説明

ランニングマシン用ベルト

【課題】
帯電防止効果を長期間維持することができ、また、修理・修復が可能でリサイクルすることができるランニングマシン用ベルトを提供する。
【解決手段】
ランニングマシン用ベルト1は、ランニングマシン本体21の駆動ローラ22によって回転させられるベルトである。当該ベルト1は、無端状であり、人が載ることができる程度の幅に形成されている。ベルト1は、少なくとも1種類の繊維材料によって形成された芯帯3と、人が載る側となる芯帯3の表側表面3aに設けられた軟質層10と、前記駆動ローラ22に当接する側となる芯帯3の裏側表面3bに設けられた黒鉛塗料層11とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康又は体力の強化のために歩行又はランニングを行うことができるランニングマシンに使用されるベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランニングマシン用ベルトは、無端状に形成され、ランニングマシン本体の駆動ローラと従動ローラに巻掛けられ、人が載っても撓まないように、駆動ローラと従動ローラの間に設けられた支承部材にガイドされるようになっている(例えば、特許文献1)。この種のランニングマシン用ベルトは、ランニングマシンを駆動すると、これの裏側表面が支承部材及びローラに摺接し、静電気が帯電する可能性があった。特に、人がその上に載って歩行又はランニングを始めると、それに伴う体重移動により、ベルトの裏側表面が支承部材に圧接しながら摺接するので、静電気の発生が格段に多くなる。ランニングマシン用ベルトに静電気が帯電すると、ランニングマシンを制御する制御装置を誤動作若しくは破壊し、また接触した人に不快感を与えたりするので、ランニングマシン用ベルトには静電気の帯電防止策が施されている。従来のランニングマシン用ベルトは、静電気の帯電防止策として、裏側表面に導電性糸が設けられている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特許第3040346号公報
【特許文献2】実用新案登録第2568369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のランニングマシン用ベルトは、上記したように、人がその上に載って歩行又はランニングを始めると、ランニングマシン用ベルトに繰り返し負荷がかかり、導電性糸が切断して帯電防止効果を大きく損なうという問題点があった。また、導電性糸が切断した場合には、修理・修復が困難であるため、廃棄処分にせざるを得ないという問題点があった。
【0004】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、帯電防止効果を長期間維持することができ、さらに、耐久性及び機能性に優れたランニングマシン用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係るランニングマシン用ベルトは、上記目的を達成するため、下記の要件を備えたことを特徴とする。
(イ)ランニングマシン本体の駆動ローラによって回転させられるランニングマシン用のベルトであって、当該ベルトは、無端状であり、人が載ることができる程度の幅に形成されていること。
(ロ)ベルトは、少なくとも1種類の繊維材料によって形成された芯帯と、人が載る側となる芯帯の表側表面に設けられた軟質層と、前記駆動ローラに当接する側となる芯帯の裏側表面に設けられた黒鉛塗料層とからなること。
【0006】
本願請求項2に係るランニングマシン用ベルトは、上記目的を達成するため、前記黒鉛塗料層は、黒鉛粉末と該黒鉛粉末を保持する熱可塑性樹脂とを少なくとも含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明に係るランニングマシン用ベルトは、芯帯の裏側表面に黒鉛塗料層が設けられ、当該黒鉛塗料層が、支承部材及びローラに摺接する。黒鉛塗料層は、導電性を備えているので、静電気の帯電防止に役立つという効果がある。また黒鉛塗料層は、従来のように、切断することがないので帯電防止効果を長期間維持することができるという効果がある。また、黒鉛塗料層は、摩擦抵抗が小さく滑りやすいので耐摩耗性に優れている。本願発明に係るランニングマシン用ベルトは、芯帯の裏側表面に設けられた上記効果を有する黒鉛塗料層が支承部材及びローラに摺接するので、耐久性及び機能性に優れ、長期間使用することができるという効果がある。
【0008】
本願発明は、黒鉛粉末を強固に保持する熱可塑性樹脂が配合されていることにより、黒鉛塗料層を剥がれ難くすることができるので、単なる搬送用ベルトではなく、特にランニングマシンのように衝撃的な荷重が頻繁に加わる場合であっても、長期間の使用に耐え得るランニングマシン用ベルトを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明に係るランニングマシン用ベルトの一つの実施の形態を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、本願発明に係るランニングマシン用ベルトを取り付けたランニングマシンの全体斜視図である。図2は、図1の要部断面側面図である。図3は、ランニングマシン用ベルトの要部断面図である。
【0010】
ランニングマシン用ベルト1は、ランニングマシン本体21の駆動ローラ22によって回転させられるランニングマシン用のベルトである。当該ベルト1は、無端状であり、人が載ることができる程度の幅に形成されている。ベルト1は、少なくとも1種類の繊維材料によって形成された芯帯3と、人が載る側となる芯帯3の表側表面3aに設けられた軟質層10と、前記駆動ローラ22に当接する側となる芯帯3の裏側表面3bに設けられた黒鉛塗料層11とからなる。前記黒鉛塗料層11は、黒鉛粉末と該黒鉛粉末を保持する熱可塑性樹脂とを少なくとも含んでいる。
【0011】
さらに、ランニングマシン用ベルト1について詳細に説明する。ランニングマシン用ベルト1は、その上を人が歩いたり走ったりすることが出来る程度の幅でもって、無端状に形成されている。具体的には、ランニングマシン用ベルト1は、全長約3400mm、幅約530mm、厚さ約3.5mm程度の大きさに形成されている。ランニングマシン用ベルト1は、ベルト本体2と、ベルト本体2の裏側表面3bに設けられた黒鉛塗料層11とからなる。ベルト本体2は、芯帯3と、芯帯3の表側表面3aに設けられた軟質層10とからなる。
【0012】
芯帯3は、積層された複数の繊維層、例えばポリエステル繊維層、ポリアミド繊維層等によって形成され、具体的には、白色のポリエステル繊維層5と、ポリエステル繊維層5の上面に接着剤6によって固定されたポリエステル繊維層7とからなる。なお、芯帯3は、一つの繊維層、例えばポリエステル繊維層5のみでも構わない。軟質層10は、繊維層7(芯帯3)の上面(表面)3aに接着剤9によって固定されている。本実施の形態では、軟質層10は、黒色のポリ塩化ビニル(PVC)層10であるが、これに限定されるものではなく、ゴム層であっても構わない。
【0013】
黒鉛塗料層11は、ポリエステル繊維層5(芯帯3)の裏側表面3bに設けられている。黒鉛塗料層11を形成する黒鉛塗料は、黒鉛粉末、熱可塑性樹脂、カーボンブラック(硬化剤)、ジオキソラン(希釈剤)を所定の配合割合で混合したものである。熱可塑性樹脂は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等であって、黒鉛粉末を強固に保持する役割を果たす。当該黒鉛塗料は、前記ポリエステル繊維層(芯帯3)5の裏側表面3bに、約0.4mm〜0.6mm程度の厚さで塗布し、所定時間、自然乾燥させることにより、黒鉛塗料層11を形成する。なお、黒鉛塗料を塗布する手段は、シルク印刷、グラビア印刷、刷毛による直接塗り、吹きつけ等の一般的な手段でよく、特に限定されるものではない。乾燥時間は、約3〜6時間程度であるが、その時の温度、湿度等により変更され、特に限定されるものではない。黒鉛塗料層11は、黒鉛塗料がポリエステル繊維の隙間に含侵して形成されるので、ポリエステル繊維層5(芯帯3)から容易に剥がれることはない。黒鉛塗料は、電気伝導性、潤滑性、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性について優れている。
【0014】
上記したランニングマシン用ベルト1は、従来のベルトのように、ランニングマシン本体21に取り付けられる。ランニングマシン本体21は、駆動ローラ22と、従動ローラ23と、駆動ローラ22と従動ローラ23間に配置された支承部材25と、駆動ローラ22をベルト27を介して回転させる駆動モータ26を有する。ランニングマシン用ベルト1は、ランニングマシン本体21の駆動ローラ22と従動ローラ23に巻掛けられ、人が載っても撓まないように支承部材25によってガイドされる。なお、ランニングマシン本体21には、図示しないが、駆動モータ26をON・OFFするスイッチと、駆動モータ26の駆動時間及び回転速度を設定する操作盤が設けられている。
【0015】
ランニングマシン本体21は、スイッチをONすると、駆動モータ26が駆動し、ベルト27を介して駆動ローラ22が回転する。駆動ローラ22が回転すると、ランニングマシン用ベルト1が回転する。ランニングマシン用ベルト1は、人が載ると、人の重みによって撓み、裏側表面1aが支承部材25に圧接し、さらに裏側表面1aが支承部材25に摺接する。また、ランニングマシン用ベルト1は、駆動ローラ22に引っ張られることによって回転するが、人が載ると撓んで支承部材25に圧接して負荷がかかり、裏側表面1aが駆動ローラ22上を滑ることがある。このように、ランニングマシン用ベルト1は、裏側表面1a、即ち黒鉛塗料層11の表面1aが支承部材25及び駆動ローラ22上を滑ることになる。この際、静電気が発生するが、前記したように黒鉛塗料層11は電気伝導性を備えているので、静電気の帯電を防止することが出来る。又、黒鉛塗料層11は、潤滑性を備えているので、接触する支承部材25との摩擦抵抗が小さい。そのため、静電気の発生が少なく、さらに、ランニングマシン用ベルト1に掛かる負荷が小さいので、駆動モータ26の負担を少なくすることができ、駆動モータ26の寿命を大幅に向上することになる。
【0016】
また、ランニングマシン用ベルト1には、人が乗ってランニングを行うと、人の体重が足の裏を介して局部的にしかも交互に頻繁に加わる。そのため、ランニングマシン用ベルト1の裏側表面1a、即ち黒鉛塗料層11の表面1aが支承部材25に衝撃的に圧接する。また、ランニングマシン用ベルト1の裏側表面1a、即ち黒鉛塗料層11の表面1aは、圧接と同時に支承部材25に摺接する。さらに、人の体重が交互に加わることで、ランニングマシン用ベルト1、即ち黒鉛塗料層11の伸縮が激しく行われる。従って、ランニングマシン用ベルト1は、衝撃的な過重が頻繁に加わることのない通常の搬送用ベルトよりも過酷な条件下にあり、通常の塗料層では、簡単に剥げ落ちてしまうことになる。しかし、上記したように、ランニングマシン用ベルト1は、黒鉛塗料層11内に、黒鉛粉末を強固に保持する熱可塑性樹脂が配合されているので、上記過酷な条件下においても黒鉛塗料層11が剥がれ難くなっている。このようにランニングマシン用ベルト1は、帯電防止効果、潤滑性、耐久性に優れ、長期間使用することができる。
【0017】
上記したように、ランニングマシン用ベルト1は、黒鉛粉末を強固に保持する熱可塑性樹脂が配合されていることにより、黒鉛塗料層を剥がれ難くすることができるので、単なる搬送用ベルトと異なり、特にランニングマシンのように衝撃的な荷重が頻繁に加わる場合であっても、長期間の使用に耐え得る構造となっている。
【0018】
ランニングマシン用ベルト1は、芯帯3の裏側表面3bに黒鉛塗料層11が設けられ、当該黒鉛塗料層11の表面1aが、支承部材25及びローラ22に摺接し、静電気を発生させるが、黒鉛塗料層11が導電性を備えているので、静電気の帯電防止に役立つ。また黒鉛塗料層11は、従来のように、切断することがないので帯電防止効果を長期間維持することができる。また、黒鉛塗料層11は、摩擦抵抗が小さく滑りやすいので耐摩耗性に優れ長期間使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係るランニングマシン用ベルトは、健康又は体力の強化のために歩行又はランニングを行うことができるランニングマシンに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明に係るランニングマシン用ベルトを取り付けたランニングマシンの全体斜視図である。
【図2】図1の要部断面側面図である。
【図3】ランニングマシン用ベルトの要部断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ランニングマシン用ベルト
1a 裏側表面
2 ベルト本体
3 芯帯
3a 表側表面(上面)
3b 裏側表面
5 ポリエステル繊維層
6 接着剤
7 繊維層
9 接着剤
10 軟質層(ポリ塩化ビニル層)
11 黒鉛塗料層
21 ランニングマシン本体
22 駆動ローラ
23 従動ローラ
25 支承部材
26 駆動モータ
27 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件を備えたことを特徴とするランニングマシン用ベルト。
(イ)ランニングマシン本体の駆動ローラによって回転させられるランニングマシン用のベルトであって、当該ベルトは、無端状であり、人が載ることができる程度の幅に形成されていること。
(ロ)ベルトは、少なくとも1種類の繊維材料によって形成された芯帯と、人が載る側となる芯帯の表側表面に設けられた軟質層と、前記駆動ローラに当接する側となる芯帯の裏側表面に設けられた黒鉛塗料層とからなること。
【請求項2】
前記黒鉛塗料層は、黒鉛粉末と該黒鉛粉末を保持する熱可塑性樹脂とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のランニングマシン用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−132222(P2008−132222A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321391(P2006−321391)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000252643)國新産業株式会社 (1)
【出願人】(000136158)株式会社コナミスポーツ&ライフ (28)