説明

ローラカッタ及びシールド型地山掘削機

【課題】ローラカッタの刃先から被切断物が逃げ難いようにすることにより、ローラカッタによる被切断物の切断を効果的に行う。
【解決手段】回転するホイール部32の外周部に周方向に繰返す凹凸を有してなるローラカッタ10であって、ホイール部32の外周部に設けられたビット34が、根元側から先端側へかけて周方向の長さが長くなるように形成されていることを特徴とする。ビット34は、ホイール部32に接合されることにより、ホイール部32と一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド型地山掘削機用のローラカッタ及びシールド型地山掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機用のローラカッタとして、シールド機の進路に存する鉄筋や杭や矢板等の障害物を切断除去することを可能にするべく、外周形状を歯車形状にしたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−88974号公報
【特許文献2】特開平10−37676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のローラカッタでは、刃先が根元側から先端側へかけて幅が狭まる三角形状となっており、これに対応して、刃間の溝形状は、逆に根元側から先端側へかけて幅が広くなるV字形状となっている。このため、被切断物が刃先から逃げ易くなることから、被切断物の切断を効果的に行うことができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ローラカッタの刃先から被切断物が逃げ難いようにすることにより、ローラカッタによる被切断物の切断を効果的に行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るローラカッタは、回転する本体の外周部に周方向に繰返す凹凸が設けられてなるローラカッタであって、前記外周部に設けられた凸部が、根元側から先端側へかけて周方向の長さが長くなるように形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記ローラカッタにおいて、前記凸部は、前記本体に接合されることにより、前記本体と一体化されていてもよい。
【0008】
前記ローラカッタにおいて、前記凸部の前記本体との接合部には、外周形状が多角形状の嵌合部が形成され、前記本体の前記凸部との接合部には、前記嵌合部が嵌合する被嵌合部が形成されていてもよい。
【0009】
前記ローラカッタにおいて、前記凸部の先端は、前記周方向の中央が膨出するように湾曲していてもよい。
【0010】
また、本発明に係るシールド型地山掘削機は、上記ローラカッタを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ローラカッタの刃先から被切断物が逃げ難いようにすることができ、以って、ローラカッタによる被切断物の切断を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係るローラカッタを備えるシールド掘削機を示す側断面図である。
【図2】シールド掘削機の前面を示す正面図である。
【図3】ローラカッタを拡大して示す立面図である。
【図4】図3の4−4断面図である。
【図5】ビットとホイール部とを示す分解斜視図である。
【図6】比較例に係るローラカッタの作用を示す図である。
【図7】本実施形態に係るローラカッタの作用を示す図である。
【図8】他の実施形態に係るローラカッタを示す立面図である。
【図9】図8の9−9断面図である。
【図10】ビットとホイール部とを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るローラカッタ10を備えるシールド掘削機100を示す側断面図である。この図に示すように、シールド掘削機100は、シールドトンネルの施工に用いられる泥土圧式のシールド掘削機である。このシールド掘削機100は、カッタヘッド110を掘進方向の先頭部に備える円筒状の前胴部120と、中折れジャッキ132を介して前胴部120の後部に連結された円筒状の後胴部130とを備えている。中折れジャッキ132は、伸縮することにより、前胴部120を後胴部130に対して屈曲させる。
【0014】
後胴部130には、エレクタ134とシールドジャッキ136とが設けられている。エレクタ134は、セグメント1をシールドジャッキ136の後方に設置する。また、シールドジャッキ136は、主推進ジャッキであり、設置済みのセグメント1に反力をとってシールド掘削機100に推力を与える。
【0015】
前胴部120には、カッタヘッド110が設けられたチャンバ122とシールド機内とを仕切る隔壁124が設けられている。この隔壁124には、注入口125が形成されており、この注入口125からチャンバ122に加泥材が注入される。
【0016】
図2は、シールド掘削機100の前面を示す正面図である。この図に示すように、カッタヘッド110は、120度間隔で配された3本のカッタスポーク112と、カッタスポーク112等に配された複数のカッタビット114と、カッタスポーク112間に夫々複数配されたローラカッタ10及びディスクカッタ111とを備えている。
【0017】
各カッタスポーク112には、その長手方向に沿って複数のカッタビット114が配されている。カッタスポーク112間には、扇形状の面板部116A、116B、116Cが設けられており、この面板部116A〜Cの周縁部に複数のカッタビット114が配されている。また、面板部116Aには、夫々1個のローラカッタ10及びディスクカッタ111が配され、面板部116Bには、1個のローラカッタ10が配され、面板部116Cには、1個のディスクカッタ111が配されている。
【0018】
ローラカッタ10は、カッタヘッド110の径方向に対して平行な回転軸の周りに回転可能に、周方向の一部が面板部116A、116Bから掘進方向に突出するように配されている。また、ディスクカッタ111は、カッタヘッド110の径方向に対して掘進方向に傾斜した回転軸の周りに回転可能に、周方向の一部が面板部116A、116Cから掘進方向に突出するように配されている。
【0019】
即ち、複数のローラカッタ10及びディスクカッタ111は、地山に接触するように配されており、かつ、回転軸がカッタヘッド110の接線方向に対して直交している。このため、カッタヘッド110が回転すると、ローラカッタ10及びディスクカッタ111が地山から受ける偶力により回転し、地山を掘削する。また、ローラカッタ10は、鉄筋や杭や矢板等の障害物が存する場合には該障害物を切断する。
【0020】
図3は、ローラカッタ10を拡大して示す立面図であり、図4は、図3の4−4断面図である。これらの図に示すように、ローラカッタ10は、カッタヘッド110に固定される固定部20と、固定部20の周りに回転可能に配された回転部30とを備えている。固定部20は、軸部22と、この軸部22に取付けられた軸受24と、軸部22と軸受24とが固定される一対の外装部26とを備えている。
【0021】
軸受24の中心には孔25が空けられており、この孔25に軸部22が挿入されて嵌合している。また、軸受24にはフローティングシール24Aが設けられており、軸受24内への土砂や液体の浸入が防止されている。一対の外装部26は、軸部22の軸方向に離れて配されており、軸部22の軸方向端部が固定される外形が直方体状の軸固定部26Aと、軸固定部26Aから軸部22の周方向へ広がる円盤状の軸受固定部26Bとを備えている。
【0022】
回転部30は、軸受24を介して軸部22に回転可能に支持されたホイール部32と、ホイール部32の外周面に、その周方向に沿って所定間隔(例えば、図示するように30度)おきに配された複数のビット34とを備えている。ホイール部32は、その全体形状が円環状の回転体であり、軸心周りに回転する。また、ホイール部32の内周部と外装部26の軸受固定部26Bとの間には、シール部材27が設けられており、ホイール部32と外装部26との隙間から軸受24へ土砂が侵入することが防止されている。
【0023】
ホイール部32の外周面の幅方向中央部は、その両側と比して外周側へ突出しており、その位置に形成された孔32Aにビット34の軸部34Aが挿入され、軸部34Aと孔壁とがロウ付けにより接着されている。ビット34は、超硬合金や焼結タングステンカーバイド等の強靭な素材で形成されており、円柱状の軸部34Aと、軸部34Aと一体の刃部34Bとを備えている。
【0024】
図5は、ビット34とホイール部32とを示す分解斜視図である。この図に示すように、ホイール部32の外周面の幅方向中央部には、ビット34の円柱状の軸部34Aが圧入される円状の孔32Aが形成されると共に、孔32Aの頂部には、矩形状の凹部32Bが形成されている。凹部32Bは、孔32Aと同軸に配されており、孔32Aよりも断面積が大きい。
【0025】
ビット34の刃部34Bは、前記凹部32Bと嵌合する断面形状が矩形状の嵌合部34Cを備えており、凹部32Bと嵌合部34Cとが嵌合することにより、ビット34の周り止めがなされる。
【0026】
ここで、図4に示すように、刃部34Bをローラカッタ10の回転軸を通る平面で切断したときの、その先端形状は、通常と同様に二等辺三角形状である。一方で、図3に示すように、刃部34Bをローラカッタ10の正面から見た場合には、その先端形状は、先端側から基端側へかけて幅が狭まる逆台形状であるという特徴がある。このため、隣り合った刃部34Bの間には、内周側から外周側へかけて幅が狭まる台形状の空間Aが形成されている。
【0027】
図6は比較例に係るローラカッタの作用を示す図であり、図7は、本実施形態に係るローラカッタ10の作用を示す図である。図6に示すように、比較例に係るローラカッタは、回転部3の刃先の形状が歯形状である。このローラカッタでは、刃部4Bをローラカッタの回転軸の方向に見た場合には、その形状は、基端側から先端側へかけて幅が狭まる三角形状である。このため、隣り合った刃部4Bの間には、内径側から外径側へかけて幅が広がるV字状の空間Bが形成される。
【0028】
ここで、比較例に係るローラカッタでは、刃部4Bで障害物2を圧壊させると共にその先端で切断するところ、隣り合った刃部4Bの間の空間Bが内周側から外周側へかけてV字状に広がっているため、障害物2は、空間Bから逃げ易い。障害物2が空間Bから逃げてしまった場合には、ローラカッタによる障害物2の切断を効果的に行うことができない。
【0029】
これに対して、図7に示すように、本実施形態に係るローラカッタ10では、刃部34Bの形状は、先端側から基端側へかけて幅が狭まる逆台形状である。このため、隣り合った刃部34Bの間には、内径側から外径側へかけて幅が狭まる台形状の空間Aが形成される。
【0030】
即ち、本実施形態に係るローラカッタ10では、刃部34Bにおける空間Aに面する壁面34Dが、基端側から先端側へかけて空間A側に傾斜しており、隣り合った刃部34Bの間の空間Aが内径側から外径側へかけて狭まっているため、障害物2は、壁面34Dにより空間A内で拘束される。従って、ローラカッタ10による障害物2の切断を効果的に行うことができる。
【0031】
また、ビット34には、高耐磨耗性が要求されるところ、ビット34とホイール部32とを一体で形成する場合には、要求される高耐磨耗性を有する材料を削り出しすることにより、ホイール部32の外周部に、外周側から内周側へかけて幅が広がる溝や三角形状の刃先形状等の複雑な立体形状を形成することは容易な作業ではない。従って、ビット34を、所望の精度を確保して形成することは容易ではない。
【0032】
これに対して、本実施形態に係るローラカッタ10では、ビット34をホイール部32に接合することにより一体化している。これにより、ビット34とホイール部32とを一体で削り出しにより形成する場合と比して、ビット34を高精度に形成することができる。また、高耐摩耗性を要求されるビット34のみを、高耐磨耗性材料で形成し、ビット34と比して耐摩耗性の要求度が低いホイール部32については、ビット34の材料と比して安価な材料で形成することができ、以って、ローラカッタ10のコストを低減することができる。
【0033】
また、本実施形態に係るローラカッタ10では、ビット34のホイール部32との接合部に矩形状の嵌合部34Cを形成し、ホイール部32のビット34との接合部に嵌合部34Cが嵌合する矩形状の凹部32Bを形成している。これにより、ビット34が軸部34Aの周りに回転することを防止でき、ビット34をホイール部32にロウ付けや圧入のみで接合する場合と比して、ビット34とホイール部32との接合をより確実なものにすることができる。
【0034】
図8は、他の実施形態に係るローラカッタ200を示す立面図であり、図9は、図8の9−9断面図である。これらの図に示すように、ローラカッタ200は、上述の実施形態に係るローラカッタ10のビット34に替えてビット234を備えている。ビット234は、ビット34と同様に、ローラカッタ10の回転軸を通る平面で切断したときの形状は二等辺三角形状であり、また、ローラカッタ10の正面から見たときの形状は、先端側から基端側へかけて幅が狭まる逆台形状である。そのため、隣り合ったビット234の間には、内周側から外周側へかけて幅が狭まる台形状の空間Aが形成されている。
【0035】
ここで、ビット234の先端は、ローラカッタ200の周方向の中央が膨出する(凸となる)ように湾曲している。即ち、ビット234の先端刃、ローラカッタ200の周方向に沿って円弧状に湾曲している。
【0036】
図10は、ビット234とホイール部232とを示す分解斜視図である。この図に示すように、ホイール部232の外周面の幅方向中央部には、ビット234の円柱状の根元側が圧入される孔232Aが形成されている。孔232Aは、四隅が面取りされた矩形状の孔であり、底側へかけて次第に幅寸法及び長手方向の寸法が縮小する。
【0037】
ビット234の根元側は、四角が面取りされた矩形状であり、孔232Aと凸凹の関係にある形状に形成されており、孔232Aと嵌合する。これにより、ビット234の周り止めがなされる。
【0038】
ここで、ビット234の先端を上述したように湾曲させたことによって、ビット234の刃先に加わる衝撃を緩和でき、ビット234の損傷を抑制できる。また、ビット234の四角及び孔232Aの四隅を面取りしたことにより、ビット234の四隅及び孔232Aの四隅における応力集中を緩和でき、ビット234及びホイール部232の耐久性を向上できる。
【0039】
なお、ビット234の衝撃を緩和するためには、隣り合ったビット234の間隔を狭くすることが望ましく、本実施形態では、直径305mmのローラカッタ200に対して12mmというように、狭く設定している。
【0040】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、シールド型地山掘削機として、シールド掘削機を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、推進型のシールド機やシールド型のTBM(トンネルボーリングマシーン)等の他のシールド型地山掘削機にも適用できる。
【0041】
また、上述の実施形態では、カッタヘッド110に、ローラカッタ10とディスクカッタ111とを設置したが、カッタヘッド110に設置するカッタの種類は、掘削する地山に合わせて適宜選択して組み合わせればよく、例えば、全てをローラカッタ10にする等してもよい。また、ローラカッタ10には、ビット34を一列設けたが、ビット34を複数列設けてもよく、また、ローラカッタ10を複数重ねてカッタヘッド110に設置する等してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 セグメント、2 障害物、3 回転部、4B 刃部、10 ローラカッタ、20 固定部、22 軸部、24 軸受、24A フローティングシール、25 孔、26 外装部、26A 軸固定部、26B 軸受固定部、27 シール部材、30 回転部、32 ホイール部(本体)、32A 孔、32B 凹部(被嵌合部)、34 ビット(凸部)、34A 軸部、34B 刃部、34C 嵌合部、34D 壁面、100 シールド掘削機(シールド型地山掘削機)、110 カッタヘッド、111 ディスクカッタ、112 カッタスポーク、114 カッタビット、116A〜C 面板部、120 前胴部、122 チャンバ、124 隔壁、125 注入口、130 後胴部、132 中折れジャッキ、134 エレクタ、136 シールドジャッキ、200 ローラカッタ、232 ホイール部、232A 孔、234 ビット(凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する本体の外周部に周方向に繰返す凹凸が設けられてなるローラカッタであって、
前記外周部に設けられた凸部が、根元側から先端側へかけて周方向の長さが長くなるように形成されていることを特徴とするローラカッタ。
【請求項2】
前記凸部は、前記本体に接合されることにより、前記本体と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のローラカッタ。
【請求項3】
前記凸部の前記本体との接合部には、外周形状が多角形状の嵌合部が形成され、
前記本体の前記凸部との接合部には、前記嵌合部が嵌合する被嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のローラカッタ。
【請求項4】
前記凸部の先端は、前記周方向の中央が膨出するように湾曲していることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載のローラカッタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載のローラカッタを備えるシールド型地山掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47425(P2013−47425A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186444(P2011−186444)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(392030036)株式会社ハンナンテックス (4)
【Fターム(参考)】