説明

モータ及びその製造方法

【課題】モータケースのケース本体のフランジと、ケース本体の開口部を閉じるエンドカバーとの間のシール性能を向上させて耐水性を高めたモータを提供する。
【解決手段】モータの構成要素を収容するモータケースのケース本体11の開口部を閉じるエンドカバー12に切欠き部12fを設けるとともに、切欠き部12f内に両端が開口したシール用溝部12dをエンドカバーのフランジ当接面12cに設ける。エンドカバーの切欠き部12f内にグロメット13を嵌合させて、切欠き部12fのエンドカバー内への開口部を閉じた後、ケース本体11のフランジ11cをエンドカバー12のフランジ当接面22cに当接させて、フランジ11cとエンドカバー12とを締結する。切欠き部12fを通してシール用溝部12d内にシール用樹脂を充填し、更に切欠き部12f内に樹脂を充填してフランジ11cとエンドカバー12との間の突き合わせ部のシールを図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性を有するモータ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、パワーステアリング機構やオイルポンプ等を駆動するために比較的小型のモータが搭載される。この種のモータは、一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、ケース本体のフランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えていて、該モータケース内にロータ及びステータを含むモータ本体を収容している。自動車に搭載されるモータは、走行中に雨水などがかかる機会が多いため、耐水性を有することが要求される。また船外機においても、チルト機構の油圧ユニットを駆動するために小型のモータが用いられているが、このモータにも耐水性が必要とされる。
【0003】
上記のような構造のモータに耐水性を持たせる場合には、特許文献1に示されているように、ケース本体とエンドカバーとの突き合わせ部にOリングを介在させた状態で、ケース本体のフランジとエンドカバーとを締結して、Oリングをケース本体のフランジとエンドカバーとの間に圧縮した状態で保持することにより、ケース本体とエンドカバーとの間の突き合わせ部からモータケース内に水が浸入するのを防いでいる。
【0004】
図7は、この種のモータの構造の一例を示したもので、同図において、1は一端が開口した円筒状のケース本体、2は中空部2aを有し、ケース本体1の開口部を閉じるように配置されるエンドカバー、3はケース本体内に収容されたモータ本体から導出されたコード4及び5を引き出すグロメット、6はOリングであり、ケース本体1とエンドカバー2とによりモータケース7が構成されている。
【0005】
ケース本体1は、一端が開口し、他端が端部壁1aにより閉じられた周壁部1bと、該周壁部の開口部の外周に形成されたフランジ1cとを有し、端部壁1aの中央部には、モータの回転軸(図示せず。)の一端を支持する軸受けを保持する軸受け保持部1dが形成されている。エンドカバー2にはケース本体のフランジ1cを当接させるフランジ当接面2cが形成され、このフランジ当接面2cには、ケース本体1の周壁部1bの周方向に沿って伸びるOリング収容溝2dが形成されている。エンドカバー2にはまた軸受け保持部が設けられ、この軸受け保持部に保持された軸受けにより、ロータの回転軸の他端側が支持される。
【0006】
図7に示した例では、コードを引き出すためにグロメット3が設けられている。グロメット3を取り付けるため、エンドカバーの周壁部2eを貫通し、ケース本体のフランジ側に開口したU字状の切欠き部2fがエンドカバー2に形成され、この切欠き部2f内にグロメット3が嵌合されている。グロメット3には、Oリング収容溝2dの切欠き部2fにより分断された部分をつなぐ溝3dが形成され、Oリング収容溝2dとグロメットの溝3dとにより形成された環状の溝内にOリング6が収容される。グロメット3に設けられたコード引出孔を通してコード4及び5が引き出される。
【0007】
上記のように溝2d及び3d内にOリング6を収容した状態で、ケース本体1のフランジ1cをエンドカバー2のフランジ当接面2cに当接させて、フランジ1cとエンドカバー2とをボルトで締結することにより、ケース本体1のフランジ1cとエンドカバー2との間をシールした状態でモータケース7を組み立てる。
【0008】
なおエンドカバー2は、単なるカバーである場合と、減速機等のモータの付属品を収容するケースを兼ねる場合とがある。
【特許文献1】特開2002−165405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来のモータにおいては、ケース本体1のフランジ1cとエンドカバー2との間にOリング6を配置して、このOリングによりケース本体のフランジとエンドカバーとの突き合わせ部のシールを図っていたが、シール手段としてOリングを用いる場合には、Oリングの圧縮代が適正な範囲にないとシールを的確に図ることができないため、Oリング収容溝の加工精度や組み立て方によりシール効果にばらつきが生じるおそれがあった。即ち、Oリング収容溝が浅い場合には、Oリングの圧縮代が大きくなり過ぎて、Oリングが破損し、そのシール機能が失われるおそれがある。またOリング収容溝の深さが深すぎると、Oリングの圧縮代が不足し、シールを十分に図ることができない。
【0010】
またOリングを用いた場合には、ケース本体のフランジ1cのOリング6が当接する面の加工精度が悪い場合に、Oリングとフランジ1cのOリング当接面との間に生じる微小な隙間からケース内に水が浸入することがあるため、高い耐水性が要求される場合にその要求に応えることができないという問題があった。
【0011】
特に図7に示したように、リード線を引き出すためにグロメットが取り付けられる場合には、切欠き部2dとグロメットとの嵌合部や、グロメットとOリングとが重なり合う部分に微小な隙間が生じ、この隙間から水が浸入することがあった。
【0012】
上記の問題を解決するため、特許文献1に示されたモータでは、Oリングとグロメットとを一体化しているが、グロメットとOリングとを一体化しても、組み立て作業のばらつきにより、グロメットと切欠き部との嵌合部に隙間が生じ、耐水性が低下するのを避けられない。耐水性を高めるためには、グロメットに接着剤などのシール剤を塗布して、グロメットと切欠き部との嵌合部のシールを図るなどの特別な手段を講じる必要があり、面倒であった。
【0013】
また従来のモータのように、グロメットに設けたコード引出孔から直接コードを引き出すようにした場合には、グロメットのコード引出孔とコードとの間に形成される僅かな隙間から内部に水が浸入することがあるため、耐水性を高めるためには、コードのコード引出孔を貫通する部分にシール剤を塗布する必要があり、面倒であった。
【0014】
従来のシール構造による場合、シール剤を用いないで得られる耐水性は、せいぜい、JIS D0203 S2に規定された散水試験に耐え得る程度であり、それ以上の耐水性、例えば、JIS D0203 D3に規定された最高ランクの浸水試験に耐え得る耐水性を得ることは困難であった。
【0015】
本発明の目的は、Oリングを用いるこなく、ケース本体とエンドカバーとの間のシールを図って、高い耐水性を得ることができるようにしたモータを提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、コードを引き出すためにグロメットを設ける場合に、ケース本体とエンドカバーとの間のシールを確実に図り、かつグロメットのコード引き出し部から水が浸入するおそれを無くして、高い耐水性を得ることができるようにしたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容されたモータを対象とする。
【0018】
本発明においては、エンドカバーにモータケースの径方向の外側に開口した凹部が設けられ、フランジに当接するエンドカバーの端面(フランジ当接面)に、ケース本体の周方向に伸びて両端が前記凹部内に開口したシール用溝部が形成される。またエンドカバーに締結されたフランジによりケース本体側への開口部が閉じられたエンドカバーの凹部及びシール用溝部の内部にシール用樹脂が充填され、このシール用樹脂によりフランジとエンドカバーとの間がシールされる。
【0019】
上記のように、エンドカバーに外側に開口した凹部を設けるとともに、この凹部内に両端が開口したシール用溝部を、エンドカバーのフランジ当接面に設けて、エンドカバーに締結されたフランジによりケース本体側への開口部が閉じられたエンドカバーの凹部及びシール用溝部の内部にシール用樹脂を充填するようにすると、充填されたシール用樹脂がエンドカバー及びフランジの対向面に形成されている微細な凹部や両者の突き合わせ部に形成されている微細な隙間を埋めて、エンドカバーとフランジとの間のシールを図るため、フランジ及びエンドカバーの対向面の加工精度が多少粗くても、またシール用溝部の加工精度が多少粗くても、両者の突き合わせ部のシールを確実に図って、高い耐水性を得ることができる。
【0020】
本発明はまた、ケース本体とともにモータケースを構成するエンドカバーにグロメットが取り付けられて、モータの構成要素から導出されたコードがこのグロメットを通して外部に引き出されるモータに適用される。この場合、モータケースの径方向に沿ってエンドカバーの周壁部の一部を貫通するとともにフランジ側に開口した切欠き部がエンドカバーに設けられる。グロメットは、エンドカバーの中空部側から切欠き部内に嵌合され、該グロメットにより切欠き部のエンドカバー内への開口部が閉塞されることにより、切欠き部の内側にモータケースの径方向の外側に開口した凹部が形成される。また、フランジに当接するエンドカバーの端面に、ケース本体の周方向に伸びて両端が凹部内に開口したシール用溝部が形成され、エンドカバーに締結されたフランジによりケース本体側への開口部が閉じられたエンドカバーの凹部及びシール用溝部の内部にシール用樹脂が充填されて該シール用樹脂によりフランジとエンドカバーとの間がシールされるとともに、凹部内に充填されたシール用樹脂によりグロメットからのコード引き出し部が覆われて、該コード引き出し部がシールされる。
【0021】
上記のように構成した場合にも、充填されたシール用樹脂がエンドカバー及びフランジの対向面に形成されている微細な凹部や両者の突き合わせ部に形成されている微細な隙間を埋めて、エンドカバーとフランジとの間のシールを図るため、フランジ及びエンドカバーの対向面の加工精度や、シール用溝部の加工精度が多少粗くても、エンドカバーとケース本体のフランジとの突き合わせ部のシールを確実に図って、高い耐水性を得ることができる。
【0022】
また上記のように構成すると、エンドカバーの凹部内に充填されたシール用樹脂により、グロメットと切欠き部との間の嵌合部、及びグロメットからのコード引き出し部のシールを図ることができるため、グロメットにシール剤を塗布しなくても高い耐水性を得ることができる。
【0023】
本発明はまた、一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、前記フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容されたモータを製造する方法に適用される。
【0024】
本発明においては、エンドカバーに、モータケースの径方向の外側に開口した凹部を設けるとともに、フランジに当接するエンドカバーの端面に、ケース本体の周方向に伸びて両端が凹部内に開口したシール用溝部を形成しておく。そして、モータの構成要素の内、ケース本体内に収容すべき部品を該ケース本体内に収容し、エンドカバー内に配設すべき部品を該エンドカバー内に配設した後、エンドカバーをケース本体のフランジに締結して内部にモータの構成要素が収容されたモータケースを組み立てる。次いで、溶融したシール用樹脂をエンドカバーの凹部を通してシール用溝部内に充填する作業と、該凹部内に充填する作業とを行い、凹部内及びシール用溝部内に充填したシール用樹脂により、フランジとエンドカバーとの間をシールする。
【0025】
本発明はまた、エンドカバーにグロメットが取り付けられて、モータの構成要素から導出されたコードがグロメットを通して外部に引き出されるモータを製造する方法にも適用される。本発明の方法においては、モータケースの径方向に沿ってエンドカバーの周壁部の一部を貫通するとともにフランジ側に開口した切欠き部をエンドカバーに設けるとともに、フランジに当接するエンドカバーの端面に、ケース本体の周方向に伸びて両端が切欠き部内に開口したシール用溝部を形成しておき、シール用溝部の切欠き部内への開口部を塞がないようにしてエンドカバーの中空部側から切欠き部内にグロメットを嵌合させて該グロメットによって切欠き部のエンドカバー内への開口部を閉塞することにより、モータケースの径方向の外側に開口した凹部を切欠き部の内側に形成する。そして、モータの構成要素の内、ケース本体内に収容すべき部品をケース本体内に収容し、エンドカバー内に配設すべき部品を該エンドカバー内に配設した後、エンドカバーをケース本体のフランジに締結して内部にモータの構成要素が収容されたモータケースを組み立てる。その後、溶融したシール用樹脂をエンドカバーの凹部を通してシール用溝部内に充填する作業と、該凹部内に充填する作業とを行い、凹部内及びシール用溝部内に充填されたシール用樹脂により、フランジとエンドカバーとの間をシールするとともに、凹部内に充填した樹脂によりグロメットと切欠き部との嵌合部及びグロメットからのコード引き出し部のシールを図る。
【0026】
上記のように、本発明の方法では、Oリングを正しく機能させるための配慮をすることなく、ケース本体のフランジにエンドカバーを直接締結して、内部にモータの構成要素が収容されたモータケースを組み立てた後、エンドカバーに設けられた凹部を通して、シール用溝部内及び凹部内に樹脂を充填するだけで、ケース本体のフランジとエンドカバーとの間のシールを図ることができるため、Oリング収容溝にOリングを正しく挿入する作業や、グロメットにシール材を塗布する作業を必要とせず、モータの組み立てを簡単にすることができる。また従来の組み立て方法による場合には、Oリング収容溝の深さの加工精度の管理など、各部の加工精度の管理を厳密に行う必要があったが、本発明によれば、フランジ面及びエンドカバーのフランジ当接面に多少の粗さがあっても両者間のシールを図ることができるため、製造を容易にすることができきる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、エンドカバーに外側に開口した凹部を設けるとともに、この凹部内に両端が開口したシール用溝部を、エンドカバーのフランジ当接面に設けて、エンドカバーに締結されたフランジによりケース本体側への開口部が閉じられたエンドカバーの凹部及びシール用溝部の内部にシール用樹脂を充填するようにしたので、充填されたシール用樹脂がエンドカバー及びフランジの対向面に形成されている微細な凹部や両者の突き合わせ部に形成されている微細な隙間を埋めて、エンドカバーとフランジとの間のシールを図るため、フランジ及びエンドカバーの対向面の加工精度が多少粗くても、またシール用溝部の加工精度が多少粗くても、両者の突き合わせ部のシールを確実に図って、高い耐水性を得ることができる。
【0028】
またエンドカバーにグロメットが取り付けられて、該グロメットを通してコードが引き出されるモータに本発明を適用した場合には、エンドカバーの凹部内に充填されたシール用樹脂により、グロメットと切欠き部との間の嵌合部、及びグロメットからのコード引き出し部のシールを図ることができるため、上記の効果に加えて、グロメットにシール剤を塗布する面倒な作業を行わずに、高い耐水性を有するモータを得ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1ないし図5は本発明の一実施形態を示したもので、図1は本発明に係わるモータで用いるケース本体と、エンドカバーとグロメットとを示した分解斜視図、図2は図1に示されたグロメットにコードを通した状態を示した分解斜視図、図3はエンドカバーにグロメットを取り付けた状態を示した斜視図、図4は図3のエンドカバーの上にケース本体を載せてケース本体のフランジとエンドカバーとを締結した状態を示した斜視図、図5は本発明に係わるモータの完成時の外観を示した斜視図である。
【0030】
図1において、11は、一端が開口した円筒状のケース本体、12は中空部を有し、ケース本体1の開口部を閉じるように配置されるエンドカバー、13はケース本体内に収容されたモータ本体から導出されたコードを引き出すグロメットであり、ケース本体11とエンドカバー12とによりモータケース17が構成されている。
【0031】
ケース本体11は、一端が開口し、他端が端部壁11aにより閉じられた周壁部11bと、該周壁部の開口部の外周に形成されたフランジ11cとを有し、端部壁11aの中央部には、モータの回転軸(図示せず。)の一端を支持する軸受けを保持する軸受け保持部11dが形成されている。
【0032】
エンドカバー12は、円筒面状の内周面を有する中空部12aが形成され、この中空部の内周部には、ケース本体側に突出した円筒状の突出壁12bが形成されている。エンドカバー12のケース本体11側の端面には、突出壁12bを外側から同心的に囲むように、フランジ11cを当接させるフランジ当接面12cが形成され、フランジ当接面12cには、ケース本体11の周壁部11bの周方向(突出壁12bの周方向)に沿って伸びるシール用溝部12dが形成されている。エンドカバー2にはまた軸受け保持部(図示せず。)が設けられ、この軸受け保持部に保持された軸受けによりロータの回転軸が支持される。
【0033】
エンドカバー12の中空部12aを取り囲む周壁部12eは、正方形状の輪郭を有するように形成されていて、この周壁部12eの一部と突出壁12bの一部とを貫通して、ケース本体11のフランジ11c側に開口した断面U字状の切欠き部12fが形成されている。この切欠き部12fは、グロメット13を嵌合させ得る形状(図示の例ではU字状)に形成されていて、エンドカバー12の径方向の両側とケース本体のフランジ11c側との3方向に開口しており、フランジ当接面に形成されたシール用溝部12dの両端がこの切欠き部12f内に開口させられている。
【0034】
グロメット13は、ゴム等の弾性を有する絶縁材料からなっていて、切欠き部12f内に圧縮された状態で嵌合するU字状の断面形状を有するグロメット本体13aと、エンドカバーの中空部12a内に臨むように配置されるグロメット本体13aの背面側に、該グロメット本体と一体に形成された背板部13bとを有し、グロメット本体13a及び背板部13bを貫通させて、2つのコード引出孔13c及び13dが形成されている。グロメット本体13aの前面側(背板部13bと反対側)には段部13a1が形成されて、グロメット本体の先端(ケース本体側の端部)側の肉厚が薄くされ、これにより、グロメット13を切欠き部12f内に嵌合させた際に、グロメット13がシール用溝部12dの両端の開口部を塞ぐことがないようにしている。背板部13bはグロメット本体13aの幅方寸法よりも大きい幅寸法を有していて、該背板部13bの幅方向の両端がグロメット本体13aよりも外側に張り出した状態で配置されている。グロメット本体13aを切欠き部12f内に嵌合させた際には、背板部13bのグロメット本体から突出した部分がエンドカバーの内周に当接してグロメット13を位置決めする。
【0035】
図1には、モータから引き出されるコードが図示されていないが、実際には、図2に示すように、モータの構成要素から導出された複数(図示の例では2本)のコード14,15がコード引出孔13c,13dを通して外部に引き出される。コード14,15は予めグロメット13に取り付けておく。
【0036】
モータの構成要素の内、ケース本体11内に収容される部品をケース本体11内に収容してロータの回転軸の一端を支持する軸受けを軸受け保持部11d内に挿入した後、図2に示されたように、外部に引き出すコード14,15が取り付けられたグロメット13の本体13aを、エンドカバー12の切欠き部12f内に嵌合させて、図3に示すように、エンドカバー12にグロメット3を取り付け、コード14及び15を切欠き部12f内を通して外部に引き出す。このようにグロメット13を取り付けることにより、切欠き部12fのエンドカバー内への開口部を閉鎖し、モータケースの径方向の外側とモータケース側とに開口した凹部12f′を切欠き部の内側に形成する。この場合、グロメット13がシール用溝部12dの両端の切欠き部内への開口部を塞がないようにしておき、図3に示したように、シール用溝部12dの両端を凹部12f′内に開口させておく。
【0037】
図3に示すように、グロメット13をエンドカバー12に取り付けた後、ケース本体11の開口部から突出している回転軸(図示せず。)の他端を、エンドカバー12の端部壁に設けられている回転軸導出孔を通して外部に導出しながら、該回転軸の他端側を支持する軸受けをエンドカバー12の底壁部に設けられている軸受け保持部内に挿入し、図4に示したように、エンドカバー12の上にケース本体11を載せて、そのフランジ11cをエンドカバーのフランジ当接面12cに当接させる。次いで、フランジ11cとエンドカバー12とをボルト18により締結する。このようにフランジ11cとエンドカバー12とを締結することにより、シール用溝部12d及び凹部12f′のケース本体側の開口部をフランジ11cにより閉じる。
【0038】
図4に示すように、エンドカバー12をケース本体のフランジ11cに締結して内部にモータの構成要素が収容されたモータケース17を組み立てた後、エンドカバー12の凹部12f′を通して、溶融したシール用樹脂をシール用溝部12d内に注入して、該シール用溝部内に樹脂を充填する作業と、該凹部12f′内の全体にシール用樹脂を充填する作業とを行い、図5に示すように、凹部12f′内及びシール用溝部12d内に充填されたシール用樹脂19により、フランジ11cとエンドカバー12との突き合わせ部をシールする。また凹部12f′内に充填された樹脂19により、グロメット13と切欠き部12fとの嵌合部及びグロメット13からのコード引出部のシールを図る。
【0039】
凹部12f′内及びシール用溝部12d内に樹脂を充填する際には、凹部12f′の開口部を上方に向けた状態で、凹部12f′内に樹脂注入ノズルを挿入して、先ずシール用溝部12dの一方の開口部から、射出成型における射出圧に比べて低い圧力で、該シール用溝部12d内に溶融したシール用樹脂を注入する。シール用溝部12d内に樹脂が充填されて、該溝部12dの他方の開口部から樹脂が流出するようになった後、更に凹部12f′内に樹脂を注入して、凹部12f′内全体を樹脂で満たす。その後充填したシール用樹脂を硬化させ、図5に示したようなモータを完成する。
【0040】
シール用樹脂としては、溶融した状態で流動性が良好なもの、例えばウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
【0041】
本発明者が行った実験により、上記のシール構造で、シール剤を一切用いることなく、JIS D 0203 D3に規定された最高ランクの浸水試験にも耐えることができる耐水性能が得られることが確認された。
【0042】
上記の実施形態では、エンドカバーにグロメット13を取り付けて、このグロメットを通してコードを引き出しているが、グロメットが設けられない場合、例えば、モータの端子をエンドカバー12にインサートして取り付ける場合にも本発明を適用することができる。グロメットが設けられないモータのケース本体のフランジとエンドカバーとの突き合わせ部のシールを図る場合には、図6に示したように、エンドカバーの径方向の外側とケース本体のフランジ側との2方向のみに開口した凹部12f′をエンドカバー12の周壁部に設けるとともに、エンドカバーのフランジ当接面12aに、両端が凹部12f′内に開口したシール用溝部12dを形成しておく。そして、モータの構成要素の内、ケース本体内に収容すべき部品をケース本体内に収容し、エンドカバー内に配設すべき部品を該エンドカバー内に配設した後、エンドカバーをケース本体のフランジに締結して内部にモータの構成要素が収容されたモータケースを組み立て、その後、エンドカバーの凹部12f′を通してシール用溝部内にシール用樹脂を充填する作業と、凹部12f′内全体に樹脂を充填する作業とを行って、フランジとエンドカバーとの間をシールする。
【0043】
上記の各実施形態において、ケース本体11は、モータのステータヨークを兼ねるものでもよく、単なるケースとしての機能を有するものでもよい。ケース本体11が単なるケースである場合、該ケース本体は非磁性金属や樹脂により形成することができる。
【0044】
上記の実施形態では、エンドカバー12が、ケース本体11の開口部を閉じる機能と、ロータの回転軸を支持する機能と、モータから引き出すコードを収容する機能とを有しているが、エンドカバー12は、更に他の部品、例えばモータの回転を減速する減速機を構成する歯車を収容するケースを兼ねるものであってもよい。
【0045】
上記の実施形態では、グロメットを通して2本のコードを引き出しているが、本発明においてグロメットから引き出すコードの数は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の一実施形態で用いるケース本体と、エンドカバーとグロメットとを示した分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示されたグロメットにコードを通した状態を示した分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示されたエンドカバーにグロメットを取り付けた状態を示した斜視図である。
【図4】図4は、図3に示されたエンドカバーの上にケース本体を載せてケース本体のフランジとエンドカバーとを締結した状態を示した斜視図である。
【図5】図5は、本発明に係わるモータの完成時の外観の一例を示した斜視図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態で用いるエンドカバーの構成例を示した斜視図である。
【図7】従来のモータの要部の構造を示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
11 ケース本体
11c フランジ
12 エンドカバー
12c フランジ当接面
12d シール用溝部
12f 切欠き部
12f′ 凹部
13 グロメット
14,15 コード
19 シール用樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、前記フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容されたモータにおいて、
前記エンドカバーに前記モータケースの径方向の外側及び前記フランジ側に開口した凹部が設けられ、
前記フランジに当接する前記エンドカバーの端面に、前記ケース本体の周方向に伸びて両端が前記凹部内に開口したシール用溝部が形成され、
前記エンドカバーに締結された前記フランジにより前記ケース本体側への開口部が閉じられた前記エンドカバーの凹部及び前記シール用溝部の内部にシール用樹脂が充填されて該シール用樹脂により前記フランジと前記エンドカバーとの間がシールされていること、 を特徴とするモータ。
【請求項2】
一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、前記フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容され、前記エンドカバーにグロメットが取り付けられて、前記モータの構成要素から導出されたコードが前記グロメットを通して外部に引き出されているモータにおいて、
前記モータケースの径方向に沿って前記エンドカバーの周壁部の一部を貫通するとともに前記フランジ側に開口した切欠き部が前記エンドカバーに設けられ、
前記グロメットは、前記エンドカバーの中空部側から前記切欠き部内に嵌合されて、該グロメットにより前記切欠き部の前記エンドカバー内への開口部が閉塞されることにより、前記切欠き部の内側に前記モータケースの径方向の外側に開口した凹部が形成され、
前記フランジに当接する前記エンドカバーの端面に、前記ケース本体の周方向に伸びて両端が前記凹部内に開口したシール用溝部が形成され、
前記エンドカバーに締結された前記フランジにより前記ケース本体側への開口部が閉じられた前記エンドカバーの凹部及び前記シール用溝部の内部にシール用樹脂が充填されて該シール用樹脂により前記フランジと前記エンドカバーとの間がシールされるとともに、前記凹部内に充填されたシール用樹脂により前記グロメットからのコード引き出し部が覆われて該コード引き出し部がシールされていること、
を特徴とするモータ。
【請求項3】
一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、前記フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容されたモータを製造する方法において、
前記エンドカバーに、前記モータケースの径方向の外側に開口した凹部を設けるとともに、前記フランジに当接する前記エンドカバーの端面に、前記ケース本体の周方向に伸びて両端が前記凹部内に開口したシール用溝部を形成しておき、
前記モータの構成要素の内、前記ケース本体内に収容すべき部品を前記ケース本体内に収容し、前記エンドカバー内に配設すべき部品を該エンドカバー内に配設した後、前記エンドカバーを前記ケース本体のフランジに締結して内部に前記モータの構成要素が収容されたモータケースを組み立てた後、溶融したシール用樹脂を前記エンドカバーの凹部を通して前記シール用溝部内に充填する作業と該凹部内に充填する作業とを行い、
前記凹部内及びシール用溝部内に充填されたシール用樹脂により、前記フランジと前記エンドカバーとの間をシールすること、
を特徴とするモータの製造方法。
【請求項4】
一端が開口し、開口端の外周にフランジが設けられた筒状のケース本体と、中空部を有し、前記フランジに当接されて該フランジに締結されたエンドカバーとからなるモータケースを備えて該モータケース内にロータ及びステータを含むモータの構成要素が収容され、前記エンドカバーにグロメットが取り付けられて、前記モータの構成要素から導出されたコードが前記グロメットを通して外部に引き出されているモータを製造する方法において、
前記モータケースの径方向に沿って前記エンドカバーの周壁部の一部を貫通するとともに前記フランジ側に開口した切欠き部を前記エンドカバーに設けるとともに、前記フランジに当接する前記エンドカバーの端面に、前記ケース本体の周方向に伸びて両端が前記切欠き部内に開口したシール用溝部を形成しておき、
前記シール用溝部の前記切欠き部内への開口部を塞がないようにして前記エンドカバーの中空部側から前記切欠き部内に前記グロメットを嵌合させて該グロメットによって前記切欠き部の前記エンドカバー内への開口部を閉塞することにより、前記モータケースの径方向の外側に開口した凹部を前記切欠き部の内側に形成し、
前記モータの構成要素の内、前記ケース本体内に収容すべき部品を前記ケース本体内に収容し、前記エンドカバー内に配設すべき部品を該エンドカバー内に配設した後、溶融したシール用樹脂を前記エンドカバーの凹部を通して前記シール用溝部内に充填する作業と該凹部内に充填する作業とを行い、
前記凹部内及びシール用溝部内に充填されたシール用樹脂により、前記フランジと前記エンドカバーとの間をシールするとともに、前記凹部内に充填された樹脂により前記グロメットと切欠き部との嵌合部及び前記グロメットからのコード引き出し部のシールを図ること、
を特徴とするモータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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