予測装置4で予測した位置をそのまま停止位置とするか或いはその手前で停止するかを決定する。この実際形態では、縫製開始後或いは色替えして縫製を再開した後の1回目の中途停止を下糸不足予測装置4で予測した不足位置の手前に決定するように構成されている。具体的には、下糸不足位置の70パーセント手前の位置を1回目の停止位置としている。
【0012】
縫い目位置検出装置6は進行中の模様縫いの縫い目位置を検出するもので、停止位置決定装置5で決定された停止位置に到来したことを検出する。中途停止/再稼働装置7は縫い目位置検出装置6の停止位置検出に基づいて、停止位置に到来した時点で、制御装置1を介してDCモータ94、XYモータ97を停止し、ミシン稼働を中途停止させ、また再稼働させるように構成されている。
【0013】
制御装置1は、中途停止/再稼働装置7によりミシンが中途停止すると、下糸残量測定装置3に中途下糸残量を測定させ、下糸不足予測装置4にこの測定した中途下糸残量により、形状の未縫製部分の縫製が可能か否か、予測させる。
下糸残量が下限下糸量未満の場合には、制御装置1は縫製継続不可と判断し、告知装置8にその旨を告知させ、作業者に糸替えを促すようになっている。
下糸残量が下限下糸量以上の場合には、中途停止/再稼働装置7にミシンの再稼働をさせ、下糸不足予測装置4により予測した次の中途停止位置まで縫製を継続させるように構成されている。
【0014】
図2は縫製動作を模式的に示す説明図であり、これに基づいて上記構成を更に詳説する。
いま縫製すべき模様などの形状の或る色の縫製が完了するまで、即ち色替えまでに260針が必要な場合を例にとって、説明する。
(A)に示すように、下糸残量測定装置3における下糸残量測定値が15mだとし、下糸不足予測装置4において対象形状を150針まで縫えると予測されたとする。即ち150針目が下糸不足位置である。1回目の停止については停止位置決定装置5は150針目の手前の所定の位置で中途停止位置を決定する。1回目は、下糸残量測定装置3における下糸残量測定値に誤差が生じやすいためである。いま70パーセントの位置で中途停止位置を決定したとすると、105針目が途中停止位置である。
下糸残量測定装置3による測定後、中途停止/再稼働装置7はミシンを再稼働させ、縫いを再開する。
なお、縫製開始時の下糸残量が色替えまでの260針目を上回る場合には、制御装置1は途中停止を行わせずに、縫製完了(色替え)まで縫製を継続させるように構成されている。
なお、下糸残量と必要下糸量を比較する場合には、誤差などを見込んで、下糸残量の所定パーセント以下の値を基に比較するのが望ましい。
【0015】
(B)に示すように縫い目位置検出装置6が105針目を検出すると、中途停止/再稼働装置7は該位置でミシンを停止させる。停止後制御装置1は下糸残量測定装置3に途中下糸残量を測定させ、この途中下糸残量が8mであったとする。この下糸残量に基づいて下糸不足予測装置4は下糸不足位置を再度予測し、これが185針目であったとする。停止位置決定装置5は今度は下糸不足位置をそのまま途中停止位置として決定する。下糸残量測定装置3による測定後、中途停止/再稼働装置7はミシンを再稼働させ、縫いを再開する。
【0016】
(C)に示すように、次に縫い目位置検出装置6が185針目を検出すると、中途停止/再稼働装置7は該位置でミシンを停止さる。停止後制御装置1は下糸残量測定装置3に途中下糸残量を測定させ、この途中下糸残量が5mであったとする。この下糸残量に基づいて下糸不足予測装置4は下糸不足位置を再度予測し、これが235針目であったとすると、停止位置決定装置5は今度は下糸不足位置をそのまま途中停止位置として決定する。
下糸残量測定装置3による測定後、中途停止/再稼働装置7はミシンを再稼働させ、縫いを再開する。
【0017】
次に(D)に示すように、縫い目位置検出装置6が235針目を検出すると、中途停止/再稼働装置7は該位置でミシンを停止させる。停止後制御装置1は下糸残量測定装置3に途中下糸残量を測定させ、この途中下糸残量が2mであったとする。下糸不足予測装置4は下糸残量が下限下糸量の4mを下回るので、制御装置1は中途停止/再稼働装置7に縫いを再開させず、告知装置8にその旨の告知を行わせ、作業者に糸替えを促す。
なおこの時に、下糸残量が十分に残っている場合、例えば4m以上で下糸不足位置が260針目を超える場合には、中途停止/再稼働装置7にミシン稼働を再開させる。この場合色替え位置で、縫い目データが終了し、通常通りミシンが停止して、縫製が終了する。
【0018】
以上の構成によれば、下糸不足位置を予測し、該位置で途中停止して下糸残量の計測を行うので、正確な縫製が可能になる。即ち、縫製中に下糸がなくなり空縫いを生じたり、或いは下糸残量があるにも関わらず下糸交換作業をおこなったりすることがなくなる効果がある。
【0019】
図3のフローチャート図にしたがって、実施形態の動作を説明する。
最初に縫製対象の模様などの形状の縫製或いは色替えまでに必要な下糸量を縫い目データ記憶装置2のデータに基づいて算出し(ステップS1)、下糸残量測定装置3により下糸残量を測定し(ステップS2)、下糸不足予測装置4により下糸不足位置を予測する(ステップS3)。
【0020】
ここで下糸残量が下限下糸量未満の場合(ステップS4)、縫製不可能と判断し、告知装置8にその旨の告知をさせる(ステップS20)。
【0021】
次に、下糸残量が必要下糸量より多いか否か判定し(ステップS5)、下糸残量が必要下糸量より少ない場合は、縫製最初の下糸残量計測か否か判定し(ステップS6)、1回目であれば停止位置決定装置5は下糸不足位置の手前(下糸不足位置の70パーセントの位置)を途中停止位置と決定する(ステップS7)。
縫製最初の下糸残量計測でない場合には、停止位置決定装置5は下糸不足位置を途中停止位置に決定する(ステップS8)。
【0022】
上記処理後に縫いを開始し(ステップS9)、中途停止/再稼働装置7は前記決定した途中停止位置でミシンの稼働を停止する(ステップS10)。
そしてステップS2に戻り、同じ動作を繰り返す。
【0023】
ステップS5で下糸残量が必要下糸量よりも多い場合には、縫いを開始し(ステップS11)、色替え位置で自動停止する(ステップS12)。
【符号の説明】
【0024】
1:制御装置、2:縫い目データ記憶装置、3:下糸残量測定装置、4:下糸不足予測装置、5:停止位置決定装置、6:縫い目位置検出装置、7:中途停止/再稼働装置、8:告知装置、90:外部入出力装置、91:表示装置、92:タッチパネル、93:DCモータドライバ、94:DCモータ、95:縫い機構、96:XYモータドライバ、97:XYモータ、98:振幅/送りモータドライバ、99:振幅/送りモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製すべき形状の縫製に必要な縫い目データを与える縫い目データ付与装置と、
下糸残量を測定する下糸残量測定装置と、
該下糸残量が測定された時、該下糸残量が所定の下限下糸量未満であるか否か、下限下糸量以上である場合は更に前記縫い目データと該下糸残量とから前記形状を縫製するに下糸が不足するか否か予測し、不足する場合には下糸不足位置を予測する下糸不足予測装置と、
前記下糸不足位置に基づいて、縫いを停止すべき位置を決定する停止位置決定装置と、
前記停止位置に達した時にミシンを中途停止させる中途停止制御装置と、
前記下糸が下限下糸量未満である場合に、その旨を告知する告知装置と、
前記下糸残量測定装置に、縫製開始時と前記中途停止時に下糸残量を測定させ、下糸が下限下糸量以上である場合には、ミシンを稼働させ、前記中途停止中の時は停止を解除してミシンを再稼働させる、制御装置と、
を備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記停止位置決定装置は、縫製開始後の1回目においては、下糸不足位置よりも縫い目数の少ない手前位置に停止位置を決定する、
請求項1のミシン。
【請求項3】
前記停止位置決定装置は、縫製開始後の2回目以降の場合には、下糸不足位置に停止位置を決定する、
請求項1のミシン。
【請求項4】
縫製すべき形状の縫製に必要な縫い目データを与える縫い目データ付与装置と、
縫製を開始する際に下糸残量を測定する下糸残量測定装置と、
前記下糸残量が予め決められた下限下糸量未満であるか否かを判断し、また前記縫い目データと前記下糸残量とから、前記形状を縫製するに下糸が不足するか否か予測し、不足する場合には下糸不足位置を予測する下糸不足予測装置と、
前記下糸不足位置に基づいて、縫いを停止すべき位置を決定する停止位置決定装置と、
前記停止位置に達した時にミシンを中途停止させる中途停止制御装置と、
該中途停止の時に、その時の下糸残量を測定し、中途下糸残量を得る下糸残量測定装置と、
前記中途下糸残量が予め決められた下限下糸量未満であるか否かを判断し、また前記中途下糸残量と前記縫い目データとから、前記形状の残りの縫製を完成するのに下糸が不足するか否かを予測し、不足する場合には下糸不足位置を予測する下糸不足予測装置と、
前記下限下糸量未満であると判断された場合に、その旨を告知する告知装置と、
前記下限下糸量未満ではないと判断された場合には、前記中途停止を解除してミシンを再稼働させる制御装置と、
を備えたことを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−52013(P2013−52013A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190361(P2011−190361)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】