説明

ローラチェーン

【課題】チェーン張力に応じた外リンクプレートの弾性変形を許容して連結ピンの撓みに起因する連結ピンとブシュとの偏摩耗を抑制し、外リンクプレートの引張強度を確保するとともに外リンクプレートの軽量化を達成するローラチェーンを提供すること。
【解決手段】外リンクプレート140のプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分が、外リンクプレート140のプレート長手方向の前後に設けられるとともに外リンクプレート140のピン孔141、141間に延在する一対のプレート端縁形成領域、をピッチラインPL寄りにそれぞれ切り欠いて形成されているローラチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達や物品搬送等に用いるローラチェーン、詳しくは、外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するローラチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のローラチェーン500として、図9に示すように、左右一対の内リンクプレート510、510と、この内リンクプレート510のブシュ孔511に圧入嵌合されたブシュ520と、このブシュ520に回転自在に嵌挿された連結ピン530と、この連結ピン530のピン端部を圧入嵌合するピン孔541を備えた左右一対の外リンクプレート540、540と、ブシュ520の外周に緩挿されたローラ550とで構成され、内リンクプレート510と外リンクプレート540とをチェーン長手方向に交互に多数連結して、外リンクプレート540がプレート端縁形成領域540aをピッチラインPLに沿って平坦に形成した小判形を呈しているものが知られている(特許文献1参照)。
また、従来のローラチェーンとして、前述のローラチェーンと同様の構成からなり、外リンクプレートがプレート長手方向中央でくびれたひょうたん形を呈しているものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−301240号公報(段落番号0025、図2参照)
【特許文献2】特開2005−188728号公報(特許請求の範囲、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のような小判形の外リンクプレート540を用いたローラチェーン500は、図10および図11に示すように、外リンクプレート540がプレート長手方向のチェーン張力Fを受けた場合、外リンクプレート540のピン孔541間で殆ど弾性変形せずに外リンクプレート540のプレート強度を保持したままブシュ520との間で回動摺接する連結ピン530のピン中央部530aがチェーン長手方向に過度に引っ張られて連結ピン530のピン端部530bが弾性変形量の少ない外リンクプレート540に固定された状態となるため、連結ピン530のピン中央部530aのみがチェーン幅方向に亘って弓状に撓んでブシュ520と連結ピン530との平行度が失われて相互の接触面積が減少し、ブシュ520と連結ピン530との偏摩耗が急速に進行してブシュ520または連結ピン530の摩耗損傷によりチェーン寿命を早期に損なうおそれがあるという問題があった。
【0005】
また、後者のようなひょうたん形の外リンクプレートを用いたローラチェーンは、外リンクプレートのプレート長手方向中央に形成されたくびれ領域がプレート幅方向上下で対称に狭く形成されているため、外リンクプレートをプレート厚み方向に厚くしてプレート長手方向の引張応力に対するくびれ領域の引張強度を大きくしなければならず、外リンクプレートの厚みを増大させて外リンクプレートのプレート強度を確保した分だけチェーン幅方向の寸法やチェーン重量が増大するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、チェーン張力に応じた外リンクプレートの弾性変形を許容して連結ピンの撓みに起因する連結ピンとブシュとの偏摩耗を抑制し、外リンクプレートの引張強度を確保しつつ外リンクプレートの軽量化を達成するローラチェーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1に係るローラチェーンは、左右一対の内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に嵌挿された連結ピンと該連結ピンを圧入嵌合するピン孔を備えた左右一対の外リンクプレートとで構成され、前記内リンクプレートと外リンクプレートとをチェーン長手方向に交互に多数連結してなるローラチェーンにおいて、前記外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分が、前記外リンクプレートのプレート長手方向の前後に設けられるとともに前記外リンクプレートのピン孔間に延在する一対のプレート端縁形成領域をピッチライン寄りにそれぞれ切り欠いていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係るローラチェーンは、請求項1に記載のローラチェーンの構成に加えて、前記外リンクプレートのプレート窪み部分が、前記外リンクプレートのプレート中心に点対称に形成されていることにより、前述した課題を更に解決するものである。
【0009】
本請求項3に係るローラチェーンは、請求項1または請求項2に記載のローラチェーンの構成に加えて、前記外リンクプレートのプレート窪み部分が、前記外リンクプレートのピン孔中心の相互間に形成されていることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【0010】
本請求項4に係るローラチェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のローラチェーンの構成に加えて、前記プレート窪み部分の最深切り欠き位置における窪み側プレート幅Dが、前記外リンクプレートのピン孔中心を通るピン孔側プレート幅Aに対して、A≦D≦2Aの関係を満足していることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【0011】
本請求項5に係るローラチェーンは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のローラチェーンの構成に加えて、前記外リンクプレートのプレート窪み部分が、前記左右一対の外リンクプレートの相互間で左右対称に位置決めされていることにより、前述の課題を更に解決するものである。
なお、本発明における外リンクプレートの「プレート中心」とは、外リンクプレートにおけるプレート平面の中心を意味するものである。
また、本発明における外リンクプレートの「ピン孔側プレート幅」とは、外リンクプレートのピン孔中心を通ってプレート幅方向に延びた平面における外リンクプレートの円弧面とピン孔の内周面との間の幅寸法を意味するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るローラチェーンは、左右一対の内リンクプレートとこの内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュとこのブシュに回転自在に嵌挿された連結ピンとこの連結ピンを圧入嵌合するピン孔を備えた左右一対の外リンクプレートとで構成され、内リンクプレートと外リンクプレートとをチェーン長手方向に交互に多数連結してなることにより、内リンクプレートと外リンクプレートとが相対的に屈曲回動してチェーン機能を発揮するばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本請求項1に係る発明のローラチェーンは、外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分が外リンクプレートのプレート長手方向の前後に設けられるとともに外リンクプレートのピン孔間に延在する一対のプレート端縁形成領域をピッチライン寄りにそれぞれ切り欠いて形成されていることにより、外リンクプレートがプレート長手方向のチェーン張力を受けた場合に、外リンクプレートのプレート窪み部分が連結ピンに生じがちな弓状の弾性変形に先立って外リンクプレートのプレート長手方向の弾性変形を許容して連結ピンとブシュとの平行度を維持するため、従来の小判形状の外リンクプレートを用いたローラチェーンと比較すると、連結ピンの曲がりによるブシュと連結ピンとの偏摩耗を回避してローラチェーンの長寿命化を達成することができる。
【0014】
また、プレート窪み部分が外リンクプレートのプレート長手方向の前後にそれぞれ形成されていることにより、外リンクプレートのプレート幅方向の両側にそれぞれ形成されたプレート窪み部分がプレート長手方向と直交するプレート幅方向のプレート断面で揃うことなくプレート長手方向に相互にずれて配置されるため、従来のひょうたん状の外リンクプレートを用いたローラチェーンと比較して、外リンクプレートをプレート厚み方向に厚く形成することなく引張強度を確保することができ、さらに、外リンクプレートにプレート窪み部分を設けた分だけ外リンクプレートのプレート重量が軽量化されるため、ローラチェーンのチェーン駆動に要する動力効率を向上させることができる。
【0015】
本請求項2に係る発明のローラチェーンは、請求項1に記載のローラチェーンが奏する効果に加えて、プレート窪み部分がプレート中心まわりに点対称に形成されていることにより、外リンクプレートのプレート幅方向の両側にそれぞれ形成されたプレート窪み部分がプレート長手方向の前後に均等な外リンクプレートの弾性変形を許容するため、外リンクプレートがプレート長手方向の前後でチェーン張力に対してバランス良く弾性変形することができる。
【0016】
本請求項3に係る発明のローラチェーンは、請求項1または請求項2に記載のローラチェーンが奏する効果に加えて、外リンクプレートのプレート窪み部分が外リンクプレートのピン孔中心の相互間に形成されていることにより、プレート窪み部分が外リンクプレートに形成されたピン孔周辺プレート領域を切り欠くことなく形成されているため、外リンクプレートの弾性変形を許容しつつ外リンクプレートのピン孔周辺プレート領域の強度を確保することができる。
【0017】
本請求項4に係る発明のローラチェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のローラチェーンが奏する効果に加えて、プレート窪み部分の最深切り欠き位置における窪み側プレート幅Dが外リンクプレートのピン孔中心を通るピン孔側プレート幅Aに対して、A≦D≦2Aの関係を満足していることにより、外リンクプレートのプレート窪み部分において確実に弾性変形を許容するため、チェーン駆動に要する外リンクプレートの引張強度を確保することができる。すなわち、D<Aの場合には、チェーン張力によってプレート窪み部分が所定のピン間ピッチを維持できずに塑性変形して破断し、2A<Dの場合には、外リンクプレートが剛体のまま弾性変形せずにブシュや連結ピンに過度の偏摩耗が生じる。
【0018】
本請求項5に係る発明のローラチェーンは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のローラチェーンが奏する効果に加えて、外リンクプレートのプレート窪み部分が左右一対の外リンクプレートの相互間で左右対称に位置決めされていることにより、左右一対の外リンクプレートがチェーン張力に対してチェーン幅方向の左右でバランスのとれた弾性変形を生じるため、チェーン幅方向の捩れを防止してスプロケットとの安定した噛み合いを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例であるローラチェーンの全体斜視図。
【図2】図1に示すローラチェーンの組立分解図。
【図3】図1に示す外リンクプレートの正面図。
【図4】図3に示す外リンクプレートの弾性変形時の挙動を示す説明図。
【図5】図1に示すローラチェーンがチェーン張力を受けて連結ピンが動いた状態を示す図。
【図6】図1に示す外リンクプレートが連結ピンまわりに弾性変形した状態を示す説明図。
【図7】本発明の第2実施例であるローラチェーンに用いる外リンクプレートの正面図。
【図8】図7に示す外リンクプレートの弾性変形時の挙動を示す説明図。
【図9】従来のローラチェーンを示す全体斜視図。
【図10】図9のローラチェーンがチェーン張力を受けた状態の一部切欠図と部分拡大図。
【図11】図9に示す外リンクプレートの弾性変形時の挙動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るローラチェーンは、左右一対の内リンクプレートとこの内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュとこのブシュに回転自在に嵌挿された連結ピンとこの連結ピンを圧入嵌合するピン孔を備えた左右一対の外リンクプレートとで構成され、内リンクプレートと外リンクプレートとをチェーン長手方向に交互に多数連結して、外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分が外リンクプレートのプレート長手方向の前後に設けられるとともに外リンクプレートのピン孔間に延在する一対のプレート端縁形成領域をピッチライン寄りにそれぞれ切り欠いて形成されて、チェーン張力に応じた外リンクプレートの弾性変形を許容して連結ピンの撓みに起因する連結ピンとブシュとの偏摩耗を抑制し、外リンクプレートの引張強度を確保しつつ外リンクプレートの軽量化を達成するものであれば、その具体的実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0021】
本発明で用いる外リンクプレートのプレート窪み部分の具体的形状については、外リンクプレートのピン孔間に延在する一対のプレート端縁形成領域をピッチライン寄りに切り欠いて設けられて外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するものであれば良く、切り欠いて形成されたプレート窪み部分の斜面が曲面であっても、平面であっても構わない。
【0022】
本発明で用いる内リンクプレートと外リンクプレートの具体的寸法については、内リンクプレートと外リンクプレートの外形寸法が互いに同一であっても、外リンクプレートの外形寸法が内リンクプレートの外形寸法よりも小さくても差し支えなく、外リンクプレートの外形寸法が内リンクプレートの外形寸法よりも小さい場合には、ローラチェーンがチェーンガイド部材等に摺接するときでも外リンクプレートがチェーンガイド部材等に接触しないため、チェーン全体の接触面積を小さくして摺接抵抗を低減したり騒音や振動を減少したりすることが可能である。
【0023】
なお、本発明はローラチェーンを対象としたものであるが、外リンクプレートの形状を本発明に特有の形態とする場合には、内リンクプレート、ブシュ、連結ピン、外リンクプレートから構成されるブシュチェーンにも適用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の第1実施例であるローラチェーンについて、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例であるローラチェーンの全体斜視図であり、図2は、図1に示すローラチェーンの組立分解図であり、図3は、図1に示す外リンクプレートの正面図であり、図4は、図3に示す外リンクプレートの弾性変形時の挙動を示す説明図であり、図5は、図1に示すローラチェーンがチェーン張力を受けて連結ピンが動いた状態を示す図であり、図6は、図1に示す外リンクプレートが連結ピンまわりに弾性変形した状態を示す説明図である。
【0025】
まず、本発明の第1実施例であるローラチェーン100は、図1および図2に示すように、左右一対の内リンクプレート110、110と、この内リンクプレート110のブシュ孔111に圧入嵌合されたブシュ120と、このブシュ120に回転自在に嵌挿された連結ピン130と、この連結ピン130を圧入嵌合するピン孔141を備えた左右一対の外リンクプレート140、140と、ブシュ120の外周に緩挿されたローラ150とで構成され、内リンクプレート110と外リンクプレート140とをチェーン長手方向に交互に多数連結している。
【0026】
上述した外リンクプレート140は、図3および図4に示すように、外リンクプレート140のプレート長手方向の前後に設けられるとともに外リンクプレート140のピン孔141、141間に延在する一対のプレート端縁形成領域140a、140aをピッチラインPL寄りにそれぞれ切り欠いて形成されて、外リンクプレート140のプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分142、さらに詳しくは、外リンクプレート140のピン孔141、141間に延在する一対のプレート端縁形成領域140a、140aをプレート中心Oに点対称かつピッチラインPL寄りに切り欠いて形成されて、外リンクプレート140のプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分142を備えている。
これにより、図5に示すように、外リンクプレート140がプレート長手方向のチェーン張力Fを受けた場合に、外リンクプレート140のプレート窪み部分142が、連結ピン130に生じがちな弓状の弾性変形に先立って、外リンクプレート140のプレート長手方向の弾性変形を許容して、ブシュ120と連結ピン130の平行度を維持し、また、外リンクプレート140のプレート幅方向の両側にそれぞれ形成されたプレート窪み部分142、142が、プレート長手方向と直交するプレート幅方向のプレート断面で揃うことなくプレート長手方向に相互にずれて配置され、さらに、外リンクプレート140にプレート窪み部分142を設けた分だけ外リンクプレート140のプレート重量が軽量化されている。
【0027】
また、図3に示すように、前述した外リンクプレート140のプレート窪み部分142は、外リンクプレート140のピン孔中心141a、141aの相互間に形成されている。
これにより、プレート窪み部分142が、外リンクプレート140の円弧面140sとピン孔141の内周面141sとの間に形成されたピン孔周辺プレート領域Rを切り欠くことなく形成されている。
【0028】
また、図3に示すように、プレート窪み部分142の最深切り欠き位置143における窪み側プレート幅Dは、外リンクプレート140のピン孔中心141aを通るピン孔側プレート幅Aに対して、A≦D≦2Aの関係を満足するものであり、さらに、本実施例においては、D=2Aの関係を満足している。
これにより、外リンクプレート140のプレート窪み部分142において確実に弾性変形を許容している。
なお、D<Aの場合には、チェーン張力によってプレート窪み部分142が所定のピン間ピッチを維持できずに塑性変形して破断し、2A<Dの場合には、外リンクプレート140が剛体のまま弾性変形せずにブシュ120や連結ピン130に過度の偏摩耗が生じる。
【0029】
そして、図6に示すように、左右一対の外リンクプレート140、140のプレート窪み部分142、142は、左右一対の外リンクプレート140、140の相互間で左右対称に位置決めされている。
これにより、左右一対の外リンクプレート140、140が、チェーン張力に対してチェーン幅方向の左右でバランスのとれた、すなわち、外リンクプレート140がピン孔141の外周側で図6中の矢印の向きに弾性変形する場合に、左右一対の外リンクプレート140、140が、チェーン幅方向の左右で相互に揃って弾性変形して、チェーン幅方向の捩れを防止してスプロケット(図示せず)との安定した噛み合いを達成する。
【0030】
このようにして得られた本実施例のローラチェーン100は、外リンクプレート140のプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分142が外リンクプレート140のプレート長手方向の前後に設けられるとともに外リンクプレート140のピン孔141、141間に延在する一対のプレート端縁形成領域140a、140aをピッチラインPL寄りにそれぞれ切り欠いて形成されていることにより、従来の小判形状の外リンクプレート540を用いたローラチェーン500と比較すると、連結ピン130の曲がりによるブシュ120と連結ピン130との偏摩耗を回避してローラチェーン100の長寿命化を達成することができ、また、従来のひょうたん状の外リンクプレートを用いたローラチェーンと比較して、外リンクプレート140をプレート厚み方向に厚く形成することなく引張強度を確保することができ、さらに、ローラチェーン100のチェーン駆動に要する動力効率を向上させることができる。
【0031】
また、外リンクプレート140のプレート窪み部分142が外リンクプレート140のピン孔中心141a、141aの相互間に形成されていることにより、外リンクプレート140の弾性変形を許容しつつ外リンクプレート140のピン孔周辺プレート領域Rの強度を確保することができる等、その効果は甚大である。
【0032】
次に、本発明の第2実施例であるローラチェーンに用いられる外リンクプレートについて、図面に基づいて説明する。
ここで、図7は、本発明の第2実施例であるローラチェーンに用いられる外リンクプレートの正面図であり、図8は、図7に示す外リンクプレートの弾性変形時の挙動を示す説明図である。
【0033】
そこで、本発明の第2実施例であるローラチェーン200は、上述した第1実施例のローラチェーン100と比較すると、プレート窪み部分の具体的な形態が異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第1実施例のローラチェーン100と同一の部材について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0034】
すなわち、図7に示すように、プレート窪み部分242の最深切り欠き位置243における窪み側プレート幅Dは、外リンクプレート240のピン孔中心240aを通るピン孔側プレート幅Aに対して、A≦D≦2Aの関係を満足するものであり、さらに、本実施例においては、D=Aの関係を満足している。
これにより、図8に示すように、外リンクプレート240のプレート窪み部分242において確実に弾性変形を許容している。
【0035】
このようにして得られた本発明の第2実施例であるローラチェーン200は、前述したローラチェーン100が奏する効果に加えて、外リンクプレート240の弾性変形を許容するとともにチェーン駆動に要する外リンクプレート240の引張強度を確保することができる等、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0036】
100、200 ・・・ ローラチェーン
110 ・・・ 内リンクプレート
111 ・・・ ブシュ孔
120、220 ・・・ ブシュ
130、230 ・・・ 連結ピン
140、240 ・・・ 外リンクプレート
140a、240a・・・ プレート端縁形成領域
140s、240s・・・(外リンクプレートの)円弧面
141、241 ・・・ ピン孔
141a、241a・・・ピン孔中心
141s、241s・・・(ピン孔の)内周面
142、242 ・・・ プレート窪み部分
143、243 ・・・ 最深切り欠き位置
150・・・ ローラ
A ・・・ ピン孔側プレート幅
D ・・・ 窪み側プレート幅
O ・・・ プレート中心
PL・・・ ピッチライン
R ・・・ ピン孔周辺プレート領域
500 ・・・ ローラチェーン
510 ・・・ 内リンクプレート
511 ・・・ ブシュ孔
520 ・・・ ブシュ
530 ・・・ 連結ピン
530a・・・ ピン中央部
530b・・・ ピン端部
540 ・・・ 外リンクプレート
540a・・・ プレート端縁形成領域
541 ・・・ ピン孔
550 ・・・ ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に嵌挿された連結ピンと該連結ピンを圧入嵌合するピン孔を備えた左右一対の外リンクプレートとで構成され、前記内リンクプレートと外リンクプレートとをチェーン長手方向に交互に多数連結してなるローラチェーンにおいて、
前記外リンクプレートのプレート長手方向への弾性変形を許容するプレート窪み部分が、前記外リンクプレートのプレート長手方向の前後に設けられるとともに前記外リンクプレートのピン孔間に延在する一対のプレート端縁形成領域をピッチライン寄りにそれぞれ切り欠いて形成されていることを特徴とするローラチェーン。
【請求項2】
前記プレート窪み部分が、前記外リンクプレートのプレート中心に点対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のローラチェーン。
【請求項3】
前記外リンクプレートのプレート窪み部分が、前記外リンクプレートのピン孔中心の相互間に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のローラチェーン。
【請求項4】
前記プレート窪み部分の最深切り欠き位置における窪み側プレート幅Dが、前記外リンクプレートのピン孔中心を通るピン孔側プレート幅Aに対して、A≦D≦2Aの関係を満足していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のローラチェーン。
【請求項5】
前記外リンクプレートのプレート窪み部分が、前記左右一対の外リンクプレートの相互間で左右対称に位置決めされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のローラチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−92173(P2013−92173A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233206(P2011−233206)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)