説明

リニアモータおよび製造方法

【課題】本発明では、小型、細径化されたリニアモータのコイルのモールドのバリを効率よく除去することを目的にし、精度よいリニアモータを提供する。
【解決手段】フレーム7に内装された複数個のコイル6と、前記コイル6に空隙を介して配置された複数の永久磁石を備えた可動子4と、前記可動子4の直動方向の移動を支持する軸受1とを備え、前記コイル6が樹脂9によりモールドされたリニアモータにおいて、前記コイル6と前記軸受1を備えたブラケット2の間にスペーサ14を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、搬送用やステージ用途に用いられるものから、比較的短いストロークを移動する代わりに細径化した小型のリニアモータが部品を実装する分野などのでは必要とされるようになって来ている(例えば、特許文献1参照)。このようなリニアモータは、細径化するために外装も薄肉化して、さらに内部構造も集積構造で形成されている。電磁力を作用させての駆動原理に基づいたこれらのリニアモータは、細径化されているために放熱が課題となる。このために従来のリニアモータのコイル部には、構成部品の固定やコイルから発生する熱を外部に伝熱するための樹脂モールドが施されている。コイルなどからの発熱を外装部品に伝達して放熱する構造がとられていた。
一方、小型および細径化すると、各部品の精度や組立精度等が、可動子と固定子間のギャップの変動やコイルの取り付け位置などによりモータ特性に大きく影響する。コイルをモールドする際にも樹脂の注入圧力により部品の位置決めが変わらないようにする必要がある。そのために、リニアモータの電機子のモールドする場合には、図4(a)に示すように、パイプ7内のコイル6をモールドするためにパイプ7の両軸方向から治具A10と治具B11をパイプ7に挿入し、治具A10と治具B11を勘合する方法で本願の発明者により試作されていた。樹脂は図示しない注入口より注入され、コイル6がモールドされる。しかしながら、このようにして作製された樹脂モールドは、図4(b)に示すように治具A10と治具B11の勘合部に隙間12が形成されてしまうために、図4(c)に示すようにコイル6近傍にバリ13が形成されてしまうという問題が生じることが明らかとなった。このようにコイル6近傍にバリ13が形成されてしまうと、バリ13の除去をしない場合には、モータを形成した場合には、何らかの要因で可動子とコイル間にバリが挟み込まれ、モータを駆動する電流が大きくなる。さらには、駆動できない、またはコイルに過電流が流れることでコイルが焼失してしまうといった問題が生じる。また、一方、バリを除去しようとするとコイル近傍に形成されているために、バリ除去加工をする際にコイルを傷つけてしまうといった問題が生じることが明らかとなった。
このような問題を解決するために、コイルに平板を備えて樹脂モールドする方法がとられている(例えば、特許文献2参照)。本従来の技術によると、平板をコイル上に残したまま、モールドすることでコイルの製造上の取り扱いを容易にすることを解決している。
【特許文献1】特開2007−142359号公報
【特許文献2】特開昭59−181949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のリニアモータでは、バリの除去が難しく、コイルの断線やバリが可動子とコイル間のギャップに挟まり、コイルが損傷することがあるといった問題が生じていた。すなわち、2分割の治具の勘合部には必ず隙間があるため、流し込んだ樹脂がこの隙間に浸入することになる。樹脂が硬化後、治具を抜くと隙間に浸入した樹脂がバリとなって残ることになる。このバリは、コイルに近接しているため刃物などによる除去ができない状況である。仮に、除去できたとしても除去時に加わった樹脂部への外力によりコイルの皮膜に損傷を与える問題も生じしていた。また、このバリが可動子組み込み時や後に脱落することにより可動子とのギャップに浸入するため、ロックなどの不具合を発生させることになる。また、コイルと接続されたリード線も樹脂に覆われることによりパイプに固定されているが、パイプと樹脂の密着性が悪い場合に外れてしまうことになり脱落した樹脂片やリード線が前述した不具合を発生させる問題が生じていた。
また、コイルに平板を取り付けて樹脂モールドする場合には、コイルと平板を樹脂モールドする場合に、コイルと平板の位置決め精度が、小型細径化されると必要となり、高精度なモールド技術が必要となる。しかしながら、小型部品の位置決めは、その部品の取り扱いが難しいために精度を出すことができず、要求される精度でのモールドができないといった問題が生じていた。さらには、モールドする際には、硬化する際の収縮などが影響するために要求される精度でのモールドができないといった問題が生じていた。
本発明では、これらの点を鑑みて行われたものであり、小型、細径化されたリニアモータのコイルのモールドのバリを効率よく除去することを目的にし、精度よいリニアモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1記載の発明は、フレームに内装された複数個のコイルと、前記コイルに空隙を介して配置された複数の永久磁石を備えた可動子と、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドされたリニアモータにおいて、前記コイルと前記軸受を備えたブラケットの間にスペーサを備えたものである。
請求項2記載の発明は、前記スペーサが中空円筒に形成され、前記スペーサの軸方向の長さにより前記コイルを前記フレームに対する軸方向の位置決めをするものである。
請求項3記載の発明は、前記コイルに隣接する前記スペーサの内周面に、前記樹脂がモールドされているものである。
請求項4記載の発明は、前記スペーサの内周面と前記樹脂が同一平面に形成されたものである。
請求項5記載の発明は、フレームに内装された複数個のコイルと、前記コイルに空隙を介して配置された複数の永久磁石を備えた可動子と、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドされたリニアモータにおいて、前記フレームは略円筒に形成された突部を備えた略円筒に形成されたものである。
請求項6記載の発明は、前記突部が、前記コイルの渡り線が通じ、リード線に接続されているものである。
請求項7記載の発明は、フレームに複数個のコイルを内装し、前記コイルに空隙を介して複数の永久磁石を備えた可動子が配置され、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドしたリニアモータの製造方法において、前記コイルと前記軸受を備えたブラケットの間にスペーサを配置して前記樹脂によりモールドしたものである。
請求項8記載の発明は、前記スペーサが、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記スペーサの端面に隣接するように前記コイルが前記フレームに挿入され、位置決めされたものである。
請求項9記載の発明は、前記スペーサが、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記スペーサに勘合するように治具が挿入され、前記樹脂により前記コイルがモールドされるものである。
請求項10記載の発明は、前記スペーサが、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記コイルが前記樹脂によりモールドされた後に、前記スペーサの内周面から突出した余剰の樹脂を除去加工するものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1から4記載の発明によると、スペーサによりコイルを位置決めし、スペーサがコイルと一体としてフレームに固定されることにより、フレームに対するコイルの位置が精度よく位置決めされるので、モータの組立精度がよくなり、モータ特性の低下を防止することができる。
また、請求項5および6記載の発明によると、略円筒の凸部をフレームに形成したことによりコイルの渡り線処理およびリード線処理が簡便な方法によりできることで、集積された部品が精度よく配置できることから、モータの組立精度が良くなり、モータ特性の低下を防止することができる。
また、請求項7から10記載の発明によると、スペーサから軸方向に突出した樹脂を除去加工することから、樹脂がコイルと可動子間に挟まって、モータに過電流が流れることによるコイルの損傷や、除去加工時のコイルの断線等の問題を解決できるとともに、スペーサによるコイルの位置決めを精度よく行うことにより、モータ特性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、リニアモータ全体の構成図である。図2は、図1の X−X断面図である。
図1において、1は軸受、2はブラケット、3はシャフト、4は可動子、5はギャップ、6はコイル、7はパイプ、8はリード線、9は樹脂、14はスペーサである。
可動子4は不図示の磁石がシャフト3の円周上に複数個整列されている。可動子4に一体として形成されたシャフト3の両端はブラケット2に備えられた軸受1により直動自在に支持されている。また、可動子4にギャップ5を介してコイル6が配置され、コイル6は、例えば3相モータを形成するように複数個のコイルが備えられている。コイル6には渡り線6aによりコイル6どうしとリード線8と結線部8aで接続されており、樹脂9により固定されている。モールドされた樹脂9は、コイル6の内周面の軸方向において、スペーサ14の内周面端部と同一面が形成されている。スペーサ14は、中ぐりされた円筒に形成されており、コイル6をパイプ7に挿入する際にコイル6の位置決め用となるとともに、コイル6の内周軸方向における樹脂9の長さを決めるようにパイプ7の軸方向端面と同一面になるように挿入され、樹脂9によるモールド後は、ブラケット2で軸方向に抜けないように固定されている。
また、渡り線6aが通じるようにパイプ7は図2に示すように略半円筒で形成された凸部16を有する略円筒形状を形成している。
次に、リニアモータの動作について説明する。可動子4に備えられた磁石とコイル6により発生する磁界との相互作用により可動子4は、軸方向に軸受1に支持されて直動移動する。移動量は、不図示のコントローラにより制御される。
次にリニアモータの製造方法について図3を用いて説明する。図3は、本実施例のリニアモータの固定子を示す図である。図3aに示すように、パイプ7に内装したコイル6を軸方向から位置決めするようにスペーサ14をパイプ7に挿入する。
次に、図3bに示すように、治具A10がパイプ7の一方からコイル6の内径を通過してパイプ7のもう一端まで届くように挿入する。また、治具B11は、スペーサ14と治具A10と僅かな隙間12を設けて勘合するように配置される。この状態で不図示の注入口より樹脂を注入し、樹脂を硬化させる。樹脂が硬化した後に、図3cに示すように治具Aおよび治具Bを取り除く。そうするとスペーサ14の近傍、すなわち図3bで示した隙間12の部分にバリ13が発生する。このバリ13は刃物15による除去加工される。バリ13が除去された後が図3dに示されるように、スペーサ14が内端面と樹脂面が同一面に加工された状態となる。この時点では樹脂にバリ発生していない。スペーサ14は、樹脂9によりパイプ7に固定されている。このような工程で樹脂モールドすることでリニアモータの固定子が出来上がる。この際に、スペーサ13の厚みに相当する樹脂9がコイル6の内周面にコイル6から突出して形成されている。
その後に、可動子および軸受の組立を行い、リニアモータが製作される。
本実施例では、スペーサをリード線取り出し方向に入れて治具A、治具Bを各々所定の方向から挿入するようにしたが、スペーサの取り付け位置は逆方向に取り付けて、治具Aおよび治具Bを取り付けても良いことは当然である。
また、スペーサを軸方向の一端に備えた実施例を示したが、軸方向の両方向に備えても良く、そうすることでコイル6はさらに精度よく位置決めすることが可能である。
このように、スペーサを用いて樹脂をモールドすることにより、発生したバリを容易に除去加工することができる。このために、正確に位置決めされたコイルに対して、損傷を与えることなく、バリ取り作業ができるので、精度よくリニアモータが組み立てられ、モータ性能の低下をまねくことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例のリニアモータの側断面図
【図2】本発明の実施例のリニアモータのX−X断面図
【図3】本発明の実施例のリニアモータの樹脂モールド工程を示す断面図
【図4】従来のリニアモータの樹脂モールド工程を示す断面図
【符号の説明】
【0009】
1 軸受
2 ブラケット
3 シャフト
4 可動子
5 ギャップ
6 コイル
6a 渡り線
7 パイプ
8 リード線
8a 結線部
9 樹脂
10 治具A
11 治具B
12 隙間
13 バリ
14 スペーサ
15 刃物
16 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに内装された複数個のコイルと、前記コイルに空隙を介して配置された複数の永久磁石を備えた可動子と、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドされたリニアモータにおいて、
前記コイルと前記軸受を備えたブラケットの間にスペーサを備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記スペーサは中空円筒に形成され、前記スペーサの軸方向の長さにより前記コイルを前記フレームに対する軸方向の位置決めをすることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記コイルに隣接する前記スペーサの内周面は、前記樹脂がモールドされていることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記スペーサの内周面と前記樹脂が同一平面に形成されたことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ
【請求項5】
フレームに内装された複数個のコイルと、前記コイルに空隙を介して配置された複数の永久磁石を備えた可動子と、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドされたリニアモータにおいて、
前記フレームは略円筒に形成された突部を備えた略円筒に形成されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
前記突部は、前記コイルの渡り線が通じ、リード線に接続されていることを特徴とする請求項5記載のリニアモータ。
【請求項7】
フレームに複数個のコイルを内装し、前記コイルに空隙を介して複数の永久磁石を備えた可動子が配置され、前記可動子の直動方向の移動を支持する軸受とを備え、前記コイルが樹脂によりモールドしたリニアモータの製造方法において、
前記コイルと前記軸受を備えたブラケットの間にスペーサを配置して前記樹脂によりモールドしたことを特徴とするリニアモータの製造方法。
【請求項8】
前記スペーサは、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記スペーサの端面に隣接するように前記コイルが前記フレームに挿入され、位置決めされたことを特徴とする請求項7記載のリニアモータの製造方法。
【請求項9】
前記スペーサは、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記スペーサに勘合するように治具が挿入され、前記樹脂により前記コイルがモールドされることを特徴とする請求項7記載のリニアモータの製造方法。
【請求項10】
前記スペーサは、前記フレームのいずれか一方から挿入され、前記コイルが前記樹脂によりモールドされた後に、前記スペーサの内周面から突出した余剰の樹脂を除去加工することを特徴とする請求項7記載のリニアモータの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−159752(P2009−159752A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336297(P2007−336297)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】