説明

リン酸結合性ポリマー製剤

【構成】平均粒径が400μm以下であり、かつ粒径500μm以下の割合が90%以
上であり、さらに水分含有量が1〜14%であるリン酸結合性ポリマーと、結晶セルロー
スおよび/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する錠剤、およびその製
造方法。
【効果】本発明のリン酸結合性ポリマー錠剤は、主薬含有率が高く、リン酸結合能に優
れ、酸性から中性領域での攪拌強度の影響を受けにくい速やかな崩壊性を示すものであり
、消化管内運動、pHによるバイオアベイラビリティーの変動を低くすることができる優
れた製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸結合性ポリマー含有錠剤に関する。詳細には、平均粒径が400μm以
下であり、かつ粒径500μm以下の割合が90%以上であり、さらに水分含有量が1〜
14%であるリン酸結合性ポリマーと、結晶セルロースおよび/または低置換度ヒドロキ
シプロピルセルロースを含有する錠剤であり、速やかな崩壊分散性およびリン酸結合性を
示すリン酸結合性ポリマー含有錠剤、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸結合性ポリマーはリン酸吸着能を有した非吸収性ポリマーであり、慢性腎不全等
の腎機能の低下による高リン血症の治療薬として有用である。リン酸結合性ポリマーは例
えば、米国特許第5496545号公報(特許文献1)に記載されているようなポリアリ
ルアミンをエピクロルヒドリン等の架橋剤で架橋した架橋重合体で、一級アミンおよび二
級アミンからなるポリカチオン性高分子化合物として知られている公知化合物である。
【0003】
高リン血症の治療薬としてのリン酸結合性ポリマー製剤は、例えば米国特許第5496
545号公報には結晶セルロースを含む種々の添加剤を加えて錠剤にすることができると
記載されているが、該公報には具体的に製造された例は示されておらず、また本発明者ら
が実際に該公報に記載された方法により得られたリン酸結合性ポリマーに種々の添加剤を
加えて、通常の方法で錠剤化することを試みたが、うまく錠剤化できなかった。
【0004】
さらに経口吸着剤として知られているポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤[カリメ
ート(登録商標)、日研化学株式会社製]、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤[ケ
イキサレート(登録商標)、鳥居薬品株式会社製]、吸着炭製剤[クレメジン(登録商標
)、呉羽化学株式会社製]、コレスチラミン製剤[クエストラン(登録商標)、ブリスト
ール・マイヤーズ・スクイブ社製]、沈降炭酸カルシウム製剤(恵美須薬品株式会社製)
等の剤型は原末、散剤または粉末を充填したカプセル剤であり、錠剤化された例は見当た
らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5496545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リン酸結合性ポリマーは経口投与により食物中のリンを吸着し、体外に糞便とともに排
泄されることでリンの消化管からの吸収を低下させて血中リン濃度を抑制する作用を有し
、1回の服用量が1〜2gと比較的多い。さらにリン酸結合性ポリマーは水と反応して速
やかに膨潤する性質を有するため、そのままでは服用しがたい。
【0007】
高リン血症治療薬であるリン酸結合性ポリマーの投与対象である透析患者は水分摂取量
が制限されることが多く、その製剤については少量の水で服用可能な剤型が望まれている
。有望な剤型としては加圧圧縮により小型化がはかれる錠剤、好ましくは口中での崩壊防
止がはかれ、服用性に優れたコーティング錠剤が挙げられる。しかしながら、リン酸結合
性ポリマーは単独での加圧圧縮による錠剤硬度が低く、そのままでは錠剤での製剤化はで
きなかった。さらにリン酸結合性ポリマーは吸湿・膨潤性の高い物性を有することから製
剤化に際しては、水あるいはアルコールなどを含む結合剤溶液を加えて湿式造粒、乾燥を
行う製法を用いることはできなかった。
【0008】
これらの課題を解決するためには、粉末状のリン酸結合性ポリマーに成形性の優れた粉
末状の添加剤を配合して加圧圧縮を行う製法が望まれ、加圧圧縮に伴う崩壊性、分散性の
変化に留意して設計する必要があり、さらに1回服用量が多いことから主薬含有率の高い
製剤として設計する必要があった。
【0009】
本発明者らは米国特許第5496545号公報に記載されている種々の添加剤を用いて
リン酸結合性ポリマーの錠剤化について検討したが、十分な硬度と速やかな崩壊分散性お
よびリン酸結合性を示す優れたリン酸結合性ポリマー含有錠剤を製造することはできなか
った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らはこれらの課題を解消すべく、鋭意研究を重ねた結果、リン酸結合
性ポリマー自体がある特性をもつ場合であって、特定の添加剤を加えた時に錠剤中のリン
酸結合性ポリマー含有率が高く、十分な硬度を有し、酸性〜中性領域で速やかな崩壊分散
性およびリン酸結合性を示すリン酸結合性ポリマー錠剤ができることを見出し、本発明に
いたった。具体的には平均粒径が400μm以下、好ましくは250μm以下であり、か
つ粒径500μm以下の割合が90%以上、好ましくは粒径300μm以下の割合が90
%以上であり、さらに水分含有量が1〜14%であるリン酸結合性ポリマーと、特定の添
加剤である結晶セルロースおよび/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有
する錠剤が優れた特性を有することを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリン酸結合性ポリマー錠剤は主薬含有率が高く、リン酸結合能に優れ、酸性か
ら中性領域での攪拌強度の影響を受けにくい速やかな崩壊性を示すものであり、消化管内
運動、pHによるバイオアベイラビリティーの変動を低くすることができる優れた製剤で
ある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2におけるリン酸結合性ポリマー水分量と錠剤硬度との関係を示した図ある。
【図2】実施例2におけるリン酸結合性ポリマー水分量と錠剤の崩壊時間との関係を示した図である。
【図3】実施例3におけるリン酸結合性ポリマー水分量と錠剤硬度との関係を示した図である。
【図4】実施例3におけるリン酸結合性ポリマー水分量と錠剤の崩壊時間との関係を示した図である。
【図5】実施例4におけるリン酸結合性ポリマー製剤の崩壊特性(崩壊試験器のストローク数と錠剤硬度との関係)を示した図である。
【図6】実施例5におけるリン酸結合性ポリマー製剤のリン酸結合プロフィルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用されるリン酸結合性ポリマーは、例えば米国特許第5496545号公報
に記載された方法により得られた乾燥リン酸結合性ポリマーを平均粒径が400μm以下
、好ましくは250μm以下で、かつ粒径500μm以下の割合が90%以上、好ましく
は粒径300μm以下の割合が90%以上となるように粉砕し、さらに水分を調節して、
水分含有量が1〜14%となるように調整したものが挙げられる。リン酸結合性ポリマー
の中でも、ポリアリルアミンにエピクロルヒドリンを作用させ、架橋して得られるポリマ
ーは特に好適に本発明に使用できる。
【0014】
ここでリン酸結合性ポリマーの平均粒径が400μmより大きくなると錠剤化に必要な
十分な硬度が得られず好ましくない。さらに水分含有量が1%未満の場合は、錠剤化に必
要な十分な硬度が得られず、錠剤表面が摩損し易くなり、また水分含有量が14%以上に
なると硬度は十分に得られるものの錠剤化した場合、塑性変形性を示すようになり製剤と
して適さなくなる。服用性のより優れた錠剤にするためには錠剤硬度計で6KP以上を示
す硬度及び摩損度試験(100回転)での重量減少率が1%以下を示す表面強度を錠剤に
付与する必要があり、かつ塑性変形性を示さない錠剤にするためには水分含有量が1〜1
4%の範囲のものが挙げられる。ここでいう水分含有量1〜14%とは、105℃、16
時間の乾燥減量値として1〜14%であることを意味し、好ましくは乾燥減量値として2
〜14%がよい。なお、粉砕の過程でリン酸結合性ポリマー自体が吸湿し、水分含有量が
1〜14%になる場合は特に水分調節を行う必要はなく、そのまま本発明の錠剤に使用で
きる。
【0015】
さらにここで、リン酸結合性ポリマーの粉砕に用いられる装置は500μm以下の粒径
および上記のような平均粒径が得られる機種、例えば衝撃式粉砕機であれば特に制限はな
い。
【0016】
また水分調整は、塩化ナトリウム飽和塩水溶液(25℃、相対湿度75.3%)塩化カ
ルシウム飽和塩水溶液(25℃、相対湿度84.3%)、硝酸マグネシウム飽和塩水溶液
(25℃、相対湿度52.8%)等の調湿剤を用いたり、空気中で自然吸湿させることに
より行える。またリン酸結合性ポリマー製造の際の乾燥工程を水分含有量が1〜14%の
範囲となるように行うことにより所望の水分含有量のリン酸結合性ポリマーを得ることも
できる。
【0017】
本発明で用いられる結晶セルロースは、特に限定されるものではないが、105℃、3
時間の乾燥減量値として7%以下のものが使用でき、好ましくは旭化成工業株式会社製の
アビセル(登録商標)PH101、PH102、PH301、PH302等の市販品を単
独または混合して用いることができる。
【0018】
また本発明で用いられる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの低置換度とは、ヒド
ロキシプロポキシル基(−OC36OH)置換度が5.0〜16.0重量%のもののこと
であり、このような低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば信越化学株
式会社製のLH−11、LH−21またはLH−31等の市販品を単独または混合して用
いることが好ましい。
【0019】
本発明で使用されるリン酸結合性ポリマー錠剤に添加する結晶セルロースおよび/また
は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量は経口剤としてのリン酸結合性ポリマー服
用量と製剤の服用性を加味して任意に設定することができるが、例えば、好ましい態様と
しては、平均粒径が250μm以下であり、かつ粒径300μm以下の割合が90%以上
であり、さらに水分含有量が1〜14%であるリン酸結合性ポリマーの重量に対して、結
晶セルロースまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが10重量%以上、好ましく
は30重量%以上がよい。結晶セルロースおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
の両方を添加する場合は、両方の合計の添加量が、10重量%以上、好ましくは30重量
%以上がよい。また製剤の服用性等を考えた場合、結晶セルロースおよび/または低置換
度ヒドロキシプロピルセルロースの添加量の上限は50重量%〜200重量%の範囲内が
よい。
【0020】
さらにリン酸結合性ポリマー、結晶セルロースまたは低置換度ヒドロキシプロピルセル
ロースは摩擦性の高い性質を有するため連続的に打錠を行う場合には、杵のきしみによる
打錠機への負荷を軽減するために硬化油を添加するとよく、そのような硬化油としては例
えばフロイント産業株式会社製ラブリワックス(登録商標)等の市販品を用いることがで
きる。
【0021】
本発明のリン酸結合性ポリマー錠剤の製造は、結晶セルロースおよび/または低置換度
ヒドロキシプロピルセルロースに加えて、乳糖、白糖、マンニトール等の賦形剤、ステア
リン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等の滑沢剤、その他の慣用の添加剤、香料
、着色料等を適宜添加して、リン酸結合性ポリマーと共に混合、打錠して行うことができ
る。
【0022】
また本発明のリン酸結合性ポリマー錠剤はさらに、その表面にフィルムコーティングを
施したフィルム錠とすることができる。フィルムコーティングには、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、アクリル酸共重合ポリマー等の水溶性フィルム基剤を用いることがで
きる。特にヒドロキシプロピルメチルセルロースを好ましく使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定
されるものではない。
【0024】
参考例
ポリアリルアミンに架橋剤としてエピクロルヒドリンを加えて架橋重合反応を行い、一
級アミン(81.2mol%)及び二級アミン(18.8mol%)の約40%において
塩酸塩を形成しているポリカチオン性リン酸結合性ポリマーを真空乾燥し、乾燥末を得た
。リン酸結合性ポリマー乾燥末をフィッツミル(M5A型 Fitzpatrick社)
を用いて粉砕し、水分を含有したリン酸結合性ポリマー(水分3.6%、粒径300μm
以下の割合 99.7%)を得た。
【0025】
実施例1
参考例の水分を含有したリン酸結合性ポリマー150mgに対して添加剤として結晶セ
ルロース(商標アビセルPH101 旭化成)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
(L−HPC LH31、信越化学)のいずれかを150mg(リン酸結合性ポリマー重
量に対して100重量%)の割合で混合し、錠剤径φ10mm、錠剤重量300mg/錠
、成型圧500kg、1000kg、1500kgの条件で静圧成型して錠剤を得た。別
に、比較のために水分を含有したリン酸結合性ポリマー粉砕末150mgに対して添加剤
として乳糖(200M DMV)、マンニトール(協和発酵)、メチルセルロース(商標
メトローズSM−15 信越化学)、タルク(キハラ化成)、ヒドロキシプロピルセルロ
ース(HPC−L 日本曹達)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(HPM
C TC−5−RW、信越化学)、カルメロースカルシウム(商標ECG−505 五徳
薬品)のいずれかを150mgの割合で混合し、錠剤径φ10mm、錠剤重量300mg
/錠、成型圧500kg、1000kg、1500kgの条件で静圧成型して錠剤を得た
。さらに水分を含有したリン酸結合性ポリマー粉砕末300mgを用いて同様に静圧成型
して錠剤(無添加)を得た。
【0026】
得られた錠剤の硬度を硬度計(ファーマテスト)で測定した結果及び成形圧 1000
kgで6KP以上の硬度を示した錠剤について崩壊時間を崩壊試験器(富山産業)で測定
した結果(試験液:水)を第1表に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から結晶セルロースまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)
を用いた場合は錠剤硬度が6KP以上で、崩壊時間15分以内の製剤が得られた。
【0029】
実施例2
参考例の水分を含有したリン酸結合性ポリマーを105℃、16時間乾燥してリン酸結
合性ポリマー乾燥末(水分0.1%未満)を得た。さらにリン酸結合性ポリマー乾燥末を
調湿剤として塩化ナトリウム飽和塩水溶液を用いてデシケーター中で吸湿させ、水分を1
.1〜16.4%含有するリン酸結合性ポリマーを得た。
【0030】
得られた水分含量が異なるリン酸結合性ポリマー200mgに対して添加剤として結晶
セルロースを100mg(リン酸結合性ポリマー重量に対して50重量%)の割合で混合
し、錠剤径φ10mm、錠剤重量300mg、成型圧1000kgの条件で静圧成型して
錠剤を得た。
【0031】
比較のために水分含量が異なるリン酸結合性ポリマー300mgを錠剤径φ10mm、
錠剤重量300mg、成型圧1000kgの条件で静圧成型して錠剤を得た。
【0032】
得られた錠剤の硬度を硬度計で測定した結果を図1に、崩壊時間を崩壊試験器で測定し
た結果(試験液 水)を図2に示す。さらに硬度と錠剤表面の強度の関係を調べるために
6KP付近の硬度を示した錠剤について摩損度試験器を用いて100回転(25rpm、
4分間)後の重量減少率を測定した結果を第2表に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
図1、図2および第2表からリン酸結合性ポリマーを単独で成型した錠剤は水分5%以
下では十分な硬度(6KP以上)が得られず、水分6.1%では硬度8KPを示したが、
摩損度試験の結果では米国薬局方に記載されている判定基準(重量減少率1%以下)より
も大きな値を示し、錠剤表面の強度が低かった。さらに水分9%以上のリン酸結合性ポリ
マーを単独で成型した錠剤は錠剤硬度の上昇とともに崩壊時間の延長がみられ、水分16
%以上では錠剤は塑性変形性を示すようになり錠剤物性として適さなかった。しかし、リ
ン酸結合性ポリマーに結晶セルロースを添加した場合では水分1〜14%で十分な硬度と
錠剤表面強度を示し、速やかな崩壊性(崩壊時間 約1分)が得られた。
【0035】
実施例3
参考例の水分を含有したリン酸結合性ポリマーをソニックシフター(セイシン企業)を
用いて60mesh(250μm)、80mesh(180μm)、150mesh(1
06μm)、270mesh(53μm)の篩で分級を行い、平均粒径250μm以上、
180〜250μm、106〜180μm、53〜106μm、53μm以下のリン酸結
合性ポリマーを得た。
【0036】
得られた平均粒径が異なるリン酸結合性ポリマー200mgに対して添加剤として結晶
セルロースを100mg(リン酸結合性ポリマー重量に対して50重量%)の割合で混合
し、錠剤径φ10mm、錠剤重量300mg、成型圧1000kgの条件で静圧成型して
錠剤を得た。
【0037】
比較のために平均粒径が異なるリン酸結合性ポリマー300mgを錠剤径φ10mm、
錠剤重量300mg、成型圧1000kgの条件で静圧成型して錠剤を得た。
【0038】
得られた錠剤の硬度を硬度計で測定した結果を図3に、崩壊時間を崩壊試験器で測定し
た結果(試験液 水)を図4に示す。
【0039】
図3および図4からリン酸結合性ポリマーを単独で成型した錠剤はいずれの平均粒度で
も十分な硬度(6KP以上)が得られなかった。しかし、リン酸結合性ポリマーに結晶セ
ルロースを添加した場合では平均粒径が小さいほど硬度が高くなり、平均粒径250μm
以下で十分な硬度と速やかな崩壊性が得られた。
【0040】
実施例4
参考例の水分を含有したリン酸結合性ポリマー200gに対して、結晶セルロース97
.6g、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(日東化成)2.4gの割合で配合した
。得られた配合末をロータリー打錠機(HT−P18A型 畑鉄工)を用いて錠剤径φ9
.5mm、錠剤重量300mg/錠、成型圧2000kgの条件で打錠し、リン酸結合性
ポリマー200mgを含有する錠剤(素錠)を得た。
【0041】
得られた錠剤を硬度計(コンテスター)で測定した結果、7.7KPの錠剤硬度を示し
た。
【0042】
さらにリン酸結合性ポリマー200mg含有製剤(素錠)に対して、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース2910(HPMC TC−5−MW、信越化学)8.25mg、ポ
リエチレングリコール6000(日本油脂)1.26mg、酸化チタン(A−100 石
原産業)1.8mg、タルク0.69mgの組成からなるフィルム処方でコーティング機
(ドリアコーターDRC−500型 パウレック)を用いて製剤(フィルム錠)を得た。
【0043】
得られたフィルム錠について崩壊試験器を用いて毎分5〜30ストローク、試験液2種
(pH1.2:日本薬局方第1液、水)について試験を実施した。測定結果を図5に示す

【0044】
図5からリン酸結合性ポリマー製剤は結晶セルロースを添加することで酸性〜中性領域
で攪拌強度(ストローク)の影響を受けずに速やかな崩壊性を示した。
【0045】
実施例5
実施例4で製したリン酸結合性ポリマー200mgを含有する製剤(素錠及びフィルム
錠)各5錠について、薬効を想定した評価法として塩化ナトリウム4.7g、N,N−ビ
ス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸21.3g、リン酸二水素カ
リウム0.544gを水に溶解し、pHを7に合わせて37℃に加温した試験液200m
lを用いて、パドル回転数100rpmの条件でリン酸結合能を測定した。リン酸結合能
は錠剤が崩壊し、リン酸結合性ポリマーの分散、リン酸吸着による経時的な試験液中のリ
ン酸残存濃度について試験液の初期値を1、吸着終了時を0とした測定結果を図6に示す

【0046】
図6からリン酸結合性ポリマー製剤は製剤中に結晶セルロースを添加することで速やか
なリン酸結合能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸結合性ポリマー(但し、ポリアリルアミンにエピクロルヒドリンを作用させ、架
橋して得られるものを除く。)を含有する錠剤。
【請求項2】
前記錠剤の錠剤硬度が6KP以上である請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
前記錠剤の崩壊時間が15分以内である請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】
前記錠剤の摩損度試験による重量減少率が1%以下である請求項1、2又は3記載の錠
剤。
【請求項5】
前記錠剤硬度が錠剤硬度計で測定されたものである請求項2記載の錠剤。
【請求項6】
前記崩壊時間が、崩壊試験器(試験液:水)で測定されたものである請求項3記載の錠
剤。
【請求項7】
前記摩損度試験による重量減少率が、摩損度試験器を用いて100回転(25rpm、
4分間)後に測定されたものである請求項4記載の錠剤。
【請求項8】
更に結晶セルロースおよび/または低置換ヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項
1〜7のいずれかに錠剤。
【請求項9】
結晶セルロースおよび/または低置換ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が、前記
リン酸結合性ポリマーの重量に対して、10重量%以上である請求項8記載の錠剤。
【請求項10】
低置換ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基置換度が5.0〜1
6.0重量%である請求項8又は9記載の錠剤。
【請求項11】
更に硬化油を含有する請求項8、9又は10記載の錠剤。
【請求項12】
打錠製剤である請求項1〜11のいずれかに記載の錠剤。
【請求項13】
更に錠剤表面を水溶性フィルム基剤によりコーティングする請求項1〜12のいずれか
一項に記載の錠剤。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−10803(P2013−10803A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230662(P2012−230662)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2009−118371(P2009−118371)の分割
【原出願日】平成10年3月17日(1998.3.17)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】