説明

ラムネ菓子及びその製造方法

【課題】舌触りが滑らかなラムネ菓子を簡便な製造工程により低コストで製造する技術を提供する。
【解決手段】97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と(2)麦芽糖及び/又はソルビトールを重量で9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物、ラムネ菓子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接打錠でラムネ菓子をつくる打錠用顆粒、およびその顆粒を使用した打錠物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ糖を主原料とするラムネ菓子は、例えばブドウ糖や砂糖の微粉末および結合剤を含むその他原料の一部を造粒して顆粒にしたものを、残りの原料と混合して打錠して、製造することができる(非特許文献1)。この方法は、舌触りのよい打錠物を製造できるが、造粒工程が必要でありコスト高になる。造粒しない場合には結着力がなく、打錠成型することができない。ブドウ糖や砂糖の微粉末の粒径を大きくすれば結着力が向上するため造粒なしで打錠できるようになるが、この場合、打錠物の舌触りは悪いものになる。
特許文献1には、ブドウ糖微粉およびその他原料を湿式で混合し、型抜きして乾燥して製造する方法が記載されている。この方法は、成型速度が遅い為に生産効率が悪く、また、成型後に乾燥工程が必要であって、香料が揮発、劣化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-199347号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】製菓事典、朝倉書店、1994年(第5刷)(1981年初版第1刷)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、舌触りが滑らかなラムネ菓子を簡便な製造工程により低コストで製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、特定の粒径のブトウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールを一定の範囲の比率で混合することにより、上記の課題が解決できることを見出した。
【0007】
本発明は、以下のラムネ菓子の製造方法を提供するものである。
項1. (1) 97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と(2) 麦芽糖及び/又はソルビトールを重量で9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物。
項2. ブドウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールを8:2〜7:3の重量割合で混合した項1に記載のラムネ菓子打錠用組成物。
項3. さらに、でんぷん、香料、着色料、酸味料および滑沢剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む、項1〜3のいずれかに記載のラムネ菓子打錠用組成物。
項4. 項1〜3のいずれかに記載の組成物を直接打錠して得られたラムネ菓子。
項5. 97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と麦芽糖を重量で9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合した組成物を直接打錠することを特徴とするラムネ菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
造粒工程なしに直接打錠で舌触りのよいラムネ菓子を製造することができる為、加工コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、ラムネ菓子とは、ブドウ糖を主原料(配合割合の最も多い原料)として、麦芽糖及び/又はソルビトール、酸味料、香料などを添加して型で押し固めて作る菓子をいう。
【0010】
本発明のラムネ菓子に用いるブドウ糖は、97重量%以上が粒径300μm以下のものである。粒径300μm以上のブドウ糖の割合が3重量%を超えると舌触りで、ざらつきを感じるようになる。このような粒径のブドウ糖を用いることで、ラムネ菓子を舌上で溶かしたときにざらざらせず、良好な舌触りを有するものになる。一方、大部分の粒径が小さいこのようなブドウ糖を用いると、結着力が弱いため、直接打錠すると打錠物(ラムネ)が破損しやすく製造できないため、工程が増えるが造粒後に打錠していた。
【0011】
一方、本発明では上記のブドウ糖とともに、麦芽糖及び/又はソルビトールを特定の比率で併用することで、舌触りを良好に保ちつつ、直接打錠したときのラムネ菓子の摩損もしくは破損を防止することができる。麦芽糖がソルビトールよりも好ましい。
【0012】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールを配合した組成物における両者の配合割合は、重量で9.5:0.5〜5.5:4.5程度、好ましくは9:1〜6:4程度、より好ましくは8.5:1.5〜6.5:3.5程度、特に8:2〜7:3程度である。ブドウ糖が多すぎると結着力が低下して直接打錠したラムネが破損ないし摩損しやすくなり、ブドウ糖の含量が少なすぎると舌触りがざらざらしたものになる。
【0013】
麦芽糖、ソルビトールの粒径は特に限定されず、市販されている麦芽糖、ソルビトールの粉末を使用することができる。麦芽糖、ソルビトールの粒径は、ラムネ菓子の舌触りにほとんど影響しないためである。
【0014】
ラムネ菓子は、ラムネ菓子の製造に従来から用いられている打錠機、例えば1個の臼と1対の杵が組み合わされたロータリー式の打錠機を用いて、本発明の打錠用組成物を圧縮成型することにより製造することができる。
【0015】
本発明のラムネ菓子打錠用組成物は、特定粒径のブドウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールの他に、でんぷん、ラムネ香料などの香料、着色料、酸味料(クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸など)、糖類、滑沢剤(シュガーエステル、ステアリン酸カルシウムなど)などが挙げられる。これらは、本発明のラムネの特徴を損なわない程度の量で配合され得る。例えば滑沢剤はラムネ全体の1〜5重量%程度、香料は0.1〜1重量%程度、酸味料は0.3〜3重量%程度、でんぷんは、0.3〜3重量%程度である。
【0016】
本発明のタブレットの硬度は、木屋式デジタル硬度計KHT−20N型 5mmφアタッチメントで測定することができる。好ましい硬度は、30〜130Nである。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
表1に示す組成比になるよう混合したラムネ菓子打錠用組成物を直径13mmの円形の打錠型を用い、吸込み10mm、打錠圧1.5tの条件で打錠成型した。
【0018】
【表1】

【0019】
その結果、97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と麦芽糖を9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(実施例1〜7)を直接打錠したところ、打錠性および舌触りが概ね良好であり、特にブドウ糖と麦芽糖を8:2〜7:3の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(実施例3、4、7)は打錠性および舌触りが良好であった。
【0020】
ブドウ糖と麦芽糖を9.5:0.5 および9:1の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(実施例1,2)は、成型できるものの、結着力が弱く、硬度が低く、摩損しやすい傾向が見られたが、舌触りは良好であった。
【0021】
ブドウ糖と麦芽糖を6:4および5.5:4.5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(実施例5,6)は、良好に成型でき、舌触りも概ね良好だが、若干舌にザラツキが感じられる傾向が見られた。
【0022】
ブドウ糖と麦芽糖を8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物で、一般的なラムネ菓子に使用する、でんぷん、香料、酸味料の添加物を含まないもの(実施例7)を打錠したところ、添加物を含むもの(実施例3)と同様に打錠性および舌触りは良好であり、でんぷん、香料、酸味料の添加物は本発明の打錠性および舌触りの評価に影響は見られなかった。
【0023】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖とソルヒ゛トールを8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(実施例8)を打錠したところ、打錠性および舌触りが良好であった。ただし、通常ソルヒ゛トールは麦芽糖よりも原料価格が高い為、実製造においては麦芽糖がより望ましい。
【0024】
麦芽糖を含まない97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖(比較例1)を打錠したところ、結着力がなく、取出し時に摩損が著しく、良好な成型ができなかった。
【0025】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と麦芽糖を5:5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例2)を打錠したところ、良好に成型できたが、舌触りが悪かった。
【0026】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖とセルロースを8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例3)を打錠したところ、良好に成型できたが、舌触りが悪かった。
【0027】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖とテ゛キストリンを8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例4)を打錠したところ、成型できたが、結着力が弱く、摩損しやすい傾向が見られ、舌触りが悪く、粉っぽさが口に残った。
【0028】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖とク゛アカ゛ムを8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例5)を打錠したところ、結着力がなく、成型できなかった。
【0029】
3重量%以上が粒径300μm以上のフ゛ト゛ウ糖(比較例6)を打錠したところ、良好に成型できたが、コ゛リコ゛リした食感で、舌触りが悪かった。
【0030】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と3重量%以上が粒径300μm以上のフ゛ト゛ウ糖を8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例7)を打錠したところ、成型できたが、結着力が弱く、摩損しやすい傾向が見られ、舌にザラツキが感じられた。
【0031】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と粉糖を8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例8)を打錠したところ、流動性が悪く、安定した打錠成型が出来なかった。
【0032】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と乳糖を8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例9)を打錠したところ、成型できたが、結着力が弱く、摩損しやすい傾向が見られ、舌にザラツキが感じられた。
【0033】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖とマルチトールを8:2の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物(比較例10)を打錠したところ、流動性が悪く、杵付きが発生し、安定した打錠成型が出来なかった。
打錠性について
比較例1、比較例5の打錠品は、結着力がなく、打錠機からの排出時に摩損して良好な成型が出来なかった。
【0034】
実施例1、実施例2、比較例4、比較例7、比較例9の打錠品は、成型はできるが、結着力が弱く、打錠機からの排出時に摩損しやすい傾向が見られた。
比較例8は、顆粒の流動性が悪い為に、定量の顆粒が臼に入らず、安定した打錠成型が出来なかった。
【0035】
比較例10は、顆粒の流動性が悪いために定量の顆粒が入らず安定した打錠成型が出来なかった。また杵に付着が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と(2)麦芽糖及び/又はソルビトールを重量で9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合したラムネ菓子打錠用組成物。
【請求項2】
ブドウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールを8:2〜7:3の重量割合で混合した請求項1に記載のラムネ菓子打錠用組成物。
【請求項3】
さらに、でんぷん、香料、着色料、酸味料および滑沢剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のラムネ菓子打錠用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を直接打錠して得られたラムネ菓子。
【請求項5】
97重量%以上が粒径300μm以下のブドウ糖と麦芽糖及び/又はソルビトールを重量で9.5:0.5〜5.5:4.5の割合で混合した組成物を直接打錠することを特徴とするラムネ菓子の製造方法。

【公開番号】特開2011−15639(P2011−15639A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162531(P2009−162531)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】