説明

中層浮魚礁の回収方法

【課題】汎用性の高い装備を用いて、より簡単かつ確実な手段を用いて中層浮魚礁を回収することのできる方法の提供。
【解決手段】海面上の位置を保持する保持船2を設ける。海面上を回転移動する回転船3を設ける。保持船2及び回転船3に回収索4を掛け渡す。回収索4の中央部を海中に吊り下げる。中層浮魚礁1を中心に回転船3を回転移動させる。保持船2及び回転船3から吊り下げた回収索4の中央部が中層浮魚礁1の係留索7に巻き付く。回収索4の中央部を係留索7に取り付ける。回収索4を作業船に引き上げて中層浮魚礁1を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面下に浮遊状態に設けられた中層浮魚礁を回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浮魚礁は、例えばFRPからなる魚礁本体を、化繊ロープからなる係留索を介して、海底に沈設したシンカーに係留して浮遊させた構造とされる。浮魚礁のうち、魚礁本体を海面下に浮遊させる中層浮魚礁は、魚礁本体を海面上に浮遊させる表層浮魚礁よりも耐久性に優れ、航路上の妨げにならないという利点を有している。
【0003】
これらの浮魚礁は、例えば10年程度の耐用年数に達した後には回収され、その際、魚礁本体は例えば割れを生じるなど破損しやすいため、十分な強度を有する係留索に回収索を取り付けて、これを台船に装備したウインチで巻き上げて浮魚礁を回収するようにしている。
【0004】
ただ、浮魚礁の係留索に回収索を取り付ける際、表層浮魚礁の回収においては、潜水ダイバーによって回収索を取り付けることができるものの、中層浮魚礁の回収においては、その魚礁本体が海面下で浮遊している分、例えば水深100m程度の位置に回収索を取り付ける必要があり、潜水ダイバーによる取り付けが難しくなる。
【0005】
これに対して、特許文献1は、無人潜水機を用いて係留索に回収索を取り付ける方法を開示している(図16参照)。この方法では、作業船101から吊り下げた案内索102を魚礁本体103に引っ掛け、この案内索102に沿って無人潜水機104を下方に移動させて、回収索105に接続した回収用金具106を係留索107に結合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−207106号公報(段落番号0013〜0017、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の方法は、浮魚礁の回収に専用の無人潜水機を用いる分、浮魚礁の回収に要するコストが高くなりやすい。しかも、案内索を魚礁本体に引っ掛けるには、作業船から吊り下げた案内索のうちの位置を定めにくい先端部分を海中の目視できない魚礁本体に引っ掛ける必要があり、その作業に時間がかかると共に案内索の魚礁本体への引っ掛かりが不確実になりやすい。
【0008】
本発明は、汎用性の高い装備を用いて、より簡単かつ確実な手段を用いて中層浮魚礁を回収することのできる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る中層浮魚礁の回収方法は、海面下に浮遊状態に設けられた魚礁本体と、海底に沈設されたシンカーと、魚礁本体をシンカーに係留する係留索とを備えた中層浮魚礁を回収する方法である。具体的には、複数の作業船に回収索を掛け渡しつつこの回収索の中央部を海中に吊り下げ、複数の作業船のうちの少なくともいずれかの作業船を移動させて、回収索の中央部を係留索に掛けて回収索を係留索に取り付け、回収索を作業船に引き上げて中層浮魚礁を回収する。
【0010】
上記構成によれば、複数の作業船に回収索を掛け渡すので、単に作業船から吊り下げるだけの場合よりも、回収索の位置を定めやすくすることができ、しかも、複数の作業船のうちの少なくともいずれかを移動させて、回収索の中央部の広い範囲を中層浮魚礁の係留索に交差させるようにして掛けることができる。これにより、汎用性の高い作業船を用いて、回収索を海中の目視できない係留索に簡単かつ確実に取り付けて中層浮魚礁を回収することができる。
【0011】
回収索を係留索に取り付けるための具体的な構成としては、複数の作業船として、海面上の位置を保持する保持船と、海面上を回転移動する回転船とを設け、中層浮魚礁を中心に回転船を回転移動させることにより、保持船及び回転船から吊り下げた回収索の中央部を中層浮魚礁の係留索に巻き付けて、回収索の中央部を係留索に取り付けるようにする構成を例示できる。
【0012】
この構成によれば、回転船を回転移動させるだけで、中層浮魚礁の係留索に回収索を掛けると共に、その回収索を係留索に巻き付けることができ、回収索の中央部を係留索に簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0013】
さらに、保持船及び回転船のそれぞれから補助索を介してウェイトを吊り下げると共に、このウェイトを回収索に沿ってスライド自在として、回収索を凹形状に構成し、この凹形状の底部分を係留索に巻き付けるようにする構成を採用することができる。
【0014】
この構成によれば、回収索を凹形状に構成するので、その底部分に位置する回収索の中央部をほぼ同程度の高さに設定することができ、回収索の中央部の平面位置が係留索に対して相対的にずれたとしても、係留索のほぼ設定通りの高さの位置に回収索を巻き付けることができる。さらに、補助索を介して吊り下げたウェイトによって回収索を凹形状に構成するので、補助索の長さを適宜調節することにより、回収索の凹形状の底部を所望の高さに設定することができ、係留索の所望の位置に回収索を巻き付けることができる。
【0015】
この場合、保持船から吊り下げるウェイトの高さよりも回転船から吊り下げるウェイトの高さを高く設定するのがよい。そうすれば、回転船を回転移動させるのに伴って、回転船から吊り下げたウェイトが保持船から吊り下げたウェイトの付近を通る際、その上方を通過させることができ、回収索が絡むのを防止することができる。
【0016】
さらに、回収索を係留索に巻き付けた後、回収索の端部を引き上げると共に、補助索によるウェイトの吊り下げを解除することにより、ウェイトを回収索に沿わせて回収索の係留索への巻き付け部分まで滑落させて、回収索の係留索への巻き付け部分を固定するようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、回収索の端部を引き上げるので、ウェイトの高さを回収索の巻き付け部分よりも高くすることができ、さらに、補助索による吊り下げを解除して、ウェイトを回収索に沿わせて巻き付け部分まで滑落させることができる。巻き付け部分まで滑落したウェイトは、回収索の巻き付け部分を押えるので、回収索の巻き付けが緩んで係留索からずれるのを阻止することができ、回収索の係留索への巻き付け部分をより確実に固定することができる。
【0018】
さらに、回収索を係留索に巻き付けた後、回転船を保持船に接近させて回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させ、束ね部材を回収索に沿わせて回収索の係留索への巻き付け部分まで滑落させて、回収索の両側を束ねて回収索の係留索への巻き付け部分を固定するようにしてもよい。
【0019】
この構成によれば、回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させるので、束ね部材を回収索に沿わせて回収索の係留索への巻き付け部分まで滑落させることができる。巻き付け部分まで滑落した束ね部材は、回収索の両側を束ねるので、回収索の巻き付けが緩んで係留索からずれるのを阻止することができ、回収索の係留索への巻き付け部分をより確実に固定することができる。
【0020】
また、回収索を係留索に取り付けるための具体的な別の構成として、複数の作業船を並走させ、この複数の作業船に掛け渡しつつ海中に吊り下げた回収索の中央部を中層浮魚礁の係留索に引っ掛けて回収索を係留索に取り付けるようにする構成も採用可能である。
【0021】
この構成によれば、回収索を掛け渡した複数の作業船を並走させるだけで、中層浮魚礁の係留索に回収索の中央部を引っ掛けることができ、回収索の中央部を係留索に簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0022】
さらに、回収索の中央部にウェイトを取り付けて、回収索をV形状に構成するようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、回収索をV形状に構成するので、係留索に回収索の中央部を引っ掛ける際、多少のずれが生じたとしても、係留索が回収索のV形状に沿って相対的に滑ることにより、係留索に、回収索の中央部のうちのウェイトを取り付けた部位を引っ掛けることができる。
【0024】
さらに、回収索の中央部を係留索に引っ掛けた後、複数の作業船を接近させて回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させ、束ね部材を回収索に沿わせて回収索の係留索への引っ掛け部分まで滑落させて、回収索の両側を束ねて回収索の係留索への引っ掛け部分を固定するようにしてもよい。
【0025】
この構成によれば、回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させるので、束ね部材を回収索に沿わせて回収索の係留索への引っ掛け部分まで滑落させることができる。引っ掛け部分まで滑落した束ね部材は、係留索に引っ掛けた回収索の両側を束ねるので、回収索の係留索への引っ掛け部分を確実に固定することができる。
【0026】
この場合、束ね部材を円錐台状の筒状として、この束ね部材の中央穴に回収索の両端部を通して束ね部材を滑落させ、係留索のうちの回収索を引っ掛けた部位を束ね部材のテーパー状の中央穴に引き込んで、回収索の係留索への引っ掛け部分を固定するのが好適である。
【0027】
この構成によれば、束ね部材を筒状とするので、回収索を引っ掛けた係留索を束ね部材の中央穴に引き込んで、回収索の係留索への引っ掛け部分を固定することができる。しかも、束ね部材を円錐台状の筒状とするので、そのテーパー状の中央穴に係留索及び回収索を引き込んで締付けることができ、回収索の係留索への引っ掛け部分をより強固に固定することができる。
【0028】
また、中層浮魚礁の係留索に取り付けた回収索を作業船に引き上げる際、中層浮魚礁の重量に対応する能力を上回る直巻能力を有するウインチを用いて回収索を引き上げるようにするのが好適である。
【0029】
この構成によれば、中層浮魚礁の重量に対応する能力を上回る直巻能力を有するウインチを用いるので、回収索や係留索を一度で巻き取ることができ、巻き取り途中でのドラムの巻き替えなどを不要にして、巻取作業を簡単にすると共に、その安全性を高めることができる。つまり、ウインチは、その直巻能力が大きいほどドラムの外径が大きく、巻き取り容量が大きいので、回収索や係留索を一度で巻き取るのに要する巻き取り容量を確保するには、中層浮魚礁の重量に関わらず、直巻能力の大きいウインチを用いればよい。ここで、ウインチの直巻能力とは、ワイヤーなどをウインチのドラム表面に一層巻いた時に、そのウインチの許し得る最大の牽引力をいう。
【発明の効果】
【0030】
以上のとおり、本発明によると、回収索を掛け渡した複数の作業船のうちの少なくともいずれかを移動させて、回収索を中層浮魚礁の係留索に取り付け、その中層浮魚礁を回収するようにしている。これにより、汎用性の高い作業船を用いつつ、単に回収索を作業船から吊り下げるだけの場合よりも、回収索を係留索に簡単かつ確実に取り付けることができ、潜水ダイバーによる作業が困難な中層浮魚礁の回収をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る中層浮魚礁の回収方法の第1実施形態を示す概要図
【図2】中層浮魚礁の側面図
【図3】回収索を凹形状に構成した状態を示す側面図
【図4】回収索に取り付けたウェイトの側面図
【図5】回収索を巻き付ける状態を示す側面図
【図6】回収索を巻き付けた後の状態を示す側面図
【図7】回収索に沿ってウェイトを滑落させる様子を示す側面図
【図8】回収索に沿って束ね部材を滑落させる様子を示す側面図
【図9】本発明に係る中層浮魚礁の回収方法の第2実施形態を示す概要図
【図10】回収索をV形状に構成した状態を示す側面図
【図11】回収索に取り付けたウェイトの側面図
【図12】回収索に沿って束ね部材を滑落させる様子を示す側面図
【図13】束ね部材で回収索を係留索に固定した状態を示す側面図
【図14】束ね部材で回収索を係留索に固定した状態を示す拡大図
【図15】束ね部材で回収索を係留索に固定した状態を示す断面図
【図16】従来の中層浮魚礁の回収方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る中層浮魚礁の回収方法の第1実施形態及び第2実施形態について、図面を用いて説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明に係る中層浮魚礁の回収方法は、海面下に浮遊状態に設けられた中層浮魚礁1が例えば10年程度の耐用年数に達した際、その中層浮魚礁1を回収するためのものであり、海面上の位置を保持する保持船2と、海面上を回転移動する回転船3とに回収索4を掛け渡しつつ、回収索4の中央部を海中に吊り下げ、中層浮魚礁1を中心に回転船3を回転移動させることにより、保持船2及び回転船3から吊り下げた回収索4の中央部を中層浮魚礁1に巻き付けて取り付け、回収索4を作業船に引き上げて中層浮魚礁1を回収するものである。
【0034】
図2に示すように、中層浮魚礁1は、海面下に浮遊状態に設けられるFRPなどからなる籠状の魚礁本体5と、例えば水深が1000m〜1500m程度の海底に沈設される鉄筋コンクリート製のシンカー6と、魚礁本体5をシンカー6に係留する化繊ロープなどからなる係留索7とを備えた構造とされる。係留索7は、下端で束ねられた複数本の副係留策8と、副係留策8の下端から下方に延びる上部主係留索9及び下部主係留索10とからなり、副係留策8が魚礁本体5に取り付けられると共に、下部主係留索10がシンカー6に取り付けられて、魚礁本体5を係留する。
【0035】
中層浮魚礁1のうち、魚礁本体5は例えば割れを生じるなど破損しやすいため、中層浮魚礁1を回収する際、十分な強度を有する係留索7に回収索4を取り付けて作業船に引き上げるようにする。
【0036】
本実施形態の方法をより具体的に説明すると、まず、測量船11に設置した魚探ソナーなどにより、中層浮魚礁1の位置の緯度や経度、水深などを特定する。測量船11は、回収索4の係留索7への取り付けが完了するまで、魚礁本体5の上方海面に位置して、魚礁本体5の位置を示す目印となる。
【0037】
図3に示すように、保持船2及び回転船3に例えば径40mm程度の化繊ロープからなる回収索4を掛け渡しつつ、回収索4の中央部を海中に吊り下げ、その回収索4にウェイト12、13を設けて回収索4を凹形状に構成する。また、回収索4を掛け渡す際、予め回収索4に目盛をつけておき、幅方向と深さ方向に所定の寸法の凹形状を構成するのに必要な長さ分の回収索4を掛け渡すようにする。
【0038】
図4に示すように、ウェイト12、13は、例えば丸鋼断面の鋼製リングからなる調整リング14に土嚢15を取付けてなり、その調整リング14に回収索4を通して、ウェイト12、13を回収索4に沿ってスライド自在に設けると共に、調整リング14に補助索16を通して保持船2及び回転船3のそれぞれから吊り下げる。ここで、土嚢15は、回収索4の凹形状の底部分の水深に応じて、適宜その個数を調整するのがよい。なお、土嚢15は、簡単にウェイトを作ることができると共に、万が一海中に落下することがあったとしても、環境に対する影響がないという点で優れている。
【0039】
ウェイト12、13を吊り下げる補助索16に目盛をつけておき、この補助索16の長さを適宜調節して、回収索4の凹形状の略水平な底部分を例えば水深100m程度の所望の深さに設定し、回収索4を、上部主係留索9のうち、上端から副係留索8に絡まないよう例えば10m程度の余裕をあけた部位に巻き付けるよう設定する。その際、保持船2から吊り下げるウェイト12の高さよりも回転船3から吊り下げるウェイト13の高さを例えば3m程度高く設定し、係留索7に回収索4を巻き付ける際に回収索4の両側が互いに接触して絡むのを防止する。
【0040】
図5に示すように、保持船2を海面上の定位置においたまま、測量船の位置を目安として、中層浮魚礁1を中心に回転船3を旋回させて例えば3周させることにより、凹形状の回収索4の底部分を中層浮魚礁1の係留索7に巻き付ける。
【0041】
保持船2及び回転船3は、例えば小型船や中型船とし、船の間隔や目視可能な距離を考慮して、回転船3を例えば直径50m〜300mの軌跡で旋回させるのがよく、通常は、直径100m程度の軌跡で旋回させるのがより好ましい。また、回転船3は、その船首から回収索4を垂らすことにより、旋回速度が遅くても操作を安定させて旋回性を向上させることができる。また、現場海域の潮流に応じて、必要なウェイト13の重量が変化するので、ウェイト13が軽い場合に、速度の上昇によってウェイト13が浮き上がるのを防止するよう、ウェイト13の重量に合わせて回転船3の旋回速度を調整するのがよい。
【0042】
図6に示すように、回収索4を係留索7に巻き付けた後、回転船3を保持船2に接近させ、ウェイト12、13の調整リング14が回収索4の係留索7への巻き付け箇所より高く位置するよう、回収索4の端部を引き上げる。
【0043】
図7に示すように、補助索16の一端を放して、補助索16によるウェイト12、13の吊り下げを解除し、両側のウェイト12、13を回収索4に沿わせて係留索7への巻き付け部分まで滑落させ、回収索4の係留索7への巻き付け部分を押えて固定する。
【0044】
図8に示すように、例えば独立した二つの中央穴を有するスタッドチェーン形状の金具からなる束ね部材17を用意し、この束ね部材17の各中央穴に回収索4の両端部をそれぞれ挿通させてスライド自在に係合させる。束ね部材17を回収索4に沿わせて回収索4の係留索7への巻き付け部分まで滑落させ、回収索4のそれぞれ独立している両側を束ねて回収索4の係留索7への巻き付け部分を固定して、回収索4の中央部を係留索7に取り付ける。なお、回収索4に沿って滑落しやすいよう、束ね部材17に土嚢15を付けるようにしてもよい。
【0045】
その後、中層浮魚礁1の係留索7に取り付けた回収索4の先端を作業船に装備したウインチにセットし、ウインチで回収索4を巻き取って中層浮魚礁1と共に作業船に引き上げる。
【0046】
中層浮魚礁1の魚礁本体5が作業船の端部の装備したガイドローラの手前まで引き上げられた時点で、これをクレーンで作業船上に引き上げると共に、副係留索8を切断して係留索7から魚礁本体5を切り離す。また、中層浮魚礁1の上部主係留索9の上部が作業船に引き上げられた時点で、その上部のアイ加工部をストッパーによって仮止めし、その状態で、ウインチに巻いた回収索4を巻き戻してウインチから取り除く。
【0047】
さらに、ストッパーによって仮止めした係留索7をウインチにセットして巻上げ、シンカー6が作業船の端部の装備したガイドローラの手前まで引き上げられた時点で、これをクレーンで作業船上に引き上げて、中層浮魚礁1の回収が完了する。
【0048】
回収索4及び係留索7を引き上げるウインチとして、中層浮魚礁1の重量に対応する能力を上回る直巻能力を有するもの(例えば100tウインチ)を用いることにより、一度の巻上げ作業で中層浮魚礁1を回収する。
【0049】
上記構成によれば、回転船3を旋回させて回収索4の中央部を中層浮魚礁1の係留索7に巻き付けるので、回収索4を係留索7に簡単かつ確実に取り付けて、中層浮魚礁1を回収することができる。
【0050】
また、中層浮魚礁1の空気中における重量が例えば10t程度であったとしても、100tウインチを使用するので、例えば1000m以上ある係留索7の全長を一度で巻上げることができ、作業を簡単にすると共にその安全性を大きく向上させることができる。なお、ウインチによる巻上げ作業範囲に安全柵を設置して、人員の立ち入りを禁止するのがよい。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態の回収方法は、第1実施形態の回収方法とほぼ同じ構成であるが、回転船3を旋回させて回収索4の中央部を中層浮魚礁1に巻き付ける代わりに、図9に示すように、2隻の作業船18、19を並走させて、回収索4の中央部を中層浮魚礁1に引っ掛けるようにしている。
【0052】
本実施形態の方法をより具体的に説明すると、まず、第1実施形態と同様、測量船11に設置した魚探ソナーなどにより、中層浮魚礁1の位置の緯度や経度、水深などを特定する。測量船11は、回収索4の係留索7への取り付けが完了するまで、魚礁本体5の上方海面に位置して、魚礁本体5の位置を示す目印となる。
【0053】
図10に示すように、作業船18、19に掛け渡しつつ海中に吊り下げる回収索4の中央部にウェイト20を取り付け、作業船18、19を並走させて、中層浮魚礁1の係留索7に回収索4の中央部を引っ掛ける。この回収索4は、ウェイト20を先端とするV形状に構成され、中層浮魚礁1の係留索7に引っ掛けられる際、その平面位置が多少ずれたとしても、そのまま作業船18、19を並走させることにより、回収索4のV形状の傾斜に沿って係留索7が相対的に滑って、ウェイト20の位置に引っ掛かるようになっている。なお、回収索4には予め目盛をつけておき、所定幅かつ所定深さのV形状を構成するのに必要な長さ分の回収索4を掛け渡すようにする。
【0054】
図11に示すように、ウェイト20は、上辺が曲線状で二枚重ねの略正方形板からなる接触用金具21と、これに取り付けられた土嚢22とからなり、その接触用金具21が回収索4の中心部に取り付けられる。
【0055】
図12に示すように、回収索4の中央部を係留索7に引っ掛けた後、作業船18、19を接近させ、回収索4の両端部を一束にまとめて円錐台状かつ筒状の束ね部材23の中央穴に通して、回収索4の両端部に共通の束ね部材23をスライド自在に係合させる。
【0056】
図13に示すように、束ね部材23を回収索4に沿わせて回収索4の係留索7への引っ掛け部分まで滑落させ、回収索4の両側を束ねて回収索4の係留索7への引っ掛け部分を固定して、回収索4の中央部を中層浮魚礁1の係留索7に取り付ける。
【0057】
図14及び図15に示すように、束ね部材23は、回収索4及び係留索7の各2本分と接触用金具21とを収容可能な大きさに設定され、そのテーパー状の中央穴に、係留索7のうちの回収索4を引っ掛けた部位をく字形に屈曲させつつ引き込んで締付け、回収索4の係留索7への引っ掛け部分を強固に固定する。なお、束ね部材23に土嚢などのウェイトをつけて、係留索7をより強く引き込むようにしてもよい。他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0058】
上記構成によれば、回収索4を係留索7に巻き付ける必要がなく、回収索4をより短時間で係留索7に掛けることができる。また、束ね部材23をテーパー形状とするので、係留索7を引き込んで締付けることができ、回収索4を係留索7により強固に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 中層浮魚礁
2 保持船
3 回転船
4 回収索
5 魚礁本体
6 シンカー
7 係留索
8 副係留策
9 上部主係留索
10 下部主係留索
11 測量船
12 ウェイト
13 ウェイト
14 調整リング
15 土嚢
16 補助索
17 束ね部材
18 作業船
19 作業船
20 ウェイト
21 接触用金具
22 土嚢
23 束ね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面下に浮遊状態に設けられた魚礁本体と、海底に沈設されたシンカーと、前記魚礁本体を前記シンカーに係留する係留索とを備えた中層浮魚礁を回収する方法であって、複数の作業船に回収索を掛け渡しつつ該回収索の中央部を海中に吊り下げ、前記複数の作業船のうちの少なくともいずれかの作業船を移動させて、回収索の中央部を前記係留索に掛けて回収索を係留索に取り付け、前記回収索を作業船に引き上げて中層浮魚礁を回収することを特徴とする中層浮魚礁の回収方法。
【請求項2】
前記複数の作業船として、海面上の位置を保持する保持船と、海面上を回転移動する回転船とを設け、中層浮魚礁を中心に前記回転船を回転移動させることにより、前記保持船及び回転船から吊り下げた回収索の中央部を中層浮魚礁の係留索に巻き付けて、回収索の中央部を係留索に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項3】
前記保持船及び回転船のそれぞれから補助索を介してウェイトを吊り下げると共に、該ウェイトを前記回収索に沿ってスライド自在として、前記回収索を凹形状に構成し、該凹形状の底部分を係留索に巻き付けることを特徴とする請求項2に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項4】
前記保持船から吊り下げるウェイトの高さよりも前記回転船から吊り下げるウェイトの高さを高く設定することを特徴とする請求項3に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項5】
前記回収索を係留索に巻き付けた後、回収索の端部を引き上げると共に、前記補助索によるウェイトの吊り下げを解除することにより、ウェイトを回収索に沿わせて該回収索の係留索への巻き付け部分まで滑落させて、前記回収索の係留索への巻き付け部分を固定することを特徴とする請求項3又は4に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項6】
前記回収索を係留索に巻き付けた後、回転船を保持船に接近させて回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させ、前記束ね部材を回収索に沿わせて該回収索の係留索への巻き付け部分まで滑落させて、前記回収索の両側を束ねて該回収索の係留索への巻き付け部分を固定することを特徴とする請求項3、4又は5に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項7】
前記複数の作業船を並走させ、該複数の作業船に掛け渡しつつ海中に吊り下げた回収索の中央部を中層浮魚礁の係留索に引っ掛けて回収索を係留索に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項8】
前記回収索の中央部にウェイトを取り付けて、前記回収索をV形状に構成することを特徴とする請求項7に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項9】
前記回収索の中央部を係留索に引っ掛けた後、前記複数の作業船を接近させて回収索の両端部に共通の束ね部材をスライド自在に係合させ、前記束ね部材を回収索に沿わせて該回収索の係留索への引っ掛け部分まで滑落させて、前記回収索の両側を束ねて該回収索の係留索への引っ掛け部分を固定することを特徴とする請求項7又は8に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項10】
前記束ね部材を円錐台状の筒状として、該束ね部材の中央穴に回収索の両端部を通して束ね部材を滑落させ、係留索のうちの回収索を引っ掛けた部位を束ね部材のテーパー状の中央穴に引き込んで、回収索の係留索への引っ掛け部分を固定することを特徴とする請求項9に記載の中層浮魚礁の回収方法。
【請求項11】
中層浮魚礁の係留索に取り付けた回収索を作業船に引き上げる際、中層浮魚礁の重量に対応する能力を上回る直巻能力を有するウインチを用いて前記回収索を引き上げることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の中層浮魚礁の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−165708(P2012−165708A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30341(P2011−30341)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000150280)株式会社中山製鋼所 (26)
【出願人】(511041499)アジア海洋沖縄株式会社 (1)
【出願人】(594200150)株式会社廣瀬産業海事工業所 (2)
【Fターム(参考)】