説明

モータ

【課題】モータ軸線方向と直交する方向の寸法を小型化しても、モータ軸線方向における軸受に対する支持寸法およびバネ部材と軸受ホルダとの係合力を低下させずに、軸受を支持する軸受保持穴の寸法や形状に高い精度を得ることのできるモータを提供すること。
【解決手段】モータにおいて、軸受ホルダ81の内側端面でバネ部材80のフック部801〜804が係合する部分は、軸受ホルダ81の肉薄部分によって形成された係合凹部811〜814である。係合凹部811〜814のうち、係合凹部811、813は、軸受保持穴810の開口縁の周方向の一部にかかって切り欠き811m、813mを形成している。軸受保持穴810の開口縁において係合凹部811、813がかかっている部分は、軸受保持穴810の開口縁の全周の1/2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。さらに詳しくは、軸受を回転軸の軸端に向けて付勢するバネ部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スリムODDなどに用いられる小型のステッピングモータは、一般に、図7(a)〜(f)に示すように構成されている。図7(a)〜(f)は、モータの端部の平面図、正面図、反出力側端部を示す側面図、軸受ホルダの反出力側端面の説明図、軸受ホルダの断面図、および軸受ホルダの出力側端面の説明図であり、図7に示すモータは、ロータおよびコイルが収納されたケース2′と、このケース2′の一方端側でロータの回転軸の軸端を受ける軸受82′と、この軸受82′が挿入される軸受保持穴810′を備えた軸受ホルダ81′とを有している。また、軸受ホルダ81′の反出力側には、軸受保持穴810′内の軸受82′を回転軸に向けて付勢する板バネ部83′を備えたバネ部材80′が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成したステッピングモータにおいて、ケース2′は、モータ軸線に直交する方向で切断したときに真円形状の円筒状に形成されているが、モータ軸線方向と直交する方向における厚さ寸法(径方向における厚さ寸法)を小さくすることを目的に、例えば、図7(c)に示すような断面楕円形にすることもある。いずれの場合も、バネ部材80′については軸受ホルダ81′に固定する必要があるため、従来は、バネ部材80′に対して、軸受ホルダ81′の外周側面の略中央位置を回り込んで軸受ホルダ81′に係合する4つのフック部801′、802′、803′、804′を形成する一方、軸受ホルダ81′の出力側端面81b′において、フック部801′、802′、803′、804′が係合する部分については、軸受ホルダ81′の肉薄部分によって係合凹部811′、812′、813′、814′(図7(f)において斜線を付した領域)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−324892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなステッピングモータに対しては、モータ軸線方向と直交する方向における厚さ寸法、例えば、図7(c)に示す寸法Dを小さくすると、係合凹部811′、812′、813′、814′と軸受保持穴810′の周囲との間に残る軸受ホルダ81′の肉厚部分の最小幅寸法tが狭くなりすぎて、軸受保持穴810′の寸法や形状の精度が著しく低下するという問題点がある。かといって、係合凹部811′、812′、813′、814′の幅寸法を狭くすると、軸受ホルダ81′に対するバネ部材80′(フック部801′、802′、803′、804′)の係合力が低下するという問題点がある。また、軸受ホルダ81′全体を肉薄部分とすると、モータ軸線方向における軸受82′に対する支持寸法が短くなって、軸受82′が不用意に傾いてしまうという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、モータ軸線方向と直交する方向の寸法を小型化しても、モータ軸線方向における軸受に対する支持寸法およびバネ部材と軸受ホルダとの係合力を低下させずに、軸受を支持する軸受保持穴の寸法や形状に高い精度を得ることのできるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、回転軸の軸端を支持する軸受と、該軸受が内側に装着された軸受保持穴がモータ軸線方向に貫通し、ステータの端面に固着された軸受ホルダと、該軸受ホルダにおいて前記回転軸が位置する側であって前記ステータの前記端面に固着された内側端面、および前記回転軸が位置する側とは反対側であって前記モータ軸線方向において前記ステータとは反対側の面である外側端面のうち、該外側端面に被さった状態で前記軸受を前記回転軸に向けて付勢するバネ部材と、を有するモータにおいて、前記バネ部材は、前記モータ軸線方向から前記軸受ホルダに装着されるものであって、前記外側端面の側から前記軸受ホルダの外周側を通って前記軸受ホルダの前記内側端面に係合する複数のフック部を備え、前記軸受ホルダの前記内側端面において前記複数のフック部が係合する部分は、当該軸受ホルダの肉薄部分によって形成された係合凹部になっており、当該係合凹部は、前記軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかって当該開口縁の一部に切り欠きを形成していることを特徴とする。
【0008】
本発明では、軸受ホルダの内側端面においてバネ部材の複数のフック部が係合する部分は、当該軸受ホルダの肉薄部分によって形成された係合凹部になっているため、軸受ホルダにバネ部材を装着した状態で、軸受ホルダおよびバネ部材がモータ軸線方向で占める寸法が短くて済む。また、フック部が係合する係合凹部は、軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかっているため、フック部を軸受ホルダに深く係合させてフック部と軸受ホルダとの係合力を高めた場合でも、軸受保持穴と係合凹部とに挟まれた幅の狭い部分は除去されて切り欠きになっており、軸受保持穴と係合凹部とに挟まれた部分には、寸法精度や形状精度が低くなりがちな肉薄部分が形成されない。従って、軸受保持穴の寸法や形状の精度が高い。また、軸受保持穴に対して係合凹部がかかるのは、軸受保持穴の開口縁の一部であり、軸受保持穴の全周の一部は、軸受ホルダの肉厚部分で構成されているので、軸受ホルダにおける軸受に対する支持寸法が部分的ではあるが長くなっているので、軸受が不用意に傾くことがない。
【0009】
本発明では、前記軸受保持穴の開口縁において前記切り欠き(前記軸受保持穴の開口縁において前記係合凹部がかかっている部分)が占める部分は、前記軸受保持穴の開口縁の全周の1/2以下であることが好ましい。このように構成すると、軸受保持穴の全周の1/2を超える部分が軸受ホルダの肉厚部分で構成されているので、軸受ホルダにおいて軸受をモータ軸線方向で長い寸法で支持する部分が占める割合を十分確保することができる。それ故、軸受が不用意に傾くことがない。
【0010】
本発明では、前記軸受ホルダの前記内側端面を平面視したとき、前記軸受ホルダにおいて前記軸受保持穴と前記係合凹部とに挟まれた部分(軸受ホルダの肉厚部分)の最小幅寸法は、0.2mm以上であることが好ましい。かかる寸法以上であれば、十分な精度を得ることができるので、軸受保持穴の寸法や形状の精度を低下させることがない。
【0011】
本発明において、前記ステータは、前記モータ軸線方向からみたとき、断面長円形状であり、前記係合凹部のうち、前記ステータの短径方向に位置する係合凹部が前記軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかって当該開口縁の一部に前記切り欠きを形成している構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るモータおいては、軸受ホルダの出力側端面においてバネ部材の複数のフック部が係合する部分は、当該軸受ホルダの肉薄部分によって形成された係合凹部になっているため、軸受ホルダにバネ部材を装着した状態で、軸受ホルダおよびバネ部材がモータ軸線方向で占める寸法が短くて済む。また、フック部が係合する係合凹部は、軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかっているため、フック部を軸受ホルダに深く係合させてフック部と軸受ホルダとの係合力を高めた場合でも、軸受保持穴と係合凹部との間に肉薄部分が形成されないので、軸受保持穴の寸法や形状の精度が高い。また、軸受保持穴に対して係合凹部がかかるのは、軸受保持穴の開口縁の一部であり、軸受保持穴の全周の一部は、軸受ホルダの肉厚部分で構成されているので、軸受ホルダにおける軸受に対する支持寸法が部分的ではあるが長くなっているので、軸受が傾くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)、(b)、(c)は各々、本発明の参考例1に係るモータの平面図、正面図、および反出力側の断面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明の参考例1に係るモータを反出力側からみたときの側面図、軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を出力側からみた説明図、軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を図2(b)の矢印A1側からみた底面図、および軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を図2(b)の矢印B1側からみた正面図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は各々、本発明の参考例1に係るモータに用いたバネ部材7を出力側からみた説明図、バネ部材を図3(a)の矢印A3で示す方向からみた説明図、およびバネ部材を図3(a)の矢印B3で示す方向からみた説明図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明の参考例1に係るモータに用いた軸受ホルダを反出力側からみた説明図、軸受ホルダを図4(a)の矢印A4で示す方向からみた説明図、軸受ホルダを図4(a)の矢印B4で示す方向からみた説明図、および軸受ホルダを出力側からみた説明図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明の参考例2に係るモータに用いた軸受ホルダを反出力側からみた説明図、軸受ホルダを図5(a)の矢印A5で示す方向からみた説明図、軸受ホルダを図5(a)の矢印B5で示す方向からみた説明図、および軸受ホルダを出力側からみた説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るモータの説明図である。
【図7】従来のモータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明を適用したモータについて説明する。なお、以下の説明において、モータの回転軸が突出している側を「出力側(先端側)」とし、モータの回転軸が突出している側とは反対側を「反出力側(基端側)」として説明する。また、本発明を適用した軸受構造は、回転軸の出力側(先端側)および反出力側(基端側)のいずれに適用してもよいが、本発明を適用した軸受構造を回転軸の反出力側(基端側)に適用した場合を以下に説明する。
【0015】
[参考例1]
(モータの全体構成)
図1(a)、(b)、(c)は各々、本発明の参考例1に係るモータの平面図、正面図、および反出力側の断面図である。図2(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明の参考例1に係るモータを反出力側からみたときの側面図、軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を出力側からみた説明図、軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を図2(b)の矢印A1側からみた底面図、および軸受ホルダにバネ部材が装着された様子を図2(b)の矢印B1側からみた正面図である。
【0016】
図1(a)、(b)、(c)、および図2(a)に示すように、本形態のモータ1は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどに用いられる小型のステッピングモータであり、インシュレータ3aに巻回された環状のコイル3b、およびこのコイル3bの軸線方向の両側に配置された一対のステータコア3cを備えたステータ組31、32がモータ軸線方向(z方向)に2段に積層された筒状のステータ3を備えている。ステータコア3cは、内コア3dおよび外コア3eからなり、コイル3bの内周面に沿って並ぶ多数の極歯3fを備えている。また、一対のステータコア3cの各々に形成された極歯3fは、コイル3bの周方向に交互に配置されている。軸線方向の最も外側に位置する2つの外コア3eは、コイル3bの外周側に位置する部分がケース2を構成している。ステータ組31、32の外周側には、端子部35、36が形成されており、この端子部35、36にコイル3dの端末が接続されている。
【0017】
ステータ3は、モータ軸線方向からみたとき、相対向する側面部が平坦面になっている一方、他の側面部が円弧状に形成された断面長円形状であり、長径方向と短径方向とを有している。
【0018】
筒状のステータ3の内側には、回転軸41の反出力側の外周面にロータマグネット42が装着されたロータ4が配置されている。ロータマグネット42の外周面には、S極とN極が周方向において交互に配置されている。回転軸41の両軸端は各々、軸受11、12によって回転可能に支持されており、軸受11は、回転軸41の反出力側軸端の凹部に一部が入り込んだ金属製またはセラミック製の球体13と、この球体13を受ける有底の凹部14aを備えた円盤状の樹脂製の軸受本体14とによって構成されている。
【0019】
ステータ3において、回転軸41が延びている側(出力側/先端側)とは反対側の反出力側には、軸受保持穴61を備えた略矩形状の軸受ホルダ6、およびバネ部75を備えたバネ部材7が配置されている。軸受ホルダ6の軸受保持穴61には軸受11(軸受本体14)がモータ軸線方向(z方向)に移動可能に挿入されているとともに、軸受保持穴61内に延びるバネ部75が、この軸受11の後端面に当接することにより、軸受11は回転軸41に向けて付勢されている。
【0020】
ステータ3において、先端側の端面には断面コの字状のフレーム90が固定されており、このフレーム90において、ステータ3と一定の距離をおいて対向する対向板部90aには、回転軸41の先端側軸端を受ける軸受12が保持されている。
【0021】
(バネ部材の装着構造の概要)
各部材の構成を説明する前に、図2(a)、(b)、(c)、(d)を参照して、本形態のモータ1において、軸受ホルダ6に対するバネ部材7の装着構造の概要を説明する。
【0022】
図1および図2(a)を参照して説明したように、本形態では、ロータ4の周りを囲むステータ3(ステータ組31、32)と、ステータ3の反出力側端面30に対して溶接などの方法で固着された軸受ホルダ6とによって固定体10が構成され、この固定体10の反出力側にバネ部材7が装着された構造を有している。
【0023】
バネ部材7を固定体10の反出力側(軸受ホルダ6)に装着するにあたって、本形態では、図1(a)に示すように、ステータ3の反出力側に軸受ホルダ6を固定した状態において、モータ軸線方向(z方向)と直交する左右方向(x方向)、および上下方向(y方向)のうち、左右方向(x方向)で相対向する両側に、同一方向(上方)に開放端を向けた左右一対の係合溝95がモータ軸線方向と交差する方向に形成されている。
【0024】
図1および図2に示すように、バネ部材7は所定形状に加工された金属製の板材からなり、舌片状に斜めに切り起こされたバネ部75を備えた底面部71と、底面部71の相対向する左右の側端部の各々から屈曲した一対の側板部72と、一対の側板部72の各々の先端側から互いに内向きに屈曲した一対のフック部73とを備えている。
【0025】
従って、軸受ホルダ6に対してバネ部材7を装着する際、矢印sで示すように、バネ部材7をモータ軸線方向と直交する方向からスライドさせると、バネ部材7の底面部71が、軸受ホルダ6の両面のうち、回転軸41が位置する側とは反対側の外側端面6aに重なるとともに、一対のフック部73が一対の係合溝95内に開放端側から進入し係合する。その際、バネ部75が引っ掛からないようにバネ部75の根元部分が前側に位置するようにバネ部材7をスライドさせる。
【0026】
本形態において、一対の係合溝95は、ステータ3の反出力側端面30と、ステータ3の反出力側端面30と重なる軸受ホルダ6の内側端面6b(軸受ホルダ6において回転軸41が位置する側の端面)に形成された係合凹部65とより形成されており、かかる係合凹部65は、軸受ホルダ6の内側端面6bの相対向する端縁において、軸受ホルダ6の肉薄部分により一対、形成されている。
【0027】
また、係合凹部65は、ステータ3の反出力側に軸受ホルダ6を固定した際、ステータ3の反出力側端面30と間に、図1(a)に示す係合溝95を構成する。
【0028】
(バネ部材7の詳細構成)
本形態のモータ1において、図1および図2を参照して説明したバネ部材7の装着構造を実現するために、バネ部材7は、図3を参照して以下に説明する構造を備えている。
【0029】
図3(a)、(b)、(c)は各々、本発明の参考例1に係るモータに用いたバネ部材7を出力側からみた説明図、バネ部材7を図3(a)の矢印A3で示す方向からみた説明図、およびバネ部材を図3(a)の矢印B3で示す方向からみた説明図である。
【0030】
図2および図3(a)、(b)、(c)に示すように、バネ部材7は、略矩形の板状の底面部71と、底面部71においてモータ軸線方向(z方向)に対して直交する左右方向(x方向)の両端縁で屈曲する左右一対の側板部72と、一対の側板部72の先端部の各々において互いに内側に向けて起立する一対のフック部73とを備えており、バネ部材7において、フック部73が形成されている側は、モータの短径方向である。
【0031】
本形態においては、一対の側板部72はいずれも、底面部71に対して略垂直に折れ曲げられている。また、一対のフック部73はいずれも、側板部72に対して垂直よりやや深く折れ曲げられており、側板部72とフック部73とが成す角は鋭角である。
【0032】
底面部71には、その中央部を斜めに切り起こされた板バネ状のバネ部75が形成されており、バネ部75の先端部75aは、底面部71と略平行になるように浅く折り曲げられている。このように構成したバネ部75は、軸受11のがたつきを防止することを目的に、軸受11の中心軸線からずれた位置を押圧しており、クリアランス分だけ、軸受保持穴61において軸受11をわずかに傾けた姿勢に保持する。また、バネ部75には、小穴75cが形成されており、かかる小穴75cは、軸受11の反出力側端面の中心に位置している。このため、軸受11を樹脂成形した際のゲートが軸受11の反出力側端面の中心に位置していることにより、軸受11の反出力側端面の中心にバリが発生した場合でも、バネ部75は、バリを避けた位置を押圧することができる。
【0033】
底面部71において、モータ軸線方向(z方向)に対して直交する上下方向(y方向)の上端側には、幅方向における中央部分に突出部71bが形成されており、この突出部71bからはモータ軸線方向における先端側に向けて屈曲した板状のストッパ部79が形成されている。ストッパ部79は、底面部71に対して略垂直に折れ曲げられている。
【0034】
バネ部材7において、一対のフック部73はいずれも、モータ軸線方向(z方向)に対して直交する上下方向(y方向)の下端側から上端側に向かう途中位置まで略等しい幅寸法の直線部73gを備えているが、上端側付近(スライド方向sにおける後端側位置)には、内周側方向に突き出た略三角形の突部74が形成されている。突部74は、スライド方向sにおける前側の辺74aがスライド方向sに対して鋭角を成す略三角形状、例えば、スライド方向sにおける前側の辺74aはスライド方向sに対して約30°の斜辺で、後側の辺74bはスライド方向sに直角な辺を備えた略三角形状を有している。また、フック部73は、スライド方向sにおける前端側の角部73bがR形状になっている。
【0035】
(軸受ホルダ6の詳細構成)
図4(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明の参考例1に係るモータ1に用いた軸受ホルダ6を反出力側からみた説明図、軸受ホルダ6を図4(a)の矢印A4で示す方向からみた説明図、軸受ホルダ6を図4(a)の矢印B4で示す方向からみた説明図、および軸受ホルダ6を出力側からみた説明図である。
【0036】
図4において、軸受ホルダ6はSUS製、かつ略矩形状であり、その略中央には、図1を参照して説明した軸受11が挿入される貫通穴からなる軸受保持穴61が形成されている。なお、軸受ホルダ6については、鉄系あるいはその他の金属や、樹脂によって形成する場合もある。
【0037】
軸受ホルダ6において、ステータ3とは反対側に位置する外側端面6aには、軸受保持穴61の略周辺にy方向に沿って延びる浅い凹部66が広い範囲にわたって形成されており、かかる凹部66は、バネ部材7をスライドさせたときにバネ部75の移動軌跡を含む領域である。このため、バネ部材7をスライドさせたときに、バネ部75は、軸受ホルダ6の外側端面6aに強い力で接触しない。
【0038】
軸受ホルダ6において、ステータ3の反出力側端面30(図1(c)参照)と重なる内側端面6bでは、軸受ホルダ6の肉薄部分によって、左右方向(x方向)の両側で両端縁に沿って上下方向(y方向)に延びた一対の係合凹部65(図4(d)に斜線を付した領域)が形成されている。従って、図1(c)に示すように、ステータ3の反出力側端面30と軸受ホルダ6の内側端面6bとが接するように、ステータ3に軸受ホルダ6を重ねると、図1(a)に示すように、ステータ3の反出力側端面30と軸受ホルダ6の内側端面6bとの間には、左右一対の係合凹部65により左右一対の係合溝95が形成される。
【0039】
再び図4において、一対の係合凹部65はいずれも、y方向の上端縁から下端側に向かう途中位置まで延びている。このため、一対の係合溝95はいずれも、上方に向かう端部が開放端になっている一方、下端側は、係合凹部65の端部65bにより閉塞している。
【0040】
一対の係合凹部65では、スライド方向sに対して平行に直線的に延びる直線部分65gが形成されているとともに、上端側(スライド方向sにおける手前側)が、略三角形の平面形状をもつ三角部分65aによって幅が左右に広がっている。ここで、三角部分65aは、フック部73に形成した突部74と略同一形状を備えており、三角部分65aは、スライド方向sにおける前側の辺65eがスライド方向sに対して鋭角を成す略三角形状、例えば、スライド方向sにおける前側の辺65eはスライド方向sに対して約30°の斜辺で、後側の辺65fはスライド方向sに直角な辺を備えた略三角形状を有している。従って、図2を参照して説明したように、バネ部材7をスライドさせて、バネ部材7のフック部73を係合溝95内で移動させると、フック部73の突部74が係合凹部65の三角部分65aに嵌る。
【0041】
その際、スライド方向sの後端側では、一対の係合凹部65においてスライド方向sに対して平行に直線的に延びる直線部分65gによって形成された段部65hがバネ部材7に対するガイド部として機能する。
【0042】
このように構成した軸受ホルダ6において、一対の係合凹部65は、スライド方向sにおける途中部分(直線部分65gと三角部分65aとの境界付近)で軸受保持穴61に向かって幅寸法が拡がって軸受保持穴61の開口縁まで届いており、係合凹部65は、軸受保持穴61の開口縁の一部にかかっている。このため、軸受保持穴61の開口縁のうち、係合凹部65がかかっている部分には、モータ軸線方向に係合凹部65の深さ分だけ凹んだ切り欠きが形成されている。従って、軸受ホルダ6の内側端面を平面視した際、軸受保持穴61と係合凹部65とによって挟まれた部分には、肉薄部分が発生せず、軸受保持穴61と係合凹部65とによって挟まれた部分では、最も狭い部分6sでも、最小幅寸法tが0.2mm以上になっている。また、軸受保持穴61の開口縁において係合凹部65がかかっている部分(切り欠きが占めている部分)は、軸受保持穴61の開口縁の全周の1/2以下、さらには1/3以下である。
【0043】
(モータ1の製造方法)
図1(a)に示すように、本形態のモータ1を製造するには、ステータ3およびロータ4を組み立てた後、ステータ3に対してフレーム90を固着する。なお、溶接などにより、フレーム90とケース2とを固定した後、ステータ3を完成させる場合もある。そして、ステータ3の内側にロータ4を通し、軸受12により回転軸41の先端側軸端を支持した状態で、軸受ホルダ6をステータ3の反出力側端面30に重なるように固定する。その結果、ステータ3と軸受ホルダ6との間には、軸受ホルダ6の内側端面6bに形成した係合凹部65により係合溝95が形成される。かかる固定には、例えばスポット溶接を採用することができ、スポット溶接用の突起は、例えば、軸受ホルダ6の内側端面6bにおいて軸受保持穴61の周りに3、4箇所形成しておけばよい。
【0044】
次に、軸受ホルダ6の軸受保持穴61から球体13、および軸受本体14を装着し、軸受保持穴61内に軸受11を配置した状態とする。
【0045】
次に、バネ部材7をモータ軸線方向(z方向)と交差する方向、本形態では、矢印sで示すように、モータ軸線方向(z方向)と直交する上下方向(y方向)のうち、上方向からスライドさせ、一対のフック部73を一対の係合溝95の各々に開放端側から進入させる。その際、フック部73は、スライド方向sにおける前端側の角部73bがR形状になっているので、フック部73は、引っ掛かることなく係合溝95の内部を進入する。
【0046】
そして、ストッパ部79が軸受ホルダ6の上端部6wが当接するとともに、フック部73の先端部が係合凹部65の端部65b(係合溝95の奥)に当接するまで、バネ部材7をスライドさせる。その結果、フック部73の突部74が係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)に嵌る。その際、フック部73の突部74、および係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)は、略同様な三角形状を有しているので、フック部73の突部74は、係合凹部65の三角部分65aにスムーズに嵌る。
【0047】
この状態で、バネ部材7の底面部71が軸受ホルダ6の外側端面6aに重なり、バネ部75が軸受11を回転軸41に向けて付勢する。かかる状態は、バネ部材7をスライドさせた際、フック部73が弾性変形し、軸受ホルダ6を底面部71との間に弾性をもって挟むことにより保持される。また、側板部72も弾性変形し、その形状復帰力もバネ部材7が軸受ホルダ6に保持された状態を維持する力として作用する。さらに、フック部73の突部74が係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)に嵌った状態で、ストッパ部79も軸受ホルダ6の上端部6wに当接して弾性変形する。従って、ストッパ部79は、バネ部材7を装着の際とは逆方向にスライドさせようとするが、かかる動きは、前記した略三角形状のフック部73の突部74と係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)との嵌合により阻止される。その際、スライド方向の後端側では、軸受ホルダ6において直線部分65gによって形成された段部65hがバネ部材7に対するガイド部として機能するため、バネ部材7は傾くことなく、適正に位置決めされる。
【0048】
以上の工程により、図1および図2(a)に示すように、バネ部材7が固定体10の反出力側に装着される。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1においては、固定体10(軸受ホルダ6)に対するバネ部材7の装着時、バネ部材7をモータ軸線方向と交差する方向からスライドさせて、バネ部材7の底面部71を固定体10の反出力側端面10aに重ねるとともに、一対のフック部73を一対の係合溝95内に開放端側から進入させ係合させる。このため、固定体10に対してバネ部材7をモータ軸線方向から押し付けて係合させる場合と違って、モータ1の小型化にともなってバネ部材7を係合させる箇所に大きなスペースを確保できない場合や、本形態のように、軸受ホルダ6が薄くて軸受ホルダ6自身にバネ部材7を係合させる箇所を形成できない場合でも、バネ部材7を強固に保持させることができる。従って、バネ部材7を固定体10に装着した状態で、バネ部材7に対してバネ部材7を固定体10から離間させるモータ軸線方向の力が加わっても、バネ部材7に位置ずれや脱落などが発生しない。
【0050】
また、フック部73の係合に隙間の狭い係合溝95を利用しているので、固定体10にバネ部材7が装着された状態で、バネ部材7に対してバネ部材7を固定体10から離間させるモータ軸線方向の力が加わって側板部72が外側に押し広げられた際でも、固定体10の反出力側端面10aにフック部73が当接する。このため、フック部73が係合溝95から外れることがない。
【0051】
また、バネ部材7において側板部72およびフック部73を折り曲げ形成しているが、フック部73については垂直よりもやや深めに折り曲げているので、軸受ホルダ6にバネ部材7を装着した状態で、フック部73が大きく弾性変形する分、大きな弾性復帰力を発揮する。それ故、バネ部材7を軸受ホルダ6に強固に保持させることができるので、バネ部材7の位置ずれや脱落が発生しない。
【0052】
また、フック部73の突部74が係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)に嵌った状態で、ストッパ部79も軸受ホルダ6の上端部6wに当接して弾性変形する。従って、ストッパ部79は、バネ部材7を装着の際とは逆方向にスライドさせようとするが、かかる動きは、フック部73の突部74と係合凹部65の三角部分65a(係合溝95の凹部)との嵌合により阻止され、その結果、バネ部材7のスライド方向での位置がずれることがない。
【0053】
さらに、バネ部材7においてバネ部75は底面部71から舌片状に斜めに切り起こされているが、バネ部材7を軸受ホルダ6に装着する際には、バネ部75の根元部分が前側に位置するように、バネ部材7をスライドさせる。このため、バネ部75が引っ掛かって塑性変形してしまうことがない。また、軸受ホルダ6の外側端面6aでは、バネ部材7をスライドさせたときにバネ部75の移動軌跡を含む領域が浅い凹部66になっているので、バネ部材7をスライドさせた際、バネ部75が軸受ホルダ6の外側端面6aに強く当たって塑性変形することを確実に防止することができる。
【0054】
さらにまた、軸受ホルダ6の内側端面6bにおいてバネ部材7の2つのフック部73が係合する部分は、軸受ホルダ6の肉薄部分によって形成された係合凹部65になっているため、軸受ホルダ6にバネ部材7を装着した状態で、軸受ホルダ6およびバネ部材7がモータ軸線方向で占める寸法が短くて済む。
【0055】
また、フック部73が係合する係合凹部65は、軸受保持穴61の開口縁の周方向の一部にかかって軸受保持穴61の開口縁に切り欠き65mを形成しているため、モータ1の短径方向の寸法D(図2(a)参照)を縮小した場合において、フック部73を軸受ホルダ6に深く係合させてフック部73と軸受ホルダ6との係合力を高めたときでも、軸受保持穴61と係合凹部65との間にモータ軸線方向に延びる肉薄部分が形成されない。従って、軸受保持穴61の寸法や形状の精度が高い。すなわち、軸受ホルダ6の内側端面6bにおいて、軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分は、幅が最も狭い部分6sの幅寸法(軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分の最小幅寸法t)は、0.2mm以上であり、かかる寸法以上であれば、十分な寸法精度や形状精度を得ることができるので、軸受保持穴61の寸法や形状の精度を低下させることがない。それ故、モータ1の短径方向の寸法Dをさらに縮小した場合でも、軸受ホルダ6での軸受11の保持や、バネ部材7の保持を確実に行なうことができる。
【0056】
また、軸受保持穴61に対して係合凹部65がかかるのは、軸受保持穴61の開口縁の一部であり、軸受保持穴61の全周の切り欠き65mが形成されている部分以外の部分は、軸受ホルダ6においてモータ軸線方向における寸法が長い肉厚部分で構成されているので、軸受ホルダ6における軸受11に対する支持寸法が部分的ではあるが長くなっている。従って、軸受11を軸受保持穴61内においてモータ軸線方向の長い寸法にわたって支持できるので、軸受11が軸受保持穴61内で不用意に傾くことがない。特に本形態では、軸受保持穴61の開口縁において係合凹部65がかかって切り欠き65mになっている部分は、軸受保持穴61の開口縁の全周の1/2以下であるため、軸受保持穴61の全周の1/2を超える部分が軸受ホルダ6の肉厚部分で構成されている。従って、軸受ホルダ6において軸受11は、軸受ホルダ6の肉厚部分ではモータ軸線方向で十分に長い寸法で支持されるので、軸受11が不用意に傾くことがない。
【0057】
すなわち、本形態では、軸受11にがたつきが発生しないように、バネ部材75のバネ部75が軸受11の中心軸線からずれた位置を押圧して軸受保持穴61において、クリアランス分だけ軸受11をわずかに傾けた姿勢に保持しているが、本形態によれば、かかる適正な軸受11の傾き姿勢を確実に維持することができる。また、バネ部材75のバネ部75が軸受11の中心軸線上を押圧するように構成した場合、軸受保持穴61において、軸受11は、中心軸線がモータ軸線と一致あるいは平行な姿勢に保持されるが、本形態によれば、かかる適正な軸受11の姿勢を確実に維持することができる。
【0058】
しかも、本形態では、軸受ホルダ6の外側端面6aには凹部66が形成され、かかる凹部66も軸受保持穴61にかかっているが、係合凹部65が軸受保持穴61にかかって切り欠き65mを形成している部分と、凹部66が軸受保持穴61にかかっている部分とは、モータ軸線方向からみたときにずれている。このため、係合凹部65が軸受保持穴61にかかって切り欠き65mを形成している部分と、凹部66が軸受保持穴61にかかっている部分とが、モータ軸線方向からみたときに重なっている場合と比較して、切り欠き65mを形成した場合でも、軸受11を軸受保持穴61内においてモータ軸線方向の長い寸法にわたって支持できることになるので、軸受11が軸受保持穴61内で不用意に傾くことをより確実に防止することができる。
【0059】
[参考例2]
図5は、本発明の参考例2に係るモータに用いた軸受ホルダ6の説明図であり、図5(a)〜(d)は各々、軸受ホルダ6を反出力側からみた説明図、軸受ホルダ6を図5(a)の矢印A5で示す方向からみた説明図、軸受ホルダを図5(a)の矢印B5で示す方向からみた説明図、および軸受ホルダ6を出力側からみた説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、参考例1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。また、本形態のモータ1は、軸受ホルダ6の構成のみが参考例1と相違するので、軸受ホルダ6の構成を中心に説明する。
【0060】
図5に示すように、本形態のモータ1に用いた軸受ホルダ6において、参考例1と同様、内側端面6bでは、軸受ホルダ6においてモータ軸線方向における厚さが薄い肉薄部分によって、左右方向(x方向)の両端縁に沿って上下方向(y方向)に延びた一対の係合凹部65が形成されている。従って、参考例1と同様、図3を参照して説明したバネ部材7のフック部73を係合凹部65に係合させれば、バネ部材7を軸受ホルダ6に装着することができる。
【0061】
ここで、係合凹部65は、参考例1よりも広い範囲にわたって軸受保持穴61に向かって幅寸法が拡がっており、係合凹部65は、軸受保持穴61の開口縁の一部にかかって切り欠き65mを形成しているが、それでも、軸受保持穴61の開口縁において係合凹部65がかかっている部分(切り欠き65mが占めている部分)は、軸受保持穴61の開口縁の全周の約1/2.5であり、1/2以下である。
【0062】
また、軸受ホルダ6の内側端面6bにおいて、軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分は、幅が最も狭い部分6sの幅寸法(軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分の最小幅寸法t)は、0.2mm以上である。
【0063】
このように、本形態でも、フック部73が係合する係合凹部65は、軸受保持穴61の開口縁の周方向の一部にかかって切り欠き65mを形成しているため、フック部73を軸受ホルダ6に深く係合させてフック部73と軸受ホルダ6との係合力を高めた場合でも、軸受保持穴61と係合凹部65との間にモータ軸線方向に延びる肉薄部分が形成されないので、軸受保持穴61の寸法や形状の精度が高い。すなわち、軸受ホルダ6の内側端面6bにおいて、軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分は、幅が最も狭い部分6sの幅寸法(軸受保持穴61と係合凹部65とで挟まれた部分の最小幅寸法t)は、0.2mm以上であり、かかる寸法以上であれば、十分な寸法精度や形状精度を得ることができるので、軸受保持穴61の寸法や形状の精度を低下させることがないなど、参考例1と同様な効果を奏する。
【0064】
また、本形態では、図4(d)と図5(d)を比較すると分るように、係合凹部65は、スライド方向sに対して反対側領域において軸受保持穴61に広い領域でかかっている。このため、図4(d)に示す構成において、スライド方向sに対して反対側領域において、幅の狭い部分6sが長く延びている部分が存在せず、かかる部分も切り欠き65mになっている。従って、寸法精度や形状精度が低くなりがちな部分が少ないので、軸受保持穴61の寸法や形状の精度が低下するのをより確実に防止することができる。
【0065】
[実施の形態]
参考例1、2では、モータ軸線方向に交差する方向からバネ部材を軸受ホルダに装着する構成であったが、本形態では、図6を参照して以下に説明するように、モータ軸線方向からバネ部材を軸受ホルダに装着する。
【0066】
図6は、本発明の実施の形態に係るモータの説明図であり、図6(a)〜(f)は各々、モータの端部の平面図、正面図、反出力側端部を示す側面図、軸受ホルダの反出力側端面の説明図、軸受ホルダの断面図、および軸受ホルダの出力側端面の説明図である。
【0067】
図6に示すモータは、ロータおよびコイルが収納されたケース2と、このケース2の一方端側でロータの回転軸の軸端を受ける軸受82と、この軸受82が挿入される軸受保持穴810を備えた軸受ホルダ81とを有している。また、軸受ホルダ81の反出力側には、軸受保持穴810内の軸受82を回転軸に向けて付勢する板バネ部83を備えたバネ部材80が配置されている。
【0068】
バネ部材80を軸受ホルダ81に固定するにあたって、バネ部材80には、軸受ホルダ81の外周側面の略中央位置を回り込んで軸受ホルダ81に係合する4つのフック部801、802、803、804を形成する一方、軸受ホルダ81の出力側端面81bにおいて、フック部801、802、803、804が係合する部分については、軸受ホルダ81の肉薄部分によって係合凹部811、812、813、814(図6(f)において斜線を付した領域)が形成されている。このため、モータ軸線方向でバネ部材80を軸受ホルダ81の反出力側に押し付けると、フック部801、802、803、804が軸受ホルダ81の係合凹部811、812、813、814に係合し、バネ部材80が軸受ホルダ81に装着される。その際、フック部801、802、803、804については、底面部から直角に屈曲した構成よりも、フック部801、802、803、804がやや内側に屈曲した構成を採用すれば、バネ部材80と軸受ホルダ81との係合力を高めることができる。
【0069】
ここで、係合凹部811、812、813、814のうち、モータの短径方向に位置する係合凹部811、813は、図7を参照して説明した例と比較して、軸受保持穴810に向かって延びており、係合凹部811、813は、軸受保持穴810の開口縁の一部にかかって切り欠き811m、813mを形成している。それでも、軸受保持穴810の開口縁において係合凹部811、813がかかっている部分(切り欠き811m、813mが占めている部分)は、軸受保持穴810の開口縁の全周の約1/2.5であり、1/2以下である。また、軸受ホルダ81の出力側端面81bにおいて、軸受保持穴810と係合凹部811、813とに挟まれた部分は、最も狭い部分81sでも、最小幅寸法tが0.2mm以上になっている。
【0070】
このように構成した場合も、軸受ホルダ81の出力側端面81bにおいてバネ部材7の2つのフック部801、802、803、804が係合する部分は、軸受ホルダ6の肉薄部分によって形成された係合凹部811、812、813、814になっているため、軸受ホルダ6にバネ部材7を装着した状態で、軸受ホルダ81およびバネ部材807がモータ軸線方向で占める寸法が短くて済む。
【0071】
また、フック部801、802、803、804が係合する係合凹部811、812、813、814のうち、係合凹部811、813は、軸受保持穴810の開口縁の周方向の一部にかかって切り欠き811m、813mを形成しているため、フック部801、802、803、804を軸受ホルダ81に深く係合させてフック部801、802、803、804と軸受ホルダ81との係合力を高めた場合でも、軸受保持穴810と係合凹部811、813との間に、モータ軸線方向に延びた肉薄部分が形成されないので、軸受保持穴810の寸法や形状の精度が高い。
【0072】
また、軸受保持穴810に対して係合凹部811、813がかかるのは、軸受保持穴810の開口縁の一部であり、軸受保持穴810の全周の一部は、軸受ホルダ81においてモータ軸線方向の寸法が大きい肉厚部分で構成されているので、軸受ホルダ81における軸受82に対する支持寸法が部分的ではあるが長くなっているので、軸受82が不用意に傾くことがない。
【0073】
なお、上記形態では、係合凹部811、812、813、814のうち、モータの短径方向に位置する係合凹部811、813が軸受保持穴810に向かって延びて切り欠き811m、813mを形成した例を説明したが、軸受ホルダ81のサイズや形状によっては、4方の係合凹部811、812、813、814の各々を軸受保持穴810に向かって延ばして、軸受保持穴810の開口縁の一部に切り欠きを形成してもよい。
【0074】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態では、軸受ホルダ6はSUS製であったが、樹脂製のものを用いてもよい。また、上記形態では、スポット溶接を用いてステータ3(ケース2)に対する軸受ホルダ6の固定を行なったが、レーザ溶接や接着剤を用いてもよい。また、溶接と接着剤とを併用してもよい。
【0075】
上記実施の形態では、本発明を適用した軸受構造を回転軸41の反出力側(基端側)の軸端に対する軸受部分に適用した例を説明したが、本発明を適用した軸受構造は、回転軸41の出力側(先端側)の軸端に対する軸受部分に適用してもよい。
【0076】
上記参考例1、2では、長径方向からバネ部材7を装着した例を説明したが、短径方向からバネ部材を装着してもいい。
【0077】
また、上記実施の形態では軸受11を偏心した位置で付勢しているが、中心から真っ直ぐに付勢した構造を採用してもよい。
【0078】
なお、軸受保持穴内において軸受の姿勢を適正に保持するという観点からすれば、軸受保持穴の開口縁において切り欠きが占める部分は、軸受保持穴の開口縁の全周の1/2以下であることが好ましいが、より好ましくは、1/2.5程度、さらには、1/3以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ
2 ケース
3 ステータ
4 ロータ
6、81 軸受ホルダ
7、80 バネ部材
11 軸受
41 回転軸
61、810 軸受保持穴
65、811、812、813、814 軸受ホルダの係合凹部
65m、811m、813m 切り欠き
73、801、802、803、804 フック部
75、83 バネ部材のバネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸端を支持する軸受と、該軸受が内側に装着された軸受保持穴がモータ軸線方向に貫通し、ステータの端面に固着された軸受ホルダと、該軸受ホルダにおいて前記回転軸が位置する側であって前記ステータの前記端面に固着された内側端面、および前記回転軸が位置する側とは反対側であって前記モータ軸線方向において前記ステータとは反対側の面である外側端面のうち、該外側端面に被さった状態で前記軸受を前記回転軸に向けて付勢するバネ部材と、を有するモータにおいて、
前記バネ部材は、前記モータ軸線方向から前記軸受ホルダに装着されるものであって、前記外側端面の側から前記軸受ホルダの外周側を通って前記軸受ホルダの前記内側端面に係合する複数のフック部を備え、
前記軸受ホルダの前記内側端面において前記複数のフック部が係合する部分は、当該軸受ホルダの肉薄部分によって形成された係合凹部になっており、
当該係合凹部は、前記軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかって当該開口縁の一部に切り欠きを形成していることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記軸受保持穴の開口縁において前記切り欠きが占める部分は、前記軸受保持穴の開口縁の全周の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記軸受ホルダの前記内側端面を平面視したとき、前記軸受ホルダにおいて前記係合凹部が形成されていない肉厚部分のうち、前記軸受保持穴と前記係合凹部とに挟まれた部分の最小幅寸法は、0.2mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ステータは、前記モータ軸線方向からみたとき、断面長円形状であり、
前記係合凹部のうち、前記ステータの短径方向に位置する係合凹部が前記軸受保持穴の開口縁の周方向の一部にかかって当該開口縁の一部に前記切り欠きを形成していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254021(P2012−254021A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215424(P2012−215424)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−85203(P2008−85203)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】