説明

ロール巻取り収納に適したナイトカバー

【課題】柔軟で、巻取り及び引き出し時に巻き癖やしわなどが付き難く、かつ変形し難くいため、操作性に優れ、保冷性が良好であり、結露が発生し難く、毛羽などの発生もない、冷凍または冷蔵ショーケースに最適なロール巻取り収納に適したナイトカバーを提供する。
【解決手段】布帛からなるナイトカバーであって、該布帛は平織物であり、該平織物を構成する経糸の繊度と緯糸の繊度の比(経糸の繊度:緯糸の繊度)が1:2〜1:4であり、かつ経糸の繊度が100〜400dtexであることを特徴とするロール巻取り収納に適したナイトカバーとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍または冷蔵商品を販売するオープンショウケースにおいて、非営業時に商品の衛生を保持したり消費電力を節約するためにその開口部を覆うナイトカバーに関し、特に該ナイトカバーがロールに巻き取られて収納されるタイプのオープンショーケースに好適なナイトカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーにはケース内の冷気を保持する保冷性をはじめ、商品の汚染や氷結を防止する密閉性や結露防止性、防カビ性、適度な通気性などが求められ、ショーケースのサイズや形状、構造などに応じて(1)樹脂製パネル、(2)樹脂製シート、(3)フィルム、(4)不織布、(5)編物、(6)織物、(7)前記(2)〜(6)の積層材などが用いられてきた。
【0003】
しかし、近年はショーケースの大型化が進み、それに伴ってナイトカバーの設置および収納などの操作を楽に出来るようにした、ナイトカバーをロールに巻付けてこれを引出したり巻取ったりしてその設置や収納を行うタイプのショーケースが急増し、このタイプのショーケースに適したナイトカバーとして、従来の要求特性に加え、ロール巻取りの操作性に優れたナイトカバーが熱望されている。
【0004】
一方、これらの要求に対応するナイトカバーとして例えば特許文献1〜5などが提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に用いられる不織布や編物においては、その構造より明らかなように、厚く曲がり難かったり、引っ張りに対して厚みや幅や長さなどが変形したりし易く、ロールに巻取った繰り返し巻取られる際に蛇行したりしわが入り易い問題、あるいは不織布のランダムな繊維配列や編糸の強い屈曲や繊維間および糸間の粗な空隙などの影響による結露水などの拡散・乾燥速度の低下、および通気性の増加による保冷性の低下などの問題がある。
【0005】
さらに、編物においては、その編目構造に起因する布帛のそりによるショーケースの密閉性低下の問題、一方織物においては、不織布や編物に対して空隙の確保が難しいことによる保冷性低下の問題、また不織布や紡績糸を使用した織編物においては、繰り返し使用時のショーケース内への毛羽脱落汚染の問題などもある。
【0006】
また、特許文献4および5に用いられる不織布とフィルムやシートの積層材おいては、上記不織布と同様の厚みと毛羽の問題の他、繰り返し使用による不織布とフィルムあるいはシート間の剥離の問題、あるいはフィルムやシートに通気性が無いことによる結露水や洗浄時の水の乾燥難の問題などがあり、いずれのナイトカバーも未だ満足できる水準には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−041799号公報
【特許文献2】特開2006−167284号公報
【特許文献3】実用新案登録第3058051号公報
【特許文献4】特開平08−154787号公報
【特許文献5】特開平09−079737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、柔軟で、巻取り及び引き出し時に巻き癖やしわなどが付き難く、かつ変形し難くいため、操作性に優れ、保冷性が良好であり、結露が発生し難く、毛羽などの発生もない、冷凍または冷蔵ショーケースに最適なロール巻取り収納に適したナイトカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ロール巻取り収納可能なナイトカバーに最適な布帛構成について検討を行い、次の織物を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。かくして本発明によれば、布帛からなるナイトカバーであって、該布帛は平織物であり、該平織物を構成する経糸の繊度と緯糸の繊度の比(経糸の繊度:緯糸の繊度)が1:2〜1:4であり、かつ経糸の繊度が100〜400dtexであることを特徴とするロール巻取り収納に適したナイトカバーが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロール巻取り収納に適したナイトカバーは、緯糸対比経糸の繊度を大幅に小さくすることによって、経糸方向の屈曲性、いわゆる簾のように高い柔軟性が得られ、ロール巻き癖の付き難く、設置や収納操作が楽にできるといった特徴を有している。また、保冷性が良好で、結露が発生し難く、防カビ性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のロール巻取り収納に適したナイトカバーを使用するショーケースの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明のロール巻取り収納に適したナイトカバーに用いる織物において、(A)は経糸方向の横断面、(B)は緯糸方向の横断面の一例を示す概略図である。
【図3】本発明のロール巻取り収納に適したナイトカバーに用いる織物を構成する繊維の横断面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態例を図面により説明する。図1は、本発明のナイトカバーの特性が活かされる、これにナイトカバーをロールに巻付けて設置しこれを引出したり巻取ったりして使用する、冷凍または冷蔵ショーケースの一例を示す斜視図である。ここで、1はオープンショーケース、2は本発明のロール巻取り収納に適したナイトカバー(以下、単にナイトカバーと称することがある)を巻き取るロール、3はナイトカバーを示し、図1は、オープンショーケースの開口部がナイトカバーによりカバーされた状態を示す。
【0013】
本発明においては、上記ナイトカバーが、平織物からなり、該平織物を構成する経糸の繊度と緯糸の繊度の比(経糸の繊度:緯糸の繊度)が1:2〜1:4であり、かつ経糸の繊度が100〜400dtexであることが肝要である。
【0014】
ここで、織物の経糸と緯糸の繊度比が、1:4よりも大きく、つまり繊度の差が大きくなると、織物のバイアス方向の変形が大きくなり、ロール巻取り収納性、つまり図1でロール2に巻取り収納した場合の収まりが悪くなる傾向にある。また、織物の強度が弱くなったり、経糸の耐摩耗性が低下したり、糸のコストが増したり、経糸の密度を高く設定する必要が生じたりするため好ましくない。
【0015】
逆に、織物の経糸と緯糸の繊度比が、1:2より小さくなる、つまり繊度の差が小さくなると、いわゆる簾のような柔軟な効果が得られず、ロール巻取り性が低下し、巻取り癖もつき易くなる。また、通気性も低下する傾向にあり、好ましくない。
また、経糸および緯糸を構成する単繊維の繊度は、0.1〜20dtexが好ましく、0.5〜10dtexがより好ましい。
【0016】
また、本発明においては、経糸と緯糸の密度比(経糸密度:緯糸密度)は、2:1〜4:1が好ましく、2:1〜3:1がより好ましい。経糸と緯糸の密度比が、2:1より小さくなると、つまり密度の差が小さくなると、織物の柔軟性が阻害され易く、逆に、4:1より大きくなる、つまり密度の差が大きくなると、織物の充填密度が粗になったり織物の強度が弱くなったりするので好ましくない。この際、経糸の密度は、80〜170本/インチが好ましく、100〜150本/インチが好ましい。
【0017】
本発明においては、織物密度は、以下に示すトータルカバーファクターが2000〜2500、好ましくは2100〜2400になるように設定することが好ましい。
トータルカバーファクター=N1×√D1+N2×√D2
ここで、N1は経糸密度(本/インチ)、D1は経糸の総繊度(dtex)、N2は緯糸密度(本/インチ)、D2は緯糸の総繊度(dtex)を示す。
【0018】
すなわち、トータルカバーファクターが2000未満では織物の充填度が不足して織物の経糸方向および緯糸方向に対して斜め方向に変形し易くなり、ロール巻取り時にしわが発生したり巻き形態が崩れ易くなり好ましくない。一方、トータルカバーファクターが2500を超えると、織物が硬くなると共に繊維間や織物組織間の空隙が圧縮され、ロール巻き取り性や保冷性が低下し易く好ましくない。
【0019】
上記構成により、経糸の織物クリンプが図2(1)、(2)に示すように緯糸対比大幅に強くなり、更にこれに繊度の細さも加わり、経糸方向の屈曲性にいわゆる簾のように高い柔軟性が得られ、ロール巻き癖の付き難く、かつ設置や収納操作が楽にできるナイトカバーを得ることができる。
【0020】
また、本発明のナイトカバーは織物からなるため、従来の編物や不織布からなるナイトカバーが有する、経方向に伸張された際に生じる巾方向の収縮変形の問題や厚み方向の圧縮変形の問題や、また、フィルムや樹脂シートからなるナイトカバーが有する結露の問題も発生し難い。
【0021】
上記効果は樹脂加工などを施した織物でも得られるが、樹脂を多くコーティングした織物や、フィルムなどをラミネートした織物では、上記効果が低減する傾向にあり好ましくない。
【0022】
なお、上記織物に用いられる糸の素材としては、吸湿性が少なく強度に優れたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、アクリル等からなる合成繊維が適しており、中でもポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートからなる合成繊維が好ましい。また、糸の形態としては紡績糸よりはフィラメント糸の方が毛羽や粉塵の発生が少なく好ましい。
【0023】
本発明においては、少なくとも緯糸に中空断面を有する繊維を用いることで、断熱効果が高められ、ナイトカバーの保冷性を向上させることができる。中空断面の形態としては、図3(1)〜(4)に示すような断面を有するものを例示することができるが、他に断面内に空隙を有すものであってもよい。繊維の断面積に占める中空部あるいは空隙部の断面積の割合は30〜50%であることが好ましい。30%未満では断熱効果が十分には得られにくく、50%を越えると断面が潰れ易くなる傾向にある。
【0024】
また、本発明においては、経糸または緯糸に、多葉断面を有する繊維を用いることによって、多葉断面の凹部が有する高い毛管作用により織物に付着した結露水や洗浄水などを面方向にすばやく拡散できるようになり、結露防止性能や速乾性を飛躍的に向上できるほか、繊維間空隙に水が溜まり難いため保冷性や防カビ性も向上できる。
【0025】
なお、ここで多葉断面とは、例えば、図3(5)〜(7)に例示する3〜5葉の多葉断面をいい、その際、全葉数の半数以上において隣接する二葉の凸部に接する接線長Lに対する凹部の深さDの比率D/L×100(%)が25%以上あることが好ましい。
【0026】
また、上記多葉断面としては、3〜8葉が好ましく、3葉未満では凹部の溝が形成し難く、8葉より多くなると葉の巾が小さくなって裂け易くなると共に深い溝が得難くなり、またD/Lの比率が25%未満では高度の毛管作用が得られ難く好ましくない。
【0027】
さらに、前記中空断面の繊維を用いると空気による断熱効果が増して少エネルギー効果が得られ、また、上記多葉断面のような繊維側面に溝を有する断面形態の繊維を用いると糸や織物の毛管作用が増して水分の拡散速度が速くなり、結露が減少したり、乾燥が速くなったりするメリットも得られる。
【0028】
本発明のナイトカバーは、以上に説明した繊維に、必要に応じて撚を加え、公知の方法にて、前記の経糸と緯糸の密度比となるように平織物に製織し、精練、仕上げセットを行い、最後に冷凍または冷蔵ショーケースの形状に合わせて縫製することによって製造することができる。
【実施例】
【0029】
(1)ロール巻取り収納性、ロール巻取り性、ロール捲癖
1.2m×2mの布帛からなるナイトカバーを作成し、図1に示すオープンショーケースを使用し、ナイトカバー3として設置し、引き出しとロール巻取り収納を30回繰り返し、ロール巻取り収納性(巻取りロール2への収納のし易さ)、ロール巻取り性、ロール捲癖を評価し、結果を良い順に◎、○、△、×で示した。
【0030】
(2)寸法安定性
試料から長さ方向に沿って採取した長さ300mm、巾50mmのサンプルを、引っ張り試験機を用いて試長200mm、引張り速度20mm/分で伸長し、引張り荷重が1Kg/巾50mmになった時の伸び率で示し、この伸び率が3%未満を○、3%以上6%未満を△、6%以上を×で示した。
【0031】
(3)通気性
JIS L1096に準じてフラジール通気性を測定し、50cc/cm・sec以上120cc/cm・sec未満を○、120cc/cm・sec以上300cc/cm・sec未満を△、50cc/cm・sec未満または300cc/cm・sec以上を×で示した。
【0032】
(4)保温性
JIS L1096に準じて測定し、保温性(%)が20%以上を○、20%未満を×で示した。
【0033】
(5)速乾性
300mm四方の試料を水平にしてその中央に水を1cc滴下し、その試料の重量が元に戻るまでの時間を測定し、180分未満を○、180分以上360分未満を△、360分以上を×で示した。
【0034】
(6)低毛羽性
18mm巾の粘着テープを試料に押し付けて剥がし、その粘着テープに付着した繊維の本数を100cm当たりに換算して示し、100本未満を○、100本以上200本未満を△、200本以上を×で示した。
【0035】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
表1に示す繊度、繊維断面形状を有するポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(PET−FY)(帝人ファイバー製)を用い、これを表1に示す経糸密度、緯糸密度で平織物に成形した。得られ平織物を用い、ナイトカバーしての性能を評価した。実施例2では、図3の(1)に示すような断面形態を有し、中空率(繊維の断面積に占める中空部の断面積の割合)が36%の中空断面を有するポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(帝人ファイバー製)を用いた。また、実施例3では、図3の(7)に示すような断面形態を有し、D/L×100=33%の5葉断面を有するポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(帝人ファイバー製)を用いた。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例3〜5]
実施例1の平織物に代えて、表1に示す、トリコット織物(比較例3)、ニードルパンチ不織布(比較例4)、ニードルパンチ不織布の一方の面に厚みが40μmのフィルムをラミネートした布帛(比較例5)を用いた以外は、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のナイトカバーは、柔軟で、巻取り及び引き出し時に巻き癖やしわなどが付き難く、かつ変形し難くいため、操作性に優れている。また、保冷性が良好であり、結露が発生し難く防カビ性に優れ、毛羽などの発生もないため、製品を清潔に保つことができる。このため、冷凍または冷蔵ショーケースに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 オープンショーケース
2 巻取りロール
3 ナイトカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛からなるナイトカバーであって、該布帛は平織物であり、該平織物を構成する経糸の繊度と緯糸の繊度の比(経糸の繊度:緯糸の繊度)が1:2〜1:4であり、かつ経糸の繊度が100〜400dtexであることを特徴とするロール巻取り収納に適したナイトカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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