説明

中間金型支持装置および金型装置

【課題】中間金型を適切に支持する中間金型支持装置を提供する。
【解決手段】中間金型支持装置1は、固定金型と、固定金型に対向して水平移動可能な可動金型と、固定金型と可動金型との間で水平移動可能に構成された中間金型とを備えた金型装置における中間金型を支持し、中間金型とともに移動可能に構成されている。さらに、中間金型支持装置1は、中間金型を昇降させる昇降機構11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間金型支持装置および金型装置に関し、特に、固定金型、中間金型および可動金型を備えた金型装置における中間金型を支持する中間金型支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成型装置には、固定金型、中間金型および可動金型が水平方向に並べられた金型装置を備えたものがある。中間金型は、固定金型と可動金型の間に設けられている。金型装置は、形締めされた状態で、中間金型と固定金型との間、および中間金型と可動金型との間にキャビティを形成する。射出成型装置は、これらのキャビティに溶融樹脂を供給し、複数の製品を同時に成形することができる。
【0003】
中間金型は、固定金型を支持する固定盤と可動金型を支持する可動盤との間に水平方向に架設されるタイバーに摺動自在に支持されたり、固定金型から水平方向に突出したガイドバーに支持されたりする。しかしながら、中間金型の重みでタイバーやガイドバーが撓み、型合わせの際にパーティングラインがずれたり、成形品の品質が低下したりするという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、特開2004−122689号(以下、特許文献1と呼ぶ。)には、中間金型の下方にベッド部が設けられ、このベッド部に支持台が摺動自在に設けられ、この支持台に中間金型が位置決め固定された射出成型装置が開示されている。また、中間金型は、固定金型から可動金型に向かって突出するガイドバーに係合し、案内される。
【0005】
この射出成型装置では、中間金型が、タイバーやガイドバーなどで支持されるだけではなく、支持台の上に位置決め固定されるため、ガイドバーが中間金型の重みで撓むことがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−122689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の射出成形装置では、中間金型支持装置が中間金型を適切に支持しているかどうか不明である。中間金型を取り換えた場合や、温度、湿度、装置の設置状態などの条件が変化した場合などでは、ガイドバーなどに予期しない力(負荷)が加えられることがあるという問題がある。特許文献1において、この問題は一切触れられておらず、その対策は講じられていない。
【0008】
装置の一部、例えばガイドバーに強い負荷が加えられると、ガイドバーの磨耗や破損が生じたり、金型同士の位置ずれに起因する成形品の品質低下を招いたりする虞がある。
【0009】
本発明の目的は、中間金型を適切に支持することができる中間金型支持装置、及びそれを備えた金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様における中間金型支持装置は、固定金型と、固定金型に対向して水平移動可能な可動金型と、固定金型と可動金型との間で水平移動可能に構成された中間金型とを備えた金型装置における中間金型を支持し、中間金型とともに移動可能に構成されている。さらに、中間金型支持装置は、中間金型を昇降させる昇降機構を有している。
【0011】
本発明の一態様における金型装置は、固定金型と中間金型と可動金型と中間金型支持装置とを備えている。中間金型は、固定金型に当接および離間可能に構成され、固定金型に当接した状態で固定金型とともにキャビティを形成する。可動金型は、中間金型に当接および離間可能に構成され、中間金型に当接した状態で中間金型とともにキャビティを形成する。中間金型支持装置は、中間金型を支持し、中間金型とともに移動可能に構成されている。さらに、中間金型支持装置は、中間金型を昇降させる昇降機構を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、昇降機構を用いて中間金型支持装置を昇降することによって、中間金型支持装置から中間金型に加えられる荷重を調整することができる。したがって、金型を取り付け直した場合や、新しい金型に取り換えた場合や、温度、湿度、装置の設置状態などの条件が変化した場合などであっても、中間金型支持装置は中間金型を適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る金型支持装置を備えた金型装置の正面図である。
【図2】金型支持装置の構成の一例を示す概略図である。
【図3】図2に示す金型支持装置の、Y方向の一端側の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、一実施形態における射出成型機を構成する金型装置を示している。射出成型機は、金型装置および射出装置を備えている。射出装置は、例えば熱硬化性樹脂のような原料を金型装置へ送るノズル30を有している。
【0016】
金型装置は、固定金型2、中間金型3および可動金型4を備えている。中間金型3は固定金型2と可動金型4との間に設けられている。中間金型3は、固定金型2に当接および離間可能に構成されている。中間金型3は、固定金型2に当接した状態で固定金型2とともにキャビティ29aを形成する。可動金型4は、中間金型3に当接および離間可能に構成されている。可動金型4は、中間金型3に当接した状態で中間金型3とともにキャビティ29bを形成する。固定金型2と中間金型3とが当接し、かつ中間金型3と可動金型4とが当接した型締め状態で射出成型が実行される。
【0017】
本実施形態では、可動金型4は水平移動可能に構成された可動盤6に取り付けられており、固定金型2は固定盤7に取り付けられている。可動盤6と固定盤7との間にはタイバー24が架設されている。可動盤6は、タイバー24に沿って図中X方向に往復移動可能になっている。中間金型3は、固定金型2から概ね水平方向に突出したガイド5に案内され、このガイド5に沿って摺動可能に構成されている。
【0018】
ノズル30から型締めされた金型装置へ送られた液状の原料は、固定金型2に設けられたランナ28を通って、固定金型2および中間金型3によって構成されたキャビティ29aに達し、さらに、中間金型3に設けられたランナ28を通って可動金型4および中間金型3によって構成されたキャビティ29bに達する。液状の原料は、キャビティ29a,29b内で硬化されて成型品となる。
【0019】
金型装置は、中間金型3を支持し、中間金型3とともに移動可能な中間金型支持装置1を備えている。本実施形態では、中間金型支持装置1は、型締ベッド9の上に設けられた取り付けのレール8に案内され、可動盤6と固定盤7との間を中間金型3とともに移動可能に構成されている。中間金型支持装置1は、レール8上をスムーズに移動するため、複数、例えば4つのコロ27を備えていることが好ましい。また、中間金型支持装置1は、スライドシューによって移動可能に構成されても良い。
【0020】
図2は、図1に示す中間金型支持装置1の一構成例を図のX方向から見た平面図である。本発明の中間金型支持装置1は、中間金型3を昇降する昇降機構を備えている。さらに、中間金型支持装置1は、中間金型支持装置1から中間金型3に加えられる力(荷重)を検出する検出機構を備えていることが好ましい。
【0021】
本実施形態では、昇降機構として油圧ジャッキ11が、検出機構としてロードセル14が用いられている。中間金型3は、中間金型支持装置1の金型受け面15によって下方から支えられている。
【0022】
具体的には、金型支持台10の上に油圧ジャッキ11が配置されており、油圧ジャッキ11によって、ロードセル14および金型受け面15が上昇および下降する。油圧ジャッキ11による上昇および下降は、ガイド12及びブシュ13により案内されている。なお、金型受け面15には、中間金型3の設置位置を決める位置決めピン16が設けられていることが好ましい。
【0023】
ロードセル14は、金型受け面15に加えられる荷重を検出する。この荷重は、中間金型3の重量と等しいときに最適である。この荷重が中間金型3の重量よりも小さい場合には、中間金型3からガイド5に下向きの力がかかっている。この荷重が中間金型3の重量よりも大きい場合には、中間金型3からガイド5に上向きの力がかかっている。
【0024】
中間金型3からガイド5に力がかかっている状態で中間金型3が移動すると、ガイド5が摩耗または破損してしまう。本実施形態では、油圧ジャッキ11を用いて中間金型3を昇降することによって、中間金型支持装置1から中間金型3に加えられる荷重を調整することができる。これにより、金型を取り付け直した場合や、新しい金型に取り換えた場合や、温度、湿度、装置の設置状態などの条件が変化した場合であっても、中間金型支持装置1は中間金型3を適切に支持することができる。その結果、金型装置の破損、特にガイド5の磨耗や破損を防止したり、金型2,3,4同士の位置ずれに起因する成形品の品質低下を抑制したりすることができる。
【0025】
ロードセル14は、金型受け面15に加えられる荷重を常時監視することが好ましい。これにより、この荷重を適切にするように昇降機構を自動または手動調整したり、この荷重が異常な範囲になった場合に金型装置を自動的に停止したりする機能を搭載することができる。
【0026】
本実施形態では、中間金型支持装置1は2つの油圧ジャッキ11を備えており、2つの油圧ジャッキ11は、連結用ロッド17及びカップリング機構18により連結されている。これにより、一方の油圧ジャッキ11を上昇または下降させることによって、両ジャッキ11が同期して動作するという利点がある。
【0027】
これに代えて、カップリング機構18を用いずに、両ジャッキ11を独立して作動させて、2つの金型受け面15を独立して上昇または下降させることも可能である。2つのジャッキ11を同期させるカップリング機構18は、着脱可能であることが好ましい。これにより、独立した昇降動作と同期した昇降動作とを切り替えることができる。
【0028】
なお、図2では、金型受け面15およびこれに対応する油圧ジャッキ11は2つずつ描かれているが、金型受け面15および油圧ジャッキ11は1つ、あるいは3つ以上設けられていても良い。
【0029】
図3は、一実施形態における中間金型支持装置1の一端部(図のY方向における端部)の構造を示している。図示していないが、本実施形態の中間金型支持装置1の他端部側も同様の構成となっている。
【0030】
中間金型支持装置1の一端部には、油圧ジャッキ11から延在した延長ロッド25が設けられており、延長ロッド25にはハンドル26が取り付けられている。油圧ジャッキ11はハンドル26を回すことで作動する。
【0031】
また、金型支持台10の両端には、タイバー24が通されるタイバー挿入部が存在し、ガイド取付板19、側方ガイド20及び上方ガイド21が設けられている。側方ガイド20の先端には側方スライドシュ22が設けられており、上方ガイド21の先端には上方スライドシュ23が設けられている。
【0032】
これらのスライドシュ22,23は、タイバー挿入部に通されたタイバー24の側面または下面に面している。スライドシュ22,23は、タイバー24とガイド20,21が直接接することを防止し、タイバー24を保護している。スライドシュ22,23および側方ガイド20は、取り外し可能な構成になっていることが好ましい。
【0033】
通常、金型の開閉時には、中間金型3はガイド5に沿って移動するため、スライドシュ22,23がタイバー24と接触しないようになっている。型締ベッド9を傾ける等した場合、スライドシュ22,23がタイバー24に接触し、金型装置からの中間金型支持装置1のずれが防止される。これにより、中間金型支持装置1の直進性が確保されるとともに、中間金型支持装置1が金型装置から脱落するなどの虞が防止される。
【0034】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0035】
1 中間金型支持装置
2 固定金型
3 中間金型
4 可動金型
5 ガイド
6 可動盤
7 固定盤
8 レール
9 型締ベッド
10 金型支持台
11 油圧ジャッキ(昇降機構)
12 ガイド
13 ブッシュ
14 ロードセル(検出機構)
15 金型受け面
16 位置決めピン
17 連結用ロッド
18 カップリング機構
19 ガイド取付板
20 側方ガイド
21 上方ガイド
22 側方スライドシュ
23 上方スライドシュ
24 タイバー
25 延長ロッド
26 ハンドル
27 コロ
28 ランナ
29a,29b キャビティ
30 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、該固定金型に対向して水平移動可能な可動金型と、前記固定金型と前記可動金型との間で水平移動可能に構成された中間金型とを備えた金型装置における前記中間金型を支持し、前記中間金型とともに移動可能に構成された中間金型支持装置であって、
前記中間金型を昇降させる昇降機構を有している、中間金型支持装置。
【請求項2】
前記中間金型支持装置から前記中間金型に加えられる力を検出する検出機構を備えている、請求項1に記載の中間金型支持装置。
【請求項3】
前記中間金型を下方から支える金型受け面を有し、
前記昇降機構は前記金型受け面を昇降させるように構成されている、請求項1または2に記載の中間金型支持装置。
【請求項4】
前記中間金型を支持する前記金型受け面を少なくとも1つ以上有し、
前記昇降機構を各々の前記金型受け面に対応して少なくとも1つ以上有し、
少なくとも1つ以上の前記昇降機構は各々の前記金型受け面を独立して昇降させるように構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の中間金型支持装置。
【請求項5】
前記中間金型を支持する前記金型受け面を少なくとも2つ以上有し、
前記昇降機構を各々の前記金型受け面に対応して少なくとも2つ以上有し、
前記昇降機構に着脱可能に構成され、前記昇降機構を同期して作動させるカップリング機構を備えている、請求項1から3のいずれか1項に記載の中間金型支持装置。
【請求項6】
前記中間金型支持装置を案内するタイバーが通されるタイバー挿入部と、
前記タイバー挿入部に挿入される前記タイバーの側面に面する第1のガイドと、前記タイバーの下面に面する第2のガイドと、を備えている、請求項1から5のいずれか1項に記載の中間金型支持装置。
【請求項7】
固定金型と、
該固定金型に当接および離間可能に構成され、該固定金型に当接した状態で該固定金型とともにキャビティを形成する中間金型と、
該中間金型に当接および離間可能に構成され、該中間金型に当接した状態で該中間金型とともにキャビティを形成する可動金型と、
前記中間金型を支持し、前記中間金型とともに移動可能に構成された中間金型支持装置と、を備えた金型装置であって、
前記中間金型支持装置は前記中間金型を昇降させる昇降機構を有している、金型装置。
【請求項8】
前記中間金型支持装置から前記中間金型に加えられる力を検出する検出機構を備えている、請求項7に記載の金型装置。
【請求項9】
前記中間金型を水平方向に案内するガイドを備え、
前記中間金型支持装置は、前記中間金型を下方から支える金型受け面を有しており、
前記昇降機構は、前記金型受け面を昇降させるように構成されている、請求項7または8に記載の金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91303(P2013−91303A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236125(P2011−236125)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】