リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物
【課題】難燃性、電気特性や耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供する
【解決手段】少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物である。
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に特定の置換基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又は特定のアルキル基、もしくはアリール基等を示す。]
【解決手段】少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物である。
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に特定の置換基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又は特定のアルキル基、もしくはアリール基等を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物に関する。詳しくは、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤等を含むリン含有硬化性樹脂組成物、並びにそれを硬化させてなるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用的な樹脂硬化物のひとつである、エポキシ樹脂は、例えば、電子部品の封止用材料、積層板用材料等、一般的に電気、電子材料分野では幅広く使用されている。特に、耐熱性及び信頼性の観点から選ばれたフェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂とを用いて製造される半導体封止用エポキシ樹脂硬化性組成物は、安全性の観点から、高温下でも十分な火災防止作用を示すことが要求されており、近年、その開発が盛んに行われている。
【0003】
ところで、既存の樹脂の難燃性を向上させる方法については、既に様々な検討が行われている。例えば、ハロゲン化合物を添加した樹脂組成物や、ハロゲン原子を有するモノマーを用いた樹脂等ハロゲン原子を含む難燃剤には、良好な難燃性を有したものが知られているが、燃焼分解時にダイオキシン類の発生の可能性があり、高温下での人体への安全性を十分に満足するとは言い難かった。
【0004】
一方、ハロゲン原子が含まれていない材料による非ハロゲン系難燃性材料として、近年、有機リン系化合物を添加した樹脂材料が注目されている。この有機リン系化合物を添加した樹脂材料は、既存の樹脂に比べて高い難燃性効果が認められてはいるものの、添加する材料の相性によっては、単に樹脂に、前記有機リン系化合物を添加・混合したのみでは、いわゆるブリードアウト現象を起こすことが多く、十分な難燃性を示さないことがあった。
このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、リン酸エステル構造を骨格に組み込んだオリゴマーを含む樹脂組成物が、適度な難燃性を発揮することが開示されている。また、特許文献2には、10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを原料としてリン原子を骨格中に組み込んだ難燃性エポキシ樹脂について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−343382号
【特許文献2】特開2000−154234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂組成物中のオリゴマーは、耐加水分解性に弱く、さらにこの樹脂組成物から作製される樹脂硬化物は、電子・電気分野向けの材料としては吸水性が高いということがわかっている。また、特許文献2に記載されている化合物においても、分子内にリン酸結合部分を有しているために、満足な耐加水分解特性が得られない等の問題があった。
上記の先行技術文献より、これまで難燃性という観点から、様々な樹脂材料について、様々な検討が行われてはいるものの、依然として、良好な難燃性とその他の諸物性とのバランスがよい難燃性樹脂材料の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、難燃性、電気特性や耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、特定のリン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化開始剤を含有するリン含有硬化性樹脂組成物並びにその樹脂硬化物により上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供する。
【0009】
1.少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。]
【0012】
2.分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、前記1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0013】
3.フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、前記1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1つに記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、その硬化物が難燃性に優れた性質を示す組成物であるため、例えば、電気及び電子産業分野における電子部品の封止用材料等に有用である。
さらにこれを用いた本発明のリン含有樹脂硬化物についても、例えば、電気及び電子産業用、電子部品の封止用、積層板用等の幅広い材料での使用に対して、優れた難燃性を持つ硬化物として有用である。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、及びこれを用いた硬化物は、分子内にリン酸結合、その他、例えば、エステル結合、アミド結合等、加水分解により開裂する結合は一切含有しておらず、良好な耐加水分解特性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図2】実施例2で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図3】比較例1で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図4】実施例3で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図5】実施例4で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図6】実施例5で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図7】比較例2で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図8】実施例6で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図9】実施例7で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図10】実施例8で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図11】比較例3で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図12】実施例9で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図13】比較例4で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図14】実施例10で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図15】比較例5で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図16】実施例11で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図17】比較例6で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図18】実施例12で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図19】比較例7で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[リン含有硬化性樹脂組成物]
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、特定のリン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤を含む組成物であり、さらに必要に応じて種々の添加化合物を含有し得るものである。
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造方法は、少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合させる方法により得られる。
【0018】
〈リン含有ビスフェノール化合物〉
本発明のリン含有ビスフェノール化合物は、下記一般式(1)で示される。
【0019】
【化2】
【0020】
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。
【0021】
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、位置異性体を含む。炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した基を示し、位置異性体を含む。炭素数1〜6のアルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基は、無置換又は置換基を有している芳香族炭化水素基を示し、より詳しくは、芳香族炭化水素基の1個以上の水素原子が、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。ここで「アルキル基」及び「アルキルオキシ基」は、前記アルキル基及びアルキルオキシ基と同義である。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、シクロプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基、シクロプロポキシフェニル基及びn−ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基は、前記アリール基が酸素原子に結合した基を示し、さらに、前記アリール基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。
前記アリールオキシ基の具体的としては、トルイルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、エチルフェニルオキシ基、n−プロピルフェニルオキシ基、イソプロピルフェニルオキシ基、シクロプロピルフェニルオキシ基、n−ブチルフェニルオキシ基、t−ブチルフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、n−プロポキシフェニルオキシ基、イソプロポキシフェニルオキシ基、シクロプロポキシフェニルオキシ基及びn−ブトキシフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記より、一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4としてそれぞれ独立に、好ましくは、ニトロ基、シアノ基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。
【0026】
p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数であり、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。p、q、r、sが0を表す場合、無置換であることを意味する。p、q、r、sが2以上の整数を表す場合、複数のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ、互いに同一でもあっても、又は異なってもよい。また、複数のR1、R2がそれぞれ、ベンゼン環における隣接する炭素原子に置換されている場合、互いに結合して環状構造を形成してもよい。なお、R1とR2は、互いに同一の置換基であることが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物は、例えば、下記式(2)〜(4)で表される化合物を、下記反応式に従って、例えば、後述の参考例1〜3のように反応させることにより合成することができるが、合成方法は特に制限されるものではない。なお、下記式(2)〜(4)中、R1〜R5、及びp〜sについては、前記と同義である。
【0028】
【化3】
【0029】
具体的には、上記式(2)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物と上記式(3)で示されるヒドロキシフェニルアルキルカルボニル化合物とを反応させて、リン含有アリールアルコール化合物とした後、該リン含有アリールアルコール化合物と上記式(4)で示されるフェノール化合物とを、無機酸、有機スルホン酸及び有機カルボン酸等の酸触媒の存在下で反応させて、一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物を合成することができる。また、上記と同様の酸触媒の存在下で、上記式(2)〜(4)で示される化合物を同時に投入し、反応させることにより合成することができる。
なお、上記方法により合成することができる上記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
〈エポキシ化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、該樹脂組成物に含まれるリン含有ビスフェノール及びフェノール樹脂の水酸基と反応し、硬化物を得ることができるものであれば特に制限はない。
上記より、使用されるエポキシ化合物として、好ましくは(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル等のトリエポキシド化合物;エポキシ化ポリブタジエン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックポリグリシジルエーテル等のポリエポキシド化合物が挙げられる。なお、上記エポキシ化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
さらに、上記エポキシ化合物の中でも、より好ましくは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、より好ましくは2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルが使用される。
また、本発明において使用することができるエポキシ化合物の市販品としては、例えば三菱化学製jERシリーズ(商品名)、DIC製エピクロンシリーズ(商品名)等が挙げられる。
【0032】
〈フェノール樹脂〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂としては、特に制限はないが、樹脂材料としての成型性向上の観点から、好ましくは軟化点が50〜250℃の当該フェノール樹脂、より好ましくは軟化点が50〜200℃の当該フェノール樹脂、特に好ましくは軟化点が50〜150℃の当該フェノール樹脂が使用される。なお、前記フェノール樹脂は、例えば、室温下(0〜30℃)で液状物であってもよい。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の樹脂材料として、例えば、熱や外部からの力に対する経時的安定性を向上させる目的から、使用するフェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)が、好ましくは10〜1000、より好ましくは30〜500、特に好ましくは50〜500である。なお、水酸基価は、JIS K 1557又はJIS K 0070の測定法に従って算出された値を使用する。
【0033】
前記フェノール樹脂の具体例としては、フェノール類(フェノール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼンなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFなど)、もしくはナフトール類(α−ナフトール、β−ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなど)とアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒドなど)との重縮合物(ノボラック型フェノール樹脂など);フェノール類とジエン類(テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレンなど)との重縮合物;フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなど)との重縮合物;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物等が挙げられる。上記フェノール樹脂は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において使用することができるフェノール樹脂の市販品としては、例えば、明和化成製HF−1M(商品名)、明和化成製MEH−7851(商品名)、昭和電工製BRG−556(商品名)等が挙げられる。
【0034】
〈硬化促進剤〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される硬化促進剤は、例えば、光硬化促進剤であっても熱硬化促進剤であってよく、特に制限はないが、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤、又はリン系硬化促進剤を使用する。また、記にその硬化促進剤の具体例を示すが、本発明の硬化促進剤は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0035】
(イミダゾール系硬化促進剤)
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等が使用される。これらの中でも、好ましくはイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールが使用される。
【0036】
(リン系硬化促進剤)
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が使用される。
【0037】
〈添加化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、例えば、離型剤、無機充填材、カップリング剤、樹脂変性物、又は着色剤等の添加化合物を含有させることができる。なお、これらの添加化合物は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0038】
(離型剤)
離型剤は、例えば、成形時の金型との離型を良くする等を目的として使用されるもので、従来公知のものがいずれも使用でき、特に制限はない。
具体的な離型剤としては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックスなどのエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸などの脂肪酸及びこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックス等が挙げられる。上記離型剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
(無機充填剤)
無機充填剤は、例えば、絶縁性の確保に加えて、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する等を目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
無機充填剤の具体例としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が挙げられる。なお、これら無機充填剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。さらに、後述のカップリング剤と混合して使用してもよい。これらの無機充填剤のうち、例えば、非晶性シリカ、及び結晶性シリカは、封止材の熱膨張係数を小さくでき、それによって封止材の接続信頼性を向上することができる点で好ましく使用される。
【0040】
(カップリング剤)
カップリング剤は、例えば、無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めること等を目的として使用される。
カップリング剤の具体例としては、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシラン等の各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類等が挙げられる。なお、上記カップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
(樹脂変性物)
樹脂変性物は、諸物性を微調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
樹脂変性物の具体例としては、ポリブタジエンの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物等が挙げられる。なお、上記樹脂変性物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
(着色剤)
着色剤は、外観を調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。なお、上記着色剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
〈リン含有硬化性樹脂組成物の製造方法〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造において、前記、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物及びフェノール樹脂の使用量は、使用するフェノール樹脂中の水酸基価(KOHmg/g)に対して特定することができる。
即ち、エポキシ化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、エポキシ化合物のエポキシ基数が、好ましくは0.5〜4となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.5〜2.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.5〜1.5となるような使用量である。また、リン含有ビスフェノール化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、リン含有ビスフェノール化合物の水酸基数が、好ましくは0.001〜1.0となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.001〜0.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.01〜0.5となるような使用量(混合比)である。
さらに、硬化促進剤の使用量は、上記の範囲で配合された、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.2〜5g、特に好ましくは0.4〜2gである。また、添加化合物の使用量は、上記の範囲で配合された、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0〜20g、より好ましくは0〜10g、特に好ましくは0〜6g使用される。
【0044】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、大気中又は不活性ガス環境下、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種のリン含有ビスフェノール化合物、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合する等の方法により製造される。具体例としては、使用するフェノール樹脂の軟化点前後まで加熱しながら、次いで、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、硬化促進剤の順に加えて混粘する等の操作を行い製造する方法が挙げられる。また適宜加熱してリン含有硬化性樹脂組成物の溶融成型物としても製造することができる。さらには別途有機溶媒を加えて溶解又はスラリーにしてリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。
【0045】
〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造方法〉
また、その一方、上記リン含有硬化性樹脂組成物を、その取り扱い性を容易にするために製造開始時から製造終了後にかけて、別途有機溶媒を添加してリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。
【0046】
〈有機溶媒〉
このような有機溶媒としては、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた場合に揮発する溶媒であれば特に限定されず、例えば、脂肪族ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなど)等が挙げられる。なお、上記有機溶媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記有機溶媒の使用量は、リン含有硬化性樹脂組成物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mL、より好ましくは0.5〜500mL、特に好ましくは1〜100mL使用される。
また、リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造は、前記の混合比で製造されたリン含有硬化性樹脂組成物と有機溶媒とを混合後、例えば、混合、攪拌、超音波処理、適宜加熱溶解処理等を行ってもよい。
【0048】
本発明は、上記のような配合比等で、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液を製造することにより、例えば、これを電気及び電子産業分野における電子部品の封止用、積層板用材料用の樹脂硬化剤等として使用した場合、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を発揮する。
【0049】
[リン含有樹脂硬化物]
また、本発明は、上述したリン含有硬化性樹脂組成物と必要に応じて添加される添加化合物とを硬化させてなるリン含有樹脂硬化物を提供する。さらに、リン含有硬化性樹脂組成物とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを反応させ、硬化してなるリン含有樹脂硬化物とすることもできる。
【0050】
(樹脂化合物)
上記樹脂化合物としては、硬化促進剤の作用により、上述したリン含有硬化性樹脂組成物中のエポキシ化合物と反応する硬化反応により化学結合を形成することができる、フェノール樹脂以外の樹脂化合物を用いることができる。
このような樹脂化合物の具体例としては、好ましくはメラニン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なお、上記樹脂化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、上記樹脂化合物とリン含有硬化性樹脂組成物との反応は、前記樹脂化合物1gに対してリン含有硬化性樹脂組成物の使用量が、好ましくは0.01〜1g、より好ましくは0.05〜0.50g、特に好ましくは0.1〜0.30g使用される。
本発明は、上記のような使用量にて反応させることによって、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を発揮することができ、例えば、電気及び電子産業分野における、電子部品の封止用、積層板用材料用の樹脂硬化物等として利用される。
【0052】
〈リン含有硬化物の製造方法〉
(硬化条件)
本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを、大気中又は不活性ガス環境下、硬化反応させることによって製造される。さらに、本発明の硬化物の製造方法は、例えば、所望の形状に成型した後、加熱硬化させる方法によっても製造することができる。具体的な方法としては、例えば、金属箔、離型フィルム等の各種基板上に塗布して加熱硬化させる方法、及び型に流し込んで加熱硬化させる方法等が挙げられるが、好ましくは硬化中において気泡が発生することのないように各種基板上に塗布して膜状に成型する方法である。
【0053】
上記硬化反応における、硬化温度及び硬化反応時間は適宜調整できるため特に制限されないが、好ましくは80〜250℃の硬化温度で行われる。
また、加熱し硬化させる工程は、一段階で行っても、例えば、温度条件を変えるなどして多段階で行ってもよいが、好ましくは硬化反応時に生じる揮発成分を系外へ除去するために、様々な硬化温度で、段階的に硬化させる多段階工程で行う。より具体的には、温度が100〜140℃で反応させる第一工程と、第一工程の硬化温度より高い温度である140℃〜200℃の温度下にて第二の硬化温度で加熱硬化させる多段階工程で行う。
【0054】
さらに本発明のリン含有樹脂硬化物は、モノマー成分として前記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物を含むことから難燃性を有し、また架橋構造を有することから、耐加水分解性を付与することができる。
従って、本発明のリン含有樹脂硬化物は、難燃剤のブリードアウト等を防止でき、難燃性及び耐吸湿性に優れていることから、例えば、LEDなどの封止材等の電気及び電子産業分野における電子部品の封止用等として有用である。
【実施例】
【0055】
次に、実施例において具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、参考例等に限定されるものではない。
【0056】
[参考例1]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−1)>
【0057】
【化4】
【0058】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とフェノール5.17g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。その後、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ろ過してろ物を取得後、さらにこのろ物をトルエン30mLで洗浄し、固形物を得た。次に、得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた懸濁液から固形物をろ別後、さらにこの固形物を冷アセトニトリルにて洗浄し、乾燥したところ、白色粉末として目的物であるビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド16.9gを得た(取得収率:84.3%)。
得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0059】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.28(1H,d)、6.53(4H,d)、7.32−7.43(10H,brs)、7.75−7.82(4H,brs)、9.16(2H,s)
融点:301℃
【0060】
[参考例2]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−2)>
【0061】
【化5】
【0062】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ジフェニルホスフィンオキシド2.02g(0.01モル)を加え、次いで、これに2−ヒドロキシベンズアルデヒド1.22g(0.01モル)とフェノール5.70g(0.05モル)とを順に加え、65℃にて1.5時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.02g(0.0001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して3時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応液をトルエン20mL中に滴下していったところ、析出物が生成した。生成した析出物をろ別し、さらにトルエン20mLで洗浄した。得られた析出物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(1−2)で示される((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド3.21gを得た(取得収率:80.3%)。
得られた((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0063】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.49(1H,d)、6.52(2H,d)、6.65−6.69(2H,brs)、6.89−6.94(2H,brs)、7.22−7.26(2H,brs)、7.34−7.46(6H,brs)、7.64−7.79(4H,brs)、7.91−7.94(1H,brs)、9.20(1H,s)、9.77(1H,s)
【0064】
[参考例3]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−3)>
【0065】
【化6】
【0066】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とクレゾール5.95g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、析出物をろ別し、さらにトルエン30mLで洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、その後0℃まで冷却して析出物をろ別し、冷アセトニトリルで洗浄した。得られた固形物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(1−3)で示される(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド17.8gを得た(取得収率:89.5%)。
得られた(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0067】
MSスペクトル〔CI−MS〕:415[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:1.96(3H,d)、5.24(1H,d)、6.51−6.54(3H,brs)、7.18−7.20(2H,brs)、7.31−7.38(8H,brs)、7.74−7.83(4H,brs)、9.09(2H,s)
融点:252℃
【0068】
[実施例1]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2007gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.8052gと2−ウンデシルイミダゾール0.0172gの混合物にジメチルアセトアミド1.9989gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)2.1846gを加え、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1A)を得た(下記、反応式〔5−1A〕)。
【0069】
【化7】
【0070】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図1に示した。
図1より、実施例1では1000℃における炭化物の残存重量割合が8.8%であった。
【0071】
[実施例2]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.4012gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.6092gと2−ウンデシルイミダゾール0.0175gの混合物にジメチルアセトアミド4.0225gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)2.0219g加え、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1B)を得た(下記、反応式〔5−1B〕)。
【0072】
【化8】
【0073】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図2に示した。
図2より、実施例2では1000℃における炭化物の残存重量割合が8.5%であった。
【0074】
[比較例1]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.0016gと2−ウンデシルイミダゾール0.0162gの混合物にジメチルアセトアミド1.0021gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1809gを加えて均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で5時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)を得た(下記、反応式〔Ref.1〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0075】
【化9】
【0076】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図3に示した。
図3より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドを含有していない比較例1では、1000℃における炭化物の残存重量割合が4.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例1(図1、残存重量割合8.8%)及び実施例2(図2、残存重量割合8.5%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0077】
[実施例3]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2012gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)0.8056gと2−ウンデシルイミダゾール0.0110gの混合物にジメチルアセトアミド2.0061gを添加し110℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5386g加え均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1C)を得た(下記、反応式〔5−1C〕)。
【0078】
【化10】
【0079】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図4に示した。
図4より、実施例3では1000℃における炭化物の残存重量割合が22.2%であった。
【0080】
[実施例4]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕0.2023gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8066gと、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5386gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0254gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加し室温で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−2A)を得た(下記、反応式〔5−2A〕)。
【0081】
【化11】
【0082】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図5に示した。
図5より、実施例4では1000℃における炭化物の残存重量割合が21.0%であった。
【0083】
[実施例5]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2007gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8025gと、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5168gと、2−エチル−メチルイミダゾール0.0258gの混合物にジメチルアセトアミド2.5055gを添加し室温で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3A)を得た(下記、反応式〔5−3A〕)。
【0084】
【化12】
【0085】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図6に示した。
図6より、実施例5では1000℃における炭化物の残存重量割合が24.9%であった。
【0086】
[比較例2]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.4965gと2−ウンデシルイミダゾール0.0147gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を1.0010g取り、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921gを加え均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)を得た(下記、反応式〔Ref.2〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0087】
【化13】
【0088】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図7に示した。
図7より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドを含有していない比較例2の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が14.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例3(図4、残存重量割合22.2%)、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕を含有している実施例4(図5、残存重量割合21.0%)、及び((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例5(図6、残存重量割合24.9%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0089】
[実施例6]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.4017gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.6125gと2−ウンデシルイミダゾール0.0200gの混合物にジメチルアセトアミド4.0121gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1770gを加えて均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1D)を得た(下記、反応式〔5−1D)。
【0090】
【化14】
【0091】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図8に示した。
図8より、実施例6では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%であった。
【0092】
[実施例7]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕0.4008gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.6196gと、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1808gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0336gの混合物にジメチルアセトアミド3.2162gを添加し均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−2B)を得た(下記、反応式〔5−2B〕)。
【0093】
【化15】
【0094】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図9に示した。
図9より、実施例7では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.1%であった。
【0095】
[実施例8]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2055gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;酸基当量218g/eq)0.8033gと、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5922gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0166gの混合物にジメチルアセトアミド1.5846gを添加し均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3B)を得た(下記、反応式〔5−3B〕)。
【0096】
【化16】
【0097】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図10に示した。
図10より、実施例8では1000℃における炭化物の残存重量割合が19.0%であった。
【0098】
[比較例3]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.0012gと2−ウンデシルイミダゾール0.0102gの混合物にジメチルアセトアミド1.0061gを室温にて添加し、均一な溶液とした。この溶液に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5811gを加えて均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)を得た(下記、反応式〔Ref.3〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0099】
【化17】
【0100】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図11に示した。
図11より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドが含有していない比較例3の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が11.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例6(図8、残存重量割合16.8%)、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕を含有している実施例7(図9、残存重量割合16.1%)、及び((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例8(図10、残存重量割合19.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0101】
[実施例9]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2024gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)0.8034gと2−ウンデシルイミダゾール0.0101gの混合物にジメチルアセトアミド2.0059gを添加し110℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828;エポキシ当量184−194g/eq)0.8905g加え均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1E)を得た(下記、反応式〔5−1E〕)。
【0102】
【化18】
【0103】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図12に示した。
図12より、実施例9では1000℃における炭化物の残存重量割合が25.7%であった。
【0104】
[比較例4]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021gと2−ウンデシルイミダゾール0.0129gの混合物にジメチルアセトアミド1.0987gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液1.0072gに2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828;エポキシ当量184−194g/eq)0.4342g加え均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)を得た(下記、反応式〔Ref.4〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0105】
【化19】
【0106】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図13に示した。
図13より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドが含有していない比較例4の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例9(図12、残存重量割合25.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0107】
[実施例10]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2010gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)0.8069gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.6522gと、トリフェニルホスフィン0.0270gの混合物にジメチルアセトアミド2.6931gを添加し100℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1E)を得た(下記、反応式〔5−1E〕)。
【0108】
【化20】
【0109】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図14に示した。
図14より、実施例10では1000℃における炭化物の残存重量割合が34.7%であった。
【0110】
[比較例5]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)2.0027gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)1.0158gと、トリフェニルホスフィン0.0318gの混合物にジメチルアセトアミド2.2900gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で5時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.5)を得た(下記、反応式〔Ref.5〕)。
【0111】
【化21】
【0112】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図15に示した。
図15より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有していない比較例5では、1000℃における炭化物の残存重量割合が29.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例10(図14、残存重量割合34.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0113】
[実施例11]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2007gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)0.8046gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.6772gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0288gの混合物にジメチルアセトアミド2.6530gを添加し100℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3C)を得た(下記、反応式〔5−3C〕)。
【0114】
【化22】
【0115】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図16に示した。
図16より、実施例11では1000℃における炭化物の残存重量割合が37.5%であった。
【0116】
[比較例6]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)2.0172gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0026gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0309gの混合物にジメチルアセトアミド3.0281gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.6)を得た(下記、反応式〔Ref.6〕)。
【0117】
【化23】
【0118】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図17に示した。
図17より、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有していない比較例6では、1000℃における炭化物の残存重量割合が28.2%となっており、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例11(図16、残存重量割合37.5%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
また、比較例5の残存重量割合29.2%との比較により、硬化促進剤をトリフェニルホスフィンから2−ウンデシルイミダゾールへ変更しても、1000℃における炭化物の残存重量割合が同等である樹脂が得られることがわかる。
【0119】
[実施例12]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2030gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)0.8001gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、ピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)0.9838gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0200gの混合物にジメチルアセトアミド2.9968gを添加し110℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1F)を得た(下記、反応式〔5−1F〕)。
【0120】
【化24】
【0121】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図18に示した。
図18より、実施例12では1000℃における炭化物の残存重量割合が38.0%であった。
【0122】
[比較例7]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.0086gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)1.0381gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0218gの混合物にジメチルアセトアミド2.0103gを添加し室温で均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.7)を得た(下記、反応式〔Ref.7〕)。
【0123】
【化25】
【0124】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図19に示した。
図19より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有していない比較例7の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例12(図18、残存重量割合38.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0125】
[参考例4]
300mLのガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)50.0gを量り、150℃で溶融させたところへ、エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828;エポキシ価184−194g/eq)90.5gを加え、よく撹拌した。さらに、120℃で硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.90gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に180℃で5時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
【0126】
[比較例8]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:2.01質量%>
300mLのガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)27.7gを量り、150℃で溶融させたところへ、エポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)50.1g、及びリン含有化合物としてレゾルシノールビスジ(2,6−ジメチルフェノール)ホスフェート(大八化学製PX−200)22.2gを加え、よく撹拌した。さらに、120℃で硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.50gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、リン化合物混合型の樹脂板を得た。
なお、比較例8のリン原子の含有率は、使用した、リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量(g)に対するリン含有化合物の量(g)と、使用したリン含有化合物(分子量)中の全リン原子量(リンの原子量:31×個数)とから、質量%で算出した。
【0127】
[比較例9]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:0.90質量%>
300mLのガラス製反応容器に、リン含有化合物として10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド12.5gとエポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)82.5gを量り、トリフェニルホスフィン0.82gを加えた後、室温で約30分間攪拌して良く分散させた。それから容器を140℃の油浴に浸し、内容物が透明となるまで反応させた。透明となった後、2時間攪拌を継続した。
別の300mLガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)37.5gを採り、150℃に加熱した。そこへ先の反応透明物を4回に分けて加えた。透明反応溶液を120℃にし、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.82gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
なお、比較例9のリン原子の含有率は、比較例8と同じ方法にて算出した。
【0128】
[実施例13]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:0.59質量%>
300mLのガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕10.0gとエポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)81.9gを量り、トリフェニルホスフィン0.82gを加えた後、室温で約30分間攪拌して良く分散させた。それから容器を140℃の油浴に浸し、内容物が透明となるまで反応させた。透明となった後、2時間攪拌を継続した。
別の300mLガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)40.0gを採り、150℃に加熱した。そこへ先の反応透明物を4回に分けて加えた。透明反応溶液を120℃にし、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.82gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
なお、実施例13のリン原子の含有率は、使用した、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量(g)に対するリン含有ビスフェノール化合物の量(g)と、使用したリン含有ビスフェノール化合物(分子量)中の全リン原子量(リンの原子量:31×個数)とから、質量%で算出した。
【0129】
[評価]
(難燃性)
前記参考例4、比較例8、比較例9及び実施例13で得られた樹脂板から、一般的な難燃性の判定方法であるUL94V規格に準じて試験片(長さ125mm、幅13mm、厚さ3mm)を各5個作製し、垂直燃焼試験を行った。次いで、UL94V(試験法)に記載の規格に則って、V−0、V−1、又はV−2等の等級評価を行ない、一方、UL94Vの規格の等級に達しない難燃性の低い(又は無い)ものは不適合とした。その結果を、以下の表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
表1より、本発明の特定のリン含有ビスフェノール化合物を含有させることにより、優れた難燃性効果(実施例13:V−0)があることがわかる。また、実施例13(0.59質量%)より本発明のリン化合物混合型の樹脂板中のリン原子の含有率は、比較例8(2.01質量%)及び比較例9(0.90質量%)におけるリン原子の含有率よりも少ないにもかかわらず、表1より、本発明のリン化合物混合型の樹脂板(実施例13)は、比較例8及び比較例9の樹脂板よりも、難燃性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、二官能性リン含有化合物を含むリン含有硬化性樹脂組成物、及びそれを硬化させることにより得られるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。当該硬化性樹脂組成物は、その硬化物が優れた難燃性を示すため、例えば、電気及び電子産業分野における電子部品の封止用材料、積層板用材料等で有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物に関する。詳しくは、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤等を含むリン含有硬化性樹脂組成物、並びにそれを硬化させてなるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用的な樹脂硬化物のひとつである、エポキシ樹脂は、例えば、電子部品の封止用材料、積層板用材料等、一般的に電気、電子材料分野では幅広く使用されている。特に、耐熱性及び信頼性の観点から選ばれたフェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂とを用いて製造される半導体封止用エポキシ樹脂硬化性組成物は、安全性の観点から、高温下でも十分な火災防止作用を示すことが要求されており、近年、その開発が盛んに行われている。
【0003】
ところで、既存の樹脂の難燃性を向上させる方法については、既に様々な検討が行われている。例えば、ハロゲン化合物を添加した樹脂組成物や、ハロゲン原子を有するモノマーを用いた樹脂等ハロゲン原子を含む難燃剤には、良好な難燃性を有したものが知られているが、燃焼分解時にダイオキシン類の発生の可能性があり、高温下での人体への安全性を十分に満足するとは言い難かった。
【0004】
一方、ハロゲン原子が含まれていない材料による非ハロゲン系難燃性材料として、近年、有機リン系化合物を添加した樹脂材料が注目されている。この有機リン系化合物を添加した樹脂材料は、既存の樹脂に比べて高い難燃性効果が認められてはいるものの、添加する材料の相性によっては、単に樹脂に、前記有機リン系化合物を添加・混合したのみでは、いわゆるブリードアウト現象を起こすことが多く、十分な難燃性を示さないことがあった。
このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、リン酸エステル構造を骨格に組み込んだオリゴマーを含む樹脂組成物が、適度な難燃性を発揮することが開示されている。また、特許文献2には、10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを原料としてリン原子を骨格中に組み込んだ難燃性エポキシ樹脂について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−343382号
【特許文献2】特開2000−154234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂組成物中のオリゴマーは、耐加水分解性に弱く、さらにこの樹脂組成物から作製される樹脂硬化物は、電子・電気分野向けの材料としては吸水性が高いということがわかっている。また、特許文献2に記載されている化合物においても、分子内にリン酸結合部分を有しているために、満足な耐加水分解特性が得られない等の問題があった。
上記の先行技術文献より、これまで難燃性という観点から、様々な樹脂材料について、様々な検討が行われてはいるものの、依然として、良好な難燃性とその他の諸物性とのバランスがよい難燃性樹脂材料の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、難燃性、電気特性や耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、特定のリン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化開始剤を含有するリン含有硬化性樹脂組成物並びにその樹脂硬化物により上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供する。
【0009】
1.少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。]
【0012】
2.分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、前記1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0013】
3.フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、前記1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1つに記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、その硬化物が難燃性に優れた性質を示す組成物であるため、例えば、電気及び電子産業分野における電子部品の封止用材料等に有用である。
さらにこれを用いた本発明のリン含有樹脂硬化物についても、例えば、電気及び電子産業用、電子部品の封止用、積層板用等の幅広い材料での使用に対して、優れた難燃性を持つ硬化物として有用である。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、及びこれを用いた硬化物は、分子内にリン酸結合、その他、例えば、エステル結合、アミド結合等、加水分解により開裂する結合は一切含有しておらず、良好な耐加水分解特性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図2】実施例2で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図3】比較例1で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図4】実施例3で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図5】実施例4で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図6】実施例5で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図7】比較例2で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図8】実施例6で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図9】実施例7で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図10】実施例8で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図11】比較例3で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図12】実施例9で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図13】比較例4で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図14】実施例10で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図15】比較例5で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図16】実施例11で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図17】比較例6で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図18】実施例12で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図19】比較例7で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[リン含有硬化性樹脂組成物]
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、特定のリン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤を含む組成物であり、さらに必要に応じて種々の添加化合物を含有し得るものである。
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造方法は、少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合させる方法により得られる。
【0018】
〈リン含有ビスフェノール化合物〉
本発明のリン含有ビスフェノール化合物は、下記一般式(1)で示される。
【0019】
【化2】
【0020】
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。
【0021】
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、位置異性体を含む。炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した基を示し、位置異性体を含む。炭素数1〜6のアルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基は、無置換又は置換基を有している芳香族炭化水素基を示し、より詳しくは、芳香族炭化水素基の1個以上の水素原子が、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。ここで「アルキル基」及び「アルキルオキシ基」は、前記アルキル基及びアルキルオキシ基と同義である。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、シクロプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基、シクロプロポキシフェニル基及びn−ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基は、前記アリール基が酸素原子に結合した基を示し、さらに、前記アリール基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。
前記アリールオキシ基の具体的としては、トルイルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、エチルフェニルオキシ基、n−プロピルフェニルオキシ基、イソプロピルフェニルオキシ基、シクロプロピルフェニルオキシ基、n−ブチルフェニルオキシ基、t−ブチルフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、n−プロポキシフェニルオキシ基、イソプロポキシフェニルオキシ基、シクロプロポキシフェニルオキシ基及びn−ブトキシフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記より、一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4としてそれぞれ独立に、好ましくは、ニトロ基、シアノ基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。
【0026】
p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数であり、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。p、q、r、sが0を表す場合、無置換であることを意味する。p、q、r、sが2以上の整数を表す場合、複数のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ、互いに同一でもあっても、又は異なってもよい。また、複数のR1、R2がそれぞれ、ベンゼン環における隣接する炭素原子に置換されている場合、互いに結合して環状構造を形成してもよい。なお、R1とR2は、互いに同一の置換基であることが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物は、例えば、下記式(2)〜(4)で表される化合物を、下記反応式に従って、例えば、後述の参考例1〜3のように反応させることにより合成することができるが、合成方法は特に制限されるものではない。なお、下記式(2)〜(4)中、R1〜R5、及びp〜sについては、前記と同義である。
【0028】
【化3】
【0029】
具体的には、上記式(2)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物と上記式(3)で示されるヒドロキシフェニルアルキルカルボニル化合物とを反応させて、リン含有アリールアルコール化合物とした後、該リン含有アリールアルコール化合物と上記式(4)で示されるフェノール化合物とを、無機酸、有機スルホン酸及び有機カルボン酸等の酸触媒の存在下で反応させて、一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物を合成することができる。また、上記と同様の酸触媒の存在下で、上記式(2)〜(4)で示される化合物を同時に投入し、反応させることにより合成することができる。
なお、上記方法により合成することができる上記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
〈エポキシ化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、該樹脂組成物に含まれるリン含有ビスフェノール及びフェノール樹脂の水酸基と反応し、硬化物を得ることができるものであれば特に制限はない。
上記より、使用されるエポキシ化合物として、好ましくは(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル等のトリエポキシド化合物;エポキシ化ポリブタジエン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックポリグリシジルエーテル等のポリエポキシド化合物が挙げられる。なお、上記エポキシ化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
さらに、上記エポキシ化合物の中でも、より好ましくは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、より好ましくは2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルが使用される。
また、本発明において使用することができるエポキシ化合物の市販品としては、例えば三菱化学製jERシリーズ(商品名)、DIC製エピクロンシリーズ(商品名)等が挙げられる。
【0032】
〈フェノール樹脂〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂としては、特に制限はないが、樹脂材料としての成型性向上の観点から、好ましくは軟化点が50〜250℃の当該フェノール樹脂、より好ましくは軟化点が50〜200℃の当該フェノール樹脂、特に好ましくは軟化点が50〜150℃の当該フェノール樹脂が使用される。なお、前記フェノール樹脂は、例えば、室温下(0〜30℃)で液状物であってもよい。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の樹脂材料として、例えば、熱や外部からの力に対する経時的安定性を向上させる目的から、使用するフェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)が、好ましくは10〜1000、より好ましくは30〜500、特に好ましくは50〜500である。なお、水酸基価は、JIS K 1557又はJIS K 0070の測定法に従って算出された値を使用する。
【0033】
前記フェノール樹脂の具体例としては、フェノール類(フェノール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼンなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFなど)、もしくはナフトール類(α−ナフトール、β−ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなど)とアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒドなど)との重縮合物(ノボラック型フェノール樹脂など);フェノール類とジエン類(テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレンなど)との重縮合物;フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなど)との重縮合物;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物等が挙げられる。上記フェノール樹脂は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において使用することができるフェノール樹脂の市販品としては、例えば、明和化成製HF−1M(商品名)、明和化成製MEH−7851(商品名)、昭和電工製BRG−556(商品名)等が挙げられる。
【0034】
〈硬化促進剤〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される硬化促進剤は、例えば、光硬化促進剤であっても熱硬化促進剤であってよく、特に制限はないが、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤、又はリン系硬化促進剤を使用する。また、記にその硬化促進剤の具体例を示すが、本発明の硬化促進剤は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0035】
(イミダゾール系硬化促進剤)
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等が使用される。これらの中でも、好ましくはイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールが使用される。
【0036】
(リン系硬化促進剤)
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が使用される。
【0037】
〈添加化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、例えば、離型剤、無機充填材、カップリング剤、樹脂変性物、又は着色剤等の添加化合物を含有させることができる。なお、これらの添加化合物は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0038】
(離型剤)
離型剤は、例えば、成形時の金型との離型を良くする等を目的として使用されるもので、従来公知のものがいずれも使用でき、特に制限はない。
具体的な離型剤としては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックスなどのエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸などの脂肪酸及びこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックス等が挙げられる。上記離型剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
(無機充填剤)
無機充填剤は、例えば、絶縁性の確保に加えて、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する等を目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
無機充填剤の具体例としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が挙げられる。なお、これら無機充填剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。さらに、後述のカップリング剤と混合して使用してもよい。これらの無機充填剤のうち、例えば、非晶性シリカ、及び結晶性シリカは、封止材の熱膨張係数を小さくでき、それによって封止材の接続信頼性を向上することができる点で好ましく使用される。
【0040】
(カップリング剤)
カップリング剤は、例えば、無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めること等を目的として使用される。
カップリング剤の具体例としては、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシラン等の各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類等が挙げられる。なお、上記カップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
(樹脂変性物)
樹脂変性物は、諸物性を微調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
樹脂変性物の具体例としては、ポリブタジエンの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物等が挙げられる。なお、上記樹脂変性物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
(着色剤)
着色剤は、外観を調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。なお、上記着色剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
〈リン含有硬化性樹脂組成物の製造方法〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造において、前記、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物及びフェノール樹脂の使用量は、使用するフェノール樹脂中の水酸基価(KOHmg/g)に対して特定することができる。
即ち、エポキシ化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、エポキシ化合物のエポキシ基数が、好ましくは0.5〜4となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.5〜2.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.5〜1.5となるような使用量である。また、リン含有ビスフェノール化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、リン含有ビスフェノール化合物の水酸基数が、好ましくは0.001〜1.0となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.001〜0.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.01〜0.5となるような使用量(混合比)である。
さらに、硬化促進剤の使用量は、上記の範囲で配合された、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.2〜5g、特に好ましくは0.4〜2gである。また、添加化合物の使用量は、上記の範囲で配合された、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0〜20g、より好ましくは0〜10g、特に好ましくは0〜6g使用される。
【0044】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、大気中又は不活性ガス環境下、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種のリン含有ビスフェノール化合物、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合する等の方法により製造される。具体例としては、使用するフェノール樹脂の軟化点前後まで加熱しながら、次いで、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、硬化促進剤の順に加えて混粘する等の操作を行い製造する方法が挙げられる。また適宜加熱してリン含有硬化性樹脂組成物の溶融成型物としても製造することができる。さらには別途有機溶媒を加えて溶解又はスラリーにしてリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。
【0045】
〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造方法〉
また、その一方、上記リン含有硬化性樹脂組成物を、その取り扱い性を容易にするために製造開始時から製造終了後にかけて、別途有機溶媒を添加してリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。
【0046】
〈有機溶媒〉
このような有機溶媒としては、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた場合に揮発する溶媒であれば特に限定されず、例えば、脂肪族ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなど)等が挙げられる。なお、上記有機溶媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記有機溶媒の使用量は、リン含有硬化性樹脂組成物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mL、より好ましくは0.5〜500mL、特に好ましくは1〜100mL使用される。
また、リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造は、前記の混合比で製造されたリン含有硬化性樹脂組成物と有機溶媒とを混合後、例えば、混合、攪拌、超音波処理、適宜加熱溶解処理等を行ってもよい。
【0048】
本発明は、上記のような配合比等で、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液を製造することにより、例えば、これを電気及び電子産業分野における電子部品の封止用、積層板用材料用の樹脂硬化剤等として使用した場合、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を発揮する。
【0049】
[リン含有樹脂硬化物]
また、本発明は、上述したリン含有硬化性樹脂組成物と必要に応じて添加される添加化合物とを硬化させてなるリン含有樹脂硬化物を提供する。さらに、リン含有硬化性樹脂組成物とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを反応させ、硬化してなるリン含有樹脂硬化物とすることもできる。
【0050】
(樹脂化合物)
上記樹脂化合物としては、硬化促進剤の作用により、上述したリン含有硬化性樹脂組成物中のエポキシ化合物と反応する硬化反応により化学結合を形成することができる、フェノール樹脂以外の樹脂化合物を用いることができる。
このような樹脂化合物の具体例としては、好ましくはメラニン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なお、上記樹脂化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、上記樹脂化合物とリン含有硬化性樹脂組成物との反応は、前記樹脂化合物1gに対してリン含有硬化性樹脂組成物の使用量が、好ましくは0.01〜1g、より好ましくは0.05〜0.50g、特に好ましくは0.1〜0.30g使用される。
本発明は、上記のような使用量にて反応させることによって、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を発揮することができ、例えば、電気及び電子産業分野における、電子部品の封止用、積層板用材料用の樹脂硬化物等として利用される。
【0052】
〈リン含有硬化物の製造方法〉
(硬化条件)
本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを、大気中又は不活性ガス環境下、硬化反応させることによって製造される。さらに、本発明の硬化物の製造方法は、例えば、所望の形状に成型した後、加熱硬化させる方法によっても製造することができる。具体的な方法としては、例えば、金属箔、離型フィルム等の各種基板上に塗布して加熱硬化させる方法、及び型に流し込んで加熱硬化させる方法等が挙げられるが、好ましくは硬化中において気泡が発生することのないように各種基板上に塗布して膜状に成型する方法である。
【0053】
上記硬化反応における、硬化温度及び硬化反応時間は適宜調整できるため特に制限されないが、好ましくは80〜250℃の硬化温度で行われる。
また、加熱し硬化させる工程は、一段階で行っても、例えば、温度条件を変えるなどして多段階で行ってもよいが、好ましくは硬化反応時に生じる揮発成分を系外へ除去するために、様々な硬化温度で、段階的に硬化させる多段階工程で行う。より具体的には、温度が100〜140℃で反応させる第一工程と、第一工程の硬化温度より高い温度である140℃〜200℃の温度下にて第二の硬化温度で加熱硬化させる多段階工程で行う。
【0054】
さらに本発明のリン含有樹脂硬化物は、モノマー成分として前記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物を含むことから難燃性を有し、また架橋構造を有することから、耐加水分解性を付与することができる。
従って、本発明のリン含有樹脂硬化物は、難燃剤のブリードアウト等を防止でき、難燃性及び耐吸湿性に優れていることから、例えば、LEDなどの封止材等の電気及び電子産業分野における電子部品の封止用等として有用である。
【実施例】
【0055】
次に、実施例において具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、参考例等に限定されるものではない。
【0056】
[参考例1]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−1)>
【0057】
【化4】
【0058】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とフェノール5.17g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。その後、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ろ過してろ物を取得後、さらにこのろ物をトルエン30mLで洗浄し、固形物を得た。次に、得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた懸濁液から固形物をろ別後、さらにこの固形物を冷アセトニトリルにて洗浄し、乾燥したところ、白色粉末として目的物であるビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド16.9gを得た(取得収率:84.3%)。
得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0059】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.28(1H,d)、6.53(4H,d)、7.32−7.43(10H,brs)、7.75−7.82(4H,brs)、9.16(2H,s)
融点:301℃
【0060】
[参考例2]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−2)>
【0061】
【化5】
【0062】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ジフェニルホスフィンオキシド2.02g(0.01モル)を加え、次いで、これに2−ヒドロキシベンズアルデヒド1.22g(0.01モル)とフェノール5.70g(0.05モル)とを順に加え、65℃にて1.5時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.02g(0.0001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して3時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応液をトルエン20mL中に滴下していったところ、析出物が生成した。生成した析出物をろ別し、さらにトルエン20mLで洗浄した。得られた析出物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(1−2)で示される((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド3.21gを得た(取得収率:80.3%)。
得られた((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0063】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.49(1H,d)、6.52(2H,d)、6.65−6.69(2H,brs)、6.89−6.94(2H,brs)、7.22−7.26(2H,brs)、7.34−7.46(6H,brs)、7.64−7.79(4H,brs)、7.91−7.94(1H,brs)、9.20(1H,s)、9.77(1H,s)
【0064】
[参考例3]
<一般式(1)で示されるリン含有化合物:式(1−3)>
【0065】
【化6】
【0066】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とクレゾール5.95g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、析出物をろ別し、さらにトルエン30mLで洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、その後0℃まで冷却して析出物をろ別し、冷アセトニトリルで洗浄した。得られた固形物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(1−3)で示される(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド17.8gを得た(取得収率:89.5%)。
得られた(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0067】
MSスペクトル〔CI−MS〕:415[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:1.96(3H,d)、5.24(1H,d)、6.51−6.54(3H,brs)、7.18−7.20(2H,brs)、7.31−7.38(8H,brs)、7.74−7.83(4H,brs)、9.09(2H,s)
融点:252℃
【0068】
[実施例1]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2007gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.8052gと2−ウンデシルイミダゾール0.0172gの混合物にジメチルアセトアミド1.9989gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)2.1846gを加え、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1A)を得た(下記、反応式〔5−1A〕)。
【0069】
【化7】
【0070】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図1に示した。
図1より、実施例1では1000℃における炭化物の残存重量割合が8.8%であった。
【0071】
[実施例2]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.4012gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.6092gと2−ウンデシルイミダゾール0.0175gの混合物にジメチルアセトアミド4.0225gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)2.0219g加え、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1B)を得た(下記、反応式〔5−1B〕)。
【0072】
【化8】
【0073】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図2に示した。
図2より、実施例2では1000℃における炭化物の残存重量割合が8.5%であった。
【0074】
[比較例1]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.0016gと2−ウンデシルイミダゾール0.0162gの混合物にジメチルアセトアミド1.0021gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1809gを加えて均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で5時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)を得た(下記、反応式〔Ref.1〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0075】
【化9】
【0076】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図3に示した。
図3より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドを含有していない比較例1では、1000℃における炭化物の残存重量割合が4.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例1(図1、残存重量割合8.8%)及び実施例2(図2、残存重量割合8.5%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0077】
[実施例3]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2012gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)0.8056gと2−ウンデシルイミダゾール0.0110gの混合物にジメチルアセトアミド2.0061gを添加し110℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5386g加え均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1C)を得た(下記、反応式〔5−1C〕)。
【0078】
【化10】
【0079】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図4に示した。
図4より、実施例3では1000℃における炭化物の残存重量割合が22.2%であった。
【0080】
[実施例4]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕0.2023gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8066gと、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5386gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0254gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加し室温で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−2A)を得た(下記、反応式〔5−2A〕)。
【0081】
【化11】
【0082】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図5に示した。
図5より、実施例4では1000℃における炭化物の残存重量割合が21.0%であった。
【0083】
[実施例5]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2007gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8025gと、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.5168gと、2−エチル−メチルイミダゾール0.0258gの混合物にジメチルアセトアミド2.5055gを添加し室温で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3A)を得た(下記、反応式〔5−3A〕)。
【0084】
【化12】
【0085】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図6に示した。
図6より、実施例5では1000℃における炭化物の残存重量割合が24.9%であった。
【0086】
[比較例2]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.4965gと2−ウンデシルイミダゾール0.0147gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を1.0010g取り、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921gを加え均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)を得た(下記、反応式〔Ref.2〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0087】
【化13】
【0088】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図7に示した。
図7より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドを含有していない比較例2の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が14.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例3(図4、残存重量割合22.2%)、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕を含有している実施例4(図5、残存重量割合21.0%)、及び((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例5(図6、残存重量割合24.9%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0089】
[実施例6]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.4017gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.6125gと2−ウンデシルイミダゾール0.0200gの混合物にジメチルアセトアミド4.0121gを添加し100℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1770gを加えて均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1D)を得た(下記、反応式〔5−1D)。
【0090】
【化14】
【0091】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図8に示した。
図8より、実施例6では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%であった。
【0092】
[実施例7]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕0.4008gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.6196gと、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1808gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0336gの混合物にジメチルアセトアミド3.2162gを添加し均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−2B)を得た(下記、反応式〔5−2B〕)。
【0093】
【化15】
【0094】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図9に示した。
図9より、実施例7では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.1%であった。
【0095】
[実施例8]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2055gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;酸基当量218g/eq)0.8033gと、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5922gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0166gの混合物にジメチルアセトアミド1.5846gを添加し均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3B)を得た(下記、反応式〔5−3B〕)。
【0096】
【化16】
【0097】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図10に示した。
図10より、実施例8では1000℃における炭化物の残存重量割合が19.0%であった。
【0098】
[比較例3]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.0012gと2−ウンデシルイミダゾール0.0102gの混合物にジメチルアセトアミド1.0061gを室温にて添加し、均一な溶液とした。この溶液に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5811gを加えて均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)を得た(下記、反応式〔Ref.3〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0099】
【化17】
【0100】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図11に示した。
図11より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドが含有していない比較例3の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が11.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例6(図8、残存重量割合16.8%)、((2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−2)〕を含有している実施例7(図9、残存重量割合16.1%)、及び((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例8(図10、残存重量割合19.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0101】
[実施例9]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2024gとフェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)0.8034gと2−ウンデシルイミダゾール0.0101gの混合物にジメチルアセトアミド2.0059gを添加し110℃で均一な溶液とした。次に、この溶液に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828;エポキシ当量184−194g/eq)0.8905g加え均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1E)を得た(下記、反応式〔5−1E〕)。
【0102】
【化18】
【0103】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図12に示した。
図12より、実施例9では1000℃における炭化物の残存重量割合が25.7%であった。
【0104】
[比較例4]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021gと2−ウンデシルイミダゾール0.0129gの混合物にジメチルアセトアミド1.0987gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液1.0072gに2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828;エポキシ当量184−194g/eq)0.4342g加え均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)を得た(下記、反応式〔Ref.4〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0105】
【化19】
【0106】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図13に示した。
図13より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドが含有していない比較例4の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例9(図12、残存重量割合25.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0107】
[実施例10]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2010gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)0.8069gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.6522gと、トリフェニルホスフィン0.0270gの混合物にジメチルアセトアミド2.6931gを添加し100℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1E)を得た(下記、反応式〔5−1E〕)。
【0108】
【化20】
【0109】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図14に示した。
図14より、実施例10では1000℃における炭化物の残存重量割合が34.7%であった。
【0110】
[比較例5]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)2.0027gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)1.0158gと、トリフェニルホスフィン0.0318gの混合物にジメチルアセトアミド2.2900gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で5時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.5)を得た(下記、反応式〔Ref.5〕)。
【0111】
【化21】
【0112】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図15に示した。
図15より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有していない比較例5では、1000℃における炭化物の残存重量割合が29.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例10(図14、残存重量割合34.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0113】
[実施例11]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕0.2007gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃;水酸基当量103−106g/eq)0.8046gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.6772gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0288gの混合物にジメチルアセトアミド2.6530gを添加し100℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−3C)を得た(下記、反応式〔5−3C〕)。
【0114】
【化22】
【0115】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図16に示した。
図16より、実施例11では1000℃における炭化物の残存重量割合が37.5%であった。
【0116】
[比較例6]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)2.0172gと、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0026gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0309gの混合物にジメチルアセトアミド3.0281gを添加し室温で均一な溶液とした。この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.6)を得た(下記、反応式〔Ref.6〕)。
【0117】
【化23】
【0118】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図17に示した。
図17より、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有していない比較例6では、1000℃における炭化物の残存重量割合が28.2%となっており、((4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−3)〕を含有している実施例11(図16、残存重量割合37.5%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
また、比較例5の残存重量割合29.2%との比較により、硬化促進剤をトリフェニルホスフィンから2−ウンデシルイミダゾールへ変更しても、1000℃における炭化物の残存重量割合が同等である樹脂が得られることがわかる。
【0119】
[実施例12]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕0.2030gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)0.8001gと、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、ピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)0.9838gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0200gの混合物にジメチルアセトアミド2.9968gを添加し110℃で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(5−1F)を得た(下記、反応式〔5−1F〕)。
【0120】
【化24】
【0121】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図18に示した。
図18より、実施例12では1000℃における炭化物の残存重量割合が38.0%であった。
【0122】
[比較例7]
温度計、温度調整装置、及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.0086gと、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)1.0381gと、2−ウンデシルイミダゾール0.0218gの混合物にジメチルアセトアミド2.0103gを添加し室温で均一な溶液とし、この溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるエポキシ樹脂硬化物(Ref.7)を得た(下記、反応式〔Ref.7〕)。
【0123】
【化25】
【0124】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図19に示した。
図19より、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有していない比較例7の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例12(図18、残存重量割合38.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0125】
[参考例4]
300mLのガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)50.0gを量り、150℃で溶融させたところへ、エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828;エポキシ価184−194g/eq)90.5gを加え、よく撹拌した。さらに、120℃で硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.90gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に180℃で5時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
【0126】
[比較例8]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:2.01質量%>
300mLのガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)27.7gを量り、150℃で溶融させたところへ、エポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)50.1g、及びリン含有化合物としてレゾルシノールビスジ(2,6−ジメチルフェノール)ホスフェート(大八化学製PX−200)22.2gを加え、よく撹拌した。さらに、120℃で硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.50gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、リン化合物混合型の樹脂板を得た。
なお、比較例8のリン原子の含有率は、使用した、リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量(g)に対するリン含有化合物の量(g)と、使用したリン含有化合物(分子量)中の全リン原子量(リンの原子量:31×個数)とから、質量%で算出した。
【0127】
[比較例9]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:0.90質量%>
300mLのガラス製反応容器に、リン含有化合物として10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド12.5gとエポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)82.5gを量り、トリフェニルホスフィン0.82gを加えた後、室温で約30分間攪拌して良く分散させた。それから容器を140℃の油浴に浸し、内容物が透明となるまで反応させた。透明となった後、2時間攪拌を継続した。
別の300mLガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)37.5gを採り、150℃に加熱した。そこへ先の反応透明物を4回に分けて加えた。透明反応溶液を120℃にし、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.82gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
なお、比較例9のリン原子の含有率は、比較例8と同じ方法にて算出した。
【0128】
[実施例13]
<リン化合物混合型の樹脂板の製造:リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量中のリン原子の含有率:0.59質量%>
300mLのガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕10.0gとエポキシ樹脂(三菱化学製jER828:エポキシ価184〜194g/eq)81.9gを量り、トリフェニルホスフィン0.82gを加えた後、室温で約30分間攪拌して良く分散させた。それから容器を140℃の油浴に浸し、内容物が透明となるまで反応させた。透明となった後、2時間攪拌を継続した。
別の300mLガラス製反応容器に、フェノール樹脂(昭和電工製BRG−556:フェノール性水酸基価105g/eq)40.0gを採り、150℃に加熱した。そこへ先の反応透明物を4回に分けて加えた。透明反応溶液を120℃にし、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製キュアゾールC11Z−CN)0.82gを加え、撹拌を継続して粘状溶液とした。この粘状溶液を鋳型に注ぎ、最終的に190℃で10時間保持して硬化させ、樹脂板を得た。
なお、実施例13のリン原子の含有率は、使用した、リン含有ビスフェノール化合物、エポキシ化合物、及びフェノール樹脂の合計使用量(g)に対するリン含有ビスフェノール化合物の量(g)と、使用したリン含有ビスフェノール化合物(分子量)中の全リン原子量(リンの原子量:31×個数)とから、質量%で算出した。
【0129】
[評価]
(難燃性)
前記参考例4、比較例8、比較例9及び実施例13で得られた樹脂板から、一般的な難燃性の判定方法であるUL94V規格に準じて試験片(長さ125mm、幅13mm、厚さ3mm)を各5個作製し、垂直燃焼試験を行った。次いで、UL94V(試験法)に記載の規格に則って、V−0、V−1、又はV−2等の等級評価を行ない、一方、UL94Vの規格の等級に達しない難燃性の低い(又は無い)ものは不適合とした。その結果を、以下の表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
表1より、本発明の特定のリン含有ビスフェノール化合物を含有させることにより、優れた難燃性効果(実施例13:V−0)があることがわかる。また、実施例13(0.59質量%)より本発明のリン化合物混合型の樹脂板中のリン原子の含有率は、比較例8(2.01質量%)及び比較例9(0.90質量%)におけるリン原子の含有率よりも少ないにもかかわらず、表1より、本発明のリン化合物混合型の樹脂板(実施例13)は、比較例8及び比較例9の樹脂板よりも、難燃性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、二官能性リン含有化合物を含むリン含有硬化性樹脂組成物、及びそれを硬化させることにより得られるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。当該硬化性樹脂組成物は、その硬化物が優れた難燃性を示すため、例えば、電気及び電子産業分野における電子部品の封止用材料、積層板用材料等で有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【化1】
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。]
【請求項2】
分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、請求項1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【請求項1】
少なくとも1種の下記一般式(1)で示されるリン含有ビスフェノール化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【化1】
[一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜4の整数である。R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を示す。]
【請求項2】
分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、請求項1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−60571(P2013−60571A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33848(P2012−33848)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【特許番号】特許第5056992号(P5056992)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【特許番号】特許第5056992号(P5056992)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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