説明

ラジエータプローブ

【課題】熱交換器の内部に特別な加工を施すことなく熱交換器の内部を通過する気流の情報を取得できるラジエータプローブを提供する。
【解決手段】ラジエータプローブ2は、いずれも両端が開口する中空細管から形成され全圧導入部4と湾曲部7と全圧伝達部8と全圧接続部11とを有する全圧管3と、全圧導入部4とは反対側に延びる静圧導入部14と静圧接続部17とを有する静圧管13とから構成され、静圧導入部14は、全圧導入部4と全圧伝達部8との間に向かって延び、全圧接続部11と静圧接続部17とが接合されている。全圧管3と静圧管13とによって、ラジエータ32の放熱フィン36を表裏から挟持することによって、ラジエータプローブ2がラジエータ32の内部に位置した状態で放熱フィン36に着脱可能に保持される。全圧接続部11と静圧接続部17とに導出されたラジエータ32内部の気流の全圧と静圧とから気流情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱交換器の気流の情報を取得するラジエータプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平09−209755号公報に記載の冷却装置では、エンジンルーム内に設置された熱交換器の前面または後面にピトー管などの風速センサを設置して、熱交換器を通過する冷却風の風速を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−209755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記装置では風速センサが熱交換器の前面または後面に設置されているので、熱交換器に流入し、又は熱交換器から流出する冷却風の風速の測定が可能であるが、熱交換器の内部を通過する気流の情報を取得することができない。また、これらのセンサを使って熱交換器の内部を通過する冷却風の風速を測定しようとすると、熱交換器の内部にセンサの設置スペースを確保するために、熱交換器内部の放熱フィンの部分的な取外し等の加工が必要となる場合が多く、加工を施すことによって車両の実走行状態における熱交換器を通過する気流の情報を取得することが困難となるおそれがある。
【0005】
そこで本発明では、熱交換器の内部に特別な加工を施すことなく熱交換器の内部を通過する気流の情報を取得できるラジエータプローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のラジエータプローブは、熱交換器を通過する気流の情報を取得するために熱交換器の放熱フィンに着脱可能に取り付けられるラジエータプローブであって、第1圧力管と第2圧力管とを備える。
【0007】
第1圧力管は、開口する両端が第1圧力入力開口端及び第1圧力出力開口端となる第1の中空細管によって曲折形成され、一側の第1圧力入力開口端から他側の第1圧力導入端まで直線状に延びる第1所定長の第1圧力導入部と、第1所定長よりも長い第2所定長であり、一側の第1圧力伝達端から他側の第1圧力伝達端まで第1圧力導入部と並行して直線状に延びる第1圧力伝達部と、第1圧力導入端と他側の第1圧力伝達端とを連続する円弧状の湾曲部と、一側の第1圧力伝達端から第1圧力出力開口端まで延びる第1圧力接続部とを一体的に有する。
【0008】
第2圧力管は、開口する両端が第2圧力入力開口端及び第2圧力出力開口端となる第2の中空細管によって形成され、一側の第1圧力伝達端の近傍の第2圧力導入端から他側の第2圧力入力開口端まで第1圧力伝達部と並行して直線状に延びる第2圧力導入部と、第2圧力導入端から第2圧力出力開口端まで延びる第2圧力接続部とを一体的に有する。
【0009】
第2圧力導入部は、第1圧力導入部と第1圧力伝達部とを含む平面に近接し、又は平面に含まれる。第1圧力接続部の外周面の少なくとも一部は、第2圧力接続部の外周面に接合される。第1圧力管と第2圧力管とは、湾曲部と第2圧力入力開口端との間に放熱フィンの上流側又は下流側の端縁が進入するように第1圧力導入部及び第1圧力伝達部と第2圧力導入部とを熱交換器の内部に上流側又は下流側から挿入し、第1圧力導入部及び第1圧力伝達部と第2圧力導入部とにより放熱フィンを表裏から挟持することによって、第1圧力入力開口端と第2圧力入力開口端とが熱交換器の内部に位置した状態で放熱フィンに保持される。
【0010】
上記構成では、ラジエータプローブによって熱交換器の内部を通過する気流の情報を取得する場合、ラジエータプローブを熱交換器の気流情報を取得したい箇所の放熱フィンに、例えば熱交換器の上流側から取り付ける。すなわち、ラジエータプローブの第1圧力管の湾曲部を放熱フィンの上流側の端縁から放熱フィンの表面又は裏面に沿って下流側に挿入し湾曲部に連続する第1圧力導入部及び第1圧力伝達部を挿入する。第2圧力導入部の第2圧力入力開口端が放熱フィンの端縁に達した時、第2圧力入力開口端を、第1圧力管を挿入している放熱フィンの表面又は裏面と反対側の裏面又は表面に沿って挿入し、第1圧力管及び第2圧力管を放熱フィンの端縁が第1圧力接続部及び第2圧力接続部の近傍に達するまで放熱フィンの下流方向に向けて挿入する。これによって、第1圧力導入部及び第1圧力伝達部と第2圧力導入部とが放熱フィンを表裏から挟持し、第1圧力管の第1圧力入力開口端が熱交換器の上流を向き、第2圧力管の第2圧力入力開口端が下流を向いた状態で熱交換器の内部の放熱フィンに保持される。この状態で熱交換器の上流から下流に気流が流れると、第1圧力入力開口端には、気流の動圧と静圧とを含む気流の全圧が加わる。また、第2圧力入力開口端には、気流の静圧が加わる。この全圧は、第1圧力導入部と、湾曲部と第1圧力伝達部とを経由して放熱フィンの外側に位置する第1圧力接続部に伝達される。また、静圧は、第2圧力導入部を経由して放熱フィンの外側に位置する第2圧力接続部に伝達される。この第1圧力接続部及び第2圧力接続部に伝達された熱交換器内部の気流の全圧と静圧とを用いて気流の流速に対応する動圧を検出することにより熱交換器内部の気流の流速を検出することができる。
【0011】
なお、ラジエータプローブを熱交換器の下流側から取り付ける場合は、ラジエータプローブの第1圧力管の湾曲部を放熱フィンの下流側の端縁から放熱フィンの表面又は裏面に沿って上流側に挿入し湾曲部に連続する第1圧力導入部及び第1圧力伝達部を挿入する。第2圧力導入部の第2圧力入力開口端が放熱フィンの端縁に達した時、第2圧力入力開口端を、第1圧力管を挿入している放熱フィンの表面又は裏面と反対側の裏面又は表面に沿って挿入し、第1圧力管及び第2圧力管を放熱フィンの端縁が第1圧力接続部及び第2圧力接続部の近傍に達するまで放熱フィンの上流方向に向けて挿入する。これによって、第1圧力導入部及び第1圧力伝達部と第2圧力導入部とが放熱フィンを表裏から挟持し、第1圧力管の第1圧力入力開口端が熱交換器の下流を向き、第2圧力管の第2圧力入力開口端が上流を向いた状態で熱交換器の内部の放熱フィンに保持される。この状態で熱交換器の上流から下流に気流が流れると、第2圧力入力開口端には、気流の動圧と静圧とを含む気流の全圧が加わり、第1圧力入力開口端には、気流の静圧が加わる。この全圧は、第2圧力接続部に伝達され、静圧は、第1圧力接続部に伝達される。この第2圧力接続部及び第1圧力接続部に伝達された熱交換器内部の気流の全圧と静圧とを用いて気流の流速に対応する動圧を検出することにより熱交換器内部の気流の流速を検出することができる。
【0012】
このように、上記構成のラジエータプローブは、熱交換器の内部に特別の加工を施すことなく熱交換器の放熱フィンに設置が可能である。また、ラジエータプローブを構成する第1圧力管及び第2圧力管は中空細管で形成されているので、ラジエータプローブの設置が気流の通過の妨げになり難く、車両の実走行状態においても熱交換器の内部を通過する気流の全圧、静圧及び流速などの気流情報の取得が可能となる。また、ラジエータプローブは第1圧力管と第2圧力管とがクリップ状に形成されており、放熱フィンに容易に着脱できるので、気流情報取得の準備時間が短縮され、気流情報の取得箇所の変更などにも容易に対応が可能である。
【0013】
また、熱交換器の上流側又は下流側のいずれの側からもラジエータプローブの取り付けが可能であるので、熱交換器の前方又は後方のスペースに合わせて好適な取り付け方向を選択することができる。
【0014】
また、第2圧力導入部は、第1圧力導入部と第1圧力伝達部との間に向かって第2圧力導入端から延びてもよく、第1圧力接続部の外周面と第2圧力接続部の外周面とは、一側の第1圧力伝達端及び第2圧力導入端の近傍で接合されてもよい。
【0015】
上記構成では、放熱フィンは、表面又は裏面を支持している第1圧力導入部と第1圧力伝達部との間に向かって延びる第2圧力導入部によって裏面又は表面を支持されるので、第2圧力導入部が第1圧力導入部あるいは第1圧力伝達部のいずれかの側に偏って位置している場合に比べて安定して挟持される。また、第1圧力接続部の外周面と第2圧力接続部の外周面とが一側の第1圧力伝達端及び第2圧力導入端の近傍で接合されているので、この近傍よりも離間して接合されている場合に比べて第1圧力導入部及び第1圧力伝達部と第2圧力導入部とが放熱フィンを挟持する力が強くなる。従って、ラジエータプローブの設置位置が安定し、気流情報を取得中の熱交換器の振動や気流の流速変化などの影響を受け難く、取得する気流情報のバラツキが減少して取得情報が安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換器の内部に特別な加工を施すことなく熱交換器の内部を通過する気流の情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係わるラジエータプローブの外観図である。
【図2】車両のエンジンの冷却システムを示す模式図である。
【図3】ラジエータプローブの放熱フィンへの装着状態を示す模式図である。
【図4】ラジエータプローブの校正試験装置の模式図である。
【図5】全圧管の試験結果を示す特性図である。
【図6】静圧管の試験結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明における前後方向は、車両の前後方向を意味し、左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0019】
図2は、車両1のエンジン30の冷却システムを示す模式図である。エンジン30内を循環する冷却液は、エンジン30内のウオータポンプ(図示省略)によってアッパラジエータホース33を経由してラジエータ32に送られ、ラジエータ入口タンク(図示省略)から上下方向に複数の流路に分岐しラジエータ32の内部を横断するラジエータチューブ35を通ってラジエータ出口タンク(図示省略)に集められロアラジエータホース34を経由してエンジン30に戻る。図3に示すように、ラジエータ32を横断する複数のラジエータチューブ35の間には略V字状の山部と谷部とが連続して左右方向に延び山部と谷部とが上下のラジエータチューブ35に接合される放熱フィン36が設けられている。エンジン30とラジエータ32との間には冷却ファン31が設けられている。冷却ファン31が回転すると車両1のフロントグリル37等から外気が冷却風として図2に示す矢印の方向に導風される。導風された冷却風はラジエータ32を通過することにより、ラジエータチューブ35の中を流れる冷却液との間で熱交換が行われ冷却液が冷却される。そして、冷却液をエンジン30との間で循環させることでエンジン30が冷却される。放熱フィン36は、ラジエータチューブ35の実効的な表面積を増大させ熱交換の効率を向上させている。
【0020】
本実施形態に係わるラジエータプローブ2は、全圧管(第1圧力管)3及び静圧管(第2圧力管)13を備え、ラジエータ32の放熱フィン36に着脱可能に取り付けられて、全圧管3によって気流の全圧(Pa)を検出し、静圧管13によって気流の静圧(Pa)を検出して、ラジエータ32を通過する気流の情報を取得する。
【0021】
図1に示すように、全圧管3は、開口する両端が全圧入力開口端(第1圧力入力開口端)5及び全圧出力開口端(第1圧力出力開口端)12となる中空細管(第1の中空細管)によって曲折形成されている。中空細管は、例えば管径1mm程度のステンレス管が使用される。全圧管3は、全圧導入部(第1圧力導入部)4と、湾曲部7と、全圧伝達部(第1圧力伝達部)8及び全圧接続部(第1圧力接続部)11を一体的に有している。全圧導入部4は、一側の全圧導入端(第1圧力導入端)9である全圧入力開口端5から他側の全圧導入端6まで直線状に延びる第1所定長を有し、他側の全圧導入端6において湾曲部7に連続する。湾曲部7は、他側の全圧導入端6と、後述の他側の全圧伝達端(第1圧力伝達端)10とを連続する円弧状である。全圧伝達部8は、湾曲部7に連続する他側の全圧伝達端10から全圧導入部4と並行して直線状に延び一側の全圧伝達端9に達する。全圧伝達部8は第1所定長よりも長い第2所定長を有する。全圧接続部(第1圧力接続部)11は、一側の全圧伝達端9から略L字状に曲折して全圧出力開口端12まで延びている。
【0022】
静圧管13は、開口する両端が静圧入力開口端(第2圧力入力開口端)15及び静圧出力開口端(第2圧力出力開口端)18となる中空細管(第2の中空細管)によって曲折形成されている。中空細管は、全圧管3と同様の例えば管径1mm程度のステンレス管が使用される。静圧管13は、静圧導入部(第2圧力導入部)14と静圧接続部(第2圧力接続部)17とを一体的に有している。静圧導入部14は、全圧導入部4と全圧伝達部8との略中間であって、全圧導入部4と全圧伝達部8とを含む平面に近接する位置に配置される。静圧導入部14は、静圧入力開口端15から全圧伝達部8と並行し、全圧導入部4と反対方向に直線状に延びる第3所定長を有しており、一側の全圧伝達端9の近傍で静圧接続部17に連続する。静圧接続部17は、一側の静圧導入端(第2圧力導入端)16から略L字状に曲折し、全圧接続部11に沿って静圧出力開口端18まで延びる。本実施形態では湾曲部7の湾曲する凸部の先端から全圧伝達部8の一側の全圧伝達端9までの長さは約25mmであり、ラジエータ2の放熱フィン36の前後方向の長さよりも短く設定されている。また、静圧導入部14の長さである第3所定長は全圧伝達部8の長さである第2所定長よりも短く設定されている。
【0023】
全圧管3の全圧接続部11の外周面と静圧管13の静圧接続部17の外周面とは、一側の全圧伝達端9の近傍でスポット溶接等によって接合されている。すなわち、ラジエータプローブ2は、図1に示すように、全圧接続部11と静圧接続部17とが接合されて、全体として全圧管3と静圧管13とがクリップ形状に形成されている。また、全圧接続部11の全圧出力開口端12及び静圧接続部17の静圧出力開口端18にはそれぞれ全圧導圧配管19及び静圧導圧配管20の一端が接続され、全圧導圧配管19及び静圧導圧配管20の他端は、全圧及び静圧を計測する圧力計21(図4参照)に接続されている。
【0024】
本実施形態に係わるラジエータプローブ2は、気流の全圧と静圧とから気流の流速を検出するピトー管タイプの気流の流速計である。すなわち、全圧管3の全圧導入部4を気流の上流に向けて設置すると、全圧管3の全圧入力開口端5には、気流の動圧(Pa)に静圧が重畳した全圧が加わる。また、全圧導入部4を気流の上流に向けて設置すると、静圧導入部14は全圧導入部4と反対方向に延びているので、静圧導入部14の先端の静圧入力開口端15には、気流の静圧が加わる。気流の全圧は、全圧管3の全圧導入部4、湾曲部7、全圧伝達部8を経由して全圧接続部11に伝達され、また気流の静圧は、静圧管13の静圧導入部14を経由して静圧接続部17に伝達されてそれぞれラジエータ32の外部に導出される。この全圧及び静圧を全圧導圧配管19及び静圧導圧配管20を経由して圧力計21で計測することによってピトー管流速計の原理に基づいて、気流の流速(m/s)が検出される。
【0025】
なお、本実施形態のラジエータプローブ2は、全圧管3は、従来のピトー管流速計と同様に気流の上流方向に開口して気流の全圧を検出するが、静圧の検出については、従来のピトー管流速計では気流の静圧を検出する静圧管が気流の方向と略直交する方向に開口して配置されるのに対し、本実施形態のラジエータプローブ2では静圧管13が気流と並行して気流の下流方向に開口して配置されており、検出方法が異なる。このため、ラジエータプローブ2の全圧及び静圧と気流のとの関係(流速特性)が、従来のピトー管流速計と異なるが、例えば図4に示すような既知の風量を出力できる風洞装置22等を使った校正試験装置23によって、ラジエータプローブ2の流速特性を校正することができる。図5及び図6に校正試験結果を示す。図5に示すように、全圧は気流の速度とともに増加し従来のピトー管流速計と同様の特性を示す。一方、静圧については、図6に示すように、従来のピトー管流速計では鎖線で示すように気流の速度に対して略一定の圧力を示すのに対し、ラジエータプローブ2では実線で示すように気流の速度の増加と共に圧力が減少する傾向を示す。この静圧管13の特性は、図6に示すようにラジエータプローブ2毎の個体差が極めて少なくそれぞれが略同一の特性を示しているので、校正試験装置23等によってラジエータプローブ2の流速特性を校正することができる。
【0026】
本実施形態に係わるラジエータプローブ2を用いて、車両1のラジエータ32の気流情報を取得するには、作業者は、予め流速特性が校正されたラジエータプローブ2を用意し、ラジエータプローブ2の全圧接続部11及び静圧接続部17を全圧導圧配管19及び静圧導圧配管20を経由して圧力計21に接続する。続いて、ラジエータ32の上流側から、全圧管3の湾曲部7を放熱フィン36の一面側に沿わせて全圧導入部4及び全圧伝達部8を挿入するとともに、静圧管13の静圧導入部14を放熱フィン36の他面側に沿わせて挿入し、全圧管3の全圧導入部4及び全圧伝達部8と静圧管13の静圧導入部14とによって放熱フィン36を挟持しながら、放熱フィン36の両端が固定されている上下のラジエータチューブ35と並行するように全圧管3及び静圧管13を挿入し、放熱フィン36の上流側の端縁36aが全圧管3及び静圧管13の全圧接続部11及び静圧接続部17の近傍に到達するまで挿入する。次に、冷却ファン3を回転させて、あるいはさらに車両1を走行させてフロントグリル37等から外気を冷却風(図3に示す矢印)としてラジエータ32に導風し、ラジエータ32を通過する気流の全圧、静圧、流速などの気流情報を取得する。
【0027】
このように、本実施形態では、ラジエータ32の内部に特別な加工を施すことなくラジエータプローブ2をラジエータ32の放熱フィン36に取り付けることが可能である。また、全圧管3及び静圧管13は中空細管で形成されているので、ラジエータ32の内部に設置されたラジエータプローブ2がラジエータ32の内部を通過する気流の妨げになり難く、車両1が走行中のラジエータ32の実運転状態においてもラジエータ32の内部を通過する気流の全圧、静圧及び流速などの気流情報の取得が可能となる。また、ラジエータプローブ2は全圧管3と静圧管13とがクリップ状に形成されており、放熱フィン36に容易に着脱できるので、気流情報の取得の準備時間が短縮され、また気流情報の取得箇所の変更などにも容易に対応することができる。
【0028】
また、放熱フィン36は、表面又は裏面を支持している全圧導入部4と全圧伝達部8との間に向かって延びる静圧導入部14によって裏面又は表面を支持されるので、静圧導入部14の位置が全圧導入部4あるいは全圧伝達部8のいずれかの側に偏っている場合に比べて安定して挟持される。また、全圧接続部11の外周面と静圧接続部17の外周面とが一側の全圧伝達端9及び一側の静圧導入端16の近傍で接合されているので、この近傍よりも離間して接合されている場合に比べて全圧導入部4及び全圧伝達部8と静圧導入部14とが放熱フィン36を挟持する力が強くなる。従って、ラジエータプローブ2の設置位置が安定し、気流情報の取得中の熱交換器の振動や気流の流速変化などの影響を受け難く、取得する気流情報のバラツキが減少して取得情報が安定する。
【0029】
また、ラジエータプローブ2は、放熱フィン36が外部に露出しているラジエータ32の上流側から放熱フィン36に着脱できるので、車両1の実走行状態におけるラジエータ32の内部を通過する気流の情報取得が容易となる。
【0030】
なお、静圧導入部14は、全圧導入部4と全圧伝達部8とを含む平面に近接し、又は平面に含まれていればよく、全圧接続部11の外周面の少なくとも一部が、静圧接続部17の外周面に接合されていればよい。この場合は、全圧導入部4と全圧伝達部8とを含む平面と静圧導入部14との間隙をより拡げることができるので、ラジエータの放熱フィンの板厚が比較的厚い場合であっても、ラジエータプローブ2によって放熱フィンを挟持し、ラジエータプローブ2をラジエータ内部に安定して設置することができる。
【0031】
また、全圧接続部11は、一側の全圧伝達端9から曲折せずに全圧出力開口端12まで延び、静圧接続部17は、一側の静圧導入端16から曲折せずに静圧出力開口端18まで延びてもよい。この場合は、全圧接続部11及び静圧接続部17が気流の方向と並行し、ラジエータ32への気流の流入の妨げになり難い。
【0032】
また、全圧管3の形状は本実施形態に限定されず、例えば湾曲部7が略矩形等であってもよい。また、本実施形態では全圧管3と静圧管13を中空のステンレス細管によって形成したが、例えば合成樹脂の中空細管等によって形成してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、ラジエータプローブ2の長さ方向の全長は約25mmに形成されているが、ラジエータの放熱フィンの前後方向の長さや、ラジエータの前後方向における気流情報の取得位置に応じて本実施形態よりも全長を長く又は短く形成してもよい。
【0034】
また、ラジエータプローブ2のラジエータ32への取り付け方向は、ラジエータ32の上流側からに限定されず、ラジエータ32の下流側から取り付けてもよい。すなわち、ラジエータ32の下流側から、全圧管3の湾曲部7を放熱フィン36の一面側に沿わせて全圧導入部4及び全圧伝達部8を挿入するとともに、静圧管13の静圧導入部14を放熱フィン36の他面側に沿わせて挿入し、全圧管3の全圧導入部4及び全圧伝達部8と静圧管13の静圧導入部14とで放熱フィン36を挟持しながら、放熱フィン36の両端が固定されている上下のラジエータチューブ35と並行するように全圧管3及び静圧管13を挿入し、放熱フィン36の下流側の端縁36bが全圧管3及び静圧管13の全圧接続部11及び静圧接続部17の近傍に到達するまで挿入する。ラジエータプローブ2をラジエータ32の下流側から取り付けた場合は、静圧管13はラジエータ32の上流方向に開口しており、全圧管3は下流方向に開口している。この状態でラジエータ32の上流から下流に気流が流れると、静圧管13は気流の全圧を検出し、全圧管3は気流の静圧を検出するので、検出された全圧及び静圧を用いてラジエータ32を通過する気流の気流情報を取得することができる。このように、ラジエータ32の上流側又は下流側のいずれの側からもラジエータプローブ2の取り付けが可能であるので、ラジエータ32の前方または後方のスペースに合わせて好適な取り付け方向を選択することができる。
【0035】
また、ラジエータ32を通過する気流情報の取得は一個のラジエータプローブ2の使用に限定されず、2個以上のラジエータプローブ2を使用して複数箇所で気流情報を取得してもよい。また、複数箇所の気流情報を取得する場合、ラジエータプローブ2の取り付け方向はラジエータ32の上流側からの取り付け、又は下流側からの取り付けのいずれかに統一する必要はなく、上流側からの取り付け又は下流側からの取り付けを組み合わせてもよい。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、熱交換器の内部を通過する気流情報を取得するラジエータプローブとして車両の熱交換器に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
2 ラジエータプローブ
3 全圧管(第1圧力管)
4 全圧導入部(第1圧力導入部)
5 全圧入力開口端(第1圧力入力開口端)
6 他側の全圧導入端(第1圧力導入端)
7 湾曲部
8 全圧伝達部(第1圧力伝達部)
9 一側の全圧伝達端(一側の第1圧力伝達端)
10 他側の全圧伝達端(他側の第1圧力伝達端)
11 全圧接続部(第1圧力接続部)
12 全圧出力開口端(第1圧力出力開口端)
13 静圧管(第2圧力管)
14 静圧導入部(第2圧力導入部)
15 静圧入力開口端(第2圧力入力開口端)
16 一側の静圧導入端(一側の第2圧力導入端)
17 静圧接続部(第2圧力接続部)
18 静圧出力開口端(第2圧力出力開口端)
32 ラジエータ
36 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器を通過する気流の情報を取得するために前記熱交換器の放熱フィンに着脱可能に取り付けられるラジエータプローブであって、
開口する両端が第1圧力入力開口端及び第1圧力出力開口端となる第1の中空細管によって曲折形成され、一側の前記第1圧力入力開口端から他側の第1圧力導入端まで直線状に延びる第1所定長の第1圧力導入部と、前記第1所定長よりも長い第2所定長であり、一側の第1圧力伝達端から他側の第1圧力伝達端まで前記第1圧力導入部と並行して直線状に延びる第1圧力伝達部と、前記第1圧力導入端と前記他側の第1圧力伝達端とを連続する円弧状の湾曲部と、前記一側の第1圧力伝達端から前記第1圧力出力開口端まで延びる第1圧力接続部と、を一体的に有する第1圧力管と、
開口する両端が第2圧力入力開口端及び第2圧力出力開口端となる第2の中空細管によって形成され、前記一側の第1圧力伝達端の近傍の第2圧力導入端から他側の前記第2圧力入力開口端まで前記第1圧力伝達部と並行して直線状に延びる第2圧力導入部と、前記第2圧力導入端から前記第2圧力出力開口端まで延びる第2圧力接続部と、を一体的に有する第2圧力管と、を備え、
前記第2圧力導入部は、前記第1圧力導入部と前記第1圧力伝達部とを含む平面に近接し、又は前記平面に含まれ、
前記第1圧力接続部の外周面の少なくとも一部は、前記第2圧力接続部の外周面に接合され、
前記第1圧力管と前記第2圧力管とは、前記湾曲部と前記第2圧力入力開口端との間に前記放熱フィンの上流側又は下流側の端縁が進入するように前記第1圧力導入部及び前記第1圧力伝達部と前記第2圧力導入部とを前記熱交換器の内部に上流側又は下流側から挿入し、前記第1圧力導入部及び前記第1圧力伝達部と前記第2圧力導入部とにより前記放熱フィンを表裏から挟持することによって、前記第1圧力入力開口端と前記第2圧力入力開口端とが前記熱交換器の内部に位置した状態で前記放熱フィンに保持される
ことを特徴とするラジエータプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のラジエータプローブであって、
前記第2圧力導入部は、前記第1圧力導入部と前記第1圧力伝達部との間に向かって前記第2圧力導入端から延び、
前記第1圧力接続部の外周面と前記第2圧力接続部の外周面とは、前記一側の第1圧力伝達端及び前記第2圧力導入端の近傍で接合される
ことを特徴とするラジエータプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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