説明

リュックサック

【課題】「逆掛け」の状態でも作業台としての機能を発揮させることができるリュックサックを提供する。
【解決手段】リュックサック10は、荷物を収容する荷室S1,S2を有する収容部12と、収容部12の背面側に位置するように収容部12と一体的に設けられた左右一対の肩ベルト14a,14bと、収容部12の正面に設けられた正面開口部16と、正面開口部16を開閉可能に封鎖する封鎖部18と、荷室S2に配置された基部80と、基部80に対して回動自在に取り付けられ、荷室S2に収容された「収容状態」と正面開口部16から荷室S2の外部に突出された「突出状態」とを切替可能に構成され、「突出状態」において支持対象物Qを支持する回動支持部82とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図面、チェックリストまたはスケッチブック等のような支持対象物を支持する機能を有する、リュックサックに関する。
【背景技術】
【0002】
建設会社のスタッフが、「工事の進捗状況の調査」、「不具合箇所の調査」または「補修や改造の検討」等のために建設現場に出向いた際には、現場で得た情報を記録するために、図面やチェックリスト等に必要事項を書き込むことが多々ある。その場合、従来では、(a)図面、チェックリストおよびクリップ付ボードをカバンに収容して、これらを建設現場に搬入し、(b)カバンを適当な場所に置いて、図面、チェックリストおよびクリップ付ボードを取り出し、(c)取り出したクリップ付ボードの上に図面やチェックリストを載置し、(d)建設現場を移動しながら図面やチェックリストに必要事項を書き込む、といった手順を取るようにしていた。また、カバンは、建設現場の周辺に置いておくのが通常であることから、作業中に他の資料等が必要になったときには、(e)カバンの置き場所まで一旦戻って、カバンから当該資料等を取り出すようにしていた。そのため、従来では、カバンから物(図面、チェックリスト、資料等)を出し入れする時間が長くなり、作業効率が悪いという問題があった。一方、リュックサックを背負って作業を行う場合には、必要な資料等を取りに戻る手間を省くことができるが、資料等を取り出すときには、背負ったリュックサックを一旦降ろさなければならないため、作業効率を十分に改善することができなかった。
【0003】
このような問題を解決するためには、作業中でも必要な資料等をカバン(リュックサック等)から速やかに取り出せるようにしておく必要があり、特許文献1には、かかる必要性を或る程度満たすことのできる「スケッチ用バッグ」が開示されている。この「スケッチ用バッグ」は、バッグの骨格を成すフレームと、フレームに対して着脱自在に取り付けられるスケッチ板とを備えており、フレームにスケッチ板を取り付けることによって、スケッチブック等を載せるための作業台を構成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の「スケッチ用バッグ」によれば、フレームとスケッチ板とによって作業台を構成することができ、この作業台にスケッチブック等を載せて絵を描いたりすることができるので、作業中には、常に作業者の手の届くところにバックが位置しており、必要な資料をバッグ内から速やかに取り出すことができる。しかし、この「スケッチ用バッグ」は、地面等に置いて使用することを前提に設計されており、肩ベルトを「逆掛け」にしてバッグを体の前に装着し、現場を転々と移動しながら使用する用途には適さなかった。
【0006】
つまり、特許文献1の「スケッチ用バッグ」では、スケッチ板のフック部材をフレームの水平部に嵌合して作業台を組立てる必要があるが、当該組立作業を「逆掛け」の状態で行うことは極めて困難であり、作業性が悪いという問題があった。また、「逆掛け」の状態では、バッグの上端開口部に取り付けられた蓋が作業台の上面に被さるため、当該蓋が邪魔になって使用感が損なわれるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、「逆掛け」の状態で作業台として使用する場合の作業性および使用感を高めることができる、リュックサックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係るリュックサックは、荷物を収容する荷室を有する収容部と、前記収容部の背面側に位置するように前記収容部と一体的に設けられた左右一対の肩ベルトと、前記収容部の正面に設けられた正面開口部と、前記正面開口部を開閉可能に封鎖する封鎖部と、前記荷室に配置された基部と、前記基部に対して回動自在に取り付けられ、前記荷室に収容された収容状態と前記正面開口部から前記荷室の外部に突出された突出状態とを切替可能に構成され、前記突出状態において支持対象物を支持する回動支持部とを備える。
【0009】
この構成において、回動支持部を「収容状態」から「突出状態」に移行させる際には、正面開口部を開くとともに、回動支持部を正面開口部から荷室の外部に突出するように回動させるだけの簡単な操作のため、肩ベルトを「逆掛け」にすることによってリュックサックを体の前に装着した状態でも、問題なく移行の操作を行うことができる。そして、「突出状態」では、回動支持部が支持対象物を支持する作業台として機能するので、たとえば、回動支持部に「支持対象物」としてのクリップ付ボードを載せた後、当該クリップ付ボードの上に図面やチェックリストを載せて必要事項を書き込むことができる。また、回動支持部が板状であれば、回動支持部の上に「支持対象物」としての図面やチェックリストを直接載せて必要事項を書き込むこともできる。
【0010】
一方、「突出状態」から「収容状態」に移行させる際には、回動支持部を正面開口部から荷室内に収まるように回動させるとともに、封鎖部で正面開口部を封鎖する。「収容状態」では、基部および回動支持部が荷室内に収容されるので、これらが収容部の外側に突出することがなく、運搬時のサイズを小さくすることができる。
【0011】
前記突出状態にある前記回動支持部に載置される板状部材と、前記板状部材の左右方向中央部に位置する固定部に一端が固定され、前記基部の左側部に他端が固定された第1紐と、前記固定部に一端が固定され、前記基部の右側部に他端が固定された第2紐とを備え、前記板状部材が前記突出状態にある前記回動支持部の正規位置に載置されたとき、前記第1紐および前記第2紐が弛み無く張られるものであってもよい。
【0012】
この構成では、板状部材が回動支持部の正規位置に載置されたときに、第1紐および第2紐が固定部を中心として略V状に張られるので、固定部が左右に動くのを防止することができ、板状部材が不所望に移動して回動支持部から落下するのを防止することができる。また、回動支持部に載置された板状部材を、固定部を中心に回動させることができるので、板状部材に図面やチェックリストを載せて必要事項を書き込む際には、板状部材を図面やチェックリストと共に書き易い方向に回動させることができる。
【0013】
前記収容部の上部に設けられ、使用者の首に掛けられる環状の首ベルトを備えるものであってもよい。
【0014】
この構成では、首ベルトを首に掛けることによってリュックサックの重量を首に負担させることができるので、背中に背負っていたリュックサックを体の前に回して「逆掛け」の状態にする場合でも、その動作を、リュックサックを降ろすことなく、簡単かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリュックサックによれば、回動支持部を正面開口部から荷室の外部に突出するように回動させるだけで、回動支持部を作業台として用いることができるので、作業台を構成するための特別な組立て作業は不要であり、「逆掛け」の状態で作業台として使用する場合の準備作業を簡単に行うことができる。また、回動支持部は正面開口部から荷室の外部に突出しているので、仮に、収容部の上端開口部に蓋が取り付けられていたとしても、当該蓋が回動支持部の上面に被さることはなく、「逆掛け」の状態で作業台として使用する場合の使用感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は第1実施形態に係るリュックサックの使用状態(逆掛け)を示す左側面図である。
【図2】図2は第1実施形態に係るリュックサックの構成を示す正面図である。
【図3】図3は第1実施形態に係るリュックサックの構成を示す背面図である。
【図4】図4は第1実施形態に係るリュックサックの構成を示す左側面図である。
【図5】図5は回動支持部を固定する固定部の構成を示す断面図である。
【図6】図6は作業台ユニットの構成(突出状態)を示す図であり、(A)は右側面図、(B)は正面図である。
【図7】図7は台部の構成を示す正面図である。
【図8】図8は台部におけるストッパ部およびその周辺部を示す拡大斜視図である。
【図9】図9はクリップ付ボードを示す正面図である。
【図10】図10は作業台ユニットの構成(収容状態)を示す右側面図である。
【図11】図11は他の作業台ユニットの構成(収容状態)を示す図であり、(A)は右側面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るリュックサックを、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
[リュックサックの全体構成]
図1に示すように、第1実施形態に係るリュックサック10は、建設会社のスタッフ等のような「使用者」としての作業者Mが、背中に背負って荷物を運ぶこと(図示省略)が可能であり、かつ、体の前に「逆掛け」状態で装着して作業台として使用することが可能なものであり、図2、図3および図4に示すように、荷物を収容する第1荷室S1および第2荷室S2を有する収容部12と、左右一対の肩ベルト14a,14bと、収容部12の正面に設けられた正面開口部16と、正面開口部16を開閉可能に封鎖する封鎖部18と、第2荷室S2に配置された作業台ユニット20と、首ベルト22と、左右一対の腰ベルトフック24a,24bとを備えている。なお、以下の全体構成の説明では、リュックサック10を背中に背負った通常の使用状態(図示省略)において、作業者Mの左手側を「左」、右手側を「右」、背中に接する面を「背面」、「背面」の反対側に位置する面を「正面」、作業者Mから見て前方を「前」、作業者Mから見て後方を「後」という。
【0019】
収容部12は、図2〜図4に示すように、ナイロン布または帆布等のような或る程度の強度と柔軟性とを有する布材によって縫製されたものであり、大容量の第1荷室S1を構成する袋状の本体部30と、小容量の第2荷室S2を構成する袋状の正面収容部32とを有している。
【0020】
本体部30は、作業者Mが背負ったときに、背中に当たる略長方形の背面布30a(図3、図4)と、背面布30aに対向する略長方形の正面布30b(図2、図4)と、荷物(図示省略)を受ける底面布30c(図2、図4)と、第1荷室S1の左右の側壁を構成する左側面布30dおよび右側面布30e(図2、図3)と、第1荷室S1の上壁を構成する上面布30f(図2、図4)とを有しており、図4に示すように、左側面布30d、右側面布30eおよび上面布30fには、第1荷室S1を前後方向に開くための切込み34が形成されており、切込み34には、ファスナー36が取り付けられている。したがって、ファスナー36を開操作することによって、第1荷室S1を前後方向に開くための開口部(図示省略)を構成することができ、また、ファスナー36を閉操作することによって、当該開口部を閉じることができる。
【0021】
正面収容部32は、本体部30の正面布30bに一体的に取り付けられた小型の収容部であり、正面布30bに対向する略長方形の正面布32b(図2、図4)と、荷物を受ける底面布32c(図2、図4)と、第2荷室S2の左右の側壁を構成する左側面布32dおよび右側面布32e(図2、図4)と、第2荷室S2の上壁を構成する上面布32f(図2、図4)とを有しており、図4に示すように、左側面布32d、右側面布32eおよび上面布32fには、第2荷室S2を前後方向に開くための切込み38が形成されており、切込み38には、ファスナー40が取り付けられている。したがって、図1に示すように、ファスナー40を開操作することによって、第2荷室S2を前後方向に開くための開口部42を構成することができ、また、ファスナー40を閉操作することによって、開口部42を閉じることができる。
【0022】
なお、各部位を構成する布30a〜30fおよび32b〜32fは、互いに独立している必要はなく、任意に選んだ少なくとも2枚の布が連続する1枚の基布で構成されていてもよい。
【0023】
左側の肩ベルト14aは、図3に示すように、収容部12の背面側に位置するように収容部12と一体的に設けられたものであり、作業者Mの左肩に掛けられる帯状の上部片44と、上部片44よりも狭い幅で形成された帯状の下部片46と、接続部材48とを有している。そして、上部片44の一方端部が収容部12の上端部に接続されており、下部片46の一方端部が収容部12の下端部に接続されており、上部片44の他方端部と下部片46の他方端部とが、接続部材48を介して長さ調整自在に接続されている。さらに、上部片44の表面には、首ベルト22を固定する固定部50を構成する面ファスナーの一片50aが取り付けられている。
【0024】
右側の肩ベルト14bは、図3に示すように、左側の肩ベルト14aと対象に構成されている。したがって、左側の肩ベルト14aの構成部分に対応する箇所には、当該部分と同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
正面開口部16は、図1に示すように、収容部12の正面に開かれる開口部であり、上述の開口部42の一態様である。つまり、上述の開口部42は、ファスナー40(図4)を開操作することによって得られる開口部の全てを含んでおり、たとえば、「左側面」、「右側面」または「上面」に開かれたものも開口部42である。これに対し、正面開口部16は、開口部42のうち、「正面」に開かれたものだけを意味しており、正面開口部16が開かれたときには、第2荷室S2に収容された作業台ユニット20の回動支持部82がリュックサック10の「正面」に露出するようになっている。
【0026】
封鎖部18は、正面開口部16を開閉可能に封鎖するものであり、図4に示すように、本実施形態では、正面収容部32の正面布32bのうち、ファスナー40によって開かれる部分が封鎖部18となっている。したがって、図1に示すように、ファスナー40を開操作した後、封鎖部18を前方に倒すことによって、正面開口部16を開くことができ、また、封鎖部18を戻した後、ファスナー40を閉操作することによって、正面開口部16を封鎖することができる。そして、図5に示すように、封鎖部18の内面には、作業台ユニット20の回動支持部82を固定するための固定部52が取り付けられている。固定部52は、面ファスナーの一片52aおよび他片52bを有しており、一片52aおよび他片52bが互いに接続されたときに、回動支持部82を封鎖部18側に押えて固定できるようになっている。
【0027】
作業台ユニット20は、図面、チェックリストおよび資料等のような支持対象物Q(図6(B))を支持する作業台として機能するものであり、リュックサック10の中で最も特徴的な部分である。そこで、作業台ユニット20については、別途詳細に説明する。
【0028】
首ベルト22は、図1に示すように、リュックサック10の重量を作業者Mの首Nで負担させるために、首Nに掛けられる環状部材であり、図3に示すように、第1ベルト片60と、第2ベルト片62と、これらを環状に接続する接続部材64とを有している。接続部材64は、互いに着脱自在に接続される第1接続片64aおよび第2接続片64bを有しており、第1接続片64aが第1ベルト片60の一方端部に取り付けられており、第2接続片64bが第2ベルト片62の一方端部に取り付けられている。そして、第1ベルト片60の他方端部が肩ベルト14aの上側の基端部と同じ位置において収容部12の上端部に接続されており、第2ベルト片62の他方端部が肩ベルト14bの上側の基端部と同じ位置において収容部12の上端部に接続されている。また、第1ベルト片60および第2ベルト片62のそれぞれには、固定部50を構成する面ファスナーの他片50bが取り付けられており、接続部材64による第1ベルト片60および第2ベルト片62の接続状態が解除されたときには、面ファスナーの一片50aと他片50bとが接続される。
【0029】
左側の腰ベルトフック24aは、図3に示すように、帯状の連結部材70と、連結部材70の一方端部に取り付けられたフック部72とを有しており、連結部材70の他方端部が肩ベルト14aの下側の基端部と同じ位置において収容部12の下端部に接続されている。右側の腰ベルトフック24bは、左側の腰ベルトフック24aと対象に構成されているので、左側の腰ベルトフック24aの構成部分と対応する箇所には、当該部分と同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
[作業台ユニットの構成]
図6(A),(B)に示すように、作業台ユニット20は、第2荷室S2内に着脱自在に装着されたものであり、第2荷室S2に固定的に配置された基部80と、回動支持部82と、「板状部材」としてのクリップ付ボード84と、第1紐86と、第2紐88とを有している。そして、図7に示すように、基部80に対して回動支持部82が回動自在に取り付けられることによって台部90が構成されている。なお、作業台ユニット20は、図1に示すように、リュックサック10を作業者Mの体の前に装着した「逆掛け」の状態で使用されるため、以下の作業台ユニット20の説明では、「逆掛け」の状態において作業者Mの左手側を「左」、右手側を「右」、作業者Mから見て前方を「前」、作業者Mから見て後方を「後」という。つまり、作業台ユニット20の構成の説明では、上述のリュックサック10の全体構成の説明とは位置関係が逆になる点に留意されたい。
【0031】
基部80は、図7に示すように、金属等からなる棒状部材を曲げ加工すること等によって構成された枠状部材であり、互いに対向して平行に形成された棒状の第1部分94および第2部分96と、第1部分94および第2部分96のそれぞれに直交して、これらの一方端部どうしを連結する棒状の連結部98とを有しており、第1部分94および第2部分96の他方端部には、図8に示すように、連結部98に対して平行方向に延びる貫通孔100が形成されている。図1および図2に示すように、基部80は、第2荷室S2における正面開口部16よりも下方の領域T1に配置されるものである。そこで、本実施形態では、基部80の左右方向長さが領域T1の左右方向長さよりもやや短く設計されており、基部80の上下方向長さが領域T1の上下方向長さとほぼ同じに設計されている。
【0032】
回動支持部82は、第2荷室S2に収容された「収容状態(図4)」と正面開口部16から第2荷室S2の外部に突出された「突出状態(図1)」とを切替可能に構成されたものであり、図7に示すように、金属等からなる棒状部材を曲げ加工すること等によって構成された枠状部材である。回動支持部82は、互いに対向して平行に形成された棒状の第1部分110および第2部分112と、第1部分110および第2部分112のそれぞれに直交して、これらの一方端部どうしを連結する棒状の第1連結部114と、第1部分110および第2部分112の他方端部どうしを連結する略円弧状の第2連結部116とを有しており、第1部分110の一方端部には、左側の回動部118aが形成されており、第2部分112の一方端部には、右側の回動部118bが形成されている。
【0033】
図8に示すように、右側の回動部118bは、基部80における第2部分96の内側に配置された軸支持部120と、軸支持部120に設けられ、第2部分96の貫通孔100に回動自在に嵌合された突起状の回動軸122と、軸支持部120の端部から回動軸122と同じ方向に延びて形成されたストッパ部124とを有している。ストッパ部124は、基部80に対する回動支持部82の回動角度を所定角度(本実施形態では65度)に規制するものであり、ストッパ部124と回動軸122との位置関係は、基部80に対して回動支持部82が所定角度(本実施形態では65度)だけ回動されたときに、ストッパ部124が第2部分96に当接するように設計されている。一方、左側の回動部118aは、右側の回動部118bと対象に構成されている。
【0034】
回動支持部82は、図2に示すように、第2荷室S2における正面開口部16に対向する領域T2に配置されるものである。そこで、本実施形態では、回動支持部82の左右方向長さが領域T2の左右方向長さよりもやや短く設計されており、回動支持部82の上下方向長さが領域T2の上下方向長さよりもやや短く設計されている。
【0035】
クリップ付ボード84は、図9に示すように、支持対象物Qを支持する略長方形の板状のボード本体130と、ボード本体130の長さ方向一方端部に取り付けられ、支持対象物Qを挾持するクリップ132と、ボード本体130の長さ方向他方端部の左右方向(すなわち幅方向)中央部に取り付けられた固定部134とを有している。固定部134は、環状の固定部本体134aと、固定部本体134aをボード本体130に回動自在に取り付ける取付部134bとを有しており、本実施形態では、「突出状態」にある回動支持部82の正規位置にクリップ付ボード84が載置されたときに、固定部134の位置が第1紐86および第2紐88によって固定されるようになっている。回動支持部82が「収容状態」にあるときには、クリップ付ボード84は、第2荷室S2内に収容されており、固定部134は、ボード本体130の下端部に位置している。なお、ボード本体130のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、使用時の利便性を考慮して、第2荷室S2に収容可能な範囲内でできるだけ大きく設計されている。
【0036】
第1紐86は、図6(B)に示すように、「突出状態」にある回動支持部82の正規位置において、クリップ付ボード84の動きを規制するものであり、第1紐86の一端がクリップ付ボード84の左右方向中央部に位置する固定部134に固定されており、第1紐86の他端が基部80における「左側部(すなわち左側に位置する側部)」としての第1部分94に固定されている。第2紐88は、「突出状態」にある回動支持部82の正規位置において、クリップ付ボード84の動きを規制するものであり、第2紐88の一端がクリップ付ボード84の左右方向中央部に位置する固定部134に固定されており、第2紐88の他端が基部80における「右側部(すなわち右側に位置する側部)」としての第2部分96に固定されている。また、本実施形態では、第1紐86および第2紐88のそれぞれの長さがほぼ同じに設計されている。したがって、図6(B)に示すように、クリップ付ボード84を最大に引き出した状態では、第1紐86および第2紐88が固定部134を中心として略V状に張られることになり、固定部134が左右に動くのを防止することができるとともに、クリップ付ボード84がそれ以上に引き出されるのを防止することができ、クリップ付ボード84を回動支持部82の正規位置に固定することができる。また、回動支持部82で支持されたクリップ付ボード84を、固定部134を中心として適宜回動させることができる。
【0037】
本実施形態によれば、第2荷室S2に配置された基部80で回動支持部82を支持しているので、リュックサックの骨格を成す強固なフレーム(特許文献1参照)を用いることなく、リュックサック10を作業者Mの体に沿うように柔軟に構成することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、第1荷室S1を構成する本体部30とは別に、第2荷室S2を構成する正面収容部32を設け、第2荷室S2内に作業台ユニット20を収容しているが、第2荷室S2を省略し、第1荷室S1内に作業台ユニット20を収容してもよい。この場合には、本体部30の正面に正面開口部16が構成されるとともに、正面開口部16が封鎖部18によって開閉可能に封鎖される。
【0039】
[リュックサックの使用方法]
図示していないが、リュックサック10を通常使用する際には、作業者Mは、肩ベルト14a,14bを両肩に掛けてリュックサック10を背負うとともに、腰ベルトフック24a,24bのフック部72を、必要に応じて腰に巻いたベルト140(図1)に引っ掛ける。
【0040】
リュックサック10を通常使用している状態から「逆掛け」の状態に移行する際には、作業者Mは、まず、第1ベルト片60と第2ベルト片62とを首Nの前で接続して環状の首ベルト22を構成し、腰ベルトフック24a,24bをベルト140から取り外す。続いて、片方の肩ベルト(たとえば肩ベルト14a)から片方の腕(たとえば左肩)を抜いて、当該片方の手で反対の肩に位置する他方の肩ベルト(たとえば肩ベルト14b)を掴み、その手でリュックサック10を首Nを中心として背中から体の前に回してくる。その後、腰ベルトフック24a,24bをベルト140に引っ掛けるとともに、両肩に肩ベルト14a,14bを「逆掛け」にする。この場合、肩ベルト14a,14bまたは腰ベルトフック24a,24bの一方だけを使用してもよい。
【0041】
リュックサック10に作業台としての機能を発揮させる場合には、図1に示すように、第2荷室S2内に収容された作業台ユニット20の回動支持部82を「収容状態(図4)」から「突出状態(図1、図6)」に移行させる。すなわち、まず、(a)ファスナー40を開操作して開口部42(正面開口部16)を開く。続いて、(b)開口部42(正面開口部16)から第2荷室S2内に手を入れて、第2荷室S2内に位置するクリップ付ボード84の上端部を掴む。そして、(c)第1紐86および第2紐88が張るまでクリップ付ボード84を引き上げ、その後、(d)クリップ付ボード84を前方に倒す。すると、回動支持部82と封鎖部18とが、クリップ付ボード84によって前方に押され、回動支持部82が正面開口部16から第2荷室S2の外部に突出するように回動されて「突出状態」となる。この「突出状態」では、回動支持部82が支持対象物Qを支持する作業台として機能するので、クリップ付ボード84の上に図面やチェックリストを載せて、クリップ132で固定して必要事項を書き込むことができる。また、固定部134を中心として、クリップ付ボード84を図面やチェックリストと共に書き易い方向に回動させることができる。
【0042】
一方、回動支持部82を「突出状態」から「収容状態」に移行させる際には、回動支持部82をクリップ付ボード84と共に正面開口部16から第2荷室S2内に収まるように回動させ、その後、封鎖部18で正面開口部16を封鎖する。この「収容状態」では、図10に示すように、基部80および回動支持部82がクリップ付ボード84と平行に並んで第2荷室S2内に収容されるので、作業台ユニット20が第2荷室S2の外側に突出することがなく、運搬時のサイズを小さくすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るリュックサックは、第1実施形態に係るリュックサック10の作業台ユニット20を、図11に示す作業台ユニット150に変更したものである。
【0044】
作業台ユニット150は、板状の基部152に対して板状の回動支持部154を、蝶番156を介して回動自在に取り付けたものであり、回動支持部154には、基部152に当接することによって回動角度を規制する突起状のストッパ部158が形成されている。なお、ストッパ部158は、必ずしも回動支持部154に形成されている必要はなく、基部152に形成されていてもよいし、回動支持部154および基部152の両方に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るリュックサックは、建設会社等のスタッフが工事進捗状況の調査や、技術的調査を行う場合に使用することができる。また、リュックサックを背負いつつ、クリップ付ボードやノートを使用するケースとして、各種自然研究(サークル)、各種学術調査、学校の課外授業等を野外で実施する場合に利用できる。その他、首ベルトを使用することによって、リュックサックを降ろすことなく体の前で収容物の出し入れができるため、通常の一般使用においても利便性が高い。
【符号の説明】
【0046】
M… 作業者
N… 首
Q… 支持対象物
S1… 第1荷室
S2… 第2荷室
10… リュックサック
12… 収容部
14a,14b… 肩ベルト
16… 正面開口部
18… 封鎖部
20… 作業台ユニット
22… 首ベルト
24a,24b… 腰ベルトフック
32… 正面収容部
36,40… ファスナー
72… フック部
80… 基部
82… 回動支持部
84… クリップ付ボード
86… 第1紐
88… 第2紐
90… 台部
94… 第1部分(左側部)
96… 第2部分(右側部)
134… 固定部
140… ベルト
150… 作業台ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を収容する荷室を有する収容部と、
前記収容部の背面側に位置するように前記収容部と一体的に設けられた左右一対の肩ベルトと、
前記収容部の正面に設けられた正面開口部と、
前記正面開口部を開閉可能に封鎖する封鎖部と、
前記荷室に配置された基部と、
前記基部に対して回動自在に取り付けられ、前記荷室に収容された収容状態と前記正面開口部から前記荷室の外部に突出された突出状態とを切替可能に構成され、前記突出状態において支持対象物を支持する回動支持部とを備える、リュックサック。
【請求項2】
前記突出状態にある前記回動支持部に載置される板状部材と、
前記板状部材の左右方向中央部に位置する固定部に一端が固定され、前記基部の左側部に他端が固定された第1紐と、
前記固定部に一端が固定され、前記基部の右側部に他端が固定された第2紐とを備え、
前記板状部材が前記突出状態にある前記回動支持部の正規位置に載置されたとき、前記第1紐および前記第2紐が弛み無く張られる、請求項1に記載のリュックサック。
【請求項3】
前記収容部の上部に設けられ、使用者の首に掛けられる環状の首ベルトを備える、請求項1または2に記載のリュックサック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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