説明

ラック式穀物乾燥装置

【課題】スタッカークレーンの作業性を向上させ、これにより、コンテナの収容個数が増加した新たな乾燥棚の設置が可能となるラック式穀物乾燥装置を提供する。
【解決手段】荷受部2から荷受けした穀粒を所定量ごとに小分けしてコンテナ19に投入する穀物投入部3は、コンテナ19を水平姿勢と傾倒姿勢とに交互に切り換える反転部15と、該反転部15の切り換え操作によりコンテナ19を傾倒姿勢としたときに穀粒を受ける一時貯留タンク16と、該一時貯留タンク16で受けた穀粒を計量する計量器17と、該計量器17の下方と前記反転部15の上方との間に接続され、前記計量器17で計量された穀粒を揚上し、前記反転部15で待機した水平姿勢のコンテナ19内に穀粒を投入する投入用揚穀機18と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック式穀物乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラック式穀物乾燥装置とは、籾を収容した多数のコンテナ(コンテナ底部は網構造)を保管用の棚(英語表記:Ruck、読み方:ラック)に多数収容し、荷口別に個別に乾燥処理を行うことができる穀物乾燥調製貯蔵施設のことである(例えば、非特許文献1参照)。このラック式穀物乾燥装置は、穀物を荷口別に生産者、品種、年産、銘柄、価格など複数に分類してコンテナごと個別に乾燥するので、生産履歴追跡(トレーサビリティ)が容易であり、1990年代から多数の穀物乾燥調製貯蔵施設において採用されている。
【0003】
特許文献1は、ラック式穀物乾燥装置の改良技術であって、コンテナへ穀物を投入する際に計量の待ち時間を削減することができるものである。このラック式穀物乾燥装置は、荷受ホッパ及び粗選機を配設した荷受装置と、該荷受装置から荷受けした穀粒をコンテナ内に投入する穀物投入装置と、穀粒が投入されたコンテナを複数個収容して乾燥処理を行う棚状の乾燥ラック、及び該乾燥ラックに送風路を介して乾燥風を供給する熱風発生装置を備えた乾燥装置と、前記コンテナを制御装置からの指令により前記乾燥装置から搬入・搬出を行うための搬送装置と、前記穀物投入装置の上方に配置され、前記コンテナを反転させることによりコンテナ内の穀粒を前記穀物投入装置に流出させる反転装置と、を備えたラック式乾燥装置であって、前記穀物投入装置には、計量器の下方でコンテナを待機させる投入ステーションを複数配置したことを特徴とするものである。
【0004】
上記構成によれば、計量器にて穀粒をバッチ式で連続的に計量した場合であっても、コンテナを待機させる投入ステーションが複数設けられているから、穀粒の払い出しが滞ることはなく、計量器の遊び時間が生じず、計量能力を十分に発揮することが可能となり、また、穀粒が投入されたコンテナを順次連続的に搬送することができるといった利点がある。
【0005】
しかしながら、上記ラック式穀物乾燥装置にあっては、穀物投入装置と乾燥装置の間、及び乾燥装置と反転装置の間を単一の搬送装置(スタッカークレーン)により自動制御でコンテナ移動を行っているものであるから、荷受作業、乾燥時の反転作業及び乾燥後の搬出作業を計画的に行わなければ、スタッカークレーンの作業量が増大し、作業時間が大幅に遅延する問題がある。
【0006】
例えば、乾燥時の反転作業は、乾燥中の穀粒をコンテナから一旦流出させ、コンテナ上層の穀粒とコンテナ下層の穀粒とを入れ替え、ムラ乾燥を防止する作業であり、乾燥装置と反転装置との遣り取りの際、スタッカークレーンの作業量が増大する傾向にある。これを、図7を参照しながら説明する。
【0007】
図7は従来のラック式穀物乾燥装置の構成を示す概略説明図であり、乾燥時の反転作業が以下のように行われる。
<工程1>
スタッカークレーン104を用いて、予め指定された乾燥棚122(図7では2列1段の棚)から籾入りコンテナを搬出し、反転機106まで移動させる(図7の符号(1)の矢印。まず、クレーン部120でコンテナを掬(すく)い上げ、そのまま横移動を行う。穀物投入装置103に至ると、リフト部121を上昇移動させ、籾入りコンテナ119aを穀物投入装置103上部に移動させる。)。次いで、反転機106により籾入りコンテナ119a内の穀粒を流出させ、コンテナを空にする。
<工程2>
スタッカークレーン104を用いて、空コンテナを反転機106から搬出し、穀物投入装置103下部の投入ステーション118まで移動させる(図7の符号(2)の矢印。リフト部121を下降移動させ、空コンテナ119bを穀物投入装置103下部の投入ステーション118に移動させる。)。投入ステーション118で待機させた空コンテナ119bに穀粒を充填する。
<工程3>
スタッカークレーン104を用いて、穀粒を充填した籾入りコンテナを投入ステーション118から搬出し、元の乾燥棚122(図7では2列1段の棚)に移動させる(図7の符号(3)の矢印。クレーン部120でコンテナを掬い上げ、そのまま横移動を行う。乾燥棚122に至ると、元の棚に籾入りコンテナ119cを収容する。)。
【0008】
しかしながら、上記<工程1>から<工程2>は、スタッカークレーンの作業性が悪いために本来の搬送能力が発揮できず、これにより、新たな乾燥棚の増設やコンテナ数の増加が困難にならざるを得ないという欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山下律也、佐々木泰弘 著、「美味技術研究会選書No.2 農産物自動ラック施設研究の実際 これからのトレーサビリティ技術」、美味技術研究会、平成15年6月24日初版発行、P.1-16
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4543578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来のラック式穀物乾燥装置が有する種々の欠点を解決するために為されたもので、スタッカークレーンの作業性を向上させ、これにより、コンテナの収容個数が増加した新たな乾燥棚の設置が可能となるラック式穀物乾燥装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するために、スタッカークレーンの作業性の向上を目的として、上記工程1から工程3の工数に着目し、鋭意研究を続けてきた。
【0013】
その結果、上記<工程2>の「リフト部121により空コンテナ119bを下降させる動作」及び「投入ステーション118において空コンテナ119bに穀粒を充填する際の待機動作」がスタッカークレーンにおける無駄な動作であることを見出して本発明の完成に至った。
【0014】
すなわち、上記課題を解決するため本発明は、荷受ホッパ及び粗選機を配設した荷受部と、該荷受部から荷受けした穀粒を所定量ごとに小分けしてコンテナに投入する穀物投入部と、穀粒が投入されたコンテナを複数個収容して穀粒の乾燥処理を行う棚状の乾燥ラック、及び該乾燥ラックに送風路を介して乾燥風を供給する熱風発生装置を備えた乾燥部と、前記コンテナを制御装置からの指令により前記乾燥部への搬入又は搬出を行うための搬送部と、を備えたラック式乾燥装置であって、
前記穀物投入部は、穀粒を投入する際にコンテナを水平姿勢にする一方、穀粒を流出する際にコンテナを傾倒姿勢にしてコンテナの姿勢を交互に切り換える反転部と、該反転部の切り換え操作によりコンテナを傾倒姿勢としたときに穀粒を受ける一時貯留タンクと、該一時貯留タンクで受けた穀粒を計量する計量器と、該計量器下方と前記反転部上方との間に接続され、前記計量器で計量された穀粒を揚上し、前記反転部で待機した水平姿勢のコンテナ内に投入する投入用揚穀機とを備える、という技術的手段を講じた。
【0015】
これにより、乾燥中の穀粒をコンテナから一旦流出させ、コンテナ上層の穀粒とコンテナ下層の穀粒とを入れ替え、ムラ乾燥を防止する反転作業においては、搬送部の無駄な動作を削減し、作業性を向上させることが可能となった。すなわち、本発明の投入用揚穀機により、計量器で計量された穀粒を揚上し、前記反転部上で待機した水平姿勢のコンテナ内に投入することができるので、従来必要であった計量器下方に設置した投入ステーションを廃止することができ、反転部から投入ステーションに至る搬送部による空コンテナの移動や、投入ステーションにおける穀粒を充填する際の搬送部の待機など無駄な動作を削減することができる。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、前記投入用揚穀機の穀粒の排出側には、切換弁を介して分岐路を設け、該分岐路の各経路に対応させて複数の反転部を設けたことを特徴とする。これにより、切換弁の切り換え動作により穀粒の払い出しが滞ることはなく、穀粒が投入されたコンテナを順次連続的に反転部から搬出することが可能となる。
【0017】
さらに、請求項3記載の発明によれば、前記投入用揚穀機の分岐路下端には、穀粒をコンテナ内に均一に堆積させる分散機を介在させていることを特徴とする。これにより、コンテナ内への穀粒の分散ムラがなくなり、コンテナ内に穀粒を均一に堆積させ、ムラ乾燥の防止に寄与することができる。
【0018】
そして、請求項4記載の発明によれば、前記投入用揚穀機の分岐路下端には、穀粒の分散の際に舞い上がる塵埃を受けるフードを設けるとともに、該フードに塵埃を回収するための集塵パイプを設けたことを特徴とする。これにより、穀粒をコンテナ内に投入する際、周囲に舞い上がる塵埃を吸引し回収することができる。すなわち、反転部での穀粒の払い出しの際は周囲に塵埃を撒き散らすことなく、常に衛生的に処理することができる。
【0019】
さらには、請求項5記載の発明によれば、前記フードの内周面に穀粒の投入の際にコンテナの上方を覆い、穀粒の流出の際に前記フード内に収納可能な防塵フードを設けたことを特徴とする。これにより、穀粒をコンテナ内に投入する際、分散機により穀粒が分散されたとしても周囲に撒き散らすことなく衛生的な処理が可能であり、また、コンテナを傾倒姿勢にする際は防塵フードを収納するとコンテナと干渉するおそれがなくなる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、計量器で計量した穀粒を投入用揚穀機により揚上し、前記反転部上で待機した水平姿勢のコンテナ内に投入することができるので、従来必要であった投入ステーションを廃止することができ、反転部から投入ステーションに至る搬送部による空コンテナの移動や、投入ステーションにおける穀粒を充填する際の搬送部の待機など無駄な動作を削減することができる。そして、搬送部は、乾燥部と反転部との間でのみコンテナの搬入又は搬出が行われ、必要最小限の動作に限定される。すなわち、ラック式穀物乾燥装置の搬送部の搬送能力が向上し、従来と比較して1.3倍にコンテナの収容個数が増加した新たな乾燥棚の設置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のラック式穀物乾燥装置の構成を示す概略説明図である。
【図2】コンテナの断面構造と乾燥棚での乾燥作用を示す概略説明図である。
【図3】穀物投入部の構成を示す概略説明図である。
【図4】反転部の概略説明図である。
【図5】ラック式穀物乾燥装置の基本工程のフローチャートである。
【図6】反転作業における従来装置と本発明装置との作業工程の比較図である。
【図7】従来のラック式穀物乾燥装置の構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は本発明のラック式穀物乾燥装置の構成を示す概略説明図である。
【0023】
本発明のラック式乾燥装置1は、荷受部2、穀物投入部3、搬送部4、乾燥部5、サイロ等を備えた貯蔵部6及び各装置を集中制御する制御部7とから主要部が構成される。
【0024】
荷受部2は複数の荷受ホッパ8,9と、荷受ホッパ8,9から揚穀機10を介して接続される粗選機11と、該粗選機11から穀物投入部3に連絡する揚穀機12とから構成される。符号13,14は荷受ホッパ8,9の排出口に設けられる開閉自在なシャッタである。穀物投入部3は、コンテナ19へ穀粒を投入する際にコンテナ19を水平姿勢で保持する一方、コンテナ19から穀粒を流出させる際にコンテナ19を傾倒姿勢で保持することが可能な反転部15と、反転部15によりコンテナ19を傾倒姿勢で保持したときに流出する穀粒を受ける一時貯留タンク16と、一時貯留タンク16で受けた穀粒を計量する計量器17と、該計量器17の底部に配設した水分計55と、前記計量器17下方と反転部15上方との間に接続して、計量器17で計量された穀粒を揚上し、反転部15で待機した水平姿勢のコンテナ19内に穀粒を投入する投入用揚穀機18とから構成される。
【0025】
図2に示すように、前記コンテナ19の構造は、穀粒を堆積したまま乾燥する平型乾燥機の送風機を取り除いた形態であり、略立方体形状の乾燥枠19aと該乾燥枠19a内に配置した穀粒を堆積させるためのスノコ状の金網19bとからなる。乾燥枠19aの底板と金網19bとの空間は乾燥風を送給するための風洞19cとなし、金網19a上方は開放されている。コンテナ19の寸法は1.5m(幅)×1.5m(奥行)×0.8m(高)である。穀粒の収容能力は1.8mで、籾の見掛け密度560kg/mであるとすると、約1.0トンとなる。
【0026】
搬送部(スタッカークレーン)4は、乾燥部5内を左右方向に移動するクレーン部20と、乾燥ラック25及び待機ラック26の上下方向へ昇降してコンテナ19の搬入・搬出を行うリフト部21とから構成される。乾燥部5は、複数幅で複数段に区分けして形成され、かつ、バーナ22及び送風機23からなる熱風発生装置24と連絡した乾燥ラック25と、熱風発生装置24と連絡しない待機ラック26とから構成される。
【0027】
図2に示すように、前記乾燥ラック25は、複数幅で複数段に区分けして形成された乾燥棚であり、各棚部25aに単一のコンテナ19が収容される。そして、乾燥ラック25には、熱風発生装置24から連絡する主ダクト27が延設されており、各棚部25aには分岐ダクト28により配分される。各分岐ダクト28には、押し棒30aの移動により開閉するダンパー29が内装されており、穀粒の乾燥時にコンテナ19を送風口30に押し付けることでダンパー29が開き、待機させる際にコンテナ19を送風口30から離脱させるとダンパー29が閉じる機構となっている。
【0028】
また、図1に示す前記待機ラック26は、乾燥休止中、乾燥終了後、及び搬入される籾が乾燥処理能力を超える場合に空のコンテナ19に収容して一時待機する役目となるものであり、さらには、乾燥済みの籾を払い出した後の空のコンテナ19を収容する役目となる。
【0029】
乾燥部5の後段にある搬送部4は、上記同様、クレーン部20とリフト部21とにより構成され、主に乾燥済みの籾が収容されたコンテナ19を乾燥部5から取り出すものである。そして、同様の反転部15により籾を計量器31に投入し、該計量器31の底部の切換弁32の切り換えにより籾を貯蔵部6のサイロ33へ貯蔵するか、又は出荷されるかが選択される。
【0030】
次に、穀物投入部3の詳細構造について図3及び図4を参照して説明する。図3は穀物投入部3の概略説明図であり、図4は反転部15の概略説明図である。
【0031】
穀物投入部3は、上から順に、反転部15、一時貯留タンク16、計量器17、タンク部35及び切換弁36がそれぞれ架台34上に組み付けられており、さらに、前記計量器17下方のタンク部35と前記反転部15上方との間には、前記計量器17で計量された穀粒を揚上し、前記反転部15で待機したコンテナ19に穀粒を投入する投入用揚穀機18が設けられている。該投入用揚穀機18下部の投入ホッパ42には、タンク部35下部に接続した排出シュート43の下端が接続され、投入用揚穀機18上部には、穀粒排出用の排出樋38が設けられている。また、穀粒を受ける一時貯留タンク16には、前工程の荷受部2から穀粒を投入するための投入シュート37が設けられている。そして、この一時貯留タンク16は受口が幅広に形成された集合ホッパの形態であり、該一時貯留タンク16の側面には溜まり量を視認することができる窓部16aが設けられている。
【0032】
前記投入用揚穀機18は、複数のバケット(図示せず)をベルト(図示せず)に一連に備えた周知のバケット昇降機を採用することが可能であり、駆動モータ31の動力の伝達によってバケットベルト(図示せず)が回転し、投入ホッパ42に投入された穀粒を上方に揚穀し、排出樋38から排出される構造である。
【0033】
図3において、架台34上部に設置した反転部15は、複数の反転部15A,15Bから構成されている。そして、前記投入用揚穀機18の排出樋38には、切換弁39を介して分岐路40,41を設け、該分岐路40は前記反転部15Aに接続するとともに、分岐路41は前記反転部15Bに接続する構成としている。このように、複数の反転部15A,15Bを設置することで、切換弁39の切り換え動作のみでいずれかの反転部15A,15Bへの穀粒の払い出しが行われるので、穀粒の払い出し待ちが生じることがなく、連続的にコンテナ19への穀粒の投入を行うことが可能となる。
【0034】
図4は反転部15の概略説明図であり、この図を参照して反転部15の構造を説明する。なお、図4(a)は反転部15の概略正面を示し、図4(b)は反転部15の概略側面を示している。
【0035】
反転部15は、反転部架台45と、前記コンテナ19を回動させる回転軸部46と、前記コンテナ19を収容するとともに、前記反転部架台45に対して前記回転軸部46を中心に回動自在となるよう架設したコンテナ受部47と、該コンテナ受部47を回動させて前記コンテナ19から穀粒を流出させる反転駆動部48とから主要部が構成される。そして、前記反転駆動部48を駆動させて反転角φまでコンテナ19を傾倒させると、穀粒の安息角αが崩れて穀粒の流出が開始される。そして、反転角φの角度を急にすれば、コンテナ19内に残留がないよう流出させることもできる。
【0036】
さらに、反転部15の上部には、投入用揚穀機18から連絡する分岐路40が配設されており、該分岐路40下端には、穀粒をコンテナ19内に均一に堆積させるための分散機49を介在させている。該分散機49は、前記分岐路40下端部から回転自在に垂設した回転軸50と、該回転軸50下端に固設した分散板51と、前記回転軸を回転駆動させる駆動モータ52とから構成される。
【0037】
一方、前記分岐路40下端には、穀粒の投入の際に舞い上がる塵埃を受けるフード53が設けられ、該フード53には塵埃を回収するための集塵パイプ54が設けられている。そして、前記フード53内周面には、穀粒の投入の際にコンテナ19の上方を覆い、穀粒の流出の際は反転の干渉とならないよう前記フード53内に収納可能な防塵フード56が設けられている。
【0038】
以下、上記構成のラック式穀物乾燥装置の作用を図面を参照しながら説明する。
【0039】
図5は、ラック式穀物乾燥装置の基本工程のフローチャートであり、この図に従って作用を説明する。生産者が持ち込んだ穀粒(荷口)は、荷受ホッパ8,9から荷受され(図5のS1)、揚穀機10を介して粗選機11に投入される。粗選機11においては、原料穀粒中のわらごみ、籾殻、土砂、麻ひもなどの粗大異物が取り除かれた(図5のS2)後、揚穀機12及びシュート37を介して一時貯留タンク16に投入される。そして、一時貯留タンク16に投入された穀粒は順次次工程の計量器17にて計量が行われる(図5のS3)。このとき、コンテナ19の収容量である1トンごとに小分け計量が行われ、切換弁36の制御により次工程の投入用揚穀機18に供給されることになる。また、前記計量器17で計量される原料穀粒の一部を採取し、これを自主検定工程に送って自主検査する構成とするとよい(図5のS10)。これにより、コンテナ19に投入する直前の穀粒の品位値、食味値などの荷受データを管理することができ、トレーサビリティを容易に行うことができる。
【0040】
次に、投入用揚穀機18の投入ホッパ42に供給された穀粒は、図示しないバケットベルトにより揚穀され、上部の排出樋38に排出される。そして、穀物投入部3上部の複数の反転部15A,15Bに空のコンテナ19が存在していれば、切換弁39の切り換えにより反転部15A又は15Bのいずれかのコンテナ19に穀粒を投入するコンテナ投入作業が行われる(図5のS4)。このとき、同時に分散機49を作動させることで、コンテナ19内での穀粒の分散ムラがなくなり、コンテナ19内に穀粒を均一に堆積させ、ムラ乾燥の防止に寄与することができる。また、同時に集塵パイプ54から吸引を行うことで、穀物投入時の塵埃を回収し、周囲に塵埃を撒き散らすことなく、常に衛生的に処理することができる。そして、一方の反転部15Aでの穀粒の投入作業が終了すると、切換弁39を切り換えれば、他方の反転部15Bでの穀粒の投入作業を継続して行うことができる。
【0041】
一方の反転部15Aでのコンテナ19への穀粒の投入作業が終了した時点で順次乾燥部5への搬入が行われる。すなわち、搬送部(スタッカークレーン)4により反転部15からコンテナ19を搬出するとともに、乾燥部5まで移動し、乾燥ラック25の所定の棚への搬入が行われる。そして、乾燥ラック25へのコンテナ19の搬入作業が終了した時点で熱風発生装置24を作動させた乾燥作業が開始される(図5のS5)。
【0042】
上記乾燥部5での乾燥作業は、コンテナ19への堆積高さが約0.8mであるからムラ乾燥を防ぐためには、コンテナ19の反転作業が行われる(図5のS6)。この作業について従来装置と対比しながら説明する。
【0043】
図6は、本発明装置の反転作業と従来装置の反転作業との作業工程の比較図であり、本発明装置の反転作業は以下のように行われる。
<工程1>
スタッカークレーン4を用いて、予め指定された乾燥ラック25から籾入りコンテナを搬出し、反転部15まで移動させる。クレーン部20でコンテナ19を掬(すく)い上げ、そのまま横移動を行う。穀物投入部3に至ると、リフト部21を上昇移動させ、籾入りコンテナ19を穀物投入部3上部に移動させる。)。次いで、反転部15により籾入りコンテナ19内の穀粒を流出させ、コンテナを空にする。
<工程2>
反転部15にそのまま空コンテナ19を待機させ、一時貯留タンク16及び計量器17を経て投入用揚穀機18によりで揚穀された穀粒を空コンテナ19に充填する。
<工程3>
スタッカークレーン4を用いて、穀粒を充填した籾入りコンテナを反転部15から搬出し、元の乾燥ラックに移動させる。
【0044】
図6に示すように、本発明装置の反転作業を従来装置の反転作業と比較すると、本発明のように投入ステーションを廃止することで、<工程2>の「投入ステーションへ空コンテナを移動する」作業が省略され、これにより、1コンテナあたりの反転作業におけるスタッカークレーン4の作業時間があわせて70秒程度削減されることが分かった。
【0045】
例えば、生籾処理量300トン規模の代表的なラック式乾燥装置の処理能力を事例に挙げると、乾燥ラック数が48棚、待機ラック棚が24棚を保有しており、1日最大荷受生籾が21トン、この一日最大荷受籾を2日間で乾燥することを前提に設計されている。このとき、全ての棚にコンテナが収容されているとすれば、コンテナの総数は82個であり、本発明装置によるスタッカークレーン4の全作業時間は、約70(秒)×82(個)=5740(秒)=95.7(分)=1.6(時間)の削減が可能となることが分かった。
【0046】
すなわち、1日8時間操業を100%稼動と想定すれば、1日1.6時間の余裕が生まれ、これにより、コンテナの総数を1.3倍にまで増加することが可能となる。
【0047】
再び図5を参照して本装置の作用を説明する。上記反転作業においては、同時に穀粒の水分測定を行い(図5のS6)、仕上げ水分に達しているか否かの確認が行われる(図5のS6)。ここで、仕上げ水分に達していない場合は、乾燥残時間を算出して再度乾燥ラック25にて再乾燥処理を行い(図5のS11)、仕上げ水分に達したものは、待機ラック26に搬送される(図5のS12)。
【0048】
待機ラック26においては、コンテナ19内の穀粒の水分ムラが漸次減少されることになる。すなわち、待機ラック26での貯留中に高・低水分差のある籾間に水分移動が起こり、全体的に平均化されるのである。そして、待機ラック26において所定時間待機されたコンテナ19は、穀粒の水分が平均化されたものとなり、サイロ33により貯留されるか(図5のS8)、又は装置から排出されて出荷されることになる(図5のS9)。出荷する際には、コンテナ19ごとに生産者、品種、水分、重量、食味及び外観品位などの各種荷受データが付されて出荷されることになる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の装置によれば、乾燥作業時のコンテナ19の反転作業において、従来必要であった投入ステーションを廃止し、投入用揚穀機18を設けることにより、計量器17で計量した穀粒を投入用揚穀機18により揚上し、反転部15上で待機した水平姿勢のコンテナ19内に投入することができるので、スタッカークレーン4による空コンテナ19の移動や、穀粒を充填する際のスタッカークレーン4の待機など無駄な動作を削減することができる。これにより、スタッカークレーン4は、乾燥部5と反転部15との間でのみコンテナ19の搬入又は搬出が行われ、必要最小限の動作に限定することができる。すなわち、スタッカークレーン4の搬送能力が向上し、従来と比較して1.3倍にコンテナ19の個数が増加した新たな乾燥ラック25の設置が可能となる。
【0050】
また、投入用揚穀機18の穀粒の排出側には、切換弁39を介して分岐路40,41を設け、分岐路40,41の各経路に対応させて複数の反転部15A,15Bを設けているから、切換弁39の切り換え動作により穀粒の払い出しが滞ることはなく、穀粒が投入されたコンテナ19を順次連続的に反転部15から搬出することが可能となる。
【0051】
さらに、投入用揚穀機18の分岐路40,41下端には、穀粒をコンテナ19内に均一に堆積させる分散機49を介在させているから、コンテナ19内への穀粒の分散ムラがなくなり、コンテナ19内に穀粒を均一に堆積させ、ムラ乾燥の防止に寄与することができる。
【0052】
そして、投入用揚穀機18の分岐路40,41下端には、穀粒の分散の際に舞い上がる塵埃を受けるフード53を設けるとともに、フード53に塵埃を回収するための集塵パイプ54を設けているから、穀粒をコンテナ19内に投入する際、周囲に舞い上がる塵埃を吸引し回収することができる。すなわち、反転部15での穀粒の払い出しの際は周囲に塵埃を撒き散らすことなく、常に衛生的に処理することができるといったメリットがある。さらに、フード53の内周面には、穀粒の投入の際にコンテナ19の上方を覆い、穀粒の流出の際は反転の干渉とならないようフード53内に収納可能な防塵フード56を設けてあり、これにより、穀粒をコンテナ19内に投入する際、分散機49により穀粒が分散されたとしても周囲に撒き散らすことなく衛生的な処理が可能であり、また、コンテナ19を傾倒姿勢にする際は防塵フード56を収納するとコンテナ19と干渉するおそれがなくなる。
【0053】
本発明は上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のラック式穀物乾燥装置は、搬送部(スタッカークレーン)の搬送能力が向上したため、従来と比較して1.3倍にコンテナの収容個数が増加した新たな乾燥棚の設置が可能となり、極めて実用性が高い。
【符号の説明】
【0055】
1 ラック式穀物乾燥装置
2 荷受部
3 穀物投入部
4 搬送部
5 乾燥部
6 貯蔵部
7 制御部
8 荷受ホッパ
9 荷受ホッパ
10 揚穀機
11 粗選機
12 揚穀機
13 シャッタ
14 シャッタ
15 反転部
16 一時貯留タンク
17 計量器
18 投入用揚穀機
19 コンテナ
20 クレーン部
21 リフト部
22 バーナ
23 送風機
24 熱風発生装置
25 乾燥ラック
26 待機ラック
27 主ダクト
28 分岐ダクト
29 ダンパー
30 送風口
31 計量器
32 切換弁
33 サイロ
34 架台
35 タンク部
36 切換弁
37 シュート
38 排出樋
39 切換弁
40 分岐路
41 分岐路
42 投入ホッパ
43 排出シュート
44 駆動モータ
45 反転部架台
46 回転軸部
47 コンテナ受部
48 反転駆動部
49 分散機
50 回転軸
51 分散板
52 駆動モータ
53 フード
54 集塵パイプ
55 水分計
56 防塵フード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷受ホッパ及び粗選機を配設した荷受部と、該荷受部から荷受けした穀粒を所定量ごとに小分けしてコンテナに投入する穀物投入部と、穀粒が投入されたコンテナを複数個収容して穀粒の乾燥処理を行う棚状の乾燥ラック、及び該乾燥ラックに送風路を介して乾燥風を供給する熱風発生装置を備えた乾燥部と、前記コンテナを制御装置からの指令により前記乾燥部への搬入又は搬出を行うための搬送部と、を備えたラック式乾燥装置であって、
前記穀物投入部は、穀粒を投入する際にコンテナを水平姿勢にする一方、穀粒を流出する際にコンテナを傾倒姿勢にしてコンテナの姿勢を交互に切り換える反転部と、該反転部の切り換え操作によりコンテナを傾倒姿勢としたときに穀粒を受ける一時貯留タンクと、該一時貯留タンクで受けた穀粒を計量する計量器と、該計量器下方と前記反転部上方との間に接続され、前記計量器で計量された穀粒を揚上し、前記反転部で待機した水平姿勢のコンテナ内に投入する投入用揚穀機とを備えたことを特徴とするラック式穀物乾燥装置。
【請求項2】
前記投入用揚穀機の穀粒の排出側には、切換弁を介して分岐路を設け、該分岐路の各経路に対応させて複数の反転部を設けてなる請求項1記載のラック式穀物乾燥装置。
【請求項3】
前記投入用揚穀機の分岐路下端には、穀粒をコンテナ内に均一に堆積させる分散機を介在させてなる請求項2記載のラック式穀物乾燥装置。
【請求項4】
前記投入用揚穀機の分岐路下端には、穀粒の投入の際に舞い上がる塵埃を受けるフードを設けるとともに、該フードに塵埃を回収するための集塵パイプを設けてなる請求項2又は3記載のラック式穀物乾燥装置。
【請求項5】
前記フードの内周面には、穀粒の投入の際にコンテナの上方を覆い、穀粒の流出の際は反転の干渉とならないようフード内に収納可能な防塵フードを設けてなる請求項4記載のラック式穀物乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104625(P2013−104625A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249355(P2011−249355)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】