説明

三次元の物体を層状に製造するための装置と方法、ポリマー粉末及びモールド

【課題】粉末状のポリマーから成るモールドを形成するためのレーザ焼結方法においてポリマー材料がレーザの出力ピークによって損傷することを解決する手段を提供する。
【解決手段】レーザビーム2を形成するレーザ1の形態の放射源を備えている製造容器の上方にスキャンユニット3が配置されている装置が60%以上のデューティ比に前記レーザを調整するパルス幅変調制御ユニット3を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の物体を層状に、即ちレイヤ・バイ・レイヤで製造するための装置、三次元の物体を層状に製造するための方法並びに相応のモールド及びポリマー粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプを迅速に準備することが最近頻繁に課される課題である。これを実現する方法として、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)/ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)又は積層造形法(Additive Fabrication)が挙げられる。特に適している方法は、粉末状の原材料を基礎として、また選択性の溶融及び硬化によって所望の構造が層状に製造されるものである。そのような方法においては、溶融された領域を包囲する粉体層が十分な支持効果を提供するので、張り出し部及びアンダーカットにおける支持構造を省略することができる。同様に、支持部を除去する後処理も省略される。この方法は小ロット生産にも適している。製造空間温度は、製造プロセス中に層状に製造される構造体に変形が生じない選定される。
【0003】
ラピッドプロトタイピング/ラピッドマニュファクチャリングに非常に良く適している方法は選択性のレーザ焼結(粉末造形;Selective Laser Sintering)である。粉末状のポリマーから成るモールドを形成するためのレーザ焼結方法(ラピッドプロトタイピング)は特許明細書US 6136948及びWO 96/06881(いずれもDTM社による出願)に詳細に記載されている。その用途のために多数のポリマー及びコポリマー、例えばポリアセテート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、イオノマー及びポリアミドが必要とされる。
【0004】
上述の方法における問題は、ポリマー材料がレーザの出力ピークによって損傷することである。出力ピークによって惹起される高まった温度は、ポリマーの分子量減成を生じさせる可能性がある。また熱的な損傷によってコンポーネントが変色することも考えられる。更には処理時に、ポリマー材料の成分が前述の温度ピークによって放出されることがある。放出された物質はプロセスを妨害する。何故ならば、それらの物質はレンズ又はパイロメータ(ビームサーモメータ)のような重要な構成部材に堆積し、またそれらの機能に障害を生じさせるからである。
【0005】
SLSの分野における発展は常により高い照射速度に向かっており、そのような照射速度は所要レーザエネルギを粉末材料に供給するためにレーザの常により高い出力を必要としている。従って、分子量減成を回避するためにレーザの出力を単に低下させることは問題の解決にとって有用ではない。この措置によってプロセス時間が著しく延長され、そのようなプロセス時間の延長は所望されない。分子量減成を生じさせることなく、可能な限り高いレーザエネルギを粉末材料に供給する解決手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 6136948
【特許文献2】WO 96/06881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、レーザ焼結プロセスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
装置に関しては、装置が60%以上のデューティ比に前記レーザを調整する制御ユニットを備えていることによって課題を解決する。
【0009】
方法に関しては、ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を60%以上のデューティ比を有するレーザによって行なうことによって課題を解決する。
【0010】
ポリマー粉末に関しては、本発明による装置において処理されるポリマー粉末が少なくとも一つのポリアミドを含んでいることによって課題を解決する。
【0011】
モールドに関しては、モールドが本発明による装置又は本発明による方法によって製造されることによって課題を解決する。
【発明の効果】
【0012】
驚くべきことに、レーザの出力制御のパルス幅変調(PWM)の高いデューティ比でもってこの問題を解決できることが分かった。
【0013】
従って本発明の第1の対象は、少なくともレーザを備えている、三次元の物体を層状に製造するための装置であり、この装置は更に、60%以上のデューティ比にレーザを調整する制御ユニットを備えている。
【0014】
本発明による装置の重要な本質は、レーザを60%以上、有利には80%以上、特に90%以上のデューティ比に調整する制御ユニットが設けられていることである。デューティ比が高いことによって、レーザの照射エネルギ、従って照射プロセスの速度を低減することなく、レーザによって惹起されるポリマーの分子量減成を回避することができるか、又は著しく低減することができる。特に本発明による装置は、レーザを制御するだけで、既存の装置に比較的大規模な改造を行なう必要なく、本発明による利点を達成することができるという利点を有している。
【0015】
制御ユニットはレーザの制御に使用され、このレーザの制御は有利にはパルス幅変調によって行なわれる。パルス幅変調(以下ではPWMと記す)は、二つの値(オン・オフ)の間で技術的な量が変化する変調方式である。周波数が一定の場合にはパルス/オン時間の幅が変調される。PWMによって損失の少ないスイッチング動作が実現される。
【0016】
デューティ比(デューティファクタ英語:duty factor)は、DIN IEC 60469-1に準拠する周期的なパルス列に関して、パルス持続時間とパルス周期持続との比率を表す。即ち、デューティ比は周期持続時間に対するオン時間の比率である。デューティ比は0−1の値を有する無次元の比率として表されるか、又は、0−100%として表される。周期持続時間に対するオン時間が長くなればなるほど、デューティ比及び平均出力はいっそう高くなる。
【0017】
本発明による装置の有利な実施の形態においては、レーザがPWMによってループ制御され、その際のクロック周波数は少なくとも5kHz、有利には少なくとも10kHz、特に有利には少なくとも20kHzである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による装置の一つの実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による装置の一つの実施の形態が図1に示されている。つまり、物体を層状に製造するための装置は製造容器を備えている。この製造容器内では、実質的に平坦であり、且つ、製造容器の上端に対して実質的に平行に配向されている上面を備えている支持体6が配置されている。支持体6は製造すべき物体5を支持するために構成されている。支持体6を(図示していない)高さ調整装置によって垂直方向に移動させることができる。粉末材料が供給及び硬化される平面は作業平面4を形成する。
【0020】
装置は、レーザビーム2を形成するレーザ1の形態の放射源を備えている。製造容器の上方にスキャンユニット3が配置されている。
【0021】
本発明による装置に含まれている制御ユニット(図示せず)は、特にPWMを用いることにより、レーザ出力を制御する。
【0022】
製造容器の温度を調整することができる、及び/又は、製造容器を不活性ガス、例えばアルゴンでもって不活性化することができる。
【0023】
本発明の別の対象は、ポリマー粉末から三次元の物体を層状に製造するための方法であり、この方法においてはポリマー粉末の選択性の溶融又は焼結が60%以上のデューティ比を有するレーザによって行われる。
【0024】
本発明の範囲においては、デューティ比は60%以上、特に80%以上、特に有利には90%以上である。
【0025】
照射の際のポリマー材料の損傷を回避するために、有利には、レーザのクロック周波数が特に制御ユニットのPWMによって調整されて少なくとも5kHzであり、ベース周波数が比較的低い場合には、製造されたコンポーネントの溶液粘度が付加的に低下する。特に有利には、クロック周波数が10kHz以上、特に有利には20kHz以上である。
【0026】
基本的には、当業者には公知であるいずれのポリマー粉末も本発明による装置又は本発明による方法への使用に適している。適しているものとして、特に熱可塑性材料及び熱弾性材料、例えばポリエチレン(PE,HDPE,LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエステル、ポリエーテルエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチロール(PS)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン、サーモプラスチックポリウレタン(TPU)、ポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリーレンスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、サーモプラスチックポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド、並びに、それらの熱可塑性材料のコポリマー、例えばポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)−コポリマー、混合物および/またはポリマーブレンド、が挙げられる。特に有利には、ポリマー粉末は少なくとも一つのポリアミド、特にポリアミド12を含んでいる。
【0027】
従って、本発明の別の対象は、少なくとも一つのポリアミド、特にポリアミド12を含む、三次元の物体を製造するために本発明による装置において処理されるポリマー粉末である。
【0028】
通常の場合、動作時には先ず、製造すべき物体5の形状に関するデータがコンピュータにおいて構造プログラム等に基づいて作成又は記憶される。それらのデータは物体の製造のために、物体がその寸法に比べて薄い水平方向の複数の層に分割され、例えばデータセットの形態の形状データ、例えばCADデータがそれら複数の層の各々に対して準備されるように処理される。各層に関するデータの作成及び処理を各層の製造前に行なうことができるか、又は各層の製造と同時に行なうこともできる。
【0029】
続いて、先ず、製造プラットフォーム6が高さ調整装置を用いて、製造プラットフォーム6の表面が製造空間の表面を有する平面に位置している一番高い位置にまで運ばれ、続いて、第1の材料層の所定の厚さの値分だけ降下され、それにより、生じた区間内では凹み領域が形成されており、この凹み領域は側方ではその区間の壁によって境界付けられており、下方では製造プラットフォーム6の表面によって境界付けられている。更には、例えばアプリケータ7を用いて、硬化すべき材料の第1の層が所定の層厚でもって、前述の区間及び製造プラットフォーム6によって形成されている中空室又は凹み領域内に形成され、必要に応じて加熱装置によって適切な動作温度、例えば100℃から360℃、有利には120℃から200℃、特に有利には140℃から160℃に加熱される。続いて制御ユニット3は、偏向された光ビーム2が連続的に層のあらゆる箇所に入射し、その入射箇所において材料を焼結または溶融させるように偏向装置を制御する。そのようにして、先ず固い基底層を形成することができる。第2のステップにおいては、製造プラットフォーム6が高さ調節装置を用いて一つの層の厚さ分だけ降下され、アプリケータ7を用いて、その降下によって生じる区間における凹み領域内に第2の材料層が形成され、必要に応じて再び加熱装置によって加熱される。
【0030】
一つの実施の形態においては、偏向された光ビーム2が前述の区間の内面に接している材料層の領域上にのみ入射し、その入射箇所において材料層が焼結により硬化するように、制御ユニット3によって偏向方向が制御される。材料層の硬化によって、約2mmから10mmの壁厚を有する第1のリング状の壁層が生じ、この壁層は層の残存する粉末材料を完全に包囲している。従って制御装置のこの部分は、各層における物体の形成と同時に、製造すべき物体5を包囲している容器壁を形成するための装置を表している。
【0031】
上記と同じやり方で、次の層の層厚の分だけ製造プラットフォーム6を降下し、材料を供給し、また加熱を行なった後に、物体5自体の製造を開始することができる。続いて、制御ユニットに記憶されている、製造すべき物体5の座標に応じて硬化されるべき層の位置に偏向された光ビーム2が入射するように、制御ユニット3は偏向装置を制御する。後続の層においても同様のプロセスが実施される。焼結されていない残存する材料と共に物体を包囲し、従って製造プラットフォーム6の降下時に作業台の下への材料の流出を阻止する容器壁の形態のリング状の壁領域が所望のように製造されると、物体の各層において前述の装置を用いて、リング状の壁層がその下にあるリング状の壁層の上に焼結される。EP 1037739に応じた交換容器又は固定式に取り付けられている容器が使用される場合には、壁の作成を省略することができる。
【0032】
冷却後に製造された物体を装置から取り出すことができる。
【0033】
本発明による装置でもって任意のモールドも簡単に製造することができる。従って、本発明による装置又は本発明による方法を用いて製造されたモールドも同様に本発明の対象である。特に有利には、本発明により製造されたモールドはISO307(Schott社 AVS Pro、溶媒 酸性m−クレゾール、容積測定法、二重測定、溶解温度100℃、溶解時間2h、ポリマー濃度5g/l、測定温度25℃)に準拠する、少なくとも1.58の溶液粘度を有している。有利には、本発明により製造されたモールドの、ISO307に準拠する溶液粘度は1.6である。
【0034】
更なる説明がなくとも、当業者であれば上記の記載を最も広範な範囲において利用できることが分かる。従って、有利な実施の形態及び有利な実施例は例示的に開示されたものに過ぎず、何らかの制限を課す開示として理解されるべきではない。
【0035】
以下では、複数の例に基づき本発明を詳細に説明する。本発明の代替的な実施の形態は同様のやり方で得られる。
【0036】
例:
本発明の範囲においては、表1に挙げた複数の測定方式が使用され、それらの測定方式は、技術的に可能である限りにおいて、使用される材料の特性の検出にも得られた生産物に関する特性の検出にも使用される。
【表1】

【0037】
いずれの例においても、DE19747309に準拠する、後縮合できないポリアミド12(PA12)粉末が表1に挙げた粉末特性値及び図1に応じた検査装置を用いて処理される。いずれの例も以下の説明に応じて処理される。製造チャンバは155℃で180分間予熱される。その後、製造チャンバ内の温度が高められ、それにより粉末表面の温度は168℃になる。最初の照射の前に、40の層が照射無しで形成される。コンポーネントは製造フィールドの中心に位置決めされる。レーザ1からレーザビーム2がスキャンシステム3を用いて、(168℃に)温度調整され(アルゴンにより)不活性化された粉末表面4に偏向される。
【0038】
照射すべきコンポーネントは製造フィールドの中心に位置決めされる。一辺の長さが50mmの正方形の面がレーザによって溶融される。その後、製造プラットフォーム6が0.15mmだけ降下され、コーティング装置7によって新たな粉体層が100mm/sの速度で塗布される。それらのステップは三次元コンポーネント5の高さが6mmになるまで繰り返される。照射の終了後には、装置の加熱素子がスイッチオフされて冷却フェーズが開始される前に、更に40の別の層が形成される。一つの層に対してその都度必要とされる時間は、全体の製造プロセスの間に40秒を下回る。
【0039】
少なくとも12時間の冷却時間後にコンポーネントが取り出され、付着している粉末が取り除かれる。コンポーネントの中心にあるコアからは、更なる検査のためのサンプルが取り出される。このサンプルの溶液粘度が、ISO307(検査装置 Schott社 AVS Pro、溶媒 酸性m−クレゾール、容積測定法、二重測定、溶解温度100℃、溶解時間2h、ポリマー濃度5g/l)に準拠して求められる。そのようにして求められた溶液粘度はポリマーの分子質量に関する尺度を表す。
【0040】
検査装置は、粉末表面の高さにある焦点直径が0.3mmであるように構成される。レーザビームの焦点は製造フィールドの中心において、ISO11146(二次モーメント法)に準拠して、PRIMES有限会社のFocusMonitor を用いて測定される。レーザ出力はISO11554に準拠して、Coherent Deutschland有限会社のLM-1000を用いて測定され、ここでは平均的な出力が表される。測定は実験室において23℃/50%の大気湿度で実施される。例におけるレーザの出力制御は制御装置を用いて行なわれ、この制御装置はPWM方式で動作するものであり、これによってレーザのパルス状の出力が生じる。
【0041】
例1(本発明によるものではない)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてSynrad社のFirestar t100Wを使用する。レーザの出力はSynrad社のUC-2000を用いて制御する。電源装置としてSynrad社のDC-100 DCを使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数として、デューティ比20%の5kHzが選定される。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力21.2W、スキャン速度1178mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.52が求められる。
【0042】
例2(本発明によるものではない)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてUniversal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。電源装置はSynrad社のDC-5である。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は40%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.6W、スキャン速度1144mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.55が求められる。
【0043】
例3(本発明によるものではない)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてUniversal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。電源装置はSynrad社のDC-5である。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は1kHzであり、デューティ比は40%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.6W、スキャン速度1144mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.52が求められる。
【0044】
例4(本発明によるものではない)
ここでは、Optotools社のOTF150-30-0.2ダイオードレーザ(波長980nm)を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。Heim Electronic社のDL 1600電源装置及びRaylase社のSS-20スキャナを使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は40%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力52.6W、スキャン速度2922mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.54が求められる。
【0045】
例5(本発明によるものではない)
ここでは、IPG社のELR-100-1550ファイバレーザ(波長1550nm)を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。更に、Heim Electronic社のDL 1600電源装置及びRaylase社のSS-10スキャナを使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は40%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力42.1W、スキャン速度2338mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.55が求められる。
【0046】
例6(本発明)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてUniversal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。Synrad社のDC-5電源装置を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は60%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力29.2W、スキャン速度1622mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.58が求められる。
【0047】
例7(本発明)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてUniversal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。Synrad社のDC-5電源装置を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は10kHzであり、デューティ比は60%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力29.2W、スキャン速度1622mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.6が求められる。
【0048】
例8(本発明)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてUniversal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザの出力はMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT 3001を用いて制御する。Synrad社のDC-5電源装置を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は20kHzであり、デューティ比は60%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力29.2W、スキャン速度1622mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.6が求められる。
【0049】
例9(本発明)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてSynrad社の48-2を使用する。レーザの出力はSynrad社のUC-2000を用いて制御する。Synrad社のDC2電源装置を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は80%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力18.9W、スキャン速度1050mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.6が求められる。
【0050】
例10(本発明)
レーザ(CO2、波長10.6μm)としてSynrad社の48-2を使用する。レーザの出力はSynrad社のUC-2000を用いて制御する。Synrad社のDC2電源装置を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は90%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力19.8W、スキャン速度1110mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.6が求められる。
【0051】
例11(本発明)
ここでは、Raylase社のSS-10スキャナと、レーザの出力を制御するためのMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置とを用いる、IPG社のELR-100-1550ファイバレーザ(波長1550nm)を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は60%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力60.5W、スキャン速度3360mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.59が求められる。
【0052】
例12(本発明)
ここでは、Raylase社のSS-20スキャナと、レーザの出力を制御するためのMCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置とを用いる、Optotools社のOTF150-30-0.2ダイオードレーザ(波長980nm)を使用する。PWMのクロック周波数は5kHzであり、デューティ比は60%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力77.9W、スキャン速度4328mm/s、照射線間隔0.3mm)である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.59が求められる。
【0053】
表2には結果が改めてまとめられている。本発明によるものではない例の冷たくなった溶解物の溶液粘度は、60%を下回るデューティ比では著しく低下している。溶液粘度が低いということは、局所的な温度ピークによって分子量減成が生じることを意味する。分子量減成はレーザ焼結を用いて製造されるコンポーネントの特性にやはり非常に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0054】
更に、照射時のポリマー材料の損傷を回避するために、PWMのクロック周波数は少なくとも5kHzであることが望ましい。ベース周波数が比較的低い場合には、作成されたコンポーネントの溶液粘度が更に低下し、これは本発明によるものではない例2及び例3との比較から見て取れる。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともレーザを備えている、三次元の物体を層状に製造するための装置において、
該装置は、60%以上のデューティ比に前記レーザを調整する制御ユニットを備えていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記制御ユニットはパルス幅変調により前記レーザの前記デューティ比を調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ポリマー粉末から三次元の物体を層状に製造するための方法において、
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を60%以上のデューティ比を有するレーザによって行なうことを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を80%以上のデューティ比を有するレーザによって行なう、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を90%以上のデューティ比を有するレーザによって行なう、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を少なくとも5kHzのクロック周波数を有するレーザによって行なう、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を少なくとも10kHzのクロック周波数を有するレーザによって行なう、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー粉末の選択性の溶融ないし焼結を少なくとも20kHzのクロック周波数を有するレーザによって行なう、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の三次元の物体を層状に製造する装置において処理するためのポリマー粉末において、
該ポリマー粉末が少なくとも一つのポリアミドを含んでいることを特徴とする、ポリマー粉末。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の装置又は請求項3乃至8のいずれか一項に記載の方法を用いて製造されることを特徴とする、モールド。
【請求項11】
ISO307に準拠する、少なくとも1.58の溶液粘度を有する、請求項10に記載のモールド。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22964(P2013−22964A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163134(P2012−163134)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】