説明

モルタル外壁の接合構造及びモルタル外壁の接合方法

【課題】接合部での耐久性を維持しつつ、防水性を向上しうる。
【解決手段】壁下地2と、既設の防水シート11と、既設のモルタル13を含む既設のモルタル層3とからなる既設のモルタル外壁1oに、既設のモルタル層3を切断除去し、新設のモルタル層5を接続させたモルタル外壁の接合構造である。既設のモルタル層3の切断面4は、第1縦切断面4Aと、横切断面4Bと、第2縦切断面4Cとを含むクランク状をなすことにより、新設のモルタル層5は、切断面4を覆う覆い部5Aを有する。この覆い部5Aには、第2縦切断面4Cを覆う補強用ネット22が埋設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル層の接合部での耐久性を維持しつつ、防水性を向上しうるモルタル外壁の接合構造及びモルタル外壁の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家族構成や生活環境の変化に伴って、住宅のリフォームが一般的に行われている。このリフォームでは、例えば、部屋数を増やすために、既設の外壁が延設される。この既設の外壁がモルタル外壁である場合の延設方法として、例えば、下記特許文献1において、モルタル外壁の接合構造及び方法が提案されている。
【0003】
この接合構造は、既設のモルタル層の切断面から延設され、かつ複数かつ長尺な板材が隙間を空けて配されたラス板、又は構造用合板等の面材に貼付される防水テープ、該防水テープと切断面とがなす入隅部を水密するシーリング材、該シーリング材を埋設する無収縮性固化材、前記防水テープに積層される防水シート、該防水シートに積層されるラス網、及びこれらを埋設する新設のモルタルを含む。
【0004】
このような接合構造では、シーリング材が、防水テープと切断面との隙間を塞ぐとともに、無収縮性固化材が、シーリング材の周囲で固化することにより、接合部での防水性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4222577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような接合構造では、切断面が、モルタル外壁の外面から壁下地へ略直線状にのび、かつその長さが小さいため、クラックが発生しやすく、雨水が切断面を通って壁下地へ到達しやすく、防水性を十分に向上できないという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、既設のモルタルの切断面を、第1縦切断面、横切断面及び第2切断面を有するクランク状にして水道の長さを大きくするとともに、新設のモルタル層に横切断面を覆う覆い部を形成し、この覆い部に、所定の補強用ネットを埋設することを基本として、モルタル層の接合部での耐久性を維持しつつ、防水性を向上しうるモルタル外壁の接合構造及びモルタル外壁の接合方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、壁下地と、該壁下地の外側に配される既設の防水シートと、該既設の防水シートの外側に配された既設のモルタルを含む既設のモルタル層とからなる既設のモルタル外壁に、少なくとも前記壁下地を残して、既設のモルタル層を切断除去し、この切断除去された既設のモルタル層の切断面に、新設のモルタル層を接続させたモルタル外壁の接合構造であって、前記切断面は、前記既設のモルタル層の外面側から前記壁下地側へのびる第1縦切断面と、前記第1縦切断面の前記壁下地側の内端から新設のモルタル層側へのびる横切断面と、前記横切断面の新設のモルタル層側の端部から前記壁下地側へのびる第2縦切断面とを含むクランク状をなすことにより、前記新設のモルタル層は、前記横切断面を覆う覆い部を有し、前記新設のモルタル層の前記覆い部には、補強用ネットが埋設され、前記補強用ネットは、既設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも既設のモルタル層側に配されるとともに、新設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも新設のモルタル層側に配されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記補強用ネットは、耐アルカリ性を有するガラス繊維ネットからなる請求項1に記載のモルタル外壁の接合構造である。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記新設のモルタル層は、前記既設のモルタル層の前記切断面から露出する前記壁下地の外側に配された新設の防水シート、前記新設の防水シートの外側に配された新設のラス網、前記新設の防水シートと、前記新設のラス網とを被覆する新設のモルタルを含み、前記補強用ネットは、前記新設のモルタル層の覆い部の全域に配される請求項1又は2に記載のモルタル外壁の接合構造である。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記新設のモルタル層は、前記新設のモルタルの内側、かつ前記第2縦切断面と前記壁下地との入隅で、前記新設の防水シートと前記第2縦切断面との間を水密する第1樹脂モルタルを含む請求項3に記載のモルタル外壁の接合構造である。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記新設のモルタル層は、前記新設のモルタルの内側で、前記第1樹脂モルタルに連続し、かつ前記第1縦切断面と、前記横切断面と、前記第2縦切断面とに沿って配置される第2樹脂モルタルを含む請求項4に記載のモルタル外壁の接合構造である。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、壁下地と、該壁下地の外側に配される既設の防水シートと、該既設の防水シートの外側に配された既設のモルタルを含む既設のモルタル層とからなる既設のモルタル外壁に、少なくとも前記壁下地を残して、前記既設のモルタル層を切断除去する切断面形成工程と、この切断除去された前記既設のモルタル層の切断面に、新設のモルタル層を接続させる新設モルタル層形成工程と含むモルタル外壁の接合方法であって、前記切断面形成工程では、前記既設モルタル層の外面側から前記壁下地側へのびる第1縦切断面と、前記第1縦切断面の内端から新設のモルタル層側へのびる横切断面と、前記横切断面の新設のモルタル層側の端部から前記壁下地側へのびる第2縦切断面とを含むクランク状の切断面を形成し、前記新設モルタル層形成工程では、前記新設のモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、前記横切断面を覆う前記新設のモルタル層の覆い部に、補強用ネットを埋設する補強用ネット埋設工程とを含み、前記補強用ネットは、既設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも既設のモルタル層側に配されるとともに、前記新設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも新設のモルタル層側に配されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、前記新設モルタル層形成工程では、前記モルタル塗布工程と、前記補強用ネット埋設工程とに先立ち、前記既設のモルタル層の前記切断面から露出する前記壁下地の外側に、新設の防水シートを配する防水シート配置工程、前記新設の防水シートの外側に新設のラス網を配するラス網配置工程を含む請求項6に記載のモルタル外壁の接合方法である。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、前記新設モルタル層形成工程では、前記第2縦切断面と前記壁下地との入隅で、前記新設の防水シートと前記第2縦切断面との間に、第1樹脂モルタルを配して水密する第1樹脂モルタル配置工程を含む請求項7に記載のモルタル外壁の接合方法である。
【0016】
また、請求項9記載の発明は、前記新設モルタル層形成工程では、前記第1樹脂モルタルの上端に連続させ、かつ前記第1縦切断面と、前記横切断面と、前記第2縦切断面とに沿って第2樹脂モルタルを配する第2樹脂モルタル配置工程を含む請求項8に記載のモルタル外壁の接合方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のモルタル外壁の接合構造は、壁下地と、該壁下地の外側に配される既設の防水シートと、該既設の防水シートの外側に配された既設のモルタルを含む既設のモルタル層とからなる既設のモルタル外壁に、少なくとも壁下地を残して、既設のモルタル層を切断除去し、この切断除去された既設のモルタル層の切断面に、新設のモルタル層を接続させている。
【0018】
また、切断面は、既設のモルタル層の外面側から壁下地側へのびる第1縦切断面と、第1縦切断面の壁下地側の内端から新設のモルタル層側へのびる横切断面と、横切断面の新設のモルタル層側の端部から壁下地側へのびる第2縦切断面とを含むクランク状をなすことにより、新設のモルタル層は、横切断面を覆う覆い部を有する。
【0019】
このような切断面は、モルタル外壁の外面から壁下地までの水道の長さを大幅に大きくしうるとともに、クランク状に屈曲でき、雨水が切断面を通って壁下地に到達するのを長期に亘って抑制しうる。従って、本発明の接合構造は、モルタル層の接合部での防水性を大幅に向上しうる。
【0020】
また、新設のモルタル層の覆い部には、補強用ネットが埋設される。このような補強用ネットは、厚さの小さい覆い部を補強して、クラック等の損傷を防ぎ、接合部での耐久性を維持しうる。
【0021】
しかも、補強用ネットは、既設のモルタル層側の端部が、第2縦切断面よりも既設のモルタル層側に配されるとともに、新設のモルタル層側の端部が、第2縦切断面よりも新設のモルタル層側に配される。このような補強用ネットは、クラックの起点となりやすい第2縦切断面を覆うことができるため、クラック等の損傷を確実に防ぎ、耐久性を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態のモルタル外壁の接合構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】他の実施形態の接合構造を示す断面図である。
【図4】サッシが取り付けられた接合構造を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は切断面形成工程を説明する断面図である。
【図6】(a)、(b)は防水シート配置工程を説明する断面図である。
【図7】(a)はラス網配置工程を説明する断面図、(b)は第1樹脂モルタル配置工程を説明する断面図、(c)は第2樹脂モルタル配置工程を説明する断面図である。
【図8】(a)、(b)はモルタル塗布工程を説明する断面図、(c)は補強用ネット埋設工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のモルタル外壁1の接合構造(以下、単に「接合構造」ということがある。)は、住宅のリフォーム等で既設のモルタル外壁1oを延設するのに用いられる。
【0024】
具体的には、壁下地2と、該壁下地2の外側に配される既設の防水シート11と、該既設の防水シート11の外側に配された既設のモルタル13を含む既設のモルタル層3とからなる既設のモルタル外壁1oに、少なくとも壁下地2を残して、既設のモルタル層3を切断除去し、この切断除去された既設のモルタル層3の切断面4に、新設のモルタル層5を接合して構成される。
【0025】
前記壁下地2は、例えば、左右に間隔を空けて配され、かつ上下にのびる胴縁7、7と、この胴縁7に固定された複数かつ長尺な板材6とからなる。そして、板材6は、例えば上下方向に隙間8を空けて配されることで、壁下地2がすのこ状に形成される。なお、板材6には、構造用合板などの面材等からなるものでもよい。
【0026】
前記既設の防水シート11は、壁下地2の外側に、上下及び左右方向に連続して配される。このような既設の防水シート11は、既設のモルタル13から染み込んだ雨水等が、壁下地2側に浸入するのを防ぎうる。なお、この既設の防水シート11には、例えば、アスファルトフェルト等が適宜採用される。
【0027】
前記既設のモルタル層3は、図1及び図2に示されるように、既設の防水シート11の外側に配される既設のラス網12と、この既設のラス網12の外側に配される前記既設のモルタル13とを含む。
【0028】
前記既設のラス網12は、既設の防水シート11の外側に沿って配置され、例えば、ステープル等によって打ち留めされる。このような既設のラス網12は、既設のモルタル13を保持し、該既設のモルタル13が剥落するのを防ぎうる。なお、既設のラス網12には、例えば、平ラス、波形ラスリブラスなどの異形ラス、複合ラス、又はワイヤラス等が適宜採用される。
【0029】
前記既設のモルタル13は、壁下地2の外側に、既設の防水シート11及び既設のラス網12を被覆して配置される。この既設のモルタル13には、例えば、砂モルタル、既調合軽量セメントモルタル、現場調合軽量セメントモルタル、又はこれらを組み合わせたセメントモルタルが適宜採用される。
【0030】
前記切断面4は、既設のモルタル層3の外面側から壁下地2側へのびる第1縦切断面4Aと、この第1縦切断面4Aの壁下地2側の内端4Aiから新設のモルタル層5側へのびる横切断面4Bと、この横切断面4Bの新設のモルタル層5側の端部4Bnから壁下地2側へのびる第2縦切断面4Cとを含み、クランク状をなしている。これにより、新設のモルタル層5には、横切断面4Bを覆う薄肉状の覆い部5Aが形成される。
【0031】
このような切断面4は、モルタル外壁1の外面から壁下地2までの水道の長さを大幅に大きくしうるとともに、クランク状に屈曲できるため、雨水が切断面4を通って壁下地2に到達するのを長期に亘って抑制しうる。従って、本発明の接合構造は、既設のモルタル層3と新設のモルタル層5との接合部での防水性を大幅に向上しうる。
【0032】
前記第1縦切断面4Aは、既設のモルタル層3の外面からほぼ直角に壁下地2側に向かってモルタル外壁1の厚さ方向にのび、かつその内端4Aiが既設のラス網12に至ることなく終端する。これにより、横切断面4Bにおける既設のモルタル層3の厚さが過度に小さくなるのを抑制でき、耐久性を維持しうる。この第1縦切断面4Aの厚さ方向の長さL1は、好ましくは2mm以上、さらに好ましくは4mm以上が望ましく、また、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下が望ましい。
【0033】
また、本実施形態の第1縦切断面4Aは、既設のモルタル層3の厚さ方向と平行にのびるものが例示されるが、これに限定されるわけではない。例えば、第1縦切断面4Aは、既設のモルタル層3側から新設のモルタル層5側へ、厚さ方向に対して傾斜するものでもよい。これにより、第1縦切断面4Aは、前記水道をより大きくでき、防水性をさらに向上しうる。
【0034】
前記横切断面4Bは、第1縦切断面4Aの内端4Aiから新設のモルタル層5側へ、壁下地2と平行にのびる。この横切断面4Bの壁下地2に沿った長さL2は、好ましくは20mm以上、さらに好ましくは50mm以上が望ましく、また、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは100mm以下が望ましい。
【0035】
また、本実施形態の前記横切断面4Bは、例えば、該壁下地2に交わる方向へ傾斜するものでもよい。このような横切断面4Bも、前記水道を大きくしうる点で好ましい。
【0036】
前記第2縦切断面4Cは、横切断面4Bの前記端部4Bnから壁下地2側へ厚さ方向にのび、壁下地2側の内端4Ciが壁下地2で終端している。この第2縦切断面4Cも、第1縦切断面4Aと同様の観点より、厚さ方向に対して傾斜するものでもよい。
【0037】
本実施形態の新設のモルタル層5は、例えば、第2縦切断面4Cから露出する壁下地2の上に配される新設の防水シート17、該新設の防水シート17の外側に配された新設のラス網18、第2縦切断面4Cと壁下地2との入隅14に配される第1樹脂モルタル19、第1樹脂モルタル19に連続し、かつ前記切断面4に配置される第2樹脂モルタル20、これらの部材を被覆する新設のモルタル21、及び前記覆い部5Aに埋設される補強用ネット22を含む。
【0038】
本実施形態の新設の防水シート17は、その既設のモルタル層3側が、第2縦切断面4Cに近接して配される防水テープ16を介して配置される。これにより、新設の防水シート17は、壁下地2の外側で、防水テープ16を介して、既設の防水シート11と連続させることができ、接合部での防水性を向上しうる。なお、この新設の防水シート17としては、前記既設の防水シート11と同様のものが望ましく、また、防水テープ16としては、例えば、アスファルトフェルト、ブチルテープ、アクリルテープ、又はゴムアスファルトテープ等からなるものが望ましい。
【0039】
前記新設のラス網18は、新設の防水シート17の外側に配され、ステープル等で打ち止めされる。本実施形態の新設のラス網18は、特に限定されないが、平ラスを除くメタルラスが望ましく、また、波形ラス、リブラス等の異形ラス、力骨付きラス等の複合ラス等が望ましい。
【0040】
また、前記新設のラス網18は、既設のモルタル層3側の側縁18oが、前記防水テープ16の少なくとも一部に積層されるのが望ましい。これにより、新設のラス網18は、第2縦切断面4C側において、新設のモルタル21を確実に保持しうる。
【0041】
前記第1樹脂モルタル19は、前記入隅14で、新設の防水シート17と第2縦切断面4Cとの間を覆って配される。このような第1樹脂モルタル19は、新設の防水シート17の側縁17oと、前記第2縦切断面4Cとの間の隙間を塞いで水密にでき、接合部での防水性をさらに向上しうる。しかも、本実施形態では、第1樹脂モルタル19の他に、シーリング材等を別途充填することなく水密でき、材料・工事コストや施工期間を抑えうる。
【0042】
また、第1樹脂モルタル19は、第2縦切断面4Cにおいて、既設のモルタル13と新設のモルタル21との仲介接着剤として作用しうるため、接合部での耐久性をも向上しうる。この第1樹脂モルタル19としては、例えば、ポリマーセメントモルタル等が適宜採用される。
【0043】
前記第2樹脂モルタル20は、第1樹脂モルタル19と連続し、かつ第1縦切断面4A、横切断面4B、及び第2縦切断面4Cに沿って配置される。このような第2樹脂モルタル20も、第1樹脂モルタル19と同様に、既設のモルタル13と新設のモルタル21との間を水密にしうるとともに、仲介接着剤として作用しうるため、接合部での耐水性及び耐久性を向上しうる。
【0044】
なお、第2樹脂モルタル20としては、第1樹脂モルタル19と同様のものが適宜採用できるが、第1樹脂モルタル19よりも骨材量が少ないもの、又は骨材が含有されないものが望ましい。また、第2樹脂モルタル20に骨材が含有される場合は、第1樹脂モルタル19よりも、骨材径が小さいものが望ましい。
【0045】
前記新設のモルタル21は、第1樹脂モルタル19及び第2樹脂モルタル20の外側に配され、かつ新設の防水シート17と、新設のラス網18とを被覆する。なお、新設のモルタル21としては、特に限定されないが、既設のモルタル13と同様のものが適宜採用されるが、既調合軽量セメントモルタルが最も望ましい。
【0046】
前記補強用ネット22は、新設のモルタル層5の外面と、前記横切断面4Bとの間を、前記壁下地2と略平行にのびている。このような補強用ネット22は、厚さの小さい覆い部5Aを補強してクラック等の損傷を防ぎ、接合部での耐久性を維持しうる。
【0047】
また、前記補強用ネット22は、その既設のモルタル層3側の端部22oが、第2縦切断面4Cよりも既設のモルタル層3側に配されるとともに、新設のモルタル層5側の端部22n(図4に示す)が、第2縦切断面4Cよりも新設のモルタル層5側に配されるのが望ましい。これにより、補強用ネット22は、クラックの起点となりやすい第2縦切断面4Cを覆うことができるため、クラック等の損傷を確実に防ぎ、接合部での耐久性をさらに向上しうる。
【0048】
さらに、前記補強用ネット22は、覆い部5Aの全域に埋設されるのが望ましく、また、該覆い部5Aから新設のモルタル層5側へ連続して埋設されるのが望ましい。これにより、補強用ネット22は、新設のモルタル層5を広範囲に亘って補強でき、クラック等の損傷を防ぎうる。
【0049】
前記補強用ネット22としては、特に限定されないが、とりわけ、耐アルカリ性を有するガラス繊維ネットが望ましい。このようなガラス繊維ネットは、アルカリ性の強い新設のモルタル21内に埋設されても、優れた引張強度を維持でき、覆い部5Aの耐久性を確実に向上しうる。
【0050】
なお、耐アルカリ性を有するガラス繊維ネットとしては、ジルコニアが10質量%以上、さらに好ましくは16質量%以上含有されるガラス繊維ネット、又は表面に耐アルカリコーティングがなされたガラス繊維ネットが望ましい。また、ガラス繊維ネットは、質量が80g/m2以上、かつメッシュ間隔が4〜10mmのものが望ましい。
【0051】
図3には、本発明の他の実施形態が示される。
この実施形態の接合構造では、第2縦切断面4Cの内端4Ciが、既設の防水シート11で終端する。これにより、既設の防水シート11には、前記第2縦切断面4Cから新設のモルタル層5側へはみ出すはみ出し部11Aが形成される。このようなはみ出し部11Aは、第2縦切断面4Cと壁下地2との入隅14から、壁下地2への雨水が浸入するのをより効果的に防ぎ、接合部での防水性を向上しうる。
【0052】
また、前記新設の防水シート17は、その既設のモルタル層3側の一部が、既設の防水シート11のはみ出し部11Aの上に積層され、かつ壁下地2の外側を覆って配されるのが望ましい。これにより、新設の防水シート17は、図2に示される防水テープ16を設けることなく、壁下地2の外側で、既設の防水シート11と連続して配置することができるため、材料・工事コストを抑制しつつ、壁下地2への雨水の浸入を確実に防ぎうる。また、既設の防水シート11と新設の防水シート17との間に、前記防水テープ16を配置すると、耐久性をさらに向上させることができる。
【0053】
図4には、モルタル外壁1の新設のモルタル層5側に、窓枠等のサッシ25が配された接合構造が示される。
本実施形態のサッシ25は、新設のモルタル層5側で、壁下地2に支持される。このサッシ25は、前記壁下地2の長手方向と直交しかつ新設のモルタル層5の外面側に突出する基部25aと、該基部25aから壁下地2の外面に沿って既設のモルタル層3側へのびるフランジ25bとを有する。
【0054】
前記新設の防水シート17は、サッシ25のフランジ25bの外面を覆い、かつサッシ25側の端部17nが、サッシ25の基部25aで終端する。このような新設の防水シート17は、前記サッシ25と壁下地2との間に、雨水が浸入するのを防ぎうる。なお、この新設の防水シート17は、サッシ25のフランジ25bに、両面防水テープ27で圧着される。
【0055】
前記新設のラス網18は、新設のモルタル層5側の側縁18nが、サッシ25のフランジ25bを覆って配置される。これにより、新設のラス網18は、第2縦切断面4Cからサッシ25の基部25aまでの広範囲に亘って、新設のモルタル21を保持しうる。なお、新設のラス網18の側縁18nは、サッシ25の基部25aから離間して配置されているのが望ましい。これにより、ラス網18とサッシ25との金属の電位差による腐食を効果的に防ぎうる。
【0056】
前記サッシ25の基部25aとフランジ25bとの入隅25cには、新設の防水シート17と基部25aとの間を覆う第3樹脂モルタル26が配置される。このような第3樹脂モルタル26は、新設の防水シート17と基部25aとの間の隙間を塞いで水密にしうるとともに、サッシ25と新設のモルタル21との仲介接着剤として作用しうる。この第3樹脂モルタル26としては、第1樹脂モルタル19と同様のものが採用されるのが望ましい。
【0057】
前記新設のモルタル21は、第3樹脂モルタル26の外側に、新設の防水シート17、及び新設のラス網18を被覆して配される。
【0058】
本実施形態の補強用ネット22は、そのサッシ25側の端部22nが、サッシ25の基部25aの近傍で終端している。このような補強用ネット22は、既設のモルタル層3の切断面4からサッシ25にかけて、広範囲で補強することができ、クラック等の損傷を確実に防ぎうる。
【0059】
この実施形態では、窓枠等のサッシ25が配された接合構造が示されたが、これに限定されるわけではなく、例えば、庇やシャッター雨戸などの部品を配置することができる。
【0060】
次に、本実施形態のモルタル外壁の接合方法の一例について説明する。
本実施形態の接合方法では、前記既設のモルタル外壁1oに、少なくとも壁下地2を残して、既設のモルタル層3を切断除去する切断面形成工程と、この切断除去された既設のモルタル層3の切断面4に、新設のモルタル層5を接続させる新設モルタル層形成工程と含む。
【0061】
前記切断面形成工程では、図5(a)に示されるように、既設のモルタル外壁1oを、既設のモルタル層3の外面から壁下地2側へ厚さ方向に切断して、該壁下地2の長手方向に直交する第1切断面30を形成する第1切断工程、及び図5(b)に示されるように、第1切断面30と既設のモルタル層3の外面とを、既設のモルタル層3側へ入隅状に切り欠いた切欠部31を形成する第2切断工程を含む。
【0062】
これにより、第1切断面30及び切欠部31には、前記第1縦切断面4A、前記横切断面4B、及び前記第2縦切断面4Cを含むクランク状の切断面4が形成される。
【0063】
前記新設モルタル層形成工程では、前記新設の防水シート17を配する防水シート配置工程、前記新設のラス網18を配するラス網配置工程、前記第1樹脂モルタル19を配する第1樹脂モルタル配置工程、前記第2樹脂モルタル20を配する第2樹脂モルタル配置工程、前記新設のモルタル21を塗布するモルタル塗布工程、及び補強用ネット22を埋設する補強用ネット埋設工程を含む。
【0064】
本実施形態の防水シート配置工程では、図6(a)に示されるように、新設の防水シート17が、第2縦切断面4Cに近接して配される防水テープ16を介して、壁下地2の外側に固着される。また、図6(b)に示されるように、第2縦切断面4Cから新設のモルタル層5(図2に示す)側へはみ出すはみ出し部11Aが設けられる場合には、新設の防水シート17が、はみ出し部11Aの少なくとも一部に積層されるように固着されるのが望ましい。
【0065】
前記ラス網配置工程では、図7(a)に示されるように、新設のラス網18を、新設の防水シート17の外側に配置して、ステープル等で打ち止めする。また、新設のラス網18の既設のモルタル層3側の側縁18oは、防水テープ16の少なくとも一部に積層されるのが望ましい。
【0066】
前記第1樹脂モルタル配置工程では、図7(b)に示されるように、第2縦切断面4Cと壁下地2との入隅14で、新設の防水シート17と第2縦切断面4Cとの間に第1樹脂モルタル19を配して水密にする。この第1樹脂モルタル19は、入隅14に盛られた後、ヘラやコテ等によって、新設の防水シート17側に押し付けられる。これにより、第1樹脂モルタル19を、該新設の防水シート17の側縁17oと第2縦切断面4Cとの隙間に浸透させうる。
【0067】
前記第2樹脂モルタル配置工程では、図7(c)に示されるように、第2樹脂モルタル20が、第1樹脂モルタル19の上端19uと連続し、かつ第1縦切断面4A、横切断面4B、及び第2縦切断面4Cの外面に沿って配される。これにより、第1樹脂モルタル19及び第2樹脂モルタル20が、切断面4の外側に連続して配される。
【0068】
前記モルタル塗布工程では、図8(a)に示されるように、第1、第2樹脂モルタル19、20の外側に、新設の防水シート17及び新設のラス網18を被覆するように、新設のモルタル21が塗り込まれる。本実施形態では、新設のモルタル21が、第1樹脂モルタル19と第2樹脂モルタル20との接点付近まで塗り込まれて、一定時間養生された後に、図8(b)に示されるように、既設のモルタル13の外面まで塗り込まれる。
【0069】
そして、前記補強用ネット埋設工程では、図8(c)に示されるように、補強用ネット22が、未硬化の新設のモルタル21の外面に配置された後、新設のモルタル21内に、コテ等で伏せ込まれて埋設される。
【0070】
前記補強用ネット22は、その既設のモルタル層3側の端部22oが、第2縦切断面4Cよりも既設のモルタル層3側に配されるとともに、新設のモルタル層5側の端部22n(図4に示す)が、第2縦切断面4Cよりも新設のモルタル層5側に配される。これにより、補強用ネット22は、第2縦切断面4Cを確実に覆いうる。この補強用ネット22は、前記覆い部5Aの全域に埋設されるのが望ましく、及び該覆い部5Aから新設のモルタル層5側へ連続して埋設されるのが望ましい。
【0071】
そして、新設のモルタル21が硬化した後、本発明のモルタル外壁の接合構造が形成される。
【0072】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0073】
2 壁下地
3 既設のモルタル層
4 切断面
4A 第1縦切断面
4B 横切断面
4C 第2縦切断面
5 新設のモルタル層
11 既設の防水シート
13 既設のモルタル
22 補強用ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地と、該壁下地の外側に配される既設の防水シートと、該既設の防水シートの外側に配された既設のモルタルを含む既設のモルタル層とからなる既設のモルタル外壁に、少なくとも前記壁下地を残して、既設のモルタル層を切断除去し、この切断除去された既設のモルタル層の切断面に、新設のモルタル層を接続させたモルタル外壁の接合構造であって、
前記切断面は、前記既設のモルタル層の外面側から前記壁下地側へのびる第1縦切断面と、前記第1縦切断面の前記壁下地側の内端から新設のモルタル層側へのびる横切断面と、前記横切断面の新設のモルタル層側の端部から前記壁下地側へのびる第2縦切断面とを含むクランク状をなすことにより、前記新設のモルタル層は、前記横切断面を覆う覆い部を有し、
前記新設のモルタル層の前記覆い部には、補強用ネットが埋設され、
前記補強用ネットは、既設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも既設のモルタル層側に配されるとともに、新設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも新設のモルタル層側に配されることを特徴とするモルタル外壁の接合構造。
【請求項2】
前記補強用ネットは、耐アルカリ性を有するガラス繊維ネットからなる請求項1に記載のモルタル外壁の接合構造。
【請求項3】
前記新設のモルタル層は、前記既設のモルタル層の前記切断面から露出する前記壁下地の外側に配された新設の防水シート、
前記新設の防水シートの外側に配された新設のラス網、
前記新設の防水シートと、前記新設のラス網とを被覆する新設のモルタルを含み、
前記補強用ネットは、前記新設のモルタル層の覆い部の全域に配される請求項1又は2に記載のモルタル外壁の接合構造。
【請求項4】
前記新設のモルタル層は、前記新設のモルタルの内側、かつ前記第2縦切断面と前記壁下地との入隅で、前記新設の防水シートと前記第2縦切断面との間を水密する第1樹脂モルタルを含む請求項3に記載のモルタル外壁の接合構造。
【請求項5】
前記新設のモルタル層は、前記新設のモルタルの内側で、前記第1樹脂モルタルに連続し、かつ前記第1縦切断面と、前記横切断面と、前記第2縦切断面とに沿って配置される第2樹脂モルタルを含む請求項4に記載のモルタル外壁の接合構造。
【請求項6】
壁下地と、該壁下地の外側に配される既設の防水シートと、該既設の防水シートの外側に配された既設のモルタルを含む既設のモルタル層とからなる既設のモルタル外壁に、少なくとも前記壁下地を残して、前記既設のモルタル層を切断除去する切断面形成工程と、
この切断除去された前記既設のモルタル層の切断面に、新設のモルタル層を接続させる新設モルタル層形成工程と含むモルタル外壁の接合方法であって、
前記切断面形成工程では、前記既設モルタル層の外面側から前記壁下地側へのびる第1縦切断面と、前記第1縦切断面の内端から新設のモルタル層側へのびる横切断面と、前記横切断面の新設のモルタル層側の端部から前記壁下地側へのびる第2縦切断面とを含むクランク状の切断面を形成し、
前記新設モルタル層形成工程では、前記新設のモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記横切断面を覆う前記新設のモルタル層の覆い部に、補強用ネットを埋設する補強用ネット埋設工程とを含み、
前記補強用ネットは、既設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも既設のモルタル層側に配されるとともに、前記新設のモルタル層側の端部が、前記第2縦切断面よりも新設のモルタル層側に配されることを特徴とするモルタル外壁の接合方法。
【請求項7】
前記新設モルタル層形成工程では、前記モルタル塗布工程と、前記補強用ネット埋設工程とに先立ち、
前記既設のモルタル層の前記切断面から露出する前記壁下地の外側に、新設の防水シートを配する防水シート配置工程、
前記新設の防水シートの外側に新設のラス網を配するラス網配置工程を含む請求項6に記載のモルタル外壁の接合方法。
【請求項8】
前記新設モルタル層形成工程では、前記第2縦切断面と前記壁下地との入隅で、前記新設の防水シートと前記第2縦切断面との間に、第1樹脂モルタルを配して水密する第1樹脂モルタル配置工程を含む請求項7に記載のモルタル外壁の接合方法。
【請求項9】
前記新設モルタル層形成工程では、前記第1樹脂モルタルの上端に連続させ、かつ前記第1縦切断面と、前記横切断面と、前記第2縦切断面とに沿って第2樹脂モルタルを配する第2樹脂モルタル配置工程を含む請求項8に記載のモルタル外壁の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−76250(P2013−76250A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216415(P2011−216415)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(390025612)富士川建材工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】