説明

ロボットハンド

【課題】チャックの把持制御に用いる電磁弁の有効利用が図れてコストダウンに寄与できるロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットハンド3は、産業用ロボットのアームに装着されるハンド本体部31と、ハンド本体部31に着脱自在で、エアーEfを用いたシリンダCLの駆動によってワークを把持するチャック4の取付けが可能なハンド先端部32とで構成されている。そして、ハンド本体部32は、外面に設けられたエアー入口開口350を始端とする1本の流路35pからエアーEfが供給される流路5pの終端に接続する入力ポートと、ハンド本体部31の内部に形成された流路5q、37pを介してハンド先端部32にエアーEfを供給する出力ポートとを備えた電磁弁50を有している。これにより、別個のハンド先端部32間でハンド本体部31の電磁弁50の共有化が促進されるため、電磁弁50の有効利用が図れてコストダウンに寄与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのアームに装着可能なロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気(エアー)を用いた駆動力によって部品等を把持するチャックが取付けられたロボットハンド(ロボットツール)を産業用ロボットのアームに装着し、多点数の部品から構成される組立体を自動的に組み立てる自動組立システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなロボットハンドにおいては、例えばロボット本体などロボットハンドの外部に設置された電磁弁を用いてエアー供給のオン・オフを切換えることにより、電磁弁から伸びるエアー配管を介してチャックの把持制御を行えるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−354919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のロボットハンドでは、上記のエアー配管に関する省配管等を実現するため、例えばロボットハンドの外部に設けられていた電磁弁をロボットハンドに移設することが考えられるが、その配置等を考慮せず単に電磁弁を移設しただけでは、設置されるチャック毎に電磁弁が必要となるので、チャック(の種類)が増加すれば電磁弁の数も増えることとなり、コストアップの要因となる。
【0006】
ここで、異なるチャック間において電磁弁の共有化を促進できれば、電磁弁の有効利用が図れてコストダウンに寄与できることとなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、チャックの把持制御に用いる電磁弁の有効利用が図れてコストダウンに寄与できるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、産業用ロボットのアームに装着可能なロボットハンドであって、(a)前記アームに装着されるハンド本体部と、(b)前記ハンド本体部に着脱自在で、エアーを用いた駆動機構の駆動によって被把持物を把持するチャックの取付けが可能なハンド先端部とを備え、前記ハンド本体部は、(a-1)前記ハンド本体部の外面に設けられた1の流入口を始端とする1本の第1流路から第2流路に前記エアーを供給するエアー供給経路が内部に形成された内部流路部と、(a-2)前記第2流路の終端に接続する入力ポートと、前記ハンド本体部の内部に形成された第3流路を介して前記ハンド先端部に前記エアーを供給する出力ポートとを備えた電磁弁からなる電磁弁部と、(a-3)前記電磁弁を駆動するための駆動信号を流す配線が形成されたプリント基板とを有する。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係るロボットハンドにおいて、前記エアー供給経路は、前記1本の第1流路を複数本の第2流路に分岐させる流路分岐により、当該複数本の第2流路に前記エアーを供給する経路として構成されており、前記電磁弁部は、前記複数本の第2流路に対応した複数の電磁弁からなっている。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係るロボットハンドにおいて、前記プリント基板には、前記ハンド本体部の外部から送出された制御信号に基づき前記複数の電磁弁を駆動するための各駆動信号を生成するコントローラが搭載される。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係るロボットハンドにおいて、前記ハンド本体部の外形は、所定の主軸に対して略対称性を有しており、前記流路分岐では、前記複数本の第2流路が前記所定の主軸を中心として略放射状に形成されており、当該放射状の流路の終端に前記電磁弁が配置されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項4の発明によれば、エアーを用いた駆動機構の駆動によって被把持物を把持するチャックの取付けが可能なハンド先端部の着脱が自在なハンド本体部は、ハンド本体部の外面に設けられた1の流入口を始端とする1本の第1流路からエアーが供給される第2流路の終端に接続する入力ポートと、ハンド本体部の内部に形成された第3流路を介してハンド先端部にエアーを供給する出力ポートとを備えた電磁弁と、電磁弁を駆動するための駆動信号を流す配線が形成されたプリント基板とを有している。その結果、チャックが取付けられた別個のハンド先端部の間でハンド本体部に設けられた電磁弁の共有化が促進できるため、電磁弁の有効利用が図れてコストダウンに寄与できる。
【0013】
特に、請求項2の発明においては、エアー供給経路が、1本の第1流路を複数本の第2流路に分岐させる流路分岐により当該複数本の第2流路にエアーを供給する経路として構成されており、電磁弁部は、複数本の第2流路に対応した複数の電磁弁からなっているため、外部配管によらず複数の電磁弁に対してのエアー供給を簡易に行える。
【0014】
また、請求項3の発明においては、プリント基板に、ハンド本体部の外部から送出された制御信号に基づき複数の電磁弁を駆動するための各駆動信号を生成するコントローラが搭載されるため、例えばロボットハンドに接続する1本のケーブルを介して外部から複数の電磁弁を制御することが可能となる。
【0015】
また、請求項4の発明においては、ハンド本体部の外形は、所定の主軸に対して略対称性を有しており、流路分岐では、複数本の第2流路が所定の主軸を中心として略放射状に形成されており、当該放射状の流路の終端に電磁弁が配置されているため、複数の電磁弁および複数本の第2流路の配置を適正化でき、ロボットハンドのコンパクト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<ロボットハンドの要部構成>
図1は、本発明の実施形態に係るロボットハンド3を備えたロボット1の要部構成を示す外観図である。
【0017】
産業用ロボットであるロボット1は、鉛直軸まわりの3つの旋回自由度の間に、水平軸まわりの3つの回動自由度をアーム結合した6自由度の垂直多関節ロボットとして構成されている。このロボット1では、部品などのワーク(被把持物)9をチャック4で把持して水平方向にワーク9を組み付ける作業や上下方向にワーク9を組み付ける作業が可能である。
【0018】
ロボット1のアーム(腕)2は、その先端にロボットハンド3を装着可能な構成となっている。
【0019】
ロボットハンド3は、アーム2に装着されるハンド本体部31と、ハンド本体部31に着脱可能なハンド先端部32とを備えている。このハンド先端部32では、ワーク9を把持するチャック4の取付けが可能であり、ハンド本体部31の上部に接続された1本のエアー配管81から、チャック駆動用の圧縮空気であるエアー(駆動エアー)をチャック4に供給できるようになっている。
【0020】
以下では、ロボットハンド3の要部構成を詳しく説明する。
【0021】
図2は、ロボットハンド3の要部構成を示す外観図である。この図2では、チャック4(図1)が取り外された状態のロボットハンド3を示している。
【0022】
ロボットハンド3は、上述のようにハンド本体部31と、ハンド本体部31に着脱自在なハンド先端部32とを備えている。このハンド本体部31とハンド先端部32との着脱動作については、後で詳述する。
【0023】
ハンド本体部31は、直方体状の外形を有した8つの電磁弁50が配設されるエアー制御部5と、電磁弁50の上方に配置され各電磁弁50の制御やメインケーブル82を介した外部機器との通信を行う通信制御部6とを備えている。また、ハンド本体部31は、アーム2に連結されるアタッチメント35と、アタッチメント35と通信制御部6との間に介挿されるジョイント36と、電磁弁50とハンド先端部32との間に配置されるアダプタ37とを有している。
【0024】
エアー制御部5は、切換弁(方向制御弁)として働く電磁弁50の群からなっている電磁弁部500を有しており、エアー配管81を介してハンド本体部31に供給されるエアーを各電磁弁50のオン・オフ動作により選択的にハンド先端部32に送ることでハンド先端部32に取付けられた各チャック4の開閉動作を制御する。なお、電磁弁50は、例えば3ポートのシングルソレノイドバルブとして構成され、上下方向(Z軸方向)に隣接する一対の電磁弁50(上段の電磁弁50aおよび下段の電磁弁50b)によって1つのチャック4の開動作および閉動作が行われる。
【0025】
通信制御部6は、円筒状の外観を有するケーシング(筐体)60内に、図1に示すメインケーブル82と電気的に接続するプリント基板61(図5参照)が配置されている。なお、メインケーブル82は、例えばプリント基板61に電力を供給するため2本のワイヤと、チャック4の駆動制御に必要な信号を通信するための2本のワイヤとからなる4芯のケーブルとして構成されている。
【0026】
アタッチメント35には、図1に示すエアー配管81が接続されるエアー入口開口350が形成されている。
【0027】
ハンド先端部32は、略円柱状の側面を有しており、その下部にチャック4(図1)の取付けが可能な8つのチャック取付け面320が形成されている。なお、チャック取付け面320にチャック4(図1)を取付ける際には、チャック4とチャック取付け面320との間に、チャック4にエアーを供給するための2つのエアー出口開口40g、40hが設けられたアダプタ40が介挿される。
【0028】
<ハンド本体部31とハンド先端部32との着脱動作>
図3は、ハンド本体部31からハンド先端部32が分離された状態を示す外観図である。
【0029】
ロボットハンド3のハンド本体部31には、エアー駆動によりハンド本体部31に対するハンド先端部32の着脱を行うオートツールチェンジャとして構成され、アダプタ37の底部から突出する短尺の円筒形状の着脱部38が設けられている。
【0030】
このような着脱部38を備えたハンド本体部31と、ハンド本体部31に連結するための特定の構造を有するハンド先端部32との着脱動作について、図4を参照して説明する。ここで、図4(a)は、ハンド本体部31にハンド先端部32が結合されていない状態を示し、図4(b)は、結合されている状態を示している。
【0031】
着脱部38においては、その側面の複数箇所に形成された円形孔のそれぞれの内部に、この円形孔よりも若干大きな径を持つ可動球38sが収容されている。着脱部38の内部には後述のエアー溜め5e(図6参照)からエアーが供給されるようになっており、そのエアー供給のON/OFFによって後述のピストン381(図6参照)を駆動し、可動球38sが着脱部38の側面から出没できるようになっている。
【0032】
一方、ハンド先端部32の中央上部に設けられた着脱孔32vは、その出口付近が狭まるような逆テーパの傾斜面32aを有する構造となっており、その開口径が、ハンド本体部31側の着脱部38の外径と適合している。
【0033】
そして、図4(a)に示す非結合状態では、可動球38sは突出部38の内部に収容されている。ところが、図4(b)に示す結合状態では、エアーの供給によって可動球38sを移動させて可動球38sの一部を突起部38の外部に突出させることにより、着脱孔32vの傾斜面32aに可動球38sが係合する。これによって、ハンド本体部31とハンド先端部32とが連結されることとなる。一方、エアーの供給を停止するとピストン381(図6参照)による可動球38sへの付勢力は消失し、ハンド本体部31を引き抜くことによってハンド先端部32をその自重で取り外すことができる。
【0034】
以上のような着脱部38を備えたロボットハンド3では、例えば異なった種類のチャック4が取付けられたハンド先端部32の自動交換が可能であり、様々なワーク9への対応性が向上することとなる。
【0035】
<ロボットハンド3の機能構成>
図5は、ロボットハンド3の機能構成を説明するための概念図である。なお、図5では、ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを網掛けで図示するとともに、電気配線を太線で図示している。
【0036】
まず、ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明する。
【0037】
アタッチメント35のエアー入口開口350から供給されたエアーEfは、アタッチメント35の内部に形成された流路(第1流路)35pを通って、エアー制御部5内に設けられたエアー溜め(空気溜め)5eに導かれる。
【0038】
エアー溜め5eに溜められたエアーEfは、エアー制御部5内に形成された各流路(第2流路)5pを通って、上段の電磁弁50aおよび下段の電磁弁50bの入力ポートまで導かれる。
【0039】
チャック4を駆動するために上段の電磁弁50aや下段の電磁弁50bの出力ポートから出力されたエアーEfは、エアー制御部5内、アダプタ37内およびハンド先端部32内に形成された各流路5q、37p、32pを通って、ハンド先端部32のチャック取付け面320(図10参照)に設けられたエアー出口開口32j(32g、32h)に導かれる。
【0040】
そして、チャック取付け面320の各エアー出口開口32jに、アダプタ40内に形成された流路40pを介して、チャック駆動用のシリンダCLの各シリンダ室に連通した2本の流路4pを接続すれば、ハンド本体部31のエアー入口開口350から供給されるエアーを用いたチャック4の駆動が可能となる。すなわち、アダプタ40およびチャック4の内部に形成された各流路40p、4pを介してハンド先端部32から供給されるエアーを用い、駆動機構として働くシリンダCLの駆動を行うことにより、ワーク9(図1)を把持するチャック4の開閉動作を行えることとなる。換言すれば、シリンダCLにエアーEfを供給する流路4pがシリンダCLからチャック取付け面320に向かって形成されたチャック4をチャック取付け面320に取付けた際には、チャック4の底面でチャック取付け面320のエアー出口開口32jに対向する流路4pのエアー入口開口4iが、アダプタ40内の流路40pを介してチャック取付け面320のエアー出口開口32jに連結されるため、ハンド先端部32からチャック4まで外部配管を付設せずにエアーの流通を行える。
【0041】
また、エアー溜め5eに溜められたエアーEfは、エアー溜め5eの下部に連通し、先端がテーパ状のピストン381を備えたシリンダ380に駆動力を与える。すなわち、エアー溜め5e内のエアーEfにより、先端が可動球38sに当接するピストン381を下向きに駆動させることで、着脱部38内の可動球38sを外側に突出させてハンド本体部31とハンド先端部32とを結合させることが可能となる。なお、エアー配管81からエアー溜め5eに供給されるエアーEfの圧を抜く動作を行うことで、ハンド本体部31に結合されたハンド先端部32の分離を行える。
【0042】
以上で説明したロボットハンド3におけるエアーEfの流れについては、後で詳述する。次に、ロボットハンド3における電気的な構成を説明する。
【0043】
コネクタ63aを介してメインケーブル82から送られるチャック4の駆動制御信号は、プリント基板61上に形成された配線61a(破線で図示)を通ってコントローラ62に入力される。
【0044】
コントローラ62は、例えばCPUおよびメモリを備えて通信制御を行う部位として構成されており、メインケーブル82を介して例えばホストコンピュータなどのロボットハンド3外部の制御装置(以下では「外部制御装置」ともいう)から送出された電気信号(制御信号)を受信し、この制御信号に基づき各電磁弁50を駆動するための各駆動信号を生成する。そして、プリント基板61上にはコントローラ62で生成された駆動信号を流す配線61b(破線で図示)が形成されており、この配線61b、コネクタ63bおよびケーブル83を介してコントローラ62から駆動信号が電磁弁50に送られることとなる。
【0045】
一方、チャック4の開閉動作を検知するために例えばシリンダCLに設置されたセンサSNで検出される信号(以下では「チャック開閉検知信号」ともいう)は、ケーブル84およびコネクタ63eを介してハンド先端部32の上部に配設されたプリント基板64に送られる。
【0046】
プリント基板64は、プリント基板61にチャック開閉検知信号を送るための中継基板として機能する。具体的には、プリント基板64で受け取ったチャック開閉検知信号は、プリント基板64上に形成された配線64a(破線で図示)を通りコネクタ63dおよびケーブル85を介してプリント基板61に送られる。
【0047】
プリント基板61では、コネクタ63cを介して受け取ったチャック開閉検知信号が配線61c(破線で図示)を通ってコントローラ62に入力される。これにより、メインケーブル82を介してコントローラ62から外部制御装置にチャック開閉検知信号を送信できることとなり、外部制御装置におけるチャック4の開閉制御に活用できる。
【0048】
<ロボットハンド3におけるエアーEfの流れ>
図6〜図10は、ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。ここで、図6〜図8は、図2のVI−VI位置、VII−VII位置およびVIII−VIII位置から見たロボットハンド3の縦断面図であり、図9は、図2のIX−IX位置から見たロボットハンド3の横断面図である。なお、図6〜図9では、エアーEfの流れを理解容易にするため、説明上注目すべきエアーEfの箇所を網掛けで図示している。また、図10は、図2においてアダプタ40が取り外されたロボットハンド3を下方から見た外観図となっている。
【0049】
まず、エアー配管81(図1)から流れF1を形成しロボットハンド3のエアー入口開口350に入力されたエアーEfは、図6に示すようにアタッチメント35内に形成されたL字状の流路35pに沿った流れF2によりエアー溜め5eに導かれる。このエアー溜め5eについては、中心軸としての主軸Axに対して略対称性を有する外形を備えたハンド本体部31において、その主軸Axに沿って形成された比較的大きな円柱状の内部空間(図6、図9参照)として構成されている。なお、エアー溜め5eは、ロボットハンド3の主軸Axに沿って基体51(後述)に設けられた縦孔の上端部にアタッチメント35の下端部が嵌合されることで形成されている。
【0050】
次に、エアー溜め5eに溜められたエアーEfは、図9に示すように8個の電磁弁50が表面に取付けられているエアー制御部5の基体51において主軸Axを中心として放射状に形成された複数本の流路5pに、図6に示すような流れF3を形成して分配される。換言すれば、ロボットハンド3の主軸Axを中心として略放射状に形成された8本の流路5pに、1本の流路35pを分岐させる流路分岐がロボットハンド3内に設けられており、この放射状の流路5pの終端の基体51表面に各電磁弁50が配置されている。これにより、8個の電磁弁50と8本の流路5pとの配置を最適化でき、ハンド本体部31のコンパクト化が図れることとなる。
【0051】
具体的には、上段に配置される4個の電磁弁50aの入力ポート50iにエアー溜め5eからのエアーEfを導くための4本の流路5pが、基体51の内部で主軸Axを中心として十字状に形成される。同様に、下段に配置される4個の電磁弁50bの入力ポート50iにエアー溜め5eからのエアーEfを導くための4本の流路5pも、基体51の内部で十字状に形成されている。ここで、基体51は、8角柱状の外形を有しており、8側面のうち隣り合わない4側面それぞれの上段および下段に、各流路5pの終端に接続する入力ポート50iを備えた電磁弁50が取付けられる。
【0052】
以上のようにハンド本体部31の外面に設けられた1つのエアー入口開口(流入口)350を始端とする1本の流路35pから、8個の電磁弁50に対応した8本の流路5pにエアーを供給するエアー供給経路(エアーEfの流れF2、F3に沿った経路)がハンド本体部31の内部に形成されることにより、エアー入口開口350から電磁弁50の入力ポート50iまで外部配管を除去することが可能となる。
【0053】
電磁弁50の出力ポート50jから出力されたエアーEfは、図7に示すように基体51の内部に設けられた流路5qに沿った流れF5によりアダプタ37に送られる。この流路5qは、上下方向(Z軸方向)に沿ってエアー溜め5eの周りに円柱状の内部空間として形成された8本の流路5qa(図9)と、各流路5qaから最も近い電磁弁50の出力ポート50jまで伸びる8本の流路5qbとで構成されている。ここで、例えば上段の電磁弁50a全てが励磁されてオンにされると、例えば図9のような流路50pが電磁弁50a内に形成されてエアーEfの流れF4が生じ、電磁弁50aから出力されたエアーEfが流路5qに沿った流れF5を形成してアダプタ37に到達することとなる。
【0054】
アダプタ37に送られたエアーEfは、図8に示すようにアダプタ37の内部に形成された流路37pおよび、流路37pの終端に接続するエアー入口開口32iとチャック取付け面320に設けられたエアー出口開口32jとを有するハンド先端部32内の流路32p(図8に仮想線として図示)に沿った流れF6を形成してアダプタ40まで送られる。これにより、チャック取付け面320に形成されたエアー出口開口32jからチャック4にエアーEfを供給することが可能になる。
【0055】
以上のようにハンド本体部31の内部に形成された流路(第3流路)5q、37pと、ハンド先端部32の内部に形成された流路32pとを介して、エアーEfを電磁弁50の出力ポート50jからハンド先端部32のエアー出口開口32jに供給できるため、電磁弁50の出力ポート50jからチャック取付け面320まで外部配管を除去することが可能になる。
【0056】
図10に示すようにハンド先端部32の底面には8つのチャック取付け面320(321、322)が形成されており、一対のエアー出口開口32g、32hが設けられた4つの第1チャック取付け面321と、エアー出口開口32g、32hが設けられていない4つの第2チャック取付け面322とが交互に配置されている。なお、ハンド先端部32には8つのチャック取付け面320が設けられているが、8個の電磁弁50によって駆動可能なチャック4の数は最大4個であるため、実際には4つ以下のチャック4がハンド先端部32に取付けられることとなる。
【0057】
第1チャック取付け面321には、そのエアー出口開口32g、32hまでシリンダCLから伸びるチャック4の流路4pおよびアダプタ40の流路40pが内部配管として形成されたチャック(以下では「内部配管型チャック」ともいう)4(図5)が取付けられる。これにより、内部配管型チャック4では、1本のエアー配管81をロボットハンド3の上部に接続すればチャック4まで内部配管を用いたエアー供給が可能となり、ロボットハンド3の周りに配置されるエアー供給用の外部配管を除去できる。
【0058】
一方、第2チャック取付け面322には、図11に示すようにチャック4内のシリンダCLにエアーを供給するため外部配管が接続されるエアー入口開口4s、4tが、例えば側面など底面以外の外面に形成されたチャック(以下では「外部配管型チャック」ともいう)4rが取付けられる。この場合には、例えば内部配管型チャック4が装着されていない隣りのチャック取付け面321に設けられたエアー出口開口32g、32hと、外部配管型チャック4rの側面に設けられたエアー入口開口4s、4tとを繋いで接続する配管(外部配管)86を設けるようにする。すなわち、外部配管型チャック4rがチャック取付け面322に取付けられた際には、エアー供給用の流路が形成された配管86により、複数のチャック取付け面320のうちチャックの装着がないチャック取付け面321に設けられたエアー出口開口32g、32hと外部配管型チャック4rのエアー入口開口4s、4tとを配管86内の流路を介して接続することで、エアー配管81からハンド本体部31に供給されるエアーを外部配管型チャック4rに導くことが可能となる。
【0059】
以上で説明したように、アタッチメント35内の流路35pとエアー制御部5の基体51内の各流路5p、5qとアダプタ37内の流路37pとハンド先端部32内の流路32pとからなる内部配管がロボットハンド3に設けられるため、1本のエアー配管81をロボットハンド3の上部に接続すればハンド先端部32のチャック取付け面320まで内部配管によるエアー供給が可能となる。その結果、ロボットハンドの周りに配置されるチャック4(4r)へのエアー供給用の外部配管を削減でき、部品点数の低減にも寄与できる。
【0060】
また、エアー溜め5eに溜められたエアーEfは、上述のように流路5pを介して電磁弁50の入力ポート50iに供給されるだけでなく、着脱部38のシリンダ380にも供給される。すなわち、ハンド本体部31には、ハンド本体部31の外面に設けられたエアー入口開口(流入口)350から供給されるエアーEfをエアー溜め5eに蓄えるアキュムレータ部ACが形成されており、このエアー溜め5e内のエアーEfが、チャック4内のシリンダ(駆動機構)CLおよび着脱部38のシリンダ380に供給される。
【0061】
ここで、図6に示すようにシリンダ380の内壁は、エアー溜め5eを構成する内部空間の内壁と面一に連結しているため、エアー溜め5e内のエアーEfを着脱部38に供給するための流路を省略でき、ハンド本体部31のコンパクト化に寄与できる。また、シリンダ380の内壁とエアー溜め5eの内壁とを共有化させることにより、エアー溜め5e内のエアーEfに対するピストン381上面の受圧面積を比較的大きくしてシリンダ380の駆動力を高めることができる。その結果、ハンド本体部31とハンド先端部32との間で十分な結合力を確保することが可能となる。なお、エアー溜め5eは、ハンド本体部31の中央付近で比較的大きな容量を有しているので、把持動作のためエアー溜め5e内のエアーEfがチャック4(4r)のシリンダ室に注入される際もエアー溜め5e内の圧力低下が抑えられハンド本体部31とハンド先端部32との結合力を維持できることとなる。
【0062】
以上のようにロボットハンド3では、ハンド本体部31の上部に設けられたエアー入口開口350に接続する1本のエアー配管81から供給されるエアーをハンド本体部31内のエアー溜め5eに溜め、このエアー溜め5e内のエアーがチャック4(4r)および着脱部38に供給されるため、エアー入口開口350からエアー溜め5eまでのエアー供給経路を共用化でき、従来のように着脱部38およびチャック4(4r)それぞれにエアー供給を行う別個の外部配管をロボットハンド3の周りに配置する必要がなくなる。その結果、ロボットハンド3の周りに配置される着脱部38およびチャック4(4r)へのエアー供給用の外部配管構成を簡素化することが可能となる。さらに、ロボットハンド3では、その内部に、エアー溜め5e内のエアーをチャック4(4r)内のシリンダCLに供給するための流路5p、5q、37p、32pが、形成されているため、エアー溜め5eからチャック4(4r)にエアー供給する外部配管を削減でき、ロボットハンド3の周りに配置される外部配管構成を一層簡素化できる。
【0063】
また、ロボットハンド3においては、ハンド先端部32の着脱が自在なハンド本体部31に、チャック4(4r)の把持制御に用いる8個の電磁弁50と各電磁弁50の駆動信号を流す配線61bが形成されたプリント基板61とが設けられているため、内部配管型チャック4や外部配管型チャック4rが取付けられた別個のハンド先端部32間でハンド本体部31に設けられた電磁弁50の共有化が促進できる。その結果、電磁弁50の有効利用が図れてコストダウンに寄与できることとなる。
【0064】
換言すれば、ロボットハンド3では、ハンド先端部32に取付けられたチャック4(4r)の駆動に必要な構成要素(電磁弁50や、電磁弁50の入力ポート50iにエアー入口開口350からエアーを供給するための流路35p、5p、電磁弁50の出力ポート50jからハンド先端部32にエアーを供給するための流路5q、37p、電磁弁50の駆動信号を流す配線61bが形成されたプリント基板61)が、ハンド先端部32の着脱容易なハンド本体部31に設けられ、その標準化が図られている。これにより、多様なチャックが取付けられた様々なハンド先端部32に対するハンド本体部31の対応性を向上でき、チャック4(4r)の駆動に必要な構成要素の共有化が図れる。
【0065】
すなわち、ハンド本体部31を標準化し、ハンド先端部32は客先対応でカスタマイズできるハイブリッド構造にすることにより、多くの客先ニーズに的確に対応することが可能になる。
【0066】
<変形例>
上記の実施形態におけるロボットハンドについては、シングルソレノイド型の8個の電磁弁50で4つのチャック4の駆動制御を行うのは必須でなく、ダブルソレノイド型の4個の電磁弁で4つのチャックの駆動制御を行うようにしても良い。
【0067】
また、ハンド先端部32にチャック取付け面320を1つだけ設けるようにしても良い。この場合には、例えばエアー入口開口350を始端とする1本の流路35pから1本の流路5pにエアーを供給するエアー供給経路がハンド本体部31内に形成され、1個の電磁弁による1つのチャックの駆動制御が行われる。
【0068】
また、上記実施形態では、プリント基板61にコントローラ62を設けたが、このコントローラ62をロボットハンドの外部に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットハンド3を備えたロボット1の要部構成を示す外観図である。
【図2】ロボットハンド3の要部構成を示す外観図である。
【図3】ハンド本体部31からハンド先端部32が分離された状態を示す外観図である。
【図4】ハンド本体部31とハンド先端部32との着脱動作を説明するための図である。
【図5】ロボットハンド3の機能構成を説明するための概念図である。
【図6】ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。
【図7】ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。
【図8】ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。
【図9】ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。
【図10】ロボットハンド3におけるエアーEfの流れを説明するための図である。
【図11】外部配管型チャック4rの取付けを説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ロボット
2 アーム
3 ロボットハンド
4、4r チャック
4s、4t エアー入口開口
4p、5p、5q、32p、35p、37p、40p 流路(内部配管)
5 エアー制御部
5e エアー溜め
6 通信制御部
31 ハンド本体部
32 ハンド先端部
32j、32g、32h エアー出口開口
35 アタッチメント
37、40 アダプタ
38 着脱部
40g、40h エアー出口開口
50、50a、50b 電磁弁
51 基体
61、64 プリント基板
62 コントローラ
63a〜63e コネクタ
81 エアー配管
82 メインケーブル
83〜85 ケーブル
86 配管(外部配管)
320、321、322 チャック取付け面
350 エアー入口開口
380 シリンダ
381 ピストン
Ax 主軸
CL シリンダ
Ef エアー(駆動エアー)
F1〜F6 エアーの流れ
SN センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットのアームに装着可能なロボットハンドであって、
(a)前記アームに装着されるハンド本体部と、
(b)前記ハンド本体部に着脱自在で、エアーを用いた駆動機構の駆動によって被把持物を把持するチャックの取付けが可能なハンド先端部と、
を備え、
前記ハンド本体部は、
(a-1)前記ハンド本体部の外面に設けられた1の流入口を始端とする1本の第1流路から第2流路に前記エアーを供給するエアー供給経路が内部に形成された内部流路部と、
(a-2)前記第2流路の終端に接続する入力ポートと、前記ハンド本体部の内部に形成された第3流路を介して前記ハンド先端部に前記エアーを供給する出力ポートとを備えた電磁弁からなる電磁弁部と、
(a-3)前記電磁弁を駆動するための駆動信号を流す配線が形成されたプリント基板と、
を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、
前記エアー供給経路は、前記1本の第1流路を複数本の第2流路に分岐させる流路分岐により、当該複数本の第2流路に前記エアーを供給する経路として構成されており、
前記電磁弁部は、前記複数本の第2流路に対応した複数の電磁弁からなっていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項3】
請求項2に記載のロボットハンドにおいて、
前記プリント基板には、前記ハンド本体部の外部から送出された制御信号に基づき前記複数の電磁弁を駆動するための各駆動信号を生成するコントローラが搭載されることを特徴とするロボットハンド。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のロボットハンドにおいて、
前記ハンド本体部の外形は、所定の主軸に対して略対称性を有しており、
前記流路分岐では、前記複数本の第2流路が前記所定の主軸を中心として略放射状に形成されており、当該放射状の流路の終端に前記電磁弁が配置されていることを特徴とするロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−149224(P2010−149224A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329779(P2008−329779)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト・作業知能(生産分野)の開発・世界標準を目指したロボットセル生産用知能ハンドモジュール群とマニュアル作業激減知能モジュール群の開発と検証」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】