説明

ミニラップマシン

【課題】ミニラップマシンが、作業中に、ロールベールに対するラップ包装をしていないときでも、エンジンが定格回転している状態にあって、そのエンジンの音がうるさく、かつ、不経済な問題がある点を解消させる。
【解決手段】ミニラップマシンの、作業クラッチレバーとスロットルレバーとを連繋機構を介し連繋しておいて、その作業クラッチレバーを、ラップ包装を行う状態とラップ包装を停止した状態とに切り替えるために行うクラッチを断・接する回動動作により、その切り替え作動に連動して、エンジンの運転状態がアイドリングの状態と定格回転の状態とに自動的に切り替えられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行輪と支脚とにより所望の場所に設置し得る機体に、小型のエンジンと、縦方向の回転軸で旋回するテーブルと、ストレッチユニットとを設けて構成し、ロールベーラにより、牧草類をロール状に巻き込み成形したロールベールを、テーブルに載せ、そのテーブルを旋回させることで、機体に装架してあるストレッチユニットから繰り出すプラスチックフィルムを、該ロールベールの外周面に巻き付け包装し、上質のサイレージに熟成させるように用いるロールベールのミニラップマシンについての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールベールのミニラップマシンAは、通常、図1に示しているように、前端側に走行輪10を軸支し、後端側に支脚11を設けた台車状の機体1に、ロールベールBを載置するテーブル2と、そのテーブル2上に載置したロールベールBにプラスチックフィルムfを供給するストレッチユニットFと、テーブル2を縦方向の回転軸線により旋回させる回転動力を供給する小型のエンジンEとを装架し、さらに、エンジンEとテーブル2の回転軸20との間に、エンジンEの出力軸eとカップリングgを介して入力軸が伝導する減速機構3の出力軸30に設けた小径プーリー31と、テーブル2の回転軸20に設けた大径プーリー32と、これらに掛け回した伝導ベルト33と、からなる動力伝達機構hを配設するとともに、図2にあるように、大径プーリー32の回転軸と平行する軸40により回動するクラッチアーム41と、それの回動端部に設けたテンションプーリー42と、前記クラッチアーム41をテンションプーリー42が伝導ベルト33から離れる方向に回動するよう付勢するばね43と、テンションプーリー42が伝導ベルト33に圧接する方向にクラッチアーム41を回動させる連繋機構44と、からなり、連繋機構44の押し引きにより、減速機構3とテーブル2の回転軸20との間の動力の伝導を断・接するクラッチjを設け、そのクラッチjをオン・オフする操作・作動を、機体1に支点軸50中心にクラッチjに対し進退する方向に回動するよう軸支しておく作業クラッチレバー5に、前述の連繋機構44の基端側を連繋しておくことで構成してある。
【0003】
そして、ロールベールBをラップ包装するときは、まず作業クラッチレバー5をクラッチjが“断”となる位置に保持せしめた状態において、小型のエンジンEを始動し、定格回転で回転する状態にしておき、この状態において、ロールベールBをテーブル2の上に載置し、ストレッチユニットFから引き出したプラスチックフィルムfの端部をロールベールBの外周面に結び付け、その状態において、作業クラッチレバー5を操作し、クラッチjを“接”として、テーブル2を旋回させることで、テーブル2と共に旋回するロールベールBの周面に、ストレッチユニットFから引き出されるプラスチックフィルムfを巻き付け、このとき、テーブル2の上面に設けておく駆動ローラまたはエンドレスベルトの回動でロールベールBが横倒しの姿勢で支承された状態において転動することで、フィルムfのロールベールBの周面に対する巻き付き位置が順次変位していくことによりラップ包装が完了するようにしている。
【0004】
そして、一個のロールベールBのラップ包装が終えたときは、作業クラッチレバー5を操作して、クラッチjを“断”としてラップ作業を停め、テーブル2からラップ包装を終えたロールベールを降ろし、新たなロールベールBをテーブル2の上面に載置し、再び作業クラッチレバー5の操作でクラッチjを“接”とし、ラップ作業を行うようにしている。
【0005】
このように構成されているミニラップマシンAには、ロールベールBをラップ包装する作業中、機体1に装架した小型のエンジンEを、テーブル2を旋回作動させる動力を出力する定格回転の状態に運転しておいて、作業クラッチレバー5の操作によるクラッチjの断・接により、テーブル2を旋回させてラップ包装を行う状態と、テーブル2の旋回を停めて、テーブル2に対しロールベールBを積み替える段取り作業とに切り替えるようにしていることから、作業中は、ラップ包装を行っていない時も、常にエンジンEが定格回転で運転していることになって燃費が不経済であり、また、うるさい、という問題がある。
【特許文献1】実用新案登録公報第2590586号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明において解決しようとする問題点は、従前のミニラップマシンが、作業中は機体に搭載した小型のエンジンを常に定格回転で運転しておいて、作業クラッチレバーの回動操作により、テーブルを旋回させる回転機構への動力の伝導を断・接するクラッチを制御することで、ロールベールに対するラップ包装の工程を行う状態と、ラップ包装の工程を停止して包装し終えたロールベールと新たなロールベールとの交換に対応する状態との切り替えを行うようにしていることから、作業中は、ロールベールに対するラップ包装をしていないときでも、エンジンが定格回転している状態にあって、そのエンジンの音がうるさく、かつ、不経済な問題がある。この問題の解消のため、作業中におけるこのラップ包装をしていないときの不必要な燃料の消費を抑えるとともにエンジンの発生音を静かなものとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、この課題を解決するための手段として、ミニラップマシンにおける台車状の機体に装架してある小型のエンジンに装備されている燃料油の供給量を絞るスロットルを利用し、これに連繋するスロットルレバーの操作により作業中のラップ包装を行わないときには、エンジンの運転を、アイドリングの状態とするようスロットルをアイドリング時の位置に動かして、その位置に保持させ、ラップ包装を行うときには、エンジンが定格回転する状態となるようスロットルを定格回転の位置に動かし、その位置に保持させるようにする。そして、このスロットルの位置の切り替えを、作業クラッチレバーの操作によりラップ包装を行う状態と行わない状態とに切り替える作動を行う作業クラッチレバーを利用し、その作業クラッチレバーとスロットルレバーとを連繋機構を介し連繋しておいて、その作業クラッチレバーを、ラップ包装を行う状態とラップ包装を停止した状態とに切り替えるために行うクラッチを断・接する回動動作により、その切り替え作動に連動して、エンジンの運転状態がアイドリングの状態と定格回転の状態とに自動的に切り替えられるようにする手段を提起するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明手段においては、ミニラップマシンのテーブルに対しロールベールの積み降ろしをする段取り中は、エンジン回転がアイドリング回転に保持されるので、燃費が少なくなる。そして、このエンジン回転をアイドリング状態に切り替えるのが、作業中に、テーブルの回転を停止させて段取り作業を行うよう作業クラッチレバーを、クラッチを“断”とする位置に回動させる作業クラッチレバーの回動動作により、それに連動して行われることから、段取り作業を行うためにクラッチを操作したときに自動的にアイドリング状態に切り替えられるようになって、その操作を容易かつ確実なものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0010】
図3は、本発明を実施せるミニラップマシンAの側面図で、同図において、1は機体、2は機体1の前端側(図において左端側)の上面に装架したテーブル、Eは機体1の後端側に装架した小型のエンジン、Fは機体1の後端部に設けたストレッチユニットを示している。
【0011】
機体1は左右に幅のある台枠状に形成され、それの後端側の底面の左右方向の中央部位には、支脚11が設けられ、前端側の左右の両側には、走行輪10がそれぞれ軸支してあり、後端側には機体1と一体に形成される支柱12が上方に向け屈曲して立ち上がるように設けてあって、それの上端部に、プラスチックフィルムfの巻束を装填するローラ90と、それに装填した巻束から繰り出されるプラスチックフィルムfに対し所定の緊張度を与えるローラ91とからなるストレッチユニットFを装架せしめている。
【0012】
テーブル2は、縦方向の回転軸20中心に自在に回動するよう機体1に軸支され、その回転軸20が、機体1に装架せる小型のエンジンEの出力軸eと動力伝達機構hを介し伝導して駆動されることで、前記回転軸20中心に旋回作動するようにしてある。
【0013】
このテーブル2は、それの上面側が、そこに、軸芯線が横方向となる姿勢として載架するロールベールBを、その姿勢に保持せしめて支承するよう弧状の弯曲面に形成してあり、かつ、支承するロールベールBをその状態において自在に転動するよう、駆動されて回転する転動ローラ21が並列軸支してある。
【0014】
テーブル2の回転軸20に回転動力を伝達する動力伝達機構hは、この実施例においては、エンジンEの前面側の近傍位置に配位して機体1に装架し、入力軸34をカップリングgを介しエンジンEの出力軸eに伝導した減速機構3と、その減速機構3の上面に設けた出力軸30に取り付けた小径プーリー31と、機体1の後端部の組付機枠1aに軸支したテーブル2の回転軸20の外周に取り付けた大径プーリー32と、それらプーリー31・32にエンドレスに掛け回した伝導ベルト33とによりベルト伝導式に構成してある。
【0015】
そして、この動力伝達機構hに組み込まれるクラッチjは、テーブル2の回転軸20を軸支する組付機枠1aに、図2に示している従前手段と同様に、テーブル2の回転軸20と平行する方向の支点軸40中心に自在に回動するクラッチアーム41を軸支し、そのクラッチアーム41の回動端部に、そのクラッチアーム41の回動により前述の伝導ベルト33に対して進退するテンションプーリー42軸支し、そのクラッチアーム41に設けた作動アーム45と組付機枠1aとの間に、該クラッチアーム41をテンションプーリー42が伝導ベルト33から離れる方向に回動させるよう付勢するばね43を設け、かつ、作動アーム45と機体1の後端部に支点軸50中心に回動するよう設けた作業クラッチレバー5との間に、その作業クラッチレバー5の回動作動により前記ばね43の付勢に抗してクラッチアーム41を回動させる連繋機構44を設けることで、作業クラッチレバー5の回動動作により、テンションプーリー42が伝導ベルト33に対し進退して、回転動力の伝達を断・接するように構成している。
【0016】
しかして、機体1に装架せる小型のエンジンEには、それに対する燃料の供給量を制御せしめるために装備してあるスロットル(図示省略)を回動せしめる駆動軸60を、エンジンEの外面側に突出させて、それに、その駆動軸60と一緒にその駆動軸60中心に回動するスロットルレバー61を組み付け、そのスロットルレバー61には、エンジンEの運転状態をアイドリング回転の状態とする側に回動させるように付勢するばね62と、このばね62の付勢に抗してスロットルレバー61をエンジンEの運転状態を定格回転の状態とする側に回動させるよう制御作動する作動機構kとを連繋している。
【0017】
この連繋は、ばね62にあっては、スロットルレバー61とエンジンEのボディの外面との間に渡架するよう設けるが、作動機構kにあっては、スロットルレバー61と作業クラッチレバー5との間に設けて、スロットルレバー61を回動させる作動が、作業クラッチレバー5の回動動作によって作動が行われるようにしている。
【0018】
そして、その作動機構kの作業クラッチレバー5に対する連繋は、作業クラッチレバー5を、作業クラッチjが“接”となる側に回動させたときに、スロットルレバー61がエンジン回転を定格回転させる側に回動していくように、連繋している。
【0019】
作動機構kはこの実施例においては、インナーワイヤー70と、そのインナーワイヤー70を摺動自在に包むチューブ状のアウターワイヤー71とからなり、それのインナーワイヤー70の一端側をスロットルレバー61に連繋し、他端側を機体1に支点軸80中心に回動するよう支架したガイドプレート8に連繋し、アウターワイヤー71の一端側をスロットルレバー61の近傍において、エンジンEの外面に支持させ、他端側を前記ガイドプレート8の支点軸80の近傍において機体1に支持させることで構成してある。
【0020】
これにより、作業クラッチレバー5を、図4にあるよう作業クラッチjを“断”とする姿勢位置から、図5にあるよう“接”とする姿勢位置に回動させたときに、作業クラッチレバー5に設けてあるガイドピン5aが、ガイドプレート8に設けてある長穴81に嵌合してその長穴81に沿い摺動することで、ガイドプレート8を支点軸80中心に下向きに回動させることによりガイドプレート8の支点軸80を越した基端側が上昇回動することによってインナーワイヤー70を引き出し、スロットルレバー61を図5にあるよう定格回転の状態位置に動かすようにしている。
【0021】
そして、この実施例においては、定格回転の状態位置にスロットルレバー61を位置させる定格回転時のスロットルレバーあたり64と、アイドリング回転時にスロットルレバー61を位置させるスロットルレバーあたり65とを、エンジンEのボディの外面に装設している。また、インナーワイヤー70の一端側とガイドプレート8の基端部との連繋部には、スロットルレバー61がスロットルレバーあたり64に当たった後のインナーワイヤー70の牽引を吸収させるばね72が設けてある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従前のミニラップマシンの側面図である。
【図2】同上ミニラップマシンの動力伝達機構部の平面図である。
【図3】本発明を実施せるミニラップマシンの側面図である。
【図4】同上ミニラップマシンの作業クラッチを“断”とした状態における要部の一部省略した側面図である。
【図5】同上の要部の作業クラッチを“接”とした状態における一部省略した側面図である。
【図6】同上の要部の後面図である。
【符号の説明】
【0023】
A…ミニラップマシン、B…ロールベール、E…エンジン、F…ストレッチユニット、e…エンジンの出力軸、f…プラスチックフィルム、g…カップリング、h…動力伝達機構、j…クラッチ、k…作動機構、1…機体、1a…組付機枠、10…走行輪、11…支脚、12…支柱、2…テーブル、20…回転軸、21…転動ローラ、3…減速機構、30…減速機構の出力軸、31…小径プーリー、32…大径プーリー、33…伝導ベルト、34…入力軸、40…軸、41…クラッチアーム、42…テンションプーリー、43…ばね、44…連繋機構、45…作動アーム、5…作業クラッチレバー、5a…ガイドピン、50…支点軸、60…駆動軸、61…スロットルレバー、62…ばね、64・65…スロットルレバーあたり、70…インナーワイヤー、71…アウターワイヤー、72…ばね、8…ガイドプレート、80…支点軸、81…長穴、90・91…ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行移動用の走行輪10と据付用の支脚11とを設けた機体1に、上面側にロールベールBを載置して縦方向の回転軸20により旋回するテーブル2と、テーブル旋回駆動用の小型のエンジンEと、テーブル2上に載置したロールベールBに対し包装用のプラスチックフィルムfを供給するストレッチユニットFと、を装架し、前記小型のエンジンEの出力軸eとテーブル2の回転軸20との間に、回転軸20にエンジンEの動力を伝達させる動力伝達機構hと、その動力伝達機構hによる動力の伝達を断・接するクラッチjとを設け、そのクラッチjに機体1に支点軸50により回動自在に軸支せる作業クラッチレバー5を、連繋機構44を介し連繋せしめ、小型のエンジンEには、それに装備せるスロットルに連繋するスロットルレバー61に、エンジン回転をアイドリング回転とする側に該スロットルレバー61を回動させるよう付勢するばね62と、そのばね62の付勢に抗してエンジン回転を定格回転とする側に該スロットルレバー61を回動させるよう作動する作動機構kとを付設したミニラップマシンAにおいて、エンジン回転を制御する作動機構kを、作業クラッチレバー5に対し、その作業クラッチレバー5が、作業クラッチjを“接”とする回動動作により前記スロットルレバー61に定格回転とする側への回動動作を行わせ、作業クラッチjを“断”とする回転動作により、スロットルレバー61にアイドリング回転とする側への回動動作を行わすよう連繋したことを特徴とするミニラップマシン。
【請求項2】
作動機構kを、インナーワイヤー70とそれを摺動自在に包むアウターワイヤー71とにより構成し、それのインナーワイヤー70の一端側をスロットルレバー61に連繋し、他端側を作業クラッチレバー5の回動動作により支点軸50中心に回動するガイドプレート8に連繋し、アウターワイヤーの一端側をエンジンEの外面に固定支持せしめ他端側を、ガイドプレート8の支点軸80の近傍において機体1に固定支持せしめたことを特徴とする請求項1記載のミニラップマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−173048(P2008−173048A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8880(P2007−8880)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000132909)株式会社タカキタ (34)
【Fターム(参考)】