説明

レギュレータ用半導体集積回路

【課題】 過電流保護のための出力電流−出力電圧特性として所望の特性が得られ、通常動作領域において負荷電流が多くなった場合にも過電流保護ポイントまで正常な出力電圧制御動作が行えるレギュレータ用の半導体集積回路を提供する。
【解決手段】 電圧入力端子と出力端子との間に接続された制御用トランジスタ(M1)によって流される出力電流に縮小比例した電流を流す電流監視用トランジスタ(M2)と、該電流監視用トランジスタに流れる電流を電圧に変換する電流−電圧変換手段(R3)とを備え、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を電流−電圧変換手段へ流さないようにし、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合には、電流監視用トランジスタに流れる電流を電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて制御用トランジスタをオフさせるように過電流保護回路(13)を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置さらには直流電圧を変換する電圧レギュレータに関し、例えば過電流保護機能を備えたシリーズレギュレータ(LDO:低飽和型レギュレータを含む)を構成する半導体集積回路(レギュレータ用IC)に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリーズレギュレータにおいては、例えば負荷が短絡するなどして出力端子から過電流が流れ出すと、電流制御用トランジスタが発熱してICのチップ温度が上昇し、内部回路が誤動作したり素子が破壊される等の不具合が発生するおそれがある。
【0003】
従来、シリーズレギュレータにおいては、上記のような過電流からチップを保護するため、出力電流Ioutが所定の値を越えると、出力電圧Voutを低下させながら出力電流Ioutを減少させて、いわゆる「フ」の字の出力電圧−出力電流特性になるように制御する過電流保護機能を有するカレントリミット回路を設けることが行なわれている。また、過電流保護回路を設けた定電圧回路(レギュレータ)において、ICの検査を容易にするために、過電流保護機能が働いたことを示す信号を外部へ出力するようにした発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−169503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に、従来の過電流保護機能を有するカレントリミット回路を備えたレギュレータ用ICの構成例を示す。図5に示されているICのカレントリミット回路は、上記特許文献1の定電圧回路で使用されているカレントリミット回路の基本的な機能部分と同一の構成の回路である。
図5に示すレギュレータ用ICのカレントリミット回路は、出力制御用のトランジスタM1と共にカレントミラーを構成するトランジスタM2を設けて、M1に流れる出力電流Ioutに比例した電流Is(∝Iout)を生成し、該電流Isを抵抗R3で電圧に変換して、変換された電圧のセンシングを行うトランジスタM3および該トランジスタM3と直列に電流−電圧変換用抵抗R5を備える。また、電圧入力端子INと制御用トランジスタM1のゲート端子との間にスイッチ用のトランジスタM4を備え、前記抵抗R5で電流−電圧変換した電圧を、該スイッチ用トランジスタM4のゲート端子に印加することで、出力電流Ioutが所定の電流値(保護ポイント)以上になると該トランジスタM4がオンして、制御用トランジスタM1のゲート電圧を高くしてオフさせ、出力電流Ioutを減らして過電流からチップを保護するというものである。
【0006】
しかしながら、図5のレギュレータ用ICにあっては、出力電流Ioutのセンシングを行うトランジスタM3のゲート・ソース間電圧VGSが緩やかに変化するため、実際に過電流保護を開始したいポイントよりも低い電流でオンし始める。そのため、過電流保護のために設けられているスイッチ用のトランジスタM4が、実際に過電流保護を開始したいポイントよりも低い電流値でオンし始めてしまい、制御用トランジスタM1のゲート・ソース間電圧VGSが、目標の出力電流値に達する前から抑制されてしまう。
【0007】
具体的には、レギュレータの出力電流−出力電圧特性を示す図6において、目標の保護ポイントaで過電流保護機能を起動させたいにもかかわらず、図5のカレントリミット回路を備えたレギュレータの出力電流−出力電圧特性は、破線Bのように、過電流保護ポイント(a点)の手前の点(a’点)で出力電圧が低下してしまう。
つまり、従来のカレントリミット回路を備えたレギュレータは、レギュレータの出力電流−出力電圧特性が所望の特性(いゆるフの字特性)にならず、「つ」の字のような特性となり、正常な動作を保証したい通常動作領域(特に負荷電流が多い場合)における出力制御動作に悪影響を与えてしまうという課題がある。
【0008】
なお、図5のレギュレータにおいて、正確な過電流保護ポイントを実現するため、図6のa’点を右へずらすように設計することも考えられるが、そのようにすると、特性線Bが全体的に右へシフトしてしまうため、過電流保護をかける際に発生する消費電力が大きくなり、発熱量が増加してチップ温度が許容値よりも高くなってしまう。また、過電流保護回路が、電源立ち上がり時に出力端子に接続されている平滑コンデンサに向かって流れ込むいわゆるラッシュ電流を決定するものにおいては、過電流保護ポイントaを電流値の多い方へずらすと、ラッシュ電流が多く流れてしまうという別の課題も発生する。
【0009】
この発明は上記のような背景の下になされたもので、その目的とするところは、過電流保護のための出力電流−出力電圧特性として所望の特性が得られ、通常動作領域において負荷電流が多くなった場合にも過電流保護ポイントまで正常な出力電圧制御動作が行えるレギュレータ用の半導体集積回路を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ラッシュ電流を抑えつつ所望の出力電流−出力電圧特性に従った過電流保護機能を実現できるレギュレータ用半導体集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明は、
電圧入力端子と出力端子との間に接続された制御用トランジスタと、
出力電圧に比例したフィードバック電圧と所定の基準電圧との電位差に応じて出力電圧が一定になるように前記制御用トランジスタを制御する制御回路と、
出力電流が所定の電流値以上になった場合に前記制御用トランジスタをオフさせることで過電流が流れないようにする過電流保護回路と、
を備えたレギュレータ用半導体集積回路であって、
前記過電流保護回路は、
前記制御用トランジスタにより流される出力電流に縮小比例した電流を流す電流監視用トランジスタ(M2)と、
該電流監視用トランジスタに流れる電流を電圧に変換する電流−電圧変換手段(R3)と、
を備え、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流さないようにし、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合には、前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成した。
【0011】
上記した手段によれば、過電流保護ポイントを通常動作領域における出力電流の最大電流値よりも高い値にすることができ、これによって過電流保護のための出力電流−出力電圧特性として所望の特性が得られ、通常動作領域において負荷電流が多くなった場合にも過電流保護ポイントまで正常な出力電圧制御動作が行えるようになる。
【0012】
また、望ましくは、前記過電流保護回路は、
前記電流監視用トランジスタ(M2)に流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段(M3,R5)と、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段(R3)へ流さないようにする電流経路切替え回路(CI2,M5,M6,R6,INV1,INV2)をさらに備え、
前記監視電流検出手段によって前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことが検出された場合には、前記電流経路切替え回路により前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成する。
これにより、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段と、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流さないようにする電流経路切替え回路とを設けるだけで、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合に、電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて制御用トランジスタをオフさせることができる比較的単純な回路構成の過電流保護回路を実現できるようになる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記電流経路切替え回路は、
前記電流監視用トランジスタ(M2)と前記電流−電圧変換手段(R3)との接続ノードと、基準電位点と、の間に直列形態に接続された電流源(CI2;R7)およびスイッチ手段(M5)と、
前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路(M6,R6,INV1,INV2)と、
を備え、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以下のときは前記スイッチ手段がオン状態とされ、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になって前記接続ノードの電位が所定値以上になった場合に前記判定回路の出力が変化して前記スイッチ手段がオフ状態にされ、前記電流経路切替え回路により前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流すように構成する。
これにより、電流監視用トランジスタと電流−電圧変換手段との接続ノードと基準電位点との間に直列形態に接続された電流源およびスイッチ手段と、前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路を設けるだけで、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合に、電流監視用トランジスタに流れる電流を電流−電圧変換手段へ流すことができる比較的単純な回路構成の電流経路切替え回路を実現できるようになる。なお、ここでの電流源は、トランジスタを使用した定電流回路でもよいし、抵抗素子であっても良い。
【0014】
また、前記過電流保護回路は、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段(M3,R5)と、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段(R3)のインピーダンスを変更可能なインピーダンス切替え回路(M7,M8,CI3,CI2,M5)をさらに備え、
前記インピーダンス切替え回路は、
通常動作状態では前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを高くし、
前記監視電流検出手段によって前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことが検出された場合には、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを低くして、前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成してもよい。
これにより、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段と、電流監視用トランジスタから見た電流−電圧変換手段のインピーダンスを変更可能なインピーダンス切替え回路とを設けるだけで、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合に、電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて制御用トランジスタをオフさせることができる比較的単純な回路構成の過電流保護回路を実現できるようになる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記インピーダンス切替え回路は、
前記電流監視用トランジスタと前記電流−電圧変換手段との接続ノードと、基準電位点と、の間に直列形態に接続された電流源(CI2;R7)およびスイッチ手段(M5)と、
前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路(M6,R6,INV1,INV2)と、を備え、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以下のときは前記スイッチ手段がオン状態とされ、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になって前記接続ノードの電位が所定値以上になった場合に前記判定回路の出力が変化して前記スイッチ手段がオフ状態にされ、前記インピーダンス切替え回路は、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを低くするように構成する。
これにより、電流監視用トランジスタと電流−電圧変換手段との接続ノードと基準電位点との間に直列形態に接続された電流源およびスイッチ手段と、前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路を設けるだけで、電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合に、インピーダンス切替え回路が電流監視用トランジスタから見た電流−電圧変換手段のインピーダンスを低くして電流監視用トランジスタの電流を電流−電圧変換手段へ流し易くすることができるようになる。
【0016】
ここで、前記過電流保護回路は、
前記電圧入力端子と基準電位点との間に直列形態に接続された第2の電流−電圧変換手段(R5)および電流検出用トランジスタ(M3)と、前記電圧入力端子と前記制御用トランジスタ(M1)の制御端子との間に接続された電流制限用のトランジスタ(M4)をさらに備え、
前記電流監視用トランジスタ(M2)と前記電流−電圧変換手段(R3)との接続ノードに、前記電流検出用トランジスタ(M3)の制御端子が接続され、
前記第2の電流−電圧変換手段(R5)と電流検出用トランジスタ(M3)との接続ノードに、前記電流制限用のトランジスタ(M4)の制御端子が接続されているようにすると良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、過電流保護のための出力電流−出力電圧特性として所望の特性が得られ、通常動作領域において負荷電流が多くなった場合にも過電流保護ポイントまで正常な出力電圧制御動作が行えるレギュレータ用の半導体集積回路を提供することができる。また、ラッシュ電流を抑えつつ所望の出力電流−出力電圧特性に従った過電流保護機能を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るカレントリミット回路を備えたシリーズレギュレータの制御用ICの一実施形態を示す回路構成図である。
【図2】実施形態のシリーズレギュレータの制御用ICにおけるカレントリミット回路の動作を説明するための回路動作説明図で、(A)は過電流保護機能が働いていない状態の図、(B)は過電流保護機能が働いている状態の図である。
【図3】図1の実施例のシリーズレギュレータの制御用ICの第1の変形例を示す回路構成図である。
【図4】図1の実施例のシリーズレギュレータの制御用ICの第2の変形例を示す回路構成図である。
【図5】カレントリミット回路を備えた従来タイプのシリーズレギュレータの制御用ICの構成例を示す回路図である。
【図6】本発明に係るカレントリミット回路を備えたシリーズレギュレータの制御用ICと図5に示す従来タイプのシリーズレギュレータ制御用ICにおける出力電圧と出力電流との関係を示す電圧−電流特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用したシリーズレギュレータ(LDOを含む)の一実施形態を示す。なお、特に限定されるわけではないが、図1において一点鎖線で囲まれている部分の回路を構成する素子は、1個の半導体チップ上に形成され、半導体集積回路(シリーズレギュレータIC)10として構成される。
【0020】
この実施形態におけるシリーズレギュレータIC10は、図示しない直流電圧源からの直流電圧VDDが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間にPチャネルMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ:以下、MOSトランジスタと記す)からなる出力制御用トランジスタM1が接続され、出力端子OUTと接地電位が印加されるグランド端子GNDとの間には、出力電圧Voutを分圧するブリーダ抵抗R1,R2が直列に接続されている。このブリーダ抵抗R1,R2により分圧された電圧VFBが、上記制御用トランジスタM1のゲート電圧を制御する誤差アンプ11の非反転入力端子にフィードバックされている。
【0021】
そして、上記誤差アンプ11はフィードバック電圧VFBと基準電圧Vrefとの電位差に応じて制御用トランジスタM1のゲート電圧を制御して、出力電圧Voutが所望の電位になるように制御する。出力電圧Voutの電位は、基準電圧Vrefの電位とブリーダ抵抗R1,R2の抵抗比とによって設定できる。この実施形態のシリーズレギュレータは、上記のようなフィードバック制御によって、出力電圧Voutを一定に保持するように動作する。図示しないが、出力端子OUTには、出力電圧Voutを安定化させる外付けのコンデンサが接続される。
【0022】
また、本実施形態のレギュレータIC10には、基準電圧Vrefを発生するための基準電圧回路12と、該基準電圧回路12に定電流を流す電流源CI1と、制御用トランジスタM1を通して出力端子OUTへ所定電流値以上の出力電流Ioutが流れないように電流を制限するカレントリミット回路13が設けられている。基準電圧回路12は、ツェナーダイオードからなる定電圧回路、あるいは定電流源として動作するデプレッション型MOSトランジスタとエンハンスメント型のMOSトランジスタとを直列に接続した基準電圧発生回路などにより構成される。
【0023】
カレントリミット回路13は、ソース端子が上記制御用トランジスタM1のソース端子に接続されM1のゲート電圧と同一の電圧がゲート端子に印加されることで制御用トランジスタM1とカレントミラーを構成し、M1によって流される出力電流Ioutに比例した電流Isを流す電流監視用のPチャネルMOSトランジスタM2と、該電流監視用MOSトランジスタM2のドレイン端子と接地点GNDとの間に接続されM2に流れる電流を電圧に変換する抵抗R3を有する。
本実施形態のレギュレータIC10においては、制御用トランジスタM1とカレントミラー接続された電流監視用トランジスタM2は、M1の1/Nの大きさ(サイズ)を有しM1のドレイン電流の1/Nの大きさの電流を流すように設定される。サイズ比1/Nは例えば1/1000程度の値とすることができ、それにより電流監視用トランジスタM2に流れる電流Isを非常に小さなものとすることができる。
【0024】
また、カレントリミット回路13は、トランジスタM2のドレイン端子と抵抗R3との接続ノードN1にゲート端子が接続され、M2のドレイン電流Isのセンシングを行う電流検出用のNチャネルMOSトランジスタM3と、電圧入力端子INと該トランジスタM3のドレイン端子との間に接続され、M3に流れる電流を電圧に変換する抵抗R5と、ソース端子が電圧入力端子INに接続されゲート端子が上記抵抗R5と電流検出用トランジスタM3の接続ノードN2に接続された電流制限用のPチャネルMOSトランジスタM4とを有する。
そして、上記電流制限用トランジスタM4のドレイン端子が制御用トランジスタM1のゲート端子に接続され、M1によって流される出力電流Ioutが所定の電流値以上になると、電流制限用のトランジスタM4がオン状態にされてM1のゲート端子に入力電圧VDDを印加させる。これによって、制御用トランジスタM1がオフ状態にされて過電流が流れないように構成されている。
【0025】
さらに、本実施例のカレントリミット回路13には、電流監視用のMOSトランジスタM2のドレイン端子と接地点GNDとの間に、抵抗R3と並列をなすように、直列形態に接続された定電流源CI2およびNチャネルMOSトランジスタM5が設けられている。また、電圧入力端子INと接地点GNDとの間には、直列形態に接続された抵抗R6およびNチャネルMOSトランジスタM6が設けられている。そして、この抵抗R6とトランジスタM6の接続ノードN3にインバータINV1の入力端子が接続され、さらにインバータINV1の後段にインバータINV2が接続されており、インバータINV2の出力信号が前記MOSトランジスタM5のゲート端子に印加されるように構成されている。この実施例では、トランジスタM6および抵抗R6とインバータINV1とによって判定回路が構成される。なお、インバータINV1およびINV2の代わりにコンパレータ(電圧比較器)を用いるようにしても良い。
【0026】
上記定電流源CI2が流す定電流I2は、通常動作範囲において出力電流Ioutに比例した電流Isを流す電流監視用トランジスタM2に流れる最大電流、すなわち出力電流の直線性が保証される範囲でのM2の電流Isの最大値をIsMAXとすると、I2>IsMAXとなるように設定する。そして、この定電流I2の値によって過電流保護ポイントa(図6参照)が決定されることとなる。なお、定電流源CI2は、例えばゲート端子とソース端子とが結合されることで定電流を流すデプレッション型MOSトランジスタによって構成することができる。また、外部から供給される定電流または内部で生成した定電流をカレントミラー回路で折り返すものであっても良い。
【0027】
次に、上記のように構成されたカレントリミット回路13の動作について説明する。
図1のカレントリミット回路13においては、電源投入時すなわち電圧入力端子INに直流電圧VDDが印加された直後は、抵抗R6を介してインバータINV1の入力端子にVDDが印加されるため、インバータINV2の出力がハイレベルとなりトランジスタM5がオン状態になっている。つまり、通常動作状態では、定電流源CI2が電流監視用トランジスタM2の電流Isを引き込むようになっている。
【0028】
図2(A)には、通常動作状態であってM2に流れる電流Isが定電流源CI2の電流I2よりも少ない、つまりI2>Isの場合におけるカレントリミット回路13内の各ノードの電位状態をHまたはLで表わしてある。ここで、Hは回路の論理レベルがハイレベルのことを、Lはローレベルのことを意味している。
I2>Isの場合、電流監視用トランジスタM2に流れる電流Isはすべて定電流源CI2によって引き込まれ接地点へ流されることとなる。そのため、電流監視用トランジスタM2のドレイン端子に接続された抵抗R3には電流がほとんど流れることはなく、ノードN1の電位は接地電位(0V)に近い状態(ローレベル)にされる。
【0029】
それによって、トランジスタM6がオフ状態にされてノードN3の電位が入力電圧VDD(ハイレベル)にされ、インバータINV2の出力がハイレベルとなりトランジスタM5がオン状態を維持することとなる。そして、上記のように、電流Isが定電流源CI2によって引かれ抵抗R3に流れる電流が0近くまで減少されることで、ノードN2の電位がVDDとされてトランジスタM4がオフ状態とされ、負荷電流が増加してもIs=I2となるまで、つまり過電流保護ポイントa(図6参照)までは過電流保護機能は働かないようにされる。
なお、I2>Isの場合でも、定電流源CI2やトランジスタM5がインピーダンスを有することで抵抗R3に若干電流が流れるが、それによって上昇するノードN1の電位がトランジスタM6のしきい値電圧を超えなければ、M6はオフ状態を維持することができ、そのような設計は充分に可能である。
【0030】
一方、トランジスタM2に流れる電流Isが増加してI2<Isとなった場合におけるカレントリミット回路13内の各ノードの電位状態が図2(B)に示されている。
図2(B)に示すように、I2<Isとなった場合には、トランジスタM2の電流Isの一部が抵抗R3に流れ、ノードN1の電位が高くなり始める。そして、N1の電位がトランジスタM6のしきい値電圧以上になると、M6がオン状態にされて抵抗R6に電流が流れ、ノードN3の電位が下がりインバータINV1の出力がハイレベル、インバータINV2の出力がローレベルとなって、定電流源CI2と直列のトランジスタM5がオフにされる。
すると、定電流源CI2に流れていた電流Isがすべて抵抗R3に流れることで、ノードN1の電位がさらに上昇して電流検出用トランジスタM3がオン状態にされることで、抵抗R5に電流が流れてノードN2の電位が下がり電流制限用トランジスタM4がオンされ、制御用トランジスタM1のゲート電圧を高くして出力電流を制限する過電流保護機能が働くようになる。
【0031】
図5に示す従来タイプのレギュレータでは、負荷電流が過電流保護ポイントaに達する前に電流検出用トランジスタM3に電流が流れ始めるため、図6のポイントa’で過電流保護機能が働き始めていた。そのため、図6に破線Bで示すように「つ」の字に近い出力電圧−出力電流特性に従って過電流保護が働いてしまい、正常な動作を保証したい通常動作領域(特に負荷電流が多くなった場合)において出力制御動作に悪影響を与えてしまっていた。
これに対し、本実施例のレギュレータは、上記のようなカレントリミット回路13の動作により、予め設定した過電流保護ポイント(a点)までは過電流保護機能は働かないようにされ、それによって図6に実線Aで示すように「フ」の字特性に近い出力電圧−出力電流特性に従って過電流保護を行うことができるようになる。その結果、通常動作領域(特に負荷電流が多くなった場合)において出力制御動作に悪影響を与えることがないという利点がある。なお、図6において、一点鎖線Cで示されているのは、カレントリミット回路13を設けない場合の出力電圧−出力電流特性である。
【0032】
図3に、上記実施形態の第1の変形例を示す。この変形例は、図1のレギュレータのカレントリミット回路13における定電流源CI2を抵抗R7に置き換えたものである。抵抗R7の抵抗値は抵抗R3の抵抗値よりもずっと小さな値に設定される。MOSトランジスタM5のドレイン端子に接続された抵抗R7は、電流源とみなすことができる。
図3の変形例のカレントリミット回路13においては、電流監視用トランジスタM2にとってドレイン側の抵抗は、抵抗R3と抵抗R7(M4のオン抵抗を含む)の並列インピーダンスとして見える。この回路では、出力電流Ioutが増加すると電流監視用トランジスタM2に流れる電流Isが増加し、これに伴い抵抗R3の電流も増加することとなるが、出力電流Ioutが過電流保護ポイントaに達したときに、ノードN1の電位がトランジスタM6のしきい値電圧になるように抵抗R3やR7の抵抗値を設定しておくことで、M6がオンすると、インバータINV1,INV2の出力がそれぞれ反転してトランジスタM5がオフされ、抵抗R7に流れていた電流がすべて抵抗R3に流れるようになる。
【0033】
つまり、この変形例では、トランジスタM3とM6のしきい値電圧が同一の場合、M2の電流Isが増加してM6がオンし電流が流れ始めるとM3にも電流が流れ始めるが、このときM5がオフして抵抗R7側の電流経路のインピーダンスが高くなることでインピーダンスが切り替わり、抵抗R3の電流が増加してノードN1の電位が急速に上昇し、電流検出用トランジスタM3がいっきにオン状態にされる。これによって、図1の回路とほぼ同様に、所望のポイント(図6のa点)から出力電流Ioutを減少させて、「フ」の字に近い出力電圧−出力電流特性に従って電流を制御する過電流保護機能を働かせることができる。
【0034】
図4には、カレントリミット回路13を備えた図1のレギュレータICの第2の変形例が示されている。
図4のカレントリミット回路13は、過電流保護ポイントで抵抗R3側の電流経路のインピーダンスを切り替える回路を設けたものである。具体的には、電流監視用のトランジスタM2と電流−電圧変換用の抵抗R3との間に、PチャネルMOSトランジスタM7を接続するとともに、出力端子OUTと接地点GNDとの間に直列形態に接続されたMOSトランジスタM8および定電流源CI3を設ける。また、該トランジスタM8と上記トランジスタM7のゲート端子同士を接続し、M8はゲートとドレインを結合して、M8とM7とがカレントミラー回路を構成するようにしてある。
【0035】
そして、出力電流が過電流保護ポイントに達していない通常動作領域では、トランジスタM7がオフして抵抗R3側の電流経路のインピーダンスを高くしており、出力電流が過電流保護ポイントに達してインバータINV2によってトランジスタM5がオフされると、トランジスタM7がオンして抵抗R3側の電流経路のインピーダンスを低くしてM2の電流Isが抵抗R3側に流れ易くなるようにしている。つまり、この変形例では、トランジスタM7はソースフォロワ型のトランジスタとして機能する。なお、図3の変形例のように、定電流源CI2の代わりに抵抗R7を設けたものにおいても、図4のトランジスタM7、M8および定電流源CI3を設けた変形例が考えられる。
【0036】
また、図4の回路において、トランジスタM7のみを残しトランジスタM8およびこれと直列に設けられた定電流源CI3の代わりに、例えばトランジスタM2のドレイン電圧を検出するアンプを設け、該アンプの出力をトランジスタM7のゲート端子に供給して、ノードN1の電位がトランジスタM6をオンさせる電位に達したときにトランジスタM7をオンさせて、抵抗R3側の電流経路を低インピーダンスに切り替えるように構成しても良い。要するに、電流監視用トランジスタM2のドレイン側に、過電流保護ポイントで抵抗R3側のインピーダンスを切り替えるインピーダンス切替え回路が設けられていればよい。
【0037】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、回路を構成するトランジスタとしてMOSトランジスタを使用したものを示したが、本発明は、MOSトランジスタの代わりにバイポーラトランジスタを使用した回路にも適用することができる。また、フィードバック電圧VFBを生成するブリーダ抵抗R1,R2は、オンチップの素子でなく、外付けの素子で構成しても良い。
さらに、以上の説明では、本発明をシリーズレギュレータICに適用した例を説明したが、本発明にそれに限定されるものではなく、二次電池を充電する充電装置を構成する充電制御用ICにも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 シリーズレギュレータIC
11 誤差アンプ(制御回路)
12 基準電圧回路
13 カレントリミット回路(過電流保護回路)
M1 制御用トランジスタ
M2 電流監視用トランジスタ
M3 電流検出用トランジスタ
M4 電流制限用トランジスタ
INV1,INV2 インバータ(判定回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧入力端子と出力端子との間に接続された制御用トランジスタと、
出力電圧に比例したフィードバック電圧と所定の基準電圧との電位差に応じて出力電圧が一定になるように前記制御用トランジスタを制御する制御回路と、
出力電流が所定の電流値以上になった場合に前記制御用トランジスタをオフさせることで過電流が流れないようにする過電流保護回路と、
を備えたレギュレータ用半導体集積回路であって、
前記過電流保護回路は、
前記制御用トランジスタにより流される出力電流に縮小比例した電流を流す電流監視用トランジスタと、
該電流監視用トランジスタに流れる電流を電圧に変換する電流−電圧変換手段と、
を備え、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流さないようにし、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になった場合には、前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成されていることを特徴とするレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項2】
前記過電流保護回路は、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段と、通常動作状態では前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流さないようにする電流経路切替え回路をさらに備え、
前記監視電流検出手段によって前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことが検出された場合には、前記電流経路切替え回路により前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項3】
前記電流経路切替え回路は、
前記電流監視用トランジスタと前記電流−電圧変換手段との接続ノードと、基準電位点と、の間に直列形態に接続された電流源およびスイッチ手段と、
前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路と、
を備え、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以下のときは前記スイッチ手段がオン状態とされ、前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になって前記接続ノードの電位が所定値以上になった場合に前記判定回路の出力が変化して前記スイッチ手段がオフ状態にされ、前記電流経路切替え回路により前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流すように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項4】
前記過電流保護回路は、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことを検出する監視電流検出手段と、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを変更可能なインピーダンス切替え回路をさらに備え、
前記インピーダンス切替え回路は、
通常動作状態では前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを高くし、
前記監視電流検出手段によって前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になったことが検出された場合には、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを低くして、前記電流監視用トランジスタに流れる電流を前記電流−電圧変換手段へ流し、該電流−電圧変換手段により変換された電圧に基づいて前記制御用トランジスタをオフさせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項5】
前記インピーダンス切替え回路は、
前記電流監視用トランジスタと前記電流−電圧変換手段との接続ノードと、基準電位点と、の間に直列形態に接続された電流源およびスイッチ手段と、
前記接続ノードの電位が所定値以上になったことを検出する判定回路と、を備え、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以下のときは前記スイッチ手段がオン状態とされ、
前記電流監視用トランジスタに流れる電流が所定値以上になって前記接続ノードの電位が所定値以上になった場合に前記判定回路の出力が変化して前記スイッチ手段がオフ状態にされ、前記インピーダンス切替え回路は、前記電流監視用トランジスタから見た前記電流−電圧変換手段のインピーダンスを低くすることを特徴とする請求項4に記載のレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項6】
前記過電流保護回路は、
前記電圧入力端子と基準電位点との間に直列形態に接続された第2の電流−電圧変換手段および電流検出用トランジスタと、前記電圧入力端子と前記制御用トランジスタの制御端子との間に接続された電流制限用のトランジスタをさらに備え、
前記電流監視用トランジスタと前記電流−電圧変換手段との接続ノードに、前記電流検出用トランジスタの制御端子が接続され、
前記第2の電流−電圧変換手段と電流検出用トランジスタとの接続ノードに、前記電流制限用のトランジスタの制御端子が接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに一項に記載のレギュレータ用半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97505(P2013−97505A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238537(P2011−238537)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】