説明

リチウム回収方法

【課題】リチウム含有固体からリチウムのみを選択的に高収率で、更に廃棄物を最小限に抑えることにより、高い経済性で回収する方法を提供する。
【解決手段】酸に2価以上の金属の塩が溶解している酸性浸出液でリチウム含有固体からリチウムを浸出して、リチウム回収溶液を得る工程を含む、リチウムイオン電池に由来するリチウム含有固体からリチウムを回収する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムは、リチウム二次電池の電苛移動媒体として使用されるアルカリ金属である。リチウム二次電池は、軽量で高電気容量の電池としてよく知られており、各種携帯機器用二次電池として大量に使用されている。また、近年、炭酸ガス排出規制への対応の為に開発されているハイブリッドカー及び電気自動車にもリチウム二次電池が使用されている。このリチウム二次電池のリサイクル技術は、これまでにも、多数開発されてきているが、多くの場合、回収有価物の市場価格よりリサイクルコストが上回り、より低コストのリチウム回収技術の開発が切望されている。
【0003】
これまでに提案されてきた技術として、特許第4581553号公報(引用文献1)には溶媒抽出を繰り返すことによりリチウム二次電池からリチウムを回収する方法が開示されている。この方法では、有機溶剤を用いるため、設備を防爆仕様にする必要があり、更に有機溶剤の臭気対策などにも費用がかかり、抽出操作を何度も繰り返さなくてはならないため、工程が長くなり、コストが嵩んでいた。
【0004】
また、特許第4144820号公報(引用文献2)には、正極活物質を全て酸で溶解してリチウム塩を加える事により、正極活物質原料へとリサイクルする技術が開示されている。この方法は比較的低コストでリチウムをリサイクル出来る方法である。しかし従来は、リチウムイオン二次電池の正極活物質はコバルト酸リチウムが使用されていたが、近年、車載用のリチウムイオン二次電池の正極活物質は、安全性及びコスト等の理由からコバルト酸リチウムのほかに、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等多様化してきた。この為、正極活物質原料としてリサイクルするためには、コバルト系、ニッケル系、マンガン系、三元系等の多様な正極材料毎に単一の種類の正極活物質のリチウム二次電池を選別して夫々個別に処理しなければならなくなった。
【0005】
更に、特許第3675392号公報(引用文献3)には、リチウムイオン電池の焼き付け及び篩い分けにより得た金属及び金属酸化物を含む炭灰から塩酸水溶液で金属を浸出し、pHを調整しながら電解することによって金属銅、金属コバルトを回収し、更にpHを上げる事により鉄とアルミを水酸化物として沈殿させ、最後にリチウムを炭酸リチウムの沈殿として回収する技術が開示されている。この場合、鉄、アルミ等の市場価格の低い金属まで回収するため経済性が悪化する事が懸念される。
【0006】
また、リチウムと遷移金属を含有する固体から、リチウムを選択的に浸出する技術として、特許4492222号公報(引用文献4)にはシュウ酸を用いる方法が提案されている。しかしながら、シュウ酸は比較的高価な酸で、浸出酸として回収する事が困難なため、浸出酸のコストが嵩んでしまう事が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4581553号公報
【特許文献2】特許第4144820号公報
【特許文献3】特許第3675392号公報
【特許文献4】特許第4492222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、リチウム含有固体からリチウムのみを選択的に高収率で、更に廃棄物を最小限に抑えることにより、高い経済性で回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の通りである。
【0010】
[1] 以下の工程:
酸に2価以上の金属の塩が溶解している酸性浸出液でリチウム含有固体からリチウムを浸出して、リチウム回収溶液を得る工程
を含む、リチウムイオン電池に由来するリチウム含有固体からリチウムを回収する方法。
【0011】
[2] 以下の工程:
一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置内で前記リチウム回収溶液からリチウムを脱塩して、脱塩液を得る脱塩工程、及び
該脱塩液を前記酸性浸出液として再利用する脱塩液再利用工程
をさらに含む、[1]に記載の方法。
【0012】
[3] 前記酸性浸出液中の前記2価以上の金属の塩の濃度は、前記2価以上の金属がコバルトである場合には7000ppm以上40000ppm以下であり、前記2価以上の金属がニッケルである場合には7000ppm以上50000ppm以下であり、前記2価以上の金属がマンガンである場合には7000ppm以上140000ppm以下であり、そして前記2価以上の金属が鉄である場合には7000ppm以上84000ppm以下である、[1]又は[2]に記載の方法。
【0013】
[4] リチウム含有固体から酸でリチウムを浸出することによりリチウム回収溶液を得て、一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置内で該リチウム回収溶液からリチウムを脱塩する脱塩工程において、該リチウム回収溶液に2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物、及び/又は還元剤を添加し、該リチウム回収溶液のpHを2〜6に調整して、電気透析を行なうことを特徴とする、リチウムの回収方法。
【0014】
[5] 前記2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物は、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄及び酸化マンガンから選ばれる少なくとも一つの金属化合物である、[4]に記載の方法。
【0015】
[6] 前記還元剤は過酸化水素又はシュウ酸を含む、[4]に記載の方法。
【0016】
[7] 前記リチウム回収溶液を電気透析により精製して、該精製されたリチウム溶液から、電解により水酸化リチウム及び酸を回収する、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
【0017】
[8] 前記精製されたリチウム溶液に、水酸化リチウムを添加して該溶液のpHを7〜13に調整して、溶存する遷移金属を水酸化物として沈殿させ、該溶液から該水酸化物を分離した後、該溶液中のリチウム以外の金属成分をイオン交換樹脂により低減させ、次いで電解により水酸化リチウム及び酸を回収する、[7]に記載の方法。
【0018】
[9] 前記酸は硫酸である、[7]又は[8]に記載の方法。
【0019】
[10] 陽極室、陰極室及び該陽極室と該陰極室に挟まれた塩室を含み、かつ該陽極室と該塩室は陰イオン交換膜で隔絶されており、かつ該塩室と該陰極室は陽イオン交換膜で隔絶されている電解装置を用いて、該陰極室に水酸化リチウムを生成させ、そして該陽極室に硫酸を生成させる、[9]に記載の方法。
【0020】
[11] 前記水酸化リチウムを用いて、前記精製されたリチウム溶液のpHを7〜13に調整し、そして前記硫酸を前記イオン交換樹脂の再生に用いる、[9]又は[10]に記載の方法。
【0021】
[12] 前記リチウム含有固体は、リチウムイオン電池若しくはその処理物、又はリチウムイオン電池を製造する過程で排出された固体である、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
【0022】
[13] 前記2価以上の金属は、コバルト、ニッケル、マンガン及び/又は鉄である、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リチウム含有固体からリチウムのみを選択的に高い収率で、更に廃棄物を最小限に抑えることにより、高い経済性で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のアニオン交換膜およびカチオン交換膜から成る電解装置。
【図2】カチオン交換膜から成る一般的な電解装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、2価以上の金属の塩、水酸化物及び/又は酸化物などを用いて、リチウムの浸出、脱塩及び/又は電気透析などを適切に行なう方法に関する。
【0026】
<リチウムの回収>
本発明のリチウム回収方法においては、リチウムイオン電池に由来するリチウム含有固体からリチウムが回収される。本方法は、酸に2価以上の金属塩が溶解している酸性浸出液でリチウム含有固体からリチウムを浸出して、リチウム回収溶液を得る工程を含む。
【0027】
リチウム含有固体としては、リチウムイオン電池若しくはその処理物、又はリチウムイオン電池を製造する過程で排出された固体が挙げられる。リチウム含有固体としては、リチウムイオン二次電池の正極活物質等が、リチウム含有率の高い粒子を含む為に好ましい。
【0028】
使用により劣化したリチウムイオン電池は、通常300℃以上の温度で焙焼され、結着剤等の有機材料を除去され、その後に破砕される。次に、粉砕物の篩い分け又は磁力に拠る選別などにより、銅集電体又はニッケル電極等と、リチウムを多く含有する正極活物質とが分離されることができる。
【0029】
また、本方法によれば、リチウムイオン電池正極活物質製造工程で排出された規格外品、又は劣化したリチウムイオン電池から回収した正極活物質などから、リチウムを回収できる。
【0030】
リチウムイオン電池の正極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、又はコバルト、ニッケル及びマンガンを含有する三元系、又はリン酸鉄リチウム等の多くの種類が挙げられる。
【0031】
本方法によれば、上記のような多様なリチウム含有固体からリチウムを高い収率で回収できる。
【0032】
本発明において、リチウムを浸出するときに、2価以上の金属イオンを含有している酸性水溶液を用いる(実施例1)と、2価以上の金属イオンを含有しない酸のみの場合(比較例2)より少ない酸でリチウムを浸出できることを確認した。これにより、浸出に使用する酸の量を抑制する事が出来、回収コストを低減できる。
【0033】
金属イオンの価数については、コバルト、ニッケル及び鉄では2価と3価があり、マンガンでは2価から最大7価まである。本発明においては、金属イオンの価数は、2価以上7価以下が好ましく、2価以上4価以下がより好ましく、2価又は3価がさらに好ましい。
【0034】
リチウム回収に使用される酸性浸出液は酸性水溶液でよい。また、2価以上の金属塩は、2価以上の金属としてコバルト、ニッケル、マンガン及び/又は鉄を含む。また、酸性浸出液を形成している酸は、無機酸又は有機酸のいずれでもよい。無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などのカルボン酸が挙げられる。コスト面、作業環境面、及び浸出液からの金属の回収の容易性を考慮すると、硫酸を使用することが好ましい。
【0035】
リチウムを回収するときに、酸に2価以上の金属塩が溶解している酸性浸出液を用いてリチウム含有固体からリチウムを浸出することにより、リチウム回収溶液が得られる。酸に2価以上の金属塩が溶解している酸性浸出液を用いることにより、リチウム含有固体に含まれる2価以上の金属イオンになり得る金属の浸出を抑制しながら、リチウムを高い回収率で浸出させることができると分かった(実施例2を参照)。また、それにより、浸出に必要な酸の量を抑制できる。
【0036】
リチウムを回収するときに、酸性浸出液の液層へ浸出されなかった2価以上の金属イオンになり得る金属は、市場価格の高価なコバルト、ニッケル等を多く含む場合は、別の回収工程へ回してよいし、又は鉄、マンガン等の比較的安価な金属を多く含む場合は、粗鋼原料へ回してもよい。
【0037】
浸出のときの酸性浸出液中の2価以上の金属塩の濃度は、金属種により異なるが、硫酸塩の場合、コバルトは7000ppm以上40000ppm以下であり、ニッケルは7000ppm以上50000ppm以下であり、マンガンは7000ppm以上140000ppm以下であり、そして鉄は7000ppm以上84000ppm以下であることが好ましい。2価以上の金属塩の濃度が前記の範囲内であれば、リチウムが100%浸出し易い(実施例3及び比較例3を参照)。
【0038】
2価以上の金属イオンが溶存する酸性水溶液で浸出すると、リチウムを効率的に浸出できる理由は、以下のように推定される。即ち、固体中から金属が水溶液中へ浸出される場合は、金属イオンが水和により水溶液中で安定化される反応が非平衡状態で進行するが、浸出の際に水溶液中に既に金属イオンが存在している場合、同種の金属の浸出は抑制され、該金属イオンが存在しない場合より浸出の速度が遅くなる。したがって、リチウムイオンは水溶液中に存在しないか、又はその濃度が低いために、水溶液中に既に存在している金属イオンの影響を受けないので、リチウムが浸出し易くなっていると考えられる。
【0039】
<脱塩液の再利用>
本発明のリチウム回収方法においては、リチウム回収溶液からリチウムを脱塩することにより得られた脱塩液を酸性浸出液として再利用することが好ましい。したがって、本方法は、リチウム回収液を得る工程中又はリチウム回収液を得る工程の前後で、一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置内でリチウム回収溶液からリチウムを脱塩して、脱塩液を得る脱塩工程、及び該脱塩液を酸性浸出液として浸出液提供工程に再利用する脱塩液再利用工程をさらに含むことが好ましい。
【0040】
脱塩工程では、リチウムを浸出した浸出液(リチウム回収溶液)から、一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置によりリチウムが脱塩される。したがって、リチウム回収溶液に含まれる金属は、2価以上の金属イオンとリチウムとに分離される。
【0041】
電気透析装置は、脱塩と濃縮を同時に行なうことができる装置であり、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を備える。また、電気透析は、脱塩と濃縮を同時に行なう操作であり、そして陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を交互に並べて多室電気透析槽を形成し、流体を供給しながら直流電圧を通じて、電位差により陽イオンを陰極側に、陰イオンを陽極側に移動させることにより脱塩液と濃縮液(例えば、リチウム濃縮液)を得ることができる。
【0042】
脱塩工程では、電気透析装置の陽イオン交換膜として、一価選択透過性陽イオン交換膜を使用することが好ましい。一価選択透過性陽イオン交換膜は、1価の陽イオンを選択的に透過させる交換膜であり、リチウム回収溶液に含まれる2価以上の金属イオンとリチウムイオン(1価)とを分離するために有効である。
【0043】
脱塩工程において電気透析を行うときに、2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物、又は還元剤をリチウム回収溶液に添加することにより、リチウム回収溶液のpHを2.0以上6.0以下、好ましくは2.5以上6.0以下、さらに好ましくは2.5以上5.0以下に調整することにより、電気透析におけるリチウムの電流効率を向上させ、電気透析の電力コストを低減できる(実施例5を参照)。リチウム回収溶液のpHが2.0以上である場合、水素イオン濃度が低くなり、そして水素の移動による電力消費が減るので、電流効率が上昇する。また、リチウム回収溶液のpHが6.0以下である場合、2価以上の金属水酸化物は、析出することが困難になるだけでなく、イオン交換膜等へも付着することが困難になるので、電流効率が向上し、イオン交換膜の耐用寿命も延びる。
【0044】
2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物としては、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄、酸化マンガン等が挙げられる。
【0045】
また、リチウムを選択的に浸出した残渣には2価以上の金属の酸化物が含まれているが、この酸化物は、酸のみでは溶解されないので、還元剤を添加することにより還元されて溶解し易くなる。したがって、2価以上の金属が溶解することにより酸が消費されて、リチウム回収溶液のpHが増大する。還元剤としては、過酸化水素、シュウ酸などが好適に用いられる。
【0046】
なお、2価以上の金属水酸化物及び/又は2価以上の金属酸化物、又は還元剤の添加によりpHを調整するとき、2価以上の金属イオン濃度を増加させても、2価以上の金属イオンは、一価選択透過性陽イオン交換膜を透過しないため電流効率を低下させないが、アンモニア等の1価カチオンが添加される場合、一価選択透過性陽イオン交換膜を透過するため、リチウム濃縮の電流効率が低下することが分かった(比較例4を参照)。
【0047】
電気透析を行うときには、初期濃縮液に希薄リチウム塩を用いると、電気透析初期の電気抵抗が小さくなり、電流効率が上がるので好ましい。更に、初期の脱塩処理液に対する濃縮処理液の比率を小さくすることにより、リチウムの初期脱塩液濃度より終了時濃縮液濃度を高くする事が可能である。
【0048】
脱塩液は、リチウムが脱塩されており、かつ一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置により分離された2価以上の金属イオンを含む。脱塩液再利用工程では、電気透析により生成した脱塩液に酸を添加して、脱塩液のpHを0から1.0の範囲、好ましくはpH0〜0.5の範囲に調整することにより、酸性浸出液として用いることができる。脱塩液再利用工程におけるpH調整に使用される酸は、上記で説明したような酸でよい。脱塩液再利用工程により、前記脱塩液を廃液として処理する必要が無くなり、廃液処理費用を最小限に抑えることができる。
【0049】
一方、前記脱塩工程における電気透析により分離精製したリチウム濃縮溶液中には、一価選択透過陽イオン交換膜を抜けてきた2価以上の金属イオンが微量存在する。この微量の2価以上の金属イオンは、水酸化リチウムを回収する電解工程において、水酸化物として電解膜の表面又は内部に析出して電解の電流効率を下げるか、又は電解膜の寿命を縮める虞がある。
【0050】
脱塩工程中又は脱塩工程後に、この2価以上の金属イオンを微量含有するリチウム濃縮液(例えば、電気透析により精製されたリチウム溶液)に水酸化リチウムを添加することにより、濃縮液側へ漏れこんできた2価以上の金属イオンを水酸化物として析出させ、個液分離することが出来る。したがって、精製されたリチウム溶液に、水酸化リチウムを添加してpHを7〜13に調整して、溶存する遷移金属(例えば、前記2価以上の金属)を水酸化物として沈殿させ、該溶液から該水酸化物を分離した後、該溶液中のリチウム以外の金属成分をイオン交換樹脂により低減させ、次いで電解により水酸化リチウム及び硫酸を回収することが好ましい。
【0051】
リチウム濃縮液から2価以上の金属イオンを水酸化物として析出させるためのリチウム濃縮液のpHは7以上13以下、好ましくは8以上11以下である。このpH調整は、水酸化リチウムをリチウム濃縮液に添加することにより行われる。リチウム濃縮液のpHが7以上の場合では、2価以上の金属イオンが十分に析出して、後精製するための吸着剤が少量で済むので精製効率が良い。また、リチウム濃縮液のpHが13以下である場合では、2価以上の金属イオンの析出後に、水酸化リチウムが過剰に使用されないので、経済性が高い。また、このようにして分離された金属水酸化物は、電気透析を行うときのpH調整剤として用いる事が出来る。
【0052】
水酸化物を分離された前記精製されたリチウム溶液は、イオン交換樹脂又は活性炭等の吸着剤により更に精製されることができる。精製に用いる吸着剤としては、ポリアミン型キレート樹脂、アミドオキシム型キレート樹脂、アミノカルボン酸型キレート樹脂等のキレート型イオン交換樹脂が、高濃度のリチウム塩溶液中の2価以上の金属イオンを選択的に吸着するので好ましい。
【0053】
好ましいイオン交換樹脂としては、三菱化学株式会社製のダイヤイオンCR−20、及び住化ケムテックス株式会社製のスミキレートMC900、スミキレートMC850、スミキレートMC600等が挙げられる。
【0054】
上記のように精製されたリチウム溶液は、電解により水酸化リチウムと酸に分解され、そして水酸化リチウムが回収されることができる。電解により回収される酸は、上記で説明した酸でよく、特に硫酸であろう。
【0055】
酸性浸出液を形成する酸として硫酸を用いる場合には、電解を行う装置としては、陽極室、陰極室及び陽極室と陰極室に挟まれた塩室から成るか、又はこれらを含み、かつ陽極室と塩室は陰イオン交換膜で隔絶されており、かつ塩室と陰極室は陽イオン交換膜で隔絶されている電解装置(図1)を用いる事ができる。この装置を用いることにより、水酸化リチウムが陰極室に容易に生成し、そして硫酸が陽極室に容易に生成する。
【0056】
なお、酸性浸出液を形成する酸として硫酸を用いる場合に、図2に示すような陽極と陰極を陽イオン交換膜(カチオン交換膜)で隔絶した電解槽を用いると、電解により陽極室のpHが低下して電流効率が低下する懸念がある(比較例5を参照)。
【0057】
電解は0〜90℃の電解温度で行うことができる。
【0058】
電解のときの陰極としては、ニッケルのエキスパンドメタルに、触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を使用できる。また、陽極としては、チタンのエキスパンドメタルに、触媒としてルテニウム、イリジウム、チタンが塗布された電極を使用できる。
【0059】
電解に用いる陽イオン交換膜は、リチウムイオンを通過しうる膜であり、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基を少なくとも1種以上有する高分子から成る膜を使用できる。
【0060】
電解に用いる陰イオン交換膜は、第4級アンモニウム基等の強塩基性基を有する高分子から成る膜、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等の弱塩基性官能基を有する高分子から成る膜を使用できる。
【0061】
電解時に水酸化リチウムと同時に生成した酸(例えば、硫酸など)は、精製に使用したイオン交換樹脂の再生に用いる事が出来る。イオン交換樹脂の再生に用いる場合、水及び/又は高濃度酸により所望の濃度に調整して用いる事が出来る。
【0062】
更に、電解により生成した酸又はイオン交換樹脂の再生に用いた酸は、酸性浸出液の調整に用いる事が出来る。
【0063】
また、電解により、濃度が下がったリチウム塩溶液は、更に希釈するなどして濃度を調整して電気透析の初期濃縮液として利用できる。
【0064】
リチウム含有固体が、マンガン酸リチウムの場合もリン酸鉄リチウムの場合も同様に、優れた収率でリチウムを回収する事が出来る(実施例11から25を参照)。
【0065】
リチウム含有固体が、リチウムイオン2次電池を処理したものでも、本発明の回収システムで優れた収率でリチウムを回収できる(実施例26を参照)。
【0066】
以上のように、本発明によるリチウム回収システムは、リチウムイオン二次電池処理物等のリチウム含有固体からリチウムのみを選択的に高い収率で回収し、更に廃棄物を最小限に抑えることにより、環境に配慮しつつ高い経済性でリチウムを回収できる。
【実施例】
【0067】
次に、実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
【0068】
[分析]
・pH測定
HM−20P(東亜ディーケーケー社製)を用いて25℃で測定した。
・水溶液中の金属イオン濃度の分析
イオン濃度が1ppm以上の場合、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により測定した。
イオン濃度が1ppm未満の場合、ICP―質量分析法(MAS)により測定した。
・浸出率(%)
下記式:
浸出率(%)={(浸出処理後の回収液中の金属絶対量)/(固体中の金属絶対量)}
に従って算出した。
【0069】
[活物質が三元系の場合]
[実験例1] (初回の浸出)
2000mlの三角フラスコに1Mの硫酸(和光純薬(株)製)を1520g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに三元系活物質セルシードNMC(日本化学工業株式会社製)80gを投入し、3時間攪拌してリチウム並びにコバルト、ニッケル及びマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。
【0070】
<実施例1> (脱塩液による浸出)
実験例1の浸出液1000mlから、アニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液は1000mlの純水を用い、アニオン交換膜はネオセプタAMX((株)アストム製)、カチオン交換膜は1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。1200mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム3400ppm、コバルト500ppm、ニッケル510ppm、マンガン0.4ppmであり、800mlの脱塩液において、その金属イオンの組成はリチウム90ppm、コバルト6860ppm、ニッケル6940ppm、マンガン1ppmであった。
【0071】
次にこの脱塩液を用いて活物質から金属イオンを浸出した。まず脱塩液に硫酸を加えて、そのpHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに三元系活物質40gを投入し、3時間攪拌してリチウム並びにコバルト、ニッケル及びマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0072】
<実施例2> (塩の飽和溶液で浸出)
コバルト、ニッケル、及びマンガンの各硫酸塩が飽和濃度になるまで脱塩と浸出を繰り返した。このときの各金属イオンの濃度は、リチウム1000ppm、コバルト40000ppm、ニッケル50000ppm、マンガン70000ppmであった。浸出用の液にこの飽和溶液を用いること以外は実施例1と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0073】
<比較例1>
実験例1で作製した浸出液の金属イオン濃度を分析した。分析結果を表1に示す。
【0074】
<比較例2>
浸出用の液の硫酸濃度を0.4Mにすること以外は実験例1と同様にして活物質の金属イオンを浸出した。浸出液の金属イオン濃度を分析した結果を表1に示す。
【0075】
<実施例3> (塩濃度と浸出率1)
硫酸コバルト10%及び硫酸ニッケル10%を溶解した塩溶液1000mlに硫酸を加えて、そのpHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに三元系活物質40gを投入し、3時間攪拌してリチウム並びにコバルト、ニッケル及びマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0076】
<実施例4> (塩濃度と浸出率2)
硫酸コバルト2%及び硫酸ニッケル2%を溶解した塩溶液を用いること以外は実施例3と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0077】
<実施例5>(浸出後pH調整1)
1000mlの三角フラスコに1.5Mの硫酸を850g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに三元系活物質150gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよびコバルト、ニッケル、マンガンを浸出した。浸出液のpHを測定すると1.7で、金属イオン濃度はリチウム12400ppm、コバルト19700ppm、ニッケル19800ppm、マンガン1900ppmであった。これに水酸化ニッケル(和光純薬(株)製)を2.38g投入し、80℃で2時間攪拌したところ、pHは2.62となった。その後静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0078】
次にこの浸出液500mlについてアニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液として500mlの純水を用い、アニオン交換膜としてネオセプタAMX((株)アストム製)を用い、そしてカチオン交換膜として1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム10280ppm、コバルト1610ppm、ニッケル1770ppm、マンガン150ppmであり、このときの電流効率は76%であった。
【0079】
<実施例6>(浸出後pH調整2)
浸出後のpH調整に酸化マンガン(和光純薬(株)製)0.65gを使用すること以外は実施例5と同様にして、活物質から金属イオンを浸出してpH調整を実施した。調整後のpHは2.77であった。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0080】
次にこの浸出液500mlについて実施例5と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム10770ppm、コバルト1610ppm、ニッケル1620ppm、マンガン350ppmであり、このときの電流効率は80%であった。
【0081】
<実施例7>(浸出後pH調整3)
浸出後のpH調整に30%過酸化水素水(和光純薬(株)製)10gを使用すること以外は実施例5と同様にして、活物質から金属イオンを浸出してpH調整を実施した。調整後のpHは2.83であった。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0082】
次にこの浸出液500mlについて実施例5と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム11000ppm、コバルト1740ppm、ニッケル1780ppm、マンガン250ppmであり、このときの電流効率は85%であった。
【0083】
<比較例3>
実施例5と同様にして三元系活物質から金属イオンを浸出し、10%アンモニア水2.88gを添加してpH調整を行った。pHは2.66であった。
【0084】
次にこの浸出液500mlについて実施例5と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム10600ppm、コバルト1610ppm、ニッケル1620ppm、マンガン160ppmであり、このときの電流効率は45%であった。
【0085】
<実施例8>(イオン交換樹脂による精製1)
実施例5で得られた回収液500mlに2M水酸化リチウムを30.6ml加えて、そのpHを8として、遷移金属イオンを水酸化物として沈殿させた。沈殿をろ過した後のろ液の金属イオンの組成は、リチウム9250ppm、コバルト122ppm、ニッケル43ppm、マンガン4ppmであった。
【0086】
次にイオン交換樹脂によりさらに遷移金属を低濃度まで除去した。イオン交換樹脂スミキレートMC900(住化ケムテックス(株)製)530ccを蒸留水とともにカラムに充填し、10ml/分の速度で通液して遷移金属を除去した。精製後の金属イオンの組成は、リチウム9160ppm、コバルト0.5ppb未満、ニッケル5ppb未満、マンガン1ppb未満であった。
【0087】
<実施例9>(イオン交換樹脂による精製2)
pHを10として遷移金属イオンを沈殿させ、イオン交換樹脂にダイヤイオンCR20(三菱化学(株)製)を用いること以外は実施例8と同様にして、実施例6で得られた回収液を精製した。沈殿ろ過後の金属イオンの組成は、リチウム9240ppm、コバルト120ppb、ニッケル35ppb、マンガン1ppb未満であった。また、イオン交換樹脂精製後の金属イオンの組成は、リチウム9150ppm、コバルト0.5ppb未満、ニッケル5ppb未満、マンガン1ppb未満であった。
【0088】
<実施例10>(電解による水酸化リチウムの生成)
実施例8においてイオン交換樹脂で精製した液について電解を実施した。使用した電解装置の構成を図1に示す。フッ素系カチオン交換膜は旭化成ケミカルズ(株)製アシプレックスF2205D、アニオン交換膜は(株)アストム製ネオセプタAMXを用いた。どちらも有効膜面積は25.5cmであった。陰極は二ッケルのエキスパンドメタルに触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を用いた。陽極は、チタンのエキスパンドメタルに触媒としてルテニウム、イリジウム、チタンが塗布された電極を用いた。塩室に精製した液500ml、陰極室に11%水酸化リチウム水溶液300ml、陽極室に10%硫酸300mlをそれぞれ60℃で通液し、電流密度が0.2A/cmになるように電源装置PK36−11(松定プレシジョン(株)製)で電圧を印加した。電圧は50Vであった。この電解により陰極室から14.6%水酸化リチウム330ml、陽極室から18.3%硫酸330mlを回収した。塩室の液のpHは8で変化なく、電流効率は81%であった。
【0089】
<比較例4>
イオン交換樹脂で精製した液について、図2で示す構成の電解装置を用いて陽極室に精製した液を通液すること以外は実施例10と同様にして電解を実施し、陰極室から14.4%水酸化リチウム550mlを回収した。塩室のpHは、電解開始時には8であり、終了時には0.1であり、そして電流効率は48%であった。
【0090】
[活物質がマンガン酸リチウムの場合]
[実験例2] (初回の浸出)
2000mlの三角フラスコに2Mの硫酸(和光純薬(株)製)を1520g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにマンガン酸リチウム(日揮触媒化成(株))80gを投入し、3時間攪拌してリチウム及びマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。
【0091】
<実施例11> (脱塩液による浸出)
実験例2の浸出液1000mlから、アニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液は1000mlの純水を用い、アニオン交換膜はネオセプタAMX((株)アストム製)、カチオン交換膜は1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。1100mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム1730ppm、マンガン580ppmであり、900mlの脱塩液において、その金属イオンの組成はリチウム110ppm、マンガン7160ppmであった。
【0092】
次にこの脱塩液を用いて活物質から金属イオンを浸出した。まず脱塩液に硫酸を加えて、pHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに活物質40gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよびマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0093】
<実施例12> (塩の飽和溶液で浸出)
硫酸マンガンが飽和濃度になるまで脱塩と浸出を繰り返した。このときのリチウムの濃度は1000ppm、マンガンの濃度は140000ppmであった。浸出用の液にこの飽和溶液を用いること以外は実施例11と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0094】
<比較例5>
実験例2で作製した浸出液の金属イオン濃度を分析した。分析結果を表2に示す。
【0095】
<比較例6>
浸出用の液の硫酸濃度を0.4Mにすること以外は実験例2と同様にして活物質の金属イオンを浸出した。浸出液の金属イオン濃度を分析した結果を表2に示す。
【0096】
<実施例13> (塩濃度と浸出率1)
硫酸マンガン10%を溶解した塩溶液1000mlに硫酸を加えて、そのpHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにマンガン酸リチウム40gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよびマンガンを浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0097】
<実施例14> (塩濃度と浸出率2)
硫酸マンガン2%を溶解した塩溶液を用いること以外は実施例13と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0098】
<実施例15> (浸出後pH調整1)
1000mlの三角フラスコに1.5Mの硫酸を850g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにマンガン酸リチウム150gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよびマンガンを浸出した。浸出液のpHを測定すると1.37であり、金属イオン濃度はリチウム6700ppm、マンガン24000ppmであった。これに酸化マンガンを3.87g投入し、80℃で2時間攪拌したところ、pHは2.61となった。その後静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0099】
次にこの浸出液500mlをアニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液として500mlの純水を用い、アニオン交換膜としてネオセプタAMX((株)アストム製)を用い、カチオン交換膜として1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム5720ppm、マンガン2350ppmであり、このときの電流効率は75%であった。
【0100】
<実施例16> (浸出後pH調整2)
浸出後のpH調整に30%過酸化水素水22gを使用すること以外は実施例15と同様にして、活物質から金属イオンを浸出してpH調整を実施した。調整後のpHは2.94であった。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表2に示す。
【0101】
次にこの浸出液500mlについて実施例15と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム5440ppm、マンガン2320ppmであり、このときの電流効率は86%であった。
【0102】
<比較例7>
実施例15と同様にして活物質から金属イオンを浸出し、10%アンモニア水6.17gを添加してpH調整を行った。pHは2.62であった。
【0103】
次にこの浸出液500mlについて実施例15と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム5600ppm、マンガン2180ppmであり、このときの電流効率は43%であった。
【0104】
<実施例17> (イオン交換樹脂による精製)
実施例15で得られた回収液500mlに2M水酸化リチウムを21.9ml加えて、そのpHを8とし、遷移金属イオンを水酸化物として沈殿させた。沈殿をろ過した後のろ液の金属イオンの組成は、リチウム5150ppm、マンガン4ppmであった。
【0105】
次にイオン交換樹脂によりさらに遷移金属を低濃度まで除去した。イオン交換樹脂スミキレートMC900(住化ケムテックス(株)製)520ccを蒸留水とともにカラムに充填し、10ml/分の速度で通液して遷移金属を除去した。精製後の金属イオンの組成は、リチウム5100ppm、マンガン1ppb未満であった。
【0106】
<実施例18> (電解による水酸化リチウムの生成)
実施例17でイオン交換樹脂で精製した液について電解を実施した。使用した電解装置の構成を図1に示す。フッ素系カチオン交換膜は旭化成ケミカルズ(株)製アシプレックスF2205D、アニオン交換膜は(株)アストム製ネオセプタAMXを用いた。どちらも有効膜面積は25.5cmであった。陰極は、二ッケルのエキスパンドメタルに触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を用いた。陽極は、チタンのエキスパンドメタルに触媒としてルテニウム、イリジウム及びチタンが塗布された電極を用いた。塩室に精製した液500ml、陰極室に13%水酸化リチウム水溶液300ml、陽極室に10%硫酸300mlをそれぞれ60℃で通液し、電流密度が0.2A/cmになるように電源装置PK36−11(松定プレシジョン(株)製)で電圧を印加した。電圧は50Vであった。この電解により陰極室から14.4%水酸化リチウム330ml、陽極室から19.2%硫酸330mlを回収した。塩室の液のpHは8で変化なく、電流効率は88%であった。
【0107】
<比較例8>
イオン交換樹脂で精製した液について、図2で示す構成の電解装置を用いて陽極室に精製した液を通液すること以外は実施例18と同様にして電解を実施して、陰極室から14.2%水酸化リチウム330mlを回収した。塩室のpHは、電解開始時では8であり、終了時では0.1であり、そして電流効率は41%であった。
【0108】
[活物質がリン酸鉄リチウムの場合]
[実験例3] (初回の浸出)
2000mlの三角フラスコに1Mの硫酸(和光純薬(株)製)を1520g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにリン酸鉄リチウム(Formasa Energy & Material Tech.社製)80gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび鉄を浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。
【0109】
<実施例19> (脱塩液による浸出)
実験例3の浸出液1000mlから、アニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液として1000mlの純水を用い、アニオン交換膜としてネオセプタAMX((株)アストム製)を用い、カチオン交換膜として1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。1100mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム2200ppm、鉄1660ppmであり、900mlの脱塩液において、その金属イオンの組成はリチウム200ppm、鉄18100ppmであった。
【0110】
次にこの脱塩液を用いて活物質から金属イオンを浸出した。まず脱塩液に硫酸を加えてpH0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにリン酸鉄リチウム40gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび鉄を浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表3に示す。
【0111】
<実施例20> (塩の飽和溶液で浸出)
硫酸鉄が飽和濃度になるまで脱塩と浸出を繰り返した。このときのリチウムイオンの濃度は1000ppm、鉄イオンの濃度は84000ppmであった。浸出用の液にこの飽和溶液を用いること以外は実施例19と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表3に示す。
【0112】
<比較例9>
実験例3で作製した浸出液の金属イオン濃度を分析した。分析結果を表3に示す。
【0113】
<比較例10>
浸出用の液の硫酸濃度を0.4Mにすること以外は実験例3と同様にして活物質の金属イオンを浸出した。浸出液の金属イオン濃度を分析した結果を表3に示す。
【0114】
<実施例21> (塩濃度と浸出率1)
硫酸鉄10%を溶解した塩溶液1000mlに硫酸を加えて、そのpHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液760gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにリン酸鉄リチウム40gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび鉄を浸出した。静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表3に示す。
【0115】
<実施例22> (塩濃度と浸出率2)
硫酸鉄2%を溶解した塩溶液を用いること以外は実施例21と同様にして活物質から金属イオンを浸出した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表3に示す。
【0116】
<実施例23> (浸出後pH調整)
1000mlの三角フラスコに1.5Mの硫酸を850g入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これにリン酸鉄リチウム150gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび鉄を浸出した。浸出液のpHを測定すると0.98であった。これに酸化マンガンを9.48g投入し、80℃で2時間攪拌したところ、pHは2.72となった。その後静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中のリチウムイオンと鉄イオンの濃度を分析した結果を表3に示す。
【0117】
次に、この浸出液500mlから、アニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液として500mlの純水を用い、アニオン交換膜としてネオセプタAMX((株)アストム製)を用い、カチオン交換膜として1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム7360ppm、鉄5570ppmであり、このときの電流効率は78%であった。
【0118】
<比較例11>
実施例23と同様にして活物質から金属イオンを浸出し、10%アンモニア水15.1gを添加してpH調整を行った。pHは2.71であった。
【0119】
次にこの浸出液500mlについて実施例23と同様にして電気透析を実施した。550mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム7440ppm、鉄5570ppmであり、このときの電流効率は39%であった。
【0120】
<実施例24> (イオン交換樹脂による精製)
実施例23で得られた回収液500mlに2M水酸化リチウムを50.2ml加えて、そのpH8をとし、遷移金属イオンを水酸化物として沈殿させた。沈殿をろ過した後のろ液の金属イオンの組成は、リチウム5010ppm、鉄83ppmであった。
【0121】
次に、イオン交換樹脂によりさらに遷移金属を低濃度まで除去した。イオン交換樹脂スミキレートMC900(住化ケムテックス(株)製)550ccを蒸留水とともにカラムに充填し、10ml/分の速度で通液して遷移金属を除去した。精製後の金属イオンの組成は、リチウム4960ppm、鉄5ppb未満であった。
【0122】
<実施例25> (電解による水酸化リチウムの生成)
実施例24においてイオン交換樹脂で精製した液について電解を実施した。使用した電解装置の構成を図1に示す。フッ素系カチオン交換膜は旭化成ケミカルズ(株)製アシプレックスF2205D、アニオン交換膜は(株)アストム製ネオセプタAMXを用いた。どちらも有効膜面積は25.5cmであった。陰極は、二ッケルのエキスパンドメタルに触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を用いた。陽極は、チタンのエキスパンドメタルに触媒としてルテニウム、イリジウム、チタンが塗布された電極を用いた。塩室に精製した液500ml、陰極室に13%水酸化リチウム水溶液300ml、陽極室に10%硫酸300mlをそれぞれ60℃で通液し、電流密度が0.2A/cmになるように電源装置PK36−11(松定プレシジョン(株)製)で電圧を印加した。電圧は50Vであった。この電解により陰極室から14.3%水酸化リチウム330ml、陽極室から14.2%硫酸330mlを回収した。塩室の液のpHは8で変化なく、電流効率は82%であった。
【0123】
<比較例12>
イオン交換樹脂で精製した液について、図2で示す構成の電解装置を用いて陽極室に精製した液を通液すること以外は実施例25と同様にして電解を実施して、陰極室から14.1%水酸化リチウム330mlを回収した。塩室のpHは、電解開始時には8であり、終了時には0.1、そして電流効率は47%であった。
【0124】
<実施例26> (使用済みリチウムイオン2次電池からのリチウムの回収)
使用済みのリチウムイオン2次電池(円筒缶型18650)5本をマッフル炉にて700℃で2時間焼成し、外装をはがして内容物を取り出した。これを裁断機で2mm角程度に細断してボールミルで2時間粉砕し、150メッシュの篩にかけて活物質を含む粉体50gを得た。
【0125】
硫酸コバルト2%、硫酸ニッケル2%を溶解した塩溶液1000mlに硫酸を加えて、そのpHを0にした。このときの硫酸濃度は0.4Mであった。この液950gを1000mlの三角フラスコに入れ、ウォーターバスで80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに粉体50gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび遷移金属類を浸出した。浸出残渣1gを取り出して5M硫酸10mlと30%過酸化水素水1mlの混合液に入れ80℃で3時間攪拌してろ過し、ろ液について金属イオンの分析を実施したところリチウムは検出されなかった。
【0126】
浸出液のpHを測定すると1.8であった。これに水酸化ニッケルを1.87g投入し、80℃で2時間攪拌したところ、pHは2.78となった。その後静置して上澄みを取り出し、未溶解物を分離した。取り出した浸出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過した。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。なお、リチウム電池には表1で示した正極に含まれる金属の他に、集電体としてアルミニウム又は銅が使用されており、廃リチウム電池からの浸出液にはこれらのイオンが含まれる。
【0127】
次に、この浸出液950mlから、アニオン交換膜とカチオン交換膜から成る電気透析装置(アシライザーEX3B、(株)アストム製)を用いて硫酸リチウムを脱塩した。回収液として950mlの純水を用い、アニオン交換膜としてネオセプタAMX((株)アストム製)、カチオン交換膜として1価選択性膜ネオセプタCIMS(株)アストム製)を使用し、電圧10V、温度25℃で電気透析を実施した。1050mlの回収液において、その金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム3260ppm、コバルト760ppm、ニッケル800ppm、マンガン50ppmであり、このときの電流効率は79%であった。
【0128】
次にこの回収液についてイオン交換樹脂で遷移金属類を除去した。回収液1050mlに2M水酸化リチウムを29.6ml加えて、そのpH8をとし、遷移金属イオンを水酸化物として沈殿させた。沈殿をろ過した後のろ液の金属イオンの組成は、リチウム2930ppm、コバルト122ppm、ニッケル43ppm、マンガン4ppmであった。
【0129】
次に、イオン交換樹脂によりさらに遷移金属を低濃度まで除去した。イオン交換樹脂スミキレートMC900(住化ケムテックス(株)製)960ccを蒸留水とともにカラムに充填し、10ml/分の速度で通液して遷移金属を除去した。精製後の金属イオンの組成は、リチウム2900ppm、コバルト0.5ppb未満、ニッケル5ppb未満、マンガン1ppb未満であった。
【0130】
次に、イオン交換樹脂で精製した液について電解を実施した。使用した電解装置の構成を図1に示す。フッ素系カチオン交換膜は旭化成ケミカルズ(株)製アシプレックスF2205D、アニオン交換膜は(株)アストム製ネオセプタAMXを用いた。どちらも有効膜面積は25.5cmであった。陰極は二ッケルのエキスパンドメタルに触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を用いた。陽極は、チタンのエキスパンドメタルに触媒としてルテニウム、イリジウム、チタンが塗布された電極を用いた。塩室に精製した液960ml、陰極室に13%水酸化リチウム水溶液300ml、陽極室に10%硫酸300mlをそれぞれ60℃で通液し、電流密度が0.2A/cmになるように電源装置PK36−11(松定プレシジョン(株)製)で電圧を印加した。電圧は50Vであった。この電解により陰極室から14.8%水酸化リチウム330、陽極室から15%硫酸330mlを回収した。塩室の液のpHは8で変化なく、電流効率は84%であった。
【0131】
<比較例13>
1000mlの三角フラスコに0.4M硫酸を950g入れ、ウォーターバス80℃に加熱し、スターラーで攪拌する。これに実施例26と同様にして得た活物質を含む粉体50gを投入し、3時間攪拌してリチウムおよび遷移金属を浸出した。浸出残渣1gを取り出して5M硫酸10mlと30%過酸化水素水1mlの混合液に入れ80℃で3時間攪拌してろ過し、ろ液について金属イオンの分析を実施したところリチウムが3600ppm検出された。
【0132】
<比較例14>
実施例26と同様にして金属イオンを浸出し、10%アンモニア水2.28gを添加してpH調整を行った。pHは2.77であった。浸出液中の金属イオンの濃度を分析した結果を表1に示す。
【0133】
次にこの浸出液について実施例26と同様にして電気透析を実施した。回収液の金属イオンの濃度分析をしたところ、リチウム3230ppm、コバルト760ppm、ニッケル770ppm、マンガン50ppmで、このときの電流効率は38%であった。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のリチウム回収システムは、リチウム含有固体からのリチウム回収に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0138】
1 電解槽
2 陽極
3 陰極
4 陰イオン(アニオン)交換膜
5 陽イオン(カチオン)交換膜
6 陽極室入口
7 塩室入口
8 陰極室入口
9 陽極室出口
10 塩室出口
11 陰極室出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
酸に2価以上の金属の塩が溶解している酸性浸出液でリチウム含有固体からリチウムを浸出して、リチウム回収溶液を得る工程
を含む、リチウムイオン電池に由来するリチウム含有固体からリチウムを回収する方法。
【請求項2】
以下の工程:
一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置内で前記リチウム回収溶液からリチウムを脱塩して、脱塩液を得る脱塩工程、及び
該脱塩液を前記酸性浸出液として再利用する脱塩液再利用工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性浸出液中の前記2価以上の金属の塩の濃度は、前記2価以上の金属がコバルトである場合には7000ppm以上40000ppm以下であり、前記2価以上の金属がニッケルである場合には7000ppm以上50000ppm以下であり、前記2価以上の金属がマンガンである場合には7000ppm以上140000ppm以下であり、そして前記2価以上の金属が鉄である場合には7000ppm以上84000ppm以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リチウム含有固体から酸でリチウムを浸出することによりリチウム回収溶液を得て、一価選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを組み合わせて成る電気透析装置内で該リチウム回収溶液からリチウムを脱塩する脱塩工程において、該リチウム回収溶液に2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物、及び/又は還元剤を添加し、該リチウム回収溶液のpHを2〜6に調整して、電気透析を行なうことを特徴とする、リチウムの回収方法。
【請求項5】
前記2価以上の金属の水酸化物及び/又は酸化物は、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄及び酸化マンガンから選ばれる少なくとも一つの金属化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤は過酸化水素又はシュウ酸を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウム回収溶液を電気透析により精製して、該精製されたリチウム溶液から、電解により水酸化リチウム及び酸を回収する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記精製されたリチウム溶液に、水酸化リチウムを添加して該溶液のpHを7〜13に調整して、溶存する遷移金属を水酸化物として沈殿させ、該溶液から該水酸化物を分離した後、該溶液中のリチウム以外の金属成分をイオン交換樹脂により低減させ、次いで電解により水酸化リチウム及び酸を回収する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸は硫酸である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
陽極室、陰極室及び該陽極室と該陰極室に挟まれた塩室を含み、かつ該陽極室と該塩室は陰イオン交換膜で隔絶されており、かつ該塩室と該陰極室は陽イオン交換膜で隔絶されている電解装置を用いて、該陰極室に水酸化リチウムを生成させ、そして該陽極室に硫酸を生成させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水酸化リチウムを用いて、前記精製されたリチウム溶液のpHを7〜13に調整し、そして前記硫酸を前記イオン交換樹脂の再生に用いる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム含有固体は、リチウムイオン電池若しくはその処理物、又はリチウムイオン電池を製造する過程で排出された固体である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記2価以上の金属は、コバルト、ニッケル、マンガン及び/又は鉄である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−234732(P2012−234732A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103170(P2011−103170)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】