説明

リレー

【課題】可動端子をくの字に屈曲させて復帰バネとして兼用する必要がないとともに、アーマチュアの保持部材をヨークにカシメ固定する必要がなく、磁気効率及び組立性等に優れたリレーを提供する。
【解決手段】このリレー1では、一つのバネ部材9に、アーマチュア7を保持するための保持バネ部52と、カード8をコイルユニット6側に付勢するための付勢バネ部53とが設けられている。また、バネ部材9は、ベース部材2のバネ収容部61に挿入するだけで、それに伴ってバネ部材9の係合凸部54がバネ収容部61の係合凹部に係合して固定が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーに関し、特に、アーマチュアを保持するための構造及びその関連構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術では、図10に示すように、コイル101の励磁終了時に、くの字状に屈曲させた可動端子102のバネ性を利用して可動端子102をコイル101側に復帰させている。また、アーマチュア103をヨーク104に係合させた状態に保持する保持部材(ヒンジバネ)105が、ヨーク104にカシメ固定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の従来技術のように可動端子102のバネ性を利用して可動端子102の復帰を行うようにすると、可動端子102の材料選択には導電性を重視する必要がある関係上、可動端子102のバネ性をある程度犠牲にしなければならず、その結果、リレーの使用により可動端子102のバネ性が劣化しやすいという問題がある。
【0004】
また、可動端子102をくの字に屈曲させているため、可動端子102をベース部材に挿入固定する際に挿入作業が行い難いという問題もある。
【0005】
また、保持部材105をヨーク104にカシメ固定するため、磁気的なロスが生じやすく、ヨーク104にカシメのための加工(カシメ部の形成)を行う必要があり、また、カシメ固定のための作業工程が必要であるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明の解決すべき課題は、可動端子をくの字に屈曲させて復帰バネとして兼用する必要がないとともに、アーマチュアの保持部材をヨークにカシメ固定する必要がなく、磁気効率及び組立性等に優れたリレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、コイルによる電磁的相互作用により、略L字形に屈曲されたアーマチュアにその屈曲部を軸として揺動変位を生じさせ、その揺動変位をカードを介して接点部に伝達して接点を開閉するようにしたリレーにおいて、前記アーマチュアの前記屈曲部が、所定の係合部に揺動変位可能に係合され、前記アーマチュアを保持する保持部材が、前記コイルを含むコイルユニットが取り付けられるベース部材に取り付けられ、前記保持部材には、前記アーマチュアの前記屈曲部を前記係合部側に付勢して保持する保持バネ部と、前記コイルの励磁時に前記アーマチュアが前記カードを駆動する方向と逆方向に前記カードを付勢する付勢バネ部とが設けられる。
【0008】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係るリレーにおいて、前記ベース部材には、上側から挿入された前記保持部材を保持する収容部が設けられ、前記保持部材及び前記ベース部材には、前記保持部材の前記収容部への挿入に伴って互いに係合する第1及び第2の係合部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、可動端子をくの字に屈曲させて復帰バネとして兼用する必要がないとともに、アーマチュアの保持部材をヨークにカシメ固定する必要がなく、リレーの磁気効率及び組立性等を向上させることができる。
【0010】
また、一つの保持部材によってアーマチュアの保持とカードの復帰のための付勢とを行う構成のため、部品点数を増加させることなく、簡易な構成とすることができ、また、保持部材にバネ性を重視した材料や形状を採用することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、保持部材をベース部材の収容部に挿入するだけで、それに伴って第1及び第2係合部が互いに係合するため、保持部材の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るリレーの斜視図であり、図2は図1のリレーの断面図であり、図3は図1のリレーのケースを取り外した状態の側面構成及びアーマチュアの取付工程を示す図である。なお、図3では後述する可動端子5が第1固定端子3から離反しているが、本来はコイル22が励磁されていない状態では、可動端子5はバネ部材9の引っ張り力により第1固定端子3側に付勢されて接触するようになっている。
【0013】
このリレー1は、ベース部材2と、そのベース部材2に取り付けられる第1、第2の固定端子3,4、可動端子5、コイルユニット6、アーマチュア7、カード8、バネ部材(保持部材)9と、ケース10(図1において2点鎖線で示す部材)とを備えて構成されている。なお、本実施形態では、第1、第2固定端子3,4及び可動端子5は1組しか設けられていないが、複数組設けるようにしてもよい。
【0014】
第1、第2固定端子3,4及び可動端子5は、ベース部材2を貫通するようにしてベース部材2に挿入されて固定されている。可動端子5は、ベース部材2に挿入固定される本体部5aと、その本体部5aに接合された可撓性を有する可動部5bとを有する。そして、可動端子5の可動部5bは、第1固定端子3と第2固定端子4との間で行き来可能となっている。
【0015】
可動端子5は、カード8を介して後述するバネ部材9によって第1固定端子3側(コイルユニット6側)に付勢されており、コイルユニット6の後述するコイル22が励磁されていないときには、そのバネ部材9の付勢力により、図2に示すように第1固定端子3側に接触している。そして、コイル22が励磁されると、その電磁的相互作用により揺動駆動されたアーマチュア7によってカード8がコイルユニット6から離反する方向に駆動され、これによって、可動端子5が第2固定端子4側に移動されて端子4と接触する。コイル22の励磁が終了すると、バネ部材9の付勢力によりカード8及び可動端子5が図2の状態に復帰する。
【0016】
コイルユニット6は、ボビン21に巻回されたコイル22と、コイル22に挿通されたコア23と、コア23に連結されたヨーク24と、端子25とを備えて構成されている。このようなコイルユニット6は、後述する図9に示すように、コイル22及びコア23がベース部材2に立設されるようにして、ベース部材2のコイル保持凹部31に上側から挿入されて固定されるようになっている。この取付状態において、端子25が所定の貫通孔を介してベース部材2の下面側に突出している。
【0017】
ヨーク24は、略L字形の形状を有し、その第1腕部24aがコア23の下端部に連結(例えば、カシメ固定)されており、これによって、ヨーク24の第2腕部24bは、コイル22の固定端子3,4側の位置でコア23と平行に上方に立ち上がるようになっている。第2腕部24bの上端の高さ位置は、コア23の上端の高さ位置とほぼ等しく設定されている。
【0018】
アーマチュア7は、図3に示すように、やや鈍角の屈曲角度で略L字形に屈曲されており、その屈曲部7aがヨーク24の第2腕部24bの上端部における端子3側のエッジ部(係合部)24cと係合しており、そのエッジ部24c(屈曲部7a)を軸として揺動可能となっている。この係合状態において、アーマチュア7の第1腕部7bはコア23の上端部を上方から望む位置に位置しており、第2腕部7cはヨーク24の第2腕部24bの端子3側に位置している。そして、コイル22が励磁されて、アーマチュア7の第1腕部7bがコア23に磁気吸着されると、これに伴って、第1腕部7bがコア23から上方に離反した状態(図2の状態)からアーマチュア7がエッジ部24cを軸に回転し、第2腕部7cがコイルユニット6から離反する方向に移動する。コイル22の励磁が解除されると、カード8を介して伝達される後述するバネ部材9の付勢力によって、アーマチュア7の姿勢が図2に示す姿勢に復帰する。
【0019】
カード8は、図4(a)及び図4(b)に示すように、樹脂により一体成形されており、板状の本体部41と、その本体部41から可動端子5側に向けて突設された左右1対の腕部42と、本体部41からコイルユニット6側に向けて突設された係合部43とを有している。腕部42は可動端子5の可動部5bを左右両側から保持するためのものであり、可動部5bを保持する保持溝42aが設けられている。係合部43は、その先端部が左右に張り出した形状となっおり、アーマチュア7の第2腕部7c及び後述するバネ部材9の付勢バネ部53と係合する。係合部43の上面部に設けられた係合凹部43a内にアーマチュア7の第2腕部7cの下端部が挿入されて係合するようになっている。係合部43とバネ部材9との係合構造については後に詳述する。なお、腕部42は、端子3〜5のセットが複数組設けられる場合には、そのセットの数に応じて複数対設けられる。
【0020】
バネ部材9は、図5(a)及び図5(b)に示すように、バネ性に優れた金属板をプレス成形して一体に形成されており、平面視略矩形状の本体部51と、その本体部51の左右の両肩部に設けられた左右一対の保持バネ部52と、本体部51の下辺部51aから斜め上方に延設された付勢バネ部53と、本体部51の左右の辺部51bの中間部から左右方向外方に延設された係合凸部(第1の係合部)54とを有している。詳細な説明は後述するが、保持バネ部52はアーマチュア7を揺動可能に保持するためのものであり、付勢バネ部53はカード8をコイルユニット6側に付勢するためのものである。
【0021】
ベース部材2におけるコイル保持凹部31が設けられた部分と、端子3〜5が取り付けられた部分との間の部分には、図6及び図7に示すように、バネ部材9を収容保持するバネ収容部61と、コイルユニット6のヨーク24を収容保持するヨーク収容部62とが設けられている。バネ収容部61は、左右に対向する保持溝部61aを有しており、この保持溝部61a内にバネ部材9の本体部51の左右の辺部51bが上方から嵌まり込んで保持される。ほぼ同様に、ヨーク収容部62も、左右に対向する保持溝部62aを有しており、この保持溝部62a内にヨーク24の第2腕部24bの左右の張出部24dが上方から嵌まり込んで保持される。また、これらの収容部61,62の左右の保持溝部61a,62aには、本発明の第2の係合部に対応する係合凹部(ここでは係合孔部)63が保持溝部61a,62a共用で設けられており、バネ部材9及びヨーク24の挿入に伴って、その係合凹部63にバネ部材9及びヨーク24の係合凸部54,24eが係合し、これによってバネ部材9及びヨーク24が抜け止めされる。
【0022】
このようなバネ部材9の取付状態において、バネ部材9の本体部51はベース部材2に対して略直立姿勢となっている。保持バネ部52は、コイルユニット6側に斜めに傾斜しており、その姿勢でアーマチュア7の屈曲部7aをヨーク24の上端部のエッジ部24c側に押し付け、これによって、アーマチュア7がエージ部24cを軸に揺動可能に保持されている。また、保持バネ部52には、左右外方から屈曲部7aを保持する保持片52aが設けられている(なお、図1では保持片52aは便宜上省略されている)。
【0023】
また、付勢バネ部53は、自由状態では図8に示すようにコイルユニット6側に傾いて斜め上方に延びており、図2に示すように端子3側に押しやられてカード8の係合部43と係合されると、付勢バネ部53の復元力により、カード8がコイルユニット6側に付勢される。ここで、付勢バネ部53は、上方に開口する略凹状の受け部53aを有し、カード8の係合部43の軸部43bが受け部53aに上方から挿入されて係合されるようになっている。
【0024】
次に、このリレー1の組立工程について簡単に説明する。まず、図8に示すように、端子3〜5が取り付けられたベース部材2のバネ収容部61に、バネ部材9を上方から挿入し、バネ部材9の係合凸部54をバネ収容部61の係合凹部63に係合させるともに、バネ部材9の取り付けを行う。そして、図9に示すように、カード8の係合部43を上方からバネ部材9の付勢バネ部53に係合させ、腕部42に可動端子5を保持させて、カード8の取り付けを行い、続いてコイルユニット6の取り付けを行う。コイルユニット6の取り付けは、予め組み立てられたコイルユニット6をベース部材2のコイル保持凹部31内に上方から挿入し、これに伴ってそのヨーク24の第2腕部24bの左右の張出部24dをヨーク収容部62内に挿入して、ヨーク24の係合凸部24eをヨーク収容部62の係合凹部63に係合させることにより行われる。
【0025】
コイルユニット6の取り付けが完了すると、図3に示すようにアーマチュア7の取り付けが行われる。その取り付けは、バネ部材9の保持バネ部52とヨーク24との間にアーマチュア7を挿入してヨーク24のエッジ部24cに係合させることにより行われ、この係合に伴って保持バネ部52がアーマチュア7の屈曲部7aをエッジ部24c側に付勢して保持するようになっている。続いて、ケース10の装着が行われる。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、可動端子5をくの字に屈曲させて復帰バネとして兼用する必要がないとともに、アーマチュア7を保持するバネ部材9をヨーク24にカシメ固定する必要がなく、リレー1の磁気効率及び組立性等を向上させることができる。
【0027】
また、一つのバネ部材9によってアーマチュア7の保持とカード8の復帰のための付勢とを行う構成のため、部品点数を増加させることなく、簡易な構成とすることができ、また、バネ部材9にバネ性を重視したステンレス等の材料や形状を採用することができる。
【0028】
また、バネ部材9をベース部材2のバネ収容部61に挿入するだけで、それに伴ってバネ部材9の係合凸部54がバネ収容部61の係合凹部63に係合して固定が完了するため、バネ部材部材9の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0029】
また、バネ部材9をプレス成形により低コストで形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るリレーの斜視図である。
【図2】図1のリレーの断面図である。
【図3】図1のリレーのケースを取り外した状態の側面構成及びアーマチュアの取付工程を示す図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)はカードの上面図及び断面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)はバネ部材の正面図及び側面図である。
【図6】図1のリレーにおけるバネ部材の収容部の断面構造を示す図である。
【図7】図1のリレーにおけるベース部材の構成を示す側面図である。
【図8】図1のリレーにおけるバネ部材の取付工程を示す図である。
【図9】図1のリレーにおけるカード及びコイルユニットの取付工程を示す図である。
【図10】従来技術の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 リレー
2 ベース部材
3,4 固定端子
5 可動端子
6 コイルユニット
7 アーマチュア
8 カード
9 バネ部材
10 ケース
22 コイル
23 コア
24 ヨーク
24c エッジ部
52 保持バネ部
53 付勢バネ部
54 係合凸部
61 バネ収容部
63 係合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルによる電磁的相互作用により、略L字形に屈曲されたアーマチュアにその屈曲部を軸として揺動変位を生じさせ、その揺動変位をカードを介して接点部に伝達して接点を開閉するようにしたリレーにおいて、
前記アーマチュアの前記屈曲部が、所定の係合部に揺動変位可能に係合され、
前記アーマチュアを保持する保持部材が、前記コイルを含むコイルユニットが取り付けられるベース部材に取り付けられ、
前記保持部材には、前記アーマチュアの前記屈曲部を前記係合部側に付勢して保持する保持バネ部と、前記コイルの励磁時に前記アーマチュアが前記カードを駆動する方向と逆方向に前記カードを付勢する付勢バネ部とが設けられることを特徴とするリレー。
【請求項2】
請求項1に記載のリレーにおいて、
前記ベース部材には、上側から挿入された前記保持部材を保持する収容部が設けられ、
前記保持部材及び前記ベース部材には、前記保持部材の前記収容部への挿入に伴って互いに係合する第1及び第2の係合部が設けられていることを特徴とするリレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−179219(P2006−179219A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369107(P2004−369107)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)