説明

モールドのエッチング装置

【課題】サブミクロン(1μm以下)のサイズのパターンを持つシームレスモールドを高い生産性・量産性で得ること。
【解決手段】本発明のモールドのエッチング装置は、真空槽中に配置されたスリーブ形状のモールド(15)と、前記真空槽中の前記モールド(15)の表面に対向する位置に配置された円筒形状の対向電極(22)と、を具備し、前記モールド(15)に高周波を印加させ、前記対向電極(22)を接地して前記モールドをエッチング処理するエッチング装置であって、前記エッチング処理の際、前記モールド(15)を回転させないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシームレスモールドの製造方法に関し、特に、ナノインプリントあるいは光学フィルム用のモールドのエッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノインプリントあるいは光学素子等に微細形状を賦形する方法として、予め微細形状が形成されたモールドをつかってガラス基板やプラスチック基板、プラスチックフィルム等に形状を転写する方法が取られてきた(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
これらの技術としては、微細な溝や穴等のパターンを形成した、原版となるモールド(あるいは金型、テンプレートとも呼ばれる)を被転写材に押し当てることで機械的にパターンを転写する方法、熱可塑性樹脂を用いて転写する方法、あるいは光硬化性樹脂を使った光転写する方法等が挙げられる(特許文献3)。これらの方法におけるパターンの解像度は、モールドの作製精度によって決まる。すなわち、一旦モールドさえ出来れば、安価な装置で微細構造が形成することが出来る。上記原版となるモールドには、その形状から平行平板型のモールド(ウエハあるいはプレートとも呼ばれる)と、円筒(ローラー)型のモールドとが一般に知られている(特許文献4、非特許文献1)。
【0004】
平行平板型のモールドとしては、半導体リソグラフィー技術を用いて、紫外光レジスト、電子線レジスト、あるいはX線レジスト等を基板上に塗布し、その後紫外光、電子線、X線等を照射・露光することで、所望のパターンの原版を作製する方法や、予めパターンが描画されたマスク(レチクル)等を通して原版を作製する方法がある(特許文献5)。
【0005】
これらの方法は、100nm程度の非常に微細なパターンを平面上に形成するには非常に有効な方法ではあるが、光反応を用いたフォトレジストを用いるため、微細なパターンを形成するには、原理的に必要とされるパターンより小さなスポットで露光する必要がある。したがって、露光光源として波長が短いKrFやArFレーザー等を使うため、露光装置が大型でかつ複雑な機構が要求される。さらに電子線、X線等の露光光源を用いる場合は、露光雰囲気を真空状態にする必要があるため、真空チャンバーの中に原版を入れる必要がある。このため、原版サイズを大きくすることが非常に難しい。一方で、これらの方法を用いて大面積のモールドを作製するには、小さな露光面積を繋ぎ合わせるステップ&リピート機能を使用して作製する方法が考えられているが、パターンとパターンの繋ぎ精度の問題がある(特許文献6)。
【0006】
一方、円筒(ローラー)型のモールドの作製方法には、従来2通りの方法が取られてきた。まず、一旦平行平板の原版を作製し、ニッケル等の薄膜からなる電鋳法によって形状を転写し、薄膜をローラーに巻き付ける方法がある(特許文献7)。もうひとつは、ローラーにレーザー加工や機械加工によってモールドパターンを直接描写する方法(シームレスローラーモールド)がある(非特許文献2)。前者の方法では、製造する面積より大きなニッケル薄膜モールドを巻き付ける必要がある上、巻き付け部に繋ぎ目が発生するといった問題点があった。一方、後者の方法は、一旦モールドが作製出来れば、生産性も高く量産性に優れたモールドになるが、レーザー加工や機械加工法を使ってサブミクロン(1μm以下)のサイズのパターンを形成することは非常に困難であった。
【0007】
さらにローラーモールドの問題点として、微細構造の深さの制御が困難という問題がある。従来、平行平板型のモールドでは、幅と深さの比、即ちアスペクト比を制御するため、エッチングに異方性のあるドライエッチングが適用される。その場合、エッチング中に、エッチング部分と対向する対向電極との距離が常に等しくなるように、平板形状のモールドと対向電極とが対向するように配置してエッチングする方法が採用されていることから、平板モールド面内に同一方向でかつ均一にエッチングが進行する。このような装置設計によるドライエッチング装置を使ってエッチング深さを制御している。ところが、シームレスローラーモールドは、曲面をエッチングする必要があるため、通常の平板形状の対向電極を用いた場合、エッチング層と平板形状対向電極との距離が等しくない部分が生じてしまうため、曲面上で部分的にエッチング方向及びエッチング速度が異なることから、このような方法を用いてアスペクト比を制御することは、これまで困難であった。
【0008】
これまで唯一サブミクロン(1μm以下)のサイズのパターンでシームレスローラーモールドを形成する方法として、陽極酸化ポーラスアルミナを用いた方法があった(特許文献8及び特許文献9)。本方法は規則的な細孔の配列を有する陽極酸化ポーラスアルミナ層を形成し、前記細孔の配列に対応する凹凸形状をロール状モールドに形成する。但しこの方法では、形成出来る微細形状が同じサイズの規則的な細孔形状に限られ、同じロール上に種々の大きさを持った細孔形状を形成する、あるいは矩形やV字の凹凸を持った溝形状の様なものは作製出来ないといった問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献2】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献3】特開2005−238719号公報
【特許文献4】特開2006―5022号公報
【特許文献5】特開2007−144995号公報
【特許文献6】特開2007−258419号公報
【特許文献7】特表2007−507725号公報
【特許文献8】WO2007−023960号公報
【特許文献9】特開2008−229869号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hua Tan, Andrew Gibertson, Stephen Y. Chou, 「Roller nanoimprint lithography」 J. Vac. Sci. Technol. B16(6), 3926(1998)
【非特許文献2】(株)情報機構 発刊 「ナノインプリント応用実例集」P.611−P.612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、サブミクロン(1μm以下)のサイズのパターンを持つシームレスモールドを高い生産性・量産性で得ることができるモールドのエッチング装置及びエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のモールドのエッチング装置は、真空槽中に配置されたスリーブ形状のモールドと、前記真空槽中の前記モールドの表面に対向する位置に配置された対向電極と、を具備し、前記モールドに高周波を印加させ、前記対向電極を接地して前記モールドをエッチング処理するエッチング装置であって、前記エッチング処理の際、前記モールドを回転させないことを特徴とする。
【0013】
本発明のモールドのエッチング装置においては、前記モールドは曲面を持ち、その表面の接線に対して垂直な方向にエッチングされることが好ましい。
【0014】
本発明のモールドのエッチング装置においては、前記対向電極の形状が、円筒形状、平行平板形状、円弧形状から選択されるいずれかの形状であることが好ましい。
【0015】
本発明のモールドのエッチング方法は、スリーブ形状のモールドと、前記モールドの表面に対向する対向電極と、を真空槽中に配置する工程と、前記モールドに高周波を印加させ、前記対向電極を接地して前記モールドをエッチング処理する工程と、を具備し、前記エッチング処理の際、前記モールドを回転させないことを特徴とする。
【0016】
本発明のモールドのエッチング方法においては、前記モールドは曲面を持ち、その表面の接線に対して垂直な方向にエッチングされることが好ましい。
【0017】
本発明のモールドのエッチング方法においては、前記対向電極の形状が、円筒形状、平行平板形状、円弧形状から選択されるいずれかの形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、エッチング処理の際にモールドを回転する必要が無いため、装置の設計が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】レーザー光の強度分布を示した図である。
【図2】レーザー光を照射された部分の温度分布を示す図である。
【図3】光ディスクの原盤を使って出来上がるパターンを示した図である。
【図4】本発明に係る方法で得られたモールドを使って出来上がるパターンを示す図である。
【図5】本発明に係る方法におけるスリーブモールドを示す断面図である。
【図6】本発明に係る方法におけるスリーブモールドの他の例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る方法におけるスリーブモールドの他の例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る方法に用いるスパッタリング装置の1例を示す模式図である。
【図9】平行平板のドライエッチング装置を示した図である。
【図10】ウエットエッチングのエッチングプロファイルを示した図である。
【図11】ドライエッチングのエッチングプロファイルを示した図である。
【図12】本発明によるスリーブを回転させないドライエッチング装置の図である。
【図13】本発明によるスリーブに対するイオンの入射方向を示した図である。
【図14】本発明によるスリーブを回転させたドライエッチング装置の図である。
【図15】本発明による対向電極に高周波を印加した場合のドライエッチング装置の図である。
【図16】本発明に係る方法に用いる露光装置の構成と光学系の1例を示す模式図である。
【図17】実施例におけるスリーブモールドの形態を示す図である。
【図18】実施例1におけるスリーブモールドを示す断面図である。
【図19】実施例2におけるスリーブモールドを示す断面図である。
【図20】実施例3におけるスリーブモールドを示す断面図である。
【図21】実施例3において使用した有機レジストをスリーブモールドに塗布するための装置の1例を示す模式図である。
【図22】実施例4におけるスリーブモールドの形態を示す図である。
【図23】実施例4の無機レジストが形成された後のスリーブの断面図である。
【図24】比較例1におけるスリーブモールドの断面図を示した図である。
【図25】比較例1における露光装置の構成と光学系の1例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
通常レンズで絞り込まれたレーザー光の強度は、図1に示すようなガウス分布形状を示す。このときスポット径は1/eで定義される。一般的にフォトレジストの反応は、E=hν(E:エネルギー、h:プランク定数、ν:波長)で表されるエネルギーを吸収することよって反応が開始される。したがって、その反応は、光の強度には強く依存せず、むしろ光の波長に依存するため、光の照射された部分(露光部分)は、ほぼ全て反応が生じることになる。このため、フォトレジストを使った場合は、スポット径に対して忠実に露光されることになる。これは、露光精度を重視する半導体等の分野では良い特性と言える。
【0021】
一方、図1で示すような分布を持つレーザー光を物体に照射すると、物体の温度もレーザー光の強度分布と同じガウス分布を示す。このときある温度以上で反応するレジスト、すなわち熱反応型レジストを使うと、図2に示すように所定温度(レジスト反応温度)以上になった部分のみ反応が進むため、スポット径より小さな範囲(露光領域)を露光することが可能となる。したがって、露光光源を短波長化することなく、スポット径より微細なパターンを形成することが可能になる。上記の熱反応型レジストを使うことで、露光光源波長の影響が小さくなる。
【0022】
このように、上記の熱反応型レジストは、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持つ、あるいは、レーザーのスポット径において所定の温度以上で反応する領域を含む温度分布を持つ、ものである。
【0023】
微細形状を形成するための露光光源として、従来は、KrFやArF等のDUV(Deep Ultra Violet)光源、あるいは電子線やX線等が用いられてきたが、これらの光源は光学系が複雑になるため、非常に高価で大型な設備である。さらに、電子線やX線等では真空排気設備が必要となるため、照射面積が狭く大型のモールドを形成ことが非常に難しい。また、焦点深度が浅いことから露光原版の平行度が要求されるため、平行平板型のモールドを露光することは可能であるが、円筒形をしたスリーブ形状のモールドに高分解能を維持したまま、露光することは原理的に難しい。
【0024】
この問題を解決するため、本発明では、小型でかつ安価で特殊な付帯設備が不要である半導体レーザーを使って露光を行う。例えば、現状市販されている短波長の半導体レーザーの波長は405nm程度で、そのスポット径は400nm程度である。従って、400nm以下の微細加工は、フォトレジストを使う限り原理的に不可能であるが、熱反応型レジストを使うことでこの限界を超えることが出来る。本発明の特徴は、熱反応型レジストを、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応するように、あるいは、レーザーのスポット径において所定の温度以上で反応する領域を含む温度分布を持つようにすることで、スポット径より微細な加工を実現することである。
【0025】
一方、熱反応型レジストを使い、半導体レーザーで露光する技術は、例えば、光記録の分野において国際公開公報WO2004−064057号パンフレットなどで公知である。光記録においては、ディスク状の平行平板型の原版を用い、ディスク1を回転して露光することから、出来上がるパターンが、図3に示すように同心円形状のパターン2となる。ところが、この技術は、ナノインプリントや光学フィルム等の分野には使われてこなかった。これは、例えば、光学フィルムにおける最も典型的な用途である液晶モニターや液晶TV用途において、通常は画面の垂直あるいは平行方向に光を制御する必要があることから、直線状のパターンが要求されており、そのため、ディスク状の平行平板の原版から出来るパターンが、原理的に直線状では無く同心円形状であるために、転写後の基板やフィルムに直線状のパターンが要求される用途には全く適さないからである。また、光記録と異なり、ナノインプリントや光学素子のように、平行平板型の原版ではなくロールから被転写体であるフィルム等を繰り出し生産するという工程においては著しく生産性が低下するからである。しかしながら、本発明のように、スリーブ形状のモールドに対して熱反応型レジストを上記のように用いることにより、図4に示すようなフィルム3や基板上に直線状のパターン4を形成することができる。しかもこの方法は量産性に優れるといった特徴を有する。
【0026】
他方、半導体レーザーを円筒形状に照射する技術として、電子写真装置や平版印刷版装置や画像記録装置等が挙げられる。まず、電子写真装置いわゆるコピー機あるいは複写機では、円筒状のシリンダ(ドラムとも呼ばれる)の上に感光性材料を設け、レーザー光を照射(露光)することにより、照射の有無によって感光性材料の電荷の輸送あるいは保持量を変化させ、その電荷の差を利用してトナー等を吸着し紙等へ転写する原理を用いる(例えば、特開2004−151519号公報)。
【0027】
ところが、これら用途では、このシリンダに次の新たな情報を載せる必要があるため、レーザー光によってシリンダに永久変形を伴う凹凸が形成される様なことは、前の情報が残ることになるため極力避けられる。また、これら用途で要求される分解能は、10μm〜20μm程度で、本発明が意図している1μm以下の分解能は得られない。従って、従来公知の方法は、本発明とは全く異なる原理を使いたものであり、またその目的も全く異なるものである。
【0028】
次に、平版印刷技術は、平面平板あるいは円筒状のローラーあるいはスリーブの上に、感光性樹脂もしくは熱反応型樹脂を設け、レーザー光を照射(露光)することにより、照射の有無によって感光性材料の親和性(親水性もしくは親油性)を変化させるか、もしくは感光性材料を昇華させ、その下に設けられた層を露出させることで親和性を変化させ、その親和性の違いから転写するインクの付着量に差異を設ける方法である(例えば、特開平7−214744号公報、特開平10−858号公報)。
【0029】
本用途において重要なことは版とインクとの付着であって、形状はインクを介して紙等に転写される。すなわち、印刷技術は、版に形成されたパターンの有無、つまり2次元情報を媒体に転写する技術であるのに対して、本発明に係るナノインプリントや光学フィルム等に賦形する技術は、モールドに形成されたパターンの幅と深さの両方の情報、つまり3次元情報を媒体に転写する技術である。従って、平版印刷技術は、本発明とは全く異なる原理であり、またその目的とするところも全く異なるものである。さらに、現状平板印刷において実現できる分解能は、20μm〜100μm程度で、本発明が意図している1μm以下の分解能は得られない。
【0030】
さらに、画像記録装置においても、ドラムにレーザー光を照射する形態が見られる(例えば、特開2000−310745号公報、特開平11−28833号公報)。これらの技術は、印刷用の刷版を作製するために用いられる。平版の場合は上記に述べた通りである。一方凹版あるいは凸版の場合、ドラム上に設けられた凹凸形状にインクを載せ、紙等の媒体に画像あるいはイメージを転写する技術である。上記特許文献等にて開示されている技術は、レーザー光のビーム径より狭い領域で反応する熱反応型レジストを使っていないため、その解像度(分解能)は10μm〜50μm程度であり本発明が意図している1μm以下の分解能は達成出来ない。
【0031】
また、これら印刷版では、転写によって再生される情報は転写媒体表面にドットの大きさや濃淡で形成されるため、版の解像度のみが重要で凹凸の深さには無関係である。一方、ナノインプリントや光学フィルムに賦形する技術は、上記で述べた様にモールド上に形成されたパターンの解像度のみならず、深さ方向の情報も転写する技術である。即ち、印刷技術は、版の2次元情報を媒体に転写するのに対して、ナノインプリントや光学フィルムに賦形する技術は、モールドの3次元情報を媒体に転写する技術であり、全く異なる概念のものである。
【0032】
本発明に係るシームレスモールドの製造方法は、スリーブ形状のモールド上に熱反応型レジスト層を形成し、前記熱反応型レジスト層に対してレーザーを用いて微細モールドパターンを形成するシームレスモールドの製造方法であって、前記熱反応型レジスト層は、前記レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持つ熱反応型レジストで構成されていることを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係るシームレスモールドの製造方法は、スリーブ形状のモールド上に熱反応型レジスト層を形成し、前記熱反応型レジスト層に対してレーザーを用いて微細モールドパターンを形成するシームレスモールドの製造方法であって、前記熱反応型レジスト層は、前記レーザーのスポット径において所定の温度以上で反応する領域を含む温度分布を持つ熱反応型レジストで構成されていることを特徴とする。
【0034】
これらの方法においては、スリーブ形状のモールド上に熱反応型レジスト層を形成する前に、前記スリーブ形状のモールド上にエッチング層を形成し、前記微細モールドパターンをマスクとして前記エッチング層をエッチングし、前記微細モールドパターンを除去することをさらに具備することが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法においては、例えば、(1)スリーブ形状のモールドの上に熱反応型レジスト層を形成し、半導体レーザーを使って露光し、露光部分を現像することによってモールドを作製する方法;(2)スリーブ形状のモールドの上にエッチング層と熱反応型レジスト層とを形成し、半導体レーザーを使って露光し、エッチングし、熱反応型レジスト層を除去することによってモールドを作製する方法;(3)スリーブ形状のモールドの上にエッチング層と熱反応型レジスト層とを形成し、半導体レーザーを使って露光し、露光部分を現像し、現像後エッチングし、熱反応型レジスト層を除去することによってモールドを作製する方法が挙げられる。
【0036】
(1)〜(3)の方法のうちいずれの方法を用いるかは、レジストの選択や要求される分解能や加工深さによって変わる。(1)の方法では、レジストは露光によってアブレーションするタイプが好適で、比較的浅い深さが要求される用途に適する。現像やエッチング工程が無い分、シンプルで安価な工程になる。(2)の方法では、レジストは露光によってアブレーションするタイプで、比較的深い(高アスペクト比)加工が要求される用途に適する。(3)の方法では、レジストは露光によって相変化するタイプや化学反応するタイプが好適で、高い分解能でかつ高アスペクト比の加工が要求される用途に適するものである。但しその分、工程は若干複雑になる。
【0037】
本発明において使用される熱反応型レジストは、有機レジストもしくは無機レジストであることが好ましい。これらのレジストにより形成されたレジスト層は、単層であっても良く、幾つかのレジスト層を組み合わせた多層構造であっても良い。なお、どのようなレジストを選択するかは、工程や要求加工精度等によって適宜変更することができる。例えば、有機レジストは、スリーブ上に形成する際にロールコーター等で塗布出来ることから工程は簡便である。但し、スリーブ上に塗布するためレジストの粘性に制限があり、塗布厚精度や制御あるいは多層にコーティングすることは難しくなる。
【0038】
上記問題点は、従来のフォトレジストを使用してスリーブ形状のモールドを製造する際の大きな課題となっていた。フォトレジストには、ポジ型とネガ型の2つのタイプがあり、集積回路製造で広範に使用されている。一般にフォトレジストは、エポキシ系あるいはアクリレート系の有機材料からなり、液体状態で基材に塗布する形態を取る。通常集積回路製造では、ウエハーの上にスピンコーターにてフォトレジスト滴下し、フォトレジストの粘性あるいはウエハーの回転数等でレジスト膜厚を制御する。ところが同じようにフォトレジストをスリーブ形状のモールド表面に形成しようとすると、フォトレジストがある一定の粘性を持った液体であるため、重力に従ってレジスト膜厚が周内に不均一に形成されるといった問題点があった(Japanese Journal of Applied Physics Vol.43 No.6B, 2004, pp.4031-4035 Yuuki Joshima et. al.)。
【0039】
上記周内の不均一性を避けるために、レジストを満たしたポットの中にモールドを浸漬し、回転させて引き上げる方法を取った場合、周内方向の不均一性は解消されるが、逆にモールドの軸方向に不均一性が発生するため、軸方向の長さを長くすることが非常に困難であった。
【0040】
上記問題を解消するため、特表2007−507725号公報では、透明なフィルムの間にフォトレジストを挟み、スリーブに巻き付ける方法を適用している。この方法では周内及び軸方向の膜厚の不均一性は解消されるが、周内に必ずフィルムの継ぎ目が発生するため、本発明が目指しているシームレスモールドにはならないといった問題があった。
【0041】
またフォトレジストを使用する際の製造上の問題点として、露光時間による影響がある。モールドのサイズにもよるが、モールドの露光には1時間から長い場合は数日程要する。そのためレジストは、長期の露光時間内で安定した特性を示す必要がある。一般にフォトレジストは、その粘性を制御するために有機溶媒等で希釈されている。従って、レジストを室温に長時間放置すると有機溶媒が揮発して露光特性が変化するといった問題があった。そのため集積回路製造等ではレジスト塗布後、速やかに露光を完了させるようにしている。
【0042】
上記有機溶媒の揮発の問題については、フォトレジストのように光源が光ではなく、もともと熱で溶媒が揮発することが前提とした熱で露光する熱反応型レジストの方が有利である。ただ膜厚の均一性といった観点では、後に述べる無機レジストに比べて劣る。
【0043】
本発明に好適な有機レジストとしては、(株)情報機構発刊「最新レジスト材料ハンドブック」や(株)工業調査会「フォトポリマーハンドブック」にあるように、ノボラック樹脂やノボラック樹脂とジアゾナフトキンとの混合物、メタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0044】
一方、本発明に係る金属や酸化物等の無機材料を用いた熱反応型レジスト材料は、上記膜厚の不均一性の問題点も解消出来る。レジスト材料を形成する方法として、コーティングでは無く、物理的薄膜形成方法を用いてスリーブ形状のモールド上にレジストを形成することにより、レジストが液体状態で無いことから重力の影響を排除でき、スリーブ上に均一な膜厚のレジストを形成することが可能になった。但し通常の薄膜形成装置はウエハーの様な平行平板の基材に形成することが前提となっているため、スリーブ上に薄膜を形成することが出来ないので、本発明者らは、例えば本発明に開示したようなスパッタリング装置を発明することで問題を解決した。
【0045】
これまで述べてきた膜厚の均一性であるが、どの程度の均一性が必要であるかは、要求される微細構造のサイズに依存する。例えばレジストの膜厚が数十μmばらついた状態では露光特性が一定しないため、100nmのサイズの微細構造を形成することは非常に困難である。通常ナノメーターサイズの微細構造を形成するには、レジスト膜厚にもよるが許容されるレジスト膜厚精度は、少なくとも目的とする膜厚(以下、「d」と表す場合がある)の±20nm以下、より好ましくは±10nm以下であり、特に好ましくは±3nm以下であることが必要である。なお、本発明においては、目的とする膜厚(d)に対する膜厚のバラつきの幅、具体的には、上記の「±20nm以下」、「±10nm以下」、「±3nm以下」のような表記によって表される膜厚のバラつきの幅を「変動幅」と称する。
【0046】
上記膜厚精度をスリーブ上で達成することは種々の制約から非常に困難である。本発明において、スリーブ1周内の膜厚精度を確保するため、成膜中にスリーブを回転させる方法を採用している。ただスリーブを回転させたケースであっても、膜厚精度を確保するには、成膜速度とスリーブの回転速度を適切に選択する必要がある。例えば、成膜速度が早い場合、スリーブの回転速度が遅いと膜厚ムラが発生し易い。また成膜速度が遅い場合、回転速度は遅くても構わないが成膜時間が長くなる。
【0047】
上記レジスト膜厚精度を確保するためには、早くてもスリーブ一回転当たりの成膜速度は20nm/回転以下である必要がある。より好ましくは10nm/回転以下である必要がある。これ以上の速度で成膜すると、成膜開始時の位置と終了の位置が一致しないと、膜厚ムラが発生する。逆に成膜速度は、0.00001nm/回転以上でないと現実的な時間で成膜が完了しない。
【0048】
またスリーブの回転速度は、成膜時間との積である総回転数からおおよそ決まる。成膜総回転数が少ないと、成膜開始、終了のシャッター開閉時間やスリーブ回転軸の機械的軸ブレあるいは成膜中の温度変動等による成膜速度のバラツキの影響により、周内の膜厚均一性が低下する。この問題を解決するため、成膜時における総回転数を多くすることで、上記成膜速度変動を平均化することでバラツキを小さく出来る。
【0049】
例えば、レジスト厚が40nmとした場合、1回転当たりの成膜速度が10nm/回転であると、成膜時の総回転数は4回転しかしないことになる。この場合、回転速度を25倍上げることで、成膜開始から終了までの総回転数は100回転する。そのため、1回転当たりの膜厚変動要因は1/100に低減出来ることから、膜厚精度への影響は1%に押さえることが出来る。
【0050】
成膜開始から終了までの総回転数は、成膜装置のシャッター構造や開閉時間あるいはスリーブ回転軸精度等の成膜速度変動要因によっても変わるが、少なくとも500回転以上確保出来ることが望ましい。より好ましくは1000回転以上であることが好ましい。一方、総回転数は、100万回転以下でないと、例えば1000rpmでスリーブを回転させても、成膜時間に16時間程度必要となるので現実的でない。
【0051】
金属や酸化物等の無機材料を用いた熱レジストは、室温状態では化学的・物理的性質が非常に安定しており、さらに物理的薄膜形成方法を用いて形成することから有機溶媒等を使用していないため、長期間の露光に対しても性質が変化することなく非常に安定した特性を示す。
【0052】
これら発明により、周内及び軸方向の膜厚が均一で、かつ長期間の露光に対しても安定な熱反応型レジストを発明したことによって、フォトレジストを用いた場合よりも安定で微細な形状が形成出来、1μm以下の微細構造を持ったシームレスのスリーブ形状のモールドが達成できた。
【0053】
上記無機熱反応型レジストの形成方法としては、抵抗加熱蒸着法やマグネトロン高周波スパッタ法、電子ビームスパッタ法、CVD法などの物理的薄膜形成法によって設けることが好適である。これらの方法は、基本的に真空プロセスになるため、スリーブ上に形成するには塗工方法に比べ工数は掛かるが、前述した様に膜厚が精度良く制御出来る上、さらにはレジスト層やエッチング層を多層に積層することも容易である。
【0054】
本発明に好適な無機熱反応型レジスト材料は、反応させる温度によって種々選択することが出来る。例えばAl,Si,P,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,In,Sn,Sb,Te,Pb,Bi,Ag,Au及びこれらの合金が挙げられる。また、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Ba,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pb,Bi,La,Ce,Sm,Gd,Tb,Dyの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭化物、硫化物、硫酸化物、フッ化物、塩化物や、これらの混合物でも良い。
【0055】
上記の材料の中でも特に本発明に好適な無機熱反応型レジスト材料は、遷移金属及びXII〜XV族元素から成る群から選択される元素との不完全酸化物が好ましい。
【0056】
ここで言う「不完全酸化物」とは、遷移金属及びXII〜XV族元素から成る群から選択される元素において、その元素がとりうる価数に応じた化学量論組成の酸化物より酸素含有量が不足した状態をいう。Crを例に挙げて説明すれば、化学式CrOの酸化状態を組成の割合に換算するとCr1−xと表すことができ、x=0.75の場合が完全酸化物である。従って、不完全酸化物とは0<x<0.75の範囲で表されるものを示す。また、元素によっては、1つの元素が異なる価数の酸化物を形成することが可能である。この場合は、価数に応じた化学量論組成の酸化物より酸素含有量が不足した状態も本発明の不完全酸化物とする。なお、元素の価数及び酸素量は、例えば蛍光X線分析装置で分析することができる。
【0057】
本発明の無機熱反応型レジスト材料は不完全酸化物から成り、かつ、フロン系ガスを用いたドライエッチング処理に対し、高い耐性を有する。
【0058】
前記したように、微細パターン形状とともに溝の深さも深くしたパターンを形成したい場合は、熱反応型レジスト材料を単独で使用するだけでは困難で、熱反応型レジスト材料の下層にエッチング層を形成した積層構造が必要になる。この場合、下層のエッチング層がドライエッチング処理されている間、マスクとして機能している熱反応型レジスト材料には、高いドライエッチング耐性が求められることになる。換言すれば、本発明の熱反応型レジスト材料は、フロン系ガスによるドライエッチング処理において、熱反応型レジストのエッチング速度が遅いか又はエッチングされないということが、重要になる。
【0059】
ここで、フロン系ガスによるドライエッチングのメカニズムを考えた場合、ドライエッチング装置の真空チェンバー内で活性化したフッ素は、レジストに用いられている元素と結合して、フッ化物を形成する。そのフッ化物の蒸気圧が比較的高い場合(すなわち、そのフッ化物の沸点が比較的低い場合)には、そのフッ化物は気化してレジスト材料中から消失するため、結果としてエッチングされたことになる。一方、フッ化物の蒸気圧が比較的低い場合(すなわち、そのフッ化物の沸点が比較的高い場合)は、気化し難いためエッチング速度が遅くなるか又はエッチングされない。
【0060】
今般、本発明者らは、実験を重ねた結果、遷移金属及びXII族〜XV族元素の中で、その元素の主要フッ化物の沸点が200℃以上となる元素を熱反応性レジスト材料として選択することで、該レジスト材料が、フロン系ガスを用いたドライエッチング処理に対し高い耐性を示すことを発見し、その効果を確認した。
【0061】
本発明に係る熱反応型レジスト材料を構成する元素の主要フッ化物の沸点は、約200℃以上であり、より好ましくは約250℃以上、さらに好ましくは約700℃以上、最も好ましくは約950℃以上である。フッ化物の沸点が高くなるにつれフロン系ガスを用いたドライエッチング耐性がより高くなる。以下の表1に本発明に係る熱反応型レジスト材料を構成する元素の主要フッ化物の沸点を示す。
【表1】

【0062】
一般に、光学材料やフィルム等では、微細パターンのアスペクト比(溝の深さを溝の開口幅で除した値)が少なくとも1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であることが求められる。アスペクト比を自由に選択できることで、光学設計の自由度が広がる。したがって、本発明に係る熱反応型のレジスト材料は、ドライエッチングの耐性が高いことが必須となる。
【0063】
上記表1に示すような主要フッ化物の沸点が200℃以上ある元素を熱反応型レジスト材料に用いることで、熱反応型レジスト材料は、エッチング層のエッチング耐性の約3倍以上のエッチング耐性を持つことができる。約3倍以上のドライエッチング耐性をもつ熱反応型レジスト材料を用いることで、熱反応型レジスト材料が、深い溝を形成するマスクとして機能し、エッチング層をエッチング処理でき、溝の深いパターン形状を形成することが可能になる。
【0064】
本発明に係る熱反応型レジスト材料に用いられる元素は、遷移金属及びXII族〜XV族元素の中で、その元素の主要フッ化物の沸点が200℃以上である元素から選択される一種類以上の元素あり、具体的には、遷移金属ではTi,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb,Rh,Ag,Hf,Ta,Auであり、XII〜XV族元素ではAl,Zn,Ga,In,Sn,Sb,Pb,Biである。より好ましくは、遷移金属として、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Ag,Ta、Auが挙げられ、XII〜XV族元素として、Sn,Pb,Biが挙げられる。これらの元素は、その元素の主要フッ化物の沸点が200℃以上あるため、熱反応型レジスト材料に用いることで、フロン系ガスでドライエッチング処理されたエッチング層に比べ同処理されたレジスト層が約3倍以上のドライエッチング耐性を持つ。中でも特に好ましい元素として、Ti,Cr,Nb,Ta,Snが挙げられる。
【0065】
一方、これまでに報告されている熱反応型レジスト材料を構成する元素W,Mo,As,Sの主要フッ化物の沸点は、それぞれ、17℃、35℃、63℃、−64℃と低く、ドライエッチング耐性の高い本発明に係る熱反応型レジスト材料の元素としては機能しえない(国際公開公報WO2004−064057号、The 19th Symposium on Phase Change Optical Information Storage (2007) p77)。
【0066】
本発明の方法における半導体レーザーのスリーブ形状の被照射体としては、図5に示すように、円柱形状のモールド5上にエッチング層6が形成され、エッチング層6上にレジスト層7が形成されてなるもの、図6に示すように、円柱形状のモールド5上にエッチング層6が形成され、エッチング層6上に熱吸収層8が形成され、熱吸収層8上にレジスト層7が形成されてなるもの、図7に示すように、円柱形状のモールド5上に熱絶縁層9が形成され、熱絶縁層9の上にエッチング層6が形成され、エッチング層6の上にレジスト層7が形成されてなるもの等が挙げられる。なお、図6の熱吸収層8は、エッチング層6の下に配設されても良い。
【0067】
図5に示す被照射体においては、エッチング層を設けることでパターンの加工深さを自由に制御でき、かつ、熱反応型レジスト層の厚みを加工に最適な膜厚に選択することが出来るようになる。即ちエッチング層の厚みを制御することで、加工深さを自由に制御できる。また、加工深さはエッチング層で制御できることから、熱反応型レジスト層は露光や現像が容易な膜厚を選択すれば良い。
【0068】
本発明における、エッチング層に用いる材料としては、エッチング異方性を得るために、Siやポリシリコン、GaAsやInP等の半導体材料、Al,Cu,W,Ti,Taなどの金属やそれらの酸化物、窒化物、炭化物、その合金、SiO,Si、ガラス等の絶縁材料、WSi,TiS,CoSi等のシリサイド材料、ポリフロロエチレンやPMMA、PC等の有機材料が好適である。中でも、Si、Taならびにそれらの酸化物、窒化物、炭化物からなる群より選ばれる材料が好ましく、特にSiO,Si,Si及びTaのような半導体や絶縁材料がより好適である。
【0069】
図6に示す被照射体において、エッチング層及び熱反応型レジストの役割は図5の場合と同じである。一方、熱吸収層の役割は、熱反応型レジストにおける光の吸収特性の選択範囲を広げることにある。通常、熱反応レジストは広い波長域で吸収を持つ材料が多いが、材料によっては半導体レーザーの波長、例えば405nm近傍に光学的に吸収を持たない材料もある。その場合、熱吸収層にて半導体レーザーのエネルギーを吸収し熱に変換することで、その熱によって熱反応型レジストを反応させることが出来る。本発明における熱吸収層に用いる材料としては、半導体レーザーの波長域で光吸収性を有する材料が好適で、例えば、C,Mg,Al,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Se,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pb,Bi及びその合金などが挙げられ、これら元素からなる酸化物、窒化物、硫化物、炭化物あるいはその混合物でも良い。
【0070】
図7に示す被照射体は、半導体レーザーの照射によって昇温された部分の熱エネルギーの散逸を防止する効果がある。通常、スリーブ材料は加工性に富む金属やガラス等で作製される。ところが金属やガラスはプラスチックのような材料に比べ熱伝導率が高いため、半導体レーザーの照射によって昇温された部分の熱エネルギーがスリーブ側に逃げる現象が起こる。従って、露光部分を熱反応型レジストの反応温度に昇温するためには、より大きな出力の半導体レーザーが必要となる。半導体レーザーの高出力化は、光学部品の大型化やレーザー寿命の低下に繋がり好ましくない。そこで図7に示す構成のように、スリーブに熱絶縁層を設けることで熱の散逸を防ぎ、半導体レーザーのエネルギーをより効率良く使える様になる。尚、熱絶縁層に用いる材料としてはアクリルのような材料が好ましい。
【0071】
本発明において、無機熱反応型レジスト層を形成する際には、スパッタリング法や蒸着法やCVD法を用いた成膜が好ましい。特に、無機熱反応型レジスト層とエッチング層とをスパッタリング法で形成することが好ましい。無機熱反応型レジスト層を形成する方法としては、前記の通り種々の方法が考えられるが、膜組成の均一性、膜厚制御、生産性等を考慮するとスパッタリング法が最も好適である。特に、大型モールドを形成する場合には広い面積で均一な膜を形成する必要がある。このような観点から、気相成膜の中でもスパッタリング法が好適である。
【0072】
本発明において、従来のスパッタリング装置は、Siウエハーやガラス基板のような平行平板に成膜することを前提に製作されているため、本発明におけるスリーブ形状のモールドにはそのままでは適用できない。そこで、本発明を好適に使用するために、新たにスリーブ形状のモールドに熱反応型レジストを塗布するのに適する、図8に示すようなスパッタリング装置を開発した。
【0073】
図8に示すスパッタリング装置は、被処理体をロードするロードロック室11と、ロードロック室11とバルブ12を介して連結するチャンバ13とから主に構成されている。チャンバ13内には、ターゲット14が配設されており、このターゲット14に対面するようにスリーブモールド15が設置される。ここでは、スリーブモールド15が立設されるように設置されており、矢印方向に回転するようになっている。また、チャンバ13には、バルブ16を介して真空ポンプ17が接続されており、チャンバ13内を減圧するようになっている。また、チャンバ13には、Arガスのような放電ガスを供給する放電ガス供給部18及び反応ガスを供給する反応ガス供給部19が接続されている。さらに、ターゲット14には、マッチング回路20を介して電源21が接続されている。
【0074】
このような装置においては、真空ポンプ17でチャンバ13内を減圧し、スリーブモールド15を回転させる。そして、放電ガス供給部18から放電ガスを供給し、反応ガス供給部19から反応ガスを供給して、電源を投入すると、スリーブモールド15に対してスパッタリングが行われる。なお、スパッタリング装置においては、ターゲットを複数のチャンバ内にそれぞれ設置して、連続して多層にレジスト層を形成しても良い。これにより、被処理体が大気に晒されることを避けることができる。
【0075】
本発明において、従来のドライエッチング装置は、Siウエハーやガラス基板のような平行平板に成膜あるいはエッチングすることを前提に製作されているため、本発明におけるスリーブ形状のモールドにはそのままでは適用できない。
【0076】
通常ドライエッチング装置は、図9に示すように真空槽内13を減圧状態にしてエッチングガス25を導入し、ステージ26の上に置かれた基板10に高周波21を印加することでプラズマを発生させる形態を取る。ドライエッチングの原理は、プラズマによってエッチングガス分子がイオン化あるいはラジカル化し、基材と化学あるいは物理反応することでエッチングされる。
【0077】
ドライエッチングの特徴として、ウエットエッチングに比べてエッチングの異方性が得られやすいことにある。ウエットエッチングは、エッチング液に基板を浸漬させることでエッチングが進行する。そのため、図10に示すようにレジスト層7の下に設けられたエッチング層6に対して、エッチングに方向性が出ないため基板は等方的にエッチングされることになる。一方、ドライエッチングは図9のように、基板10と対向電極22の間に印加された電界によってイオンを加速することにより、イオンが基材と垂直方向に表面と衝突することで基材と反応しエッチングが進行する。そのため、図11に示すようにエッチング層6は、基板表面に対して垂直方向にエッチングされる。
【0078】
本発明においては、曲面を持った基材、例えばロールや円弧状のモールドを、モールド表面から中心軸方向に向かって、モールド表面の接線に対して垂直な方向にエッチングする必要がある。上記のように、モールド表面から中心軸方向に向かって、モールド表面の接線に対して垂直方向にエッチングさせるために本発明では、真空槽中に、スリーブ形状のモールド15と、該モールドの表面の対向する位置に円筒形状の対向電極22とを配置した構成からなるドライエッチング装置としている。装置の概要は図12に示す。
【0079】
この装置によれば、例えばモールドに接続された高周波電源21により高周波を印加させ、対向電極22を接地した場合、モールドと電極との間には、モールド表面から中心軸方向に向かって、モールド表面の接線方向に対して垂直の方向に均一な電界が形成される。従ってモールド表面に沿って安定したプラズマが形成される。一方、プラズマとモールドの間には、モールドを包み込むようにシース電位と呼ばれる電位が発生し、モールドに対して垂直方向の電界が生じる。図12を上方から見た図13に示す様に、この電界に沿ってエッチングガスイオンが加速され、モールド表面から中心軸方向に向かって、モールド表面の接線に対して垂直方向にエッチングが進行する。
【0080】
この図12の装置のもう一つの特徴は、エッチング処理の際、モールドを回転させる必要がないことである。回転するモールドに高周波を印加するためには、回転機構と同時に電気が流れる方法を取る必要あるためカプラー23の構造が複雑になるが、この方法ではモールドを回転する必要が無いため、装置の設計が容易になる。
【0081】
一方、モールドに流れるガスのムラや、モールドと電極間距離の変動により、エッチング速度にムラが出る可能性がある。これらの問題点を解決するために、本発明では、図14に示すように、エッチング処理中に、モーター24とカプラー23を介して、スリーブ形状のモールド15を、その中心軸を中心に回転させることができる。このようにモールドを回転させることで、モールドと電極間距離の変動を抑制することができるとともに、このような機能を持たせることによって、対向電極の形状も円筒形状以外に、円弧形状、平行平板形状も用いることが可能となった。例として対向電極が円筒形状の場合の装置を図14に示す。
【0082】
この方法では、モールドを回転させるためにモールドにエッチング速度のムラがあったとしても、回転中に均一化されることでエッチング速度のムラの影響は排除できる。
【0083】
但し上記したように、モールドを保持するカプラー23で、回転機構と高周波伝達機構の両方を兼ね備えた設計が必要となるが、高周波を電極側に印加しモールド側を接地したような回路構成を取ることでカプラー23の設計は複雑とならない(図15)。
【0084】
本発明のエッチング装置は、スリーブ形状のモールド上にエッチング層を形成しただけのものをエッチングすることはもちろん可能であり、モールド表面にエッチング層、レジスト層を形成させてエッチングすることも可能である。
【0085】
本発明に好適なエッチングガスについては、レジストやエッチングされる材料に応じて種々選択すれば良く、何ら制限を受けるものでは無いが、例えばCF,CHF,C,C,C,C,CH,CCl等のフルオロカーボンやこれらガスにAr,O,H,N,CO等のガスを混合したもの、またHBr,NF,SF,CFBr,HBr,Cl,HCl,HI,BBr,BCI,CI、SiClの混合ガスやこれらにAr,O,H,N,CO等のガスを混合したものでも良い。
【0086】
本発明では、上記のエッチングガスの種類、組成、及びエッチング温度といった条件を最適化することによってエッチング方向を制御することもできる。具体的には、モールドの中心軸方向へ向かって幅が等しい溝を製造することもできるし、幅が中心軸方向へ向かうにつれて狭まるようなV字形状の溝を製造することもできる。
【0087】
図16は、本発明に係る方法において、スリーブモールドに形成したレジスト層に対して露光する露光装置を示す図である。この露光装置は、スピンドルモーター31により回転したスリーブモールド32に対して光学系33を介して光を照射する構成を採る。この光学系33においては、露光用の半導体レーザー331から出射されたレーザー光がコリメータ332で平行光としてミラー334を通して対物レンズ333に送られる。一方、フォーカス用の半導体レーザー335から出射されたレーザー光がコリメータ336で平行光としてダイクロイックミラー337を通して対物レンズ333に送られる。そして、対物レンズ333で集光された光がスリーブモールド32に照射される。光学系33においては、フォーカス用の半導体レーザー335から出射されたレーザー光がダイクロイックミラー337で光路が変えられて集光レンズ338で集光されてフォトディテクタ339で検出されるようになっている。
【0088】
この露光装置においては、スリーブモールド32の長軸方向に光学系33が移動するように構成されており、スリーブモールド32の端部から端部へ露光することが可能になる。また、スリーブモールド32の回転に応じて光学系33のヘッドの位置をずらすことにより、繋ぎ目の無いシームレスなモールドを作製することが出来る。また、半導体レーザーの対物レンズ333が、スリーブモールド32の変動に対して追従するフォーカスサーボを有するので、半導体レーザーの出射光量を一定に制御することができる。このフォーカスサーボは、上下動に対して追従するものでも良く、左右方向の変動に追従するものでも良く、両方の機構を兼ね備えたものでも良い。また、図16に示すように、サーボを安定させるために、露光用の半導体レーザー331とは別の波長を持ったフォーカス用の半導体レーザー335を用いることにより、サーボ特性に露光用の半導体レーザー331の変動を受けにくくすることも可能である。
【0089】
さらに、半導体レーザーが温度や劣化によって出力が変動することを抑えるために、フォトディテクタ339により半導体レーザーの出射光量をモニターしてフィードバック制御を行うので、出射光量に応じて出力を安定させることができる。また、露光装置においては、露光速度を向上させるために、露光用の半導体レーザー331を複数個使用しても良く、光学系33を複数個設けても良い。
【0090】
この露光装置において、半導体レーザーのビーム形状は、モールド上に形成する形状によって種々選択可能である。例えば、モールド上に円形の形状を形成する場合は、半導体レーザーのビーム形状も円形であることが好ましい。一方、モールド上に回転方向に伸びた楕円形状や溝形状を狭いピッチで形成する場合は、隣接する露光時の熱干渉を避けるため、半導体レーザーのビーム形状を楕円にし、楕円の長軸をスリーブの長軸と直角方向に配置するのが良い。また、スリーブの長軸に対して平行に長い形状や回転方向に対して短いピッチでモールド上に形成したい場合は、楕円形の半導体レーザービームの長軸を、スリーブの長軸と平行に配置することが好ましい。
【0091】
これまで述べた露光原理及び露光装置から分かるように、本発明におけるモールド上に形成される微細形状は、種々の形状を形成することが可能である。例えば、半導体レーザーの出射光量を変調させることで、同じロール形状のスリーブモールド上に大小さまざまな大きさの孔形状の凹凸パターンが作製可能になる。また半導体レーザーの発光時間や発光パターンを制御することで、三日月形状から長楕円形状の微細構造も作製出来る。さらに半導体レーザーをある一定時間連続して発光させることで、連続あるいは不連続の溝形状も作製可能である。さらに熱反応型レジスト材料あるいはドライエッチング条件を適宜選択することによって、矩形からV字の溝形状まで作製可能である。本発明にかかる微細形状作製方法は、従来法に比べてモールドに形成出来る微細形状の自由度が格段に高い方法である。
【0092】
以前より、微細かつ凹凸形状の自由度が高い長尺状のフィルムが希求されてきた。ところが例えば、表面に凹凸を持った反射防止フィルムの場合、完全に規則配列した構造では、光の入射する方向によっては反射防止特性が低下する視野角依存性の発生や、液晶あるいはプラズマテレビのように、規則正しいセル構造を持つものと貼り合わせたりするとモアレ模様が発生するケースがあった。そのため、規則配列を若干崩した構造あるいは種々の微細構造のサイズを持ったランダム性が必要となる。また連続生産する場合、孔の形状が垂直に近い構造であるとモールドに転写した樹脂の抜けが低下するといった問題が発生するため、孔の形状はある一定角度のテーパー形状であることも必要である。さらに、例えば光学フィルムの分野では、微細形状が溝形状であるグリッド構造を持ったフィルムが必要とされる場合がある。
【0093】
従って、上記要請から転写モールドには、少なくとも微細かつ凹凸形状の自由度の高いパターンが形成出来方法から形成されるものでなければならない。
【0094】
上記課題については、従来の原版に平行平板のモールドを用いた方法では、予めパターンが描画されたマスクを用いるため解決可能であった。ところが、平行平板のモールドを用いた方法や、薄膜モールドを巻き付けてスリーブモールドにする方法では、必ずフィルムのどこかで継ぎ目が発生するため、連続した製品とはならず著しく生産性が低下していた。
【0095】
このような微細で凹凸形状の自由度が高く、かつ継ぎ目のないフィルムを作製するためには、モールド自身が自由度の高い微細形状を持ちかつ継ぎ目のないシームレスであることを両方具備している必要があった。
【0096】
本発明によって作製されたモールドは、前記の通り凹凸形状自由度が高い上、継ぎ目のないシームレスであるため、従来法に比べて種々の形状を持ったフィルムに対応でき、かつ格段に生産性が高いといった特徴を持つ。
【0097】
フィルムの製造方法としては、熱可塑性のフィルムあるいはベースフィルム上に、熱可塑性樹脂を塗布したフィルムを加熱した状態でシームレススリーブに押しつけることで転写する所謂熱ナノインプリント法やベースフィルム上に、粘性の低いUV硬化樹脂を塗布したフィルムをシームレススリーブに押しつけ、UV光で硬化させる所謂UVインプリント法、さらには半硬化したUV硬化樹脂をベースフィルムとラミネートさせたドライフィルムレジストをシームレススリーブに押しつけることで微細パターンを転写する方法等がある。
【0098】
また被転写体はフィルムで無くても良い。例えばガラス板や金属板の表面に微細構造を形成する場合、平行平板のモールドを用いた方法や薄膜モールドを巻き付けてスリーブモールドにする方法では、モールドの継ぎ目と板の長さを同期させれば継ぎ目を避けて生産することは可能である。ところが、生産する板の長さが変わるたびに継ぎ目の位置を合わせるためモールドを交換する必要がある。一方シームレスモールドの場合、どのようなサイズの板であっても交換不要であり、さらには長さの異なる板を同じラインで連続して生産することも可能である。
【0099】
実際のフィルム製造において、本発明のシームレスモールドの製造方法によって製造された、表面に微細形状が形成されたシームレスモールドを用いることが好ましい。また、前記シームレスモールドを用いてフィルム製造することによって、表面に微細な凹凸パターンを有する継ぎ目の無い連続したフィルムの製造が可能になる。さらに、前記シームレスモールドを用いたフィルム製造によって作製されたフィルムは、ユーザーが適切なサイズに切断することで、材料に無駄が無く歩留まりの高い微細な凹凸パターンを有するフィルムとなる。表面に1μm以下の微細構造を持った部材を作製するに当たっては、表面の微細形状のサイズが1μm以下であるシームレスモールドを使用することが好ましい。また、前記シームレスモールドを用いてフィルム製造することによって、表面に微細な凹凸パターンを有する継ぎ目の無い連続したフィルムの製造が可能になる。さらに、前記シームレスモールドを用いたフィルム製造によって作製されたフィルムは、ユーザーが適切なサイズに切断することで、材料に無駄が無く歩留まりの高い微細な凹凸パターンを有するフィルムとなる。
【0100】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例1)
図17に示すように、φ30mmとφ58mmに加工された金属のスリーブ41を準備し、その外側に、長さ200mmで内径φ58mm、外径φ60mmのアクリルパイプ42を取り付け、円筒形状のスリーブを構成した。ここでは、アクリルパイプが熱断熱層の役割を果たしている。
【0101】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ(d)=40nmで熱反応型無機レジスト層を形成した。これにより、図18に示すように、スリーブ41上にアクリルパイプ42を介してレジスト層43が形成された。なお、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的の厚さ(d)40nmに対して±3nm以下であった。ここでは、熱反応型無機レジストとして、SnOxを使用した。この場合、Snのターゲットをスパッタリング装置に装着し、ArとOの混合ガス雰囲気でスパッタリングを行った。このとき、ArとOの混合比でSnの酸化量を変えた。その結果を下記表2に示す。この結果から、Snの酸化量は0≦x<2の値とすることができる。なお、xの値は蛍光X線によるSnとSnOのピーク比から求めた。
【表2】

【0102】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置(波長の異なる露光用レーザーとフォーカス用レーザーの2種搭載した露光装置)を用いて露光した。なお、露光条件は以下の通りである。
露光用レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光用レーザーパワー:3mW〜8mW
フォーカス用レーザー波長:665nm
フォーカス用レーザーパワー:0.2mW
回転速度:700rpm
送りピッチ:200nm/回転
スリーブ露光幅:200mm
【0103】
なお、露光中にレーザーの強度を変えることで、さまざまな形状・パターンを形成することが出来るが、実験では加工精度を確かめるために、パターンを連続の溝形状とした。形成する形状は目的とする用途によっては孤立した円形、楕円形状等でも構わず、本発明は加工形状によって何ら制限を受けるものでは無い。また、ここでは、スリーブ露光幅は200mmに設定したが、露光幅を広くすれば露光時間が長くなるだけで、本露光装置では実験で用いた露光幅より長い幅でも全く問題なく露光することができる。
【0104】
次いで、上記露光装置によって露光されたレジストの現像を行った。現像にはウエット工程による現像を適用した。現像液には酸やアルカリ等を用いることが出来るが、ここではテトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用いた。具体的には、25℃、2.38%のTMAH溶液のバスを準備し、このバスにスリーブを浸漬することで現像を行った。現像時間は、Snの酸化量によって異なるが、1分〜5分程度が好ましい。なお、本実施例では、スリーブを浸漬する方法で現像を行ったが、現像液をスリーブに向けて噴霧したり滴下して現像しても良い。
【0105】
このように現像されたスリーブを洗浄し、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブの表面形状を観察したところ、深さ40nmで幅100nm程度の微細な溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。これは、熱反応型レジストが、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持っていたためであると考えられる。
【0106】
(実施例2)
図17に示すように、φ30mmとφ58mmに加工された金属のスリーブ41を準備し、その外側に、長さ200mmで内径φ58mm、外径φ60mmのアクリルパイプ42を取り付け、円筒形状のスリーブを構成した。ここでは、アクリルパイプが熱断熱層の役割を果たしている。
【0107】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ100nmでエッチング層を形成し、次いで、厚さ(d)=40nmで熱反応型無機レジスト層を形成した。これにより、図19に示すように、スリーブ41上にアクリルパイプ42を介してエッチング層44が形成され、エッチング層44上にレジスト層43が形成された。なお、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的とする厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。ここでは、エッチング層44としてSiO膜を用いた。この場合、SiOのターゲットをスパッタリング装置に装着し、Arガス雰囲気でスパッタリングを行った。また、熱反応型無機レジストとしては、実施例1と同様に、SnOx(x=1.2)を使用した。
【0108】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置を用いて露光した。なお、露光条件は、露光用レーザーパワーのみ8mWに変更した以外は実施例1と同じとした。露光後、TMAH溶液にてレジストを現像した。現像条件は実施例1と同じとした。
【0109】
現像後、図14に示すエッチング装置を用いてエッチング層44をエッチングした。なお、スリーブが均一にエッチングされるようにエッチング中は、スリーブを回転させながら行った。エッチングガスにはCF4ガスを用いた。また、エッチング条件は以下の通りである。
エッチングパワー:150W
エッチングガス圧:10Pa
ガス流量:20sccm
【0110】
エッチング後、スリーブを洗浄してレジストを除去(剥離)した。レジスト剥離にはウエット工程を採用した。レジスト剥離液には、現像液同様、酸やアルカリ等種々適用出来るが、ここでは水酸化カリウム(KOH)を用いた。具体的には、スリーブを濃度1MKOH溶液に5分程度浸漬した。これにより、SiO層を残した状態でレジストがきれいに剥離した。
【0111】
レジスト剥離後、スリーブを洗浄して、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ100nmで幅100nm程度の微細な溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。これは、熱反応型レジストが、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持っていたためであると考えられる。
【0112】
(実施例3)
図17に示すように、φ30mmとφ60mmに加工された金属のスリーブ41を準備し、実施例1と同様の円筒形状のスリーブを構成した。
【0113】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ200nmでエッチング層を形成した。ここでは、エッチング層44としてSiO膜を用いた。この場合、SiOのターゲットをスパッタリング装置に装着し、Arガス雰囲気でスパッタリングを行った。
【0114】
次いで、図21に示す装置を用いて、このスリーブのエッチング層44上に厚さ0.5μmで熱反応型有機レジスト層43を形成した。図14に示す装置は、スリーブ52を把持するチャック53をモーター54により昇降させることによりレジストボトル51に収容されたレジスト液に浸漬すると共に引き上げたのちにスリーブを回転させる装置である。この装置により、スリーブに熱反応型有機レジストを塗布した。この装置を使うことにより、スリーブ表面に均一にレジストが塗布できた。なお、熱反応型有機レジストとしては、粘度700cpsのノボラック系のレジストを使用した。これにより、図20に示すように、スリーブ41上にエッチング層44が形成され、エッチング層44上にレジスト層43が形成された。
【0115】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置を用いて露光した。なお、露光条件は、露光用レーザーパワーを4mWにし、送りピッチを500nm/回転に変更した以外は実施例1と同じとした。露光後、TMAH溶液にてレジストを現像し、現像時間は1分とした。
【0116】
現像後、図14に示すエッチング装置を用いてエッチング層44をエッチングした。なお、スリーブが均一にエッチングされるようにエッチング中は、スリーブを回転させながら行った。エッチングガスにはCFガスを用いた。また、エッチング条件は実施例2と同じとした。
【0117】
エッチング後、スリーブを洗浄してレジストを除去(剥離)した。レジスト剥離にはウエット工程を採用した。レジスト剥離液には、現像液同様、酸やアルカリ等種々適用出来るが、ここでは1Mの硝酸を用いた。
【0118】
レジスト剥離後、スリーブを洗浄して、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ200nmで幅300nm、ピッチ500nmの微細な溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。これは、熱反応型レジストが、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持っていたためであると考えられる。
【0119】
(実施例4)
φ30mmとφ78mmに加工された金属の丸棒41を準備し、その外側に、長さ200mmで内径φ78mm、外径φ80mmのアルミパイプ45を取り付け図22に示すような円筒形状のスリーブモールドを構成した。
【0120】
上記のように準備されたスリーブを、図8に示すようなスリーブがスパッタ出来るスパッタ装置にて、まずエッチング層44を形成した。エッチング層には、SiOのターゲットを用いArガスでスパッタした。エッチング層の膜厚は300nmにした。続いて、熱反応型無機レジスト層43を形成した。ここでは熱反応型無機レジストとして、SnOxを使用した。Snのターゲットをスパッタ機に装着し、ArとOの混合ガス雰囲気で行い、ArとOの混合比でSnの酸化量を変えた。Snの酸化量は、0≦X<2の値を取ることが出来る。Xの値は蛍光X線によるSnとSnOのピーク比から求めx=0.5に調整した。なお、いずれの層を形成する際にも、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタ中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。
【0121】
熱反応型無機レジスト層43の厚さ(d)は40nmの厚さでスリーブ上に形成した。熱反応型無機レジストが形成された後のスリーブの断面図を図23に示す。すなわち、モールド41上のアルミパイプ45上にエッチング層45及び無機レジスト層43が設けられた構成である。なおレジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的とする厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。
【0122】
このように準備されたスリーブを図16に示すような露光機にて露光した。本露光装置は、波長の異なる加工用レーザーとフォーカス用レーザーの2種搭載している。露光装置の光学系も合わせて図16に示す。露光条件は以下の通りである。
加工用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
加工レーザーパワー:5mW〜8mW
フォーカス用半導体レーザー波長:660nm
フォーカスレーザーパワー:0.2mW
回転速度:700rpm
送りピッチ:400nm/回転
スリーブ露光幅:200mm
【0123】
加工中にレーザーの強度を変調させることで、さまざまな形状・パターンが出来るが、実験では加工精度を確かめるために、パターンとして連続の溝形状を使用した。形成する形状は目的とする用途によっては孤立した円形、楕円形状等でも構わず、本発明は加工形状によって何ら制限を受けるものでは無い。またスリーブ加工幅は200mmに設定したが、加工幅を長くすれば加工時間が長くなるだけで、本露光装置では実験で用いた加工幅より長い幅でも全く問題なく加工できる。
【0124】
続いて、上記露光機によって露光されたレジストの現像を行った。現像にはウエット工程による現像を適用した。現像液にはテトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用いた。20℃、pH=13のTMAH溶液のバスを準備し、スリーブを浸漬することで現像を行った。現像時間は、Snの酸化量によって異なるが、30秒〜5分程度実施した。
【0125】
このように現像されたスリーブを洗浄し、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ40nmで幅100nm程度の溝がスリーブ上に形成されていた。
【0126】
このスリーブを現像後、図12に示す様にドライエッチング装置にてエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチング装置は、エッチング中はスリーブを回転させない方法でエッチングを行った。エッチングガスにはO+CHF(1:10)ガスを用いた。エッチング条件は以下の通りである。
エッチングパワー:150W
エッチングガス圧:10Pa
ガス流量:20sccm
高周波周波数:13.56MHz
【0127】
エッチング後、スリーブを洗浄しレジストを除去(剥離)する工程を行った。レジスト剥離にはウエット工程を採用した。レジスト剥離液には水酸化カリウム(KOH)を用いた。濃度1MのKOH溶液に、5分程度浸漬すると、SiO層を残した状態でレジストはきれいに剥離した。
【0128】
このようにエッチングされたスリーブを洗浄し、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ300nmで幅100nm程度の溝がスリーブ表面の接線に対して垂直方向に形成された。
【0129】
このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。
【0130】
(実施例5)
φ30mmとφ78mmに加工された金属の丸棒を準備し、その外側に、長さ200mmで内径φ78mm、外径φ80mmのアルミパイプを取り付け実施例4と同様な円筒形状のスリーブモールドを構成した。
【0131】
上記のように準備されたスリーブを、実施例4同様にスパッタ装置にて、エッチング層を形成し、続いて熱反応型レジストを形成した。スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタを行った。エッチング層にはSiOを用い膜厚は100nmにした。熱反応レジスト層には実施例4で用いたSnOx(x=0.5)を厚さ(d)=40nmで形成した。なおレジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的とする厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。
【0132】
上記のように準備されたスリーブを実施例4と同じ露光条件で露光した。露光後、TMAH溶液にてレジストを現像した。現像条件は実施例4と同じ条件で行った。現像後、図14に示す様なドライエッチング装置にてエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチング装置は、スリーブが均一にエッチング出来るように、エッチング中はスリーブを回転させながら行った。エッチングガスにはO+CHF(1:10)ガスを用いた。エッチング条件は以下の通りである。
エッチングパワー:150W
エッチングガス圧:10Pa
ガス流量:20sccm
高周波周波数:13.56MHz
【0133】
エッチング後、スリーブを洗浄しレジストを除去(剥離)する工程を行った。レジスト剥離にはウエット工程を採用した。レジスト剥離液には現像液同様、酸やアルカリ等種々適用出来るが、ここでは水酸化カリウム(KOH)を用いた。濃度1MのKOH溶液に、5分程度浸漬すると、SiO層を残した状態でレジストはきれいに剥離した。
【0134】
レジスト剥離後、スリーブを洗浄しマスタースリーブが完成した。このように現像されたスリーブを洗浄し、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ100nmで幅100nm程度の溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。
【0135】
(実施例6)
実施例4と同様のφ30mmとφ78mmに加工された金属のスリーブを準備し、円筒形状のスリーブを構成した。
【0136】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、実施例5と同様に、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ100nmでエッチング層を形成し、次いで、厚さ(d)=40nmで熱反応型無機レジスト層を形成した。これにより、スリーブ上にエッチング層が形成され、エッチング層上にレジスト層が形成された。なお、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的とする厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。ここでは、エッチング層としてSiO膜を用いた。この場合、SiOのターゲットをスパッタリング装置に装着し、Arガス雰囲気でスパッタリングを行った。また、熱反応型無機レジストとしては、SnOx(x=0.2)を使用した。
【0137】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置を用いて露光した。なお、露光条件は、露光用レーザーパワーのみ3mWに変更した以外は実施例4と同じとした。露光後、KOH溶液にてレジストを現像した。
【0138】
現像後、図14に示すエッチング装置を用いてエッチング層44をエッチングした。なお、スリーブが均一にエッチングされるようにエッチング中は、スリーブを回転させながら行った。エッチングガスにはCHFガスを用いた。また、エッチング条件は以下の通りである。
エッチングパワー:150W
エッチングガス圧:10Pa
ガス流量:20sccm
【0139】
エッチング後、スリーブを洗浄してレジストを除去(剥離)した。レジスト剥離にはウエット工程を採用した。レジスト剥離液には、現像液同様、酸やアルカリ等種々適用出来るが、ここではTMAHを用いた。具体的には、スリーブを濃度2.38%のTMAH溶液に5分程度浸漬した。これにより、SiO層を残した状態でレジストがきれいに剥離した。
【0140】
レジスト剥離後、スリーブを洗浄して、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ100nmで幅100nm程度の微細な溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。これは、熱反応型レジストが、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持っていたためであると考えられる。
【0141】
(実施例7)
実施例4と同様のφ30mmとφ78mmに加工された金属のスリーブを準備し、円筒形状のスリーブを構成した。
【0142】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、実施例5と同様に、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ350nmでエッチング層を形成し、次いで、厚さ(d)=40nmで熱反応型無機レジスト層を形成した。これにより、スリーブ上にエッチング層が形成され、エッチング層上にレジスト層が形成された。なお、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は目的とする厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。ここでは、エッチング層としてSiO膜を用いた。この場合、SiOのターゲットをスパッタリング装置に装着し、Arガス雰囲気でスパッタリングを行った。また、熱反応型無機レジストとしては、Cr1−x、Nb1−x、Ta1−x、Ti1−xを使用した。各材料の成膜条件を表3に示す。
【表3】

【0143】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置を用いて露光した。なお、露光条件は、露光用レーザーパワーをレジスト毎に最適になるように変更した以外は実施例4と同じとした。露光後、各レジストを表4に示す条件で現像を行った。現像後、図14に示すエッチング装置を用いてエッチング層44をエッチングした。なお、スリーブが均一にエッチングされるようにエッチング中は、スリーブを回転させながら行った。エッチングガスにはCF4ガスを用いた。また、エッチング条件は以下の通りである。
エッチングパワー:150W
エッチングガス圧:10Pa
ガス流量:20sccm
【表4】

【0144】
レジスト剥離後、スリーブを洗浄して、SEM(走査型電子顕微鏡)にてスリーブモールドの表面形状を観察したところ、深さ100nmで幅100nm程度の微細な溝がスリーブ上に形成されていた。このスリーブをモールドとして用いて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させたところ、ほぼスリーブモールドと同じ形状がフィルム上に反転して転写された。これは、熱反応型レジストが、レーザーのスポット径での光強度分布において所定の光強度以上で反応する特性を持っていたためであると考えられる。
【0145】
(比較例1)
φ30mmとφ78mmに加工された金属の丸棒を準備し、その外側に、長さ200mmで内径φ78mm、外径φ80mmのアルミパイプを取り付け実施例4と同様な円筒形状のスリーブモールドを構成した。
【0146】
上記のように準備されたスリーブを、実施例4同様のスパッタ装置にて、まずエッチング層44を形成した。エッチング層には、実施例5と同様SiOを用いた。SiOのターゲットを用いArガスでスパッタした。エッチング層の膜厚は1μmにした。
【0147】
続いて図21に示すような装置を使って、有機レジスト43を塗布した。本装置は、スリーブをレジストの入った容器に浸漬し、引き上げたのち回転させることによってレジストを塗布する装置である。本装置を使うことでスリーブ表面に均一にレジストが塗布できた。有機レジストとして光反応型のレジストPMER P AR900(東京応化工業製)を使用した。塗布厚み(d)は5μmとした。上記に方法によって作製されたスリーブの断面図を図24に示す。すなわち、モールド41上のアルミパイプ45上にエッチング層45及び有機レジスト層43が設けられた構成である。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を段差計にて測定したところ、変動幅は厚み(d)=5μmに対して±1μm以上であった。
【0148】
このようにして準備されたスリーブを図25に示すような露光機にて露光した。本露光機は、スピンドルモーター65にスリーブ64を装着し回転できる機能を持ち、XYステージ66で前後左右に動かせる機能を持つ。スリーブに露光するために、青色レーザー光源61から出射された光を、ピンホールスリット62を通してレンズ63によってスリーブ表面に集光する。但し本露光装置には、オートフォーカス機能を持たないため、回転軸ブレやスリーブの加工誤差によって、スポット径は回転中に変動する。上記装置を用い、露光は以下の条件で行った。
加工用半導体レーザー波長:473nm
レンズ開口数:0.25
加工レーザーパワー:15mW
回転速度:30rpm
送りピッチ:50μm/回転
加工幅:22μm
【0149】
露光後現像を行った。現像液としてP−7Gを使用した。現像時間は2分とした。現像後、図14に示す様にドライエッチング装置にてエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチング装置は、スリーブが均一にエッチング出来るように、エッチング中は回転させながら行った。エッチングガスにはCFガスを用いた。エッチング条件は実施例5と同様とした。
【0150】
エッチング後、続けて同じエッチング装置で対向電極に高周波を印加する方法を用いてOガスによるアッシングでレジストを除去(剥離)する工程を行った。レジスト剥離後、スリーブを洗浄しスリーブモールドが完成した。このスリーブの表面をSEMにて観察したところ、深さ1μmで幅22μm、ピッチ50μmの溝がスリーブ上に形成されていた。この方法を用いて、種々露光条件を変えて検討したが、幅1μm以下のサブミクロンサイズの構造をスリーブ上に形成することは出来なかった。
【0151】
(比較例2)
実施例4と同様のφ30mmとφ78mmに加工された金属のスリーブを準備し、円筒形状のスリーブを構成した。
【0152】
次いで、図8に示すようなスパッタリング装置を用いて、実施例5と同様に、上記のように準備されたスリーブ上に厚さ350nmでエッチング層を形成し、次いで、厚さ(d)=40nmで熱反応型無機レジスト層を形成した。これにより、スリーブ上にエッチング層が形成され、エッチング層上にレジスト層が形成された。なお、スリーブに均一に膜を形成するためにスパッタリング中は、スリーブを回転させながらスパッタリングを行った。レジスト形成後のスリーブ1周内のレジスト膜厚変動を蛍光X線にて測定したところ、変動幅は厚さ(d)=40nmに対して±3nm以下であった。ここでは、エッチング層としてSiO膜を用いた。この場合、SiOのターゲットをスパッタリング装置に装着し、Arガス雰囲気でスパッタリングを行った。また、熱反応型無機レジストとしては、主要フッ化物の沸点が200℃以下である元素Wを選択し、熱反応型レジストとしてWOxを使用した。成膜条件を表3に示す。
【0153】
このように準備されたスリーブを図16に示す露光装置を用いて露光した。なお、露光条件は、露光用レーザーパワーをWOxレジストに最適になるように変更した以外は実施例4と同じとした。露光後、WOxレジストを表4に示す条件で現像を行った。現像後、図14に示すエッチング装置を用いてエッチング層44をエッチングした。エッチングは実勢例7と同じ条件で行った。エッチング後、SEM(走査型電子顕微鏡)にてロール表面の形状と断面形状を観察したところ、レジストが消失しており、明瞭な凹凸パターンが観察されなかった。これは、熱反応型レジストが、ドライエッチングによってフッ化物として揮発したためマスクの効果を果たさなかったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、大型でかつ微細形状が形成できるナノプリントや光学フィルム用のシームレスモールドの作製に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽中に配置されたスリーブ形状のモールドと、前記真空槽中の前記モールドの表面に対向する位置に配置された対向電極と、を具備し、前記モールドに高周波を印加させ、前記対向電極を接地して前記モールドをエッチング処理するエッチング装置であって、前記エッチング処理の際、前記モールドを回転させないことを特徴とするモールドのエッチング装置。
【請求項2】
前記モールドは曲面を持ち、その表面の接線に対して垂直な方向にエッチングされることを特徴とする請求項1に記載のモールドのエッチング装置。
【請求項3】
前記対向電極の形状が、円筒形状、平行平板形状、円弧形状から選択されるいずれかの形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモールドのエッチング装置。
【請求項4】
スリーブ形状のモールドと、前記モールドの表面に対向する対向電極と、を真空槽中に配置する工程と、前記モールドに高周波を印加させ、前記対向電極を接地して前記モールドをエッチング処理する工程と、を具備し、前記エッチング処理の際、前記モールドを回転させないことを特徴とするモールドのエッチング方法。
【請求項5】
前記モールドは曲面を持ち、その表面の接線に対して垂直な方向にエッチングされることを特徴とする請求項4に記載のモールドのエッチング方法。
【請求項6】
前記対向電極の形状が、円筒形状、平行平板形状、円弧形状から選択されるいずれかの形状であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のモールドのエッチング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2012−158178(P2012−158178A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58912(P2012−58912)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2009−550577(P2009−550577)の分割
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】