説明

ワイヤレス電力伝送装置

【課題】手動位置合わせ方式において、受電器が載せ置かれる送電器の上面の区域を小さくした場合でも、電力伝送可能な実質の区域を確保できるワイヤレス電力伝送装置を提供する。
【解決手段】二次コイル31に対して電磁誘導により電力を供給する一次コイル11が設けられた送電器10と、送電器10の表面と対向する位置に開口部23が設けられているフレーム21とを備え、送電器10とフレーム21は互いにスライド可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤレス電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器向けの電磁誘導型ワイヤレス電力伝送装置が普及しつつある。送電器に内蔵される一次コイルから発生する交流磁界により、電子機器などの受電器に内蔵される二次コイルに電力を伝送する。二次コイルに伝送された電力は、整流回路などを介して二次電池などの負荷に供給される。一次コイルから二次コイルに対して効率よく電力伝送を行うためには、対向する一次コイルと二次コイルをなるべく近接させて、各コイルの中心軸の位置を合わせる必要がある。
【0003】
電磁誘導方式のワイヤレス電力伝送装置において、一次コイルと二次コイルの位置を合わせる手段として、様々な方式が提案されている。簡易的な方式として、一次コイルの中央にマグネットを配置し、二次コイルの中央にアトラクタと呼ばれる吸着部をそれぞれ配置する。そして、アトラクタがマグネットに引き寄せられる力を利用することで、位置合わせを行う方法がある。
しかし、一次コイルの中央にマグネットを配置する必要があるため、電子機器などの受電器に設けられるセンサーや二次電池に影響を及ぼす恐れがあり、実用上好ましくない。
【0004】
次に、二次コイルの位置を検出し、一次コイルの位置を自動的にモーターで移動させて位置合わせをする方法がある。
しかし、モーターに加えてモーターの駆動回路などを設ける必要があるため、コストアップの問題や、振動や速い動きに対して追従性が悪いなどの問題がある。
【0005】
また、複数の一次コイルを平面状に並べて配置し、二次コイルが置かれた位置に合わせて駆動する一次コイルを切り換える方法がある。
しかし、一次コイルや切り換え回路を複数設ける必要があるため、コストアップの問題や、個々の一次コイルの形状を小さくする必要があり、電力伝送効率が悪いなどの問題がある。
【0006】
これらに対して、簡易的な位置検出手段を用いて二次コイルの位置を検出し、一次コイルに対する二次コイルの位置ずれ方向を発光素子によりを報知する方法がある。点灯している発光素子の方向に二次コイルが設けられた受電器を動かすことで、一次コイルと二次コイルの位置を最適位置に合わせることができる。このような手動位置合わせ方式は、コストや構造面で有利である。
【0007】
ここで、図1に従来の手動位置合わせ方式のワイヤレス電力伝送装置の概略図の一例を示す。送電器60は、一次コイル61、LED62a〜62dを備える。受電器70、80、90は、それぞれ二次コイル71、81、91を備える。
【0008】
一次コイル61は、送電器60の筐体内の中央部に配置されている。一対のLED62a、62cは、送電器60の短手方向において一次コイル61の中心軸から対称の位置にそれぞれ配置されている。また、一対のLED62b、62dは、送電器60の長手方向において一次コイル61の中心軸から対称の位置にそれぞれ配置されている。
【0009】
図1(a)に示す受電器70は、筐体内の中央部に二次コイル71を備える。送電器60の上部に受電器70を載せ置くとき、感覚的に送電器60の中心と受電器70の中心を合わせるようにするのが通常である。二次コイル71は、受電器70の筐体内の中央部に配置されているため、送電器60の中心と受電器70の中心とが略一致すれば、一次コイル61と二次コイル71の相対位置が最適位置となる。
【0010】
また、図1(b)に示す受電器80は、筐体内の長手一端方向(図中の矢印Aの方向)に二次コイル81を備える。二次コイル81は、受電器80の筐体内の長手一端方向(図中の矢印Aの方向)に配置されているため、送電器60の中心と受電器80の中心が略一致しても、一次コイル61と二次コイル81の間に位置ずれが生じる。送電器60は、位置検出手段を用いて二次コイル81の位置を検出し、一次コイル61に対する二次コイル81の位置ずれ方向が求め、LED62bを点灯させる。そして、点灯しているLED62bの方向に受電器80を移動させ、所定位置になると一次コイル61と二次コイル81の相対位置が最適位置となる。
【0011】
また、図1(c)に示す受電器90は、筐体内の長手他端方向(図中の矢印Bの方向)に二次コイル91を備える。二次コイル91は、受電器90の筐体内の長手他端方向(図中の矢印Bの方向)に配置されているため、送電器60の中心と受電器90の中心が略一致しても、一次コイル61と二次コイル91の間に位置ずれが生じる。送電器60は、位置検出手段を用いて二次コイル91の位置を検出し、一次コイル61に対する二次コイル91の位置ずれ方向が求め、LED62dを点灯させる。そして、点灯しているLED62dの方向に受電器90を移動させ、所定位置になると一次コイル61と二次コイル91の相対位置が最適位置となる。
【0012】
一次コイル61と二次コイル71、81、91の相対位置が最適位置となった場合、例えばすべてのLED62a〜62dを点灯させたり、LEDの色を変えたりするなどして報知する。これにより、一次コイル61と二次コイル71、81、91の相対位置が電力伝送を行うのに最適な位置となったのを認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国公開特許第2009−212637号明細書
【特許文献2】特開2009−247194号公報
【特許文献3】米国登録特許第7164255号明細書
【特許文献4】特開2009−89465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
1つの送電器60で、様々な受電器70、80、90に対して電力伝送を行うことが考えられる。受電器の設計上、二次コイルは受電器の中央部や端部など、様々な位置に配置されることが考えられる。そのため、手動位置合わせ方式において、受電器が載せ置かれる送電器60の上面の区域を広くしなければならなかった。
【0015】
本発明はこのような問題を考慮してなされたものであり、手動位置合わせ方式において、受電器が載せ置かれる送電器の上面の区域を小さくした場合でも、電力伝送可能な実質の区域を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はこのような目的を達成するため、二次コイルに対して電磁誘導により電力を供給する一次コイルが設けられた送電器と、該送電器の表面と対向する位置に開口部が設けられているフレームとを備え、該送電器と該フレームは互いにスライド可能に連結していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、受電器が載せ置かれる送電器の上面の区域を小さくした場合でも、電力伝送可能な実質の区域を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の手動位置合わせ方式のワイヤレス電力伝送装置の概略図
【図2】本発明のワイヤレス電力伝送装置の概略図
【図3】本発明の送電器に受電器を載せ置いた状態図
【図4】本発明の送電器に他の受電器を載せ置いた状態図
【図5】本発明の送電器にさらに他の受電器を載せ置いた状態図
【図6】本発明のワイヤレス電力伝送装置のブロック図
【図7】本発明の各コイルの位置関係を示す概略図
【図8】本発明の第2の実施例におけるワイヤレス電力伝送装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2に本発明のワイヤレス電力伝送装置の概略図を示す。ワイヤレス電力伝送装置は、送電器10、一次コイル11、フレーム21、LED22a〜22dを備える。
【0020】
一次コイル11は、送電器10の筐体内の中央部に配置されている。送電器10は、フレーム21に対してスライド可能に連結している。フレーム21は、送電器10を覆うように構成されている。また、フレーム21は、LED22a〜22dを備えるとともに、開口部23が設けられている。送電器10の上面は平面状になっており、フレーム21の開口部23は送電器10の上面と対向する位置に設けられている。一対のLED22a、22cは、送電器10の短手方向において、フレーム21の開口部23の中心から対称の位置にそれぞれ配置されている。また、一対のLED22b、22dは、送電器10の長手方向において、フレーム21の開口部23の中心から対称の位置にそれぞれ配置されている。
【0021】
図2(a)に示すワイヤレス電力伝送装置は、送電器10をフレーム21の中心に合わせてスライドさせた状態を示したものである。このとき、フレーム21の開口部23の中心に一次コイル11の中心軸が位置する。送電器10は、図中の矢印Aもしくは矢印Bの方向にスライドさせることができるように構成されている。
図2(b)に示すワイヤレス電力伝送装置は、送電器10をフレーム21の長手一端方向(図中の矢印Aの方向)にスライドさせた状態を示したものである。このとき、フレーム21の開口部23の中心に対して、一次コイル11は送電器10の長手一端方向(図中の矢印Aの方向)に位置することになる。
図2(c)に示すワイヤレス電力伝送装置は、送電器10をフレーム21の長手他端方向(図中の矢印Bの方向)にスライドさせた状態を示したものである。このとき、フレーム21の開口部23の中心に対して、一次コイル11は送電器10の長手他端方向(図中の矢印Bの方向)に位置することになる。
【0022】
このように、送電器10はフレーム21の長手方向へ任意にスライド移動させることができる。送電器10をスライドさせることにより、フレーム21の開口部23に対する一次コイル11の位置が変化する。通常、一次コイル11がフレーム21の開口部23の中心に位置するように、送電器10をスライドさせておく。
【0023】
次に、図3に本発明の送電器に受電器を載せ置いた状態図を示す。受電器30は、筐体内の中央部に二次コイル31を備える。フレーム21の開口部23は、受電器30の外形形状より大きくなるように構成されている。
【0024】
まず、受電器30を開口部23の底面に位置する送電器10の上面に載せ置く。すると、一次コイル11と二次コイル31の位置ずれ方向に応じて、いずれかもしくは複数のLED22a〜22dが点灯する。そして、点灯しているLED22a〜22dに従って、受電器30を動かすことで、一次コイル11と二次コイル31の相対位置が最適位置となる。このとき、例えばすべてのLED22a〜22dを点灯させたり、LEDの色を変えたりするなどして報知する。これにより、一次コイル11と二次コイル31の相対位置が電力伝送を行うのに最適な位置となったのを認識することができる。
【0025】
このように、開口部23の区域内に送電器10の中心と受電器30の中心とが略一致する位置が存在する場合、送電台10をスライドさせる必要はない。
【0026】
次に、図4に本発明の送電器に他の受電器を載せ置いた状態図を示す。受電器40は、筐体内の長手一端方向(図中の矢印Aの方向)に二次コイル41を備える。フレーム21の開口部23は、受電器40の外形形状より大きくなるように構成されている。
【0027】
まず、受電器40を開口部23の底面に位置する送電器10の上面に載せ置く。すると、一次コイル11と二次コイル41の位置ずれ方向に応じて、いずれかもしくは複数のLED22a〜22dが点灯する。そして、点灯しているLED22a〜22dに従って、受電器40を動かす。しかし、受電器40のように、筐体内の中央ではなく端部寄りの位置に二次コイル41が設けられている場合、開口部23の区域内に一次コイル11と二次コイル41の相対位置が最適位置となる点が存在しない場合がある。
【0028】
図4(a)に示す位置に送電器10をスライドさせている場合、開口部23の区域内のどの位置に受電器40を配置しても、一次コイル11に対して二次コイル41は、図中の矢印Aの方向にずれた状態となる。そのため、図中の矢印Bの方向に受電器40を動かすように、LED22bを点灯させて報知する。このように、開口部23の区域内で位置合わせができないときは、LED22bにより方向指示があった方向と逆の方向(図中の矢印Aの方向)に送電器10をスライドさせる。図4(b)は、送電器10をLED22bにより方向指示があった方向と逆の方向(図中の矢印Aの方向)にスライドさせたときの状態を示すものである。これにより、フレーム21の開口部23に対する一次コイル11の位置が変化し、位置合わせが可能となる。
【0029】
次に、図5に本発明の送電器にさらに他の受電器を載せ置いた状態図を示す。受電器50は、筐体内の長手他端方向(図中の矢印Bの方向)に二次コイル51を備える。フレーム21の開口部23は、受電器50の外形形状より大きくなるように構成されている。
【0030】
まず、受電器50を開口部23の底面に位置する送電器10の上面に載せ置く。すると、一次コイル11と二次コイル51の位置ずれ方向に応じて、いずれかもしくは複数のLED22a〜22dが点灯する。そして、点灯しているLED22a〜22dに従って、受電器50を動かす。しかし、受電器50のように、筐体内の中央ではなく端部寄りの位置に二次コイル51が設けられている場合、開口部23の区域内に一次コイル11と二次コイル51の相対位置が最適位置となる点が存在しない場合がある。
【0031】
図5(a)に示す位置に送電器10をスライドさせている場合、開口部23の区域内のどの位置に受電器50を配置しても、一次コイル11に対して二次コイル51は、図中の矢印Bの方向にずれた状態となる。そのため、図中の矢印Aの方向に受電器50を動かすように、LED22dを点灯させて報知する。このように、開口部23の区域内で位置合わせができないときは、LED22dにより方向指示があった方向と逆の方向(図中の矢印Bの方向)に送電器10をスライドさせる。図5(b)は、送電器10をLED22dにより方向指示があった方向と逆の方向(図中の矢印Bの方向)にスライドさせたときの状態を示すものである。これにより、フレーム21の開口部23に対する一次コイル11の位置が変化し、位置合わせが可能となる。
【0032】
以上説明したように、フレーム21には送電器10の表面と対向する位置に開口部23が設けられている。そして、送電器10とフレーム21は互いにスライド可能に連結している。このような構成にすることで、受電器30、40、50が載せ置かれる範囲である開口部23の区域に対して、電力伝送可能な実質の区域を広げることができる。
【0033】
次に、二次コイル31の位置検出動作の一例について詳しく説明する。
【0034】
図6に本発明のワイヤレス電力伝送装置のブロック図を示す。送電器10は、一次コイル11、一次共振コンデンサ12、駆動回路13、平滑コンデンサ14、励振コイル15、パルス生成回路16、制御回路17、検出回路18、検出コイル19a〜19d、LED22a〜22dを備える。また、受電器30は、二次コイル31、二次共振コンデンサ32、検出用コンデンサ33、整流回路34、平滑コンデンサ35、スイッチ36、負荷37を備える。
【0035】
まず、送電器10の構成について説明する。駆動回路13には、直流電源DCから直流電圧Vinが供給される。駆動回路13の入力端には、平滑コンデンサ14が接続されており、駆動回路13の出力端には、一次コイル11と一次共振コンデンサ12が直列接続されている。駆動回路13は、一次コイル11と一次共振コンデンサ12に交流電力を供給する。一例として、駆動回路13はフルブリッジ回路やハーフブリッジ回路などにより構成される。励振コイル15には、パルス生成回路16よりパルス信号が供給される。駆動回路13やパルス生成回路16の動作は、一例としてマイコンなどで構成される制御回路17により制御される。また、検出コイル19a〜19dに励起される検出信号は、検出回路18に供給される。検出回路18は、各検出信号の強度に応じたパルス幅を有する信号を生成する。制御回路17は、検出回路18から供給される各信号を比較、演算し、一次コイル11に対する二次コイル31の位置を求める。さらに、制御回路17は、求めた二次コイル31の位置に応じて、いずれかもしくは複数のLED22a〜22dを点灯させる。
【0036】
次に、受電器30の構成について説明する。二次コイル31は、電磁誘導作用により一次コイル11から電力を受電する。二次コイル31の両端には、二次共振コンデンサ32を介して検出用コンデンサ33が接続されている。検出用コンデンサ33に印加される電圧は、整流回路34により整流される。整流回路34の出力端には、平滑コンデンサ35が接続されている。平滑コンデンサ35は、整流回路34の出力電圧のリプルを除去するものである。また、整流回路34の出力端には、スイッチ36を介して二次電池などの負荷37が接続されている。スイッチ36の動作は、一例としてマイコンなどで構成される制御回路(図示せず)により制御される。負荷37は、スイッチ36により受電器30の回路から切り離すことができる。二次コイル31が得た電力を負荷37に供給する場合は、スイッチ36が閉じられ、負荷37に電圧が印加される。
【0037】
検出用コンデンサ33の容量は、二次共振コンデンサ32の容量よりはるかに小さくなるように設計する。これにより、スイッチ36による負荷接続時の低負荷インピーダンス状態において、二次共振コンデンサ32と二次コイル31との共振器が構成される。一方、スイッチ36による負荷遮断時の高負荷インピーダンス状態においては、二次コイル31と二次共振コンデンサ32と検出用コンデンサ33との共振器が構成される。つまり、受電器30はデュアル共振器になっている。以下、二次コイル31と二次共振コンデンサ32と検出用コンデンサ33で構成される共振回路の共振周波数を検出用共振周波数fdとする。
【0038】
図7は、本発明の一次コイル11、励振コイル15、検出コイル19a〜19d、二次コイル31の位置関係を示す概略図である。一次コイル11、励振コイル15、検出コイル19a〜19dは、送電器10の中に内蔵されている。一次コイル11、励振コイル15、検出コイル19a〜19d、二次コイル31はそれぞれ平面で薄型の構造となっている。送電器10の上面と一次コイル11の巻回面は略平行になりように配置されている。また、一次コイル11の巻回面と二次コイル31の巻回面は、それぞれ対向するように配置されている。また、一次コイル11、励振コイル15の中心軸は略一致するように配置されている。各検出コイル19a〜19dの中心軸と励振コイル15の中心軸間の距離は、略同一である。また、隣り合う検出コイル、すなわち検出コイル19aと検出コイル19bおよび検出コイル19d、検出コイル19cと検出コイル19bおよび検出コイルの19dの中心軸間の距離も略同一である。言い換えると、対向する検出コイル19a、19cの中心軸間を結んだ線と、対向する検出コイル19b、19dの中心軸間を結んだ線とが直交するように各検出コイルが配置される。また、各検出コイル19a〜19dの外側にLED22a〜22dが配置される。
【0039】
一次コイル11と二次コイル31の相対位置の検知には、次のような方法を用いることが考えられる。所定のパルス幅を有するパルス信号を励振コイル15に供給すると、それに応じて検出用共振周波数fdで振動する電流が二次コイル31に流れる。そして、この電流により交流磁界が発生する。送電器10に設けられた検出コイル19a〜19dは、この交流磁界として発生するエコー信号を検出信号としてピックアップする。制御回路16は、各検出信号の相対強度を比較することにより、一次コイル11に対する二次コイル31の方位を演算して求めることができる。複数の検出コイル19a〜19dを一次コイル11の周囲に配置することで、一次コイル11の周囲におけるエコー信号の強度の分布を得ることができる。
【0040】
例えば、二次コイル31が検出コイル19b〜19dより検出コイル19aに一番近くに位置する場合、検出コイル19aでピックアップされる検出信号が一番大きくなる。このとき、検出コイル19aから見て一次コイル11の中心軸に対して対称位置にあるLED22cを点灯させることで、二次コイル21から見た一次コイル11の方向を認識することができる。また、二次コイル31が検出コイル19c〜19dの中間位置に一番近くに位置する場合、検出コイル19c、19dでピックアップされる各検出信号はほぼ等しくなるとともに、また、他の検出コイル19a、19bでピックアップされる検出信号より大きくなる。このとき、検出コイル19c、19dから見て一次コイル11の中心軸に対して対称位置にあるLED22aとLED22bを点灯させることで、二次コイル21から見た一次コイル11の方向を認識することができる。
【0041】
このように、二次コイル31の位置から見て、一次コイル11のある方向に位置するLEDを点灯させることで、ユーザーに二次コイル31を一次コイル11に向かって移動させるように方向誘導することが可能である。一次コイル11と二次コイル31の中心軸が略一致すると、各検出コイル19a〜19dでピックアップされる検出信号の強度がほぼ等しくなるので。このとき、すべてのLED22a〜22dを点灯させたり、LEDの色を変えたりするなどして報知することで、一次コイル11に対して二次コイル31が適切な位置に配置されたのを認識することができる。その後に、一次コイル11から二次コイル31に電力伝送などが行われる。なお、二次コイル31の位置検出の方法は、上記の方法に限定されるものではない。一次コイル11に対する二次コイル31の位置を検出できるのであれば、どのような方法を用いても構わない。また、LEDの点灯方法は、一次コイル11に対する二次コイル31の位置ずれ方向が認識できるのであれば、どのように変更しても構わない。
【0042】
また、位置検出の精度を上げるために、検出コイルを8個もしくは12個など増やして配置しても構わない。一次コイル11の周囲に配置するLEDの数は、方向を誘導するのに十分な数であればいくつ配置しても構わない。例えば、6個や8個のLEDを均等間隔に配置するなど、任意に選択することができる。また、LED22a〜22dは、フレーム21ではなく、送電器10上に配置してもよいし、フレーム21と送電器10の両方に配置するようにしてもよい。
【0043】
本実施例では、フレーム21に対して送電器10をスライドさせる構成としたが、送電器10を固定してフレーム21をスライドさせる構成にしても構わない。本発明のワイヤレス電力伝送装置は、フレーム21に開口部23を設け、その底面に位置する送電器10の上に受電器30、40、50を載せ置く構成を特徴としている。これにより、送電器10に振動や衝撃が与えられても、開口部23の側面で受電器30、40、50が滑り落ちるのを防止できる。このように、構造がシンプルなため振動に強く、車載などの用途に適している。また、電力伝送に用いる一次コイル11は一個しか設けられず、送電器10の筐体内に固定されるため、ある程度形状を二次コイル31、41、51より大きくすることができる。そのため、二次コイル31、41、51の位置ずれに対して、ある程度の範囲内では電力伝送の効率が大きく下がらない特性になる。そのため、位置合わせの許容差を広くとることができ、手動で送電器10と受電器30、40、50の位置合わせを行うのに適する。
【0044】
次に、図8に本発明の第2の実施例におけるワイヤレス電力伝送装置の概略図を示す。なお、上述した実施例と同じ機能を有する部位には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0045】
図8(a)に示すワイヤレス電力伝送装置は、フレーム21と送電器10の間を固定する固定手段と、フレーム21と送電器10の固定を一時的に解除して、スライド可能にする固定解除手段をさらに設けたものである。図8(b)は、固定手段をロックした状態における図8(a)のAA断面図である。また、図8(c)は、固定手段を解除した状態における図8(a)のAA断面図である。固定解除手段としてボタン26を、固定手段として板状歯車27、爪部29が設けられたカム部材28を備える。ボタン26とカム部材28はフレーム21に、板状歯車27は送電器10に設けられている。
【0046】
カム部材28は、爪部29と板状歯車27が係合する方向に付勢されている。一例として、カム部材28はバネなどの弾性部材により付勢される。ボタン26が押されていない状態においては、爪部29と板状歯車27が係合し、フレーム21と送電器10がロックされ、送電器10をスライドさせることができない。
ボタン26が押されるとカム部材28が回転する。すると、爪部29と板状歯車27が係合離脱するため、フレーム21と送電器10間のロックが解除される。そして、フレーム21に対して送電器10をスライドさせることが可能な状態となる。
ボタン26を離すと、ボタン26を押したときとは逆方向にカム部材28が回転する。すると、再度爪部29と板状歯車27が係合し、フレーム21と送電器10がロックされた状態となる。
【0047】
このように、通常は送電器10とフレーム21をロックして固定する。そして、必要に応じてロックを解除することで、一時的に送電器10またはフレーム21を移動可能にすることができる。いつも同じ受電器に対して電力伝送を行う場合、送電器10とフレーム21をロックしておけば、送電器10またはフレーム21をスライドさせて位置合わせを行う動作が不要になる。
【0048】
逆に、通常は送電器10とフレーム21をスライド可能な状態にしておく。そして、送電器10と受電器30、40、50の位置ずれ方向が送電器10のスライド方向において一致したのを検出したとき、フレーム21と送電器10を一時的にロックして固定するようにしてもよい。これにより、送電器10のスライド方向において、送電器10と受電器30、40、50の位置が最適位置に配置されたのを触覚的に認識することができる。例えば、固定手段として、フレーム21に被係合部を、送電器10に被係合部に挿入抜出可能に構成された係合部材を設ける。そして、送電器10と受電器30、40、50の位置ずれ方向が送電器10のスライド方向において一致したのを検出したとき、係合部材が被係合部に係合させればよい。
【符号の説明】
【0049】
10 送電器
11 一次コイル
12 一次共振コンデンサ
13 駆動回路
14 平滑コンデンサ
15 励振コイル
16 パルス生成回路
17 制御回路
18 検出回路
19a〜19d 検出コイル
21 フレーム
22a〜22d LED
26 ボタン
27 板状歯車
28 カム部材
29 爪部
30、40、50 受電器
31、41、51 二次コイル
32 二次共振コンデンサ
33 検出用コンデンサ
34 整流回路
35 平滑コンデンサ
36 スイッチ
37 負荷


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次コイルに対して電磁誘導により電力を供給する一次コイルが設けられた送電器と、該送電器の表面と対向する位置に開口部が設けられているフレームとを備え、
該送電器と該フレームは互いにスライド可能に連結していることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電器は、前記一次コイルに対する前記二次コイルの位置ずれ方向を検出する検出手段をさらに備える請求項1に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電器もしくは前記フレームは、前記一次コイルを挟んで前記フレームのスライド方向に少なくとも第1の一対の発光素子と、前記一次コイルを挟んで該スライド方向と水平垂直方向に少なくとも第2の一対の発光素子とをさらに備え、
前記の検出手段の検出結果に応じて、前記一次コイルに対する前記二次コイルの位置ずれ方向を各一対の発光素子のいずれかを点灯させることにより報知する請求項2に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項4】
前記フレームと前記送電器間を固定する固定手段と、前記フレームと前記送電器間を一時的にスライド可能にする固定解除手段を備える請求項2または3に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記フレームに設けられたカム部材と、前記送電器に設けられるとともに該カム部材に設けられた爪部と係合する板状歯車とから構成され、
前記固定解除手段は、該カム部材を回転させた場合に該爪部と該板状歯車を一時的に係合離脱する請求項4に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項6】
前記検出手段が一次コイルに対する二次コイル位置ずれ方向が前記スライド方向において一致したのを検出したとき、前記フレームと前記送電器間を一時的に固定する固定手段を備える請求項2または3に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項7】
前記固定手段は、前記フレームに設けられた被係合部と、前記送電器に設けられるとともに該被係合部に挿入抜出可能に構成された係合部材と、から構成される請求項6に記載のワイヤレス電力伝送装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−90352(P2013−90352A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225568(P2011−225568)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)