説明

リアクトル

【課題】 直流重畳特性が改善されたリアクトルを提供すること。
【解決手段】 リアクトルは、磁性体層と非磁性体層とが磁路方向に積層された円柱状コアブロックを有するコアと、円柱状コアブロックに巻回されたコイルと、を備える。円柱状コアブロックの径Dに対する非磁性体層の厚さを表すギャップ長Igの比率Rが5%以下である。比率Rは0.8%以上であるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、例えば直流電圧の昇圧等に利用される。リアクトルに関する改良が、様々な文献に紹介されている。
【0003】
特許文献1は、温度が上昇してもリアクトルの特性値の変化を抑制することができるリアクトル装置を開示する。特許文献1に記載のリアクトル装置は、U字コアブロックとI字コアブロックを含む環状コアと、環状コアを収納するアルミケースと、U字コアブロックをアルミケースに押さえつけるリテーナとを備える。リテーナはアルミケースに固定される。リテーナはU字コアブロックを押さえつけているだけであって、U字コアブロックに固定されていない。よって、アルミケースの熱膨張係数とU字コアブロックの熱膨張係数との違いに起因して、温度上昇時にアルミケースとU字コアブロックの相対的位置関係が変化したときに、リテーナに対するU字コアブロックの相対的位置が変化することにより、アルミケースとU字コアブロックとの相対的位置関係の変化が吸収される。つまり温度上昇時にU字コアブロックはアルミケースの熱膨張の影響を受けない。よって、U字コアブロックがアルミケースの熱膨張の影響を受けることにより例えばU字コアブロックとI字コアブロックとの間に形成されるギャップの長さ(ギャップ長)が変化することが防止される。その結果、ギャップ長の変化に起因したリアクトルの特性値の変化が抑制される。
【0004】
特許文献2は、磁性体からなる複数のコアブロックと、これらコアブロックの外周に設けられ、通電することでコアブロック間に磁力を生じさせ、その磁力により複数のコアブロック同士を接合状態とするコイルとを有するリアクトルを開示する。つまり、特許文献2に記載されたリアクトルは、複数のコアブロックの接合時にコイルに通電して磁力を発生させ、その磁力を吸引力として利用することにより複数のコアブロックを接合する。これにより簡便かつ正確なリアクトルの組み立てが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−241475号公報
【特許文献2】特開2006−351722号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
直流電源に接続されるリアクトルの直流重畳特性は、理想的な直流重畳特性に近いほど良い。「直流重畳特性」とは、直流バイアス電流の大きさの変化に対するインダクタンスの変化特性である。理想的な直流重畳特性は、直流バイアス電流の大きさに係わらず、インダクタンスの大きさが変化しないような特性である。つまり、直流電源に接続されるリアクトルは、直流バイアス電流の大きさに係わらずインダクタンスの大きさが変化しないような直流重畳特性を有するのがよい。なお、インダクタンスとは、電流の変化に対する誘導起電力の比を表す定数であり、インダクタンスの大きさが大きいほどコイルにエネルギーを蓄えることができる。
【0007】
直流重畳特性を理想的な直流重畳特性に近づけるために、直流バイアス電流が大きい場合であってもコアが磁気飽和しないことが必要である。このためコアにギャップを形成する。ギャップを形成することにより透磁率が調整される。そのためインダクタンスを調整することができる。具体的には、磁路が円で繋がる場合、インダクタンスLは次式で求められる。
L=NμS/l
ここで、Nはコイルのターン数、μは透磁率、Sはコアの断面積、lは磁路長である。
【0008】
また、透磁率μは、磁界Hに対する磁束密度Bの変化量を表す。ギャップが形成されたコアの透磁率μは、ギャップが形成されていないコアの透磁率μよりも小さい。したがって、図8に示すように、ギャップが形成されたコアを有するリアクトルの磁界Hに対する磁束密度Bの変化勾配は、ギャップが形成されていないコアを有するリアクトルの磁界Hに対する磁束密度Bの変化勾配よりも緩やかである。つまり、ギャップの形成により、磁気飽和するまでの磁界Hを大きくすることができる。磁界Hの大きさは、コイルに流れる電流の大きさに比例する。すなわち、ギャップを形成することで、磁気飽和するまでの電流を大きくすることができる。換言すれば、ギャップの形成により、リアクトルに大電流を流した場合においても磁気飽和を防止することができる。磁気飽和が生じた場合にインダクタンスが極端に低下する。したがって、磁気飽和の発生を防止することにより、直流重畳特性を理想的な直流重畳特性に近づけることができる。
【0009】
本発明は、ギャップが形成されたコアを用いたリアクトルにおいて、より一層、直流重畳特性が理想的な直流重畳特性に近づくように改良されたリアクトルを提供することを目的とする。
【0010】
(課題を解決するための手段)
本発明は、磁性体層とギャップとしての非磁性体層とが磁路方向に積層された積層部分を有するコアと、前記積層部分に巻回されたコイルと、を備えたリアクトルであって、前記積層部分の径に対する前記非磁性体層の厚さを表すギャップ長の比率が5%以下である、リアクトルを提供する。この場合、前記比率が0.8%以上であるとよい。また、前記比率が1.5%以下であるとさらに良い。また、前記磁性体層は磁性体粉末を圧粉成形することにより形成され、非磁性体層は前記圧粉成形された前記磁性体層上で非磁性体粉末を圧粉成形することにより形成されるとよい。
【0011】
本発明のリアクトルのコアは、磁性体層と非磁性体層とが磁路方向に積層された積層部分を有する。非磁性体層がギャップを形成する。ギャップの形成により、大電流を流した場合における磁気飽和が防止される。また、ギャップが形成された積層部分の径Dに対するギャップ長(すなわち非磁性体層の厚さ)Igの比率R(=Ig/D)が5%以下である。好ましくは比率Rが0.8%〜5%である。比率Rが上記範囲内であれば、直流バイアス電流の大きさの変化に対するインダクタンスの変化を小さくすることができる。すなわち直流重畳特性をより理想的な直流重畳特性に近づけることができる。ここで、本発明において、「積層部分の径」とは、積層部分を積層方向(磁路方向)に垂直な平面で切断した断面外形で表わされる形状から得られる径である。断面外形が円であれば、その円の直径が積層部分の径である。断面外形が四角形であれば、例えばその断面積に等しい円の直径を積層部分の径とすることができる。
【0012】
また、比率Rが1.5%以下であれば、ギャップの形成位置における漏れ磁束の大きさMを小さくすることができる。このためコイルの径を小さくすることができ、ひいてはコイルに用いる巻き線の使用量を低減することができる。なお、比率Rの計算に用いられるギャップ長Igは、単一の非磁性体層で形成されるギャップの長さを表す。複数のギャップが存在する場合であっても、比率Rの計算に用いられるギャップ長Igは、単一のギャップの長さである。
【0013】
また、磁性体粉末を圧粉成形することにより磁性体層を形成し、圧粉成形された磁性体層上で非磁性体粉末を圧粉成形することにより非磁性体層を形成することにより、磁性体層と非磁性体層とを接着材等を介することなく接合することができる。よって、製造コストおよび製造工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】コアの正面図である。
【図3】円柱状コアブロックの製造工程を示す図である。
【図4】昇圧チョッパ回路の回路図である。
【図5】スイッチング素子のON/OFF動作に伴う昇圧チョッパ回路内に流れる電流の変化状態および印加される電圧の変化状態を表すグラフである。
【図6】比率Rに対する変化率L*の変化を表すグラフである。
【図7】比率Rに対する漏れ磁束の大きさMの変化を表すグラフである。
【図8】コアにギャップが形成されている場合における磁界Hに対する磁束密度Bの変化特性と、コアにギャップが形成されていない場合における磁界Hに対する磁束密度Bの変化特性との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るリアクトルの斜視図である。図1に示すように、リアクトル1は、コア10およびコイル20を備える。コア10は、2本の円柱状コアブロック11,11と、2本の連結コアブロック12,12とを有する。図1からわかるように2本の円柱状コアブロック11,11が並んで平行に配設されている。2本の円柱状コアブロック11,11の両端面のうち、同一方向を向いた一方の端面がともに一方の連結コアブロック12に接続され、他方の端面がともに他方の連結コアブロック12に接続される。したがって、2本の円柱状コアブロック11,11と2本の連結コアブロック12,12とによりコア10内に閉じた磁路が形成される。
【0016】
それぞれの円柱状コアブロック11の外周にコイル20が巻回される。一方の円柱状コアブロック11の外周に巻回されたコイル20と他方の円柱状コアブロック11の外周に巻回されたコイル20は電気的に接続されている。
【0017】
連結コアブロック12は磁性体材料(例えば純鉄)により形成される。また、連結コアブロック12は、後述する磁性体層111と同じ材質で形成されていてもよい。
【0018】
図2は、コア10の正面図である。図2に示すように、円柱状コアブロック11は、磁性体層111と非磁性体層112とを交互に積層させてなる積層部分である。磁性体層111と非磁性体層112は、共に同径の円板状に形成されている。磁性体層111は磁性体材料で形成される。本実施形態では、磁性体層111はFe系粉末(例えばFe−Si系粉末)を圧粉することにより形成される。なお、Fe系粉末の表面は、渦電流損失を低減するために電気絶縁膜で覆われているとよい。非磁性体層112は非磁性材料で形成される。非磁性体層112を構成する非磁性材料は電気絶縁性であるのがよい。例えば、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)、樹脂、樹脂を混合したセラミックス、あるいは電気絶縁膜をコーティングした非磁性金属粉末の圧粉体で非磁性体層112を構成することができる。本実施形態では、非磁性体層112は、非磁性材料の粉末を圧粉することにより形成される。
【0019】
図3は、磁性体層111と非磁性体層112とを交互に積層させてなる積層部分である円柱状コアブロック11の製造工程を示す図である。円柱状コアブロック11を製造するために、まず、図3(a)に示すように、円柱状のキャビティCAが形成された金型の前記キャビティCA内に、磁性体層111を形成するための原料粉末(磁性体原料粉末)Sを充填する。次いで、図3(b)に示すように、キャビティCA内に充填されている磁性体原料粉末SをパンチPで加圧することにより、磁性体の圧粉体からなる磁性体層111を成形する(磁性体層形成工程)。次に、パンチPをキャビティCA内から引き上げ、その後、図3(c)に示すようにキャビティCA内に成形された磁性体層111上に非磁性体層112を形成するための原料粉末(非磁性体原料粉末)Tを充填する。その後、図3(d)に示すようにキャビティCA内に充填されている非磁性体原料粉末TをパンチPで加圧することにより非磁性体の圧粉体からなる非磁性体層112を磁性体層111上に成形する(非磁性体層形成工程)。さらに、図3(e)〜図3(h)に示すように磁性体層形成工程と非磁性体層形成工程とを交互に同一のキャビティCA内で繰り返し実施することにより、磁性体層111と非磁性体層112とが交互に積層された円柱状コアブロック11が成形される。
【0020】
このように同一のキャビティ内で交互に磁性体原料粉末Sと非磁性体原料粉末Tを圧粉することにより、接着材などを用いることなく磁性体層111と非磁性体層112とを接合することができる。なお、円柱状コアブロック11と連結コアブロック12は、例えば接着材等を介して接合される。
【0021】
また、円柱状コアブロック11の外周に巻回されるコイル20の材質は、本実施形態では銅である。コイル20は、円柱状コアブロック11の特に非磁性体層112が積層されている部分(ギャップが形成される部分)に巻回される。
【0022】
コイル20に通電すると、コア10の長手方向に沿って閉磁路が形成される。円柱状コアブロック11の磁性体層111と非磁性体層112との積層方向は、円柱状コアブロック11内の磁路方向と平行(同じ)である。つまり、磁性体層111と非磁性体層112とが磁路方向に沿って積層されている。非磁性体層112がギャップを構成する。ギャップを構成する非磁性体層112は、磁路方向(積層方向)に対して垂直に面するように複数個設けられる。また、一つの非磁性体層112の厚さ(積層方向における長さ)が、ギャップの幅(磁路方向における長さ)を表すギャップ長Igに相当する。なお、コア10の磁路長lは、コア10の中心を通る磁束の長さにより表わされる。
【0023】
コアにギャップが形成されている場合、コイルへの通電時にギャップの形成位置にて磁束が磁路方向に垂直な方向に膨らむ。膨らんだ磁束がコイルに接触した場合(鎖交した場合)、その磁束を回収することができない。したがって、コイルがギャップの形成位置で磁束に接触しないように、ギャップの形成位置で膨らむ磁束の大きさ(本明細書ではこの大きさを漏れ磁束の大きさMと定義する)を考慮して円柱状コアブロック11の外周にコイル20が巻回される。
【0024】
このような構成のリアクトル1は、例えばDC/DCコンバータ内の昇圧チョッパ回路に組み込まれる。図4に昇圧チョッパ回路を示す。図4(a)に示すように、昇圧チョッパ回路SC内に符号Lで示されるリアクトルが組み込まれている。図4(b)は昇圧チョッパ回路SC内のスイッチング素子TrがON状態であるときに直流電源Eから流れる電流の経路を示し、図4(c)はスイッチング素子TrがOFF状態であるときに直流電源Eから流れる電流の経路を示す。
【0025】
図5は、スイッチング素子TrのON/OFF動作に伴う昇圧チョッパ回路内に流れる電流の変化状態および印加される電圧の変化状態を表すグラフである。図5(a)はスイッチング素子TrのON/OFF状態を示すグラフ、図5(b)は入力電圧Vinと出力電圧Voutの大きさを示すグラフ、図5(c)はスイッチング素子Trの両端電圧V1の変化を示すグラフ、図5(d)はリアクトルLの両端電圧VLの変化を示すグラフ、図5(e)はリアクトルLに流れる電流iLの変化を示すグラフ、図5(f)はスイッチング素子Trに流れる電流iTrの変化を示すグラフ、図5(g)は昇圧チョッパ回路SC内のダイオードDに流れる電流iDの変化を示すグラフ、図5(h)は昇圧チョッパ回路SC内のコンデンサCに流れる電流の変化を示すグラフである。各グラフの横軸は時間tである。図5に示す各電流および各電圧の変化の特性についての具体的な説明は周知であるので省略する。
【0026】
昇圧チョッパ回路SC内のスイッチング素子TrがON状態であるときに、図4(b)に示すように直流電源EはリアクトルLを通じて短絡される。このときリアクトルLにエネルギーが蓄積される。また、スイッチング素子TrがOFF状態であるときに、図4(c)に示すように抵抗素子R側に出力電圧Voutが印加される。このときリアクトルLに蓄えられたエネルギーが入力電圧Vinに加算されるため、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも大きくなる。このようにして入力電圧Vinが昇圧される。
【0027】
リアクトルLに流れる電流iLは図5(e)に示すように、スイッチング素子TrがON状態であるときに増加しOFF状態であるときに減少する。図5(e)に示されるようなリアクトルLの特性、つまり電流の変化勾配の大きさを表すインダクタンスは、リアクトルLに流れる電流の大きさによって変化しない方が良い。すなわち、理想的なリアクトルは、電流の大きさに係わらずインダクタンスが変化しない理想的な直流重畳特性を有する。
【0028】
本実施形態においては、円柱状コアブロック11の直径Dに対するギャップ長Ig(非磁性体層112の厚さ)の比率R(=Ig/D)が0.8%〜5%の範囲内であるように、ギャップ長Igが調整されている。また、複数のギャップが存在する場合、磁気飽和が生じないように、各ギャップ長Igの総和が設定され、且つ各ギャップ長Igおよびギャップの形成数(個数)が調整されている。このため、本実施形態のリアクトル1の直流重畳特性は、従来のリアクトルの直流重畳特性と比較して、理想的な直流重畳特性に近づくように改善されている。
【0029】
(実験例)
円柱状コアブロック11の直径Dに対するギャップ長Igの比率R(=Ig/D)と直流重畳特性との関係を調査するために、ギャップ長Igを種々変化させた複数のリアクトルを作製し、それぞれのリアクトルについて、リアクトルに流れる電流の大きさが100Aであるときに得られるリアクトルのインダクタンスL1と200Aであるときに得られるリアクトルのインダクタンスL2を求め、それらの差ΔL(L2−L1)の変化率L*(=ΔL/L1)を計算した。リアクトルが理想的な直流重畳特性を持つ場合、変化率L*が0である。変化率L*が小さいほど直流重畳特性が理想的な直流重畳特性に近づく。また、ギャップの形成位置における漏れ磁束の大きさMを計算した。ここで、漏れ磁束の大きさMは、円柱状コアブロック11(非磁性体層112)の外周からの磁束のはみ出し量を表す。なお、コイルのターン数は60、磁路長は215.64mm、円柱状コアブロックの直径Dは28.32mmである。また、ギャップ長の総和が各作製したリアクトル間で等しくなるように、ギャップの形成数を調整した。各実験条件および実験結果を表1に示す。表1では、比率R(=Ig/D)および変化量L*(=ΔL/L1)が百分率で表わされている。
【表1】

【0030】
図6は比率R(=Ig/D)に対する変化率L*(=ΔL/L1)の変化を表すグラフ、図7は比率R(=Ig/D)に対する漏れ磁束の大きさMの変化を表すグラフである。図6からわかるように、変化率L*を20%以下に抑えるためには、比率Rが5%以下であるのが良い。ただし、比率Rが0.8%未満であると変化率L*が非常に大きい。これは、ギャップ長がコアの径に対して短すぎる場合、ギャップとしての機能を果たさなくなり、電流の僅かな増加で磁気飽和が生じるためであると推察される。したがって、比率Rは0.8%以上であるのがよい。すなわち、比率Rが0.8%〜5%の範囲内であるようにギャップ長Igを調整することによって、直流重畳特性を理想的な直流重畳特性に近づけることができる。なお、リアクトルに流す電流を50A、300A、400A、500Aに変更して同様にインダクタンスを求め、変化量L*を計算したが、やはり上記の場合と同様の結果、つまり比率Rが0.8%〜5%の範囲で変化率L*が20%以下に抑えられるという結果が得られた。
【0031】
また、図7からわかるように、比率Rが1.5%以下であると、ギャップでの漏れ磁束の大きさMを小さくすることができる。上述したように漏れ磁束がコイルに鎖交した場合にその漏れ磁束を回収することができないので、漏れ磁束にコイルが接触しないように、コイルがコアに巻回される。したがって、漏れ磁束の大きさが小さいほどコイルの径を小さくすることができ、その結果、巻き線使用量を低減することができる。本例によれば、比率Rが1.5%以下であれば、漏れ磁束の大きさMが急激に小さくなる。すなわち、比率Rが1.5%以下であれば巻き線使用量を大幅に低減することができる。さらに、比率Rが0.8%〜1.5%の範囲内であるようにギャップ長が調整されることによって、直流重畳特性が改善され、且つ巻き線使用量が大幅に低減されたリアクトルを提供することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では円柱状コアブロック11にギャップを形成した例を示したが、ギャップが形成されるコアの形状は円柱状に限定されない。例えば角柱状でもよい。ギャップが形成されるコアの断面形状が非円形である場合、代表径を径Dとして比率R(=Ig/D)を計算すればよい。この場合、例えばそのコアの断面積に等しい断面積を有する円の径を代表径とすることもできる。また、上記実施形態では、リアクトルをDC/DCコンバータの昇圧チョッパ回路に利用する例について説明したが、リアクトルの電気特性を利用する部品であれば、どのような部品にも本発明のリアクトルを適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…リアクトル、10…コア、11…円柱状コアブロック(積層部分)、111…磁性体層、112…非磁性体層、12…連結コアブロック、20…コイル、D…円柱状コアブロックの直径、Ig…ギャップ長、L*(=ΔL/L1)…変化率、R(=Ig/D)…比率、M…漏れ磁束の大きさ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体層とギャップとしての非磁性体層とが磁路方向に積層された積層部分を有するコアと、
前記積層部分に巻回されたコイルと、を備えたリアクトルであって、
前記積層部分の径に対する前記非磁性体層の厚さを表すギャップ長の比率が5%以下である、リアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載のリアクトルにおいて、
前記比率が0.8%以上である、リアクトル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリアクトルにおいて、
前記比率が1.5%以下である、リアクトル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリアクトルにおいて、
前記磁性体層は磁性体粉末を圧粉成形することにより形成され、非磁性体層は前記圧粉成形された前記磁性体層上で非磁性体粉末を圧粉成形することにより形成される、リアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115157(P2013−115157A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258417(P2011−258417)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)