ワンタッチ式パッド装着機構

【課題】 簡素な構造のアンカピンの採用によって、外部からの障害物等による損傷の虞れもなくスライド脱着が簡便で、安全かつ作業効率も高いパッド装着機構を提供する。
【解決手段】 少なくとも下部側に位置する可動アンカピン6を、板面直交方向に進退自在で180°の対向位置にてロック可能に回動自在に構成するとともに、アンカピン6における対向位置のパッドアッセンブリ5端部との当接面をロック面6Cと傾斜面6Bに形成したことにより、アンカピン6内部にパッドアッセンブリ5の移動を阻止するスプリング7やプレート8等のロック機構を収容できて機構が外部に露出せずに、損傷の虞れもなく、パッドアッセンブリ5の交換時等には、下部側に位置する可動アンカピン6を回動するだけで、簡便にパッドアッセンブリ5を落下させずに移動させたり移動を阻止できるので、安全かつ円滑にパッドアッセンブリ5の保守や交換作業が簡便に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキアーム先端部に軸着されるパッドホルダの蟻溝にパッドアッセンブリが軸方向にスライド装着され、前記パッドホルダに装着されたアンカピンがパッドアッセンブリの板面に直交しかつ軸方向両側端部に当接して抜け止めされるワンタッチ式パッド装着機構に関する。ブレーキを搭載する車両分野、特に鉄道用キャリパブレーキにおけるパッドアッセンブリの交換をワンタッチ化することにより、作業効率のアップと安全性の確保を図る。
【背景技術】
【0002】
従来、特に鉄道車両用のディスクブレーキでは、ブレーキが取り付けられるばね上とディスクロータが取り付けられるばね下との相対移動が大きいことから、これに対応できる機構として一般的には大きな相対移動に容易に適応できるリンクの連結による梃子式のキャリパブレーキが知られている。このような梃子式のキャリパブレーキにおいては、ブレーキアームの先端部に軸着したパッドホルダにパッドアッセンブリを装着する必要があり、一般的にパッドアッセンブリをパッドホルダに装着する際には、パッドアッセンブリを支えながら固定部材であるアンカーブロックを装着し、その後、アンカーブロックが外れたりパッドアッセンブリが落下しないように、アンカーブロックを押さえながらアンカーボルトを締結していた。
【0003】
しかしながら、重量の大きい鉄道車両用のディスクブレーキでは、アンカーブロックを押さえながらのアンカーボルトの脱着や、パッドアッセンブリを支えながらのアンカーブロックの脱着は、面倒で危険な同時作業を伴い、連結車両全体におけるパッドアッセンブリの交換作業は、より困難で所要時間も膨大となり、作業者には大変な負担となっていた。そのようなことから、パッドホルダにパッドアッセンブリをスライドさせて装着した後、押込みピンとスペーサを用いて簡便にパッドアッセンブリをパッドホルダに固定するようにしたものが提案されている。そして、そのようなパッドホルダにパッドアッセンブリをスライドさせて装着するものが提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−2853号公報(特許請求の範囲等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されたディスクブレーキのパッド保持装置を図10を用いて簡単に説明すると、図10(A)(B)(C)に示すように、パッドホルダ102に蟻溝102aと蟻キー130aによってスライドさせて取り付けられたパッド130の一端側(図10(A)の図面下方)が、軸113を中心にUばね125によってパッド130側に揺動付勢された落下防止部材120により規制されて脱落スライドが防止され、図10(D)に示すように、パッド130の他端側が、スリット107から蟻溝側に突出するガタ付き防止ばね109によって弾力的に抑止されてパッド130のスライド方向の脱落およびガタが吸収されるとともに、さらに、図10(A)に示すように、前記軸113を揺動中心とするアーム115a、115aの各先端に設置されたマグネット115、115が、パッドホルダ102における通孔116、116を通過してパッド130の裏面に吸着されて、パッド130の枕木方向(図10(C)の上下方向)のガタが吸収されるように構成されている。
【0006】
これらの構成により、スライド方式によるパッドのパッドホルダへの装着後のスライド方向および枕木方向のガタを効果的に吸収できるものとなった。しかしながら、前記従来のパッド保持装置では、特にパッドの枕木方向のガタの吸収のために軸113やアーム115aさらにはマグネット115等多数の外部に露出する部品を要するため、それらの機構が大型化して複雑な上に、走行中には外部からの障害物等によりそれらの部品が損傷する危険に絶えずさらされていた。
【0007】
そこで本発明は、前記従来のスライド装着によるワンタッチ式パッド装着機構における諸課題を解決して、簡素な構造のアンカピンの採用によって、外部からの障害物等による損傷の虞れもなく、スライド脱着が簡便で、安全かつ作業効率も高いワンタッチ式パッド装着機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、ブレーキアーム先端部に軸着されるパッドホルダの蟻溝にパッドアッセンブリが軸方向にスライド装着され、前記パッドホルダに装着されたアンカピンがパッドアッセンブリの板面に直交しかつ軸方向両側端部に当接して抜け止めされるワンタッチ式パッド装着機構において、少なくとも下部側に位置する前記アンカピンは、前記板面直交方向に進退自在で180°の対向位置にてロック可能に回動自在に構成するとともに前記アンカピンにおける対向位置のパッドアッセンブリ端部との当接面をそれぞれパッドアッセンブリの移動を阻止するロック面およびパッドアッセンブリの移動を可能にする傾斜面に形成した可動アンカピンにて構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記パッドホルダに装着された少なくとも上部側に位置するアンカピンは、通常の固定ピンにて構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記可動アンカピンは、該可動アンカピン内に収容されたスプリングによりパッドホルダ内の規制溝内のロック位置に付勢されたプレートを有し、前記パッドホルダの背面から挿入された工具等により前記プレートをスプリングの付勢力に抗してパッドホルダ内の規制溝内から脱出させることにより、前記工具等により可動アンカピンを回動できるように構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、請求項1の構成要件である、ブレーキアーム先端部に軸着されるパッドホルダの蟻溝にパッドアッセンブリが軸方向にスライド装着され、前記パッドホルダに装着されたアンカピンがパッドアッセンブリの板面に直交しかつ軸方向両側端部に当接して抜け止めされるワンタッチ式パッド装着機構において、少なくとも下部側に位置する前記アンカピンは、前記板面直交方向に進退自在で180°の対向位置にてロック可能に回動自在に構成するとともに前記アンカピンにおける対向位置のパッドアッセンブリ端部との当接面をそれぞれパッドアッセンブリの移動を阻止するロック面およびパッドアッセンブリの移動を可能にする傾斜面に形成した可動アンカピンにて構成されたことにより、可動アンカピン内部にパッドアッセンブリの移動を阻止するスプリングやプレート等のロック機構を収容できて機構が外部に露出せずに、損傷の虞れもなく、パッドアッセンブリの交換時等には、少なくとも下部側に位置する可動アンカピンを回動するだけで、簡便にパッドアッセンブリを移動させたり移動を阻止できるので、安全かつ円滑に作業が行える。
【0010】
また、請求項2の構成要件である、前記パッドホルダに装着された少なくとも上部側に位置するアンカピンは、通常の固定ピンにて構成された場合は、安全性を考慮しなければならない下部側のアンカピンをやや構造が複雑な可動アンカピンとし、上部側に位置するアンカピンは通常の固定ピンにて構成すればよく、コストの低減化が図れる。さらに、請求項3の構成要件である、前記可動アンカピンは、該可動アンカピン内に収容されたスプリングによりパッドホルダ内の規制溝内のロック位置に付勢されたプレートを有し、前記パッドホルダの背面から挿入された工具等により前記プレートをスプリングの付勢力に抗してパッドホルダ内の規制溝内から脱出させることにより、前記工具等 により可動アンカピンを転できるように構成した場合は、パッドホルダの背面から挿入された工具等によりスプリングの付勢力に抗したプレートの押圧離脱させる動作に続いて、可動アンカピンを回動できる一連の動作によって、パッドアッセンブリのスライド移動と阻止が可能となるので、片手にても容易に迅速かつ安全にパッドアッセンブリの脱着が行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のワンタッチ式パッド装着機構におけるパッドアッセンブリのパッドホルダへの脱着行程の要部断面図である。
【図2】同、ワンタッチ式パッド装着機構が採用されたブレーキ装置の上部側から見た全体斜視図である。
【図3】同、ワンタッチ式パッド装着機構が採用されたブレーキ装置の下部側から見た全体斜視図である。
【図4】同、可動アンカピンを含む要部拡大断面図である。
【図5】同、パッドアッセンブリを装着する前のブレーキ装置の全体側面図である。
【図6】同、パッドアッセンブリを装着する直前のブレーキ装置の全体側面図、およびホルダ軸を含む断面図である。
【図7】同、パッドアッセンブリを装着完了したブレーキ装置の全体側面図、およびホルダ軸を含む断面図である。
【図8】同、パッドアッセンブリを取り脱しつつあるブレーキ装置の全体側面図、およびホルダ軸を含む断面図である。
【図9】同、ワンタッチ式パッド装着機構が採用されたブレーキ装置の一部断面の全体正面図である。
【図10】従来のディスクブレーキのパッド保持装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のワンタッチ式パッド装着機構を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のワンタッチ式パッド装着機構は、図1に示すように、ブレーキアーム3の先端部に軸着されるパッドホルダ4の蟻溝4Aにパッドアッセンブリ5が軸方向にスライド装着され、前記パッドホルダ4に装着されたアンカピン6、10がパッドアッセンブリ5の板面に直交しかつ軸方向両側端部に当接して抜け止めされるワンタッチ式パッド装着機構において、少なくとも下部側に位置する前記アンカピンは、前記板面直交方向に進退自在で180°の対向位置にてロック可能に回動自在に構成するとともに前記アンカピンにおける対向位置のパッドアッセンブリ端部との当接面をそれぞれパッドアッセンブリの移動を阻止するロック面6Cおよびパッドアッセンブリの移動を可能にする傾斜面6Bに形成した可動アンカピン6にて構成されたことを特徴とする。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明のワンタッチ式パッド装着機構の実施例について説明する。図2はワンタッチ式パッド装着機構が採用されたブレーキ装置の上部側から見た全体斜視図、図3はブレーキ装置の下部側から見た斜視図である。本発明のワンタッチ式パッド装着機構が採用されたブレーキ装置の使用態様は、ブレーキアーム3の先端に軸着されたパッドホルダ4に装着されたパッドアッセンブリ5(図9参照)によって、図示省略のディスクロータの両側面を圧接してブレーキ動作を行うものであるが、その際、少なくとも、後述する固定アンカピン10が上部側、可動アンカピン6が下部側となるような形態にて車体の静止部にサポート1によって固定される。前記サポート1を介して固定されたキャリパボディ2内に収納配設された、電動モータおよび減速機構からなるモータギヤユニット、あるいは油圧駆動機構等によって、倍力機構等を介して進退するロッド等を介してブレーキアーム3、3の基端部が進退するように構成されている。
【0014】
ブレーキアーム3は、その中間部がキャリパボディ2に対してアーム軸11によって揺動自在に軸支される。該ブレーキアーム3の先端部には、パッドホルダ4がホルダ軸12によって軸着される。一対の各パッドホルダ4の板面の内側となる対向面には軸方向(アーム軸11やホルダ軸12の)に蟻溝4Aが刻設されており、該蟻溝4Aに対して後述するパッドアッセンブリ5が図2の下部側からスライド挿入されて装着される。これらのパッドホルダ4における蟻溝4Aに臨んで上部側に通常のピンである固定アンカピン10が固定装着される。固定アンカピン10は径大部と止め輪用周溝10Fが刻設された径小部10Aとからなる円筒状を呈しており、対応するパッドホルダ4に穿設された孔に径小部10Aが挿入され、パッドホルダ4の背面にて止め輪9が前記止め輪用周溝10Fに係止されて固定アンカピン10がパッドホルダ4に固定される。固定アンカピン10の径大部は、下部側からスライド装着されたパッドアッセンブリ5の上部側端部5U(図6(A)(B)参照)に当接されて、それ以上のパッドアッセンブリ5の上部側への移動を規制する。
【0015】
図3および図4を参照しつつ、パッドホルダ4の下部側に装着される可動アンカピン6について説明する。前記固定アンカピン10と同様に、パッドホルダ4における蟻溝4Aに臨んで下部側に装着される可動アンカピン6は、径大部と止め輪用周溝6Fが刻設された径小部6Aとからなる円筒状を呈しており、対応するパッドホルダ4に穿設された孔に径小部6Aが挿入され、パッドホルダ4の背面にて止め輪9が前記止め輪用周溝6Fに係止されてパッドホルダ4に固定される。可動アンカピン6の径大部から径小部6Aにかけて軸方向(可動アンカピン6の進退方向)にプレート挿入溝6Dが形成される。該プレート挿入溝6Dに一対のスプリング7によってパッドホルダ4方向へ付勢された長方形状のプレート8が収容される。図示にては明示されないが、パッドホルダ4における可動アンカピン6が挿入装着される孔の底部には、前記長方形状のプレート8が回動規制されて過不足なくスプリング7により付勢されて収容される長方形状の規制溝が刻設されている。そのようにして組み付けられた状態が図4である。
【0016】
可動アンカピン6の前記径小部6Aには、例えば6角工具用の6角穴6Eが刻設されており、パッドホルダ4の背面から挿入された6角工具等により、プレート8をスプリング7の付勢力に抗して押圧してパッドホルダ4の規制溝から脱出させることで、続けて可動アンカピン6の回動を一連の動作にて行えるように構成されている。可動アンカピン6を180°回動させた後に、工具による押圧力を解除することで、再度、スプリング7の付勢力によりプレート8はパッドホルダ4の規制溝に収容されてその回動が規制される。詳細は後述するが、脱着工程図である図1に示すように、可動アンカピン6の径大部には、回動が規制された180°の対向位置に、それぞれパッドアッセンブリ5の下部側端部(5D:図8(A)参照)の下部側への脱落方向のスライド移動を規制して阻止する起立状のロック面6Cと、パッドアッセンブリ5の移動を可能にする傾斜面6Bが形成される。パッドアッセンブリ5が傾斜面6Bを押圧してスライド移動をする際には、可動アンカピン6は、前記プレート8をパッドホルダ4における規制溝に収容したままスプリング7を圧縮して、パッドアッセンブリ5の板面に直交する方向に後退移動することが可能である。
【0017】
図1を用いてパッドアッセンブリのパッドホルダへの脱着工程を説明する。図1(A)はパッドアッセンブリ5がパッドホルダ4に装着された状態の下部側である可動アンカピン6によるスライド規制状態である。可動アンカピン6のロック面6Cがパッドアッセンブリ5の下部側端部(5D:図8(A)参照)のスライド移動を規制している。次いで、図1(B)の白矢印方向から工具等を挿入し、スプリング7の付勢力に抗してプレート8を押圧してパッドホルダ7の規制溝から脱出させることで、可動アンカピン6を回動させる。図1(C)は可動アンカピン6が180°の対向位置に回動した状態を示している。この状態になって、可動アンカピン6における傾斜面6Bがパッドアッセンブリ5の下部側端部に面する。すると、図1(D)に示すように、パッドアッセンブリ5の下部側端部が可動アンカピン6における傾斜面6Bを押圧して押し上げると同時に、可動アンカピン6を小白矢印のように板面直交方向に後退させ、パッドアッセンブリ5の下部側へのスライド移動を可能にするので、パッドホルダ4からのパッドアッセンブリ5の取り外し(大白矢印)が行われる。
【0018】
次いで、パッドアッセンブリ5の保守・点検が完了し、あるいは新品への交換時には、図1(E)に示すように、再度、工具等により可動アンカピン6を180°回動させて傾斜面6Bを下部側に向けることにより、パッドアッセンブリ5における上部側端部5U(図6(A)も参照)による可動アンカピン6の板面直交方向への後退(図1(F)の小白矢印)、およびパッドアッセンブリ5の上部側へのスライド移動(図1(F)の大白矢印)が可能となり、図1(F)に示すように、パッドアッセンブリ5の上部側へのスライド装着がなされる。図1(G)は、このようにしてパッドアッセンブリ5のパッドホルダ4への装着が完了し、可動アンカピン6におけるロック面6Cによりパッドアッセンブリ5が下部側へのスライド移動が規制阻止された状態を示したものである。
【0019】
図5はパッドアッセンブリ5をパッドホルダ4に装着する前のブレーキ装置の全体側面図である。したがって、パッドアッセンブリ5は図示されていない。そして、図面右側が固定アンカピン10が装着固定された上部側、図面左側が可動アンカピン6が装着固定された下部側を示し、ブレーキアーム3の先端側にホルダ軸12によって軸着された状態が理解される。図6(A)(C)はパッドアッセンブリ5をまさにパッドホルダ4に装着する直前のブレーキ装置の全体側面図およびホルダ軸を含む断面図で、パッドアッセンブリ5における半円弧状の上部側端部5Uが可動アンカピン6の傾斜面6Bに当接する直前の状態を示している。図6(B)は、図6(C)とは上下を逆に示しているが、パッドアッセンブリ5がパッドホルダ4に装着が完了した状態を示し、上部側が固定アンカピン10の径大部により上部側へのスライド移動が規制阻止され、下部側が可能アンカピン6のロック面6Cにより下部側へのスライド移動が規制阻止されている。
【0020】
図7(A)(B)はパッドアッセンブリを装着完了したブレーキ装置の全体側面図、およびホルダ軸を含む断面図である。上部側が固定アンカピン10の径大部により上部側へのスライド移動が規制阻止され、下部側が可能アンカピン6のロック面6Cにより下部側へのスライド移動が規制阻止されている。図7(C)は可動アンカピン6が工具等により180°回動された状態を示し、これからパッドアッセンブリ5がパッドホロダ4から取り外されようとする状態を示している。図9はパッドアッセンブリを装着完了した状態のブレーキ装置の一部断面の全体正面図で、言わば、前記図4のものにパッドアッセンブリ5が装着された状態を示している。
【0021】
図8(A)(C)はパッドアッセンブリ5を取り外しつつあるブレーキ装置の全体側面図およびホルダ軸を含む断面図で、パッドアッセンブリ5における半円弧状の下部側端部5Dが可動アンカピン6の傾斜面6Bに当接して可動アンカピン6を後退させた後、パッドアッセンブリ5を下部側にスライド移動させて引き抜きつつある状態を示している。図8(B)は、図8(C)とは上下を逆に示しているが、前記図7(B)の状態と同様で、パッドアッセンブリ5がパッドホルダ4に装着され、上部側が固定アンカピン10の径大部により上部側へのスライド移動が規制阻止され、下部側が可能アンカピン6のロック面6Cにより下部側へのスライド移動が規制阻止されている。この状態から、図7(C)に示すように、工具等により可動アンカピン6を180°回動させた状態から、パッドアッセンブリ5を引き抜いてパッドホルダ4から取り外すものである。
【0022】
かくして、本発明のワンタッチ式パッド装着機構によれば、可動アンカピン6内部にパッドアッセンブリ5の移動を阻止するスプリング7やプレート8等のロック機構を収容できて機構が外部に露出せずに、損傷の虞れもなく、パッドアッセンブリ5の交換時等には、少なくとも下部側に位置する可動アンカピン6を回動するだけで、簡便にパッドアッセンブリ5を移動させたり移動を阻止できるので、安全かつ円滑に作業が行え、安全性を考慮しなければならない下部側のアンカピンをやや構造が複雑な可動アンカピン6とし、上部側に位置するアンカピン10は通常の固定ピンにて構成すればよく、コストの低減化が図れる。さらに、パッドホルダ4の背面から挿入された工具等によりスプリング7の付勢力に抗したプレート8の押圧離脱させる動作に続いて、可動アンカピン6を回動できる一連の動作によって、パッドアッセンブリ5のスライド移動と阻止が可能となるので、片手にても容易に迅速かつ安全にパッドアッセンブリ5の脱着が行えることとなった。
【0023】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ブレーキアームの基端部を進退させて揺動させるアクチュエータである電動モータや減速機構あるいは油圧機構等の形式、ブレーキアーム先端部へのパッドホルダの軸着形態、パッドホルダにおける蟻溝の刻設形態、固定アンカピンおよび可動アンカピンのパッドホルダへの装着形態(止め輪による抜止め係止の他、抜止めピンや固定ボルトの採用等)、固定アンカピンの断面形状(可動アンカピンのように回動はしないので、円形断面の円筒体に限定されない)、可動アンカピンに収容されるスプリングの形状(実施例のコイル状のスプリングの他、板ばね等も採用され得る)、形式およびプレートの形状(実施例の長方形の他、長楕円形等の非円形が採用可能である)、形式、前記プレートが収容されるパッドホルダにおける規制溝の刻設形態(プレートの回動が充分に規制阻止されるように、規制溝の深さはプレートの厚みにほぼ等しいか大きくされる)、アンカピンにおけるロック面の形状(パッドアッセンブリの板面に直交して起立する半円弧状の起立面を好適とするが、パッドアッセンブリが脱落しないなら、直交起立面に限定されない。)等については適宜選定し得る。
【0024】
また、傾斜角度を含む傾斜面の形状(円筒状半円弧面を所定角度にて平らに切除して構成されるが、直線状の平らな傾斜面でなく、曲線状の傾斜面に構成することもできる)、パッドアッセンブリにおける上部側端面および下部側端面の形状(実施例のように、固定アンカピンや可動アンカピンの断面形状に整合する半円弧面とするのを好適とするが、直線状であることを妨げるものではない)、可動アンカピンにおける工具穴の断面形状(実施例の6角工具の他、非円形なら適宜の断面形状が採用され得る。)、可動アンカピンの配設形態(可動アンカピンは少なくとも下部側に配設されるが、パッドアッセンブリを上部側にも取り外せるように、上部側にも可動アンカピンを配設することを妨げるものではない。)等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のワンタッチ式パッド装着機構は、好適にはブレーキを搭載する車両分野、特に鉄道用キャリパブレーキにおけるパッドアッセンブリの交換をワンタッチ化することにより、作業効率のアップと安全性の確保を図るものであるが、鉄道車両以外の車両用ブレーキにおけるパッド装着機構としても採用可能である。
【符号の説明】
【0026】
3 ブレーキアーム
4 パッドホルダ
4A 蟻溝
5 パッドアッセンブリ
5U 上部側端部
6 可動アンカピン
6B 傾斜面
6C ロック面
7 スプリング
8 プレート
10 固定アンカピン
12 ホルダ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキアーム先端部に軸着されるパッドホルダの蟻溝にパッドアッセンブリが軸方向にスライド装着され、前記パッドホルダに装着されたアンカピンがパッドアッセンブリの板面に直交しかつ軸方向両側端部に当接して抜け止めされるワンタッチ式パッド装着機構において、少なくとも下部側に位置する前記アンカピンは、前記板面直交方向に進退自在で180°の対向位置にてロック可能に回動自在に構成するとともに前記アンカピンにおける対向位置のパッドアッセンブリ端部との当接面をそれぞれパッドアッセンブリの移動を阻止するロック面およびパッドアッセンブリの移動を可能にする傾斜面に形成した可動アンカピンにて構成されたことを特徴とするワンタッチ式パッド装着機構。
【請求項2】
前記パッドホルダに装着された少なくとも上部側に位置するアンカピンは、通常の固定ピンにて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のワンタッチ式パッド装着機構。
【請求項3】
前記可動アンカピンは、該可動アンカピン内に収容されたスプリングによりパッドホルダ内の規制溝内のロック位置に付勢されたプレートを有し、前記パッドホルダの背面から挿入された工具等により前記プレートをスプリングの付勢力に抗してパッドホルダ内の規制溝内から脱出させることにより、前記工具等により可動アンカピンを回動できるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載にワンタッチ式パッド装着機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−100890(P2013−100890A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246047(P2011−246047)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】