説明

ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造

【課題】コストを抑えつつ汎用性のあるワイヤーハーネスの分岐部の保護構造体を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1は、ワイヤーハーネス100の幹線101から支線102を分岐する分岐部103と、分岐部103までの幹線101を外装する第1コルゲートチューブ11を有し、第1コルゲートチューブ11は、略円筒状に形成されるとともに、第1コルゲートチューブ11の端部において、軸方向Lに沿って切り欠き部14が形成され、切り欠き部14には支線102がはまり込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造に関し、特に汎用性を有するワイヤーハーネスの分岐部の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車に配索するワイヤーハーネスは、円筒状のコルゲートチューブにより外装することで、他の部材との干渉による損傷を防止している。
また、ワイヤーハーネスが幹線から支線に分岐する分岐部において、支線が干渉してコルゲートチューブを外装することができないことから、分岐部用の別部材を設けることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、T字型の分岐部における損傷を防止するために、分岐部の形状に合わせたT字型の継手部材を設けている。
【特許文献1】特開平10−84611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、分岐部の保護のために別部材を設ける場合には、部品点数の増加を招き、コストアップにつながるという問題がある。また、継手部材は予め分岐部に対応する形状で作製する必要があり、分岐部の形状が異なる場合、例えば1つの分岐部において支線が複数方向に分岐している場合等には対応できない。このため、従来のT字型の継手部材は汎用性が無いという問題がある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、コストを抑えつつ汎用性のあるワイヤーハーネスの分岐部の保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解消するために、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、ワイヤーハーネスの幹線から支線を分岐する分岐部と、前記分岐部までの前記幹線を外装する第1コルゲートチューブを有し、
前記第1コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、前記第1コルゲートチューブの端部において、軸方向に沿って切り欠き部が形成され、前記切り欠き部には前記支線がはまり込むことを特徴とする。
【0005】
本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、好ましくは前記幹線における前記分岐部から先端側を外装する第2コルゲートチューブを有し、前記第2コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、前記第2コルゲートチューブの端部から前記第1コルゲートチューブの前記切り欠き部に対応する突起部が形成され、前記切り欠き部と前記突起部とが合わされて前記幹線の周囲を略覆うように構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、好ましくはコルゲートチューブの一部で形成されて前記切り欠き部に対応した覆い部を有し、前記切り欠き部と前記覆い部とが合わされて前記幹線の周囲を略覆うように構成されていることを特徴とする。
本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、好ましくは前記支線を外装する第3コルゲートチューブを有し、前記第3コルゲートチューブの先端は複数の股部を有するように形成され、前記複数の股部が、前記幹線の周囲を覆うように留め付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コストを抑えつつ汎用性のあるワイヤーハーネスの分岐部の保護構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造の好ましい実施形態を示しており、図1では、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1がワイヤーハーネス100に対して取り付けられる前の状態を示し、図2では、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1がワイヤーハーネス100に対して取り付けられた後の状態を示している。
【0009】
図1に示すように、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1は、第1コルゲートチューブ11と、第2コルゲートチューブ12を有している。ワイヤーハーネス100は、幹線101と、支線(枝線とも言う)102と、ワイヤーハーネス100の幹線101から支線102を分岐する分岐部103を有する。このワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1は、分岐部103と、分岐部103までの幹線101を外装することにより保護する。
【0010】
第1コルゲートチューブ11は、略円筒状に形成されており、分岐部103に至る幹線101の部分104を外装して覆うようになっている。第1コルゲートチューブ11の端部13には、軸方向Lに沿って切り欠き部14が形成されている。この切り欠き部14には支線102がはまり込むようになっている。
【0011】
これに対して、第2コルゲートチューブ12は、幹線101における分岐部103から先端側の部分105側を外装して覆うようになっている。
第2コルゲートチューブ12は、略円筒状に形成されるとともに、第2コルゲートチューブ12の端部15から突起部16が軸方向Lに沿って形成されている。この突起部16は、第1コルゲートチューブ11の切り欠き部14に対応する形状を有しており、切り欠き部14と突起部16とが合わされて幹線101の周囲を略覆うように構成されている。
【0012】
次に、図1と図2を参照して、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1の取付手順を説明する。
図1に示すように、第1コルゲートチューブ11がワイヤーハーネス100の幹線101に対して、矢印P1方向に挿入される。これにより、図2に示すように、幹線101の部分104が第1コルゲートチューブ11により外装されて覆われると共に、支線102が切り欠き部14内に位置される。次に、図1に示すように、第2コルゲートチューブ12がワイヤーハーネス100の幹線101に対して、矢印P2方向に挿入される。
【0013】
これにより、図2に示すように、幹線101の部分105が第2コルゲートチューブ12により外装されて覆われる。しかも、第2コルゲートチューブ12の突起部16が切り欠き部14に合わされることにより、分岐部103の周辺は包囲することができ、分岐部103の保護作業が効率良く行える。
その後、必要に応じて、図2に示す粘着テープ20が突起部16と切り欠き部14の周囲に巻き付けられて、第1コルゲートチューブ11と第2コルゲートチューブ12を固定する。
【0014】
図3は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1が、別の構造のワイヤーハーネス100の分岐部103Bを保護する例を示している。
図3に示す例では、分岐部103Bでは、幹線101から3本の支線102Bが分岐されている。3本の支線102Bは切り欠き部14にはめ込まれている。このように、分岐形状が異なる場合であっても、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1は分岐部103Bを保護することができる。
【0015】
図4は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造の別の実施形態を示している。図4に示すワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1Bは、第1コルゲートチューブ11と別のコルゲートチューブ30と、さらに別部材の覆い部31を有している。
第1コルゲートチューブ11は図1に示す第1コルゲートチューブ11と同様のものである。別のコルゲートチューブ30は、通常の形状の端部32を有する。
【0016】
別部材の覆い部31は、コルゲートチューブの一部を切り取ることで形成されており、別部材の覆い部31の形状は、第1コルゲートチューブ11の切り欠き部14の形状に対応している。このため、切り欠き部14と覆い部31とが合わされて、幹線101の周囲を略覆うように構成されている。第1コルゲートチューブ11と覆い部31とによって、分岐部103の周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部103の保護をより確実にすることができる。
【0017】
図5と図6は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造のさらに別の実施形態を示している。
図5と図6では、図1に示すワイヤーハーネスの分岐部の保護構造1の第1コルゲートチューブ11と第2コルゲートチューブ12が、幹線101と分岐部103を覆っている。さらに、支線102には、この支線102を外装するために第3コルゲートチューブ40が用いられている。第3コルゲートチューブ40の先端41は二股部42,43に形成されている。
【0018】
図6に示すように、この二股部42,43が、幹線101の周囲を覆うように第1コルゲートチューブ11の外周面に対して、すなわち幹線101の周囲に対応する位置に留め付けられている。第3コルゲートチューブ40が、分岐部103において支線102側から幹線101側まで覆うように形成されているので、支線102の保護ができ、分岐部103の周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部103の保護をより確実にすることができる。
【0019】
図7(A)は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造のさらに別の実施形態を示している。
図7(A)に示すワイヤーハーネス100Bは、幹線101と2本の支線102,102Cを有しており、分岐部103Cはほぼ十字型に形成されている。支線102には、図6に示す第3コルゲートチューブ40が外装されているが、もう1つの支線102Cには、別の第3コルゲートチューブ49が外装されている。第3コルゲートチューブ49の二股部47,48は、第3コルゲートチューブ40の二股部42,43に対してそれぞれ重ねるようにして固定されている。
これにより、支線102と支線102Cの保護ができ、分岐部103Cの周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部103の保護をより確実にすることができる。
第3コルゲートチューブは、このような十字型の分岐部103Cの他に、図7(B)に示すように3本の支線102,102C、10Dを有する場合や、図7(C)に示すように4本の支線102,102C、10D、102Eを有する場合であっても適用できる。
【0020】
図8は、本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造のさらに別の実施形態を示している。
図8では、第3コルゲートチューブ50の先端部51が、三つ股部52,53,54を有している。1つの分岐部103において2以上の支線102,102Bがある場合に、例えば2つの股部52,54が第1コルゲートチューブ11の外周面に固定されることで分岐部103を保護し、残りの1つの股部53が第1コルゲートチューブ11の外周面に固定されることで、第3コルゲートチューブ50の位置決めが行える。
【0021】
本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、ワイヤーハーネスの幹線から支線を分岐する分岐部と、分岐部までの幹線を外装する第1コルゲートチューブを有し、第1コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、第1コルゲートチューブの端部において、軸方向に沿って切り欠き部が形成され、切り欠き部には支線がはまり込む。
【0022】
すなわち、第1コルゲートチューブの端部に形成された切り欠き部にワイヤーハーネスの支線がはまり込むように構成されているので、幹線の分岐部の近傍は、幹線用の第1コルゲートチューブによって覆われる。これにより、別部品を設けることなく分岐部を保護できるため、従来よりもコストを抑えることができる。また、第1コルゲートチューブには切り欠き部が形成されているだけなので、分岐部の形状に関わらずに対応することができ、汎用性を持たせることができる。
【0023】
本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造は、幹線における分岐部から先端側を外装する第2コルゲートチューブを有し、第2コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、第2コルゲートチューブの端部から第1コルゲートチューブの切り欠き部に対応する突起部が形成され、切り欠き部と突起部とが合わされて幹線の周囲を略覆うように構成されている。
【0024】
これにより、第2コルゲートチューブの突起部と第1コルゲートチューブの切り欠き部とを合わせることで、幹線の周囲を略覆うように構成しているので、分岐部の周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部の保護をより確実にすることができる。
【0025】
コルゲートチューブの一部で形成されて切り欠き部に対応した覆い部を有し、切り欠き部と覆い部とが合わされて幹線の周囲を略覆うように構成されている。
これにより、第1コルゲートチューブと覆い部とによって、分岐部の周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部の保護をより確実にすることができる。
【0026】
支線を外装する第3コルゲートチューブを有し、第3コルゲートチューブの先端は複数の股部を有するように形成され、複数の股部が、幹線の周囲を覆うように留め付けられている。
これにより、第3コルゲートチューブが、分岐部において支線側から幹線側まで覆うように形成されているので、分岐部の周辺を確実に包囲することができる。従って、分岐部の保護をより確実にすることができる。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造の好ましい実施形態を示しており、ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造がワイヤーハーネスに対して取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
【図2】ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造がワイヤーハーネス100に対して取り付けられた後の状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すワイヤーハーネスの分岐部の保護構造の別の適用例を示す図である。
【図4】本発明のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造の別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ワイヤーハーネスの分岐部の保護構造
11 第1コルゲートチューブ
12 第2コルゲートチューブ
14 切り欠き部
16 突起部
100 ワイヤーハーネス
101 幹線
102 支線
103 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスの幹線から支線を分岐する分岐部と、前記分岐部までの前記幹線を外装する第1コルゲートチューブを有し、
前記第1コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、前記第1コルゲートチューブの端部において、軸方向に沿って切り欠き部が形成され、前記切り欠き部には前記支線がはまり込むことを特徴とするワイヤーハーネスの分岐部の保護構造。
【請求項2】
前記幹線における前記分岐部から先端側を外装する第2コルゲートチューブを有し、
前記第2コルゲートチューブは、略円筒状に形成されるとともに、前記第2コルゲートチューブの端部から前記第1コルゲートチューブの前記切り欠き部に対応する突起部が形成され、前記切り欠き部と前記突起部とが合わされて前記幹線の周囲を略覆うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造。
【請求項3】
コルゲートチューブの一部で形成されて前記切り欠き部に対応した覆い部を有し、
前記切り欠き部と前記覆い部とが合わされて前記幹線の周囲を略覆うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造。
【請求項4】
前記支線を外装する第3コルゲートチューブを有し、
前記第3コルゲートチューブの先端は複数の股部を有するように形成され、前記複数の股部が、前記幹線の周囲を覆うように留め付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載のワイヤーハーネスの分岐部の保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−232533(P2009−232533A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73120(P2008−73120)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】