説明

ランナーから苗を育成する植物の苗生産における液体培養法

【課題】ランナーから苗を生産する植物の苗生産において、ウィルスフリー苗を大量に培養生産する方法の提供。
【解決手段】生長点培養した植物体をサイトカイニン類を含有する液培体地中に無菌条件下で投入し、該液体培地中に空気、酸素、二酸化炭素等を与えながら照度1000から15000luxの光源下において培養を行うウィルスフリー苗の生産方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
ランナーから苗を育成する植物の苗たとえば、イチゴ、イモ類等は、一般に親苗からランナーとして展開した子苗を取り、これを生産苗とする。しかし、ウィルス病を持つ親からは、ウィルス病を持つ子苗しか生産されない。
【0002】
これを回避するために、生長点培養が行われる。この方法で培養される植物の大量増殖、苗生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ランナーから苗を育成する植物の苗生産には、ウィルスフリーと呼ばれる生長点培養されたイチゴ苗を親苗として子苗をとる必要がある。さもないと、ウィルス病にかかった苗しか生産されないからである。
【0004】
生長点培養は、公知の寒天培養等で行われるが、その培養物を大量増殖させる方法として、寒天培地で培養する方法が一般的である。しかし、寒天で増殖させる方法は、時間、手間がかかる。
【0005】
また、順化を屋外で行うとウィルス病を伝播するアブラムシ等に汚染される可能性が有り、ウィルス病に罹病する危険性がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
寒天での増殖には、分けつホルモンであるサイトカイニン類を高濃度に与えることになり変異等が懸念され、また、分けつさせた後、発根培地で発根を促してやり、その後、順化と呼ばれる外気中に植えだす作業に入る。
【0007】
この分けつ、発根の工程は、無菌下で行う必要が有り、菌体が容器中に少しでも入ると、菌に汚染され枯れ死する。そのため、細心の注意を払いながら行わなければならない。
【0008】
また、順化を屋外で行うとウィルス病を伝播するアブラムシ等に汚染される可能性が有り、ウィルス病に罹病する危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら分けつ、発根の工程を1つの工程にまとめ分けつと発根が同時にできる液体培養法を確立させた(図1)。
【0010】
また、順化工程までを屋内で行えばウィルス病に罹病する危険性を回避でき、また、ウィルスフリーの苗を早く、大量に生産することが可能であるため、そのまま順化すれば生産苗として使用することも可能になる。
【発明を実施するための最良の方法】
【0011】
以下本発明について説明する。
【0012】
常法にしたがって生長点培養した植物体を、無菌状態で容器中に入れてある液体培地中に無菌下で投入する。この培地は、MS,H等公知の培地組成または、植物体の生長に必要な成分等を含有させた水溶液に、炭素源を含有させたもので構わない。
【0013】
また、ホルモン類として、サイトカイニン類はベンジルアデニンに限定する物ではなく、ゼアチン、カイネチン等他の物でもかまわない。また、サイトカイニン類とオーキシン類を混在させてもかまわない。また、ホルモン類がなくても増殖、分けつするものは、ホルモン類がなくてもかまわない。また、オーキシン類だけでもかまわない。
【0014】
この投入された容器を、1000〜15000luxの光源下、10〜300rpmの往復または、円運動等、空気を積極的に培地に溶け込ませる運動、または、無菌エアを送り込むエアレーション(以下は、振とうと表現する。)を行いながら、5度〜35度の温度で、15日〜120日程度の間培養を行う。
【0015】
光源としては、LED、蛍光灯、メタルハライド灯等エネルギー効率の良い物を使用する。また、光源、振とうは、連続でも、断続でも構わない。
【0016】
培養期間中は、温度変化、空気の流れ等に留意し、容器中へ雑菌が入らないようにする。
【0017】
培養期間が終われば、容器中で、芽数が、10〜100程度に増殖し、かつ、発根している状態であるので、容器から取り出し、ピンセット等で分けつした芽をほぐしながら、順化培地に植えつける。(図1)
【実施例】
【0018】
ランナーから苗を生産する代表としてイチゴ(四季成り)で実施した。
【0019】
常法にしたがって生長点培養した四季成りイチゴを、容器の中に液体培地を入れてアルミホイルで2重蓋をして、オートクレーブで滅菌後、無菌下で、容器の中に投入した。
【0020】
容器中の液組成を下記に示す。
A組成 MS1/4培地組成(公知)
ショ糖 3g/L
ベンジルアデニン 0.05ppm
B組成 H培地組成(公知)
ショ糖 3g/L
ベンジルアデニン 0.05ppm
【0021】
A,B組成とも、投入後照度3000〜7000luxの光源下、70〜80rpmの振とうを常時行い、1.5ヶ月間培養を行った。(雰囲気温度 22〜27度)
【0022】
その結果、A組成では、分けつ数 平均12.3本。B組成では、分けつ数 平均35.2本の結果を得た。分けつした物には、分けつ部分から根が出ており順化工程に移っても順化しやすい状態になっていた。
【0023】
これらを、セルトレーに培養土を充填したものに、セル植えし、養液を供給しながら室内で1〜2ヶ月間順化を行い、約20000本のウィルスフリー苗が生産できた。
【発明の効果】
【0024】
これらの技術を確立させたことで、無菌下で行う工程が減少し、効率が上がり、短期間でウィルスフリー苗を増殖させることができる。
【0025】
また、苗の大量生産が、ランナーを経由しなくとも可能になり、室内での工程であるため、ランナー増殖時のウィルス感染の危険性をも回避できる。
【0026】
また、ランナーで増殖すると大きめのポットで受けるため、広い面積を占有するが、この技術では、セルトレー等を利用することにより、狭い面積で大量生産が可能となる。また、室内での工程であるため、日長をコントロールし季節を問わず増殖ができる。
【0027】
それによって、ウィルスフリー苗を、大量に安定して生産することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
イチゴ苗は、ランナーが発生しやすくなる春から夏にかけて生産者に供給されており、それを親株としてランナー増殖させ生産苗を確保していた。また、イモ類等も同様である。
【0029】
しかし、今後促成栽培だけでなく、四季成り品種多くなっていけば、季節を問わず定植、栽培が必要となっていく。これらの要求に応えられる技術として確立したものである。また、イモ類等も、季節を問わず苗供給ができるようになる。
【0030】
ウィルスフリー苗を、安定的に、大量に、いつでも提供できるようになる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナーから苗を育成する植物の生長点培養後の増殖(分けつ)培養時に、発根も同時に行う方法。
【請求項2】
ランナーから苗を育成する植物の生長点培養後の増殖(分けつ)培地に液体を使用する。
【請求項3】
増殖培地中に、サイトカイニンを0.5ppm以下含む。
【請求項4】
順化工程までを、室内で行う。
【請求項5】
液体培養を積極的に空気(酸素)を溶け込ませる動作また、空気、酸素、二酸化炭素等を与えながら、照度1000から15000luxの光源下において行う。

【公開番号】特開2009−118835(P2009−118835A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320184(P2007−320184)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(507405614)株式会社環境彩エン (1)
【Fターム(参考)】