説明

モータ

【課題】磁路を構成するモータケースに開口部を設けた場合でも、磁気抵抗の増大を抑えることができるモータを提供すること。
【解決手段】モータのステータ5は、磁性材料からなるモータケース70と、側板部73の内面に外周面が接するステータコア61、62とを備えており、モータケース70は磁路を構成する部材として機能している。モータケース70の側板部73には、側板部73の先端まで到達する開口部75が形成されている。ステータコア61、62では、端板部610、620の外周に、開口部75の内側まで突出して開口部75の内縁750に接する突出部618、628が設けられている。このため、ステータコア61、62とモータケース70との接触面積が広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。さらに詳しくは、モータケースの一部を切り欠いて開口部を形成したモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、FDD、ODD等に用いられるステッピングモータ等は、回転軸の外周に永久磁石を備えたロータと、ロータの外周側に配置されたステータとを備えている(特許文献1参照)。かかるモータにおいては、モータケースを磁性材料により形成した構成や、ステータコアの一部をモータケースとして利用した構成を採用することにより、モータケースによって磁路を形成している。
【0003】
一方、モータの小型化を図ることを目的に、モータケースの一部を切り欠いて開口部を形成した構造が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20346号公報
【特許文献2】特開平11−89207号公報
【特許文献3】特開2007−202269号公報
【特許文献4】特開2002−238199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2〜4に記載の構成のように、モータケースに開口部を設けた場合、モータケースの内面とステータコアの外周面との接触面積が狭くなるため、磁気抵抗が増大し、磁束が流れ難くなってモータ特性が低下するという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、磁路を構成するモータケースに開口部を設けた場合でも、磁気抵抗の増大を抑えることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、回転軸の外周に永久磁石を備えたロータと、該ロータの外周側に配置されたステータと、を有するモータにおいて、前記ステータは、底板部および該底板部の外縁からモータ軸線方向に延在する側板部を備えた磁性材料からなるモータケースと、前記側板部の内面に外周面が接する端板部および該端板部からモータ軸線方向に突出する複数の極歯を備えたステータコアと、前記極歯の周りで周回するコイルと、を備え、前記側板部において前記ロータを挟んで対向する位置には、当該側板部の先端まで到達する開口部が形成され、前記ステータコアは、前記端板部の外周で前記開口部の内側まで突出して当該開口部の内縁に接する突出部を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、ステータは、底板部および側板部を備えた磁性材料からなるモータケースと、側板部の内面に外周面が接するステータコアとを備えており、モータケースは磁路を構成する部材として機能している。また、モータケースの側板部には、先端まで到達する開口部が形成されており、開口部が相対向する方向でのモータの寸法が小型化されている。ここで、ステータコアでは、端板部の外周に、開口部の内側まで突出して開口部の内縁に接する突出部が設けられているため、ステータコアは、開口部の内側でもモータケースと接している。従って、モータケースに開口部を設けた場合でも、ステータコアとモータケースとの接触面積が広いので、磁気抵抗の増大を低く抑えることができ、磁束が流れやすくなる。
【0009】
本発明において、前記突出部は、周方向の両端部分の各々が前記開口部の内縁に接していることが好ましい。かかる構成によれば、開口部の内側でのステータコアとモータケースとの接触面積が広いので、磁気抵抗の増大を低く抑えることができる。また、モータケースを基準にステータコアの位置を合わせることができる。
【0010】
本発明において、前記ステータは、前記ステータコアとして、前記底板部に重ねて配置される第1ステータコアと、前記側板部の先端部の内側に配置される第2ステータコアと、を備えていることが好ましい。ステータでは、モータケースの底板部に極歯を設けてモータケースをステータコアとして利用した構成、およびステータコアのみに極歯を設け、モータケースの底板部に極歯を設けない構成のいずれを採用してもよいが、本発明では、後者の構成を採用することが好ましい。かかる構成によれば、寸法の長い極歯を切り起こすのに適している。すなわち、磁性板のサイズの割には寸法の長い極歯を切り起こす場合、磁性板を延ばしながら極歯を切り起こすことになるが、かかる加工は、モータケースのように側板部を有する部材に対して行うには多大な手間がかかるのに対して、ステータコアのように平板状の部材であれば、部材を延ばしながら極歯を切り起こすという加工を比較的容易に行うことができる。それ故、モータケースとは別体のステータコアを用いることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第1ステータコアの前記突出部は、前記開口部の内縁に溶接されていることが好ましい。かかる構成によれば、モータケースにおいて開口部の形成によって強度が低下した部分を補強することができる。
【0012】
本発明において、前記ステータは、前記コイルが巻回された筒状胴部および該筒状胴部の両端に設けられたフランジ部を備えたコイルボビンを有し、当該コイルボビンは、前記フランジ部の外周から前記開口部の内側まで突出して当該開口部の内縁に接する突出部を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、モータケースを基準にコイルボビンの位置を合わせることができる。
【0013】
本発明において、前記コイルの外周部分は、前記開口部の内側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、側板部の厚さに相当する空間を利用してコイルの巻回数を増やすことができるので、大きなトルクを得ることができる。
【0014】
本発明において、前記底板部の外周形状は、前記開口部が形成されている側の縁が直線状に延在した長丸形状である構成を採用することができる。かかる構成によれば、開口部が相対向する方向でのモータのサイズを小型化することができる。
【0015】
この場合、前記側板部は、前記開口部が対向する第1方向と交差する第2方向で対向する位置で円弧状に湾曲する曲板部分と、該曲板部分に対して周方向の両側で連接して前記開口部を周方向の両側で挟む平板部分と、を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、モータケースに開口部を設けた場合でも、モータケースの強度が著しく低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、ステータは、底板部および側板部を備えた磁性材料からなるモータケースと、側板部の内面に外周面が接するステータコアとを備えており、モータケースは磁路を構成する部材として機能している。また、モータケースの側板部には、先端まで到達する開口部が形成されており、開口部が相対向する方向でのモータの寸法が小型化されている。ここで、ステータコアでは、端板部の外周に、開口部の内側まで突出して開口部の内縁に接する突出部が設けられているため、ステータコアは、開口部の内側でもモータケースと接している。従って、モータケースに開口部を設けた場合でも、ステータコアとモータケースとの接触面積が広いので、磁気抵抗の増大を低く抑えることができ、磁束が流れやすくなる。それ故、モータの特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したステッピングモータの全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用したステッピングモータのステータの説明図である。
【図3】本発明を適用したステッピングモータのステータの分解斜視図である。
【図4】本発明を適用したステッピングモータのステータにおいてモータケースとステータコアとを溶接した様子を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明を適用したモータの一例を説明する。なお、以下の説明では、各種のモータのうち、ステッピングモータに本発明を適用した場合を例示する。また、以下の説明では、モータ軸線L方向において、回転軸(モータ軸)が突出している側を「出力側L1」とし、回転軸が突出している側とは反対側を「反出力側L2」として説明する。また、以下の説明では、モータ軸線L方向に直交する方向を「第1方向X」とし、モータ軸線L方向および第1方向Xの双方に直交する方向を「第2方向Y」として説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したステッピングモータの全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、ステッピングモータの半断面図、およびA−A′断面図である。図2は、本発明を適用したステッピングモータのステータの説明図であり、図2(a)、(b)は、ステータ全体の説明図、および1相分のステータの説明図である。
【0020】
図1において、本形態のモータ1(ステッピングモータ)は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、FDD、ODD等に用いられる小型のステッピングモータである。かかるモータ1は、回転軸31の外周に円筒状の永久磁石33が固着されたロータ3と、ロータ3の外周側に配置されたステータ5とを有しており、ステータ5からはモータ軸線L方向の一方側(出力側L1)にロータ3の回転軸31が突出している。
【0021】
図1および図2に示すように、本形態のモータ1において、ステータ5は、2つのステータ組5A、5Bがモータ軸線L方向に2段に重ねて配置された構造を有しており、2つのステータ組5A、5Bは、同一構成をもって逆向きに重ねて配置されている。ステータ組5A、5Bは各々、コイル59が巻回された絶縁性のコイルボビン50と、コイルボビン50のモータ軸線L方向の両端部に重ねて配置された2つのステータコア61、62と、コイルボビン50およびステータコア61、62を内側に保持するモータケース70とを備えている。かかるステータ組5A、5Bに対応して回転軸31には2つの永久磁石33が固着されている。
【0022】
(モータケース70の構成)
以下、本形態のモータ1のステータ5の詳細構成を説明する。なお、本形態のステータ5において、2つのステータ組5A、5Bの構成は同一であるため、反出力側L2のステータ組5Aを中心に説明する。
【0023】
図3は、本発明を適用したステッピングモータのステータの分解斜視図である。図4は、本発明を適用したステッピングモータのステータにおいてモータケースとステータコアとを溶接した様子を示す分解斜視図である。
【0024】
図2、図3および図4に示すように、モータケース70は、中央に円形の穴711が形成された底板部71と、底板部71の外周縁からモータ軸線L方向に延在する側板部73とを備えている。本形態において、モータケース70は磁性材料からなり、磁路の一部を構成する機能を有している。
【0025】
底板部71の外周形状は長丸形状であり、底板部71において、第1方向Xで対向する2つの縁717は第2方向Yに向けて直線的に延在し、互いに平行である。また、底板部71の第2方向Yに位置する2つの縁718は円弧状であり、2つの縁717の端部に繋がっている。
【0026】
側板部73において、第1方向Xでロータ3を挟んで対向する2個所の各々には、縁717に対してモータ軸線L方向で重なる位置に四角形の開口部75が形成されている。本形態において、2個所の開口部75は同一形状であり、側板部73のモータ軸線L方向の全体にわたって形成されている。このため、開口部75は、側板部73の先端まで到達しており、側板部73は、2つの側板部73a、73bに分割されている。
【0027】
ここで、側板部73(側板部73a、73b)は、底板部71の円弧状の縁718および直線状の縁717からモータ軸線L方向に延在している。このため、側板部73(側板部73a、73b)は、第2方向Yで対向する位置で円弧状に湾曲する曲板部分738と、曲板部分738に対して周方向の両側で連接して開口部75を周方向の両側で挟む平板部分739とを備えている。
【0028】
なお、側板部73のうち、側板部73aの縁には、後述する内ステータコア(ステータ組5Aのステータコア62とステータ組5Bのステータコア62)の端板部620を位置決めするための切り欠き73cが形成されている。また、側板部73bには、後述する端子台54を外部に突出させるための切り欠き73dが形成されている。
【0029】
(ステータコア61、62の構成)
2つのステータコア61、62のうち、モータケース70の底板部71に重ねて配置されたステータコア61は、外ステータコア(第1ステータコア)であり、モータケース70の側板部73の先端部の内側に配置されたステータコア62は、内ステータコア(第2ステータコア)である。これらのステータコア61、62はいずれも、円形孔611、612が形成された端板部610、620と、円形孔611、621の内周縁からモータ軸線L方向に突出する複数の極歯613、623とを備えており、2つのステータコア61、62をコイルボビン50のモータ軸線L方向の両端部に重ねると、ステータコア61の極歯613とステータコア62の極歯623とは、コイルボビン50の内周面に沿って交互に並ぶことになる。この状態で、極歯613、623は、ロータ3の永久磁石33に対して径方向内側で所定の間隔を介して対向している(図1参照)。
【0030】
本形態において、極歯613、623は、ステータコア61、62を構成する磁性板から切り起こされた部分からなり、切り起こす前に極歯613、623が位置していた領域が円形孔611、621になっている。ここで、極歯613、623は、磁性板から切り起こされた部分からなるにもかかわらず、極歯613、623の長さ寸法は、円形孔611、621の半径より大である。かかる寸法の極歯613、623は、磁性板からの切り起こし部分をプレスにより延ばすことにより形成される。
【0031】
本形態において、ステータコア61(第1ステータコア/外ステータコア)の端板部610は、モータケース70の底板部71と略重なる長丸形状を有している。より具体的には、端板部610において、第2方向Yに位置する2つの縁617は円弧状である。また、端板部610において、第1方向Xに位置する2つの縁616は第2方向Yに直線的に延在しているとともに、かかる縁616には、モータケース70の開口部75の内部まで突出した突出部618が形成されている。本形態において、開口部75の内部とは、側板部73の板厚部分によって形成されている扁平な空間であり、開口部75の内縁750によって挟まれた部分である。
【0032】
本形態において、突出部618の第2方向Yにおける長さ寸法は、開口部75の第2方向Yにおける長さ寸法と同一あるいは略同一であり、突出部618の縁616からの突出寸法は、側板部73の厚さ寸法と同一あるいは略同一である。
【0033】
ステータコア62(第2ステータコア/内ステータコア)の端板部620も、ステータコア61の端板部610と略同様、モータケース70の底板部71と略重なる形状を有している。より具体的には、端板部620において、第2方向Yの一方側に位置する縁627aは円弧状である。但し、端板部620において、第2方向Yの他方側に位置する縁627bには、後述する端子台54との干渉を避けることを目的に切り欠き627cが形成されている。また、端板部620において、第1方向Xに位置する縁626は第2方向Yに直線的に延在しているとともに、かかる縁626には、モータケース70の開口部75の内部(側板部73の板厚部分によって形成されている部分/開口部75の内縁750によって挟まれた部分)まで突出した突出部628が形成されている。
【0034】
本形態において、突出部628の第2方向Yにおける長さ寸法は、開口部75の第2方向Yにおける長さ寸法と同一あるいは略同一であり、突出部628の縁626からの突出寸法は、側板部73の厚さ寸法と同一あるいは略同一である。なお、本形態では、第2方向Yの一方側に位置する円弧状の縁627aと直線状の縁626との間には段部629が形成されている。
【0035】
(コイルボビン50の構成)
コイルボビン50は、コイル59が巻回された筒状胴部51と、筒状胴部51のモータ軸線L方向の両端部で径方向外側に突出する2つのフランジ部52、53とを有している。2つのフランジ部52、53のうち、ステータコア61が位置する側のフランジ部52は、モータケース70の底板部71やステータコア61の端板部610と略重なる長丸形状を有している。より具体的には、フランジ部52において、第2方向Yに位置する縁527は円弧状である。また、フランジ部52において、第1方向Xに位置する縁526は第2方向Yに直線的に延在しているとともに、かかる縁526には、モータケース70の開口部75の内部まで突出した突出部528が形成されている。
【0036】
本形態において、突出部528の第2方向Yにおける長さ寸法は、開口部75の第2方向Yにおける長さ寸法と同一あるいは略同一であり、突出部528の縁526からの突出寸法は、側板部73の厚さ寸法と同一あるいは略同一である。
【0037】
コイルボビン50において、ステータコア62が位置する側のフランジ部53は、ステータコア62の端板部620と略重なる略矩形形状を有している。より具体的には、フランジ部53において、第2方向Yの一方側に位置する縁537は円弧状である。また、フランジ部53において、第2方向Yの他方側には、肉厚の端子台54が形成されている。端子台54には、径方向に突出する2本の端子ピン581、582が固着されている。端子ピン581、582には、コイル59の巻線端末591、592が絡げられており(図1参照)、端子ピン581、582と巻線端末591、592とはハンダ等により電気的に接続されている。また、フランジ部53において、第1方向Xに位置する縁536は第2方向Yに向けて直線的に延在しているとともに、かかる縁536には、モータケース70の開口部75の内部まで突出した突出部538が形成されている。
【0038】
本形態において、突出部538の第2方向Yにおける長さ寸法は、開口部75の第2方向Yにおける長さ寸法と同一あるいは略同一であり、突出部538の縁536からの突出寸法は、側板部73の厚さ寸法と同一あるいは略同一である。
【0039】
本形態において、筒状胴部51は円筒状であるが、第1方向Xで対向する2個所には、切り欠き55が形成されている。かかる切り欠き55は、筒状胴部51のモータ軸線L方向の全体にわたって形成されている。このため、図1(b)に示すように、筒状胴部51は、第2方向で対向する位置で円弧状に湾曲した曲板部51a、51bからなる。従って、筒状胴部51にコイル59を巻回すると、コイル59は、曲板部51a、51bに沿って巻回されている部分は円弧状に巻回される一方、切り欠き55に相当する部分では、直線的に巻回されることになる。本形態において、コイル59のうち、切り欠き55に相当する部分で直線的に巻回されている部分の外周部分590は、モータケース70の開口部75の内部に位置する。すなわち、本形態では、開口部75によって形成された側板部73の厚さ分の空間も一部のコイル59の巻回領域として利用されている。
【0040】
(組み立て後の開口部75内部等の構成)
かかる構成のステータ5を組み立てる際には、図1〜図4に示すように、モータケース70の底板部71にステータコア61、コイルボビン50およびステータコア62を順次重ねる。かかる組み立て工程において、図4に示すように、モータケース70の底板部71にステータコア61を重ねると、ステータコア61の端板部610は、底板部71に接するとともに、端板部610の外周は側板部73の内面に接する。また、突出部618は、開口部75の内部に嵌り、突出部618の第2方向Yの両端部は、開口部75の内縁750と接することになる。本形態では、モータケース70の底板部71にステータコア61を重ねた後、図4に溶接個所Wを示すように、開口部75に相当する部分で、ステータコア61の端板部610の縁とモータケース70の底板部71の縁とを2個所ずつ溶接してある。
【0041】
また、ステータコア61にコイルボビン50を重ねると、フランジ部52、53の外周は側板部73の内面に接する。また、突出部528、538は、開口部75の内部に嵌り、突出部528、538の第2方向Yの両端部は、開口部75の内縁750と接することになる。
【0042】
さらに、コイルボビン50にステータコア62を重ねると、ステータコア62の端板部620の外周は側板部73の内面に接する。また、突出部628は、開口部75の内部に嵌り、突出部628の第2方向Yの両端部は、開口部75の内縁750と接することになる。それ故、モータケース70において、側板部73は、ステータコア61の端板部610、およびステータコア62の端板部620に接するので、モータケース70を利用して磁路を形成することができる。
【0043】
なお、本形態では、2つのステータ組5A、5Bが用いられていることから、ステータ組5Aのモータケース70と、ステータ組5Bのモータケース70とは溶接等により連結される。
【0044】
(軸受等の構成)
図1に示すように、本形態のステータ5において、出力側に位置するステータ組5Bのモータケース70の底板部71には、コの字形状のプレート9が固着されており、プレート9の先端側屈曲部分91に保持されている軸受90および鋼球92によって、回転軸31の出力側L1の端部が支持されている。また、回転軸31は、モータ軸線L方向の他方側(反出力側L2)に配置された軸受80によっても支持されている。軸受80は、鋼球81と、この鋼球81を回転可能に保持する樹脂製の本体胴部82とを備えている。ここで、ステータ5に対して反出力側L2には、樹脂板状の軸受保持部材85が配置されており、軸受80(本体胴部82)は、軸受保持部材85の貫通穴850においてモータ軸線L方向で移動可能な状態にある。また、軸受保持部材85よりさらに反出力側L2には、金属薄板からなる付勢部材87が配置され、この付勢部材87において切り起こされた板バネ部(図示せず)によって、貫通穴850内の軸受80の端部(本体胴部82)が回転軸31に向けて付勢されている。その結果、ロータ3は、付勢部材87によって、モータ軸線L方向において出力側L1に向けて付勢されているので、回転軸31にガタツキが発生しない。ここで、付勢部材87は、ステータ組5Aのモータケース70に保持されている。
【0045】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態のモータ1において、ステータ5は、底板部71および側板部73を備えた磁性材料からなるモータケース70と、側板部73の内面に外周面が接するステータコア61、62とを備えており、モータケース70は磁路を構成する部材として機能している。また、モータケース70の側板部73には、側板部73の先端まで到達する開口部75が形成されており、開口部75が相対向する方向でのモータ1の寸法が小型化されている。ここで、ステータコア61、62では、端板部610、620の外周に、開口部75の内側まで突出して開口部75の内縁750に接する突出部618、628が設けられているため、ステータコア61、62は、開口部75の内側でもモータケース70と接している。従って、モータケース70に開口部75を設けた場合でも、ステータコア61、62とモータケース70との接触面積が広いので、磁気抵抗の増大を低く抑えることができ、磁束が流れやすくなる。それ故、モータ1の特性が向上する。
【0046】
また、突出部618、628の第2方向Yにおける長さ寸法は、開口部75の第2方向Yにおける長さ寸法と同一あるいは略同一であり、突出部618、628は、周方向の両端部分の各々が側板部73において開口部75を周方向の両側で挟む部分の内縁750に接している。このため、開口部75の内側でのステータコア61、62とモータケース70との接触面積が広いので、磁気抵抗の増大を低く抑えることができる。また、モータケース70を基準にステータコア61、62の位置を確実に合わせることができる。
【0047】
また、ステータコア61、62のうち、ステータコア61の突出部618は、開口部75の内縁750に溶接されている。このため、モータケース70において開口部75の形成によって強度が低下した部分を補強することができる。
【0048】
また、ステータ5は、ステータコアとして、モータケース70の底板部71に重ねて配置されるステータコア61(第1ステータコア)と、側板部73の先端部の内側に配置される第2ステータコア62とを備えている。ここで、ステータ5では、モータケース70の底板部71に極歯を設けてモータケース70をステータコアとして利用した構成、およびステータコアのみに極歯を設け、モータケース70の底板部71に極歯を設けない構成のいずれを採用してもよいが、本形態では、後者の構成を採用している。このため、寸法の長い極歯613、623を切り起こすのに適している。すなわち、磁性板のサイズの割には寸法の長い極歯613、623を切り起こす場合、磁性板を延ばしながら極歯613、623を切り起こすことになるが、かかる加工は、モータケース70のように側板部73を有する部材に対して行うには多大な手間がかかるのに対して、ステータコアのように平板状の部材であれば、部材を延ばしながら極歯613、623を切り起こすという加工を比較的容易に行うことができる。
【0049】
また、本形態において、ステータ5は、筒状胴部51の両端にフランジ部52、53を備えたコイルボビン50を有し、コイルボビン50は、フランジ部52、53の外周からモータケース70の開口部75の内側まで突出して開口部75の内縁750に接する突出部528、538を備えている。このため、モータケース70を基準にコイルボビン50の位置を正確に合わせることができる。
【0050】
また、モータケース70の側板部73の厚さ寸法を利用して、コイル59は、外周部分590が開口部75の内側に位置するまで巻回されている。このため、コイル59の巻回数を増やすことができるので、大きなトルクを得ることができる。
【0051】
また、モータケース70の底板部71の外周形状は、開口部75が形成されている側の縁が直線状に延在した長丸形状であるため、開口部75が相対向する第1方向Xでのモータ1のサイズを小型化することができる。また、モータケース70の側板部73は、第2方向Yで対向する位置で円弧状に湾曲する曲板部分738と、曲板部分738に対して周方向の両側で連接して開口部75を周方向の両側で挟む平板部分739とを備えている。このため、モータケース70に開口部75を設けた場合でも、モータケース70の強度が著しく低下することを防止することができる。
【0052】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、ステータ5が、ステータコアとして、モータケース70の底板部71に重ねて配置されるステータコア61(第1ステータコア)と、側板部73の先端部の内側に配置されるステータコア62(第2ステータコア)とを備えている構成であったが、モータケース70の底板部71に極歯を設け、ステータコア61を備えていないモータ1に本発明を適用してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、ステータ5の断面が長丸形状のモータ1に本発明を適用したが、ステータ5の断面が真円形状のモータ1に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・モータ
5・・ステータ
50・・コイルボビン
51・・コイルボビンの筒状胴部
52、53・・フランジ部
59・・コイル
61、62・・ステータコア
70・・モータケース
71・・底板部
73・・側板部
75・・開口部
528、538・・コイルボビンの突出部
610、620・・端板部
613、623・・極歯
618、628・・ステータコアの突出部
738・・曲板部分
739・・平板部分
750・・開口部の内縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周に永久磁石を備えたロータと、該ロータの外周側に配置されたステータと、を有するモータにおいて、
前記ステータは、底板部および該底板部の外縁からモータ軸線方向に延在する側板部を備えた磁性材料からなるモータケースと、前記側板部の内面に外周面が接する端板部および該端板部からモータ軸線方向に突出する複数の極歯を備えたステータコアと、前記極歯の周りで周回するコイルと、を備え、
前記側板部において前記ロータを挟んで対向する位置には、当該側板部の先端まで到達する開口部が形成され、
前記ステータコアは、前記端板部の外周で前記開口部の内側まで突出して当該開口部の内縁に接する突出部を備えていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記突出部は、周方向の両端部分の各々が前記開口部の内縁に接していることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータは、前記ステータコアとして、前記底板部に重ねて配置される第1ステータコアと、前記側板部の先端部の内側に配置される第2ステータコアと、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1ステータコアの前記突出部は、前記開口部の内縁に溶接されていることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータは、前記コイルが巻回された筒状胴部および該筒状胴部の両端に設けられたフランジ部を備えたコイルボビンを有し、
当該コイルボビンは、前記フランジ部の外周から前記開口部の内側まで突出して当該開口部の内縁に接する突出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記コイルの外周部分は、前記開口部の内側に位置することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記底板部の外周形状は、前記開口部が形成されている側の縁が直線状に延在した長丸形状であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ。
【請求項8】
前記側板部は、前記開口部が対向する第1方向と交差する第2方向で対向する位置で円弧状に湾曲する曲板部分と、該曲板部分に対して周方向の両側で連接して前記開口部を周方向の両側で挟む平板部分と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−249504(P2012−249504A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121951(P2011−121951)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)