説明

リニアモータ

【課題】界磁の永久磁石をヨークに固定する際の永久磁石の破損を防止できるようにする。
【解決手段】磁気的空隙を介して対向配置される界磁1と電機子2を備え、界磁1を固定子、電機子2を可動子とするリニアモータ100であって、界磁1は、平板状の界磁ヨーク11と、界磁ヨーク11に交互に極性が異なるように直線状に並べて固定された複数の主極磁石14及び補極磁石15と、補極磁石15の磁気的空隙側の面15a、及び、2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bに設けられた補強部材16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、複数の永久磁石を直線状に配置した界磁を備えるリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルを有する一次側可動子と、複数の永久磁石を直線に沿って配置した二次側固定子とを備え、コイルに通電することにより可動子を二次側固定子に沿って直線的に移動させるリニア同期モータが記載されている。このリニア同期モータでは、複数の永久磁石を隣接して配置すると共に、隣接する永久磁石の磁化方向を可動子の移動方向及び直角方向に90°ずつ異ならせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の永久磁石を直線状に配置した界磁を備えるリニアモータにおいては、複数の永久磁石が接着剤等によりヨークに固定される。この磁石の固定の際に、隣接する磁石間、或いは磁石とヨーク間に吸引力若しくは反発力が生じ、永久磁石に割れ・欠け等の破損が生じる可能性がある。
【0005】
特に、上記従来技術のように隣接する磁石の磁化方向を90°異ならせた配列(ハルバッハ配列)の場合、その磁化方向の差異により隣接する磁石間、或いは磁石とヨーク間に大きな吸引力若しくは反発力が生じ易く、永久磁石に破損が生じ易い。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、界磁の永久磁石をヨークに固定する際の永久磁石の破損を防止することができるリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、磁気的空隙を介して対向配置される界磁と電機子を備え、前記界磁と前記電機子のいずれか一方を可動子、他方を固定子とするリニアモータであって、前記界磁は、平板状の界磁ヨークと、前記界磁ヨークに交互に極性が異なるように直線状に並べて固定された複数の永久磁石と、前記永久磁石の前記磁気的空隙側の面、前記界磁ヨーク側の面、及び、隣接する永久磁石側の面のうち、少なくとも前記隣接する永久磁石側の面に設けられた補強部材と、を有することを特徴とするリニアモータが適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリニアモータによれば、界磁の永久磁石をヨークに固定する際の永久磁石の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係るリニアモータの外観を表す斜視図である。
【図2】図1中の矢視Aから見たリニアモータの側面図である。
【図3】一実施形態に係る一方の形状の補強部材を設けたリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図4】一方の形状の補強部材を設けた補極磁石の平面図及び磁気的空隙側から見た側面図である。
【図5】一実施形態に係る他方の形状の補強部材を設けたリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図6】他方の形状の補強部材を設けた補極磁石の平面図及び磁気的空隙側から見た側面図である。
【図7】2つの形状の補強部材についてのモータ特性に関する解析結果を表す図である。
【図8】補強部材を補極磁石の界磁ヨーク側の面及び隣接する磁石側の面に設ける変形例に係るリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図9】界磁ヨークに補強部材を嵌め込むための溝を設ける変形例に係るリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図10】界磁ヨークに補強部材を嵌め込むための他の形状の溝を設ける変形例に係るリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図11】界磁ヨークに補強部材を嵌め込むためのさらに他の形状の溝を設ける変形例に係るリニアモータの界磁の構成を表す平面図である。
【図12】補極磁石が分割磁石である変形例における、補強部材を設けた補極磁石の平面図及び磁気的空隙側から見た側面図である。
【図13】補強部材の板厚を部分的に異ならせた変形例における、補強部材を設けた補極磁石の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<リニアモータの全体構成>
まず、図1,2及び図3,5を用いて、一実施形態に係るリニアモータ100の全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、リニアモータ100は、この例ではコアレスリニアモータであり、界磁1と電機子2を備えている。本実施形態では、界磁1を固定子、電機子2を可動子とする場合を一例として説明するが、反対に界磁1を可動子、電機子2を固定子としてもよい。以下では適宜、固定子1、可動子2と呼称する。固定子1は、2つの界磁ヨーク11と、ヨークベース12と、複数の永久磁石13とを有している。2つの界磁ヨーク11は、それぞれ同じ長尺の略矩形形状の平板であり、固定子1の長手方向全体に亘って互いに対向するよう配置されている。ヨークベース12は、固定子1の長手方向全体に亘って2つの界磁ヨーク11の間の下方部分を連結すると共に、2つの界磁ヨーク11を支持している。なお、図1では後述する補強部材の図示を省略している。
【0012】
複数の永久磁石13は、界磁ヨーク11の内側に接着等により直線状に並べて固定されている。図3及び図5に示すように、これら複数の永久磁石13は、磁極の向きが互いに略90°異なる主極磁石14と補極磁石15が交互に並べられたハルバッハ配列構造を有している。主極磁石14及び補極磁石15は、それぞれ固定子1の長手方向に短い略矩形形状の平板で構成されており、その厚みT(2つの界磁ヨーク11の対向方向の厚み)はほぼ同一であるが、可動子2の移動方向(図1中両矢印Xで示す)の長さは主極磁石14の方が補極磁石15よりも大きくなっている。主極磁石14及び補極磁石15は、各々が各界磁ヨーク11のそれぞれの対向面に2つ一組で対向する配置で設けられている。そのような複数組の永久磁石14,15が、固定子1の長手方向に沿って所定の間隔で並設されている。同じ組で対向する2つの主極磁石14同士では、それらの対向方向、つまり固定子1の幅方向で磁極の向きが逆であり、また固定子1の長手方向で隣接する2つの主極磁石14同士でも、互いに磁極の向きは逆となる。同様に、同じ組で対向する2つの補極磁石15同士では、固定子1の幅方向で磁極の向きが逆であり、また固定子1の長手方向で隣接する2つの補極磁石15同士でも、互いに磁極の向きは逆となる。
【0013】
なお、図1及び図3,5に示す例では、主極磁石14と補極磁石15が隙間無く配置されているが、これに限定するものではなく、所定の間隔を設けて主極磁石14と補極磁石15を配置してもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、ヨークベース12の上面には長手方向全体に亘って溝部12aが形成されており、この溝部12aの幅は、上記一組の永久磁石13の対向間隔とほぼ同じ寸法に設定されている。このため、図2に示すように、固定子1全体を側面で見た形状は略U字型となっている。
【0015】
可動子2は、平板状の基板21と、図示しない負荷を載置するための図示しないテーブルを固定する電機子ベース22とを有している。基板21は、固定子1の永久磁石13と磁気的空隙を介して対向配置されている。この基板21は、図示しないプリント基板及び電機子コイルが樹脂で覆われた構成となっている。電機子コイルは、空芯型で集中巻きのコアレスコイルである。
【0016】
<補強部材>
次に、図3乃至図6を用いて、補極磁石15に設けた補強部材について説明する。リニアモータ100においては、複数の永久磁石13が接着剤等により界磁ヨーク11に固定される。この際、まず主極磁石14が一定の間隔をおいて界磁ヨーク11に固定され、その後に補極磁石15が主極磁石14の間に固定される。このようにして行われる永久磁石13の固定の際に、隣接する磁石間、或いは磁石と界磁ヨーク11間に吸引力若しくは反発力が生じ、永久磁石13に折れや割れ、欠け等の破損が生じるおそれがある。特に、本実施形態では、固定子1の永久磁石13がハルバッハ配列構造であるため隣接する磁石の磁極の向きが異なり、隣接する磁石間、或いは磁石と界磁ヨーク11間に大きな吸引力若しくは反発力が生じ易い。加えて、補極磁石15は主極磁石14よりも細い(断面積が小さい)ため、補極磁石15の固定の際に隣接する主極磁石14との間、或いは界磁ヨーク11との間に吸引力若しくは反発力が生じ、破損が生じる可能性が高い。そこで、補極磁石15に補強部材を設けている。本実施形態では、このような補強部材の一例として2つの形状の補強部材16,16Aについて説明する。
【0017】
図3及び図4に示すように、一方の形状である補強部材16は、平面視で略コの字形状となるように形成されており、例えば板状部材を2箇所で折り曲げる等によって形成される。この補強部材16は、補極磁石15の磁気的空隙側の面15a及び2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆い、且つ、界磁ヨーク側の面15cを露出させるように、補極磁石15に接着剤等により固定されている。補強部材16は、補極磁石15を界磁ヨーク11に固定する前に補極磁石15に取り付けられる。なお、補強部材16は、非磁性材料で構成されている。非磁性材料としては、アルミ等の他の非磁性金属に比べて渦電流を小さくできることから、非磁性ステンレスを用いるのが好適である。
【0018】
また図5及び図6に示すように、他方の形状である補強部材16Aは、2枚の板状部材よりなり、補極磁石15の2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bをそれぞれ覆うように設けられている。すなわち、補強部材16Aは、補極磁石15をその並列方向(可動子2の移動方向)両側より挟むように配置されている。その結果、上記補強部材16と異なり、補極磁石15の磁気的空隙側の面15aは露出されている。その他の構成については、補強部材16と同様である。
【0019】
<補強部材のモータ特性に関する解析結果>
本願発明者等は、上記2つの形状の補強部材16,16Aを設けた場合について、モータ特性の解析を行った。この解析結果を図7に示す。図7に示すように、補強部材を設けない場合のモータの推力定数を100%とし、上記補強部材16(「ケース1」とする)及び上記補強部材16A(「ケース2」とする)の各々を設けた場合について、推力定数の値を解析した。このとき、ケース1,2の各々について、補強部材の厚みtが1mm及び2mmである場合、補強部材の材料が鉄(Fe)及び非磁性ステンレス(SUS)である場合についてそれぞれ解析した。
【0020】
その結果、図7に示すように、ケース1よりもケース2の方が、推力定数の低下が小さいことがわかった。これは、ケース2の場合、ケース1のように補強部材を補極磁石15の磁気的空隙側の面15aに設けないため、図5に示すように主極磁石14及び補極磁石15をほぼ同一の厚みTとなるように構成することが可能であり、ケース1に比べて磁石の投入量を増やすことができるからと考えられる。
【0021】
また、ケース1及びケース2のいずれにおいても、補強部材に磁性材料である鉄(Fe)を用いた場合、主極の磁束漏れが生じ、非磁性ステンレス(SUS)を用いる場合に比べて推力定数が著しく低下することがわかった。したがって、補強部材に用いる材質は非磁性材料が良いことがわかった。
【0022】
さらに、ケース1及びケース2のいずれにおいても、補強部材の板厚tが2mmの場合よりも1mmの方が推力定数の低下が小さく、補強部材の板厚は薄い方が良いことがわかった。これは、補強部材の板厚が厚いほど磁気ギャップが大きくなり、さらに補極の磁束漏れが大きくなるからと考えられる。なお、ここでは一例として板厚tが1mm及び2mmである場合について解析しているが、これに限定されるものではなく、補強部材の板厚は補極磁石15の破損を防止できる強度を保持可能な範囲で最も薄くすればよく、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0023】
以上の結果から、板厚1mm且つ非磁性ステンレスの補強部材を用いることで、補強部材16及び補強部材16Aのいずれの形状の場合でも、モータ特性の低下を5%程度に抑えることが可能であり、特に、補強部材16Aを用いた場合がモータ特性の低下を最も小さくできる(3%程度)ことがわかった。
【0024】
<実施形態の効果>
以上のような構成である本実施形態のリニアモータ100においては、固定子1の補極磁石15に補強部材16,16Aを設けるので、補極磁石15を界磁ヨーク11に固定する際に隣接する主極磁石14との間、或いは界磁ヨーク11との間に吸引力若しくは反発力が発生しても、補強部材16,16Aによって補極磁石15の折れや割れ、欠け等の破損を防止することができる。特に、補強部材16,16Aはいずれも、補極磁石15の2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを少なくとも覆う形状となっているので、次のような効果を奏する。例えば、補強部材を補極磁石15の磁気的空隙側の面15aあるいは界磁ヨーク11側の面15cにのみ設ける場合、補強部材を設けない場合に比べると磁石の強度を大きくすることは可能である。しかしながら、主極磁石14と補極磁石15との磁石間接触は避けられず、その接触時の衝撃などにより、補極磁石15の割れ、欠け等が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態では補強部材16,16Aを隣接する主極磁石14側の面15bに設けるので、主極磁石14と補極磁石15との直接接触は避けられ、補極磁石15の破損を確実に防止できる。
【0025】
また、特に補強部材16Aを用いた場合には、上述したように補強部材16を用いる場合よりも磁石の投入量を増やすことができるため、モータ特性の低下をより抑えることが可能である。一方で、補強部材16を用いた場合には、平面視で略コの字形状に形成するため、補強部材16Aのように単に一枚板状とするよりも補強部材自体の剛性を高めることが可能となり、補極磁石15の破損をより確実に防止できる。
【0026】
また、本実施形態では特に、補強部材16,16Aを補極磁石15にのみ設け、主極磁石14には設けない構成とする。すなわち、ハルバッハ配列においては、磁束の向きが主極磁石14においては2つの界磁ヨーク11の対向方向となり、補極磁石15においては磁石の並列方向(可動子2の移動方向)となるため、補極磁石15においては磁気的空隙側の面15aに補強部材を設けても磁束への影響が少ない。したがって、本実施形態のように補強部材16,16Aを補極磁石15にのみ設けることで、モータ特性の低下を抑えつつ、比較的強度が弱い補極磁石15の破損を防止できる。
【0027】
また、本実施形態では特に、補強部材16,16Aを非磁性材料で構成する。これにより、上述したように磁性材料を用いた場合に比べて磁束漏れを減少させることができる。したがって、モータ特性の低下を抑えることができる。
【0028】
また、本実施形態では特に、固定子1の複数の永久磁石13が、磁極の向きが異なる主極磁石14と補極磁石15が交互に並べられたハルバッハ配列構造となっている。これにより、発生する磁界の分布を正弦波に近づけることができ、低損失でコギング推力が小さいリニアモータ100を得ることができる。
【0029】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0030】
(1)補強部材を界磁ヨーク側の面及び隣接する永久磁石側の面に設ける場合
補強部材の形状は、上記実施形態で述べた補強部材16,16Aに限られず、その他種々の形状とすることが可能である。例えば、補強部材を界磁ヨーク11側の面及び2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆うように設けてもよい。図8を用いて、本変形例の補強部材について説明する。
【0031】
図8に示すように、本変形例の補強部材16Bは、前述の補強部材16と同様に、平面視で略コの字形状となるように形成されている。但し、補強部材16Bは、補極磁石15の界磁ヨーク11側の面15c及び2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆うように設けられており、磁気的空隙側の面15aは露出されている。本変形例では、補強部材16Bが接着剤等により界磁ヨーク11に固定される。その他の構成については、前述の実施形態と同様である。本変形例においても、前述の実施形態と同様の効果を得る。
【0032】
(2)界磁ヨークに補強部材を嵌め込むための溝を設ける場合
上記実施形態においては設けなかったが、界磁ヨーク11に補強部材を嵌め込むための溝を設けてもよい。図9乃至図11を用いて、本変形例について説明する。
【0033】
図9に示すように、界磁ヨーク11には、補強部材16Cを嵌め込むための溝11aが、各補極磁石15に対応する位置に形成されている。補強部材16Cは、上記変形例(1)の補強部材16Bと同様、補極磁石15の界磁ヨーク11側の面15c及び2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆うように設けられており、接着剤等により界磁ヨーク11の溝11aに固定される。この例では、溝11aは矩形状であり、その深さは補強部材16Cの板厚と略同等となっている。その結果、主極磁石14及び補極磁石15は、ほぼ同一の厚みTとなるように構成されており、上記変形例(1)の構成に比べて補極磁石15の投入量を増加することができる。
【0034】
一方、図10に示す例では、界磁ヨーク11の溝11bは台形状に形成されており、補強部材16Dもこれに対応した形状となっている。この場合、補強部材16Dは界磁ヨーク11の溝11bに対してヨークベース12の反対側から差し込まれて嵌合される。他方、図11に示す例では、界磁ヨーク11の溝11cは溝の底部が固定子1の長手方向に凹んだ形状に形成されており、補強部材16Eもこれに対応した形状となっている。この場合も同様に、補強部材16Eは界磁ヨーク11の溝11cに対してヨークベース12の反対側から差し込まれて嵌合される。これら図10及び図11に示す変形例によれば、補強部材16D,16Eと溝11b,11cとの引っ掛かりによって、補極磁石15及び補強部材16D,16Eが界磁ヨーク11より外れるのを防止できる。
【0035】
(3)永久磁石が分割構成の場合
一般に、大推力リニアモータ等に使用される一定サイズ以上の永久磁石には、磁石の製造上又はコストの制限等の都合により、2つ以上の永久磁石を接着により一体化させた分割磁石が使用される場合が多い。このような分割磁石では、隣接する永久磁石との間、或いは界磁ヨーク11との間に吸引力若しくは反発力が発生すると、磁石同士の接着の剥がれにより、永久磁石の割れ・欠け等の破損を生じ易い。したがって、補強部材を設けることが非常に有効となる。本変形例は、永久磁石13がこのような分割磁石である場合の変形例である。
【0036】
図12に示すように、本変形例では補極磁石15が磁石15Aと磁石15Bとに2分割された構成となっており、これら磁石15A,15Bが接着面15dで接着されて一体化されている。なお、図示は省略するが、主極磁石14も同様に2分割された構成となっている。補強部材16は前述の実施形態と同様であり、補極磁石15の磁石15A,15B各々の磁気的空隙側の面15a及び2つの隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆い、且つ、界磁ヨーク側の面15cを露出させるように、補極磁石15に接着剤等により固定されている。
【0037】
このような分割磁石である補極磁石15では、隣接する主極磁石14との間、或いは界磁ヨーク11との間に吸引力若しくは反発力が発生すると、接着面15dに剥がれが生じ、補極磁石15が割れを生じ易い。したがって、このような分割磁石である補極磁石15に補強部材16を設けることで、接着面15dに生じる応力を低減し、補極磁石15の破損を防止することができる。
【0038】
なお、上記では永久磁石の分割数が2である場合を一例として説明したが、3以上であってもよいのは言うまでもない。また、上記では分割磁石に補強部材16を設ける場合を一例として説明したが、他の形状である補強部材16A〜16Fを設けてもよい。例えば図12中のかっこ書きの符号は、補強部材16Bを設けた場合に対応している。
【0039】
(4)補強部材の板厚を部分的に異ならせる場合
上記実施形態では、補強部材16の板厚が一定である場合を説明したが、これに限定するものではなく、補強部材16の板厚を部分的に異ならせてもよい。図13を用いて、本変形例の補強部材について説明する。
【0040】
図13に示すように、本変形例の補強部材16Fは、磁気的空隙側の面15aを覆う部分の板厚(この例では2t)が、隣接する主極磁石14側の面15b,15bを覆う部分の板厚(この例ではt)よりも大きくなる(この例では2倍)ように形成されている。このように、磁気的空隙側の板厚を大きくすることで補強部材16F自体の剛性を保持しつつ、隣接する主極磁石14側の板厚を小さくすることで補極磁石15における磁束漏れを小さく抑えることが可能となり、モータ特性の低下を抑えつつ永久磁石の破損を防止できるリニアモータを実現できる。
【0041】
なお、上記では補強部材16Fの形状を前述の補強部材16に対応した形状としたが、他の補強部材16A〜16Fに対応した形状としてもよい。例えば図13中のかっこ書きの符号は、補強部材16Fを補強部材16Bに対応した形状とした場合に対応している。
【0042】
(5)その他
上記実施形態では、リニアモータ100がコアレスリニアモータである場合を一例として説明したが、電機子コイルが鉄心を有するコア付きリニアモータであってもよい。また、リニアモータ100が電機子2の両側に界磁ヨーク11を有する場合を一例として説明したが、電機子の片側にのみ界磁ヨークを設けたリニアモータに本発明を適用してもよい。
【0043】
また上記実施形態では、永久磁石13が主極磁石14と補極磁石15を交互に並べたハルバッハ配列である場合を一例として説明したが、これに限定するものではなく、同じ形状の永久磁石13を交互に極性が異なるように直線状に並べた通常の配列のリニアモータにも適用することができる。
【0044】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0045】
その他、一々例示はしないが、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 界磁、固定子
2 電機子、可動子
11 界磁ヨーク
13 永久磁石
14 主極磁石
15 補極磁石
15a 磁気的空隙側の面
15b 隣接する主極磁石側の面(隣接する永久磁石側の面)
15c 界磁ヨーク側の面
16 補強部材
16A〜16 補強部材
100 リニアモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的空隙を介して対向配置される界磁と電機子を備え、前記界磁と前記電機子のいずれか一方を可動子、他方を固定子とするリニアモータであって、
前記界磁は、
平板状の界磁ヨークと、
前記界磁ヨークに交互に極性が異なるように直線状に並べて固定された複数の永久磁石と、
前記永久磁石の前記磁気的空隙側の面、前記界磁ヨーク側の面、及び、隣接する永久磁石側の面のうち、少なくとも前記隣接する永久磁石側の面に設けられた補強部材と、を有する
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記補強部材は、
前記永久磁石の前記磁気的空隙側の面、及び、2つの前記隣接する永久磁石側の面を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記補強部材は、
前記永久磁石の前記界磁ヨーク側の面、及び、2つの前記隣接する永久磁石側の面を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記永久磁石は、
複数の永久磁石を接着により一体化させた分割磁石である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記複数の永久磁石は、
磁極の向きが異なる主極磁石と補極磁石が交互に並べられたハルバッハ配列構造を有しており、
前記補強部材は、
前記補極磁石の前記磁気的空隙側の面、前記界磁ヨーク側の面、及び、隣接する前記主極磁石側の面のうち、少なくとも前記隣接する主極磁石側の面に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記補強部材は、
非磁性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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