説明

上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓

【課題】渦巻きバネの拡縮状態を適切に調節し、渦巻きバネの空巻き戻しや、渦巻きバネの過剰巻上げを機械的に阻止することができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供する。
【解決手段】本発明に係るバランサ装置において、渦巻きバネ13は、内端が支軸12に結合されている。支軸12は、軸回転方向R12に応じて渦巻きバネ13を拡縮させる。回転阻止機構14は、渦巻きバネ13がとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる範囲内で、支軸12の軸回転を阻止する。本発明に係る上げ下げ窓用バランサ装置1は、吊索15と、障子3と組み合わされて、上げ下げ窓を構成する。障子3は、バランサ装置1に備えられた吊索15により吊り下げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓に関する。
【背景技術】
【0002】
上げ下げ窓は、窓枠の見付け高さ方向に並んだ室内側障子、又は、室外側障子を上下にスライドさせて開閉するものである。通常、上げ下げ窓には、障子を支持するバランサ装置が備えられている。バランサ装置は、障子重量と力学的平衡関係を保つための吊り上げ機構を有しており、この吊り上げ機構によって、障子を僅かな力で簡単に上げ下げさせ、任意の開位置で停止させるようになっている。
【0003】
上述した吊り上げ機構として、例えば、渦巻きバネを用いたものが知られている。渦巻きバネを用いたバランサ装置は、バネケースと、吊索巻取り車と、吊索と、支軸と、ラチェット車と、クリックとを有している。
【0004】
バネケースは、ケース内部に渦巻きバネが収納されている。吊索巻取り車は、円錐台形状であって、円錐面に相当する部分に巻取り面を有しており、さらに巻取り面の面内に、螺旋状の巻取り溝を有している。吊索巻取り車は、台下面がバネケースの外周面、又は、上面に回転力の伝達可能に結合されている。
【0005】
バネケースと、吊索巻取り車とは、支軸を中心として軸回転可能に保持されている。支軸は、バネケースと、吊索巻取り車とを貫通し、ハウジングに軸止めされている。
【0006】
渦巻きバネは、ケース内部において、内端が支軸に結合されており、外端がケース内から引き出されてケース外周面に結合されている。そして、支軸を回転させて渦巻きバネを拡縮することによりバネ圧を調節する。渦巻きバネのバネ圧は、バネケースを介して吊索巻取り車に伝えられ、障子重量と平衡する吊索巻上げ力として利用される。
【0007】
吊索は、吊索巻取り車の巻取り溝に繰り出し可能に巻装されている。吊索は、一端が障子に結合されており、他端に抜け止め部を有している。抜け止め部は、吊索の巻き始めにあたる吊索巻取り車の台下面付近から、吊索巻取り車の内部に案内され、吊索巻取り車に掛け止められている。
【0008】
ラチェット車は、支軸に一体的に結合されている。クリックは、ラチェット車に向けて付勢されており、且、ラチェット車に係合することにより、支軸の回転を阻止している。
【0009】
ところで、この種のバランサ装置において、巻取り溝に巻装されている吊索には、常に、巻取り溝の底面に向かって引っ張り力が加えられていなければならない。即ち、吊索は、弾性を有しているから、引っ張り力が失われると、吊索が巻取り溝から飛び出して支軸に巻き込まれるなど動作不良を引き起こすからである。そこで、吊索には、中間部分に巻き込み阻止片が備えられ、この巻き込み阻止片をハウジングの一部に掛け止めた状態で吊索巻上げ力を作用させることにより、常に引っ張り力が加えられた状態に保たれる。
【0010】
さらに、この種の上げ下げ窓において、障子重量は、サイズや材質などによって様々に異なるから、バランサ装置の吊索巻上げ力と、障子重量との力学的な平衡を図るためには、施工現場において、取り付けに係る障子重量に併せて渦巻きバネの拡縮状態を調節し、吊索巻上げ力を調節する必要がある。この作業は「調節巻き」と呼ばれている。
【0011】
上述した調節巻き作業は、バランサ装置を窓枠に取り付け、吊索の一端を障子に結合した状態で行われるが、障子を閉じた位置で渦巻きバネを緩める方向に調節すると、吊索巻上げ力が失われすぎる傾向にある。その結果、施工後に障子を上昇させたときに、吊索が巻取り車に巻き取られずに弛みが生じ、この弛み部分が巻取り溝から飛び出して動作不良を引き起こす。
【0012】
上述したように障子を閉じた位置で調節巻き作業を行うと、吊索巻上げ力が失われすぎる「空巻き戻し」が生じやすく、適切な施工手順では、障子を開けた位置で渦巻きバネを巻き締める方向に調節巻きを行うこととされている。しかし、障子を閉じた位置で調節巻きを行うほうが、楽に作業を行えるため、現場作業員は不適切な施工手順と知りつつ、これを行うことが多く、バランサ装置が作動しなくなる原因の一つとなっている。
【0013】
他方、適切な施工手順として、障子を開けた位置で調節巻きを行う場合には、予め障子を閉じた位置を想定して渦巻きバネのバネ巻き代を残しておかなければならない。仮に、巻き代を残さずに渦巻きバネを巻き締めてしまうと、障子が下がりきらなくなる。このように、調節巻き作業を適切な施工手順で行う場合には、「過剰巻き」を回避しなければならない点で作業員に高度の熟練性が求められる分、施工効率が悪くなる。
【0014】
上述した問題を解決する従来技術として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたバランサ装置は回転板を有し、回転板には支軸の回転数をカウントする指標が表示されているから、この指標を目安として、調整巻き作業を行うことができる。
【0015】
しかし、特許文献1の回転板は、支軸の回転を何ら阻止するものではない。そのため、渦巻きバネの空巻き戻し、及び、過剰巻上げを機械的に阻止することができない。
【特許文献1】特許3697405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、渦巻きバネの拡縮状態を適切に調節し、障子を任意の開位置で停止させることができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【0017】
本発明のもう一つの課題は、渦巻きバネの空巻き戻しを機械的に阻止し、吊索の外れを防止することができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【0018】
本発明のさらにもう一つの課題は、渦巻きバネの過剰巻上げを機械的に阻止し、障子の下降不能の不具合を回避することができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を達成するため、本発明に係る上げ下げ窓用バランサ装置は、渦巻きバネと、支軸と、回転阻止機構とを含む。渦巻きバネは、内端が支軸に結合されている。支軸は、軸回転方向に応じて渦巻きバネを拡縮させる。回転阻止機構は、渦巻きバネのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる範囲内で、支軸の軸回転を阻止している。
【0020】
なお、本発明に係る上げ下げ窓用バランサ装置は、この種の渦巻きバネ式バランサ装置が備えるべき基本的な構成要件として、吊索巻取り車と、吊索を有している。吊索巻取り車は、支軸によって軸回転可能に保持されている。吊索は、吊索巻取り車に巻かれている。
【0021】
本発明に係る上げ下げ窓用バランサ装置は、障子と組み合わされて、上げ下げ窓を構成する。障子は、バランサ装置に備えられた吊索により吊り下げられている。
【0022】
上述したように、本発明に係る上げ下げ窓を構成するバランサ装置は、渦巻きバネと、支軸とを有し、渦巻きバネは、内端が支軸に結合されている。支軸は、軸回転方向に応じて渦巻きバネを拡縮させることにより、渦巻きバネのバネ圧を調節する。調節されたバネ圧は、バネケースを介して吊索巻取り車に伝えられ、吊索巻取り車に巻かれた吊索を介して、吊索巻上げ力として利用される。したがって、渦巻きバネのバネ圧を調整することにより、吊索巻上げ力を障子重量と平衡させ、障子を、僅かな力で簡単に上げ下げさせ、任意の開位置で停止させることができる。
【0023】
本発明に係るバランサ装置は、上述した基本的構成を前提として、さらに回転阻止機構を有する点に特徴の1つがある。回転阻止機構は、渦巻きバネのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる範囲内で、支軸の軸回転を阻止する。この構造によると、渦巻きバネの空巻き戻しを機械的に阻止し、吊索に緩みが生じるのを防止する。従って、吊索が吊索巻取り車から飛び出すなどの不具合を回避することができる。渦巻きバネのとり得る最大拡張状態は、渦巻きバネがケースの内部に収納される一般的な構造の場合は、ケースの内容積によってほぼ定まることになる。
【0024】
回転阻止機構は、より好ましくは、渦巻きバネのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態を下限とし、渦巻きバネのとり得る最小収縮状態よりも緩んだ状態を上限として、下限から上限との範囲内で支軸の軸回転を阻止している。この構造によると、下限において渦巻きバネの空巻き戻しを阻止することができるうえ、上限において渦巻きバネの過剰巻上げを阻止し、障子が下降不能となる不具合を回避することができる。なお、渦巻きバネのとり得る最小収縮状態は、渦巻きバネが支軸に巻きついて、それ以上径寸法が小さくならない状態である。
【0025】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)渦巻きバネの拡縮状態を適切に調節し、障子を任意の開位置で停止させることができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
(2)渦巻きバネの空巻き戻しを機械的に阻止し、吊索の外れを防止することができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
(3)渦巻きバネの過剰巻上げを機械的に阻止し、障子の下降不能の不具合を回避することができる上げ下げ窓用バランサ装置、及び、これらを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図、図2は図1に示したバランサ装置の底面図、図3は図1に示したバランサ装置の左側面図である。また、図4は、図3の4−4線に沿った断面図である。
【0028】
本発明の一実施形態に係るバランサ装置は、見付け高さ方向にスライドする障子を備えた上げ下げ窓において、障子重量と力学的平衡関係を保つことにより、障子を僅かな力で簡単にスライドさせ、且、任意の開位置で停止させるために用いられる。
【0029】
なお、図1乃至図4を参照すると、本発明の一実施形態に係るバランサ装置は、窓枠の上縁左隅位置へ取り付けられることを前提とした実施形態であって、同右隅位置への取り付けられる実施形態では、各構成部品の配置が左右対称になる。以下、図面に沿って具体的に説明する。
【0030】
図1乃至図4のバランサ装置は、ハウジング10と、吊索巻取り車11と、支軸12と、バネケース13と、吊索14とを有する。
【0031】
ハウジング10は、金属板材を角筒状に組み付け成形したものであって、見込幅方向Wに向かい合う第1のベース板101と、第2のベース板102との間に、吊索巻取り車11、及び、バネケース13の収納空間を有している。
【0032】
吊索巻取り車11は、円錐台形状であって、台上面と、台下面との間の円錐面に相当する部分に、巻取り面110を有している。巻取り面110は、面内に巻取り溝111を有している。巻取り溝111は、巻取り面110の表面上に開口しており、回転軸芯a12の軸方向、又は、見込み幅方向Wに沿って螺旋状に旋回している。図2の巻取り溝111は、見込幅方向Wに沿って6段(6巻き)の螺旋となっている。
【0033】
支軸12は、第1、第2のベース板101、102の板面の略中央部を、板面に対して直交する見込幅方向Wに貫通し、両端部がそれぞれ第1、第2のベース板101、102に、回転自在に軸止めされている。
【0034】
バネケース13は、ケース内部に渦巻きバネ130が収納されている。バネケース13の外周面、又は、上面には、吊索巻取り車11の台下面が回転力の伝達可能に結合されている。
【0035】
支軸12は、吊索巻取り車11と、バネケース13とを貫通している。吊索巻取り車11と、バネケース13とは、ハウジング10内に収納された状態で、支軸12を回転軸芯a12として、支軸12によって回転可能に保持されている。
【0036】
渦巻きバネ130は、内端が支軸12に結合されており、外端がケース内部から外部に引き出されて、バネケース13の外周面に結合されている(図4参照)。
【0037】
支軸12は、順方向(例えば右回転)、又は、逆方向(例えば左回転)に軸回転することにより、その軸回転方向に応じて渦巻きバネ130を拡縮させ、バネ圧を調節する。渦巻きバネ130のバネ圧は、バネケース13を介して吊索巻取り車11に伝えられ、障子重量と平衡する吊索巻上げ力Fとして利用される。
【0038】
吊索14は、巻取り溝111の内部に、巻き取り、又は、繰り出し可能に収納されている。吊索14は、一端が障子に結合され、他端に抜け止め部141を有している。抜け止め部141は、巻き始めにあたる吊索巻取り車11の台下面付近から、スリットを通して吊索巻取り車11の内部に案内され、吊索巻取り車11に保持されている。
【0039】
さらに、吊索14は、長さ寸法の任意の箇所に巻き込み阻止片142を有している。吊索14において、抜け止め部141から阻止片142までの長さは、吊索巻取り車11の吊索巻装量であって、具体的には巻取り溝111の全長に追従して設定することができる。
【0040】
図1乃至図4のバランサ装置において、ハウジング10は、阻止片142を掛け止めるため、吊索繰り出し部分の付近に吊索掛止部103を有している。
【0041】
吊索掛止部103は、一端側が第1のベース板101と一体的に結合しており、その結合縁に直交する両縁が2つのスリットによって切り欠かれている。吊索掛止部103は、他端が巻取り面110に向かって近接するように、結合縁で折り曲げられており、吊索掛止部103の板面と、巻取り面110との間が、阻止片142の直径よりも狭くなっている。この構造によると、吊索14を吊索巻取り車11に巻装する途中で、吊索掛止部103に対して阻止片142を掛け止めることができる。
【0042】
図1乃至図4のバランサ装置は、周知のラチェット機構として、ラチェット車15と、クリック16とを有している。ラチェット車15は、第1のベース板101上において、支軸12に一体的に結合されている。クリック16は、ラチェット車15に向けて付勢されており、クリック16の刃が、ラチェット車15の歯に係合することにより、支軸12の軸回転方向を一方に制限する。
【0043】
図1乃至図4のバランサ装置は、上述したシングルバランサ装置の基本的構成を有することに加え、さらに、回転阻止機構17を有する点に特徴の一つがある。回転阻止機構17は、渦巻きバネ130が、そのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる範囲内で、支軸12の軸回転を阻止する。
【0044】
渦巻きバネ130が、バネケース13の内部に収納されている実施形態では、渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態は、バネケース13の内容積、特に、渦巻きバネ130の拡張を制限するバネケース13の内部面積によって定まる。渦巻きバネ130の最外側がバネケース13の内面に当接してそれ以上拡張し得ない状態が、渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態である。
【0045】
さらに回転阻止機構17は、渦巻きバネ130が、そのとり得る最小収縮状態よりも緩んだ状態となる範囲内で、支軸12の軸回転を阻止する。渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態は、渦巻きバネ130が支軸12に巻きついて、それ以上径寸法が小さくならない状態が、渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態である。
【0046】
即ち、回転阻止機構17は、渦巻きバネ130の拡縮状態に基づいて、支軸12の軸回転の上限と、下限とを設けるものであり、支軸12の軸回転の上限は「渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態よりも緩んだ状態」であり、支軸12の軸回転の下限は「渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態」であり、この範囲内で、支軸12の軸回転を阻止する。
【0047】
回転阻止機構17について、具体的に図1乃至図4を参照して説明すると、回転阻止機構17は、第1の回転体171と、第2の回転体173とを有する。
【0048】
第1の回転体171は、第1のベース板101上に配置されている。第1の回転体171はリング状であって、支軸12に外嵌めに固定され、支軸12と一体的に軸回転する。第1の回転体171は、周縁に凸部172を有している。凸部172は、支軸12の径方向に突出しており、支軸12の軸回転に従って、支軸12の周囲を所定の半径で回転する。
【0049】
他方、第2の回転体173は、円板形の歯車状であって、円周に沿って複数の凹部174が等配されている。第2の回転体173は、第1の回転体171に隣接する第1のベース板101上において、軸体175によって、順方向、又は、逆方向に回転可能に保持されている。
【0050】
第2の回転体173は、凸部172が凹部174に1回噛み合う毎に、1歯分(歯ピッチ)だけ回転される。即ち、凹部174は、第1の回転体171が1回転するごとに、凸部172に一回噛み合い、凸部172との接触位置に応じて、第2の回転体173を、第1の回転体171の軸回転方向とは反対方向に歩進させる。
【0051】
図1乃至図4では、第2の回転体173は、12個の凹部174を有しているから、支軸12が12回回転した場合に、凸部172が凹部174に12回噛み合うこととなり、一周360度回転することとなる。なお、第2の回転体173の歩進の割合は、凸部172の設置数、及び、凹部174の設置数により適宜調節することができる。
【0052】
第2の回転体173は、振動等によって勝手に回転しないように、軸体175に板バネなどの弾性体を組み合わせることにより、ある程度の摩擦を利かせた状態で回転自在に支持されていることが好ましい。
【0053】
さらに、回転阻止機構17は、第1、第2の回転体171、173の歩進を阻止する機構として、第1の回転阻止片176と、第2の回転阻止片177とを有している。
【0054】
第1の回転阻止片176は、例えばストップピンであって、第2の回転体173の一面上において、所定の半径位置に立設されており、第2の回転体173の軸回転に従って、軸体175から所定の半径位置を保ちながら、円周状の軌跡を描いて移動する。
【0055】
第2の回転阻止片177は、第2の回転体173の一面上を、軸体175の方向に向かって伸びており、先端が第1の回転阻止片176の移動軌跡内に突出している。
【0056】
第2の回転阻止片177は、第1のベース板101の一面において、第2の回転体173の厚みより高い位置にネジ止めされている。図1乃至図4の第2の回転阻止片177は、マウント部104に載置されている。
【0057】
マウント部104は、第1のベース板101に設けられており、第2の回転体173の付近において、吊索繰り出し部分にあたる隅部に配置され、第1のベース板101の一面よりも高い位置に高低差をもって形成されている。
【0058】
第2の回転阻止片177は、マウント部104にネジ止めされている。ここで、第2の回転阻止片177の他面と、これに向かい合う第1のベース板101の一面との間には、マウント部104の高さに応じた隙間が確保されており、この隙間に第2の回転体173が配置されている。
【0059】
第2の回転阻止片177は、第2の回転体173の一面上において、第2の回転体173の回転を360度より小さい範囲で阻止する。具体的に、図1に示す第2の回転阻止片177の先端は、三角形形状となっており、第1の回転阻止片176の位置に応じて、先端面の一方と、先端面の他方がそれぞれ接触する。
【0060】
第2の回転阻止片177は、第2の回転体173の回転の始点(P1)において第1の回転阻止片176に接触することにより、さらに渦巻きバネ130が緩む方向へと、支軸12が回転することを阻止する。他方、第2の回転体173の回転の終点(P2)において、第1の回転阻止片176に接触することにより、さらに渦巻きバネ130が巻き締まる方向へと、支軸12が回転することを阻止する。
【0061】
図3、及び、図4を参照すると、バランサ装置は、取付部18を有している。取付部18は、見付長さ方向Lに向かい合うハウジング10の側面であって、予め窓枠に固定される支持具(図示しない)と組み合わされ、バランサ装置を窓枠(図示しない)に取り付けるために用いられる。図4に示す取付部18は、略L字状の板面内に、2つの引っ掛け孔181、182と、屈曲部183と、螺子止め孔184とを有している。
【0062】
2つの引っ掛け孔181、182は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tでみた板面の上側において、見込幅方向Wに間隔を隔てて横並びに配置されている。他方、螺子止め孔184は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tでみた板面の下側において、引っ掛け孔181と同一線上に配置されている。
【0063】
2つの引っ掛け孔181、182と、螺子止め孔184とは、見付高さ方向Tに離れており、好ましくは、それぞれの中心を結んだ線が直角三角形となるように配置されている。この構成によると、取付姿勢が安定する。
【0064】
屈曲部183は、螺子止め孔184と、引っ掛け孔181との間に配置されている。屈曲部183は、支持具28に対して凹凸嵌合することにより、取付姿勢を安定させる。
【0065】
図5は図1乃至図4に示したバランサ装置の一部を破断して示す正面図、図6は図5に示した状態のあとの状態を示す正面図である。図5及び図6において、図1乃至図4に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0066】
この種のバランサ装置において、巻取り溝111に巻装されている吊索14には、常に引っ張り力が加えられていなければならない。吊索14は、通常、複数の金属線材を縒り合わされた構造であり弾性を有しているから、吊索14に対する引っ張り力が失われると、吊索14が巻取り溝111から飛び出して、支軸12に巻き込まれるなど動作不良を引き起こすからである。
【0067】
この点、図5及び図6は、巻取り溝111に巻装されている吊索14に引っ張り力を加えるため、渦巻きバネ130のバネ圧を初期設定する「張力調整巻き作業」を示している。以下、具体的に説明する。
【0068】
まず、図5を参照すると、マウント部104に第2の回転阻止片(177)が取り付けられていない状態であって、第2の回転体173が自在に回転できる状態で、支軸12を、巻取り溝111の螺旋方向に回転させることにより、吊索14を巻取り溝111に巻き取らせる。
【0069】
吊索14は、抜け止め部141から阻止片142までの長さが、巻取り溝111の全長に追従して設定されているから、吊索14が巻取り溝111に巻きつけられる途中で、阻止片142が吊索掛止部103に衝突した来たときに、巻取り溝111に対する吊索14の巻装が完了する。
【0070】
次に、図6を参照すると、吊索14の巻装が完了した状態において、阻止片142は吊索掛止部103に掛け止められている。この状態で、吊索巻取り車11には、支軸12の回転方向とは逆方向の力が加えられている。この状態からさらに渦巻きバネ130を巻き締める方向に支軸12を回転させることにより、渦巻きバネ130にバネ圧が生じ、このバネ圧が、吊索14を巻取り溝111の底面に向かって引っ張る力として作用する。
【0071】
具体的に、阻止片142が吊索掛止部103に突き当たっている状態から、支軸12をラチェット車15の歯の1〜2個分回転させると、渦巻きバネ130の拡縮状態は、渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる。このとき、渦巻きバネ130に生じたバネ圧が吊索14に伝わることにより、吊索14が吊索巻取り車11の巻取り溝111に嵌り込んで弛みが生じなくなる。
【0072】
さらに、上述した状態で第2の回転阻止片177をマウント部104上にネジ止めし、第1、第2の回転阻止片176、177の接触によって、第2の回転体173の回転を阻止する。第2の回転体173の回転が阻止されることにより、第1の回転体171の回転が阻止され、さらには支軸12の回転も阻止されるから、渦巻きバネ130が緩む方向へ支軸12が回転することを阻止する。
【0073】
第2の回転体173は、図6に示した状態のときに、第1の回転阻止片176が所定の位置(軸回転の始点)に来るように、第1の回転体171との噛み合わせ位置を予め調節しておく。
【0074】
なお、張力調整巻き作業における渦巻きバネ130の巻き回数は、最小収縮状態となる渦巻きバネ130の最大巻き締め回数から、巻取り溝111の巻き数を引いたものを基準にして定められる。例えば、渦巻きバネ130の最大巻き締め回数が15回である場合、図1乃至図6に示す吊索巻取り車11の巻取り溝111は6段(6巻き)であるから、張力調整巻きの巻き回数は9回以内で行うことができる。
【0075】
図1乃至図6を参照して説明した回転阻止機構の利点について、さらに図7乃至図11を参照しながら説明する。図7は本発明のもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。また、図8乃至図11は、図7に示したバランサ装置の使用態様について、簡略化して示す正面図である。図7乃至図11において、図1乃至図6に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0076】
まず、図7のバランサ装置は、図1乃至図6を参照して説明したバランサ装置の基本的構成を全て有し、さらに指標19を有している点で特徴がある。
【0077】
指標19は、支軸12の回転数、及び、渦巻きバネ130の巻き締め数を、数字、文字または記号によって表示するものであって、第1のベース板101の表面上に、軸体175から所定の半径位置を保ちながら、円周状に印刷、又は、刻印されている。
【0078】
他方、第2の回転体173は、貫通孔170を有している。貫通孔170は、所定の指標19を見えるようにする露出窓であって、軸体175から所定の半径位置に開孔している。この構造によると、第2の回転体173の回転位置に応じて、貫通孔170が所定の指標19と重なり合うように移動することにより、吊索巻上げ力Fの調整に当たって、調整者が支軸12の回転数を頭で数えながら作業を行う必要がなくなる。従って、数え間違いなどにより吊索巻上げ力Fが、適正値に満たないなどの不具合を回避することができるとともに、施工効率が向上する。
【0079】
この種の上げ下げ窓において、障子重量は、サイズや材質などによって様々に異なるから、バランサ装置の吊索巻上げ力Fと、障子重量との力学的な平衡を図るためには、施工現場において、取り付けに係る障子重量に併せて渦巻きバネ130の拡縮状態を調節する必要がある。この作業は「調節巻き」と呼ばれている。以下、図7のバランサ装置を用いた場合の調整巻き作業について、図8乃至図11を参照して説明する。
【0080】
まず、渦巻きバネ130が、バネケース13の内部に収納されている実施の形態では、渦巻きバネ130の最外側がバネケース13の内面に当接してそれ以上拡張し得ない状態が、渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態である。以下、説明の都合上、一点鎖線で示すバネケース13が、そのまま渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態(13)として説明する。
【0081】
図8に示す状態において、渦巻きバネ130は、例えば、図5及び図6を参照して説明した巻き上げ作業により、そのとり得る最大拡張状態(13)よりも巻き締まった状態130aとなっている。
【0082】
第2の回転阻止片177は、先端面の一方が、第1の回転阻止片176に接触することにより、第2の回転体173の右回転を阻止しているから、もって支軸12が渦巻きバネ130を緩める方向へ回転(左回転)することが阻止される。
【0083】
第2の回転阻止片177は、第2の回転体173の回転の始点P1を設定し、且、始点P1を支軸12の軸回転の下限とすることにより、渦巻きバネ130が巻き締め状態130aよりも緩むことを阻止している。貫通孔170は、第2の回転体173が、始点P1にある指標19として、「S」に重なっている。
【0084】
図9に示す状態は、図8に示した状態のあとの状態であって、渦巻きバネ130の巻き締め方向に、支軸12を回転操作することにより、支軸12とともに回転する凸部172が、凹部174に噛み合い、第2の回転体173を、第1の回転体171の軸回転方向とは反対方向に歩進させる。
【0085】
図10に示す状態は、図9に示した状態のあとの状態であって、第2の回転体173は、凸部172と凹部174とが1回噛み合う毎に、1歯分(歯ピッチ)だけ回転される。即ち、凹部174は、第1の回転体171が1回転するごとに、凸部172に一回噛み合い、凸部172との接触位置に応じて、第2の回転体173を、第1の回転体171の軸回転方向とは反対方向に歩進させる。図10において、貫通孔170は、第2の回転体173の軸回転にともなって移動し、支軸12の回転数に対応する指標19として、「1」に重なっている。
【0086】
図11に示す状態は、図10に示した状態のあとの状態であって、凸部172と凹部174とが11回噛み合うことにより、通孔170を通じて外部に表示される指標19が「11」を示したときに、支軸12の回転操作を停止する。
【0087】
指標19が「11」を示した状態で、渦巻きバネ130は、そのとり得る最小収縮状態130bよりも緩んだ状態となっている。第2の回転阻止片177は、先端面の他方が、第1の回転阻止片176に接触することにより、第2の回転体173の左回転を阻止しているから、もって支軸12が渦巻きバネ130を巻き締める方向へ回転(右回転)することが阻止される。換言すれば、第2の回転阻止片177は、第2の回転体173の回転の終点P2を設定し、且、終点P2を支軸12の軸回転の上限とすることにより、渦巻きバネ130が最小収縮状態130bとなることを阻止している。
【0088】
図8乃至図11を参照して説明したように、バランサ装置の調整巻き作業において、渦巻きバネ130の巻き締めは、第1の回転阻止片176が第2の回転阻止片177に当たる始点P1〜終点P2の範囲内に限定され、第2の回転体173の回転は、最大でも360度以下の範囲内に留められる。
【0089】
回転阻止機構17は、渦巻きバネ130の拡縮状態に基づいて、支軸12の軸回転に上限と、下限とを設けるものであり、支軸12の軸回転の上限は「渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態よりも緩んだ状態」であり、支軸12の軸回転の下限は「渦巻きバネ130のとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態」であり、この範囲内で、支軸12の軸回転を阻止する。
【0090】
従来、図8乃至図11を参照して説明した調節巻き作業は、バランサ装置を窓枠に取り付け、吊索14の一端を障子に結合した状態で行われるが、障子を閉じた位置で渦巻きバネ130を緩める方向に調節すると、吊索巻上げ力Fが過剰に失われてしまう傾向にある。その結果、施工後に障子を上昇させた時に、吊索14が巻取り車11に巻き取られずに弛みが生じ、この弛みが巻取り溝111から飛び出して、支軸12に巻き込まれて作動不能になるなどの不具合が生じる。
【0091】
通常、障子を閉じた位置で調節巻き作業を行うと、吊索巻上げ力Fが過剰に緩んでしまう「空巻き戻し」が生じやすいから、適切な施工手順では、障子を開けた位置で渦巻きバネ130を巻き締める方向に調節巻き作業を行うこととされている。しかし、障子を閉じた位置で調節巻き作業は、楽に作業を行えるため、現場作業員は不適切な施工手順と知りつつ、これを行うことが多く、バランサ装置が作動しなくない原因の一つとなっている。
【0092】
本発明に係るバランサ装置では、第2の回転体173の軸回転の始点P1において、第1の回転阻止片176は、第2の回転阻止片177に支持されており、渦巻きバネ130を緩める方向に支軸12を回転させることができない。従って、第2の回転阻止片177の取り付け後の渦巻きバネ130は、巻き締め状態130aより緩むことはない。しかも巻き締め状態130aにおいて、吊索14には引っ張り力が常に作用しているので、吊索14が巻取り溝111からはみ出し、外れることはない。
【0093】
他方、適切な施工手順として、障子を開けた位置で調節巻き作業を行う場合には、予め障子を閉じた位置を想定して渦巻きバネ130のバネ巻き代を残しておかなければならない。バネ巻き代を残さずに渦巻きバネ130を過剰に巻き締めてしまうと、障子が下がりきらなくなる不具合が生じる。このように、調節巻き作業を、適切な施工手順で行うには作業員の熟練性が求められるから、効率よく作業を行うことができないという問題が生じる。
【0094】
本発明に係るバランサ装置では、回転阻止機構17が、第2の回転体173の軸回転の終点P2において、「渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態130bよりも緩んだ状態」を支軸12の軸回転の上限としているから、指標19の上限まで渦巻きバネ130を巻き締めても障子を下降させたときに渦巻きバネ130が巻き締まる余裕が残っている。従って、障子の下降が途中で止まることはない。
【0095】
なお、第2の回転阻止片177を取り外すことにより、第2の回転体173は、回転自在になるから、例えば再調整が必要な場合には、第2の回転阻止片177を取り外すことにより、図8乃至図11の調節作業をやり直すことができる。
【0096】
図1乃至図11を参照して説明したバランサ装置は、窓枠などと組み合わされて、上げ下げ窓を構成する。次に、本発明に係るバランサ装置を用いた上げ下げ窓について説明する。図12は本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓について一部を省略して示す正面図、図13は図8に示した上げ下げ窓の一部を破断して、バランサ装置の組み付け方法を示す拡大正面図である。図12及び図13において、図1乃至図11に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0097】
図12を参照すると、上げ下げ窓は、バランサ装置1と、窓枠2と、室内側障子3と、室外側障子4とを有する。
【0098】
バランサ装置1は、窓枠2の上枠22の両隅付近に固定され、吊索巻取り車11から繰り出された吊索14は、室内側障子3の側部に突出した結合部30に結合されている。室内側障子3は、縦枠21に沿って見付け高さ方向Tにスライド自在となっている。なお、バランサ装置1は、吊索14の落下点が縦枠21の側となるように、吊索巻取り車11の上面が室内側に配向されている。
【0099】
バランサ装置1は、縦枠21において、窓枠幅方向に向かい合う隅部に取り付けられている。窓枠2に対するバランサ装置1の取り付け作業について、図13を参照すると、バランサ装置1は、予め窓枠2に固定される支持具28と組み合わされ、取付部18と、支持具28との結合により、窓枠2に取り付けられる。
【0100】
取付部18、及び、支持具28は、相互に結合可能な構造を有している。図示からは必ずしも明らかではないが、支持具28は、2つの引っ掛け突起281、282が、見付高さ方向Tの上側において、見込幅方向に間隔を隔てて横並びに配置されている。螺子止め孔284は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tの下側において、引っ掛け突起281と同一線上に配置されている。
【0101】
屈曲部283は、螺子止め孔284と、引っ掛け突起281との間に配置されている。屈曲部283は、取付部18の屈曲部183に対して凹凸嵌合することにより、取付姿勢を安定させる。
【0102】
取付部18は、いわゆる先端引っ掛け方式によって、引っ掛け孔181、182に、引っ掛け突起281、282が引っ掛けられ、支持具28の螺子止め孔184と、取付部18の螺子止め孔284とを位置決めした状態で、ネジを通して一体的に固定する。
【0103】
バランサ装置1は、吊索巻取り車11の巻上げ力により、室内側障子3の障子重量と力学的平衡関係を保ちながら、室内側障子3を吊り下げている。具体的に、バランサ装置1は、室内側障子3の上げ下げに連動して、吊索14を吊索巻取り車11に巻き取り、又は、繰り出す。
【0104】
図12及び図13の上げ下げ窓は、図1乃至図11を参照して説明したバランサ装置1の利点を全て有することができる。例えば、バランサ装置1において、吊索巻取り車11と、バネケース13とは、支軸12を中心として軸回転可能に保持されている。そして、支軸12を回転させて渦巻きバネ130を拡縮することによりバネ圧を調節する。渦巻きバネ130のバネ圧は、バネケース13を介して吊索巻取り車11に伝えられ、障子3の障子重量と平衡する吊索巻上げ力Fとして利用される。したがって渦巻きバネ130のバネ圧を調整することにより、吊索巻上げ力Fを障子重量と平衡させ、障子3を、僅かな力で簡単に上げ下げさせ、任意の開位置で停止させることができる。
【0105】
さらに、回転阻止機構17は、渦巻きバネ130の拡縮状態に基づいて、支軸12の軸回転に上限と、下限とを設けることができる。即ち、支軸12は、第2の回転体173の軸回転の始点P1において、渦巻きバネ130を緩める方向に回転することができない。従って、第2の回転阻止片177を取り付け後の渦巻きバネ130は、巻き締め状態130aより緩むことはないから、バランサ装置の取り付け作業において、「空巻き戻し」が行われる問題を回避することができる。
【0106】
同様に、回転阻止機構17は、第2の回転体173の軸回転の終点P2において、「渦巻きバネ130のとり得る最小収縮状態130bよりも緩んだ状態」を支軸12の軸回転の上限としているから、指標19の上限まで渦巻きバネ130を巻き締めても障子3を下降させたときに渦巻きバネ130が巻き締まる余裕が残っている。従って、バランサ装置の取り付け作業において、「過剰巻き」が行われる問題を回避することができる。
【0107】
図14乃至図16は、本発明のさらにもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。図14乃至図16において、図1乃至図13に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0108】
図14乃至図16に示すバランサ装置の実施例は、回転阻止機構17の構造に工夫を加えた点に特徴がある。以下、特徴部分を中心に説明する。この構造によっても、図1乃至図13を参照して説明した利点を全て有しうることは明白である。
【0109】
図14のバランサ装置において、第2の回転体173は、円周の一部が凹状に湾曲し、この欠けこみ部分で所定の指標19を露出する構造となっている。
【0110】
図15のバランサ装置において、回転阻止機構17は、2つの回転阻止片176a、176bを有している。2つの回転阻止片176a、176bは、第1の回転阻止片176を、間隔を隔てて複数立設したものである。具体的に、2つの回転阻止片176a、176bは、軸体(175)に対して直交する位置に立設されており、支軸12の回転方向に応じて、第2の回転阻止片177にそれぞれ衝突し、第2の回転体173の回転を270度の範囲で阻止する。
【0111】
この構造によると、図1乃至図13を参照して説明した利点を全て有することができるとともに、2つの回転阻止片176a、176bが、第2の回転体173の回転を360度より小さい範囲で阻止するから、渦巻きバネ130の拡縮状態を細かく設定することができる。
【0112】
さらに、第1の回転阻止片176は、支軸12の軸回転に上限と、下限とを設けるものであるから、上限と下限に対応して、2つの回転阻止片176a、176bを設けることができるのは明白である。なお、図15において一点鎖線で示す一つの回転阻止片176を設けることにより、2つの回転阻止片176a、176bを設けた場合と同じ効果を得ることができる。
【0113】
図16のバランサ装置において、第2の回転体173は、半円月状であって、円弧部分の周縁に沿って複数の凹部174を有し、第1の回転体171に隣接する第1のベース板101上において、回転可能に軸止めされている。
【0114】
さらに、第2の回転体173は、その回転方向で見た先端縁、及び、後端縁に、それぞれ第1の回転阻止用凹部178と、第2の回転阻止用凹部179とを有している。
【0115】
回転阻止片176は、第1のベース板101上において、第2の回転体173の回転領域内に取り付けられ、支軸12の回転方向に応じて、第1、第2の回転阻止用凹部178、179にそれぞれ衝突し、第2の回転体173の回転を180度の範囲で阻止する。
【0116】
回転阻止片176は、第2の回転体173の回転の始点において第1の回転阻止用凹部178に当接し、渦巻きバネ130が収縮する方向へ支軸12が回転することを阻止するとともに、第2の回転体173の回転の終点において第2の回転阻止用凹部179に当接し、渦巻きバネ130が拡張する方向へ支軸12が回転することを阻止する。
【0117】
図16のバランサ装置の構造によっても、図1乃至図13を参照して説明した利点を全て有することができるのは明白である。
【0118】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。
【図2】図1に示したバランサ装置の底面図である。
【図3】図1に示したバランサ装置の左側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図1乃至図4に示したバランサ装置の一部を破断して示す正面図である。
【図6】図5に示した状態のあとの状態を示す正面図である。
【図7】本発明のもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。
【図8】図7に示したバランサ装置の使用態様について、簡略化して示す正面図である。
【図9】図8に示した状態のあとの状態を示す正面図である。
【図10】図9に示した状態のあとの状態を示す正面図である。
【図11】図10に示した状態のあとの状態を示す正面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓について一部を省略して示す正面図である。
【図13】図8に示した上げ下げ窓の一部を破断して、バランサ装置の組み付け方法を示す拡大正面図である。
【図14】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。
【図15】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。
【図16】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る上げ下げ窓用バランサ装置の正面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 上げ下げ窓用バランサ装置
12 支軸
130 渦巻きバネ
130a 最大拡張状態よりも巻き締まった状態
130b 最小収縮状態
14 吊索
17 回転阻止機構
3 室内側障子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻きバネと、支軸と、回転阻止機構とを含む上げ下げ窓用バランサ装置であって、
前記渦巻きバネは、内端が前記支軸に結合されており、
前記支軸は、軸回転方向に応じて前記渦巻きバネを拡縮させ、
前記回転阻止機構は、前記渦巻きバネのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態となる範囲内で、前記支軸の軸回転を阻止している、
上げ下げ窓用バランサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載された上げ下げ窓用バランサ装置であって、
前記回転阻止機構は、前記渦巻きバネのとり得る最大拡張状態よりも巻き締まった状態を下限とし、前記渦巻きバネのとり得る最小収縮状態よりも緩んだ状態を上限として、前記下限から前記上限との範囲内で前記支軸の軸回転を阻止している、
上げ下げ窓用バランサ装置。
【請求項3】
上げ下げ窓用バランサ装置と、障子とを有する上げ下げ窓であって、
前記上げ下げ窓用バランサ装置は、渦巻きバネと、支軸と、回転阻止機構と、吊索とを含んでおり、
前記渦巻きバネは、内端が前記支軸に結合されており、
前記支軸は、軸回転方向に応じて前記渦巻きバネを拡縮させ、
前記回転阻止機構は、前記支軸の軸回転を阻止し、
前記障子は、前記バランサ装置に備えられた吊索により吊り下げられている、
上げ下げ窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−228285(P2009−228285A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74309(P2008−74309)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(591073810)株式会社イリエ (5)
【Fターム(参考)】