説明

レッグウェア

【課題】切替えパーツの数及び縫合部の量が少なく且つ少なくとも足首及び脹脛に段階的着圧をかけることができるレッグウェアを提供すること。
【解決手段】着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えるレッグウェアであって、上記脛部及び足首部の素材が、弾性経編物であること、上記レッグウェアが、上記脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有すること、着用時に、着用者の少なくとも脹脛及び足首に段階的着圧が加えられること、そして足首の着圧が、15hPa〜30hPaの範囲にあり、そして脹脛の着圧が7〜24hPaの範囲にあることを特徴とするレッグウェア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レッグウェアに関する。具体的には、本発明は、脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有し、そして着用時に、着用者の少なくとも脹脛及び足首に、所定の段階的着圧が加えられることを特徴とするレッグウェアに関する。本発明はまた、脛部の上端に、滑り止め部が連結されているレッグウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用衣服において、スポーツ中の下肢の疲労軽減、パフォーマンスの向上、スポーツ後の疲労回復効果を促進する等のために、段階的着圧を加えることができる衣服が提案されている。
【0003】
段階的着圧を加えることができるレッグウェアとしては、ザムスト(商標)、リガード(商標)等の商標名の下で市販されている商品が知られている。しかし、現在市販されている、段階的着圧を加えることができるレッグウェアは、丸編みの編物から構成されているため、(i)丸編みの編物を薄くすると、経編みの編物よりも耐久性に劣る場合が多い、(ii)丸編みの凹凸が、着用時に触感の不快感につながる、(iii)薄くて、高密度のレッグウェアを作りにくい、そして(iv)生地に手が触れる際の「冷たく」感じる度合いを意味する接触冷感、クーリング機能等に劣る等の問題がある。
【0004】
丸編みの編物に起因する問題を改良するため、弾性経編物を、裁断及び縫合することにより形成されたレッグウェアがまた、例えば、Skins(商標)等の名称の下で市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、弾性経編物から形成されたレッグウェアでは、特に、脛から足首にかけての断面積の急激な変化に追従させることが難しいことから、特に、着用者の足首に着圧を加えることが難しいという問題点がある。また、着用者の足首から脹脛に段階的着圧を加えることができるような立体形状を有するように設計すると、切替えパーツの数及び縫合部の量が多くなるため、レッグウェアが伸縮性に劣り、特に、スポーツ時の着用者の下肢の径の変化に追従しにくくなるという問題点がある。
従って、本発明は、切替えパーツの数及び縫合部の量が少なく且つ着用者の少なくとも足首及び脹脛に段階的着圧を加えることができるレッグウェアを提供することを目的とする。
本発明はまた、着用時にずり落ちにくいレッグウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えるレッグウェアであって、上記脛部及び足首部の素材が、弾性経編物であること、上記レッグウェアが、上記脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有すること、着用時に、着用者の少なくとも脹脛及び足首に段階的着圧が加えられること、そして足首の着圧が、15hPa〜30hPaの範囲にあり、そして脹脛の着圧が7〜24hPaの範囲にあることを特徴とするレッグウェアにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えるレッグウェアであって、
上記脛部及び足首部の素材が、弾性経編物であること、
上記レッグウェアが、上記脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有すること、
着用時に、着用者の少なくとも脹脛及び足首に段階的着圧が加えられること、そして
足首の着圧が、15hPa〜30hPaの範囲にあり、そして脹脛の着圧が7〜24hPaの範囲にあること、
を特徴とする、上記レッグウェア。
【0008】
[態様2]
上端に、上記弾性経編物よりも摩擦係数が高い滑り止め部が連結されている、態様1に記載のレッグウェア。
[態様3]
上記滑り止め部の素材が、丸編みの編物である、態様2に記載のレッグウェア。
【0009】
[態様4]
上記滑り止め部の周囲長方向の疲労試験後回復率が、95%以上である、態様2又は3に記載のレッグウェア。
[態様5]
上記滑り止め部の周囲長方向の伸長後回復率が、上記脛部及び足首部における弾性経編物の周囲長方向の伸長後回復率よりも高い、態様2〜4のいずれか一つに記載のレッグウェア。
【0010】
[態様6]
前身頃、後身頃、上記三日月形状の切替え部、及び上記滑り止め部から成る、態様2〜5のいずれか一つに記載のレッグウェア。
[態様7]
上記レッグウェアの上端が、着用者の膝上に位置するように寸法設計されている、態様1〜6のいずれか一つに記載のレッグウェア。
【0011】
[態様8]
上記レッグウェアの上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計されている、態様1〜6のいずれか一つに記載のレッグウェア。
[態様9]
上記レッグウェアの下端が、着用者の足首に位置するように寸法設計されている、態様1〜8のいずれか一つに記載のレッグウェア。
【0012】
[態様10]
上記レッグウェアの下端が、着用者の足の甲及び土踏まずに位置するように寸法設計されている、態様1〜8のいずれか一つに記載のレッグウェア。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレッグウェアは、脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有するので、切替えパーツの数及び縫合部の量が少なく且つ着用者の少なくとも足首及び脹脛に段階的着圧を加えることができる。
本発明の滑り止め部を有するレッグウェアは、着用時にずり落ちにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のレッグウェアの第1の実施形態を示す図(左脚用パーツの左側面図、右側面図、正面図、及び背面図)である。
【図2】図2は、図1に示されるレッグウェアの着用状態を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明のレッグウェアの第2の実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明のレッグウェアの第3の実施形態を示す図である。
【図5】図5は、三日月形状の切替え部により、脹脛の膨らみにあわせた立体形状を簡易に形成することができる理由を説明するための図である。
【図6】図6は、段階的着圧を測定するための木製の脚型Fの図である。
【図7】図7は、本発明のレッグウェアの第4の実施形態を示す図である。
【図8】図8は、本発明のレッグウェアの第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のレッグウェアについて、以下、詳細に説明する。
[レッグウェア]
本明細書において、「レッグウェア」は、スポーツ、日常生活等において着用される、下肢の少なくとも一部を覆うウェア、より具体的には、着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えるウェアを意味する。
なお、本明細書において、「脛」は、膝より下且つ足首より上の部分を意味し、そして脛には、向こう脛及び脹脛が含まれる。
【0016】
上記スポーツは、遊戯、競争、肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称を意味し、例えば、陸上競技、野球、ソフトボール、テニス、ハンドボール、体操、卓球、バドミントン、サッカー、バスケットボール、バレーボール、自転車、スキー、スノーボード、スケート、水泳、ボートレースだけでなく、持久系スポーツ、ランニング、ウォーキング、トレッキング、登山、ゴルフ等が挙げられる。
上記日常生活には、日常作業、例えば、立ち仕事、デスクワーク等、旅行中の移動、例えば、飛行機及び電車での移動等が含まれる。
【0017】
本発明のレッグウェアは、少なくとも、着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えており、且つ右脚用及び左脚用の2つのパーツに分かれているものであれば、特に制限されないが、例えば、本発明のレッグウェアの上端は、着用者の大腿部、膝上、膝下、脛等に位置するように寸法設計されることができ、そして本発明のレッグウェアの下端は、着用者のつま先、足の甲及び土踏まず、かかと、足首等に位置するように寸法設計されることができ、本発明のレッグウェアの用途に応じて、適宜設計することができる。
【0018】
なお、本明細書において、「上端」は、着用時に、着用者の頭側に最も近くなる端部を意味し、そして「下端」は、着用者のつま先側に最も近くなる端部を意味する。例えば、脛部の上端と称する場合には、着用者の脛を覆う脛部の中で、着用者の頭側に最も近くなる端部を意味し、そしてレッグウェアの上端と称する場合には、本発明のレッグウェアの中で、着用者の頭側に最も近くなる端部を意味し、レッグウェアの上端が、滑り止め部に存在する場合もある。
【0019】
本発明のレッグウェアの第1の実施形態を、図1に示す。図1(a)〜(d)は、それぞれ、左脚用パーツの左側面図、右側面図、正面図、及び背面図である。図1に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び左右の2つの三日月形状の切替え部4から構成され、これらのパーツが、縫合部5により縫合されている。図1に示されるレッグウェア1は、着用者の脛を覆う脛部2と、着用者の足首を覆う足首部3とを有し、そして脛部2の両側部に、三日月形状の切替え部4が、後方に突出するように配置されている。図1に示されるレッグウェア1では、その上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計され、そしてその下端が、着用者の足首に位置するように寸法設計されている。
なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称形となる。
【0020】
縫合部5としては、当技術分野で通常用いられている縫合手段であれば、特に制限されずに用いることができるが、例えば、フラットシームを挙げることができる。
また、図1に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4の4つのパーツから構成されているが、本発明において、パーツ数は、特に制限されるものではなく、図1に示されるようなタイプのレッグウェアは、本発明の効果を奏する範囲内であれば、5つ以上のパーツから構成されていてもよい。
【0021】
また、図1に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4が、縫合部5により縫合されているが、本発明において、各パーツの連結手段は、縫合部に制限されず、他の連結手段、例えば、接着により形成される接着部、融着により形成される融着部等であってもよい。なお、「縫合部」に関しては、後述する。
【0022】
図2は、図1に示されるレッグウェア1の着用状態を説明するための図である。図2は、左脚用パーツの左側面図であり、着用者の下肢が点線で示されている。図2のレッグウェア1では、三日月形状の切替え部4が、脛部2の両側部において、後方に突出している。なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称の着用状態となる。

なお、本明細書において、「後方」は、着用時に着用者の背面方向となるような方向を意味する。
【0023】
図3は、本発明のレッグウェアの第2の実施形態を示す図である。図3は、左脚用パーツの着用状態の左側面図であり、着用者の下肢が点線で示されている。図3に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び左右の2つの三日月形状の切替え部4、並びに土踏まず部10から構成され、これらのパーツが、縫合部5により縫合されている。図3に示されるレッグウェア1は、着用者の脛を覆う脛部2と、着用者の足首を覆う足首部3とを有し、そして脛部2の両側部に、三日月形状の切替え部4が、後方に突出するように配置されている。図3に示されるレッグウェア1では、その上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計され、そしてその下端が、着用者の足の甲8及び土踏まず9に位置するように寸法設計されている。
なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称の着用状態となる。
【0024】
縫合部5としては、当技術分野で通常用いられている縫合手段であれば、特に制限されずに用いることができるが、例えば、フラットシームを挙げることができる。
また、図3に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4、並びに土踏まず部10の5つのパーツから構成されているが、本発明において、パーツ数は特に制限されるものではなく、図3に示されるようなタイプのレッグウェアは、本発明の効果を奏する範囲内であれば、6つ以上のパーツから構成されていてもよい。
【0025】
また、図3に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4、並びに土踏まず部10の5つのパーツが、縫合部5により縫合されているが、本発明において、各パーツの連結手段は、縫合部に制限されず、他の連結手段、例えば、接着により形成される接着部、融着により形成される融着部等であってもよい。
【0026】
図3に示されるレッグウェア1では、レッグウェア1の下端が着用者の足の甲8及び土踏まず9に位置するように寸法設計されているので、着用者の足の甲及び土踏まずに着圧を加えることができ、そして親指の付け根、小指の付け根、及びかかとの3点を結ぶ、3つのアーチ構造の形状を保持するように作用することができる。人間の足は、3つのアーチ構造を保持することにより、立つ、歩く、走る等の際に、カラダを支え、衝撃を吸収し、効率よく移動することができるので、3つのアーチ構造を保持することは重要である。
【0027】
図4は、本発明のレッグウェアの第3の実施形態を示す図である。図4は、左脚用パーツの着用状態の左側面図であり、着用者の下肢が点線で示されている。図4に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7及び左右の2つの三日月形状の切替え部4から構成され、これらのパーツが、縫合部5により縫合されている。図4に示されるレッグウェア1は、着用者の脛を覆う脛部2と、着用者の足首を覆う足首部3と、脛部2の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部4とを有し、その上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計され、そしてその下端が、着用者の足の指の付け根11に位置するように寸法設計されている。
なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称の着用状態となる。
【0028】
縫合部5としては、当技術分野で通常用いられている縫合手段であれば、特に制限されずに用いることができるが、例えば、フラットシームを挙げることができる。
また、図4に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4の4つのパーツから構成されているが、本発明において、パーツ数は特に制限されるものではなく、図4に示されるようなタイプのレッグウェアは、本発明の効果を奏する範囲内であれば、5つ以上のパーツから構成されていてもよい。
【0029】
また、図4に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4が、縫合部5により縫合されているが、本発明において、各パーツの連結手段は、縫合部に制限されず、他の連結手段、例えば、接着により形成される接着部、融着により形成される融着部等であってもよい。
【0030】
本発明のレッグウェアの脛部及び足首部の素材である弾性経編物としては、例えば、2ウェイトリコットが挙げられる。上記弾性経編物により、スポーツ等に適した、薄く、凹凸感が少なく、肌触りが良好であり、そして耐久性、UVカット性能、接触冷感、及びクーリング性能の高いレッグウェアを製造することができる。
【0031】
上記弾性経編物は、弾性糸及び非弾性糸から編成されることが好ましい。上記素材に用いられる弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテル・エステル弾性糸、ポリアミド弾性糸等、若しくは天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状のいわゆるゴム糸、又はこれ等を主体とした他の有機合成樹脂体との複合若しくは混合によって得られる弾性糸が挙げられ、糸自身がゴム状弾性を有するものが好ましい。
【0032】
上記弾性糸としては、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであってもよい。また、弾性糸は、そのまま生糸として使用してもよく、非弾性糸又は弾性糸で被覆した加工糸として使用してもよい。本発明で使用する弾性糸として、特にポリウレタン弾性糸が好ましい。弾性糸の繊度は、約44デシテックス(dtex)〜約78デシテックスが好ましい。
【0033】
上記非弾性糸は、フィラメント糸又は紡績糸のいずれであることができる。具体的には、フィラメント糸として、レーヨン、アセテート、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化合繊又は絹(生糸)等が好ましく用いられ、原糸、仮ヨリ加工糸、若しくは先染糸等又はこれらの複合糸であることができる。これらは、いずれも撚糸加工のし易い、安定した糸条であることが好ましい。また、紡績糸は、木綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、レーヨン、ポリアミド、ポリエステル、アクリロニトリル、ポリプロピレン、塩化ビニル系等の化合繊からなるステープルであって、これらが単独若しくは混紡された紡績糸であればよい。非弾性糸がフィラメント糸である場合、約22〜約78デシテックスの範囲が好ましく、約22〜約55デシテックスの範囲がより好ましい。
【0034】
上記素材として、例えば、一般的なトリコット編機を用いて、オサL1としてのナイロン、オサL2としてのポリウレタン弾性繊維を配し、双方をフルセットで使用し、デンビ組織であるL1が1023、L2が1210の組織とし、ポリウレタン混率が約20〜約40%となるよう編み上げた弾性経編物を挙げることができる。
【0035】
本発明に用いられる弾性経編物は、当該弾性経編物の周囲長方向の最大伸長率が、丈方向の最大伸長率よりも大きいことが好ましい。上記素材の丈方向よりも、特に足首部において、上記素材の周囲長方向の最大伸長率を大きくすることにより、着脱性を確保しつつ、着用時に着用者の足首に一定の着圧を加えることができるからである。
【0036】
本明細書において、「丈方向」とは、着用時に着用者の身長方向となるような方向を意味し、そして「周囲長方向」とは、上記丈方向と垂直の方向を意味する。
また、本明細書において、「伸長率」は、伸び長さ(A)の、元の長さ(B)との差を、元の長さで割った値の百分率を意味する。
上記伸長率は、次の式:
伸長率(%)=100×(A−B)/B
で表すことができる。
【0037】
本明細書において、「最大伸長率」は、荷重と伸びとが比例関係を保つ、最大の伸長率を意味する。
最大伸長率は、以下の方法により測定することができる。幅5cm及び長さ15cmの試験片を、テンシロン型の定速伸長型引張試験機にセットし、治具の間隔(つかみ間隔)を5cmとし、引張速度5cm/分にて、試験片が破断するまで試験を行う。試験後、横軸を伸び、縦軸を荷重とするグラフを作図し、荷重と伸びとが比例関係を外れる地点の最大伸び長さから、最大伸長率を算出する。テンシロン型の定速伸長型引張試験機としては、例えば、オリエンテック製RTC−1210Aを挙げることができる。
【0038】
本発明に用いられる弾性経編物の周囲長方向の最大伸長率は、好ましくは約150%〜約500%、より好ましくは約150%〜約300%であることが、足首部の着脱性を確保するため、適応サイズ範囲を拡大するため、そして着用者の足首に所望の着圧を加えるために好ましい。
また、本発明に用いられる弾性経編物は、最大伸長率が高いので、例えば、筋肉が肥大した場合、又は下肢を大きく屈曲させた場合であっても、着圧の変化が少ない。
【0039】
[三日月形状の切替え部]
本発明のレッグウェアは、脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有する。
脛部及び足首部の素材が弾性経編物であるレッグウェアに、三日月形状の切替え部を採用することにより、切替えパーツの数及び縫合部の量を少なくしながら、脹脛部に、着用者の脹脛の膨らみにあわせた立体形状を簡易に形成することができる。
三日月形状の切替え部により、脹脛の膨らみにあわせた立体形状を簡易に形成することができる理由を、図5を用いて説明する。
【0040】
図5は、左脚用パーツの左側面図であり、図5のレッグウェア1は、前身頃6と、後身頃7とを有する。後身頃7の、前身頃6と接する部分のうち、着用者の脹脛に相当する領域(高さL)に、一定の三日月形状の切替え部4を想定する仮想線を引き、三日月形状の切替え部4を切り出す。三日月形状の切替え部4の短弧及び長弧を、それぞれ、x及びyとする。次いで、三日月形状の切替え部4において、高さLを保持したまま、長弧yを、y’,y’’,及びy’’’(yの長さ<y’の長さ<y’’の長さ<y’’’の長さ)へと変化させた、それぞれ、三日月形状の切替え部4’,4’’及び4’’’を準備する。次いで、前身頃6と、三日月形状の切替え部4を切り出した後の後身頃と、三日月形状の切替え部(4’,4’’及び4’’’)と、若干のサイズ調整をした後に縫合すると、脹脛部分の立体形状(膨らみ方)が異なるレッグウェアを形成することができる。脹脛部分の立体形状(膨らみ)を大きくしたい場合には、三日月形状の切替え部の長弧yの長さをより長くすればよい。
【0041】
短弧xの長さは、脹脛部分に立体形状を形成するためには、特に大きく変化させる必要はないが、高さLを保持したまま、短弧xの長さを長くすると、レッグウェアの脛部が、短弧xの形状に沿って窪む傾向がある。
【0042】
本明細書において、「三日月形状の切替え部」には、一般的な三日月形状を意味する、2つの円弧(長弧及び短弧)から形成される形状だけではなく、2つの楕円弧から形成される形状、円弧及び楕円弧から形成される形状、これらの一部又は全部が直線で置換された形状、例えば、短弧の全部が直線で置換された形状等、略三日月形状を有する切替え部が含まれる。
【0043】
脛部の両側部の三日月形状の切替え部において、内側の三日月形状の切替え部の形状と、外側の三日月形状の切替え部の形状とは、同一、例えば、対称形、又は非同一、例えば、相似形であることができる。例えば、内側の三日月形状の切替え部が、外側の三日月形状の切替え部よりも小さくてもよい。
なお、本明細書において、「内側」は、着用時に下肢の内側、すなわち、右脚の左側及び左脚の右側となる側を意味し、そして「外側」は、着用時に下肢の外側、すなわち、右脚の右側及び左脚の左側となる側を意味する。
【0044】
本発明に用いられる三日月形状の切替え部の高さ(図5のLに相当する)は、本発明のレッグウェアに所望の立体的形状を形成することができれば、特に制限されるものではなく、サイズ等によっても変化するが、例えば、約10cm〜約25cmであることができる。
本発明に用いられる三日月形状の切替え部の幅、すなわち、三日月形状の切替え部の突出部分の幅は、本発明のレッグウェアに所望の立体的形状を形成することができれば、特に制限されるものではなく、サイズ等によっても変化するが、例えば、約1cm〜約8cmであることができる。
【0045】
上記三日月形状の切替え部の素材は、上記脛部及び足首部の素材と同一若しくは異なる素材、例えば、通気性を有する素材であることができる。例えば、上記三日月形状の切替え部の素材は、上記脛部及び足首部の素材と同一の弾性経編物であることができ、又は上記脛部及び足首部の素材よりも最大伸長率の高い弾性経編物であることができ、あるいは通気性を有するメッシュ素材であることができる。
【0046】
本明細書において、「通気性」は、通気度を意味する。「通気性を有する素材」としては、運動時に蒸れを感じない等の、当業界で通気性を有する素材又は通気性のある素材として一般的に用いられている素材であれば、特に問題なく用いることができるが、例えば、JIS L1018(フラジール形試験機を用いた測定法)の測定法に従って、約100cm3/cm2・s以上の通気度を有するような素材であることができる。さらに、夏季における運動時の蒸れを効果的に防止するために、上記素材は、例えば、約300cm3/cm2・s以上の通気度を有するような素材であることができる。
【0047】
[縫合部]
本発明のレッグウェアにおいて、三日月形状の切替え部と、他のパーツ、例えば、前身頃及び後身頃とを固定するために用いられうる縫合部は、特に制限されず、種々の縫製方法により形成することができ、例えば、4本針フラットシーマ(両面飾り扁平縫いミシン)、2本針両面飾り扁平縫いミシン、3本針両面飾り扁平縫いミシンを用いて形成することができる。上記縫合部としては、特に、フラットシーマにより形成されるフラットシームが好ましい。これにより、切替え部分の厚みを薄くし、且つ素材の伸びを妨げないようにすることができるからである。上記フラットシームは、肌に当たる縫い糸が立体的にならないよう、生地の裏側を見て縫う「裏使い」で用いることができる。これにより、肌触りがさらに向上する。
【0048】
本発明では、シンプルな三日月形状の切替え部を採用して立体設計を行った。従って、本発明のレッグウェアは、切替え部の数が少なく、その結果、従来のレッグウェアよりも縫合部の量が少なく、下記の利点をさらに得ることができる;
(1)素材の伸びが阻害されないので、運動時に脹脛等の周囲長が変化した場合であっても、着用者の下肢、特に着用者の少なくとも脹脛及び足首の着圧が変わりにくい;
(2)素材の伸びが阻害されないので、運動動作が阻害されにくい;そして
(3)皮膚感触が柔らかくなり、不快なアタリ感がない。
【0049】
[段階的着圧]
本明細書において、「着圧」とは、着用時に、着用者の各部位に加えられる圧力を意味する。上記着圧としては、便宜上、例えば、図6に示すような木製の脚型Fに、本発明のレッグウェアを着用させ、ザルツマン社製の着圧測定器MST−MK IVを用いて測定された値を採用することができる。
図6に示す脚型Fの周囲長を、以下の表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
本明細書において、「段階的着圧」とは、着用者の下肢の丈方向に異なる場所において、上記着圧が異なることを意味し、下肢の主要な部位、例えば、足首及び脹脛において、つま先よりの部位の方が、頭よりの部位よりも高い着圧を有する。上記段階的着圧としては、レッグウェアの下端側から上端側にかけて漸減的に着圧が加えられることが好ましい。
【0052】
上記段階的着圧としては、パンティストッキング等の分野で、静脈環流を促進するために用いられている種々の段階的着圧を適用することができるが、例えば、足首の着圧>脹脛の着圧とすることができる。
また、図3及び図4に示すようなレッグウェアでは、足の甲及び土踏まずの着圧>足首の着圧>脹脛の着圧とすることができる。
【0053】
着用者の少なくとも脹脛及び足首に段階的着圧を加えること、特に、足首から脹脛まで漸減的に着圧を加えることにより、静脈還流が促進され、スポーツ中の下肢の疲労軽減、スポーツ能力の向上、スポーツ後の疲労軽減及び迅速な疲労回復が期待できる。
なお、脹脛への着圧は、脛全体に着圧を加えることにより達成することができる。
【0054】
上記段階的着圧は、足首の着圧>脹脛の着圧となるような着圧であるであることが好ましく、そして脹脛の着圧は、好ましくは約7〜約24hPa、より好ましくは約14〜約17.5hPaであり、そして足首の着圧は、好ましくは約15hPa〜約30hPa、より好ましくは約18〜約27hPaである。
上記着圧の範囲は、脹脛の筋ポンプ作用を効果的に補助し、着用者の下肢のむくみや血行障害を軽減させる静脈還流量を増加させるために望ましい。
【0055】
[滑り止め部]
本発明のレッグウェアには、その上端、例えば、大腿部、膝上部、膝下部、脛部等に、滑り止め部が連結されていてもよい。
本発明に用いられる弾性経編物は、薄く、凹凸感が少なく、肌触りが良い生地であるが、生地自体の摩擦抵抗が小さい傾向がある。さらに、本発明のレッグウェアは、脛部分から足首部にかけて、段階的に径が細くなることに加え、下肢の主要な部位において、つま先よりの部位の方が、頭よりの部位よりも高い着圧を有するので、着用時に、より下向き、すなわち、つま先方向への力がはたらきやすい。
従って、着用者の下肢の形状、特に脛、例えば、脹脛の形状等によっては、着用時にずり下がりやすい場合がある。
【0056】
図7は、本発明のレッグウェアの第4の実施形態を示す図である。図7は、左脚用パーツの着用状態の左側面図であり、着用者の下肢が点線で示されている。図7に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び左右の2つの三日月形状の切替え部4、並びに滑り止め部12から構成され、これらのパーツが、縫合部5により縫合されている。図7に示されるレッグウェア1は、着用者の脛を覆う脛部2と、着用者の足首を覆う足首部3とを有し、そして脛部2の両側部に、三日月形状の切替え部4が、後方に突出するように配置されている。滑り止め部12は、脛部2の上端に、縫合部5により縫製されている。図7に示されるレッグウェア1では、その上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計され、そしてその下端が、着用者の足首に位置するように寸法設計されている。
なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称の着用状態となる。
【0057】
縫合部5としては、当技術分野で通常用いられている縫合手段であれば、特に制限されずに用いることができるが、例えば、フラットシームを挙げることができる。
また、図7に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4、並びに滑り止め部12の5つのパーツから構成されているが、本発明において、パーツ数は特に制限されるものではなく、図7に示されるようなタイプのレッグウェアは、本発明の効果を奏する範囲内であれば、6つ以上のパーツから構成されていてもよい。
【0058】
また、図7に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、及び2つの三日月形状の切替え部4、並びに滑り止め部12が、縫合部5により縫合されているが、本発明において、各パーツの連結手段は、縫合部に制限されず、他の連結手段、例えば、接着により形成される接着部、融着により形成される融着部等であってもよい。
【0059】
図8は、本発明のレッグウェアの第5の実施形態を示す図である。図8は、左脚用パーツの着用状態の左側面図であり、着用者の下肢が点線で示されている。図8に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、左右の2つの三日月形状の切替え部4、及び土踏まず部10、並びに滑り止め部12から構成され、これらのパーツが、縫合部5により縫合されている。図8に示されるレッグウェア1は、着用者の脛を覆う脛部2と、着用者の足首を覆う足首部3とを有し、そして脛部2の両側部に、三日月形状の切替え部4が、後方に突出するように配置されている。滑り止め部12は、脛部2の上端に、縫合部5により縫製されている。図8に示されるレッグウェア1では、その上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計され、そしてその下端が、着用者の足の甲8及び土踏まず9に位置するように寸法設計されている。
なお、右脚用パーツは、左脚用パーツと左右対称の着用状態となる。
【0060】
縫合部5としては、当技術分野で通常用いられている縫合手段であれば、特に制限されずに用いることができるが、例えば、フラットシームを挙げることができる。
また、図8に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、2つの三日月形状の切替え部4、及び土踏まず部10、並びに滑り止め部12の6つのパーツから構成されているが、本発明において、パーツ数は特に制限されるものではなく、図8に示されるようなタイプのレッグウェアは、本発明の効果を奏する範囲内であれば、7つ以上のパーツから構成されていてもよい。
【0061】
また、図8に示されるレッグウェア1は、前身頃6、後身頃7、2つの三日月形状の切替え部4、及び土踏まず部10、並びに滑り止め部12が、縫合部5により縫合されているが、本発明において、各パーツの連結手段は、縫合部に制限されず、他の連結手段、例えば、接着により形成される接着部、融着により形成される融着部等であってもよい。
【0062】
本発明に用いられる滑り止め部は、上記弾性経編物よりも摩擦係数が高いものであれば、特に制限されないが、例えば、丸編みの編物、特に、小口径の丸編機で編んだ丸編みの編物であることが好ましい。上記滑り止め部としての丸編みの編物は、例えば、ポリウレタン繊維又はポリウレタンを芯としたカバーリング繊維を含むことができる。ポリウレタン繊維又はポリウレタンを芯としたカバーリング繊維を用いることにより、周囲長方向の最大伸長率、並びに後述の伸長後回復率及び疲労試験後回復率が高くなり、適正な着圧が得られやすく、繰り返しの着用によるへたりが軽減され、そして滑り止め効果が高くなる。また、ポリウレタンを芯としたカバーリング繊維を用いることにより、上記に加えて、上記滑り止め部を伸長した際の引張強度の増大を抑制することができ、さらに、ポリウレタン部分が外部から見えにくくなり、本発明のレッグウェアの外観が向上する。
本発明の滑り止め部としては、上記疲労試験後回復率が、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、そして98%以上であることがより好ましい。
【0063】
また、上記丸編みの編物は、例えば、ポリウレタン繊維又はポリウレタンを芯としたカバーリング繊維を挿入糸として含むインレイ編みであることができる。上記丸編みの編物がインレイ編みであることにより、周囲長方向の最大伸長率、並びに周囲長方向の伸長後回復率及び疲労試験後回復率がさらに高くなり、適正な着圧がさらに得られやすく、繰り返しの着用によるへたりがさらに軽減され、そして滑り止め効果がさらに高くなる。
【0064】
摩擦係数の高さを利用して、本発明のレッグウェアを滑りにくくすることにより、滑り止め部部分の着圧を、所定の範囲内に保持することができる。例えば、従来公知の、ゴムで締め付けることにより滑り止めを行う方法では、滑り止めの効果を得るために、ゴム部分を高い圧力(着圧)で締め付ける必要があるので、レッグウェアの下端側から、上端側にかけて漸減的に着圧を加えることが難しくなる。
【0065】
上記滑り止め部の高さは、特に制限されるものではないが、約1.0cm〜約6.0cm、好ましくは、約2.5〜約5.0cm程度である。上記滑り止め部の高さが約1.0cmを下回ると、滑り止め効果が少なくなる傾向があり、そして上記滑り止め部の高さが約6.0cmを上回ると、弾性経編物を用いることによる利点が少なくなる傾向がある。
【0066】
また、上記滑り止め部を構成する素材、例えば、丸編みの編物は、脛部及び足首部を構成する弾性経編物よりも、周囲長方向の最大伸長率、並びに周囲長方向の伸長後回復率及び疲労試験後回復率が高いことが好ましい。繰り返しの着用において、周囲長方向のへたりが少なく、適正な着圧と滑り止め効果とを保持できるからである。
【0067】
なお、本明細書において、「伸長後回復率」は、以下のように測定することができる。幅5cm及び長さ20cmの試験片を、テンシロン型の定速伸長型引張試験機にセットし、治具の間隔(つかみ間隔)を10cmとし、引張速度20cm/分にて、伸長率80%まで伸長させる。次いで、上記試験片を、速度20cm/分にて収縮させ、元の位置付近まで戻し、そして荷重を取り除いた後の、上記試験片の伸長率x(%)を測定し、以下の計算式に従って、伸長後回復率を測定する。
伸長後回復率(%)=100×(80−x)/80
上記テンシロン型の定速伸長型引張試験機としては、例えば、オリエンテック製RTC−1210Aを挙げることができる。
【0068】
さらに、上記滑り止め部を構成する素材、例えば、丸編みの編物は、脛部及び足首部を構成する弾性経編物よりも、疲労試験後回復率が高いことが好ましい。繰り返しの着用において、周囲長方向のへたりが少なく、適正な着圧と滑り止め効果とを保持できるからである。
【0069】
なお、疲労試験後は、大栄科学精器製作所のデマッチャー型疲労試験器、DC−3を用いて、以下のように測定することができる。
幅40mm及び長さ200mmの試験片を、治具の間隔(つかみ間隔)を100mmとしてDC−3にセットし、当初の治具の間隔が分かるように2つの目印を付ける。次いで、試験片を、伸長率0%から、伸長率60%(又は80%)まで、複数回にわたって伸長させる。単位時間当りの伸長回数及び総伸長回数は、例えば、それぞれ、122回/分及び10,000回とすることができる。試験終了後、試験片を治具から外し、一定時間経過後、例えば、20時間経過後に、2つの目印の間隔y(mm)を測定する。
疲労試験後回復率(%)は、下記式に従って算出することができる。
伸長率60%における疲労試験後回復率(%)
=100×[160−y]/[160−100]
伸長率80%における疲労試験後回復率(%)
=100×[180−y]/[180−100]
【0070】
本発明のレッグウェアは、着用時のずり下がりを防止するために、着用者に接する任意の場所、特に、脹脛部の、着用者と接する側に、摩擦係数の高い材料、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等のコーティング部をさらに有していてもよい。
上記コーティング部は、着用者の周囲長方向に連続して配置されていてもよく、又は丈方向及び周囲長方向に、断続的、例えば、千鳥状に配置されていてもよい。
ただし、上記コーティング部は、一般的に通気性が低いため、着用時のムレ、カブレ等に注意する必要がある。
【0071】
本発明のレッグウェアはまた、弾性経編物、及び所望による滑り止め部の繊維に、摩擦係数の高い繊維、例えば、ナノファイバーを採用することにより、着用時のずり下がりをさらに少なくすることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示すようなレッグウェア(以下、「レッグウェアA」と称する)を製造した。レッグウェアAの素材は、周囲長方向の最大伸長率が250%である2ウェイトリコット生地であった。
図6に示す脚型Fを用いて、レッグウェアAの脹脛及び足首の着圧を測定したところ、それぞれ、17.5hPa及び25.0hPaであった。
【0073】
レッグウェアAを、複数の被験者に着用してもらったところ、特に脹脛部が自己の脹脛にフィットし、縫合部が少なく、足の動きが阻害されにくかったとの回答を得た。さらに、上記被験者から、スポーツ中の疲労が軽減され、そしてスポーツ後の疲労の回復が迅速であったとの回答が得られた。
【0074】
[実施例2]
図7に示すようなレッグウェア(以下、「レッグウェアB」と称する)を製造した。レッグウェアBの脛部及び足首部の素材は、周囲長方向の最大伸長率が250%である2ウェイトリコット生地であり、そして滑り止め部の素材は、丸編みの編物であった。
図6に示す脚型Fを用いて、レッグウェアBの脹脛及び足首の着圧を測定したところ、それぞれ、17.5hPa及び25.0hPaであった。
レッグウェアBを、複数の被験者に着用してもらったところ、滑り止め部にきつさ、蒸れ等を感じることなく、スポーツの際に、ズレ落ちにくかったのと回答が得られた。
【0075】
[実施例3]
実施例2で製造されたレッグウェアBに用いられた滑り止め部の素材である丸編みの編物に関して、疲労試験を実施した。試験片は、少なくとも40mmの丈方向長さと、少なくとも200mmの周囲長方向長さを有する丸編みの編物を裁断することにより準備したので、疲労試験後回復率(%)の値は、滑り止め部の周囲長方向の値を評価することに相当する。
単位時間当りの伸長回数及び総伸長回数は、それぞれ、122回/分及び10,000回であり、試験後、20時間経過後に測定した。伸長率60%の試験では、20時間経過後の2つの目印の間隔が101mmであり、疲労試験後回復率(%)は、98%であった。同様に、伸長率80%の試験では、20時間経過後の2つの目印の間隔が102mmであり、疲労試験後回復率(%)は、98%であった。
【0076】
実施例1で製造されたレッグウェアAの素材である2ウェイトリコット生地の周囲長方向の疲労試験を行ったところ、伸長率60%及び80%における2つの目印の間隔が、それぞれ、105mm及び108mmとなり、疲労試験後回復率(%)は、それぞれ、93%及び90%であった。
【符号の説明】
【0077】
1 レッグウェア
2 脛部
3 足首部
4 三日月形状の切替え部
5 縫合部
6 前身頃
7 後身頃
8 足の甲
9 土踏まず
10 土踏まず部
11 足の指の付け根
12 滑り止め部
F 脚型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の脛を覆う脛部と、着用者の足首を覆う足首部とを備えるレッグウェアであって、
前記脛部及び足首部の素材が、弾性経編物であること、
前記レッグウェアが、前記脛部の両側部に、後方に突出する三日月形状の切替え部を有すること、
着用時に、着用者の少なくとも脹脛及び足首に段階的着圧が加えられること、そして
足首の着圧が、15hPa〜30hPaの範囲にあり、そして脹脛の着圧が7〜24hPaの範囲にあること、
を特徴とする、前記レッグウェア。
【請求項2】
上端に、前記弾性経編物よりも摩擦係数が高い滑り止め部が連結されている、請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項3】
前記滑り止め部の素材が、丸編みの編物である、請求項2に記載のレッグウェア。
【請求項4】
前記滑り止め部の周囲長方向の疲労試験後回復率が、95%以上である、請求項2又は3に記載のレッグウェア。
【請求項5】
前記滑り止め部の周囲長方向の伸長後回復率が、前記脛部及び足首部における弾性経編物の周囲長方向の伸長後回復率よりも高い、請求項2〜4のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項6】
前身頃、後身頃、前記三日月形状の切替え部、及び前記滑り止め部から成る、請求項2〜5のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項7】
前記レッグウェアの上端が、着用者の膝上に位置するように寸法設計されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項8】
前記レッグウェアの上端が、着用者の脛に位置するように寸法設計されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項9】
前記レッグウェアの下端が、着用者の足首に位置するように寸法設計されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項10】
前記レッグウェアの下端が、着用者の足の甲及び土踏まずに位置するように寸法設計されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のレッグウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−41661(P2012−41661A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185349(P2010−185349)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】