説明

ロックカバー

【課題】操作スイッチの周囲に必要となるスペースを小さくすることで、複数の操作スイッチを近接して配置できるようにする。
【解決手段】ロックカバー10は、保持部材1とカバー部材2とを備えている。保持部材1は、操作ボタン113の両側面に操作方向に沿って立設される2つの保持部14,15を有している。カバー部材2は、保持部14,15の配置方向に沿って係止片21、折曲部22、貫通部23、中間部24及び貫通部25をこの順に有する。貫通部25は南京錠300の腕部310が前後方向に貫通する取付孔27を有している。係止片21、折曲部22及び貫通部23を保持部14と保持部15との間から貫通孔16にこの順に貫通させた後、カバー部材2を回転させつつ貫通部25を保持部14と保持部15との間から貫通孔17に貫通させ、中間部24を操作ボタン113の前面側に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停止スイッチ等のスイッチの操作を選択的に規制するロックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機械の制御盤等の取付パネルに配置される操作スイッチや鍵スイッチ等の操作スイッチには、停止スイッチのように、操作部の操作を選択的に規制すべきものがある。
【0003】
このため、従来のロックカバーとして、操作スイッチの操作部の前面側にピン状や箱状のカバーを着脱自在に備えたものがある。カバーは、操作部の前面側に装着した状態で南京錠の腕部等の施錠部材によって施錠可能にされている。
【0004】
ピン状のロックカバーは、操作スイッチの操作部の両側方に配置された保持部の貫通孔に取付パネルのパネル面に沿ってピンを横方向から抜き差しされる。ピンには、保持部の外側で南京錠が貫通する孔部が形成されている。
【0005】
箱状のロックカバーは、本体と蓋体とからなり、操作スイッチの操作部を包囲するように配置される。蓋体は、一端側を支点にして本体に軸支されており、操作部の前面を開閉可能にされている。蓋体の他端側の孔部と本体の孔部との間に南京錠を貫通させる。
【0006】
南京錠の鍵を保持している管理者のみが、南京錠を開錠してピン又は蓋体を操作部の前面から取り除くことができ、操作部を操作できる。
【0007】
また、従来の操作スイッチには、操作部に南京錠を直接装着するようにしたものもある(特許文献1〜3参照。)。南京錠は、幅方向を取付パネルのパネル面に平行にして操作部に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−049176号公報
【特許文献2】特開2007−066681号公報
【特許文献3】特開2007−207600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ピン状のロックカバーを使用する場合、操作スイッチの周囲にピンを保持部の貫通孔に挿脱するためのスペースが必要になる。箱状のロックカバーを使用する場合、操作スイッチの周囲に操作部を開放した状態の蓋体を位置させるためのスペースが必要になる。このため、従来のロックカバーを使用する場合には、取付パネルに複数の操作スイッチを近接して配置することができない。
【0010】
また、操作部に南京錠を直接取り付けるためには専用の部品が必要になり、既存の操作スイッチを停止スイッチ等として用いることができないだけでなく、幅方向を取付パネルのパネル面に平行にして南京錠を配置するためのスペースが操作スイッチの周囲に必要になる。このため、操作部に南京錠を直接取り付ける操作スイッチは、周囲に他の操作スイッチを近接して配置することができない。
【0011】
この発明の目的は、操作スイッチの周囲に必要となるスペースを小さくすることで、複数の操作スイッチを近接して配置できるロックカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るロックカバーは、保持部材とカバー部材とを備えている。保持部材は、操作スイッチの操作体の両側面に操作体の操作方向に沿って立設される2つの保持部であって第1の貫通孔が形成された第1の保持部と第2の貫通孔が形成された第2の保持部とを有している。カバー部材は、2つの保持部の配置方向に沿って第1の貫通部、中間部及び第2の貫通部をこの順に有する。第1の貫通部には折曲部を介して係止片が連続し、第2の貫通部は施錠部材が貫通する取付孔を有している。2つの保持部の配置方向における折曲部と取付孔との間の長さは、2つの保持部の間隔よりも長くされている。係止片、折曲部及び第1の貫通部は、操作体の前面側における第1の保持部と第2の保持部との間から第1の貫通孔をこの順に貫通する。第2の貫通部は、操作体の前面側における第1の保持部と第2の保持部との間から第2の貫通孔を貫通する。中間部は、第1及び第2の貫通部がそれぞれ第1及び第2の貫通孔を貫通している状態で、操作体の前面側に位置する。
【0013】
操作体の前面側における第1の保持部と第2の保持部との間から、係止片、折曲部及び第1の貫通部を第1の貫通孔にこの順に貫通させた後、第2の貫通部を第2の貫通孔に貫通させると、操作体の前面に位置する中間部によって操作体の操作が規制される。この状態では、係止片及び取付孔がそれぞれ第1及び第2の保持部の外側に位置し、取付孔に施錠部材を貫通させると、保持部材からカバー部材が取れなくなり、中間部による操作体の操作の規制が維持される。
【0014】
この構成において、保持部材とカバー部材とを連結する連結部材を備えることが好ましい。保持部材から抜き取ったカバー部材の紛失を防止できる。
【0015】
また、カバー部材の中間部、第1の貫通部及び第2の貫通部の断面形状は、第1の貫通孔及び第2の貫通孔を通過する形状であることが好ましい。操作スイッチの一方の側方に十分なスペースがある場合に、第1の保持部の外側から第2の貫通部、中間部、第1の貫通部を第1の貫通孔にこの順に貫通させて保持部材にカバー部材を装着することができる。
【0016】
この構成において、保持部材の第1の貫通部から折曲部を経由して係止片に至る間に長孔を形成し、一端が長孔内に摺動自在に係合し他端が保持部材に取り付けられた連結部材を備えることが好ましい。
【0017】
第1及び第2の保持部は、それぞれ第1及び第2の貫通孔を取付パネルの法線方向に沿って複数ずつ有するものとすることが好ましい。単一のロックカバーを複数種類の操作スイッチに使用することができる。
【0018】
カバー部材が板状体である場合に、取付孔を第2の保持部に沿う長孔状に形成することが好ましい。操作スイッチの周囲に必要なスペースを大きくすることなく、取付孔に複数の施錠部材を貫通させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、操作スイッチの操作体の前面側における第1の保持部と第2の保持部との間でカバー部材を保持部材に着脱することができる。このため、操作スイッチの周囲に大きなスペースを設ける必要がなく、複数の操作スイッチを近接して配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態に係るロックカバーを備えた操作スイッチの組立図である。
【図2】同操作スイッチの平面図である。
【図3】(A)〜(D)は、同ロックカバーの第1の使用方法を示す平面図である。
【図4】(A)及び(B)は、同ロックカバーの第2の使用方法を示す平面図である。
【図5】同操作スイッチの使用状態を示す図である。
【図6】(A)及び(B)は、この発明の別の実施形態に係るロックカバーの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明の実施形態に係るロックカバーについて、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、この発明の実施形態に係るロックカバー10は、一例として操作スイッチ100に使用される。操作スイッチ100は、操作部110、スイッチ部120、ワッシャ130及び固定リング140を備えている。操作部110は、軸部111を取付パネル200の取付孔201に前面側から貫通させる。固定リング140は、取付パネル200の背面側で軸部111に螺合する。操作部110は、固定リング140とフランジ部112との間にワッシャ130及び取付パネル200を挟んで取付パネル200に固定される。スイッチ部120は、取付パネル200の背面側で軸部111に嵌着する。操作部110の前面に露出した操作ボタン113(この発明の操作体に相当する。)の操作がスイッチ部120に収納された図示しないスイッチに伝達される。
【0023】
なお、ロックカバー10が使用される操作スイッチは、操作スイッチ100に限るものではなく、例えば鍵スイッチであってもよい。
【0024】
ロックカバー10は、保持部材1、カバー部材2、チェーン3及びワッシャ4を備えている。保持部材1は、一例として金属平板を素材としてプレス加工によって箱状に形成されており、取付面11、支持面12,13、保持部14,15からなる。取付面11は、軸部111が貫通する孔部18を有し、フランジ部112とワッシャ130との間にワッシャ4を介して挟持される。支持面12,13は、取付面11の上下に位置し、保持部材1の強度を確保する。保持部14,15は、それぞれこの発明の第1及び第2の保持部であり、取付面11の左右両側方に位置する。保持部14,15は、それぞれ第1及び第2の貫通孔16,17を有する。保持部14の下端部には、丸孔19が形成されている。
【0025】
カバー部材2は、一例として金属平板を素材としてプレス加工によって形成されている。カバー部材2は、平面視において、一様の断面形状を呈し、一端側から他端側に向かって係止片21、折曲部22、第1の貫通部23、中間部24及び第2の貫通部25をこの順に備えている。係止片21は、折曲部22を介して第1の貫通部23に連続している。第1の貫通部23から中間部24を経由して第2の貫通部25に至る間は、平面視において直線状に形成されている。係止片21から折曲部22を経由して第1の貫通部23には、長孔26が形成されている。第2の貫通部25には、上下方向の長孔状を呈する取付孔27が形成されている。取付孔27には、施錠部材としての南京錠300の腕部310が貫通する。施錠部材は、チェーン錠やハスプであってもよい。
【0026】
チェーン3は、この発明の連結部材に相当する。チェーン3の一端は、留め輪31を介して長孔26内に摺動自在に係合している。チェーン3の他端は、留め輪32を介して丸孔19に係合している。チェーン3は、保持部材1に対するカバー部材2の分離を禁止し、カバー部材2の紛失を防止する。カバー部材2の紛失を別の方法で防止できる場合には、チェーン3を省略してもよい。
【0027】
なお、取付孔27は、長孔状である必要はなく、少なくとも1つの南京錠300の腕部310が貫通するものであればよい。但し、取付孔27を長孔状に形成することで、複数の南京錠300の腕部310を取付孔27に貫通させることができる。南京錠300の腕部310は、取付孔27を前後方向に貫通する。このため、南京錠300の幅方向が取付パネル200の法線方向に平行になり、幅に比較して十分に短い厚み方向が取付パネル200のパネル面に平行になる。このため、南京錠を配置するための大きなスペースを操作スイッチ100の周囲に設ける必要がない。
【0028】
カバー部材2の縦断面形状は、貫通孔16,17の形状に略等しくされている。また、平面視において、カバー部材2の折曲部22から取付孔27までの長さは、保持部材1の2つの保持部14,15の間隔よりも長くされている。
【0029】
カバー部材2を保持部材1に装着する場合には、図3(A)及び(B)に示すように、保持部14と保持部15との間で、係止片21、折曲部22及び第1の貫通部23をこの順に、貫通孔16に保持部材1の内側から外側に向けて貫通させる。このとき、チェーン3の留め輪31を長孔26内における第1の貫通部23側に位置させておき、係止片21を保持部14に略直交させる。係止片21が貫通孔16を通過した後、中間部24が操作ボタン113の前面に近づくようにカバー部材2を回転させて円弧状の折曲部22を貫通孔16に貫通させる。
【0030】
次いで、図3(C)に示すように、カバー部材2の回転を継続しつつ第1の貫通部23を保持部14の内側から外側に向けて貫通孔16に貫通させる。この後、図3(D)に示すように、保持部14と保持部15との間で、第2の貫通部25を貫通孔17に保持部材1の内側から外側に向けて保持部14,15に直交する方向に貫通させる。
【0031】
図3(D)に示す状態では、中間部24が操作ボタン113の前面を押圧する。このとき、保持部14の外側に位置する係止片21は、平面視において第1の貫通部23、中間部24及び第2の貫通部25に対して折曲部22で所定の角度で傾斜しているため、貫通孔16を保持部14の内側に向かって貫通することができない。このため、カバー部材2は、保持部15側に移動できない。この状態で、保持部15の外側に位置する取付孔27に南京錠300の腕部310を貫通させると、カバー部材2は保持部15側から保持部14側へも移動できなくなり、中間部24による操作ボタン113の押圧状態が維持される。なお、カバー部材2は、操作ボタン113の押圧操作を禁止して非押圧状態を維持するものであってもよい。
【0032】
図3(A)〜(D)に示すカバー部材2の保持部材1に対する装着方法では、取付パネル200のパネル面に沿う方向について、カバー部材2が保持部14,15のそれぞれの外側に大きく露出することがない。このため、操作スイッチ100の周囲に大きなスペースを必要とせず、図5に示すように、複数の操作スイッチ100を近接させて操作パネル200に取り付けることができる。
【0033】
なお、カバー部材2は、必ずしも平面視において第1の貫通部23、中間部24及び第2の貫通部25を直線状に形成する必要はなく、第1の貫通部23が図3(B)から図3(C)までの間のカバー部材2の移動量よりも長く、第2の貫通部25が図3(C)から図3(D)までの間のカバー部材2の移動量よりも長いことを条件に、中間部25の平面形状は任意の形状とすることができる。この場合に、保持部材1において保持部14,15のそれぞれにおける貫通孔16及び貫通孔17の取付パネル200からの距離は、必ずしも同一である必要はない。また、この場合には、カバー部材2におけるチェーン3の係止孔は、第1の貫通部23又は中間部24のみに形成すればよい。中間部24にチェーン3の係止孔を形成することで、図3(A)〜(D)の操作を円滑に行うことができる。
【0034】
但し、平面視において第1の貫通部23、中間部24及び第2の貫通部25を直線状に形成し、カバー部材2におけるチェーン3の係止孔を係止片21から折曲部22を経由して第1の貫通部23に至る長孔26とすると、保持部材1にカバー部材2を別の方法で装着できる。つまり、保持部14の外側に十分なスペースがある場合には、図4(A)に示すように、第2の貫通部25、中間部24、第1の貫通部23をこの順に貫通孔16に保持部14の外側から保持部15に向けて貫通させる。このときチェーン3の留め輪31を長孔26内の係止片21側に位置させておく。この後、図4(B)に示すように、操作ボタン113を押し込んだ状態で、第2の貫通部25を操作ボタン113の前面を経由して貫通孔17に貫通させる。保持部14の外側に十分なスペースがあるか否かに応じて、カバー部材2を2種類の装着方法の何れかで選択的に保持部材1に装着することができる。
【0035】
図6(A)及び(B)に示すように、保持部14,15のそれぞれに、貫通孔16A,16B及び貫通孔17A,17Bを取付パネル200の法線方向に沿ってそれぞれ複数ずつ(図6に示す例では2つずつ)形成することができる。これによって、同一のロックカバー10を種々の操作スイッチに使用することができ、操作スイッチ100が操作ボタン113の形状が異なる操作スイッチに交換された後にも、同一のロックカバー10を使用することができる。
【0036】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
例えば、上記の実施形態では、カバー部材2を平板状の金属材料を素材として形成したが、柱状の金属材料を用いることもできる。また、この発明の連結部材は、チェーン3に限るものではない。
【符号の説明】
【0038】
1−保持部材
2−カバー部材
3−チェーン(連結部材)
10−ロックカバー
14,15−保持部
16,17−貫通孔
21−係止片
22−折曲部
23−第1の貫通部
24−中間部
25−第2の貫通部
26−長孔
27−取付孔
100−操作スイッチ
113−操作ボタン(操作部)
200−取付パネル
300−南京錠(施錠部材)
310−腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作スイッチの操作体の両側面に前記操作体の操作方向に沿って立設される2つの保持部であって第1の貫通孔が形成された第1の保持部と第2の貫通孔が形成された第2の保持部とを有する保持部材と、
前記2つの保持部の配置方向に沿って第1の貫通部、中間部及び第2の貫通部をこの順に有するカバー部材と、を備え、
前記第1の貫通部には折曲部を介して係止片が連続し、
前記第2の貫通部は施錠部材が貫通する取付孔を有し、
前記2つの保持部の配置方向における前記折曲部と前記取付孔との間の長さは、前記2つの保持部の間隔よりも長くされており、
前記係止片、前記折曲部及び前記第1の貫通部は、前記操作体の前面側における前記第1の保持部と前記第2の保持部との間から前記第1の貫通孔をこの順に貫通し、
前記第2の貫通部は、前記操作体の前面側における前記第1の保持部と前記第2の保持部との間から前記第2の貫通孔を貫通し、
前記中間部は、前記第1の貫通部及び前記第2の貫通部がそれぞれ前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を貫通している状態で、前記操作体の前面側に位置する、ロックカバー。
【請求項2】
前記保持部材と前記カバー部材とを連結する連結部材を備える請求項1に記載のロックカバー。
【請求項3】
前記カバー部材の前記中間部、前記第1の貫通部及び前記第2の貫通部の断面形状は、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を通過する形状である請求項1に記載のロックカバー。
【請求項4】
前記カバー部材の第1の貫通部から前記折曲部を経由して前記係止片に至る間に長孔を形成し、一端が前記長孔内に摺動自在に係合し他端が前記保持部材に取り付けられた連結部材を備える請求項3に記載のロックカバー。
【請求項5】
前記第1の保持部及び前記第2の保持部は、それぞれ前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を前記取付パネルの法線方向に沿って複数ずつ有する請求項1乃至4の何れかに記載のロックカバー。
【請求項6】
前記カバー部材が板状体であり、前記取付孔を前記第2の保持部に沿う長孔状に形成した請求項1乃至5の何れかに記載のロックカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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