説明

上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法及びそれに使用するシーリング材組成物

【課題】 上塗り塗装物件向けシーリング材組成物を目地に充填、施工して上塗り塗装するまでの期間が短期の場合はもちろん、特に長期間経過した場合に、塗装後に塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性が低下せず、良好なものとなるシーリング材の施工方法、及びシーリング材組成物硬化後に上塗り塗膜の付着性が良好で、低モジュラス、高伸びで、接着性や耐水性、耐熱性等の耐久性に優れた上塗り塗装仕様向けのシーリング材組成物を提供する。
【解決手段】 常温硬化性樹脂と酸化防止剤とを少なくとも含有するシーリング材組成物、お呼びこのシーリング材組成物を目地に充填施工し、期間をおいて上塗り塗料を塗布施工する上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上塗り塗膜の付着性に特に優れたシーリング材の施工方法及びそれに使用するシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モルタルやコンクリート等の湿式の材料、又は窯業系や金属系のサイディング、ALC板等の乾式の材料などから形成された建築物の外壁やサッシ周り、或いは土木構築物等において、板や部材の接合部分にできる目地に対し、防水目的で使用するシーリング材として、ポリウレタン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリサルファイド樹脂、シリコーン樹脂などの常温硬化性の樹脂を硬化成分とするシーリング材が広く使用されている。そして建築物の外壁などは、物件により外観を美麗にしたり特定のイメージを与えたりするなどの意匠性を付与する目的で、或いは耐久性を高める目的で、塗料を上塗り塗装する仕様を採用する場合が数多くあり、この場合、外壁の目地に対し先ずペースト状のシーリング材を充填、施工して硬化させた後、上塗り塗料を外壁全体に塗装するため、外壁板の表面と共にシーリング材硬化物の表面にも塗装されることとなり、シーリング材硬化物の表面に対する上塗り塗料の塗膜の付着性(塗膜密着性)が良好で、経時により塗膜が剥離しないことが必要となる。
【0003】
前記のシーリング工事及び塗装工事においては、シーリング材を充填、施工した後、通常3〜10日間程度の硬化養生期間をとった後、上塗り塗装工程に移るのであるが、工程の都合などによりシーリング材を充填、施工してから2週間〜1ヶ月程度の長期間置いた後、上塗り塗装をする場合がある。この場合、シーリング材充填後、3〜10日間程度の短期の硬化養生期間の後に上塗り塗装したときは、硬化した塗料のシーリング材に対する塗膜の付着性が良好であっても、2週間〜1ヶ月程度の長期間の後で塗装したときは、塗膜の付着性が著しく低下する場合が多く、塗膜剥離の不具合を発生させてしまうという問題があり、特に夏場の高温時期における塗膜の付着性低下が著しく、この問題の解決が求められている。
さて、(1)特定の水酸基価の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とイソシアネート変性したポリアルキレンオキシドと活性水素含有基とを必須成分とする弾性シーリング材組成物(例えば、特許文献1参照。)、(2)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに可塑剤としてプロセスオイル類とヒマシ油系ポリオールを配合したポリウレタン系硬化性組成物(例えば、特許文献2参照。)、(3)エポキシ基、アミノ基、アミド基及びイソシアネート基などの官能基を有するビニル重合体と硬化性を有する主剤を含有する硬化性組成物(例えば、特許文献3参照。)、(4)ケイ素含有官能基をそれぞれ2個以上と1個含有する有機重合体を含有する室温硬化性組成物(例えば、特許文献4参照。)などにおいて、それぞれ上塗り塗料との密着性に優れていること、塗料に対する汚染がないことなどがそれぞれ開示されているが、これらは未だ塗膜の密着性が不十分であり、特にシーリング材施工後、塗装するまでに長期間放置された場合の塗膜の付着性を向上させる方法は未だ見出されていないのが実情である。
【特許文献1】特開平7−316537号公報
【特許文献2】特開2001−316585号公報
【特許文献3】特開2003−313303号公報
【特許文献4】特開2004−224985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題に鑑み、上塗り塗装することを仕様(条件)とする物件向けに使用するシーリング材組成物を目地に充填、施工してから上塗り塗装するまでの期間が、短期の場合はもちろん、特に長期間経過した場合に、塗装後硬化した塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性が低下せず、良好なものとなるシーリング材の施工方法、及びシーリング材組成物硬化後に上塗りした塗膜の付着性が良好で、かつ低モジュラス、高伸びで、接着性や耐水性、耐熱性等の耐久性に優れた上塗り塗装仕様向けに適したシーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明者らは、まず、前述したシーリング材の充填施工後、1週間前後の短期間の硬化養生期間を経て上塗り塗料を塗布した場合、上塗り塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性が良好であっても、その期間が2週間〜1ヶ月程度の長期間になってしまった場合、塗膜の付着性が悪化してしまうという問題の原因を検討した。その結果、シーリング材を充填する目地は、建築物の外壁等の目地や土木構築物の目地であり、この目地は主に屋外の曝露目地であり、太陽光の紫外線や雨水に曝露されているため、この目地に充填されたシーリング材の硬化後の表面もまた、上塗り塗装されるまでの期間、日照や雨水に曝露され表面が徐々に劣化を受けることになる。シーリング材の硬化養生期間が1週間前後の短期間の場合は表面劣化がほとんどないが、2週間〜1ヶ月程度の曝露期間になった場合には表面劣化をうけることとなる。この表面劣化は目視では認められないが、表面の極く薄い表層部分で劣化が生じて物性が脆いものとなり、その上に塗布された塗膜に力がかかったとき、小さな応力でも劣化した表層部分が容易に破壊してしまうことにより塗膜が剥離し、その結果、塗膜の付着性が著しく低下してしまうという原因を解明するに至った。紫外線量の多い夏場の方が他の季節より表面劣化が激しくなり、付着性の低下が大きくなることもこれを裏づけている。
さて、通常、予め板の表面が美麗に塗装されているサイディング等により形成された建築物外壁の目地に充填するシーリング材は、予め着色されており上塗り塗装されることがないため、硬化後の表面が直接太陽光や雨水に曝露され、しかもその曝露期間が5年以上の長期になるため、シーリング材そのものに耐候性を付与することが一般的に行われている。しかしながら、本発明におけるように、上塗り塗装することを前提とした目地に使用されるシーリング材組成物は、シーリング材硬化後の表面が塗料硬化膜により覆われるため、従来、シーリング材自体の耐候性については考慮することなく製品設計が行われていた。
しかしながら、本発明者らは、前述の塗膜付着性の低下原因を考察した結果、上塗り塗装仕様向けのシーリング材組成物において、たとえ、太陽光等に曝露される期間が、2週間〜1ヶ月程度という、5年以上の長期と比べれば極めて短い期間であっても、シーリング材硬化物の表面が劣化しないように耐候性を付与することが極めて重要であるとの結論に至り、常温硬化性樹脂を硬化成分としてなる上塗り塗装仕様向けのシーリング材組成物に、酸化防止剤を配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、次の(1)〜(8)である。
【0006】
(1) 常温硬化性樹脂と酸化防止剤とを少なくとも含有するシーリング材組成物を目地に充填施工し、期間をおいて上塗り塗料を塗布施工することを特徴とする、上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0007】
(2) 前記期間が、2週間以上である、前記(1)の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0008】
(3) 前記期間が、屋外の曝露期間である、前記(1)又は(2)の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0009】
(4) 前記酸化防止剤が、ヒンダートアミン系酸化防止剤である、前記(1)〜(3)のいずれかの上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0010】
(5) 前記常温硬化性樹脂が、ウレタンプレポリマーである、前記(1)〜(4)のいずれかの上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0011】
(6) 前記常温硬化性樹脂が、架橋性シリル基含有樹脂である、前記(1)〜(4)のいずれかの上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0012】
(7) 前記シーリング材組成物に更に添加剤を配合する、前記(1)〜(6)のいずれかの上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【0013】
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかの上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法に用いられる、常温硬化性樹脂と酸化防止剤とからなることを特徴とする、上塗り塗料の塗膜付着性を向上させた上塗り塗装仕様向けに適したシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法によれば、シーリング材組成物を充填、施工してから塗装するまでの期間が、短期はもちろんのこと、特に長期間経過した場合に、塗装塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性が低下せず、優れたものとなる。また、本発明のシーリング材組成物は、シーリング材組成物硬化後に上塗りした塗膜の付着性が良好で、かつ低モジュラス、高伸びで、接着性や耐水性、耐熱性等の耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明における上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物について説明する。
このシーリング材組成物は、常温硬化性樹脂と酸化防止剤とを少なくとも含有するものであるが、常温硬化性樹脂と酸化防止剤とからなるものであることが好ましい。すなわち、本発明のシーリング材組成物は常温硬化性樹脂を硬化成分とするものであり、この常温硬化性樹脂は、常温において、湿気等の水分との反応、酸素を利用する酸化重合反応、或いは主剤と硬化剤との架橋反応などにより、架橋・網状化して硬化するものである。
常温硬化性樹脂としては、具体的には、空気中の水分(湿気)と反応硬化する1液型あるいはアミン類、ポリオール類、水等の活性水素含有化合物や硬化触媒を硬化剤として使用する2液型として使用できるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性シリル基含有樹脂など、過酸化物を配合したり、二酸化鉛等を硬化剤として使用したりして酸化重合硬化させる1液型や2液型として使用できるポリサルファイド樹脂などが挙げられる。また、これら以外に、水性アクリルエマルションや水性アクリルウレタンエマルションなどの水が常温で揮散することにより硬化するエマルション型のものも挙げられる。これらのうち、1液湿気硬化型として利用でき、硬化剤との混合の手間が無く作業性が良好な点で、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は架橋性シリル基含有樹脂が好ましい。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基が湿気(水分)と反応し、尿素結合を形成して架橋、硬化するものであり、有機ポリイソシアネートと、高分子ポリオールと、場合により更に鎖延長剤とを、活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られるものが好適である。
【0017】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート或いはこれら2種以上の混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類)、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート或いはこれら2種以上の混合物等のトルエンジイソシアネート類(TDI類)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどの有機ジイソシアネート類が挙げられる。また、これら有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性イソシアネートも使用できる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンポリイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも使用できる。
これらの有機ポリイソシアネートは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−テトラデシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート、p−イソプロピルフェニルモノイソシアネート等の有機モノイソシアネートも使用できる。
これらのうち、硬化後の耐久性が良好な点で、芳香族ジイソシアネートと芳香脂肪族ジイソシアネート、さらにMDI類、特に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0018】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール、炭化水素系ポリオール、アクリルポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオール等、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの高分子ポリオールのうち、作業性、接着性、耐水性、耐候性などが優れている点から、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。
また例えば、低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0020】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール類とホスゲンとの脱塩酸反応、或いは前記低分子アルコール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0021】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、これらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのモノアルコール類(開始剤)に前記プロピレンオキサイドなどを開環重合させたポリオキシアルキレンモノオールなども使用できる。
これらのうち、特にポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。
【0022】
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0023】
アクリルポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基を含有した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体と、これら以外の(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、スチレン等のエチレン性不飽和化合物の1種以上とを、ラジカル重合開始剤の存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下に、バッチ式重合又は100〜350℃の高温連続重合等の公知のラジカル重合の方法により反応させて得られるものが挙げられる。
【0024】
動植物系ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油系ジオールが挙げられる。
【0025】
これらの高分子ポリオールの数平均分子量は500〜30,000、特に1,000〜20,000が好ましい。
【0026】
鎖延長剤としては、前記のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類のうち分子量500未満のもの等、又はこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0027】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成には、オクテン酸亜鉛などの、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属とオクチル酸、ナフテン酸等の有機酸との塩、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の有機アミンやその塩などの公知のウレタン化触媒を用いることができる。これらのうちジブチル錫ジラウレートが好ましい。
また、更に公知の有機溶媒を用いることもできる。
【0028】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、一括仕込み反応法、多段階仕込み反応法のいずれでも合成できるが、プレポリマーの分子中にイソシアネート基を残す必要がある。有機ポリイソシアネートのイソシアネート基と高分子ポリオール、場合により更に鎖延長剤の活性水素基とのイソシアネート基/活性水素基の当量比は1.1〜5.0が好ましく、更に1.3〜2.0が好ましい。このようにして得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は0.1〜15.0質量%が好ましく、特に0.3〜10.0質量%が好ましく、最も好ましくは0.4〜5.0質量%である。イソシアネート基含有量が0.1質量%未満の場合は、分子量が大きくなりすぎて粘度が増大し作業性が低下する。また、樹脂中の架橋点が少ないため、十分な接着性が得られない。イソシアネート基含有量が15.0質量%を超える場合は、樹脂の分子量が小さすぎて、ゴム弾性が悪化し、また炭酸ガス発生による発泡の原因となる。
【0029】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、大気中の湿気と常温で反応硬化することにより一液硬化型として使用できるし、また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主剤とし、ポリアミンやポリオールなどの活性水素化合物を硬化剤とした二液硬化型としても使用できる。
【0030】
前記架橋性シリル基含有樹脂としては、一般にシリコーン樹脂と変成シリコーン樹脂と呼ばれているものを挙げることができ、湿気(水)と反応して或いは硬化剤と(縮)重合してシロキサン結合を形成することにより架橋してゴム状硬化物を形成する、分子内に架橋性シリル基を0.5個以上含有する樹脂である。このうち、分子内に架橋性シリル基を0.5個以上含有する変成シリコーン樹脂が好ましい。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
シリコーン樹脂は主鎖がオルガノポリシロキサンであり、分子内に0.5個以上の架橋性シリル基を含有する。
具体的には、主成分として末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサンと架橋成分として架橋性シリル基含有低分子化合物とを含有する一液型シリコーン樹脂と、主剤として末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサンと硬化剤としてアミノキシアルキルシランとを含有する二液型シリコーン樹脂が代表例として挙げられる。架橋性シリル基含有低分子化合物としては、アシルオキシアルキルシラン、アミノキシアルキルシラン、アルコキシアルキルシランなどが挙げられる。
【0032】
変成シリコーン樹脂としては、例えば、特開昭52−73998号公報、特開昭55−9669号公報、特開昭59−122541号公報、特開昭60−6747号公報、特開昭61−233043号公報、特開昭63−112642号公報、特開平3−79627号公報、特開平4−283259号公報、特開平5−70531号公報、特開平5−287186号公報、特開平11−80571号公報、特開平11−116763号公報、特開平11−130931号公報中に開示されているものを挙げることができる。具体的には、分子内に0.5個以上の架橋性シリル基を含有する、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル系重合体、ポリイソプレンやポリブタンジエン等のジエン系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリサルファイド重合体、これらの共重合体、混合物等が挙げられる。
変成シリコーン樹脂の主鎖は、硬化後の引張接着性、モジュラス等の物性の点から、ポリオキシアルキレン系重合体及び/又はビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体が好ましく、ポリオキシプロピレン系重合体及び/又は(メタ)アクリル変性ポリオキシプロピレン系重合体が更に好ましい。ここにおいて、変性とは共重合や反応で変性するだけでなく、ブレンドも含まれる。
【0033】
架橋性シリル基は、組成物の硬化性や硬化後の物性等の点から、分子内に0.5〜5個含まれるのが好ましい。
更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい次の一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0034】
【化1】

(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0又は1が最も好ましい。)
【0035】
架橋性シリル基の主鎖への導入は、例えば、以下の公知の方法で行うことができる。
(1)末端に水酸基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物(例えばアリルイソシアネート)を反応させ、次いで、得られる反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)末端に水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
この反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、ビニル型不飽和結合含有シラン類、塩素原子含有シラン類、イソシアネート基含有シラン類、ハイドロシラン類などが挙げられる。
(3)重合性不飽和結合と架橋性シリル基を有する化合物(例えばCH=CHSi(OCH33 )と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを共重合させる。
(4)重合性不飽和結合と官能基を有する化合物(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)を(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に添加して共重合させ、次いで生成する共重合体を前記の反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH33基を有する化合物)と反応させる。
【0036】
シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂の数平均分子量は1,000以上、特に6,000〜30,000で分子量分布の狭いものが、硬化前の粘度が低いので取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が優れているので好適である。
変成シリコーン樹脂は、架橋性シリル基が大気中の湿気(水分)と常温で反応、硬化することにより、一液硬化型として使用できるし、また硬化剤として別途オクチル酸第2錫などの硬化触媒と可塑剤等を配合しておいたものを、主剤の変成シリコーン樹脂と混合することにより硬化させる二液硬化型としても使用できる。
【0037】
前記ポリサルファイド樹脂は、ポリサルファイド骨格と末端にメルカプト基を有する重合体である。
メルカプト基を末端に有するポリサルファイド樹脂としては、一般式: HS−(R′−Sx)y−R″−SHで示される構造のものが好ましい。この一般式中のxは1〜4の整数であり、その平均値は1.5 〜2.5である。yは1〜120であり、好ましくは6〜50である。また、この一般式中のR′及びR″は2価の脂肪族炭化水素基であり、具体的には−C24 −、−C36 −、−C4 8 −等が挙げられるが、特にエーテル結合を有するものが好ましく、具体的には例えば以下のものが挙げられる。
−C2 4 −O−C2 4
−C3 6 −O−C3 6
−C48−O−C48
−C2 4 −O−CH2 −O−C24
−C36−O−CH2 −O−C36
−C48−O−CH2 −O−C4 8
上記メルカプト基を末端に有するポリサルファイド樹脂の数平均分子量は、200〜20,000、特に1,000〜8,000の範囲が好ましい。
ポリサルファイド樹脂は、過酸化カルシウムなどの金属酸化物を配合したものを大気中に暴露することにより、湿気により過酸化水素が生成し、樹脂を常温で酸化、硬化させる一液硬化型として使用できるし、また、ポリサルファイド樹脂を主剤とし、二酸化鉛やポリイソシアネートなどを硬化剤とし、これらを使用の際に混合することにより硬化させる二液硬化型としても使用できる。
【0038】
次に、上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物に配合する酸化防止剤について説明する。
この酸化防止剤を配合する手法をとることにより、上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物の耐候性、特に硬化物の表面層の耐候性が極めて優れたものとなり、このシーリング材組成物を建築物の外壁等の目地に充填施工した後、上塗り塗料を塗装するまでの期間が1週間前後の短期の場合はもちろん、2週間〜1ヶ月程度の長期になった場合、これは建築物等が使用される5年以上の長期に比べれば極めて短い期間であり、通常は無視できる期間ではあるが、その間日照(太陽光)による紫外線や雨水の曝露により、シーリング材硬化物の表面層が劣化し小さな応力で破壊しやすい状況になってしまうのを防止して、上塗り塗装した硬化塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性を優れたものとする効果を奏するものである。
酸化防止剤としては、具体的には例えば、ヒンダートアミン系やヒンダートフェノール系の酸化防止剤を挙げることができる。
ヒンダートアミン系酸化防止剤としては、これは別名ヒンダートアミン系光安定剤(HALS)とも称されるが、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN144)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(三共社製、商品名サノールLS−765)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(三共社製、商品名サノールLS−770)、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(三共社製、商品名サノールLS−744)などが挙げられる。また、旭電化工業社製の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満の低分子量ヒンダートアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LD或いはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量ヒンダートアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
ヒンダートフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
これらはいずれも単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのうち、上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物の硬化後の表面層の耐候性を著しく向上させる点で、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤は、常温硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部、特に0.1〜10質量部配合するのが好ましい。
【0039】
本発明における上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物には、更に添加剤を配合することができ、添加剤としては、硬化触媒、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、カップリング剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)、有機溶剤、着色剤などが挙げられる。
【0040】
硬化触媒は、常温硬化性樹脂の硬化を促進させるための触媒であり、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性シリル基含有樹脂の硬化を促進させるための硬化触媒、ポリサルファイド樹脂の硬化を促進させるための(ラジカル重合)硬化触媒などが挙げられる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性シリル基含有樹脂の硬化を促進させるための硬化触媒としては、具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられ、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス、鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸等の有機酸との金属有機酸塩、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級アミン類、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の第2級アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級、第2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルフォリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類、カオリンクレー、塩酸等の無機系酸性化合物、エチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート等の有機燐酸系酸性化合物、或いはこれらとアミンとの塩類などが挙げられる。これらのうち、反応速度が高く、毒性及び揮発性の低い液体である点から、有機錫化合物が好ましく、ジブチル錫ジラウレートが更に好ましい。
ポリサルファイド樹脂の硬化を促進させるための(ラジカル重合)硬化触媒としては、二酸化鉛、二酸化マンガン、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過ホウ酸ソーダ、パラキノンジオキシム、ジニトロベンゼン、メチルエチルケトンパーオキサイド−コバルト石鹸等が挙げられる。
硬化触媒は、硬化速度、硬化物の物性などの点から、常温硬化性樹脂100質量部に対して、0〜10質量部、特に0.05〜2質量部配合するのが好ましい。
【0041】
紫外線吸収剤は紫外線を吸収して熱エネルギー等に変換して無害化する化合物であり、前記酸化防止剤と併用してシーリング材硬化物の耐候性を高めるために使用するものであり、紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のTINUVIN327)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
紫外線吸収剤は、常温硬化性樹脂100質量部に対して、0〜10質量部、特に0.1〜5質量部配合するのが好ましい。
【0042】
充填剤、可塑剤、カップリング剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)、有機溶剤及び着色剤は、それぞれ補強や増量、硬化後物性の調整、接着性向上、揺変性向上、貯蔵安定性向上、作業性向上、着色などのために使用することができる。
【0043】
充填剤としては、例えば、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカ等の合成シリカ、シラス等の天然シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ガラスなどの無機系充填剤、或いはこれらの表面を脂肪酸等の有機物で処理した充填剤、炭素、木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、さらにポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂の粉末などの有機系充填剤などの他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤なども挙げられ、これらの形状としては特に限定されないが、例えば球状、立方体状、角柱状、円柱状、繊維状、針状、金平糖状、多孔質状、鱗片状、バルーン状など各種挙げられ、粒径0.01〜1,000μmのものが好ましい。
【0044】
可塑剤としては、具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステル等の多価アルコールエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、塩素化パラフィンなどの他、前記のイソシアネート基含有ウレタン系プレポリマーの合成に使用されるポリエーテルポリオール或いはこれをエーテル化又はエステル化などしたポリエーテル類、中でもシュークロースなどの糖類多価アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオール或いはこれをエーテル化又はエステル化などした糖類系ポリオキシアルキレン類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、水素添加ポリブテン等の炭化水素系重合体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を、場合によりスチレン等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物の1種以上とを、ラジカル重合開始剤存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下に、バッチ式又は好ましくは100〜350℃の高温連続重合等の公知のラジカル重合の方法により反応させて得られる、Tgが0℃以下の低粘度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体などの分子量1,000以上の高分子量可塑剤などが挙げられる。
【0045】
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤或いはその部分加水分解縮合物が挙げられる。これらのうちシラン系カップリング剤或いはその部分加水分解縮合物が接着性に優れている点で好ましい。
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどの炭化水素基結合アルコキシシラン類、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランなどの炭化水素基結合イソプロペノキシシラン類、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類やイソプロペノキシシラン類などの分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物或いはこれらシランカップリング剤の1種又は2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物が挙げられる。
【0046】
接着性付与剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
揺変性付与剤としては、コロイダルシリカ、前記脂肪酸処理炭酸カルシウム等の無機系揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機系揺変剤が挙げられる。
【0048】
保存安定性改良剤としては、組成物中に存在する水分と反応する、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0049】
有機溶剤としては、n−ヘキサンなどの脂肪族系溶剤、シクロヘキサンなどの脂環族系溶剤、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤、工業ガソリン、ナフテン系脂肪族混合溶剤等の石油留分系溶剤など従来公知の有機溶剤が挙げられ、これらは組成物の各成分に反応しないものであればどのようなものでも使用することができる。
【0050】
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0051】
充填剤、可塑剤、カップリング剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、保存安定改良剤(脱水剤)、有機溶剤及び着色剤の合計の配合量は、常温硬化性樹脂100質量部に対して、0〜500質量部、特に10〜300質量部が好ましい。
【0052】
本発明において、前記各添加剤成分はそれぞれ単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
なお、本発明におけるシーリング材組成物は用途に応じて一液型としても、二液型としても使用できるが、主剤と硬化剤を混合する手間が無く、また混合不良による硬化不良などの不具合も無く作業性に優れているため、一液型のシーリング材組成物が好ましく、更に一液湿気硬化型シーリング材組成物が好ましい。
【0054】
次に、本発明の上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物の施工方法について説明するが、これに限定されるものではない。
まず、屋外にある建築物の外壁等に形成されている目地を刷毛や布を用いて付着している埃等の汚れを除去し綺麗に清掃した後、三面接着を防ぐためボンドブレーカーやバックアップ材を挿入し、目地に沿ってマスキングテープを貼付し目地を整える。次いで、シーリング材組成物の外壁等を構成する部材に対する接着性を高めるためにプライマーを塗布し、30分程度の所定の時間放置した後、シーリング材組成物を充填、施工する工程に移る。前記酸化防止剤は、このシーリング材組成物を製造する際に配合しておいても良いし、シーリング材組成物を充填施工する直前に配合しても良い。酸化防止剤の配合方法は直接配合しても良いし、予めアセトンやトルエン等の有機溶剤に溶解したものを配合してもよい。シーリング材組成物の充填、施工を容易に、速やかに行える点で、酸化防止剤はシーリング材組成物を製造する際に配合しておいたほうが好ましい。シーリング材組成物の充填、施工は、予め用意しておいたシーリング材組成物が詰められているカートリッジ等の容器を開封し、手動押出しガン等の押出し用ガンにセットし、ノズルを目地幅に合わせてカットする。次いで、ノズルを目地にあてがい、シーリング材をノズルから押出し、目地内にシーリング材を充填する。次いで、金属製のヘラ等を用いて、余分のシーリング材をかきとり、ならしてシーリング材の表面を平滑にした後、シーリング材の表面が硬化する前に、マスキングテープを剥がし除去した後、放置し硬化養生させる。
前記シーリング材組成物を詰める容器としては、紙製や樹脂製のカートリッジ状容器、樹脂・金属複合フィルム製の袋状やソーセージ状の容器、金属製、樹脂製或いは紙製のペール缶や角缶などが挙げられる。
また、前記シーリング材の押出し用ガンとしては、手動押出しガン、電動押出しガン、空気圧押出しガンなどがあり、適宜選択すればよい。
次いで、シーリング材組成物の所定の養生硬化期間をとった後、上塗り塗装工程に移る。この養生硬化期間が、上塗り塗装工事者の都合など、各種の工程の都合により、短いときで3〜10日間の1週間前後、長いときで2週間以上、更には2週間〜1ヶ月程度になる。予め仕様で決められた外壁用等の上塗り塗料を用意し、スプレーガン、ローラー、刷毛、ヘラ、コテなどの塗装用具を用いて建築外壁等の被塗装面全体を、シーリング充填済みの目地上も含めて、上塗り塗装し、養生硬化させて仕上げる。
前記上塗り塗料としては、水性アクリル系塗料、水性アクリルシリコーン系塗料、水性ウレタン系塗料等の水性塗料、2液エポキシ塗料、ウレタン溶剤系塗料など各種挙げられるが、環境に対する悪影響が少ない点で水性塗料が好ましい。
本発明の上塗り塗装仕様向けシーリング材組成物の施工方法は、目地が屋外に曝露されていて、したがってその目地に充填施工したシーリング材組成物の硬化後の表面が、上塗り塗装をするまでの期間、日照による紫外線や雨水の曝露を受けることとなり、その期間が短期の場合はもちろん、特に2週間以上の長期になってしまった場合でも、上塗り塗装後の硬化塗膜のシーリング材硬化物表面に対する付着性が低下せず、良好で優れたものになるという効果を発揮する。
また、施工の対象とする目地は、建築物外壁の目地や土木構築物の目地などで上塗り塗装を仕様とする目地ならば限定はされないが、中でも建築物外壁の目地で、外壁を構成する部材(外装材)としてコンクリート板、窯業系サイディング、ALC板、特にALC板を用いて形成されている目地が、大部分において上塗り塗装を仕様としており、本発明の効果を最大限に発揮できる点で好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について実施例等により更に詳細に説明する。
〔イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管及び加温、冷却装置付き反応容器に、窒素気流下にポリオキシプロピレンジオール(数平均分子量3,200、分子量分布(Mw/Mn)1.1〜1.2、旭硝子社製エクセノール3021)340gとポリオキシプロピレントリオール(数平均分子量4,000、分子量分布(Mw/Mn)1.1〜1.2、三井化学社製MN−4000)100gとトルエン90gを仕込み、攪拌しながら4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT、分子量250)54g(R値(NCO当量/OH当量)=1.5)とジブチル錫ジラウレート0.05gを加えたのち、加温して70〜80℃で2時間攪拌を行い、イソシアネート基含有量が理論値(1.04質量%)以下になった時点で、常温まで冷却して反応を終了させた。
得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、摘定によるイソシアネート基含有量1.00質量%、常温で透明の粘度32,000mPa・s/25℃の粘稠な液体であった。
【0056】
実施例1
加熱、冷却装置及び窒素シール管付き混練容器に、窒素気流下に合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100g、フタル酸ジオクチル30g、トルエン20g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM403)0.5g、ヒンダートアミン系酸化防止剤:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(三共社製サノールLS−765)1g及びジブチル錫ジラウレート0.05gを順次仕込み、内容物が均一になるまで攪拌、混練した。次いでそれぞれを予め80〜100℃の乾燥機中で一日乾燥した、酸化チタン10g、重質炭酸カルシウム20g及び脂肪酸(表面)処理炭酸カルシウム(白石工業社製白艶華CCR)100gを順次仕込み、均一になるまで更に混練した。次いで、30〜100hPaで減圧脱泡し、容器に充填、密封して、揺変性を付与した流動性のない(スランプのない)ペースト状の1液湿気硬化型ウレタン系シーリング材組成物を調製した。
次に、100×100×厚さ50mmの大きさにカットしたALC板の表面に、上記で得られた1液湿気硬化型ウレタン系シーリング材組成物を、厚み5mmで平らに塗布したものを3個作製し、日当たりのよい屋外に、シーリング材の表面が南面30度の向きになるように置き、それぞれ7日間、14日間、30日間硬化養生した。
次いで、それぞれの期間硬化養生したウレタン系シーリング材組成物の表面に、上塗り塗料として日本ペイント社製の水性アクリルエマルション系塗料(商品名:水性トップ)を刷毛で約300〜500g/mの厚さで塗布し、同じく日当たりのよい屋外に、塗装表面が南面30度の向きになるように置き、14日間塗料を養生硬化させたものを試験体とした。なお、シーリング材の硬化養生及び上塗り塗料の硬化養生は7〜8月の夏場に行った。
それぞれの試験体について、JIS K 5600−5−6(1999)「塗料一般試験方法、第5部:塗膜の機械的性質、第6節:付着性(クロスカット法)」により、単一刃切込み工具とガイドを用い、2mmの間隔で格子状にカットし付着性試験をし、塗膜の付着性を以下の基準で評価した。
評価基準(分子の数値は塗膜が付着している格子の数である)
○:20〜25/25
×:19以下/25
【0057】
実施例2
実施例1において更に、ヒンダートフェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガノックス1010)を1g加えた以外は同様にして、シーリング材組成物の調製と塗膜の付着性試験を行った。
【0058】
実施例3
実施例1において、ヒンダートアミン系酸化防止剤の量を0.5gとした以外は同様にして、シーリング材組成物の調製と塗膜の付着性試験を行った。
【0059】
実施例4
実施例1において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの代わりに架橋性シリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂(旭硝子社製ES−S3630)を使用した以外は同様にして、シーリング材組成物の調製と塗膜の付着性試験を行った。
【0060】
比較例1
実施例1において、ヒンダートアミン系酸化防止剤を使用しない以外は同様にして、シーリング材組成物の調製と塗膜の付着性試験を行った。
【0061】
比較例2
実施例4において、ヒンダートアミン系酸化防止剤を使用しない以外は同様にして、シーリング材組成物の調製と塗膜の付着性試験を行った。
【0062】
〔性能試験〕
前記実施例1〜4と比較例1、2で調製したシーリング材組成物を用いて、以下の試験を行った。
(1)押出し性
JIS A1439:1997「建築用シーリング材の試験方法」の「4.14試験用カートリッジによる押出し試験」に準拠して測定した(測定温度23℃)。
押し出し時間が5秒以下のものを○と評価した。
(2)スランプ
JIS A1439:1997「建築用シーリング材の試験方法」の「4.1スランプ試験」に準拠して、スランプ(縦)を測定した(測定温度23℃)。
これらの結果とシーリング材組成物の組成をまとめて表1及び2に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温硬化性樹脂と酸化防止剤とを少なくとも含有するシーリング材組成物を目地に充填施工し、期間をおいて上塗り塗料を塗布施工することを特徴とする、上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項2】
前記期間が、2週間以上である、請求項1に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項3】
前記期間が、屋外の曝露期間である、請求項1又は2に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、ヒンダートアミン系酸化防止剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項5】
前記常温硬化性樹脂が、ウレタンプレポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項6】
前記常温硬化性樹脂が、架橋性シリル基含有樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項7】
前記シーリング材組成物に更に添加剤を配合する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の上塗り塗装仕様向けシーリング材の施工方法に用いられる、常温硬化性樹脂と酸化防止剤とからなることを特徴とする、上塗り塗料の塗膜付着性を向上させた上塗り塗装仕様向けに適したシーリング材組成物。

【公開番号】特開2006−131760(P2006−131760A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322440(P2004−322440)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】