説明

モータ

【課題】駆動コイルを励磁したときに回転軸に励磁電流が流れ込むことを防止できるモータを提供すること。
【解決手段】モータ1は、駆動コイル33を搭載する筒状のステータコア32と、駆動用マグネット42が外周側に固定された鉄系金属製の回転軸41を備える。回転軸41はステータコア32の内側に回転可能に配置され、ステータコア32と駆動用マグネット42は対向している。回転軸41の外周面のうちマグネット固定部分41aにモータ軸線L方向で隣接する環状外周面部分41b、41cは絶縁テープ51で被われている。従って、ステータ30とロータ40を近接させても、駆動コイル33から回転軸44の外周面の露出部分までの距離を確保できる。よって、駆動コイル33を励磁した場合でも、励磁電流が駆動コイル33から回転軸41に流れ込むことを防止或いは抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のステータの内側にロータが回転可能に配置されている構成のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる構成のモータは、特許文献1に記載されている。同文献では、ステータは、半径方向内側に突出する複数の突極を等角度間隔に備える環状のステータコアと、各突極に絶縁部材を介して巻回された駆動コイルを備えている。ロータは、回転軸と、回転軸の外周側に固定された筒状の駆動用マグネットを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ軸線と直交する径方向においてモータの小型化を図るためには、ステータの径を小さくするとともに、ステータとロータの径方向の間隔を狭めることが求められる。しかし、ステータとロータを近接させた状態として駆動コイルを励磁すると、回転軸が鉄系金属などの導電性材料から形成されている場合には、励磁電流が駆動コイルから絶縁部材を介して回転軸に流れ込むという現象が発生する。回転軸に電流が流れると、この電流は、ノイズとして回転軸を伝播し、例えば、回転軸にエンコーダやブレーキが取り付けられている場合には、これらに影響を与えることがある。また、モータの外部にまで影響を与えることがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、駆動コイルを励磁したときに回転軸に励磁電流が流れ込むことを防止できるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動コイルを搭載する筒状のステータコアと、導電性材料からなる回転軸と、前記回転軸の外周面部分に固定されている駆動用マグネットとを有し、前記ステータコアの内側に前記回転軸が回転可能に配置され、前記ステータコアと前記駆動用マグネットとが径方向で対向しているモータにおいて、前記回転軸の外周面のうち前記駆動用マグネットによって被われている前記外周面部分に軸線方向で隣接する環状外周面部分は、絶縁物で被われていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、回転軸の外周面のうち、筒状の駆動用マグネットによって被われている外周面部分に軸線方向で隣接する環状外周面部分は、絶縁物で被われている。従って、駆動コイルおよびステータコアを備えるステータと、回転軸および駆動用マグネットを備えるロータを近接させた状態とした場合でも、ステータコアに搭載されている駆動コイルから回転軸の外周面の露出部分(駆動用マグネットにも絶縁物にも被われていない部分)までの絶縁距離を確保することができる。従って、駆動コイルを励磁した場合でも、励磁電流が駆動コイルから回転軸に流れ込むことを防止或いは抑制できる。従って、このような電流に起因するノイズの発生を防止できる。
【0008】
本発明において、回転軸の環状外周面部分を絶縁物で被うためには、前記絶縁物は、前記回転軸に巻きつけられた絶縁テープであることが望ましい。
【0009】
この場合において、前記絶縁テープは、前記回転軸および前記駆動用マグネットに連続して巻きつけられており、前記駆動用マグネットを外側から被っていることが望ましい。このようにすれば、例えば、外部からの衝撃などによって駆動用マグネットが破損するようなことがあっても、破損した駆動用マグネットの破片がステータの内側で飛散することを防止できる。従って、破片がモータの回転を阻害することを防止できる。また、破片によってステータが損傷することを防止できる。
【0010】
この場合において、前記駆動用マグネットは、筒状であり、周方向に分割された複数のマグネット片から構成されていることが望ましい。このようにすれば、複数のマグネット片から構成されている駆動用マグネットがマグネット片毎に分裂してしまうことを絶縁テープによって防止できる。
【0011】
本発明において、前記駆動用マグネットの円環状端面には、ロータの回転バランスを調整するためのバランス調整部材が取り付けられており、前記バランス調整部材は、前記絶縁テープによって被われていることが望ましい。このようにすれば、絶縁テープによってバランス調整部材がロータから脱落することを防止できる。また、バランス調整部材がロータから脱落した場合でも、絶縁テープによってバランス調整部材が飛散することを防止できる。
【0012】
本発明において、回転軸の軸端部に取り付けられたセンサ用マグネット、前記センサ用マグネットに対向配置されている感磁素子、および、前記感磁素子を搭載するセンサ基板を備えるエンコーダを有する構成を採用することができる。かかるエンコーダを有するモータでは、回転軸に電流が発生すると、この電流がノイズとなってセンサ基板に侵入してエンコーダの検出精度を低下させることがある。しかるに、本発明では、回転軸の外周面部分を被う絶縁物によって回転軸に電流が発生することが防止されているので、このような電流に起因するノイズを防止できる。よって、エンコーダの検出精度を低下させることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、回転軸の外周面のうち駆動用マグネットによって被われている外周面部分に軸線方向で隣接する環状外周面部分は絶縁物で被われているので、ステータとロータを近接させた状態とした場合でも、ステータコアに搭載されている駆動コイルから回転軸の外周面の露出部分までの絶縁距離を確保することができる。従って、駆動コイルを励磁した場合でも、励磁電流が駆動コイルから回転軸に流れ込むことを防止或いは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータの外観を示す説明図である。
【図2】図1のモータの縦断面図である。
【図3】ロータと軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係るモータを、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、モータ軸線方向の一方側を「反出力側(回転軸が突出している側とは反対側)」として説明し、モータ軸線方向の他方側を「出力側(回転軸が突出している側)」として説明する。また、参照する図面において、モータ軸線については「L」で示し、モータ軸線方向の一方側(反出力側)を「L1」で示し、モータ軸線方向の他方側(出力側)を「L2」で示してある。
【0016】
(全体構成)
図1(a)は本発明の実施の形態に係るモータの側面図であり、図1(b)はモータを反出力側からみた背面図である。図2はモータの縦断面図である。本例のモータ1は比較的出力トルクの大きい永久磁石型同期電動機である。図1、図2に示すように、モータ1は、モータハウジング10と、モータハウジング10の内側に構成された筒状のステータ30と、ステータ30の内側に配置されたロータ40と、ロータ40の回転数や角度位置を検出するためのエンコーダ60と、モータハウジング10の反出力側L1に取り付けられたエンコーダカバー70を備えている。
【0017】
モータハウジング10は、モータ軸線L方向に開口を向けている筒状ケース11と、筒状ケース11の反出力側L1に配置された第1軸受ホルダ12と、筒状ケース11の出力側L2に配置された第2軸受ホルダ13を備えている。第1軸受ホルダ12はロータ40を回転可能に支持するための第1軸受14を保持しており、第2軸受ホルダ13はロータ40を回転可能に支持するための第2軸受15を保持している。
【0018】
第1軸受ホルダ12は、モータ軸線L回りの所定の角度位置に配線支持片16を備えている。配線支持片16は第1軸受ホルダ12から半径方向外側に突出した突出板部16aと、突出板部16aの先端から出力側L2に折れ曲がり、筒状ケース11の外周面に沿って延びている固定板部16bを備えている。固定板部16bには、モータハウジング10の内側から外側に引き出された給電線17とエンコーダカバー70の内側から外側に引き出されたセンサ出力線18が接着剤と結束帯19によって固定されている。また、給電線17とセンサ出力線18において結束帯19によって固定板部16bに締め付けられている部分は、固定板部16bを含めて外周側からチューブ20により被われている。チューブ20は熱収縮チューブを加熱して収縮硬化させたものである。給電線17およびセンサ出力線18の先端部にはそれぞれコネクタ21、22が取り付けられている。
【0019】
ステータ30は、半径方向内側に突出する複数の突極31を等角度間隔に備える環状のステータコア32と、各突極31に絶縁部材30aを介して巻回された駆動コイル33を備えている。ステータコア32は一部分を筒状ケース11の開口から出力側L2に突出させた状態で筒状ケース11の内周面に保持されている。ステータコア32において筒状ケース11から突出している円環状突出部分34は、当該円環状突出部分34の先端部分に固定された第2軸受ホルダ13によって被われている。ここで、ステータ30の反出力側L1には駆動コイル33の巻線端末が接続された配線基板35が配置されており、配線基板35には給電線17が接続されている。この給電線17は筒状ケース11に形成された切欠き部11aに挿入された樹脂製のブッシュ36を介してモータハウジング10の外側に引き出され、配線支持片16に固定されている。
【0020】
ロータ40は、回転軸41と、この回転軸41の外周側に固着された駆動用マグネット42を備えている。ロータ40は、駆動用マグネット42がステータコア32の突極31との間に僅かな隙間を空けた状態で配置されている。また、ロータ40は、回転軸41が第1軸受14および第2軸受15によって支持されることにより、ステータ30の内側で回転可能となっている。回転軸41の出力側L2の端部はモータハウジング10から外側に突出している。
【0021】
エンコーダ60は、回転軸41の反出力側L1の軸端部にマグネットホルダ61を介して取り付けられたセンサ用マグネット62と、モータ軸線L上でセンサ用マグネット62に対向配置されている感磁素子63と、感磁素子63を搭載するセンサ基板64を備えている。センサ基板64は、第1軸受ホルダ12の反出力側L1の端面に取り付けられた基板ホルダ65に固定されている。センサ用マグネット62、感磁素子63およびセンサ基板64はモータ軸線L上に配置されている。
【0022】
センサ用マグネット62は、円盤状であり、反出力側L1を向いている円形端面62aが磁極面となっている。円形端面62aは周方向に2分割されており、N極とS極が1極ずつ設けられている。感磁素子63は、互いに直交する方向に磁気抵抗パターンが形成された磁気抵抗素子であり、センサ基板64の出力側L2の端面において、センサ用マグネット62の円形端面62aの中心と対向する位置に実装されている。センサ基板64の反出力側L1の面には、回転検出回路を構成する半導体装置等の電子部品(不図示)が実装されている。センサ用マグネット62が1回転すると、感磁素子63からはA相およびB相の正弦波信号が2周期分出力される。回転検出回路はこれらA相およびB相の信号に増幅処理や補間処理を施して出力する。
【0023】
エンコーダカバー70は磁性材料からなる。本例では、エンコーダカバー70は鉄系金属であり、円形底部71と円形底部71の周縁から出力側L2に延びる円筒部72を備えている。エンコーダカバー70は、円筒部72の出力側L2の端面を第1軸受ホルダ12の反出力側L1に当接させた状態で第1軸受ホルダ12に取り付けられている。エンコーダ60は、エンコーダカバー70の内側に位置している。ここで、センサ基板64には、回転検出回路からの信号出力を外部に取り出すためのセンサ出力線18が接続されている。センサ出力線18はエンコーダカバー70の円筒部72に形成された切欠き部70aに挿入されたブッシュ73を介してエンコーダカバー70の外側に引き出され、配線支持片16に固定されている。なお、図2において、センサ出力線18とエンコーダ60の接続部分は省略してある。
【0024】
(ロータ)
図3を参照してロータ40を詳細に説明する。図3(a)はロータ40、第1軸受14および第2軸受15の縦断面図であり、図3(b)は(a)のX−X´線におけるロータ40の断面図であり、図3(c)は回転軸41と駆動用マグネット42の間に形成された円環状段部の周辺を拡大して示す断面図である。回転軸41は鉄系金属製であり導電性を有している。回転軸41は、図3(a)に示すように、モータ軸線L方向の途中に駆動用マグネット42が外周側に取り付けられた大径部分43を備えている。大径部分43のモータ軸線L方向の寸法は駆動用マグネット42のモータ軸線L方向の寸法よりも長く、大径部分43の出力側L2の一部分は駆動用マグネット42から露出する露出部分43aとなっている。
【0025】
回転軸41において、大径部分43の反出力側L1には大径部分43よりも細径の第1中径部分44が設けられている。また、第1中径部分44の反出力側L1には第1中径部分44よりも細径の第1小径部分45が設けられている。第1小径部分45において第1中径部分44に隣接する位置にはボールベアリングからなる第1軸受14の内輪14aが装着されており、この内輪14aは第1小径部分45に形成された周溝45aに嵌め込まれた止め輪46によって回転軸41に固定されている。第1小径部分45の反出力側L1には、第1小径部分45よりも更に細径の最小径部分47が設けられている。最小径部分47にはセンサ用マグネット62を保持するマグネットホルダ61が固定される(図2参照)。
【0026】
回転軸41において、大径部分43の出力側L2には大径部分43よりも細径の第2中径部分48が設けられている。また、第2中径部分48の出力側L2には第2中径部分48よりも細径の第2小径部分49が設けられている。第2中径部分48の外径は第1中径部分44の外径と同一寸法である。第2中径部分48において大径部分43に隣接する位置にはボールベアリングからなる第2軸受15の内輪15aが装着されている。
【0027】
駆動用マグネット42は、全体として筒状をしており、図3(b)に示すように、周方向に湾曲した複数のマグネット片42aを環状に配置して構成されている。駆動用マグネット42の外周面には絶縁塗装が施されている。駆動用マグネット42の出力側L2の円環状端面42bには、図3(c)に示すように、ロータ40の回転バランスを調整するための錘(バランス調整部材)50が接着剤などにより固定されている。本例では、錘50は、接着剤に比重の重い金属などを練り込んだものである。なお、錘50は駆動用マグネット42の反出力側L1の円環状端面42cに取り付けられる場合もあり、出力側L2と反出力側L1の双方の円環状端面42b、42cに取り付けられる場合もある。また、各円環状端面42b、42cには複数の錘50が取り付けられる場合もある。
【0028】
かかるロータ40において、第1軸受14と第2軸受15の間に位置している部位の外周面の一部分は、絶縁テープ51によって被われている。すなわち、回転軸41の外周面のうち駆動用マグネット42によって被われているマグネット固定部分(外周面部分)41aにモータ軸線L方向で隣接する環状外周面部分41b、41c、および、駆動用マグネット42の外側面は、絶縁テープ51によって被われている。より詳細には、回転軸41の大径部分43において駆動用マグネット42の外側に位置している露出部分43aのうち駆動用マグネット42に隣接する側の一部分(環状外周面部分41b)、および、第1中径部分44の外周面のうち、駆動用マグネット42に隣接する側の一部分(環状外周面部分41c)が、絶縁テープ51によって被われている。また、駆動用マグネット42の出力側L2の円環状端面42b、反出力側L1の円環状端面42c、および、円形外周面42d(駆動用マグネット42のステータコア32の突極31の先端部分と対向する外周面)が、絶縁テープ51によって被われている。さらに、駆動用マグネット42の円環状端面42bに取り付けられている錘50も、絶縁テープ51によって、外側から被われている。
【0029】
絶縁テープ51は、一方の面に熱硬化型接着材層を備えるガラスクロステープである。ここで、絶縁テープ51によって回転軸41の環状外周面部分41b、41c、駆動用マグネット42の円環状端面42b、42cおよび円形外周面42dを被う際には、絶縁テープ51を回転軸41および駆動用マグネット42に連続して巻き付ける。
【0030】
より詳細には、絶縁テープ51として、絶縁する部分に対応した長さ寸法および幅寸法を備えるものを用意する。すなわち、モータ軸線L方向において、環状外周面部分41cの反出力側L1の端から環状外周面部分41bの出力側L2の端までの寸法に対応する長さ寸法を備えるとともに、駆動用マグネット42の円周の寸法に対応する幅寸法の絶縁テープ51を用意する。そして、回転軸41の環状外周面部分41b、環状外周面部分41cおよび駆動用マグネット42を連続して被うように巻き付ける。このようにすれば、絶縁テープ51を巻き付けたときに、絶縁テープ51が2重に重なって厚くなる部分が発生することを防止できるので、ステータ30とロータ40を近接させることができる。また、絶縁テープ51が2重に重なる部分の厚さを管理する必要がなくなるので、絶縁テープ51を巻き付ける際の作業性が向上する。また、絶縁テープ51として、定幅の細長い絶縁テープを用意し、この絶縁テープをモータ軸線L方向に螺旋状に連続して巻き回して、回転軸41の絶縁する部分(環状外周面部分41b、41c)と駆動用マグネット42の絶縁する部分(円環状端面42b、円環状端面42c、および、円形外周面42d)とを連続して被う場合と比較して、絶縁テープ51の寸法管理が容易となる。ここで、絶縁テープ51の巻始めと巻き終わりは、剥がれ防止のため重ねてもよい。この場合には、絶縁テープ51が2重に重なった部分の厚さ考慮して、ステータ30とロータ40とのギャップを設定しておく。
【0031】
なお、モータ軸線L方向における駆動用マグネット42の両側において、駆動用マグネット42と回転軸41との間に形成されている円環状段部40aについては、回転軸41および駆動用マグネット42に絶縁テープ51を巻き付けた後に、この円環状段部40aを外側から被覆する状態に熱収縮チューブ(不図示)を取り付け、しかる後に、この熱収縮チューブを加熱して収縮硬化させることによって、絶縁テープ51をこの円環状段部40aに沿わせた状態として密着させておくことが好ましい。この場合には、絶縁テープ51が円環状段部40aに密着した後に、この熱収縮チューブを切断してロータ40から除去する。
【0032】
(作用効果)
以上、本例によれば、回転軸41の外周面のうちマグネット固定部分41aにモータ軸線L方向で隣接する環状外周面部分41b、41cが絶縁テープ51で被われているので、ステータ30とロータ40を近接させた状態とした場合でも、駆動コイル33から回転軸44の外周面の露出部分(駆動用マグネット42にも絶縁テープ51にも被われていない部分)までの絶縁距離を確保することができる。従って、ステータコア32に搭載されている駆動コイル33を励磁した場合でも、励磁電流が駆動コイル33から回転軸41に流れ込むことを防止或いは抑制できる。従って、このような電流に起因するノイズの発生を防止できる。
【0033】
また、本例では、絶縁テープ51は回転軸41および駆動用マグネット42に連続して巻きつけられており、絶縁テープ51は駆動用マグネット42の外周面(駆動用マグネット42の出力側L2の円環状端面42b、反出力側L1の円環状端面42c、および、円形外周面42d)も被っている。従って、外部からの衝撃などによって駆動用マグネット42が破損するようなことがあっても、破損した駆動用マグネット42の破片がステータ30の内側で飛散することを防止できる。また、マグネット片42aから構成されている駆動用マグネット42がマグネット片42a毎に分裂してしまうことを、絶縁テープ51によって防止できる。従って、破損した駆動用マグネット42の破片や分裂したマグネット片42aがモータ1の回転を阻害することを防止できる。また、破損した駆動用マグネット42の破片や分裂したマグネット片42aによってステータ30が損傷することを防止できる。なお、駆動用マグネット42の破片の飛散防止に必要な強度を考慮して、絶縁テープ51の全体をロータ40に2重に巻き回してもよい。この場合には、絶縁テープ51が2重に重なった部分の厚さを考慮して、ステータ30とロータ40とのギャップを設定しておく。
【0034】
さらに本例では、駆動用マグネット42の出力側L2の円環状端面42bに固定された回転バランス調整用の錘50が絶縁テープ51によって外側から被われている。従って、絶縁テープ51によって錘50がロータ40から脱落することを防止できる。また、錘50がロータ40から脱落した場合でも、絶縁テープ51によって錘50が飛散することを防止できる。
【0035】
また、本例のモータ1は、回転軸41の反出力側L1にエンコーダ60を備えているので、回転軸41に電流が発生すると、この電流がノイズとなってセンサ基板64に侵入してエンコーダ60の検出精度を低下させることがあるが、ロータ40に絶縁テープ51が巻き付けられることによって回転軸41に電流が発生することが防止されているので、このような電流に起因するノイズの発生を防止できる。よって、エンコーダ60の検出精度が低下することがない。また、エンコーダ60に誤作動などを発生させることもない。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記の例では、回転軸41の環状外周面部分41b、41cに絶縁テープ51を巻き付けているが、これに代えて、環状外周面部分41b、41cに絶縁物のコーティングを施しておいてもよい。また、環状外周面部分41b、41cに筒状の樹脂部材を取り付けてもよい。
【0037】
また、上記の例では、絶縁テープ51として、絶縁する部分に対応した長さ寸法および幅寸法を備えるものを用意して、絶縁テープ51を回転軸41と駆動用マグネット42に連続して巻き付けているが、絶縁テープ51として、回転軸41の絶縁する部分(環状外周面部分41b、41c)に対応する長さ寸法および幅寸法を備える絶縁テープと、駆動用マグネット42の絶縁する部分(円環状端面42b、円環状端面42c、および、円形外周面42d)に対応する長さ寸法および幅寸法を備える絶縁テープを用意して、これらを別々に巻き付けてもよい。さらに、絶縁テープ51として、回転軸41の絶縁する部分(環状外周面部分41b、41c)に対応する長さ寸法および幅寸法を備える絶縁テープだけを用意して、回転軸41のみに絶縁テープ51を巻き付けてもよい。
【0038】
ここで、一定幅の細長い絶縁テープを用意し、この絶縁テープをモータ軸線L方向に螺旋状に連続して巻き回して、回転軸41の絶縁する部分(環状外周面部分41b、41c)と駆動用マグネット42の絶縁する部分(円環状端面42b、円環状端面42c、および、円形外周面42d)とを連続して被ってもよい。なお、この場合には、螺旋状となる絶縁テープの間に隙間が形成されないように絶縁テープの一部分を重ねて巻き付ける必要があるので、絶縁テープが2重に重なった部分の厚さを考慮して、ステータ30とロータ40とのギャップを設定しておく必要がある。
【0039】
さらに、絶縁テープ51、或いは、絶縁物のコーティングによって、回転軸41の大径部分43の露出部分43aおよび第1中径部分44の外周面の全面を被ってもよい。
【0040】
なお、上記の例では、駆動用マグネット42は、図3(b)に示すように、半径方向外側に位置する外側円弧面と半径方向内側に位置する内側円弧面が同心のマグネット片42aから構成されているが、マグネット片42aとして、外側円弧面と内側円弧面が同心ではなく、これらの曲率が異なる形状を備えるものを用い、これらを周方向に配置して駆動用マグネット42を構成することもできる。この場合には、周方向で隣り合うマグネット片42aの間に隙間が形成されるので、この隙間に錘を取り付けてもよい。このような構成においても、絶縁テープ51を駆動用マグネット42に巻き付ければ、錘が絶縁テープによって被われた状態となるので、錘の飛散を防止できる。
【0041】
また、エンコーダ60と第1軸受ホルダ12の間にロータ40に対するブレーキ機構を配置したモータ1に本発明を適用してもよい。この場合にも、ロータ40に絶縁テープ51が巻き付けられることによって回転軸41に電流が発生することが防止されているので、このような電流に起因するノイズによって、ブレーキ機構の挙動が不安定になることがない。
【0042】
さらに、上記の例では、本発明を永久磁石型同期電動機に適用した例を示したが、例えばステッピングモータや電磁石同期電動機等のその他の同期電動機や、誘導電動機、整流子電動機、その他の電動機に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・モータ
30・・・ステータ
33・・・駆動コイル
40・・・ロータ
41・・・回転軸
41a・・・マグネット固定部分(外周面部分)
41b・41c・・・環状外周面部分
42・・・駆動用マグネット
42a・・・マグネット片
42b・42c・・駆動用マグネットの円環状端面
42d・・・駆動用マグネットの円形外周面
50・・・錘(バランス調整部材)
51・・・絶縁テープ
60・・・エンコーダ
62・・・センサ用マグネット
63・・・感磁素子
64・・・センサ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動コイルを搭載する筒状のステータコアと、導電性材料からなる回転軸と、前記回転軸の外周面部分に固定されている駆動用マグネットとを有し、前記ステータコアの内側に前記回転軸が回転可能に配置され、前記ステータコアと前記駆動用マグネットとが径方向で対向しているモータにおいて、
前記回転軸の外周面のうち前記駆動用マグネットによって被われている前記外周面部分に軸線方向で隣接する環状外周面部分は、絶縁物で被われていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記絶縁物は、前記回転軸に巻きつけられた絶縁テープであることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2において、
前記絶縁テープは、前記回転軸および前記駆動用マグネットに連続して巻きつけられており、前記駆動用マグネットを外側から被っていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3において、
前記駆動用マグネットは、筒状であり、周方向に分割された複数のマグネット片から構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記駆動用マグネットの円環状端面には、ロータの回転バランスを調整するためのバランス調整部材が取り付けられており、
前記バランス調整部材は、前記絶縁テープによって被われていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
回転軸の軸端部に取り付けられたセンサ用マグネット、前記センサ用マグネットに対向配置されている感磁素子、および、前記感磁素子を搭載するセンサ基板を備えるエンコーダを有することを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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