説明

上半身用衣服

【課題】 1着の衣服で複数通りの着こなしを容易に実現することができる上半身用衣服を提供する。
【解決手段】 1着の上半身用衣服1では、上下と前後とを反転して、(a)に示すキャミソールと(b)に示すプルオーバーとの少なくとも2通りの着こなしが可能となる。キャミソールとしての着こなしとプルオーバーとしての着こなしでは、上下を反転させ、キャミソールでは、肩の上で前後の肩ひも6を結んで支持する。袖部3は、胴の脇部分に位置し、使用されない状態となるけれども、ファッション的なデザイン上、許容しうる装飾となる。プルオーバーでは、袖部3を、本来の袖として使用する。肩ひも6は、胴の脇部分で蝶結びしている。単に垂らしておくだけでもよい。袖付側開口4の前側には、3段のボタン7a,7b,7cが設けられ、外し方の組合せで首周りの周長が変更可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の上半身に上着として着用する上半身用衣服、特に1着で複数通りの着こなしが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1着で2通りの着こなしが可能な衣服として、表裏逆に着用可能でリバーシブルとも呼ばれるものが知られている。また、胴体の胸部からくびれ部にかけて着用するベスト状の上着を、上着として使用しない場合には上下を反転させて腰部からスカート状に着用して、保持・携行可能にする構成も提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。さらに、前後逆に着用可能であり、襟刳りの深さが異なる着こなしが可能なキャミソール、タンクトップ等のノースリーブアンダーシャツも提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0003】
下着では、着用する方向によらず同一の状態となることを可能とし、前後左右上下を考慮することなく着用することが可能な三方両面下着も提案されている(たとえば、特許文献3参照。)。これに対して上着では、上下を合わせて着用したときに、意味のある全体の図形が表徴される絵合わせツーピースも提案されている(たとえば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第3064975号公報
【特許文献2】実用新案登録第3107781号公報
【特許文献3】実開平6−4003号公報
【特許文献4】実用新案登録第3090124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衣服の着こなしは、着用する衣服と所持品等の調和を図るコーディネイトに基づくものであり、登場するシーンに合わせて多様に可能であることが要望される。多様な着こなしを可能にするには、衣服が多く必要となる。特許文献4のような考え方では、複数着の衣服で1通りの着こなしを実現するので、さらに多くの衣服を必要とする。特許文献3を上着に適用するとしても、着こなしに関しては1通りしか可能にはならない。
【0005】
1着の衣服で複数通りの着こなしが可能であれば、少ない数の衣服で多様な着こなしを実現することができる。ただし、リバーシブルの衣服では、外側に出る色や模様を変化させることはできるけれども、全体としてのシルエットにはあまり変化を与えることはできない。特許文献2のような襟刳りの変化も、全体としてのシルエットにはあまり変化を与えることはできない。したがって、これらの衣服の1着で複数通りの着こなしを実現することは、困難となる。特許文献1のようなベスト状の上着のスカート状の着用では、上着としての着用ではなくなる。このため、上着としての着こなしでは、1通りしか実現しえない。
【0006】
本発明の目的は、1着の衣服で複数通りの着こなしを容易に実現することができる上半身用衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも上下反転を含む複数の態様で着用可能な上半身用衣服であって、
両方に胴体の身幅を収容可能な周長の開口を有する胴部と、
胴部の開口の一方側に設けられ、該一方の開口が上になる態様では袖となり、他方の開口が上になる態様では胴の脇部分の装飾となる袖部とを、
含むことを特徴とする上半身用衣服である。
【0008】
また本発明は、前記他方の開口が上になる態様で、該開口には胴体の胸から上を通し、該開口の近傍を肩から吊下げ、前記一方の開口が上になる態様では胴体側方に配置される吊り部を、さらに含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記他方の開口が上になる態様では前記吊り部としての肩ひもで吊下げる肩ひも付きキャミソールとなり、前記一方の開口が上になる態様では袖付きのプルオーバーとなることを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記胴部は、前記開口のうちの少なくとも一方で前記周長を変更可能であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前後を反転しても着用可能であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記胴部および前記袖部をそれぞれ筒状に編成しながら、胴部および袖部の接合も編機上で行う無縫製ニットで編成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくとも上下反転を含む複数の態様で着用可能な上半身用衣服は、胴部と袖部とを含む。胴部は、両方に胴体の身幅を収容可能な周長の開口を有するので、いずれの開口が下になっても、胴体の腹部や腰部を覆うことができる。袖部は、胴部の開口の一方側に設けられ、その一方の開口が上になる態様では袖となって使用される。袖部は、他方の開口が上になる態様では袖としては使用されないけれども、胴の脇部分の装飾となるので、衣服のデザインとして許容される。袖部が胴部の一方側に設けられているので、上下反転でシルエットに変化を与えることができ、1着の上半身用衣服で少なくとも2通りの着こなしを容易に実現することができる。
【0014】
また本発明によれば、吊り部を、一方の開口が上になって胴体の胸から上を通す態様では、開口の近傍を肩から吊下げるために使用することができる。他方の開口が上になる態様では、一方の開口は下になり、吊り部は胴体側方に配置されるけれども、衣服のデザインとしては装飾として許容することができる。
【0015】
また本発明によれば、吊り部が肩ひもとなって、他方の開口が上になる態様では肩ひもで吊下げる肩ひも付きキャミソールとして着用することができる。一方の開口が上になる態様では袖付きのプルオーバーとして着用することができるので、1着の上半身用衣服を2つの異なるアイテムの衣服として着こなすことができる。
【0016】
また本発明によれば、胴部は、開口のうちの少なくとも一方で周長を変更可能である。周長を変更可能にするためには、たとえばボタンやファスナを設ければよい。周長を変更可能な開口を上にすると、ボタンやファスナを外して折曲げ、開口の周囲に襟を設けることができる。周長を変更可能な開口を下にすると、腰部や腹部の膨らみに合わせて周長を調整したり、腹部の臍などを露出させる着こなしを実現することができる。
【0017】
また本発明によれば、前後を反転しても着用可能であるので、上下反転による2通りの着こなしよりも多くの着こなしを実現することができる。
【0018】
また本発明によれば、上半身用衣服は、前記胴部および前記袖部をそれぞれ筒状に編成しながら、胴部および袖部の接合も編機上で行う無縫製ニットで編成されるので、生地の伸縮性に優れ、身体の形状にフィットさせることができる立体的な形状に効率よく編成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の実施の一形態である上半身用衣服1の基本的な着こなし状態を示す。図1は正面から、図2は左側面から見た状態を、それぞれ示す。図1および図2で、(a)はキャミソールとしての着こなし状態を示し、(b)は袖付のプルオーバーとしての着こなし状態を示す。キャミソールとしての着こなしとプルオーバーとしての着こなしでは、上下を反転させ、さらに前後も反転させている。
【0020】
上半身用衣服1は、大略的に筒状の胴部2を有する。胴部2の筒状の一端側には袖部3が付加される袖付側開口4が設けられる。胴部2の筒状の他端側には、袖部3が付加されない袖無側開口5が設けられる。袖付側開口4および袖無側開口5は、ともに人体の上半身に着用する際に、胴の身幅を収容しうるだけの周長を有する。
【0021】
(a)に示すようなキャミソールとしての着こなしでは、袖無側開口5を上にして、人体の胸部を袖無側開口5に貫通させる。人体の肩は、胴部2外に露出する。袖無側開口5の両側には、前後にそれぞれ肩ひも6を付加し、肩の上で前後の肩ひも6を結んで支持する。下側となる袖付側開口4には、人体の腰部を貫通させる。袖部3は、胴の脇部分に位置し、使用されない状態となるけれども、適宜折込むなどの処理で、ファッション的なデザイン上、許容しうる状態となる。
【0022】
(b)に示すようなプルオーバーとしての着こなしでは、袖付側開口4を上にして、人体の首部を袖付側開口4に貫通させる。人体の肩も胴部2内に収容し、袖部3の開口から人体の腕を突出させる。すなわち、袖部3は、本来の袖として使用する。下側となる袖無側開口5には、人体の腰部を貫通させる。肩ひも6は、胴の脇部分で蝶結びしている。単に垂らしておくだけでもよいので、変化を付けたコーディネイトが可能となる。袖付側開口4の後側には、図3に示す3段のボタン7a,7b,7cが設けられ、外し方の組合せで首周りの周長が変更可能になっている。
【0023】
図3は、図1および図2に示す上半身用衣服1で可能な3通りのコーディネイトについての考え方を示す。図1および図2の(a)に示すように、袖無側開口5を上にして肩ひも6で吊下げると、キャミソール1aとして着こなすことができる。キャミソール1aの上下および前後を反転させることで、図1および図2の(b)に示すように、プルオーバー1bとして着こなすことができる。
【0024】
図4は、図1および図2の(a),(b)で前後を反転させた着こなしをそれぞれ示す。特に図4(b)は、図3に示すプルオーバー1cであり、プルオーバー1bの前後を逆にして着こなしている。プルオーバー1cでは、襟刳の前側にボタン7a,7b,7cが設けられ、ボタン7a,7b,7cの外し方の組合せで種々の着こなしが可能となる。たとえば、図4の(b)に示すように、上段のボタン7aのみ外すと、首周りを少しだけラフな感じにすることができる。ボタン7a,7b,7cを全部外して折曲げれば、襟として機能させることができる。キャミソール1aとしての着こなしでは、図1および図2の(a)と図4の(a)とで、人体の胸部が貫通する袖無側開口5の襟刳の深さを、異ならせている。
【0025】
なお、図3のキャミソール1aでは前面下部にボタン7a,7b,7cが配置されるけれども、図1および図2の(a)では、下側の裾を巻込んでいるので、ボタン7a,7b,7cは隠れている。ボタン7a,7b,7cの少なくとも一部を露出させるような着こなしも可能である。また露出させて、ボタン7a,7b,7cを外せば、臍出しの着こなしも可能となる。図4の(a)では、ボタン7a,7b,7cが人体の尻部に臨むので、周長の調整を有効に行うことができる。
【0026】
図1、図2および図4に示す上半身用衣服1は、前後に針床を有する横編機で、胴部2および袖部3をそれぞれ筒状に編成し、相互の接合も編機上で継目なしに行うことができる無縫製ニットで肩ひも6も含めて一体的に編成し、さらにインクジェットプリンタで水玉模様の柄を施している。柄としては、前後で異なり、しかも調和していることが望ましい。編地の場合、編組織による柄表現も可能である。無縫製ニットで編成することで、生地の伸縮性が良好となり、人体にフィットさせることができる。編地や布帛のパーツを縫い合せて形成することができるのはもちろんである。パーツの組合せでは、模様、組織、素材などに、さらに変化を持たせることができる。
【0027】
なお、肩ひも6は、一体ではなく、別に設けることもできる。肩ひも6が別体であれば、プルオーバー1b,1cとしての着こなしで肩ひも6を外すことも可能となる。また、ボタン7a,7b,7cに代えて、ファスナなどを使用することもできる。
【0028】
模様をインクジェットプリンタで施す場合、生地とインクの浸透性との組合せで、種々の変化を与えることができる。インクの浸透性が無ければ、生地の両面に異なる模様を印刷して、リバーシブルのように、裏表逆にする着こなしも可能になる。インクの浸透性が小さい場合は、印刷される表面と裏面とで模様の濃淡が生じ、表裏で異なる模様のように見えるので、裏表逆にする着こなしが可能になる。このように、表裏を逆にすれば、図3に示す3通りの着こなしに対し、2倍の6通りの着こなしが可能となる。図1および図2と図4とでの合計4通りに裏表逆を組合せれば、1着の上半身用衣服1で合計8通りの着こなしが可能となる。
【0029】
以上のように、本発明の上半身用衣服1は、キャミソール1aとプルオーバー1b,1cとしての着こなしを、上下を逆にすることで可能にしている。上下を逆にすることで可能となる着こなしの組合せは、これに限られず、たとえばタンクトップとTシャツとの組合せも可能である。さらに、上半身のみの着用ではなく、下半身の一部も含めて着用するワンピースで袖付と袖無とのコーディネイトも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の一形態である上半身用衣服1の基本的な着こなし状態を正面から見た状態として示す図である。
【図2】図1の上半身用衣服1を左側方から見た状態として示す図である。
【図3】図1および図2に示す上半身用衣服1で可能な3通りのコーディネイトについての考え方を示す図である。
【図4】図1の上半身用衣服1で前後を反転させて着こなしている状態を正面から見た状態として示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 上半身用衣服
1a キャミソール
1b,1c プルオーバー
2 胴部
3 袖部
4 袖付側開口
5 袖無側開口
6 肩ひも
7a,7b,7c ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上下反転を含む複数の態様で着用可能な上半身用衣服であって、
両方に胴体の身幅を収容可能な周長の開口を有する胴部と、
胴部の開口の一方側に設けられ、該一方の開口が上になる態様では袖となり、他方の開口が上になる態様では胴の脇部分の装飾となる袖部とを、
含むことを特徴とする上半身用衣服。
【請求項2】
前記他方の開口が上になる態様で、該開口には胴体の胸から上を通し、該開口の近傍を肩から吊下げ、前記一方の開口が上になる態様では胴体側方に配置される吊り部を、さらに含むことを特徴とする請求項1記載の上半身用衣服。
【請求項3】
前記他方の開口が上になる態様では前記吊り部としての肩ひもで吊下げる肩ひも付きキャミソールとなり、前記一方の開口が上になる態様では袖付きのプルオーバーとなることを特徴とする請求項2記載の上半身用衣服。
【請求項4】
前記胴部は、前記開口のうちの少なくとも一方で前記周長を変更可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の上半身用衣服。
【請求項5】
前後を反転しても着用可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の上半身用衣服。
【請求項6】
前記胴部および前記袖部をそれぞれ筒状に編成しながら、胴部および袖部の接合も編機上で行う無縫製ニットで編成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の上半身用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−127701(P2008−127701A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312150(P2006−312150)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】