説明

リニアモータの可動子およびリニアモータ

【課題】推力の変動を低減することができるリニアモータの可動子およびリニアモータを提供すること。
【解決手段】本願の開示するリニアモータ100の可動子110は、電機子111と、主極磁石列130と、補極磁石132a,132bとを備える。電機子111は、直線状に配列された複数のティース116を有し、各ティース116にコイル113が巻装される。主極磁石列130は、電機子111のティース116側に配置され、異なる極性の主極磁石131a,131bがティース116の配列方向に沿って交互に配列される。補極磁石132a,132bは、主極磁石列130の一端または両端に隣接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、リニアモータの可動子およびリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の一種として、固定子に沿って可動子を直線的に移動させるリニアモータが知られており、かかるリニアモータとして、可動子側に永久磁石が配置されるものが提案されている。
【0003】
例えば、ティースにコイルを巻装した電機子に複数の永久磁石を配列した可動子と、所定間隔で表面に突極が形成され、可動子に対向配置される固定子とを備えるリニアモータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、永久磁石を可動子側に配置した従来のリニアモータでは、可動子を固定子に沿って移動させる際に、コギングや推力リップルが発生する。コギングや推力リップルは、推力変動の要因となり、リニアモータの円滑な駆動を阻害する。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、推力の変動を低減することができるリニアモータの可動子およびリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るリニアモータの可動子は、電機子と、主極磁石列と、補極磁石とを備える。前記電機子は、直線状に配列された複数のティースを有し、各ティースにコイルが巻装される。前記主極磁石列は、前記電機子の前記ティース側に配置され、異なる極性の主極磁石が前記ティースの配列方向に沿って交互に配列される。前記補極磁石は、前記主極磁石列の一端または両端に隣接して配置される。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、推力の変動を低減することができるリニアモータの可動子およびリニアモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るリニアモータの正面模式図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る可動子の側断面模式図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図である。
【図5】図5は、第2の実施形態に係る可動子の側断面模式図である。
【図6】図6は、第3の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するリニアモータの可動子およびリニアモータの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、説明の便宜上、各図中、X軸の正方向および負方向をそれぞれリニアモータの前方および後方、Y軸の正方向および負方向をそれぞれリニアモータの右方および左方、Z軸の正方向および負方向をリニアモータの上方および下方とする。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るリニアモータの構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るリニアモータの正面模式図、図2は、第1の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図である。なお、図2は、図1のA−A線断面模式図である。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係るリニアモータ100は、前後方向(ここでは、X軸方向)に延伸する可動子110および固定子120を備え、設置対象140に設置される。可動子110は、間隔P1を空けて固定子120と対向した状態で、固定子120に対して前後方向に相対的に移動できるように、図示しない直動軸受によって案内支持される。
【0013】
かかるリニアモータ100においては、電機子111と主極磁石列130を備える可動子110によって進行磁界が形成される。かかる進行磁界と固定子120の突極122との間で発生する推力によって、可動子110が固定子120に対して前後方向へ相対的に移動する。なお、以下では、可動子110の移動方向、すなわち、前後方向をストローク方向と呼ぶこととする。また、図1では、推力の変動を低減する補極磁石を図示していないが、かかる補極磁石については、図2および図3において詳述する。
【0014】
図2に示すように、可動子110は、電機子コア112と、複数のコイル113と、主極磁石列130とを備える。電機子コア112は、ストローク方向を長手方向として延伸するヨーク部115と、かかるヨーク部115からそれぞれ下方に延伸する複数のティース116を備える。これら複数のティース116は、ストローク方向に沿って直線状に所定の間隔で配列される。
【0015】
ティース116間には、スロット117と呼ばれる空間が形成され、かかるスロット117にコイル113が納められる。具体的には、各ティース116に絶縁材を介して、三相それぞれの電機子巻線であるコイル113が集中巻きされ、各コイル113が各スロット117に納められる。コイル113は、例えば、銅線などの絶縁被覆電線によって形成される。
【0016】
なお、電機子コア112に形成される9つのティース116は、例えば、ストローク方向に連続する3つのティース116を1つのグループとして前方から順に第1〜第3グループに分けられる。そして、第1グループのティース116にU相のコイル113が、第2グループのティース116にV相のコイル113が、第3グループのティース116にW相のコイル113がそれぞれ集中巻きにより巻装される。
【0017】
また、電機子コア112のストローク方向両端には、複数のティース116の配列方向の両端に隣接してそれぞれヨーク部115から下方へ向かって突出する補助ティース118a,118bが形成される。かかる補助ティース118a,118bは、推力変動の要因となるコギングを低減するために形成される。また、補助ティース118a,118bは、主ティースであるティース116よりも上下方向の長さが短く、コイルが巻装されない。なお、電機子コア112は、積層珪素鋼板やSMCコアなどの軟磁性材料から構成される。SMCコアは、微細鉄粉を圧縮成形したコアである。
【0018】
複数のティース116のそれぞれにコイル113が巻装された電機子コア112は、モールド樹脂114によって全体的にモールドされる。コイル113が巻装されたティース116間のスロット117にはモールド樹脂114が充填され、電機子111のティース116側が平坦状に形成される。
【0019】
このように平坦状に形成された電機子111のティース116側には、推力を発生させるための主極磁石列130が接着材などによって固定される。電機子111のティース116側は、平坦に形成されることから、主極磁石列130を強固に接着することができるとともに、主極磁石列130を精度良く配置させることができる。
【0020】
主極磁石列130は、異なる極性の主極磁石131a,131bがティース116の配列方向に沿って交互に配列されて構成される。また、各一対の主極磁石131a,131bは、各ティース116の先端に前後方向に連接して配置され、隣接する主極磁石131a,131bの対と間隔P2を空けて配置される。
【0021】
各主極磁石131a,131bは、左右方向を長手方向として略直方体状に形成され、矢印方向を磁化方向としている。すなわち、主極磁石131aは、下方をN極、上方をS極とする永久磁石であり、主極磁石131bは、上方をN極、下方をS極とする永久磁石である。なお、主極磁石131a,131bは、永久磁石に限定されるものではなく、例えば、電磁石であってもよい。
【0022】
このように構成された可動子110では、電機子111のコイル磁束が主極磁石列130を構成する主極磁石131a,131bの磁束に重畳し、進行磁界が形成される。各主極磁石131a,131bは、ティース116の先端だけでなく、複数のティース116の間に形成されたスロット117の開口部先端にも配置される。かかる配置により、コイル113と主極磁石131a,131bによるギャップ磁束密度を増加させることができ、進行磁界を増加させることができる。
【0023】
次に、固定子120の構成について説明する。固定子120は、図2に示すように、ヨーク部121および突極122を備える突極子である。かかる固定子120は、例えば積層珪素鋼板、SMCコア、3%Si鉄、または鉄製の構造材などの軟磁性材料から構成される。
【0024】
ヨーク部121は、前後方向を長手方向として略直方体状に形成される。突極122は、ヨーク部121から上方に突出して形成される。かかる突極122は、左右方向を長手方向とし、前後方向に所定の間隔で配列される。
【0025】
固定子120の突極122は、可動子110によって形成される磁界との間で推力を発生させるために設けられており、かかる推力によって可動子110が固定子120に対して前後方向に相対的に移動する。具体的には、電機子111のコイル磁束が、主極磁石列130を構成する主極磁石131a,131bの磁束に重畳し、13極の進行磁界が形成される。この13極の進行磁界と13個の突極122との間で推力が発生し、かかる推力によって可動子110が固定子120に対して前後方向に相対的に移動する。
【0026】
第1実施形態に係るリニアモータ100では、コギングなどに起因する推力の変動を低減するために、可動子110において、そのストローク方向両端の補助ティース118a,118bに対向する位置に補極磁石132a,132bが設けられる。
【0027】
かかる補極磁石132a,132bについて、具体的に説明する。図3は、第1の実施形態に係る可動子110の側断面模式図である。なお、図3においては、可動子110のストローク方向の中央部を省略している。
【0028】
補極磁石132aは、主極磁石列130(図2参照)の前端に位置する主極磁石131aの前方に位置し、主極磁石131aと極性が異なる永久磁石である。すなわち、補極磁石132aは、上方をN極、下方をS極とする永久磁石である。かかる補極磁石132aは、左右方向を長手方向として略直方体状に形成され、ストローク方向の長さが主極磁石131aより短く形成される。
【0029】
電機子111は、上述のように、ティース116の先端表面に沿って平坦状になるようにモールド樹脂114が形成されており、補極磁石132aは、かかるモールド樹脂114を介して補助ティース118aと間隔P3aを空けて配置される。なお、モールド樹脂114は、補助ティース118aの前方を覆うように設けられており、これにより、補極磁石132aの前端側は、補助ティース118aの前端側よりも前方に配置可能となっている。
【0030】
また、補極磁石132aは、主極磁石列130(図2参照)とストローク方向に間隔P2よりも大きい間隔P4aを空けて配置される。補極磁石132aのストローク方向の長さと、間隔P3aと、間隔P4aとは、可動子110の前端部での磁束密度の偏りを低減するように設定され、これにより、第1の実施形態に係るリニアモータ100では、推力の変動が低減される。
【0031】
同様に、補極磁石132bは、主極磁石列130の後端に位置する主極磁石131bの後方に位置し、主極磁石131bと極性が異なる永久磁石である。すなわち、補極磁石132bは、下方をN極、上方をS極とする永久磁石である。かかる補極磁石132bは、左右方向を長手方向として略直方体状に形成され、ストローク方向の長さが主極磁石131bより短く形成される。
【0032】
また、補極磁石132bは、補極磁石132aと同様に、モールド樹脂114を介して補助ティース118bと間隔P3bを空けて配置される。なお、モールド樹脂114は、補助ティース118bの後方を覆うように設けられており、これにより、補極磁石132bの後端側は、補助ティース118bの後端側よりも後方に配置可能となっている。
【0033】
また、補極磁石132bは、主極磁石列130をストローク方向に間隔P2よりも大きい間隔P4bを空けて配置される。補極磁石132bのストローク方向の長さと、間隔P3bと、間隔P4bとは、可動子110の後端部での磁束密度の偏りを低減するように設定され、これにより、第1の実施形態に係るリニアモータ100では、推力の変動を抑えることができる。
【0034】
なお、補極磁石132aと補極磁石132bを同一形状とし、間隔P3aと間隔P3bとを同一寸法とし、および、間隔P4aと間隔P4bを同一寸法としてもよい。これにより、可動子110の前端部と後端部とで対称性を有するため、可動子110が前方へ移動した場合と後方へ移動した場合とで推力の変動を同様に低減することができる。
【0035】
また、補極磁石132a,132bのストローク方向の長さではなく、補極磁石132a,132bの左右方向の長さを主極磁石131a,131bと異ならせてもよい。また、補極磁石132a,132bのストローク方向の長さに加え、補極磁石132a,132bの左右方向の長さを主極磁石131a,131bと異ならせてもよい。
【0036】
また、図2に示すリニアモータ100では、主極磁石列130の両端に隣接して補極磁石132a,132bを設けているが、主極磁石列130の一端に補極磁石132aおよび補極磁石132bのいずれかを設けるようにしてもよい。このように主極磁石列130の一端のみに補極磁石132aまたは補極磁石132bを設けた場合であっても、推力の変動を低減することができる。
【0037】
以上のように、第1の実施形態に係るリニアモータ100では、主極磁石列130の一端または両端に隣接して配置される補極磁石132a,132bを備えるため、推力の変動を低減することができ、これにより、リニアモータ100を精度よく駆動することができる。
【0038】
なお、第1の実施形態に係るリニアモータ100は、ティース116の数を「9」とし、主極磁石131a,131bの数を「18」としたがこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。また、同様に、突極122の大きさおよび形状や突極122間の間隔も同様に図1および図2に示される例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るリニアモータについて説明する。図4は、第2の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図、図5は、第2の実施形態に係る可動子の側断面模式図である。なお、図5においては、可動子のストローク方向の中央部を省略している。また、以下においては、説明の便宜上、第1の実施形態に係るリニアモータ100と異なる点を主に説明し、重複説明は適宜省略する。
【0040】
図4に示すように、第2の実施形態に係るリニアモータ200では、複数のティース216がヨーク部215の凹部に嵌め込まれて、電機子コア212が形成される。各ティース216に巻装されるコイル213は、ティース216間に形成されるスロット217に納められる。
【0041】
各ティース216の先端表面には、図5に示すように、左右方向を長手方向とする突起251が主極磁石231a,231bの位置決め用の突起として形成される。かかる突起251によって、主極磁石231a,231bを容易に取り付けることができ、また、その取り付け精度も向上させることができる。
【0042】
また、各ティース216の先端には、ストローク方向に幅広となる鍔部219が形成される。かかる鍔部219によって、ティース216による平坦面が増加することから、これによっても、主極磁石列230の取り付け精度を向上させることができる。
【0043】
しかも、主極磁石231a,231bを精度よく取り付けることができるため、間隔P5,P6の精度を向上させることができる。間隔P5は、ティース216の先端表面上で隣接する主極磁石231aと主極磁石231bの間隔である。また、間隔P6は、各ティース216の先端表面に配置される主極磁石231a,231bの対と、それに隣接する主極磁石231a,231bの対との間隔である。
【0044】
このように、第2の実施形態に係るリニアモータ200では、互いに異なる極性の主極磁石231a,231bが交互に配列されて構成される主極磁石列230(図4参照)の取り付け精度を向上させることができる。また、間隔P5を空けて主極磁石231a,231bを配置するため、主極磁石231a,231bの磁石量を低減することもできる。
【0045】
また、リニアモータ100と同様、図4に示すように、コイル213が巻装された電機子コア212は、モールド樹脂214によって全体的にモールドされ、電機子211のティース216側が平坦状に形成される。このように、電機子211のティース216側は、平坦に形成されることから、主極磁石列230を強固に接着することができるとともに、精度良く配置させることができる。
【0046】
図5に示すように、複数のティース216の両端には、隣接する位置にティース216と上下方向の長さを同程度とする補助ティース218a,218bが配置される。かかる補助ティース218a,218bは、ヨーク部215と一体的に形成される。
【0047】
補助ティース218a,218bの先端には、補極磁石232a,232bが固定される。補極磁石232aは、主極磁石列230(図4参照)の前端に位置する主極磁石231aの前方に位置し、主極磁石231aと極性が同じ永久磁石である。また、補極磁石232bは、主極磁石列230の後端に位置する主極磁石231bの後方に位置し、主極磁石231bと極性が同じ永久磁石である。
【0048】
補助ティース218a,218bの先端表面には、補極磁石232a,232bの位置決め用の突起252がそれぞれ形成される。突起252は、左右方向を長手方向とする突起であり、かかる突起252によって、補極磁石232a,232bを容易に取り付けることができ、また、その取り付け精度も向上させることができる。
【0049】
しかも、補極磁石232a,232bを精度よく取り付けることができるため、間隔P7a,P7bの精度を向上させることができる。間隔P7a,P7bは、主極磁石列230の両端と補極磁石232a,232bとの間の距離である。
【0050】
また、補極磁石232a,232bは、左右方向を長手方向とし、断面視台形状を有しており、可動子210の端部側に向かうにしたがって上下方向の厚みが薄くなるように構成されている。さらに、補極磁石232a,232bの下面は、前後方向に弧状形成される。
【0051】
したがって、補極磁石232a,232bの形状を断面視方形状に限定する場合に比べ、可動子210の両端部での磁束密度を調整する自由度を向上させることができ、これにより、推力変動の低減を容易に行うことができる。なお、補極磁石232a,232bの形状はこれに限定されるものではなく、例えば、断面視三角形状とするなど、種々の変更が可能である。
【0052】
また、図4に示す例では、主極磁石列230の両端に隣接して補極磁石232a,232bを設けているが、主極磁石列230の一端に補極磁石232aおよび補極磁石232bのいずれかを設けるようにしてもよい。このように主極磁石列230の一端のみに補極磁石232aまたは補極磁石232bを設けた場合であっても、推力の変動を低減することができる。
【0053】
なお、図4に示すように、可動子210と間隔を空けて固定子220が配置される。かかる固定子220は、ヨーク部221と、ヨーク部221の上面に配置される複数の突極222と備える。突極222は、先端が断面視円弧状に形成され、左右方向に延在する。
【0054】
以上のように、第2の実施形態に係るリニアモータ200では、主極磁石列230の一端または両端に隣接して配置される補極磁石232a,232bを備えるため、推力の変動を低減することができ、これにより、リニアモータ200を精度よく駆動することができる。
【0055】
また、リニアモータ200には、位置決め用の突起251,252が形成されるため、主極磁石231a,231bおよび補極磁石232a,232bを精度よく取り付けることができ、推力の変動を精度よく低減することができる。
【0056】
なお、第2の実施形態に係るリニアモータ200は、ティース216の数を「9」とし、主極磁石231a,231bの数を「18」としたがこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。また、同様に、突極222の大きさおよび形状や突極222間の間隔も同様に図4に示す例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0057】
また、補助ティース218a,218bの先端表面には、突起252を形成するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、補助ティース218a,218bの先端表面を平坦面とし、かかる平坦面に当接させて補極磁石232a,232bを配置するようにしてもよい。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るリニアモータについて説明する。図6は、第3の実施形態に係るリニアモータの側断面模式図である。なお、以下においては、説明の便宜上、第1実施形態に係るリニアモータ100と異なる点を主に説明し、重複説明は適宜省略する。
【0059】
図6に示すように、第3実施形態に係るリニアモータ300では、複数のティース316がヨーク部315の凹部に嵌め込まれて、電機子コア312が形成される。各ティース316に巻装されるコイル313は、ティース316間に形成されるスロット317に納められる。
【0060】
第1実施形態に係る電機子111とは異なり、電機子311には、補助ティースは形成されず、各ティース316の先端には、ストローク方向に幅広となる鍔部319が形成される。隣接するティース316の鍔部319同士は接触しており、これにより、電機子311のティース316側をほぼ平坦に形成することができる。なお、ティース316の鍔部319同士を接合して一体的に形成することもでき、これによっても、電機子311のティース316側を平坦に形成することができる。
【0061】
このように電機子311のティース316側を平坦に形成しているため、電機子311のティース316側に固定される主極磁石列330を強固に接着することができるとともに、主極磁石列330を精度良く配置させることができる。また、主極磁石列330の主極磁石331a,331bを互いに間隔を空けずに配列しているため、これによっても、主極磁石列330を精度良く配置させることができる。
【0062】
第3実施形態に係る可動子310では、上述のように補助ティースが形成されず、さらに、推力リップルなどを低減する補極磁石332a,332bが主極磁石331a,331bと一体的に形成される。そのため、補極磁石332a,332bを主極磁石331a,331bに対して間隔を空けて配置したりした場合に比べ、可動子310の前後方向の長さを短くすることができ、可動子310の小型化を図ることができる。
【0063】
具体的には、図6に示すように、主極磁石331aに補極磁石332aを一体化するとともに、主極磁石331bに補極磁石332bを一体化して、ストローク方向両端に永久磁石341a,341bを形成している。かかる永久磁石341a,341bは、推力を発生させる主極磁石の機能と共に推力リップルなどを低減する補極磁石の機能を果たす。
【0064】
なお、主極磁石331aと補極磁石332aの磁化方向は同一であり、下方をN極、上方をS極とする。また、同様に、主極磁石331bと補極磁石332bの磁化方向は同一であり、上方をN極、下方をS極とする。また、永久磁石341a,341bのストローク方向の長さは、主極磁石331a,331bのストローク方向の長さに補極磁石332a,332bのストローク方向の長さを加えたものである。
【0065】
永久磁石341aの補極磁石332aに対応する領域は、ティース316の鍔部319よりも前方に突出しており、かかる突出部分はモールド樹脂314によって支持される。同様に、永久磁石341bの補極磁石332bに対応する領域は、ティース316の鍔部319よりも後方に突出しており、かかる突出部分はモールド樹脂314によって支持される。
【0066】
なお、図6に示す例では、主極磁石331a,331bと補極磁石332a,332bとを一体化しているが、これに限定されるものではない。例えば、主極磁石331aと補極磁石332aとを間隔を空けずに連接し、主極磁石331bと補極磁石332bとを間隔を空けずに連接してもよい。
【0067】
図6に示す例では、可動子310のストローク方向の両端に主極磁石331a,331bと補極磁石332a,332bを一体化した永久磁石341a,341bとを設けたが、これに限定されるものではない。例えば、可動子310のストローク方向の一端のみに補極磁石の機能も果たす永久磁石を配置してもよい。具体的には、可動子310の前端部に永久磁石341aを配置し、可動子310の後端部に永久磁石341bに代えて主極磁石331bを配置する。または、可動子310の前端部に永久磁石341aに代えて主極磁石331aを配置し、可動子310の後端部に永久磁石341bを配置する。
【0068】
また、可動子310と間隔を空けて配置される位置には、図6に示すように、固定子320が配置される。かかる固定子320は、ヨーク部321と、ヨーク部321の上面に配置される複数の突極322とを備える。突極322は、先端が断面視台形状に形成され、左右方向に延在する。
【0069】
このように、第3の実施形態に係るリニアモータ300は、推力リップルなどを低減するための補極磁石332a,332bが主極磁石331a,331bと一体的に形成される。そのため、補極磁石332a,332bを主極磁石331a,331bに対して間隔を空けて配置する場合に比べ、可動子310の前後方向の長さを短くすることができ、可動子310の小型化を図ることができる。また、リニアモータ300の電機子コア312には、補助ティースが形成されておらず、これによっても、可動子310の小型化を図ることができる。
【0070】
なお、第3の実施形態に係るリニアモータ300は、ティース316の数を「9」とし、主極磁石331a,331bの数を「12」としたがこれに限定されるものでははく、種々の変更が可能である。また、同様に、突極322の大きさおよび形状や突極322間の間隔も同様に図6に示す例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0071】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0072】
例えば、第1〜3の実施形態のリニアモータ100,200,300の構成を適宜組み合わせることができる。また、第1および第2の実施形態では、補極磁石132a,132b,232a,232bの磁化方向を上下方向として説明したが、補極磁石132a,132b,232a,232bの磁化方向を斜め方向やストローク方向とすることもできる。
【0073】
また、第1および第2の実施形態では、補助ティース118a,118b,218a,218bを可動子110,210の前端部と後端部とに配置したが、これに限定されるものではない。すなわち、可動子110の前端部および後端部のうち一方に補助ティース118aまたは補助ティース118bを配置することもできる。また、可動子210の前端部および後端部のうち一方に補助ティース218aまたは補助ティース218bを配置することもできる。
【符号の説明】
【0074】
100,200,300 リニアモータ
110,210,310 可動子
111,211,311 電機子
112,212,312 電機子コア
113,213,313 コイル
116,216,316 ティース
118a,118b,218a,218b 補助ティース
120,220,320 固定子
122,222,322 突極
130,230,330 主極磁石列
131a,131b,231a,231b,331a,331b 主極磁石
132a,132b,232a,232b,332a,332b 補極磁石
251,252 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された複数のティースのそれぞれにコイルが巻装された電機子と、
前記電機子の前記ティース側に配置され、異なる極性の主極磁石が前記ティースの配列方向に沿って交互に配列される主極磁石列と、
前記主極磁石列の一端または両端に隣接して配置される補極磁石と
を備えることを特徴とするリニアモータの可動子。
【請求項2】
前記補極磁石は、
前記主極磁石列の端に位置する主極磁石と間隔を空けて配置されることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータの可動子。
【請求項3】
前記補極磁石は、
前記主極磁石列の端に位置する主極磁石と一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータの可動子。
【請求項4】
前記複数のティースの配列方向の一端または両端に隣接し、コイルが巻装されない補助ティースを備え、
前記補極磁石は、
前記補助ティースとの対向位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアモータの可動子。
【請求項5】
前記補極磁石は、
前記補助ティースと間隔を空けて配置されることを特徴とする請求項4に記載のリニアモータの可動子。
【請求項6】
前記補極磁石は、
前記補助ティースに当接する位置に配置されることを特徴とする請求項4に記載のリニアモータの可動子。
【請求項7】
前記補助ティースは、
前記補極磁石の位置決め用の突起を表面に備えることを特徴とする請求項6に記載のリニアモータの可動子。
【請求項8】
前記ティースは、
前記主極磁石の位置決め用の突起を表面に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のリニアモータの可動子。
【請求項9】
突極が所定の間隔で配列された固定子と、
前記固定子に対向して配置される可動子と、を備え、
前記可動子は、
直線状に配列された複数のティースのそれぞれにコイルが巻装された電機子と、
前記電機子の前記ティース側に配置され、異なる極性の主極磁石が前記ティースの配列方向に沿って交互に配列される主極磁石列と、
前記主極磁石列の一端または両端に隣接して配置される補極磁石と
を備えることを特徴とするリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46460(P2013−46460A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181519(P2011−181519)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】