説明

レトルト食品包装容器用シーラントフィルム

【課題】安定したヒートシール強度及び耐衝撃強度を有するヒートシール部を形成でき、更にレトルト処理後の耐ユズ肌性を持つレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを提供する。
【解決手段】(a)プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minの樹脂組成物であって、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15〜27質量%であり、また前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、且つそのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gである樹脂組成物75〜95質量%、及び(b)エチレン含量が10〜15質量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%からなる樹脂混合物を主成分とするレトルト食品包装容器用シーラントフィルムである。また、この樹脂混合物を、押出成形機でTダイを用いて製膜するとき、Tダイから吐出する樹脂混合物の温度を230〜260℃に調整し、且つ第一ロール(チルロール)の温度を50〜85℃に調整する製膜方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品包装容器に用いるシーラントフィルムに関し、またこのシーラントフィルムの製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品を袋などの包装容器に入れて密封した後、加圧・加熱殺菌処理(レトルト処理)し、食品の賞味期限を長く保つようにした、いわゆるレトルト食品が普及している。レトルト食品の包装容器は、食品の品質管理の観点から、遮光性、酸素バリア性、密封性が要求され、そのためポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アルミ箔などの積層フィルムを基材にしている。そして、この積層フィルムには、包装容器を作成するとき、或いは容器に食品を収納して密封するとき、ヒートシールによってシールするために、ヒートシール可能なフィルム層、すなわちシーラントフィルム層が設けられている。このように、レトルト食品の包装容器の素材は、積層フィルム層(ラミネート層)とシーラントフィルム層との積層体からなっている。また、レトルト食品容器は、高温でレトルト処理され、その後冷蔵保存或いは冷凍保存が行われ、更に流通過程を経ることから、そのヒートシール部は、密封性を保つためのレトルト前後の安定したヒートシール強度と共に、耐熱性、冷蔵や冷凍の低温時の耐衝撃性の良さが要求される。
【0003】
これらの要求に応えるべく、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムには、従来から種々の提案がなされている。例えば(A)ポリプロピレン系樹脂30〜95質量%と(B)シングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜70質量%とからなる樹脂組成物に対して(C)エチレン−α−オレフィン共重合体を配合したことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物からなるシーラントフィルムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、(a)結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーを主成分にする樹脂組成物(A)からなるA層と、(b)メタロセン触媒を用いて重合された結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーとを主成分にする樹脂組成物(B)からなるB層とからなり、少なくとも一面がB層からなる表面層で構成された加熱殺菌処理包装用シーラント積層体が提案されている(特許文献2)。
【0005】
更に、(a)プロピレン−エチレンランダム共重合体、又はプロピレン−エチレンランダム共重合体とα−オレフィン・プロピレン重合体とのブロック共重合体、(b)高密度ポリエチレン、(c)平均粒子径3〜12μmのアンチブロッキング剤、及び(d)有機滑剤からなるヒートシール層、及びポリプロピレンラミネート層とで構成された、食品のレトルト加工に適するポリプロピレン系多層シーラントフィルムが提案されている(特許文献3)。また、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂と軟質ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂とからなるレトルト用に好適なシーランとフィルムが提案されている(特許文献4)。
【0006】
しかしながら、上記の提案されたシーラントフィルムを用いたレトルト食品用包装容器は、ヒートシール部の耐衝撃強度が良かったり、或いは内容物充填時の口開きが良好であったりなどするが、レトルト処理後のヒートシール強度が不充分という問題があった。
【特許文献1】特開2007−106851号公報
【特許文献2】特開2006−150892号公報
【特許文献3】特開2005−178216号公報
【特許文献4】特開2003−105162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特に、レトルト処理に必要な耐熱性を有し、レトルト処理前後の安定したヒートシール強度及び耐衝撃強度を有するヒートシール部を形成でき、更にレトルト処理後の耐ユズ肌性(レトルト処理後に包装容器の表面に発生する微小な凹凸、いわゆるユズ肌を抑える性質)を併せ持つレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minの樹脂組成物であって、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15〜27質量%であり、また前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、且つそのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gである樹脂組成物75〜95質量%、及び(b)エチレン含量が10〜15質量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%からなる樹脂混合物を主成分とすることを特徴とするレトルト食品包装容器用シーラントフィルムである。また、最内面が、上記のシーラントフィルムで構成されたレトルト食品用包装容器である。
【0009】
また、本発明は、(a)プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minの樹脂組成物であって、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15〜27質量%であり、また前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、且つそのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gである樹脂組成物75〜95質量%、及び(b)エチレン含量が10〜15質量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%からなる樹脂混合物を、押出成形機でTダイを用いて製膜するとき、Tダイから吐出する樹脂混合物の温度を230〜260℃に調整し、且つ第一ロール(チルロール)の温度を50〜85℃に調整することを特徴とする請求項1記載のシーラントフィルムの製膜方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、ヒートシール性に優れており、このシーラントフィルムを用いてヒートシールしたシール部分は、レトルト処理前後においてシール強度が安定しており、また耐衝撃強度に優れている。また、本発明のシーラントフィルムで作成した食品包装容器は、レトルト処理後に包装容器の表面に発生する微小な凹凸(ユズ肌)を抑えることができる。更に、本発明のシーラントフィルムは耐ブロッキング性にも優れていて、包装容器に内容物を充填する際に、包装容器が適度な口開き性を有する。また、本発明のシーラントフィルを押出成形機でTダイを用いて製膜するとき、第一ロール(チルロール)の温度を50〜85℃に調整し、Tダイから吐出する前記シーラント用ポリプロピレン系樹脂組成物の温度を230〜260℃に調整することによって、上記のユズ肌の発生をより一層抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
レトルト食品包装容器は、一般に、積層フィルム層(ラミネート層)とシーラントフィルム層(ヒートシール層)との積層体を素材にして作成されている。積層フィルム層は、基材層であり、レトルト食品包装容器の形状を保持し、また、食品の品質管理の観点から、遮光性、酸素バリア性、密封性を有する積層フィルムであり、通常、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、オレフィン系フィルム、アルミニウム箔などを積層したものである。シーラントフィルム層は、上記積層体でレトルト食品包装容器を作成するとき、或いはこの容器に食品を収納して密封するとき、ヒートシールによってシールするための層である。本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、このシーラントフィルム層を形成するフィルムを指す。
【0012】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムにおいて、成分(a)の樹脂組成物は、プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の樹脂組成物である。この樹脂組成物は、2段以上の重合反応で得られる樹脂組成物である。例えば、1段目の反応でプロピレンを単独重合させ、2段目の反応でエチレンを加入し重合反応させ、プロピレン−エチレンブロック共重合体を生成させて製造する。プロピレン単独重合体の中に分散したプロピレン−エチレンブロック共重合体には、ポリエチレンの周りにプロピレン−エチレンブロック共重合体層が存在する構造のものがある。この樹脂組成物は、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレンなどと称され、「サンアロマー」(サンアロマー株式会社製)、「ノバティック」(日本ポリプロ株式会社製)、「プライムポリプロ」(株式会社プライムポリマー製)などの商標名で市販されている。
【0013】
本発明で用いる成分(a)の樹脂組成物は、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minのものであるが、好ましくは、1.0〜5g/10minのものであり、更に好ましくは1.0〜3g/10minのものである。メルトフローレイトが10g/10minを超えると成形性が悪いばかりか、衝撃強度が低下する。逆に1.0g/10minより小さくなると成形性を著しく損ねる。
【0014】
本発明で用いる成分(a)の樹脂組成物において、プロピレン−エチレンブロック共重合体の樹脂組成物中の含量は、15〜27質量%である。好ましくは含量20〜25質量%のものである。プロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15質量%を下回ると衝撃強度が低下し、27質量%を超えると衝撃強度は向上するがヒートシール強度が低下する場合が出てくる。
【0015】
また、上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。プロピレン含量が35質量%を下回るとプロピレン重合体部分との相溶性が低下し、ヒートシール強度が低下する。逆に65質量%を超えるとエラストマー成分のガラス転移温度が高くなり、低温衝撃強度が低下してしまう。
【0016】
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体は、そのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gのものである。好ましく3.0〜4.0dl/gのものである。キシレン可溶分の極限粘度が2.5dl/gより低くなるとヒートシール強度が低下し、4.5dl/gより大きくなるとフィルムにフィッシュアイが目立ちフィルム外観を損ねる。キシレン可溶分の極限粘度〔η〕は、プロピレン−エチレンブロック共重合体を135℃のオルトキシレンに溶解し、これを25℃に冷却したときに析出するポリマーを、135℃デリカンに溶解した溶液で測定した極限粘度である。
【0017】
本発明に用いる成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体は、エチレン含量が10〜15質量%のもの、好ましくは12〜14質量%のものであって、エラストマー的性質を有するものである。エチレン含量が10質量%を下回ると衝撃強度が低下してしまい、エチレン含量が15質量%を超えると樹脂の重合が困難となるばかりでなく、フィルムのブロッキング等の問題が発生する。成分(b)は、例えば、「versify」(ダウケミカル社製)の商標名で市販されているものが好適である。
【0018】
本発明のシーラントフィルムを構成する成分(a)の樹脂組成物と成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体との混合割合は、成分(a)の樹脂組成物75〜95質量%、好ましくは85〜90質量%と、成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%、好ましくは10〜15質量%である。
【0019】
この成分(a)と成分(b)からなるシーラントフィルムには、本発明の目的を害さない範囲で他の成分を添加することができる。例えば一般的にフィルムに用いられる脂肪酸アミド系のスリップ剤、シリカ系やアクリルビーズ系のアンチブロッキング剤、フェノール系やリン系の酸化防止剤、その他顔料、塩素吸収剤、耐候安定剤等を添加配合してもよい。
【0020】
上記の成分(a)の樹脂組成物と成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体との混合樹脂を、製膜してシーラントフィルムにする。この製膜は、種々の方法で行えるが、円形ダイを使用したインフレーション成形法やTダイを使用した押し出し成形法が好適に用いられる。Tダイを用いて製膜する場合は、吐出温度を230℃〜260℃となるように、押出機とTダイの温度を設定し、第一ロール(チルロール)温度を50℃〜85℃、好ましくは50℃〜70℃にする。本発明の成分(a)と成分(b)との混合樹脂からなるシーラントフィルムは、ユズ肌発生の抑制性能を有するが、この抑制性能はチルロールの温度に影響される。このチルロールの温度は、製膜フィルム(シーラントフィルム)の結晶性に影響し、チルロール温度が85℃を超えると、フィルムの結晶化度が上がりすぎて衝撃強度を落としてしまい、逆にチルロール温度が50℃より低くなると、衝撃強度は高くなるが、ユズ肌発生の抑制性能を落としてしまう。レトルト食品包装容器のユズ肌の発生は、レトルト処理時に、該容器を構成する積層体の表面に微細な凹凸が生じることに起因する。この微細な凹凸の発生は、シーラントフィルム層の吸油性が影響し、このシーラントフィルム層の吸油性は、その結晶化度に影響されると考えられる。
【0021】
また、上記の成分(a)と成分(b)との混合樹脂からなるシーラントフィルムの層は、レトルト食品包装容器用積層体の基材の積層フィルムの表面に直接設けてもよい。また、成分(a)と成分(b)との混合樹脂を、他の樹脂と多層押し出し成形し、得られた多層フィルムの他の樹脂面を、レトルト食品包装容器用積層体の基材の積層フィルムの表面に接合させて、シーラントフィルム層を形成してもよい。上記の他の樹脂としては、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン含量が10質量%以下のプロピレンーエチレンランダム共重合体、プロピレン単独重合などが挙げられる。
【0022】
次に実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。
実施例1〜3、比較例1〜6
表1に示す成分(A)と成分(B)とを、表1に示す割合で混合し、Tダイを備えた押出成形機を用いてフィルムに成形した。このフィルム製膜は、口径65mmφ、ダイ幅1,350mmの多層Tダイ成形機を用い、吐出温度、チルロール温度を表1の条件となるように設定して行い、厚み60μmのフィルムを得た。
【0023】
表1の成分(A)において、本発明の成分(a)の樹脂組成物は、プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散した形態の樹脂組成物であって、サンアロマー株式会社製のサンアロマーPC470C(メルトフローレイト2.2g/10min、プロピレン−エチレンブロック共重合体含量20質量%、該プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン含量40質量%、該プロピレン−エチレンブロック共重合体のキシレン可溶分の極限粘度〔η〕3.8dl/g)を用いた。また、プロピレン単独重合体は、サンアロマー株式会社製のサンアロマーPC600S(メルトフローレイト7.5g/10min)を用いた。
【0024】
表1の成分(B)において、本発明の成分(b)の共重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体であって、ダウ・ケミカル社製のversify2300(メルトフローレイト2g/10min、エチレン含量12質量%)を用いた。また、エチレン−オクテンランダム共重合体は、ダウ・ケミカル社製のエンゲージEG8100(メルトフローレイト1g/10min)を用いた。エチレン−プロピレンランダム共重合体は、三井化学株式会社製のタフマーPO480(メルトフローレイト1g/10min、エチレン含量77質量%)を用いた。また、プロピレン−ブテンランダム共重合体は、三井化学株式会社製のタフマーXM7080(メルトフローレイト7g/10min)を用いた。
また、上記で得たシーラントフィルムについて、衝撃強度、ヒートシールの強度、耐ブロッキング性、耐ユズ肌性を試験した。その結果を併せて表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1の試験結果の欄における衝撃強度は、フィルムインパクトテスターを用いて測定した(単位は、KJ/mm)。ヒートシール強度は、次のようにして測定した。すなわち、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に上記のシーラントフィルムを積層し、この積層フィルムを幅15mmの短冊状に切断して試料を作成した。この試料を、シーラントフィルム面が内側になるようにして折り曲げ、積層フィルムが2枚重なった部分を、ヒートシーラーを用いて裏打ち法にて、温度160℃、圧力0.2MPa、時間1秒でヒートシールした。このシール部を引き剥がす測定方法でヒートシール強度を測定した(「レとルト処理前のヒートシール強度」)。また、上記裏打ち法にてヒートシールした試料を、121℃×30分の条件でレトルト処理を行い、その後シール部を引き剥がす測定方法でヒートシール強度を測定した(「レとルト処理後のヒートシール強度」)。表1のヒートシール強度の単位は、N/15mm幅である。
【0027】
耐ブロッキング性は、上記の積層フィルムを10cm×10cmに切断し、この2枚を重ねてガラス板で挟んで10kgの荷重を掛け,50℃のオーブンに48時間放置し、その後、2枚の積層フィルムを指で剥がし、耐ブロッキングを調べた。抵抗なく剥がれたものを○、剥がすことはできるが抵抗があったものを△、くっついて剥がし難いものを×とした。
耐ユズ肌性は、上記の積層フィルムを5cm×10cmに切断し試験片を作成した。レトルト食品チンジャオロースを収納した市販のパウチを開封し、その中に上記試験片を入れ、再びパウチをシールして、121℃×30分の条件でレトルト処理を行い、その後試験片をパウチの中から取り出し、試験片の表面を観察した。ユズ肌がほとんど発生していなかったものを○、部分的に発生したものを△、表面全体にユズ肌が発生したものを×とした。
【0028】
表1から明らかなように、本発明の成分(a)の樹脂組成物と本発明の成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体とからなる樹脂混合物を、押出成形機で押出し成形して製膜したシーラントフィルム(実施例1〜3)は、衝撃強度が優れており、またシール部のヒートシール強度が、レトルト処理で低下することなく、安定している。また耐ブロッキング性が優れていた。
一方、成分(a)の樹脂組成物のみを用い、成分(b)を用いない比較例1のシーラントフィルムは衝撃強度が劣っていた。また、成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に代えて、エチレン−オクテンランダム共重合体を用いた比較例3は、耐衝撃性は良いものの、レトルト処理によりヒートシール強度が著しく低下し、また耐ブロックが劣っていた。また、成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に代えて、エチレン含量の多いエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いた比較例4は、耐衝撃性、レトルト処理後のヒートシール強度、耐ブロックが劣っていた。また、成分(b)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に代えて、プロピレン−ブテンランダム共重合体を用いた比較例5は、耐衝撃強度が劣っていた。更に、成分(a)の樹脂組成物に代えてプロピレン単独重合体を用い他比較例6は、耐衝撃強度が劣っていた。
【0029】
また、耐ユズ肌性についてみると、本発明の実施例1〜3は、優れていた。しかし、その実施例1と同じ組成であっても、押出し成形にとき、チルロールの温度30℃にした比較例2は、耐ユズ肌性が劣った。また、本発明の成分(a)と成分(b)とを備えない比較例1、3〜5は、チルロールの温度が50℃であっても耐ユズ肌性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minの樹脂組成物であって、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15〜27質量%であり、また前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、且つそのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gである樹脂組成物75〜95質量%、及び(b)エチレン含量が10〜15質量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%からなる樹脂混合物を主成分とすることを特徴とするレトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
【請求項2】
最内面が、請求項1記載のシーラントフィルムで構成されたレトルト食品用包装容器。
【請求項3】
(a)プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレンブロック共重合体が分散している形態の、メルトフローレイトが1.0〜10g/10minの樹脂組成物であって、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含量が15〜27質量%であり、また前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン含量が35〜65質量%であり、且つそのキシレン可溶分の極限粘度〔η〕が2.5〜4.5dl/gである樹脂組成物75〜95質量%、及び(b)エチレン含量が10〜15質量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜25質量%からなる樹脂混合物を、押出成形機でTダイを用いて製膜するとき、Tダイから吐出する樹脂混合物の温度を230〜260℃に調整し、且つ第一ロール(チルロール)の温度を50〜85℃に調整することを特徴とする請求項1記載のシーラントフィルムの製膜方法。

【公開番号】特開2010−150318(P2010−150318A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327432(P2008−327432)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】