リレー
【課題】製造工程が簡潔であるとともに、動作精度のよいリレーを提供することを目的とする。
【解決手段】リレーにおいて、回路を切り替えるための駆動力を可動バネに伝達するカード52を設ける。カード52に、可動バネを保持するアーム522,523を設け、アーム522,523の支持部522a,523aにスリット522b,523bを形成する。このスリット522b,523bの水平面における断面形状を略三角形状とし、板状の弾性体である可動バネをスリット522b,523bに挿入することによって、可動バネを挟持する。
【解決手段】リレーにおいて、回路を切り替えるための駆動力を可動バネに伝達するカード52を設ける。カード52に、可動バネを保持するアーム522,523を設け、アーム522,523の支持部522a,523aにスリット522b,523bを形成する。このスリット522b,523bの水平面における断面形状を略三角形状とし、板状の弾性体である可動バネをスリット522b,523bに挿入することによって、可動バネを挟持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路を開閉するリレーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リレーにおいては、コイルに電圧を印加することによってアーマチュア(揺動部材)を揺動させて回路を開閉する。すなわち、コイルに電圧が印加されていない状態では、可動接点と常閉接点とが接触し、コイルに電圧が印加されている状態では、可動接点と常開接点とが接触する。一般に、可動接点は常閉接点と常開接点の間に配置されており、いかにして可動接点にアーマチュアの動作を伝達するかが問題となる。
【0003】
図11は、従来のリレー100における接点ユニット101の構造とカード110とを示す概略図である。なお、図11は、リレー100のコイルに電圧が印加されていない状態を示す。接点ユニット101は、可動接点102aを有する可動バネ102、常閉接点103aを有する常閉接点端子103、常開接点104aを有する常開接点端子104を備えている。
【0004】
カード110は、常閉接点端子103に設けられている孔103bに挿入されることにより、常閉接点端子103を貫通するように配置されている。また、カード110の(+Y)側の突部110aが可動バネ102に差し込まれている。
【0005】
孔103bは充分な開口面積を有しており、常閉接点端子103とカード110とは互いに干渉しないようにされている。すなわち、カード110が移動しても常閉接点端子103に対してカード110から外力が伝播することはなく、常閉接点端子103は静止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のリレーでは、常閉接点端子にカードとの干渉を防止するための穿孔加工が必要であり、製造工程が複雑化するとともに、常閉接点端子の電気的性質(抵抗値等)が低下するおそれがあるという問題があった。
【0007】
また、カードは常閉接点端子側から可動バネに挿入されているだけで固定されていないので、可動接点を常閉接点側に復帰させるための構造(図11に示す例では、可動バネ102の屈曲加工)が必要であるという問題があった。
【0008】
また、可動バネを屈曲加工すると、可動接点を常開接点側に押し出す際に、屈曲部を押し広げる向きに外力を加えるため、経時変化によって復帰精度が低下しやすいという問題があった。すなわち、屈曲部にヘタリを生じやすいという問題があった。
【0009】
さらに、リレーの製造工程において、各部品は上方から基台に取り付けるように組み立てることが好ましい。しかし、カードが可動バネおよび常閉接点端子に挿入される構造であるため、カードを側方から取り付けなければならず、組み立てる際の作業効率が悪いという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、製造工程が簡潔であるとともに、動作精度のよいリレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材とを備え、前記リンク部材は、前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、前記スリットの断面形状は、略三角形状であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材とを備え、前記リンク部材は、前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、前記スリットには、前記可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係るリレーであって、前記スリットには、前記可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および3に記載の発明では、スリットの断面形状が、略三角形状であることにより、挿入時に保持部と可変形端子部との間に作用する摩擦力を抑制することができるため、組み立てが容易である。
【0015】
請求項2および3に記載の発明では、スリットには、可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることにより、挿入時に保持部と可変形端子部との間に作用する摩擦力を抑制することができるため、組み立てが容易である。
【0016】
請求項3に記載の発明では、スリットには、可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることにより、可変形端子部の変形時に保持部にかかる応力を抑制することができる。したがって、保持部の変形および劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0018】
<1. 実施の形態>
図1は、本発明に係るリレー1の外観斜視図である。また、図2は、リレー1の内部構造を示す側面図である。
【0019】
なお、図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。また、図1では、ケース2の外形を二点鎖線で示している。
【0020】
本実施の形態におけるリレー1は、図1に示すように、中空のケース2とベース3とが係合することによって、内部を保護する構造となっている。
【0021】
ケース2は、光透過性を有する樹脂製の一体構造物であって、ベース3と係合する(−Z)方向に開口した略箱状の部材である。なお、ケース2を構成する素材は、内部を保護することのできる強度を有する素材であれば、どのようなものであってもよい。このような素材として、例えば、ガラス(石英)などを用いてもよい。
【0022】
ベース3は、リレー1の各構成要素の基台として機能する。これらリレー1の各構成要素は、主に(+Z)側からベース3に取り付けられる。また、リレー1の端子(例えば、コイル端子41等)は、ベース3を(+Z)側から(−Z)側に貫通するように取り付けられており、ベース3の外部に露出している。このようにして、露出した端子に外部の所定の回路を接続することによって、リレー1の内部と外部との電気的接続が実現される。
【0023】
リレー1の内部には、コイルユニット4、揺動部5および接点ユニット6がベース3に取り付けられた状態で収容されている。
【0024】
コイルユニット4は、コイル40、コイル端子41、表示灯ユニット42、コア43およびヨーク44を備え、主に揺動部5のアーマチュア50を揺動させるための磁界を生成する。
【0025】
コイルユニット4のコイル40は、コイル端子41に電圧が印加されることによって励磁され、内部に有するコア43によって先述の磁界を形成する。
【0026】
表示灯ユニット42は、コイル端子41に電圧が印加されているか否かを照明光によって表示するユニットである。表示灯ユニット42は、主に照明光を照射する発光素子などの電子部品と、これら電子部品を取り付ける基板から構成される。
【0027】
ヨーク44は、板状の金属部材であって、コア43に対してカシメ固定されている。ヨーク44の(+Z)側の端部はアーマチュア50に当接しており、アーマチュア50が揺動する際の支点となる。すなわち、ヨーク44は、コア43とアーマチュア50との相対位置を決定する保持部材としての機能を有している。
【0028】
揺動部5は、アーマチュア50、ヒンジバネ51およびカード52を備え、コイル40とアーマチュア50との間の電磁的相互作用(主にコア43とアーマチュア50との間の吸引力を生じる作用)により生成された駆動力を、コモン端子部60に伝達する。また、ヒンジバネ51の付勢力によって生成される駆動力(主にカード52を(−Y)方向に復帰させる駆動力)を、コモン端子部60に伝達する。
【0029】
アーマチュア50は、(+Y)側端部が(−Z)方向に屈曲した板状の部材であって、励磁されたコイル40との間で電磁的相互作用を生じる素材(例えば、鉄)で形成される。詳細は図示しないが、アーマチュア50の(+Y)側端部は、カード52を(+Y)方向に押し出す押圧部となっている。すなわち、コイル40が励磁された状態では、アーマチュア50は、屈曲部(ヨーク44に当接している部分であって、X軸に略平行な軸となる)を中心に、(−Y)側の端部がコイル40(コア43)に引き寄せられる方向(図2において時計方向)に回動する。これによって、アーマチュア50の(+Y)側端部が(+Y)方向に移動し、カード52を(+Y)方向に移動させる。
【0030】
ヒンジバネ51は、例えばステンレス製の弾性部材であり、ベース3に取り付けられる。ヒンジバネ51は、アーマチュア50の(+Y)側端部を(−Y)方向に付勢する。この付勢力によって、ヒンジバネ51は、コイル40が励磁されていない状態において、アーマチュア50を前述の屈曲部を中心にコイル40(コア43)から離間する方向(図2において反時計方向)に回動させる。したがって、カード52を(+Y)方向に押圧していたアーマチュア50の(+Y)側端部が(−Y)方向に移動する。
【0031】
また、ヒンジバネ51は、カード52とも係合しており、カード52を(−Y)方向に引き寄せるように付勢する。したがって、アーマチュア50が図2において反時計回りに回動すると、カード52を(+Y)方向に付勢する外力(アーマチュア50から加わる力)が消滅するので、カード52はヒンジバネ51の付勢力に従って(−Y)方向に移動する。
【0032】
図3は、カード52の平面図である。また、図4は、図3に示すIV−IV線におけるカード52の断面図である。
【0033】
カード52は、可撓性を有する樹脂製の一体構造物であり、本体部520、保持部521および取付部524がそれぞれ形成されている。このような構造により、カード52は、コモン端子部60を移動(変形)させるための駆動力を伝達するリンク部材として機能する。
【0034】
カード52の本体部520は、カード52の各部のうち、XZ平面に略平行に配置される略矩形の板状部分である。本体部520は、コイルユニット4と接点ユニット6との間の隔壁としての機能を有している。
【0035】
可動バネ600を保持する保持部521は、アーム522およびアーム523から構成される。アーム522,523は、いずれも本体部520から接点ユニット6側に向けて突設されている。アーム522とアーム523とはX軸方向に互いに対向して配置され、互いにほぼ対称な形状を有している。
【0036】
アーム522には、可動バネ600の(−X)側の端部に係合する支持部522aが設けられており、支持部522aにはスリット522bが形成されている。同様に、アーム523には、可動バネ600の(+X)側の端部に係合する支持部523aが設けられており、支持部523aにはスリット523bが形成されている。
【0037】
これらのスリット522b,523bに可動バネ600が挿入されることによって、可動バネ600のX軸方向の両端が保持部521に保持され、カード52と可動バネ600とが係合する。なお、スリット522bおよびスリット523bのXY平面における断面は略三角形状とされているが、詳細については後述する。
【0038】
平面視で略T字型をした突部として形成される取付部524は、ヒンジバネ51と係合する機能を有している。詳細は省略するが、取付部524の(+Y)側の面とヒンジバネ51とが迎合し、ヒンジバネ51から(−Y)方向の付勢力が加わる。また、取付部524には、(+Z)側が開口した略箱状の溝524aが設けられている。この溝524aにアーマチュア50の(+Y)側の端部が挿入されることにより、アーマチュア50とカード52とが係合する。
【0039】
なお、図3に示すように、支持部522aのスリット522bの(+X)側開口部と、支持部523aのスリット523bの(−X)側開口部との水平距離を対向距離L1と称する。また、スリット522bおよびスリット523bを形成する複数の面のうち、YZ平面に略平行な2つの面の水平距離を対向距離L2と称する。
【0040】
図1および図2に戻って、接点ユニット6は、コモン端子部60、常閉接点端子61および常開接点端子62を備え、揺動部5から伝達される駆動力に応じて、回路を切り替える機能を有している。
【0041】
図2に示すように、接点ユニット6において、常閉接点端子61および常開接点端子62の(+Z)側の端部は、所定の間隔をあけて、Y軸方向に対向しており、その間にコモン端子部60が配置される。コモン端子部60(コモン端子602)、常閉接点端子61および常開接点端子62は、いずれもベース3の外部に露出し、外部の回路と電気的に接続することが可能とされている。
【0042】
コモン端子部60は、Y軸方向に弾性を有する略短冊状の可動バネ600と、可動バネ600をY軸方向に貫通して取り付けられる可動接点601と、ベース3に固定されるコモン端子602(図2)とを有する。
【0043】
図5は、可動バネ600を示す図である。可動バネ600には、カード52の支持部522a,523aと所定の位置で係合するための切り欠き部603,604が形成されている。切り欠き部603と切り欠き部604とはX軸方向に対向する位置に設けられる。すなわち、この切り欠き部603,604の部分において、可動バネ600のX軸方向の幅L3は、その上下位置におけるX軸方向の幅L4よりも狭くなっている。ここで、カード52の保持部521と可動バネ600との寸法上の関係をみれば、対向距離L1<幅L3<対向距離L2<幅L4となっている。
【0044】
可動バネ600の幅L4が対向距離L2より大きいことによって、一旦、切り欠き部603,604と係合したカード52のアーム522,523は、容易にはZ軸方向にずれることはない。すなわち、図11に示す従来例(カード110の(+Y)側の突部110aが可動バネ102に差し込まれている)と同様に、カード52から可動バネ600に伝達される駆動力の作用点をほぼ一定に保つことができる。したがって、可動バネ600の動作を安定させることができる。
【0045】
また、可動バネ600の幅L3が対向距離L1より大きいことによって、カード52がY軸方向に移動した際に、可動バネ600がスリット522b,523bから容易に抜けることがない。
【0046】
さらに、カード52の保持部521は、アーム522,523のスリット522b,523bに、可動バネ600のX軸方向の両端部を挿入した状態で可動バネ600を保持する。したがって、カード52は、(+Y)方向に移動する場合のみならず、(−Y)方向に移動する場合であっても、可動バネ600に駆動力を伝達することができる。したがって、リレー1の可動バネ600には、図11に示す従来のリレー100のように復帰用の屈曲加工を施す必要がない。
【0047】
また、従来のリレー100のように、定常状態において、可動接点102aが常閉接点103aに接触する位置となるように可動バネ102が屈曲加工されている場合において、この可動接点102aを常開接点104aに接触させるように可動バネ102を移動(変形)させると、屈曲している部位を押し広げる方向に荷重をかけることになる。このような荷重をかけると、可動バネ102に可塑的な変形が生じやすく、可動バネ102のバネ特性が変化するという問題がある。また、可動バネ102を変形させる方向が一方向であるため、さらに特性劣化を促進させることとなる。
【0048】
ところが、本実施の形態における可動バネ600には、先述のように、カード52を介して、Y軸方向のいずれの向きにも駆動力を伝達することができる。したがって、定常状態(可動バネ600にカード52からの外力が働かない状態)において、図2に示すように、ほぼ鉛直方向に沿うように可動バネ600を配置することができる。これにより、可動接点601を移動させる際の可動バネ600の変形方向は、中立状態を中心に両方向となるため、可動バネ600に働く応力が小さくなる。したがって、経時劣化による可動バネ600のヘタリ等を抑制することができる。
【0049】
可動バネ600の(−Z)側の端部には、ベース3に固定されたコモン端子602に固定するための一対の取付孔606が設けられている。したがって、可動バネ600の(−Z)側の端部は静止しており、カード52の移動に伴って、可動バネ600はY軸方向に曲げ変形することとなる。すなわち、コモン端子部60が本発明の可変形端子部に相当する。
【0050】
図6は、カード52が(+Y)側に移動した状態における支持部522aと可動バネ600との位置関係を示す側面図である。また、図7は、カード52が(−Y)側に移動した状態における支持部522aと可動バネ600との位置関係を示す側面図である。なお、支持部523a(スリット523b)についても同様の構造であるので図示を省略する。
【0051】
図6および図7に示すように、スリット522bは、Y軸方向の幅が一定ではなく、(−Z)方向に幅が広くなるように形成されている。すなわち、スリット522bの(−Y)側には逃げ空間522cが形成されており、カード52が(+Y)方向に移動した際に、可動バネ600を逃がすことができるようになっている。一方、スリット522bの(+Y)側には逃げ空間522dが形成されており、カード52が(−Y)方向に移動した際に、可動バネ600を逃がすことができるようになっている。
【0052】
このように、逃げ空間522c,522dを設けることによって、可動バネ600を曲げ変形させる際に、可動バネ600に働く応力を抑制することができる。したがって、小さい駆動力で可動接点601を移動させることができる。また、逃げ空間522c,522dによって、スリット522b部を成形する金型の強度アップも図れる。
【0053】
また、逃げ空間522c,522dが(−Z)方向に幅が広い形状であることによって、逆にスリット522bの(+Z)側の開口部は比較的狭くなる。これにより、支持部522aと可動バネ600との間のクリアランスを小さく維持することができる。したがって、逃げ空間522c,522dを設けたとしても、本実施の形態におけるリレー1は、応答性の低下を抑制することができる。
【0054】
図2に戻って、常閉接点端子61および常開接点端子62の(+Z)側の端部には、可動接点601との接触を確実に行うために、常閉接点610および常開接点620が、可動接点601と対向する位置にそれぞれ設けられている。常閉接点端子61および常開接点端子62は、ベース3に固定されており常時静止している。
【0055】
このリレー1の接点切替え動作を簡単に説明すると、以下の通りである。コイル40にコイル端子41を通じて電圧が印加されない状態では、ヒンジバネ51の付勢力によってカード52が(−Y)方向に付勢される。この付勢力によってカード52が(−Y)方向に移動し、カード52に係合したコモン端子部60の可動バネ600が(−Y)方向に引き寄せられる。
【0056】
この動きに連動して、可動バネ600に取り付けられている可動接点601が第1位置に移動し、常閉接点端子61に接触するとともに、常開接点端子62から離間する。すなわち、コイル端子41に電圧が印加されない状態では、コモン端子部60と常閉接点端子61とは導通状態にあり、逆にコモン端子部60と常開接点端子62とは切断状態にある。
【0057】
一方、コイル40のコイル端子41に電圧が印加されると、コイル40の図示しないコアからアーマチュア50にかけて生ずる磁界により、アーマチュア50がヒンジバネ51の付勢力に抗してコア43の上端に引き寄せられる。すなわち、コイル40とアーマチュア50との電磁的相互作用によって、アーマチュア50が揺動(回動)する。
【0058】
このアーマチュア50の動きがカード52を通じてコモン端子部60の可動バネ600に伝えられ、可動バネ600が常開接点端子62側(+Y方向)に押し出されて、可動接点601が第2位置に移動する。これにより、コモン端子部60(可動接点601)と常開接点端子62との間が導通状態となる。逆に常閉接点610から可動接点601が離れ、コモン端子部60と常閉接点端子61との間は切断状態となる。
【0059】
以上が、本実施の形態におけるリレー1の機能および構成の説明である。次に、リレー1を組み立てる場合、特にカード52を取り付ける工程について説明する。
【0060】
図8は、支持部522aと可動バネ600とが係合している様子を示す図である。すなわち、図8は、図1および図2における可動バネ600と支持部522aとの関係を示している。また、図9は、取付中の支持部522aと可動バネ600との関係を示す図である。なお、図8および図9において可動バネ600は水平面における断面を示す。また、図10は、ベース3に取り付けられているコモン端子部60にカード52を取り付ける様子を示す図である。
【0061】
図8に示すように、スリット522bは、Y軸方向の間隔が均一な空間として設けられるのではなく、(+X)側の開口部よりも(−X)側に向けて広くなるように設けられている。すなわち、スリット522bを形成する複数の面のうち、(+Y)側に配置される形成面522eがX軸に並行ではなく、傾いた面となっている。したがって、スリット522bの水平面における断面は略三角形状となっており、逃げ空間522fが形成される。なお、スリット522b,523bをこのような形状とすることにより、断面形状が矩形の通常のスリットを形成する場合に比べて、カード52を製造する際の金型の耐久性も向上する。
【0062】
先述のように、カード52のアーム522,523の対向距離L2(図3)は、可動バネ600のX軸方向の幅L4(図5)より小さい。したがって、可動バネ600にカード52を取り付ける際には、対向配置されているアーム522,523がX軸両側に向かって押し広げられた状態となる。なお、図5および図10に示すように、可動バネ600の(+Z)側の端部は、アーム522,523をスムーズに押し広げるために、(−Z)方向に向かって徐々に幅が広くなっている。これによって、カード52を取り付ける作業が容易になる。
【0063】
アーム522,523が押し広げられる場合であっても、その長さ(静止状態におけるY軸方向の長さ)は、ほとんど変化しないため、アーム522,523は付け根の部分を中心にXY平面内で僅かに回動することとなる。
【0064】
すなわち、アーム522,523が可動バネ600によって押し広げられると、図9に示すように、支持部522aは、可動バネ600に対して僅かに傾いた状態となる。一般的な逃げ空間のないスリットでは、このような回動によってスリットの位置が変化すると、支持部522aと可動バネ600との摩擦力が増大して、カード52を滑らかに押し込むことができない。
【0065】
しかし、本実施の形態におけるリレー1では、スリット522bに逃げ空間522fが設けられているので、可動バネ600の先端((−X)方向の端部)を逃がすことができる。言い換えると、支持部522aが僅かに回動することによって、スリット522bのX軸方向の空間距離が長くなる(スリット522b内に挿入できる可動バネ600のX軸方向の長さが長くなる)。これにより、可動バネ600とアーム522との間の摩擦力を抑制することができるので、カード52を滑らかに取り付けることができる。
【0066】
また、従来のリレー100では、カード110を(−Z)方向に移動させて高さ位置を調整した上で、突部110aを常閉接点端子103に挿入させるために、(+Y)方向への移動が必要があった。すなわち、リレー100ではカード110の取り付けがダブルアクションとなっていた。しかし、本実施の形態におけるリレー1では、図10に示すように、カード52をワンアクションで取り付けることができるため、組み立て作業が容易になる。
【0067】
また、カード52の組み立てに際して、(+Y)方向への移動が不要になることにより、ベース3に既にコイルユニット4が取り付けられた状態であっても、カード52の取付が可能である。また、コモン端子部60とカード52とを別の場所で係合させてから、ベース3に組み込むことも可能であり、リレー1の組み立て工程の自由度が増し、状況に応じた組み立て作業が可能となる。
【0068】
また、図10に示すように、アーム522,523は常閉接点端子61と干渉することはないので、常閉接点端子61にカード52を通すための穿孔を施す必要がない。したがって、常閉接点端子61の製造工程が簡素化されるとともに、電気的性質が向上する。
【0069】
なお、支持部523a(スリット523b)は、支持部522a(スリット522b)と同様の構造であるので図示および説明を省略する。また、スリット522b,523bは、X軸方向の開口部がそれぞれY軸方向に狭くなっているので、支持部522a,523aと可動バネ600との間のクリアランスは小さく維持されている。
【0070】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0071】
例えば、スリット522b,523bの断面形状は略三角形状に限定されるものではない。すなわち、支持部522aが回動した場合に、可動バネ600の端部を逃がすための逃げ空間522fを形成することができる形状であればどのような形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るリレーの外観斜視図である。
【図2】リレーの内部構造を示す側面図である。
【図3】カードの平面図である。
【図4】図3に示すIV−IV線におけるカードの断面図である。
【図5】可動バネを示す図である。
【図6】カードが(+Y)側に移動した状態における支持部と可動バネとの位置関係を示す側面図である。
【図7】カードが(−Y)側に移動した状態における支持部と可動バネとの位置関係を示す側面図である。
【図8】支持部と可動バネとが係合している様子を示す図である。
【図9】組み立て中の支持部と可動バネとの関係を示す図である。
【図10】ベースに取り付けられているコモン端子部にカードを取り付ける様子を示す図である。
【図11】従来のリレーにおける接点ユニットの構造とカードとを示す概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 リレー
2 ケース
3 ベース
4 コイルユニット
40 コイル
5 揺動部
50 アーマチュア
51 ヒンジバネ
52 カード
521 保持部
522,523 アーム
522a,523a 支持部
522b,523b スリット
522c,522d 逃げ空間(第2逃げ空間)
522f 逃げ空間(第1逃げ空間)
6 接点ユニット
60 コモン端子部
600 可動バネ
601 可動接点
602 コモン端子
603,604 切り欠き部
61 常閉接点端子
610 常閉接点
62 常開接点端子
620 常開接点
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路を開閉するリレーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リレーにおいては、コイルに電圧を印加することによってアーマチュア(揺動部材)を揺動させて回路を開閉する。すなわち、コイルに電圧が印加されていない状態では、可動接点と常閉接点とが接触し、コイルに電圧が印加されている状態では、可動接点と常開接点とが接触する。一般に、可動接点は常閉接点と常開接点の間に配置されており、いかにして可動接点にアーマチュアの動作を伝達するかが問題となる。
【0003】
図11は、従来のリレー100における接点ユニット101の構造とカード110とを示す概略図である。なお、図11は、リレー100のコイルに電圧が印加されていない状態を示す。接点ユニット101は、可動接点102aを有する可動バネ102、常閉接点103aを有する常閉接点端子103、常開接点104aを有する常開接点端子104を備えている。
【0004】
カード110は、常閉接点端子103に設けられている孔103bに挿入されることにより、常閉接点端子103を貫通するように配置されている。また、カード110の(+Y)側の突部110aが可動バネ102に差し込まれている。
【0005】
孔103bは充分な開口面積を有しており、常閉接点端子103とカード110とは互いに干渉しないようにされている。すなわち、カード110が移動しても常閉接点端子103に対してカード110から外力が伝播することはなく、常閉接点端子103は静止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のリレーでは、常閉接点端子にカードとの干渉を防止するための穿孔加工が必要であり、製造工程が複雑化するとともに、常閉接点端子の電気的性質(抵抗値等)が低下するおそれがあるという問題があった。
【0007】
また、カードは常閉接点端子側から可動バネに挿入されているだけで固定されていないので、可動接点を常閉接点側に復帰させるための構造(図11に示す例では、可動バネ102の屈曲加工)が必要であるという問題があった。
【0008】
また、可動バネを屈曲加工すると、可動接点を常開接点側に押し出す際に、屈曲部を押し広げる向きに外力を加えるため、経時変化によって復帰精度が低下しやすいという問題があった。すなわち、屈曲部にヘタリを生じやすいという問題があった。
【0009】
さらに、リレーの製造工程において、各部品は上方から基台に取り付けるように組み立てることが好ましい。しかし、カードが可動バネおよび常閉接点端子に挿入される構造であるため、カードを側方から取り付けなければならず、組み立てる際の作業効率が悪いという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、製造工程が簡潔であるとともに、動作精度のよいリレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材とを備え、前記リンク部材は、前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、前記スリットの断面形状は、略三角形状であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材とを備え、前記リンク部材は、前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、前記スリットには、前記可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係るリレーであって、前記スリットには、前記可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および3に記載の発明では、スリットの断面形状が、略三角形状であることにより、挿入時に保持部と可変形端子部との間に作用する摩擦力を抑制することができるため、組み立てが容易である。
【0015】
請求項2および3に記載の発明では、スリットには、可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることにより、挿入時に保持部と可変形端子部との間に作用する摩擦力を抑制することができるため、組み立てが容易である。
【0016】
請求項3に記載の発明では、スリットには、可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることにより、可変形端子部の変形時に保持部にかかる応力を抑制することができる。したがって、保持部の変形および劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0018】
<1. 実施の形態>
図1は、本発明に係るリレー1の外観斜視図である。また、図2は、リレー1の内部構造を示す側面図である。
【0019】
なお、図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。また、図1では、ケース2の外形を二点鎖線で示している。
【0020】
本実施の形態におけるリレー1は、図1に示すように、中空のケース2とベース3とが係合することによって、内部を保護する構造となっている。
【0021】
ケース2は、光透過性を有する樹脂製の一体構造物であって、ベース3と係合する(−Z)方向に開口した略箱状の部材である。なお、ケース2を構成する素材は、内部を保護することのできる強度を有する素材であれば、どのようなものであってもよい。このような素材として、例えば、ガラス(石英)などを用いてもよい。
【0022】
ベース3は、リレー1の各構成要素の基台として機能する。これらリレー1の各構成要素は、主に(+Z)側からベース3に取り付けられる。また、リレー1の端子(例えば、コイル端子41等)は、ベース3を(+Z)側から(−Z)側に貫通するように取り付けられており、ベース3の外部に露出している。このようにして、露出した端子に外部の所定の回路を接続することによって、リレー1の内部と外部との電気的接続が実現される。
【0023】
リレー1の内部には、コイルユニット4、揺動部5および接点ユニット6がベース3に取り付けられた状態で収容されている。
【0024】
コイルユニット4は、コイル40、コイル端子41、表示灯ユニット42、コア43およびヨーク44を備え、主に揺動部5のアーマチュア50を揺動させるための磁界を生成する。
【0025】
コイルユニット4のコイル40は、コイル端子41に電圧が印加されることによって励磁され、内部に有するコア43によって先述の磁界を形成する。
【0026】
表示灯ユニット42は、コイル端子41に電圧が印加されているか否かを照明光によって表示するユニットである。表示灯ユニット42は、主に照明光を照射する発光素子などの電子部品と、これら電子部品を取り付ける基板から構成される。
【0027】
ヨーク44は、板状の金属部材であって、コア43に対してカシメ固定されている。ヨーク44の(+Z)側の端部はアーマチュア50に当接しており、アーマチュア50が揺動する際の支点となる。すなわち、ヨーク44は、コア43とアーマチュア50との相対位置を決定する保持部材としての機能を有している。
【0028】
揺動部5は、アーマチュア50、ヒンジバネ51およびカード52を備え、コイル40とアーマチュア50との間の電磁的相互作用(主にコア43とアーマチュア50との間の吸引力を生じる作用)により生成された駆動力を、コモン端子部60に伝達する。また、ヒンジバネ51の付勢力によって生成される駆動力(主にカード52を(−Y)方向に復帰させる駆動力)を、コモン端子部60に伝達する。
【0029】
アーマチュア50は、(+Y)側端部が(−Z)方向に屈曲した板状の部材であって、励磁されたコイル40との間で電磁的相互作用を生じる素材(例えば、鉄)で形成される。詳細は図示しないが、アーマチュア50の(+Y)側端部は、カード52を(+Y)方向に押し出す押圧部となっている。すなわち、コイル40が励磁された状態では、アーマチュア50は、屈曲部(ヨーク44に当接している部分であって、X軸に略平行な軸となる)を中心に、(−Y)側の端部がコイル40(コア43)に引き寄せられる方向(図2において時計方向)に回動する。これによって、アーマチュア50の(+Y)側端部が(+Y)方向に移動し、カード52を(+Y)方向に移動させる。
【0030】
ヒンジバネ51は、例えばステンレス製の弾性部材であり、ベース3に取り付けられる。ヒンジバネ51は、アーマチュア50の(+Y)側端部を(−Y)方向に付勢する。この付勢力によって、ヒンジバネ51は、コイル40が励磁されていない状態において、アーマチュア50を前述の屈曲部を中心にコイル40(コア43)から離間する方向(図2において反時計方向)に回動させる。したがって、カード52を(+Y)方向に押圧していたアーマチュア50の(+Y)側端部が(−Y)方向に移動する。
【0031】
また、ヒンジバネ51は、カード52とも係合しており、カード52を(−Y)方向に引き寄せるように付勢する。したがって、アーマチュア50が図2において反時計回りに回動すると、カード52を(+Y)方向に付勢する外力(アーマチュア50から加わる力)が消滅するので、カード52はヒンジバネ51の付勢力に従って(−Y)方向に移動する。
【0032】
図3は、カード52の平面図である。また、図4は、図3に示すIV−IV線におけるカード52の断面図である。
【0033】
カード52は、可撓性を有する樹脂製の一体構造物であり、本体部520、保持部521および取付部524がそれぞれ形成されている。このような構造により、カード52は、コモン端子部60を移動(変形)させるための駆動力を伝達するリンク部材として機能する。
【0034】
カード52の本体部520は、カード52の各部のうち、XZ平面に略平行に配置される略矩形の板状部分である。本体部520は、コイルユニット4と接点ユニット6との間の隔壁としての機能を有している。
【0035】
可動バネ600を保持する保持部521は、アーム522およびアーム523から構成される。アーム522,523は、いずれも本体部520から接点ユニット6側に向けて突設されている。アーム522とアーム523とはX軸方向に互いに対向して配置され、互いにほぼ対称な形状を有している。
【0036】
アーム522には、可動バネ600の(−X)側の端部に係合する支持部522aが設けられており、支持部522aにはスリット522bが形成されている。同様に、アーム523には、可動バネ600の(+X)側の端部に係合する支持部523aが設けられており、支持部523aにはスリット523bが形成されている。
【0037】
これらのスリット522b,523bに可動バネ600が挿入されることによって、可動バネ600のX軸方向の両端が保持部521に保持され、カード52と可動バネ600とが係合する。なお、スリット522bおよびスリット523bのXY平面における断面は略三角形状とされているが、詳細については後述する。
【0038】
平面視で略T字型をした突部として形成される取付部524は、ヒンジバネ51と係合する機能を有している。詳細は省略するが、取付部524の(+Y)側の面とヒンジバネ51とが迎合し、ヒンジバネ51から(−Y)方向の付勢力が加わる。また、取付部524には、(+Z)側が開口した略箱状の溝524aが設けられている。この溝524aにアーマチュア50の(+Y)側の端部が挿入されることにより、アーマチュア50とカード52とが係合する。
【0039】
なお、図3に示すように、支持部522aのスリット522bの(+X)側開口部と、支持部523aのスリット523bの(−X)側開口部との水平距離を対向距離L1と称する。また、スリット522bおよびスリット523bを形成する複数の面のうち、YZ平面に略平行な2つの面の水平距離を対向距離L2と称する。
【0040】
図1および図2に戻って、接点ユニット6は、コモン端子部60、常閉接点端子61および常開接点端子62を備え、揺動部5から伝達される駆動力に応じて、回路を切り替える機能を有している。
【0041】
図2に示すように、接点ユニット6において、常閉接点端子61および常開接点端子62の(+Z)側の端部は、所定の間隔をあけて、Y軸方向に対向しており、その間にコモン端子部60が配置される。コモン端子部60(コモン端子602)、常閉接点端子61および常開接点端子62は、いずれもベース3の外部に露出し、外部の回路と電気的に接続することが可能とされている。
【0042】
コモン端子部60は、Y軸方向に弾性を有する略短冊状の可動バネ600と、可動バネ600をY軸方向に貫通して取り付けられる可動接点601と、ベース3に固定されるコモン端子602(図2)とを有する。
【0043】
図5は、可動バネ600を示す図である。可動バネ600には、カード52の支持部522a,523aと所定の位置で係合するための切り欠き部603,604が形成されている。切り欠き部603と切り欠き部604とはX軸方向に対向する位置に設けられる。すなわち、この切り欠き部603,604の部分において、可動バネ600のX軸方向の幅L3は、その上下位置におけるX軸方向の幅L4よりも狭くなっている。ここで、カード52の保持部521と可動バネ600との寸法上の関係をみれば、対向距離L1<幅L3<対向距離L2<幅L4となっている。
【0044】
可動バネ600の幅L4が対向距離L2より大きいことによって、一旦、切り欠き部603,604と係合したカード52のアーム522,523は、容易にはZ軸方向にずれることはない。すなわち、図11に示す従来例(カード110の(+Y)側の突部110aが可動バネ102に差し込まれている)と同様に、カード52から可動バネ600に伝達される駆動力の作用点をほぼ一定に保つことができる。したがって、可動バネ600の動作を安定させることができる。
【0045】
また、可動バネ600の幅L3が対向距離L1より大きいことによって、カード52がY軸方向に移動した際に、可動バネ600がスリット522b,523bから容易に抜けることがない。
【0046】
さらに、カード52の保持部521は、アーム522,523のスリット522b,523bに、可動バネ600のX軸方向の両端部を挿入した状態で可動バネ600を保持する。したがって、カード52は、(+Y)方向に移動する場合のみならず、(−Y)方向に移動する場合であっても、可動バネ600に駆動力を伝達することができる。したがって、リレー1の可動バネ600には、図11に示す従来のリレー100のように復帰用の屈曲加工を施す必要がない。
【0047】
また、従来のリレー100のように、定常状態において、可動接点102aが常閉接点103aに接触する位置となるように可動バネ102が屈曲加工されている場合において、この可動接点102aを常開接点104aに接触させるように可動バネ102を移動(変形)させると、屈曲している部位を押し広げる方向に荷重をかけることになる。このような荷重をかけると、可動バネ102に可塑的な変形が生じやすく、可動バネ102のバネ特性が変化するという問題がある。また、可動バネ102を変形させる方向が一方向であるため、さらに特性劣化を促進させることとなる。
【0048】
ところが、本実施の形態における可動バネ600には、先述のように、カード52を介して、Y軸方向のいずれの向きにも駆動力を伝達することができる。したがって、定常状態(可動バネ600にカード52からの外力が働かない状態)において、図2に示すように、ほぼ鉛直方向に沿うように可動バネ600を配置することができる。これにより、可動接点601を移動させる際の可動バネ600の変形方向は、中立状態を中心に両方向となるため、可動バネ600に働く応力が小さくなる。したがって、経時劣化による可動バネ600のヘタリ等を抑制することができる。
【0049】
可動バネ600の(−Z)側の端部には、ベース3に固定されたコモン端子602に固定するための一対の取付孔606が設けられている。したがって、可動バネ600の(−Z)側の端部は静止しており、カード52の移動に伴って、可動バネ600はY軸方向に曲げ変形することとなる。すなわち、コモン端子部60が本発明の可変形端子部に相当する。
【0050】
図6は、カード52が(+Y)側に移動した状態における支持部522aと可動バネ600との位置関係を示す側面図である。また、図7は、カード52が(−Y)側に移動した状態における支持部522aと可動バネ600との位置関係を示す側面図である。なお、支持部523a(スリット523b)についても同様の構造であるので図示を省略する。
【0051】
図6および図7に示すように、スリット522bは、Y軸方向の幅が一定ではなく、(−Z)方向に幅が広くなるように形成されている。すなわち、スリット522bの(−Y)側には逃げ空間522cが形成されており、カード52が(+Y)方向に移動した際に、可動バネ600を逃がすことができるようになっている。一方、スリット522bの(+Y)側には逃げ空間522dが形成されており、カード52が(−Y)方向に移動した際に、可動バネ600を逃がすことができるようになっている。
【0052】
このように、逃げ空間522c,522dを設けることによって、可動バネ600を曲げ変形させる際に、可動バネ600に働く応力を抑制することができる。したがって、小さい駆動力で可動接点601を移動させることができる。また、逃げ空間522c,522dによって、スリット522b部を成形する金型の強度アップも図れる。
【0053】
また、逃げ空間522c,522dが(−Z)方向に幅が広い形状であることによって、逆にスリット522bの(+Z)側の開口部は比較的狭くなる。これにより、支持部522aと可動バネ600との間のクリアランスを小さく維持することができる。したがって、逃げ空間522c,522dを設けたとしても、本実施の形態におけるリレー1は、応答性の低下を抑制することができる。
【0054】
図2に戻って、常閉接点端子61および常開接点端子62の(+Z)側の端部には、可動接点601との接触を確実に行うために、常閉接点610および常開接点620が、可動接点601と対向する位置にそれぞれ設けられている。常閉接点端子61および常開接点端子62は、ベース3に固定されており常時静止している。
【0055】
このリレー1の接点切替え動作を簡単に説明すると、以下の通りである。コイル40にコイル端子41を通じて電圧が印加されない状態では、ヒンジバネ51の付勢力によってカード52が(−Y)方向に付勢される。この付勢力によってカード52が(−Y)方向に移動し、カード52に係合したコモン端子部60の可動バネ600が(−Y)方向に引き寄せられる。
【0056】
この動きに連動して、可動バネ600に取り付けられている可動接点601が第1位置に移動し、常閉接点端子61に接触するとともに、常開接点端子62から離間する。すなわち、コイル端子41に電圧が印加されない状態では、コモン端子部60と常閉接点端子61とは導通状態にあり、逆にコモン端子部60と常開接点端子62とは切断状態にある。
【0057】
一方、コイル40のコイル端子41に電圧が印加されると、コイル40の図示しないコアからアーマチュア50にかけて生ずる磁界により、アーマチュア50がヒンジバネ51の付勢力に抗してコア43の上端に引き寄せられる。すなわち、コイル40とアーマチュア50との電磁的相互作用によって、アーマチュア50が揺動(回動)する。
【0058】
このアーマチュア50の動きがカード52を通じてコモン端子部60の可動バネ600に伝えられ、可動バネ600が常開接点端子62側(+Y方向)に押し出されて、可動接点601が第2位置に移動する。これにより、コモン端子部60(可動接点601)と常開接点端子62との間が導通状態となる。逆に常閉接点610から可動接点601が離れ、コモン端子部60と常閉接点端子61との間は切断状態となる。
【0059】
以上が、本実施の形態におけるリレー1の機能および構成の説明である。次に、リレー1を組み立てる場合、特にカード52を取り付ける工程について説明する。
【0060】
図8は、支持部522aと可動バネ600とが係合している様子を示す図である。すなわち、図8は、図1および図2における可動バネ600と支持部522aとの関係を示している。また、図9は、取付中の支持部522aと可動バネ600との関係を示す図である。なお、図8および図9において可動バネ600は水平面における断面を示す。また、図10は、ベース3に取り付けられているコモン端子部60にカード52を取り付ける様子を示す図である。
【0061】
図8に示すように、スリット522bは、Y軸方向の間隔が均一な空間として設けられるのではなく、(+X)側の開口部よりも(−X)側に向けて広くなるように設けられている。すなわち、スリット522bを形成する複数の面のうち、(+Y)側に配置される形成面522eがX軸に並行ではなく、傾いた面となっている。したがって、スリット522bの水平面における断面は略三角形状となっており、逃げ空間522fが形成される。なお、スリット522b,523bをこのような形状とすることにより、断面形状が矩形の通常のスリットを形成する場合に比べて、カード52を製造する際の金型の耐久性も向上する。
【0062】
先述のように、カード52のアーム522,523の対向距離L2(図3)は、可動バネ600のX軸方向の幅L4(図5)より小さい。したがって、可動バネ600にカード52を取り付ける際には、対向配置されているアーム522,523がX軸両側に向かって押し広げられた状態となる。なお、図5および図10に示すように、可動バネ600の(+Z)側の端部は、アーム522,523をスムーズに押し広げるために、(−Z)方向に向かって徐々に幅が広くなっている。これによって、カード52を取り付ける作業が容易になる。
【0063】
アーム522,523が押し広げられる場合であっても、その長さ(静止状態におけるY軸方向の長さ)は、ほとんど変化しないため、アーム522,523は付け根の部分を中心にXY平面内で僅かに回動することとなる。
【0064】
すなわち、アーム522,523が可動バネ600によって押し広げられると、図9に示すように、支持部522aは、可動バネ600に対して僅かに傾いた状態となる。一般的な逃げ空間のないスリットでは、このような回動によってスリットの位置が変化すると、支持部522aと可動バネ600との摩擦力が増大して、カード52を滑らかに押し込むことができない。
【0065】
しかし、本実施の形態におけるリレー1では、スリット522bに逃げ空間522fが設けられているので、可動バネ600の先端((−X)方向の端部)を逃がすことができる。言い換えると、支持部522aが僅かに回動することによって、スリット522bのX軸方向の空間距離が長くなる(スリット522b内に挿入できる可動バネ600のX軸方向の長さが長くなる)。これにより、可動バネ600とアーム522との間の摩擦力を抑制することができるので、カード52を滑らかに取り付けることができる。
【0066】
また、従来のリレー100では、カード110を(−Z)方向に移動させて高さ位置を調整した上で、突部110aを常閉接点端子103に挿入させるために、(+Y)方向への移動が必要があった。すなわち、リレー100ではカード110の取り付けがダブルアクションとなっていた。しかし、本実施の形態におけるリレー1では、図10に示すように、カード52をワンアクションで取り付けることができるため、組み立て作業が容易になる。
【0067】
また、カード52の組み立てに際して、(+Y)方向への移動が不要になることにより、ベース3に既にコイルユニット4が取り付けられた状態であっても、カード52の取付が可能である。また、コモン端子部60とカード52とを別の場所で係合させてから、ベース3に組み込むことも可能であり、リレー1の組み立て工程の自由度が増し、状況に応じた組み立て作業が可能となる。
【0068】
また、図10に示すように、アーム522,523は常閉接点端子61と干渉することはないので、常閉接点端子61にカード52を通すための穿孔を施す必要がない。したがって、常閉接点端子61の製造工程が簡素化されるとともに、電気的性質が向上する。
【0069】
なお、支持部523a(スリット523b)は、支持部522a(スリット522b)と同様の構造であるので図示および説明を省略する。また、スリット522b,523bは、X軸方向の開口部がそれぞれY軸方向に狭くなっているので、支持部522a,523aと可動バネ600との間のクリアランスは小さく維持されている。
【0070】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0071】
例えば、スリット522b,523bの断面形状は略三角形状に限定されるものではない。すなわち、支持部522aが回動した場合に、可動バネ600の端部を逃がすための逃げ空間522fを形成することができる形状であればどのような形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るリレーの外観斜視図である。
【図2】リレーの内部構造を示す側面図である。
【図3】カードの平面図である。
【図4】図3に示すIV−IV線におけるカードの断面図である。
【図5】可動バネを示す図である。
【図6】カードが(+Y)側に移動した状態における支持部と可動バネとの位置関係を示す側面図である。
【図7】カードが(−Y)側に移動した状態における支持部と可動バネとの位置関係を示す側面図である。
【図8】支持部と可動バネとが係合している様子を示す図である。
【図9】組み立て中の支持部と可動バネとの関係を示す図である。
【図10】ベースに取り付けられているコモン端子部にカードを取り付ける様子を示す図である。
【図11】従来のリレーにおける接点ユニットの構造とカードとを示す概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 リレー
2 ケース
3 ベース
4 コイルユニット
40 コイル
5 揺動部
50 アーマチュア
51 ヒンジバネ
52 カード
521 保持部
522,523 アーム
522a,523a 支持部
522b,523b スリット
522c,522d 逃げ空間(第2逃げ空間)
522f 逃げ空間(第1逃げ空間)
6 接点ユニット
60 コモン端子部
600 可動バネ
601 可動接点
602 コモン端子
603,604 切り欠き部
61 常閉接点端子
610 常閉接点
62 常開接点端子
620 常開接点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、
第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、
前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材と、
を備え、
前記リンク部材は、
前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、
前記スリットの断面形状は、略三角形状であることを特徴とするリレー。
【請求項2】
電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、
第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、
前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材と、
を備え、
前記リンク部材は、
前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、
前記スリットには、前記可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることを特徴とするリレー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリレーであって、
前記スリットには、前記可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることを特徴とするリレー。
【請求項1】
電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、
第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、
前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材と、
を備え、
前記リンク部材は、
前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、
前記スリットの断面形状は、略三角形状であることを特徴とするリレー。
【請求項2】
電磁的相互作用により回路を開閉するリレーであって、
第1位置と第2位置との間で移動する接点部を有する可変形端子部と、
前記揺動部材の動きを前記可変形端子部に伝達することによって前記接点部を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるリンク部材と、
を備え、
前記リンク部材は、
前記可変形端子部を挿入するためのスリットが形成された保持部を有し、
前記スリットには、前記可変形端子部を挿入する際の第1逃げ空間が設けられていることを特徴とするリレー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリレーであって、
前記スリットには、前記可変形端子部の変形に応じた第2逃げ空間が設けられていることを特徴とするリレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−196204(P2006−196204A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3523(P2005−3523)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
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