説明

リザ−ブ機能付蓄電池

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリザ−ブ機能付蓄電池に関するもので、特に自動車用蓄電池の信頼性、安全性の向上を計らんとするものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車用蓄電池は、図1に示すように、6セル直列に接続して電圧12Vとして使用されるのが一般的である。自動車における蓄電池の役割はエンジン始動、点火および各種電気装置への電力供給および点灯である。これらの内、エンジンの始動に電力供給できるのは蓄電池のみであり、しかもエンジン回転に大電力を必要とするので一定値以上の電流と電圧が、又点灯には高電圧が、要求される。
【0003】ところが、蓄電池には使用期間の経過と共に劣化する特性があり、ある時点でエンジン始動が出来なくなるという問題がある。蓄電池の劣化は、脱落した活物質やセパレ−タ破損による蓄電池内部短絡又は劣化による機能低下と低温による影響の組合せなどによる電流、電圧の低下により起きるものである。また、ランプの切り忘れや、車のキ−の切り忘れにより駐車中の放電、いわゆるバッテリ上りでも同様である。いずれにしても、車のドライバ−にとっては車のエンジンがある時突然からなくなってしまうということになる。このような事が起る時と、場所によっては車の使用者だけでなく周囲の人々にも危険および損害をもたらすことになる。
【0004】これを改善するために、図2に示すように、主蓄電池11に副蓄電池13を、ダイオ−ド15又はダイオ−ド15と電気抵抗16とを直列に接続したものを並列接続したスイッチ17を介して、並列に接続し、常時はダイオ−ド14を通してトリクル充電をしておき、主蓄電池11が劣化しエンジンが始動できなくなった時に、スイッチ17をオンにして副蓄電池13を主電池群11に並列接続してエンジン始動ができるようにした蓄電池、いわゆるリザ−ブ機能付蓄電池が一部では使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記蓄電池は、常時には使用しない副蓄電池13が付加されているため、体積や重量が大きくなる。逆の見方をすると、体積や重量の制限の下では、副蓄電池13が付加された分だけ主蓄電池11が小さくなる。普通の使用中は主蓄電池11だけが充放電されるので、エネルギ−密度、出力密度の低い蓄電池として全体の蓄電池を使用することになる。これは蓄電池劣化の促進にもバッテリ−上り促進にもつながる。
【0006】この発明は上記のような欠点を改善するために成されたものであり、その目的とするところは、限られた体積および重量の中で、できるだけ高性能を備え、しかも蓄電池の寿命末のッテリ−上り時の突然のエンジン始動不能を防ぐリザ−ブ機能を付加し、総合的に信頼性のある蓄電池を提供せんとするにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、単セル又は複数セルを直列接続した第1の蓄電池群と、第1の蓄電池群を構成するセルより容量の小さいセルを単独又は複数個直列接した第2の蓄電池群とを直列に接続してなる主蓄電池群と、第1の蓄電池群を構成するセルより容量の小さいセルを第2の蓄電池群と同じセル数直列に接続した第3の蓄電池群であって、スイッチを介して第2の蓄電池群に並列接続された副蓄電池群と、第3の蓄電池群の正極端子と、第1の蓄電池群のどちらか一方の端またはいずれかの中間点との間に、第3の蓄電池群が充電されるように接続されたダイオ−ド又はダイオ−ドと抵抗とが直列接続されたものとを備えてなり、第3の蓄電池群は、スイッチオフ時には主蓄電池群の充電時にのみ充電され主蓄電池群の放電時は充放電無し、スイッチオン時には第2の蓄電池群と並列接続され充放電されるようにした、リザ−ブ機能付蓄電池、とすることにより上記課題を解決するものである。
【0008】
【作用】通常は、スイッチオフ状態にして、第1の蓄電池群と第2の蓄電池群とよりなる主蓄電池が使用される。第2の蓄電池群のセル容量は第1の蓄電池群のセル容量よりも小であり、通常主蓄電池の寿命は第2の蓄電池群によりきまる。この様な状況において、スイッチオンとすることにより、第2の蓄電池群と第3の蓄電池群とを並列接続し、第2の蓄電池群の容量不足を第3の蓄電池群が補うことにより、所定の電圧を有する蓄電池として、使用を続けることができる。なお、第3の蓄電池群は、ダイオ−ドを通して、自己放電を補う程度の補充電のみが行われる。
【0009】
【実施例】本発明を、実施例を示す図面で詳述する。図3R>3、図4に例示するように、単セル又は複数セルを直列接続した第1の蓄電池群11(以下、蓄電池群11)と、蓄電池群11を構成するセルより容量の小さいセルを単独又は複数個直列接続した第2の蓄電池群12(以下、蓄電池群12)とを直列に接続して主電池群を構成し、さらに、蓄電池群11を構成するセルより容量の小さいセルを蓄電池群12と同セル数直列に接続した第3の蓄電池群13(以下、蓄電池群13)を、極性が同方向に向くように、スイッチ17を介して電池群12に並列接続し、さらに蓄電池13を充電するために、電池群11の電池群12側の1セル目と2セル目との間から導線を出し、ダイオ−ド15と電気抵抗16とを直列にして電池群13とスイッチ14との間に接続したセル群構成の蓄電池1としたものである。図3は5セルの蓄電池群11、1セルの蓄電池群12、1セルの蓄電池群13の場合を示し、図4は2セルの蓄電池群11、4セルの蓄電池群12、4セルの蓄電池群13の場合を示す。2は充電回路、3はスタ−タ、4は負荷である。
【0010】図3の場合、蓄電池群11のセル容量50Ah、蓄電池群12のセルを33Ah,蓄電池群13を33Ah、電気抵抗16の抵抗値を10〜20Ωとすると、スイッチオフでは蓄電池群11と蓄電池群12とが同じ電流で放電し、充電期間初期は、蓄電池群12と蓄電池群11の内の1セル(第5セル)との直列の電圧低いので、抵抗16により制限されて蓄電池群13にはほとんど充電電流が流れず、蓄電池群11と蓄電池群12とにほぼ同じ充電電流が流れると考えてよい。そして蓄電池群12と蓄電池群11の内の1セルが満充電状態に近づくと、電圧が上り、ダイオード15と抵抗16とを通して蓄電池群13に充電電流が流れ始める。その後蓄電池群11が満充電になれば、全体を車両側の充電装置によって決っている電圧、一般に14.3V、でフロート充電される。蓄電池群11の第1から第4セルの電流は蓄電池群11の第5セルと蓄電池群12との直列接続と、蓄電池群13とに分割して流れる。蓄電池群13は、直列の抵抗16とダイオード15との順方向ドロップにより、蓄電池群12と蓄電池群11の内の1セルとの直列より少し低い充電電圧で、必要最小限のフロート充電が行われる。蓄電池使用中はこのような状態で全体の充放電が行われるので、蓄電池群13は自己放電を補う程度の補充電のみが行われ、過充電による減液がほとんどなく、常に満充電完全な状態に保たれる。この蓄電池群13へ流れる充電電流は、電気量としては蓄電池群11の内の4セルの充電電流に対して非常に小さいので、蓄電池群11と蓄電池群12との充電電流の差は実用上無視でき、常時は蓄電池群11と蓄電池群12とが充放電していると考えてよい。したがって、蓄電池群11に比べて蓄電池群12に対する放電深度は深く、過充電度(容量当りの過充電量)も大きくなり、蓄電池群12の方が使用による劣化が速くなり短寿命となる。また、自動車の負荷の切り忘れによる放電に際しては、容量の小さい蓄電池群12が全放電し、更には逆充電されるので、蓄電池群11の方は容量を一部残した状態で留る。いずれにしても、蓄電池の不具合時には蓄電池群1が駄目になり、蓄電池群11は生きている状態である。そこへスイッチオンして蓄電池群12に並列に蓄電池群13接続し、蓄電池群12の不足を蓄電池群13が補って、その後の使用が続けられる。この場合、蓄電池群11の第5セルとダイオード15と抵抗16とスイッチ17とで閉ループが形成され、そこに蓄電池群11の第5セルから電流が流れる。この電流は、蓄電池群11の第5セルの放電電流の増加につながるが、抵抗16により非常に小さい値に制限されるので実用上無視できる。
【0011】図4は、図3の場合に比べ、全体の直列セル数が同じとして蓄電池群11のセル数を減らし、蓄電池群12のセル数、それに応じて蓄電池群13のセル数を増した例である。本発明の蓄電池では蓄電池群11のセルが駄目になればスイッチオンによる蓄電池群13の接続の効果はなくなるので、バッテリ−上りの原因が蓄電池群11のセルであってはならない。蓄電池群11のセルを減らし、蓄電池群12のセルを増すことは、バッテリ−上りの原因が蓄電池群11のセルによる可能性を減らし、蓄電池群12のセルによる可能性を高めるためである。一方、蓄電池群11のセルを減らし、蓄電池群12および蓄電池群13のセルを増やすことは、上述のように電池全体の容積が大きくなり、常時の特性低下につながる。したがって、蓄電池群11、蓄電池群12、蓄電池群13のセル数の決定は、蓄電池全体に対する信頼性、特性、容積など各要求項目の重要度順序によって決まる。
【0012】以上の説明では、蓄電池群13がダイオ−ド15と電気抵抗16とを介して、蓄電池群12と蓄電池群11の内の1セルとの直列からフロ−ト充電される例を説明したが、蓄電池群12および蓄電池群13が各々2セル以上の場合は、図5に2セルの場合の一例を示すように、ダイオ−ド15と電気抵抗16をスイッチ14と並列にすることもできる。さらに蓄電池群13の内部抵抗による電圧上昇とダイオ−ド15の順方向電圧の和を適切な値になるよう選べば、電気抵抗16を略くことができる。
【0013】12Vの自動車用電池の例で説明をしたが、これに限るものではなく、電圧の違い、用途が異っても同様のことが成り立つ。
【0014】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、使用終期、バッテリ−上り時のリザ−ブ機能を、スイッチとダイオ−ドのみによる簡単な電気回路図により、コンパクトに付加した信頼性の高い蓄電池を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の自動車の蓄電池回路を示す図である。
【図2】従来のリザ−ブ機能付蓄電池の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示す図である。
【符号の説明】
11 第1の蓄電池群
12 第2の蓄電池群
13 第3の蓄電池群
14 ダイオ−ド
15 抵抗
17 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 単セル又は複数セルを直列接続した第1の蓄電池群(11)と、第1の蓄電池群(11)を構成するセルより容量の小さいセルを単独又は複数個直列接続した第2の蓄電池群(12)とを直列に接続してなる主蓄電池群と、第1の蓄電池群(11)を構成するセルより容量の小さいセルを第2の電池群(12)と同じセル数直列に接続した第3の蓄電池群(13)であって、スイッチ(17)を介して第2の蓄電池群(12)に並列接続された副蓄電池群と、第3の蓄電池群(13)の正極端子と、第1の蓄電池群(11)のどちらか一方の端またはいずれかの中間点との間に、第3の蓄電池群(13)が充電されるように接続されたダイオード(14)又はダイオード(14)と抵抗(16)とを直列接続したものとを備えてなり、第3の蓄電池群(13)は、スイッチ(17)オフ時には、主蓄電池群の充電時にのみ充電され、主蓄電池群の放電時は充放電無し、スイッチ(17)オン時には、第2の蓄電池群(12)と並列接続され充放電されるようにした、リザーブ機能付蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3118717号(P3118717)
【登録日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【発行日】平成12年12月18日(2000.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−282272
【出願日】平成3年10月1日(1991.10.1)
【公開番号】特開平5−94839
【公開日】平成5年4月16日(1993.4.16)
【審査請求日】平成10年9月21日(1998.9.21)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【参考文献】
【文献】特開 平4−39872(JP,A)
【文献】特開 平3−208264(JP,A)
【文献】実開 平4−78761(JP,U)
【文献】英国特許出願公開2136224(GB,A)
【文献】英国特許出願公開2205697(GB,A)