ワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、ワイヤ吊下式掘削機において、掘削機の吊下量を微調整するための制御装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、ワイヤ吊下式地盤掘削機の１種として、大深度の溝を掘削できるハイドロフレーズ掘削機がある。このものの基本的構造は図３に示すように、クローラクレーンのベースマシン１に設けたブーム１ａと、ブーム１ａの先端に垂下され、かつウインチ２により繰り出される吊下用ワイヤ３と、吊下用ワイヤ３の先端にシーブブロック４を介して吊下された掘削機本体５とからなっている。掘削機本体５はガイドフレーム５ａと、その先端に設けた油圧駆動式のカッタードラム５ｂ及び図示しない吸引ポンプ、揚泥ホースなどを備えている。このように構成された掘削機本体５は、吊下用ワイヤ３の繰出し量に応じて昇降され、カッタードラム５ｂにより掘削作業を行なう。
【０００３】しかしながら、吊下用ワイヤ３の繰出し量をウインチ２で調整しようとすると、その調整可能な範囲が１．５m ／min 〜２．５m ／min の程度であって、微速調整が出来ず、安定，定速での掘削に支障を来し、地質の変化によるコントロールが困難となる。
【０００４】このために、例えば図４に示すように掘削機本体５側に微速調整用の油圧シリンダ６を取り付けたり、図５に示すようにブーム１ａ側に微速調整用油圧シリンダ７を取り付けて前記吊下用ワイヤ３の尻手側に連結する構造が提案されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれの構造にあっても油圧シリンダを装備するために、構造が複雑化かつ大型化し、ブーム１ａの荷重負担が大きくなる。特に図４の構造では、これを駆動するための油圧ホースを繰り出さなければならず、大深度の溝の掘削に対応して油圧ホースも長くする必要があって、長い油圧ホースの収納、繰出機構が複雑化するという問題がある。また、いずれの構造であっても、地質の変化によって掘削機本体５の掘削スラスト荷重を微速調整することが困難である。
【０００６】この発明は以上の問題を解決するものであって、その目的は、装置が複雑化，大型化することなく、掘削時における微速調整が出来るワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置を提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、この発明は、クレーンなどの吊下装置に吊下用ワイヤを介して吊下される掘削機本体を備えたワイヤ吊下式掘削機において、前記吊下用ワイヤの尻手側に連結されたシーブブロックと、前記吊下装置側に設けた固定シーブブロックと、両シーブブロックの間にかけ回されて両者間を連結し、かつ一端を前記一方のシーブブロック側に連結された調整用ワイヤと、該調整用ワイヤの他端側に連結された速度制御用ウインチとを備えたものである。
【０００８】
【作用】以上の構成によれば、吊下用ワイヤとは別に速度制御用ウインチによる調整用ワイヤの繰出し速度に応じて掘削速度及び掘削スラスト荷重のコントロールが出来る。
【０００９】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図１はこの発明に係るワイヤ吊下式ハイドロフレーズ掘削機を示すものである。なお、図における従来と同一部分には同一符号を付し、異なる部分または新たに付加する部分に付いてのみ異なる符号を付して説明を行う。
【００１０】すなわち、このハイドロフレーズ掘削機は、従来とほぼ同様に、クローラクレーンのベースマシン１に設けたブーム１ａと、ブーム１ａの先端に垂下され、かつウインチ２により繰り出される吊下用ワイヤ３と、吊下用ワイヤ３の先端にシーブブロック４を介して吊下された掘削機本体５を備えている。掘削機本体５はガイドフレーム５ａと、その先端に設けた油圧駆動式のカッタードラム５ｂ及び図示しない吸引ポンプ、揚泥ホースなどを備えている。
【００１１】また、以上の構成において吊下量制御装置は次のように構成されている。すなわち、吊下用ワイヤ３の尻手側は従来と異なり、シーブブロック２０に連結されている。一方ブーム１ａ側には固定シーブブロック２１が吊下され、両シーブブロック２０，２１間には図２R>２に示すように、調整用ワイヤ２２が多数段かけ回され、両シーブブロック２０，２１間の長さを調整可能に連結している。この調整用ワイヤ２２の一端は固定シーブブロック２１に固定されているとともに、他端側は固定シーブブロック２１からブーム１ａに沿って引き出され、ベースマシン１の先端側に設置された速度制御用微速ウインチ２３に繰出し及び巻取り可能に接続されている。
【００１２】以上の構成において、図の掘削機本体５を吊り上げた状態から地盤Ｅの掘削溝孔Ｅ1 に供給するのは、ウインチ２の繰出し動作に応じて吊下用ワイヤ３を繰り出すことによって行われる。この時点では微速ウインチ２３が最大限調整用ワイヤ２２を巻取、両シーブブロック２０，２１間は最接近した状態である。
【００１３】掘削機本体５が溝孔Ｅ1 内に没入し、カッター３ｂによる掘削が開始された時点から微速ウインチ２３を動作させてその掘削動作に応じて順次調整用ワイヤ２２を繰り出す事で掘削速度並びに掘削スラスト荷重のコントロールを行うことができる。
【００１４】調整用ワイヤ２２を繰出し切った時点で、掘削機本体５の掘削動作を一時停止し、微速ウインチ２３によるワイヤ２２の巻取作業とウインチ２による吊下用ワイヤ３の繰出し作業を連繋して行えば、再度掘削作業及びこれに連動する調整用ワイヤ２２の繰出し作業を行うことができる。
【００１５】
【発明の効果】以上実施例によって詳細に説明したように、この発明によるワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置にあっては、吊下用ワイヤとは別に速度制御用ウインチによる調整用ワイヤの繰出し速度に応じて掘削速度及び掘削スラスト荷重コントロールが出来、従来の油圧シリンダにより掘削速度及び掘削スラスト荷重コントロールを行うのに比べて、機構が小型かつ簡素化され、安価に出来るとともに、クレーンなどの吊下装置に対する荷重負担も小さなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明によるハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【図２】図１のＡ部を拡大して示す説明図である。
【図３】従来のハイドロフレーズ掘削機の基本構成を示す説明図である。
【図４】従来の調整用油圧シリンダを掘削機本体に備えたハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【図５】従来の調整用油圧シリンダをブーム側に備えたハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【符号の説明】
１ ベースマシン
１ａ ブーム
３ 吊下用ワイヤ
５ 掘削機本体
２０ シーブブロック
２１ 固定側シーブブロック
２２ 調整用ワイヤ
２３ 微速ウインチ（速度制御用ウインチ）
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、ワイヤ吊下式掘削機において、掘削機の吊下量を微調整するための制御装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、ワイヤ吊下式地盤掘削機の１種として、大深度の溝を掘削できるハイドロフレーズ掘削機がある。このものの基本的構造は図３に示すように、クローラクレーンのベースマシン１に設けたブーム１ａと、ブーム１ａの先端に垂下され、かつウインチ２により繰り出される吊下用ワイヤ３と、吊下用ワイヤ３の先端にシーブブロック４を介して吊下された掘削機本体５とからなっている。掘削機本体５はガイドフレーム５ａと、その先端に設けた油圧駆動式のカッタードラム５ｂ及び図示しない吸引ポンプ、揚泥ホースなどを備えている。このように構成された掘削機本体５は、吊下用ワイヤ３の繰出し量に応じて昇降され、カッタードラム５ｂにより掘削作業を行なう。
【０００３】しかしながら、吊下用ワイヤ３の繰出し量をウインチ２で調整しようとすると、その調整可能な範囲が１．５m ／min 〜２．５m ／min の程度であって、微速調整が出来ず、安定，定速での掘削に支障を来し、地質の変化によるコントロールが困難となる。
【０００４】このために、例えば図４に示すように掘削機本体５側に微速調整用の油圧シリンダ６を取り付けたり、図５に示すようにブーム１ａ側に微速調整用油圧シリンダ７を取り付けて前記吊下用ワイヤ３の尻手側に連結する構造が提案されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれの構造にあっても油圧シリンダを装備するために、構造が複雑化かつ大型化し、ブーム１ａの荷重負担が大きくなる。特に図４の構造では、これを駆動するための油圧ホースを繰り出さなければならず、大深度の溝の掘削に対応して油圧ホースも長くする必要があって、長い油圧ホースの収納、繰出機構が複雑化するという問題がある。また、いずれの構造であっても、地質の変化によって掘削機本体５の掘削スラスト荷重を微速調整することが困難である。
【０００６】この発明は以上の問題を解決するものであって、その目的は、装置が複雑化，大型化することなく、掘削時における微速調整が出来るワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置を提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、この発明は、クレーンなどの吊下装置に吊下用ワイヤを介して吊下される掘削機本体を備えたワイヤ吊下式掘削機において、前記吊下用ワイヤの尻手側に連結されたシーブブロックと、前記吊下装置側に設けた固定シーブブロックと、両シーブブロックの間にかけ回されて両者間を連結し、かつ一端を前記一方のシーブブロック側に連結された調整用ワイヤと、該調整用ワイヤの他端側に連結された速度制御用ウインチとを備えたものである。
【０００８】
【作用】以上の構成によれば、吊下用ワイヤとは別に速度制御用ウインチによる調整用ワイヤの繰出し速度に応じて掘削速度及び掘削スラスト荷重のコントロールが出来る。
【０００９】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図１はこの発明に係るワイヤ吊下式ハイドロフレーズ掘削機を示すものである。なお、図における従来と同一部分には同一符号を付し、異なる部分または新たに付加する部分に付いてのみ異なる符号を付して説明を行う。
【００１０】すなわち、このハイドロフレーズ掘削機は、従来とほぼ同様に、クローラクレーンのベースマシン１に設けたブーム１ａと、ブーム１ａの先端に垂下され、かつウインチ２により繰り出される吊下用ワイヤ３と、吊下用ワイヤ３の先端にシーブブロック４を介して吊下された掘削機本体５を備えている。掘削機本体５はガイドフレーム５ａと、その先端に設けた油圧駆動式のカッタードラム５ｂ及び図示しない吸引ポンプ、揚泥ホースなどを備えている。
【００１１】また、以上の構成において吊下量制御装置は次のように構成されている。すなわち、吊下用ワイヤ３の尻手側は従来と異なり、シーブブロック２０に連結されている。一方ブーム１ａ側には固定シーブブロック２１が吊下され、両シーブブロック２０，２１間には図２R>２に示すように、調整用ワイヤ２２が多数段かけ回され、両シーブブロック２０，２１間の長さを調整可能に連結している。この調整用ワイヤ２２の一端は固定シーブブロック２１に固定されているとともに、他端側は固定シーブブロック２１からブーム１ａに沿って引き出され、ベースマシン１の先端側に設置された速度制御用微速ウインチ２３に繰出し及び巻取り可能に接続されている。
【００１２】以上の構成において、図の掘削機本体５を吊り上げた状態から地盤Ｅの掘削溝孔Ｅ1 に供給するのは、ウインチ２の繰出し動作に応じて吊下用ワイヤ３を繰り出すことによって行われる。この時点では微速ウインチ２３が最大限調整用ワイヤ２２を巻取、両シーブブロック２０，２１間は最接近した状態である。
【００１３】掘削機本体５が溝孔Ｅ1 内に没入し、カッター３ｂによる掘削が開始された時点から微速ウインチ２３を動作させてその掘削動作に応じて順次調整用ワイヤ２２を繰り出す事で掘削速度並びに掘削スラスト荷重のコントロールを行うことができる。
【００１４】調整用ワイヤ２２を繰出し切った時点で、掘削機本体５の掘削動作を一時停止し、微速ウインチ２３によるワイヤ２２の巻取作業とウインチ２による吊下用ワイヤ３の繰出し作業を連繋して行えば、再度掘削作業及びこれに連動する調整用ワイヤ２２の繰出し作業を行うことができる。
【００１５】
【発明の効果】以上実施例によって詳細に説明したように、この発明によるワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置にあっては、吊下用ワイヤとは別に速度制御用ウインチによる調整用ワイヤの繰出し速度に応じて掘削速度及び掘削スラスト荷重コントロールが出来、従来の油圧シリンダにより掘削速度及び掘削スラスト荷重コントロールを行うのに比べて、機構が小型かつ簡素化され、安価に出来るとともに、クレーンなどの吊下装置に対する荷重負担も小さなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明によるハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【図２】図１のＡ部を拡大して示す説明図である。
【図３】従来のハイドロフレーズ掘削機の基本構成を示す説明図である。
【図４】従来の調整用油圧シリンダを掘削機本体に備えたハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【図５】従来の調整用油圧シリンダをブーム側に備えたハイドロフレーズ掘削機の説明図である。
【符号の説明】
１ ベースマシン
１ａ ブーム
３ 吊下用ワイヤ
５ 掘削機本体
２０ シーブブロック
２１ 固定側シーブブロック
２２ 調整用ワイヤ
２３ 微速ウインチ（速度制御用ウインチ）
【特許請求の範囲】
【請求項１】 クレーンなどの吊下装置に吊下用ワイヤを介して吊下される掘削機本体を備えたワイヤ吊下式掘削機において、前記吊下用ワイヤの尻手側に連結されたシーブブロックと、前記吊下装置側に設けた固定シーブブロックと、両シーブブロックの間にかけ回されて両者間を連結し、かつ一端を前記一方のシーブブロック側に連結された調整用ワイヤと、該調整用ワイヤの他端側に連結された速度制御用ウインチとを備えたことを特徴とするワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置。
【請求項１】 クレーンなどの吊下装置に吊下用ワイヤを介して吊下される掘削機本体を備えたワイヤ吊下式掘削機において、前記吊下用ワイヤの尻手側に連結されたシーブブロックと、前記吊下装置側に設けた固定シーブブロックと、両シーブブロックの間にかけ回されて両者間を連結し、かつ一端を前記一方のシーブブロック側に連結された調整用ワイヤと、該調整用ワイヤの他端側に連結された速度制御用ウインチとを備えたことを特徴とするワイヤ吊下式掘削機の吊下量制御装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【特許番号】第２７１３０４５号
【登録日】平成９年（１９９７）１０月３１日
【発行日】平成１０年（１９９８）２月１６日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平４−２２７４７０
【出願日】平成４年（１９９２）８月２６日
【公開番号】特開平６−７３７５６
【公開日】平成６年（１９９４）３月１５日
【出願人】（００００００５４９）株式会社大林組 (1,758)
【参考文献】
【文献】実開 平４−１７４８９（ＪＰ，Ｕ）
【文献】実開 平４−１７４４４（ＪＰ，Ｕ）
【文献】実開 平４−１７４４５（ＪＰ，Ｕ）
【登録日】平成９年（１９９７）１０月３１日
【発行日】平成１０年（１９９８）２月１６日
【国際特許分類】
【出願日】平成４年（１９９２）８月２６日
【公開番号】特開平６−７３７５６
【公開日】平成６年（１９９４）３月１５日
【出願人】（００００００５４９）株式会社大林組 (1,758)
【参考文献】
【文献】実開 平４−１７４８９（ＪＰ，Ｕ）
【文献】実開 平４−１７４４４（ＪＰ，Ｕ）
【文献】実開 平４−１７４４５（ＪＰ，Ｕ）
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