乗物用転換座席
【課題】座部クッション枠を傾動するものとして使用者が安楽姿勢を取ることができるようにし、かつ転換操作時における衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席を提供すること。
【解決手段】座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けたこと。
【解決手段】座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車や電車、あるいはバス等の乗物に適用される乗物用転換座席に関するものであり、特に、背当てを揺動させることにより、この背当ての方向が一方から他方に転換されるようにした乗物用転換座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車や電車等の乗物においては、その進行方向が変わる度に座席の方向を転換することが行われている。つまり、背当ての傾斜状態を乗物の進行方向に合わせて転換しなければならない。何故なら、使用者が進行方向に向いて座れるように、背当てを進行方向とは反対に位置させなければならないからである。勿論、乗物の座席は、不特定多数の人が利用するものであるから、一旦転換した方向とは逆の方向に転換する人も居るし、グループで複数の座席を使用するときには、使用者が座席の方向を転換して、複数掛けの座席2つを向き合わせにすること(一部の転換)もある。
【0003】
この乗物用座席の方向転換をする方法としては、座席全体を回転させて行う「回転座席方式」があるが、これだと限られた車室内で回転できる空間を確保しなければならないため、不特定多数の人が利用するものとしては適当ではない。そこで、限られた車室内空間を有効に利用する乗物用座席として、例えば特許文献1〜特許文献3に示されているような「転換座席」が提案されている。
【特許文献1】実公昭35−28824号公報
【特許文献2】実公昭41−967号公報
【特許文献2】実公平01−34580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている転換座席は、図13にも示すように、背当てを支持している背当て(平行)リンクの各下端にスプリングを掛装したものであり、このスプリングの作用によって、背当てを一方側から他方側へと揺動させる場合の力を少なくできるという利点があって、転換操作がやり易いものと考えられる。
【0005】
しかしながら、この特許文献1の転換座席では、座部クッションが固定的であるため、利用者にとって安楽姿勢が取りにくいのではないか、と考えられる。何故なら、人が座わる場合は、膝の乗る部分が、お尻の乗る部分に比して高いと、安楽姿勢となるが、この特許文献1のそれでは座部クッションが固定的だからである。
【0006】
これに対して、特許文献2の転換座席では、図14に示すように、座部クッションがその左右方向の中心線上で前後に傾動し得る構造となっていて、背当てリンクが図示右側に傾斜したとき、座部クッションの図示右側が沈み込むため、座部クッションによる安楽姿勢を取ることは可能になっている。
【0007】
しかしながら、今度は、この特許文献2の背当てリンクでは、特許文献1におけるようなスプリングの助力がない構造となっているため、その転換操作性は悪いのではないかと考えられる。
【0008】
以上のことの他に、特許文献2の転換座席では、「転換時における衝撃音発生」が解決されてはいないと考えられる。つまり、背当てを反対側に倒したときに、この特許文献2の転換座席では「ガタン」といった大きな衝撃音が発生すると考えられ、特に、背当てリンクを倒したときに大きな衝撃音が発生すると考えられる。つまり、この特許文献2の転換座席で採用されている図示左側の突軸12は、受止部5に当たっておらず浮いている状態であるため、倒された背当てリンク19が、浮いた状態の突軸12に当たり大きな衝撃音が発生し、その後、背当てリンク19と突軸12が一緒に受止部5に当たり、再度大きな衝撃音が発生するからであると考えられる。
【0009】
この「衝撃音」は、背当てリンクを一方側から起して他方側に倒したときに、背当てリンクと突軸との当接により発生するものと、背当てリンクと支持台との当接により発生するものとがあると考えられる。特に、図14の左側に示すような突軸のように、受止部から浮いた状態にある突軸に背当てリンクが当接すると、浮いた状態の金属の振動(これが衝撃音発生原因である)が抑制されないため、非常に大きな衝撃音が発生することが解ってきている。
【0010】
背当てリンクと受止部との当接により発生する衝撃音は、特許文献1、及び後述する特許文献3に示されているように、背当てリンクが当接する受止部に、緩衝機能を有するストッパを設ければある程度解消できるが、背当てリンクと突軸との当接による衝撃音発生防止策は、上記特許文献2では全くなされていないのである。
【0011】
特許文献3の「自動転換装置」では、図15に示すように、座部クッションの傾動による安楽姿勢の形成、及びリンクと支持台との当接による衝撃音発生は解決されているが、流体圧往復機構としてエヤーシリンダー10を用いなければならなから、エヤー供給器やエヤーの供給制御を行うバルブや制御器を備えなければならないから、全体の構造が複雑になっているだけでなく、これらの機器のメンテナンスも余儀なくされるものと考えられる。
【0012】
すなわち、この特許文献3の「自動転換装置」では、当該文献の第2欄第22行目から第3欄第13行目に記載されているように、「流体圧往復機構としてエヤーシリンダー10を用い、そのピストンロッド11の自由端側に継手部12を介して転換作動リンク13の一旦側を連結するとともに、この転換作動リンク13の他端側を転換作動軸14に連携させる。…この転換作動軸14の先端部にはローラー16が装着されており、…このローラー16が転換用リンク3又は4の内側端縁に沿って自在に回転しながら転換用リンク3又は4を脚台5に対する取付軸17、18部分において回転移動させ、而して背ずり1を前又は後へ転換させ得るようになっている…」ものである。
【0013】
ということは、この特許文献3の「自動転換装置」では、「座ぶとん2」を外そうとしても、転換作動軸14の先端部のローラー16が邪魔になり、転換用リンク3又は4を脚台5から外さない限り外せないものとなっている。このことは、汚れた「座ぶとん2」の洗浄等のメンテナンスを行う際には、転換用リンク3又は4を脚台5から外すといった作業が余儀なくされることを意味している。
【0014】
また、一般に、乗物用の座席の座部クッションは、長年の使用により、クッション性能の低下(ヘタリ)が発生する。これによって座り心地が悪くなるために、座部クッションの交換をするために座部クッション枠を簡単に取り外せるようにしておく必要がある。
【0015】
そこで、本発明者等は、座部クッション枠を簡単に取り外せて、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0016】
すなわち、本発明の目的とするところは、まず、座部クッション枠を傾動するものとして使用者が安楽姿勢を取ることができるようにし、かつ転換操作時における衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他に目的とするところは、座部クッション枠の重量を部分によって異ならせるといった簡単な構造で、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明の他に目的とするところは、座部クッション枠を簡単に外せるようにして、座部クッションの洗浄や変換等のメンテナンスが簡単に行えるようにすることのできる転換座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えた乗物用転換座席100であって、
座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けて、
この背当てリンク40を一方側から他方側に揺動させる間に、ピン60がカム50のカム溝51に係合していき、座部クッション枠30を一方側から他方側に傾斜させるようにしたことを特徴とする乗物用転換座席100」
である。
【0020】
すなわち、本発明に係る乗物用転換座席100は、図1及び図2にも示すように、乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えたものである。なお、各図において背当て40aは明示していないが、この背当て40aは、図2に示すように、各背当てリンク40の上端に取り付けられるものである。
【0021】
また、本発明に係る乗物用転換座席100では、図1〜図3に示すように、座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けたものである。
【0022】
カム50は、座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に設ける必要がある。何故なら、このカム50に後述する背当てリンク40側のピン60を係合させて、背当てリンク40の揺動に応じて座部クッション枠30を反対側に傾動させるようにし、座部クッション枠30、つまり座部クッション30aを背当てリンク40の揺動側に傾動させて、この座部クッション30a上の使用者が安楽姿勢が取れるようにしなければならないからである。
【0023】
そして、このカム50に係合するピン60を、背当てリンク40側に設ける必要があるのである。何故なら、これらのピン60及びカム50によって、転換操作のための力が加えられる背当てリンク40と、この背当てリンク40の動きに追随しなければならない座部クッション枠30とを連動させる必要があるからである。ここで、「背当てリンク40側に設ける」とは、背当てリンク40に直接設ける他、後述する最良形態におけるように、この背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41に設ける場合等をいう。
【0024】
以上のことから、各カム50、及びこれに係合するピン60は、それぞれ1つ宛あれば十分であるが、必要に応じて各部分に設けて実施してもよいものであり、座部クッション枠30が図5の(a)に示すような四角形状のものであることを考慮すれば、左右両側面の前後に最大でそれぞれ4個のカム50、及びこれに係合するピン60を設けることができる。
【0025】
後述する最良形態では、図5及び図6の各(b)に示すように、図示右側部分に1個のカム50を設けておき、このカム50に係合するピン60を、図3及び図4に示すように、各背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41に各1個設けてある。このようにすれば、座部クッション枠30の支持台20に対する組み付けを、座部クッション枠30の方向性を気にすることなく行えるから有利である。
【0026】
勿論、背当てリンク40側にカム50を設けておき、このカム50に係合するピン60を座部クッション枠30側に設けて実施しても良いことは言うまでもない。
【0027】
さて、以上のように構成した乗物用転換座席100においては、図11及び図12に示した最良形態におけるような作用を発揮する。これらの最良形態では、背当てリンク40側、つまりこの背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41にピン60を設けておき、このピン60に係合するカム50を座部クッション枠30側に設けるようにしてある。
【0028】
図11の(a)〜(c)は、図12の(b)の状態にあった各背当てリンク40及び座部クッション枠30が、図12の(a)の状態へと変化する途中の様子が、(a)〜(c)の順で示してある。すなわち、図12の(b)の状態にあった各背当てリンク40に力を入れて、この背当てリンク40を使用者が起こしたときには、図11の(a)に示した状態になる。なお、このときには、後述する最良形態では、図11の(a)に示してある座部クッション枠30の左側部分を他方よりも重く形成してあるため、座部クッション枠30の左側部分が図示左側に傾動して、ここに取り付けてある着脱ピン31bが支持台20のストッパ22に当接して停止したままとなっている。
【0029】
この図11の(a)に示した状態になったときには、背当てリンク40側のピン60がカム50のカム溝51内に入り込もうとしているのであるが、カム溝51の開口端は、図6の(b)にも示すように、カム溝51の他の部分に比して大きく開口しているから、各部分の組み付け状態等に少しズレがあったとしても、背当てリンク40側のピン60はカム50のカム溝51内に確実に入り込む。
【0030】
次に、背当てリンク40がさらに揺動されて、図11の(b)に示した状態になると、この背当てリンク40に一体化してあるピン60は、カム50のカム溝51の中程まで侵入する。このとき、ピン60はカム50を下方に押し下げ始めることになり、座部クッション枠30を図示時計方向に傾動させ始めることになる。また、カム溝51の幅は既に狭くなってきているし、ピン60がカム50のカム溝51を図示下方に押し下げながら侵入することにより、座部クッション枠30が支持台20に対してガタ付くことはない。
【0031】
背当てリンク40がさらに揺動されて、図11の(c)に示した状態になると、固定ピン31aがストッパ22上に当接し、座部クッション枠30の傾動は完了する。このとき、背当てリンク40側のピン60は、カム50のカム溝51内に係合したままであるから、座部クッション枠30が不用意にガタ付くことはない。なお、背当てリンク40は、座部クッション枠30側に設けてある固定ピン31a及びストッパ22上に未だ当接していない。
【0032】
最後に、図12の(a)に示す状態になるのであるが、このときには、座部クッション枠30の傾動は完了しており、揺動してきた背当てリンク40は、支持台20側のストッパ22上に当接するとともに、その押え溝43によって座部クッション枠30側の固定ピン31a(既にストッパ22上に当接している)を上方から押さえ込むことになる。
【0033】
つまり、背当てリンク40が、既にストッパ22に当接している、つまり振動しにくい状態になっている固定ピン31aを押さえ込むのであるから、浮いた状態にあるものに当接するのとは異なって、衝撃音の発生を極力抑制することができる。勿論、ストッパ22は弾性材料からなっているから、図11の(c)で示した固定ピン31aとの当接時も、図12の(a)で示した背当てリンク40との当接時も、いずれの場合も衝撃音の発生を極力抑制することができる。
【0034】
以上の結果、本発明に係る乗物用転換座席100では、その転換操作時において、背当てリンク40の揺動に基づく衝撃音の発生を極力抑制することができることは勿論、座部クッション枠30の傾動によっても衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0035】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の乗物用転換座席100について、
「座部クッション枠30の、中心線70の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分にカム50を取り付けるようにしたこと」
である。
【0036】
すなわち、この請求項2に係る乗物用転換座席100では、その座部クッション枠30の重量が中心線70の両側で異なっているものであり、その軽い側の部分に前述したカム50が設けてある。なお、このカム50を設けた後も、これを取り付けた部分は、反対側より軽いものである。
【0037】
以上のように構成するとどうなるかは、図11の(a)〜(c)、及び図12の(a)〜(b)に示してある。例えば、図12の(a)に示した状態から図12の(b)に示した状態へと座席転換を行うために、各背当てリンク40を引き起こした場合、まず、図11の(a)に示したようになる。
【0038】
つまり、図11の(c)、同(b)を経て、図11の(a)に示したように、各背当てリンク40を引き起こすと、それまでの各部における係合や押圧は解除されるから、座部クッション枠30の重い側の部分(図11では図示左方部分)が自重によって下がり、その側面に取り付けてあった着脱ピン31bが、支持台20側の弾性材料からなるストッパ22に当接する。
【0039】
さらに、背当てリンク40を倒して行けば、背当てリンク40側の押さえ溝43が着脱ピン31b上に係合して当該着脱ピン31bをストッパ22上に押さえ付けるのであるが、このときまでには、上述したように着脱ピン31bがストッパ22上に既に当接しているのであるから、衝撃音の発生を極力抑制することができる。そして、座部クッション枠30は、最終的に図12の(b)の状態となるのである。
【0040】
換言すれば、この請求項2の乗物用転換座席100は、その座部クッション枠30の一部を重くすることにより、この座部クッション枠30における係合や押圧が解除されたときに、その重い側の部分が自重により傾動して、この部分に設けてある着脱ピン31bが支持台20側のストッパ22に当接するから、浮いたままの状態の着脱ピン31bに背当てリンク40が当接するようなことはなく、衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0041】
従って、この請求項2の乗物用転換座席100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、座部クッション30枠の一方側を重くするという簡単な構造で、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0042】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の乗物用転換座席100について、
「座部クッション枠30の側面の、中心線70の両側に位置する部分に、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧される固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けて、着脱ピン31bのみを取り外すことにより、座部クッション枠30及び座部クッション30aを支持台20から取り外せるようにしたこと」
である。
【0043】
すなわち、この請求項3に係る乗物用転換座席100では、図5及び図6に示すように、座部クッション枠30の側面に固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けたものであり、具体的には、図5の(a)に示すように、座部クッション枠30の側面の、中心線70の図示右側に位置する部分に固定ピン31aを、また中心線70の図示左側に位置する部分に着脱ピン31bを設けたものである。これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、図12の(a)及び(b)に示すように、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧されるものである。
【0044】
固定ピン31aは、文字通り座部クッション枠30の側面に固定的に設けられるものであるが、着脱ピン31bは、図5の(a)及び(b)に示すように、固定ピン31aとは反対側にピン取付部31cを設けておいて、このピン取付部31cに対して着脱できるようにしたものである。つまり、固定ピン31aは外せないが、着脱ピン31bは、例えばピン取付部31cに螺着され、ドライバー等の工具を使用すればこのピン取付部31cから簡単に取り外せるものなのである。
【0045】
ところで、座部クッション枠30の両側であって中心線70上には、図5及び図6に示すように、係合部33が形成してあり、この係合部33は、図4に示した支持台20側の支持突起21上に係合される。つまり、この座部クッション枠30は支持台20の支持突起21上に傾動自在に載置されているだけであり、上記固定ピン31a及び着脱ピン31b以外では支持台20側に係合する部分がないのである。
【0046】
この乗物用転換座席100においては、その座部クッション枠30上の座部クッション30aが汚れたため、これを洗浄したい場合がある。この洗浄作業は、座部クッション30aを支持台20に組み込んだまま行うことも可能ではあるが、この請求項3の乗物用転換座席100では、この座部クッション枠30を座部クッション30aとともに支持台20から外すことができるから、そのメンテナンスが容易に行えるのである。このことは、座部クッション30aを交換するときにも同様である。
【0047】
この座部クッション枠30を外すには、次のようにする。すなわち、図12の(a)に示すように、まず各背当てリンク40を固定ピン31a側に当接させておいて着脱ピン31bの周囲に邪魔者がない状態にしておき、この状態で着脱ピン31bをピン取付部31cから外すのである。次に、図12の(b)に示すように、各背当てリンク40を反対側に倒して、それまで押さえていた固定ピン31aを自由にすれば、背当てリンク40と座部クッション枠30とを関連付けていたものが無くなるから、座部クッション枠30を座部クッション30aとともに、図示右上方向に引き抜けば、当該座部クッション枠30の取り外しは完了する。
【0048】
従って、この請求項3の乗物用転換座席100は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、座部クッション枠30を簡単に外せることができて、座部クッション30aの洗浄や交換等のメンテナンスが簡単に行えるのである。
【発明の効果】
【0049】
以上、説明した通り、本発明においては、
「乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えた乗物用転換座席100であって、
座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けて、
この背当てリンク40を一方側から他方側に揺動させる間に、ピン60がカム50のカム溝51に係合していき、座部クッション枠30を一方側から他方側に傾斜させるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、座部クッション枠30を傾動するものとして使用者が安楽姿勢を取ることができるようにし、かつ転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができる転換座席100を提供することができるのである。
【0050】
また、請求項2に係る乗物用転換座席100においては、
「座部クッション枠30の、中心線70の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分にカム50を取り付けるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、上記請求項1の乗物用転換座席100と同様な効果を発揮する他、簡単な構造で転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0051】
さらに、請求項3に係る乗物用転換座席100では、
「座部クッション枠30の側面の、中心線70の両側に位置する部分に、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧される固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けて、着脱ピン31bのみを取り外すことにより、座部クッション枠30及び座部クッション30aを支持台20から取り外せるようにしたこと」
のその構成上の特徴があり、これにより、上記請求項1または2の乗物用転換座席100と同様な効果を発揮する他、座部クッション枠30を簡単に外すことができ、座部クッション30aの洗浄や交換等のメンテナンスが簡単に行えるものとなっているのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である乗物用転換座席100について説明するが、この最良形態の乗物用転換座席100は、上記各請求項の発明全てを含むものである。
【0053】
図1及び図2には、本最良形態に係る乗物用転換座席100が示してあるが、この乗物用転換座席100は、乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えたものである。
【0054】
基台10としては、これが設置させるべき乗物の床面上の状態に応じて、図1の図示左方に示したような形態のものが採用されることもあるが、少なくとも、図1の図示右側に示した基台10が採用される。この右側の基台10内には、図1及び図4に示すように、後述する背当てリンク40の傾動操作を補助するためのスプリング11が収納されるものである。このスプリング11が引張スプリングである場合、背当てリンク40の揺動操作時には、スプリング11の引張力により背当てリンク40の揺動操作が補助されるとともに、背当てリンク40が次に説明するストッパ22に当接する際の衝撃をも緩和する。
【0055】
支持台20は、図4の(a)及び(b)に示したように、側面形状が「ゴンドラ型」になっており、左右にアーム部が立ち上がっていて、このアーム部の上面に、弾性材料からなるストッパ22が取り付けてあり、このストッパ22によって、背当てリンク40、固定ピン31a、及び着脱ピン31bを弾発的に受け止るようになっている。勿論、これらの支持台20は、図1にも示したように、一つの背当て40aに対して左右2つが使用されるものであり、これら2つの支持台20は、後述する背当てリンク40と一体的に揺動する転換軸41によって連結されるものである。
【0056】
また、この支持台20の中心には支持突起21が突出形成してあり、この支持突起21上には、後述する座部クッション枠30の両側に形成してある係合部33が係合されることになる。
【0057】
座部クッション枠30は、図5〜図9に示したように、平枠形状に形成したものであり、その上に人が座ることになる柔らかい座部クッション30aが取り付けられるものである。この座部クッション枠30の上面には、図5の(a)及び(b)に示したように、爪32が形成してあり、この爪32を利用することにより、座部クッション枠30上に対する座部クッション30aの一体化が簡単にできるようにしてある。
【0058】
また、この座部クッション枠30については、図5の(a)に示したように、その左右側部上面であって中心線70と交差する部分に、前述した支持台20側の支持突起21が係合することになる係合部33が、それぞれ形成してある。
【0059】
そして、この座部クッション枠30の左右両側面には、図5及び図6に示したように、固定ピン31a及び着脱ピン31bが設けてあり、これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、座部クッション枠30の中心線70に対して同じ距離で前後に配置してある。固定ピン31aは、座部クッション枠30の側面に、溶接等の手段によって一体化したものであるが、着脱ピン31bは、図5及び図6の各(a)や図10に示したように、座部クッション枠30の側面にピン取付部31cを取り付けておいて、このピン取付部31cに文字通り着脱されるものである。
【0060】
勿論、これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、図8の(a)にも示したように、それぞれ座部クッション枠30の同じ側に取り付けられるものであり、例えば、着脱ピン31bを外して図12の(b)に示したよう状態としたときに、座部クッション枠30及びこれと一体的な座部クッション30aを、図12の(b)の図示右上方向へ簡単に引き出すことができるものである。
【0061】
背当てリンク40は、所謂「平行リンク」を構成するものであり、その上端には、図2中の仮想線にて示したように、背当て40aが取り付けられるものである。つまり、この平行リンクである背当てリンク40によって支持台20側に連結される背当て40aは、背当てリンク40が揺動された側とは反対に常に傾斜することになるものであり、人がその前面に凭れ掛かったときに、上体について安楽姿勢が採れるようになっている。
【0062】
また、この背当てリンク40は、図1にも示したように、左右の各支持台20に組み付けられるものであり、これによって背当て40aの両側を支持するものである。本最良形態では、図2にも示したように、これらの一対の背当てリンク40に、各支持台20の内側に配置される転換軸41を中心軸41aを介して組み付け、この転換軸41と背当てリンク40とが一体的に揺動するようにしてある。この転換軸41には、図4に示したように、スプリングアーム42が一体的に設けてあり、このスプリングアーム42は上述した基台10内にて揺動するようにしてある。そして、このスプリングアーム42にはスプリング11が連結してあって、このスプリング11の作用によって背当てリンク40の揺動操作が行い易くなるようにしてある。
【0063】
さらに、これら各背当てリンク40には、図4の(a)にて示したように、その中央部分の外側面に押え溝43が形成してある。この押え溝43は、図12に示したように、座部クッション枠30側の固定ピン31aまたは着脱ピン31bを支持台20側に確実に押圧するようにするものであり、転換後に傾動完了した座部クッション枠30の位置を固定するものである。
【0064】
そして、上述した座部クッション枠30の側面下部には、図2、図6の(b)、図7、図9、図11、及び図12に示したように、カム50が一体的に取り付けてある。このカム50は、本最良形態の場合、前述した固定ピン31aと同じ側に一個だけ取り付けてあり、そのカム溝51は、着脱ピン31b側に向けて開口している。このカム溝51は、図6の(b)にも示したように、入り口部分が大きく、中に入るに従って後述するピン60の直径程度の幅となるようにしてある。
【0065】
上記のカム50のカム溝51にはピン60が係合するのであるが、このピン60は、図2及び図4に示したように、上述した背当てリンク40と一体的に揺動する転換軸41に取り付けてある。本最良形態では、カム50は一個であるが、このピン60については、図4の(a)にて示したように、両方の転換軸41についてそれぞれ取り付けてある。このようにしたのは、座部クッション枠30を図9に示したのとは反対にして各支持台20に組み込んだときにも、カム50に係合するピン60が存在するようにするためである。
【0066】
(その他の実施例)
上述した最良形態では、カム50を座部クッション枠30の側面に一個だけ取り付けた例を示しているが、このカム50は、中心線70の前後にそれぞれ取り付けて実施してもよいものである。この場合には、各カム50のカム溝51は向き合うようにするとともに、ピン60を各背当てリンク40側に設けておかなければならないが、座部クッション枠30がその中心線70の両側において同じ重量である場合に有効である。何故なら、当該乗物用転換座席100をどちらに転換する場合においても、必ずカム50とピン60との係合によって座部クッション枠30の傾動が行えるからである。
【0067】
また、背当てリンク40の押え溝43によって押圧される固定ピン31aは、これを着脱ピン31bに代えて実施してもよい。そうすれば、全てが着脱ピン31bとなってこれを座部クッション枠30側から簡単に外せるから、座部クッション30aが設けてある座部クッション枠30の各支持台20からの取り外しが簡単に行えるからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る乗物用転換座席を構成する基台と支持台、及び背当てリンクとの関係を示す分解斜視図である。
【図2】同乗物用転換座席の支持台に対する、背当てリンク、転換軸、カム及びピンの各位置関係を示す部分拡大斜視図である。
【図3】図2に示したものの見る方向を変えて示すもので、(a)は部分正面図、(b)は座部クッション枠及び座部クッションを取り外した状態の部分平面図である。
【図4】同乗物用転換座席を構成している基台、支持台、スプリング、及び背当てリンクの位置関係を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】同乗物用転換座席を構成している座部クッション枠を示すもので、(a)は部分平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。
【図6】同座部クッション枠の端部分を拡大して示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】同座部クッション枠の端部分を示すもので、(a)は一方側部分の斜視図、(b)は他方側部分の斜視図である。
【図8】座部クッションを取り付けた座部クッション枠を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】座部クッションを取り付けた座部クッション枠の部分破断側面図である。
【図10】図8の(a)中の1−1線に沿ってみた部分縦断面図である。
【図11】背当てリンクを支持台に対して揺動させたときの状態を示すもので、(a)は背当てリンクが直立した状態の側面図、(b)はカムのカム溝にピンが係合したときの状態の側面図、(c)は座部クッション枠の傾動が完了したときの側面図である。
【図12】背当てリンクを支持台に対して揺動させたときの状態を示すもので、(a)は背当てリンクが右側に完全に揺動された状態の側面図、(b)は背当てリンクが左側に完全に揺動された状態の側面図である。
【図13】従来の技術を示す概略側面図である。
【図14】従来の別の技術を示す概略側面図である。
【図15】従来のさらに別の技術を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0069】
100 乗物用転換座席
10 基台
11 スプリング
20 支持台
21 支持突起
22 ストッパ
30 座部クッション枠
30a 座部クッション
31a 固定ピン
31b 着脱ピン
31c ピン取付部
32 爪
33 係合部
40 背当てリンク
40a 背当て
41 転換軸
41a 中心軸
42 スプリングアーム
43 押え溝
50 カム
51 カム溝
60 ピン
70 中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車や電車、あるいはバス等の乗物に適用される乗物用転換座席に関するものであり、特に、背当てを揺動させることにより、この背当ての方向が一方から他方に転換されるようにした乗物用転換座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車や電車等の乗物においては、その進行方向が変わる度に座席の方向を転換することが行われている。つまり、背当ての傾斜状態を乗物の進行方向に合わせて転換しなければならない。何故なら、使用者が進行方向に向いて座れるように、背当てを進行方向とは反対に位置させなければならないからである。勿論、乗物の座席は、不特定多数の人が利用するものであるから、一旦転換した方向とは逆の方向に転換する人も居るし、グループで複数の座席を使用するときには、使用者が座席の方向を転換して、複数掛けの座席2つを向き合わせにすること(一部の転換)もある。
【0003】
この乗物用座席の方向転換をする方法としては、座席全体を回転させて行う「回転座席方式」があるが、これだと限られた車室内で回転できる空間を確保しなければならないため、不特定多数の人が利用するものとしては適当ではない。そこで、限られた車室内空間を有効に利用する乗物用座席として、例えば特許文献1〜特許文献3に示されているような「転換座席」が提案されている。
【特許文献1】実公昭35−28824号公報
【特許文献2】実公昭41−967号公報
【特許文献2】実公平01−34580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている転換座席は、図13にも示すように、背当てを支持している背当て(平行)リンクの各下端にスプリングを掛装したものであり、このスプリングの作用によって、背当てを一方側から他方側へと揺動させる場合の力を少なくできるという利点があって、転換操作がやり易いものと考えられる。
【0005】
しかしながら、この特許文献1の転換座席では、座部クッションが固定的であるため、利用者にとって安楽姿勢が取りにくいのではないか、と考えられる。何故なら、人が座わる場合は、膝の乗る部分が、お尻の乗る部分に比して高いと、安楽姿勢となるが、この特許文献1のそれでは座部クッションが固定的だからである。
【0006】
これに対して、特許文献2の転換座席では、図14に示すように、座部クッションがその左右方向の中心線上で前後に傾動し得る構造となっていて、背当てリンクが図示右側に傾斜したとき、座部クッションの図示右側が沈み込むため、座部クッションによる安楽姿勢を取ることは可能になっている。
【0007】
しかしながら、今度は、この特許文献2の背当てリンクでは、特許文献1におけるようなスプリングの助力がない構造となっているため、その転換操作性は悪いのではないかと考えられる。
【0008】
以上のことの他に、特許文献2の転換座席では、「転換時における衝撃音発生」が解決されてはいないと考えられる。つまり、背当てを反対側に倒したときに、この特許文献2の転換座席では「ガタン」といった大きな衝撃音が発生すると考えられ、特に、背当てリンクを倒したときに大きな衝撃音が発生すると考えられる。つまり、この特許文献2の転換座席で採用されている図示左側の突軸12は、受止部5に当たっておらず浮いている状態であるため、倒された背当てリンク19が、浮いた状態の突軸12に当たり大きな衝撃音が発生し、その後、背当てリンク19と突軸12が一緒に受止部5に当たり、再度大きな衝撃音が発生するからであると考えられる。
【0009】
この「衝撃音」は、背当てリンクを一方側から起して他方側に倒したときに、背当てリンクと突軸との当接により発生するものと、背当てリンクと支持台との当接により発生するものとがあると考えられる。特に、図14の左側に示すような突軸のように、受止部から浮いた状態にある突軸に背当てリンクが当接すると、浮いた状態の金属の振動(これが衝撃音発生原因である)が抑制されないため、非常に大きな衝撃音が発生することが解ってきている。
【0010】
背当てリンクと受止部との当接により発生する衝撃音は、特許文献1、及び後述する特許文献3に示されているように、背当てリンクが当接する受止部に、緩衝機能を有するストッパを設ければある程度解消できるが、背当てリンクと突軸との当接による衝撃音発生防止策は、上記特許文献2では全くなされていないのである。
【0011】
特許文献3の「自動転換装置」では、図15に示すように、座部クッションの傾動による安楽姿勢の形成、及びリンクと支持台との当接による衝撃音発生は解決されているが、流体圧往復機構としてエヤーシリンダー10を用いなければならなから、エヤー供給器やエヤーの供給制御を行うバルブや制御器を備えなければならないから、全体の構造が複雑になっているだけでなく、これらの機器のメンテナンスも余儀なくされるものと考えられる。
【0012】
すなわち、この特許文献3の「自動転換装置」では、当該文献の第2欄第22行目から第3欄第13行目に記載されているように、「流体圧往復機構としてエヤーシリンダー10を用い、そのピストンロッド11の自由端側に継手部12を介して転換作動リンク13の一旦側を連結するとともに、この転換作動リンク13の他端側を転換作動軸14に連携させる。…この転換作動軸14の先端部にはローラー16が装着されており、…このローラー16が転換用リンク3又は4の内側端縁に沿って自在に回転しながら転換用リンク3又は4を脚台5に対する取付軸17、18部分において回転移動させ、而して背ずり1を前又は後へ転換させ得るようになっている…」ものである。
【0013】
ということは、この特許文献3の「自動転換装置」では、「座ぶとん2」を外そうとしても、転換作動軸14の先端部のローラー16が邪魔になり、転換用リンク3又は4を脚台5から外さない限り外せないものとなっている。このことは、汚れた「座ぶとん2」の洗浄等のメンテナンスを行う際には、転換用リンク3又は4を脚台5から外すといった作業が余儀なくされることを意味している。
【0014】
また、一般に、乗物用の座席の座部クッションは、長年の使用により、クッション性能の低下(ヘタリ)が発生する。これによって座り心地が悪くなるために、座部クッションの交換をするために座部クッション枠を簡単に取り外せるようにしておく必要がある。
【0015】
そこで、本発明者等は、座部クッション枠を簡単に取り外せて、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0016】
すなわち、本発明の目的とするところは、まず、座部クッション枠を傾動するものとして使用者が安楽姿勢を取ることができるようにし、かつ転換操作時における衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他に目的とするところは、座部クッション枠の重量を部分によって異ならせるといった簡単な構造で、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することのできる転換座席を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明の他に目的とするところは、座部クッション枠を簡単に外せるようにして、座部クッションの洗浄や変換等のメンテナンスが簡単に行えるようにすることのできる転換座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えた乗物用転換座席100であって、
座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けて、
この背当てリンク40を一方側から他方側に揺動させる間に、ピン60がカム50のカム溝51に係合していき、座部クッション枠30を一方側から他方側に傾斜させるようにしたことを特徴とする乗物用転換座席100」
である。
【0020】
すなわち、本発明に係る乗物用転換座席100は、図1及び図2にも示すように、乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えたものである。なお、各図において背当て40aは明示していないが、この背当て40aは、図2に示すように、各背当てリンク40の上端に取り付けられるものである。
【0021】
また、本発明に係る乗物用転換座席100では、図1〜図3に示すように、座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けたものである。
【0022】
カム50は、座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に設ける必要がある。何故なら、このカム50に後述する背当てリンク40側のピン60を係合させて、背当てリンク40の揺動に応じて座部クッション枠30を反対側に傾動させるようにし、座部クッション枠30、つまり座部クッション30aを背当てリンク40の揺動側に傾動させて、この座部クッション30a上の使用者が安楽姿勢が取れるようにしなければならないからである。
【0023】
そして、このカム50に係合するピン60を、背当てリンク40側に設ける必要があるのである。何故なら、これらのピン60及びカム50によって、転換操作のための力が加えられる背当てリンク40と、この背当てリンク40の動きに追随しなければならない座部クッション枠30とを連動させる必要があるからである。ここで、「背当てリンク40側に設ける」とは、背当てリンク40に直接設ける他、後述する最良形態におけるように、この背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41に設ける場合等をいう。
【0024】
以上のことから、各カム50、及びこれに係合するピン60は、それぞれ1つ宛あれば十分であるが、必要に応じて各部分に設けて実施してもよいものであり、座部クッション枠30が図5の(a)に示すような四角形状のものであることを考慮すれば、左右両側面の前後に最大でそれぞれ4個のカム50、及びこれに係合するピン60を設けることができる。
【0025】
後述する最良形態では、図5及び図6の各(b)に示すように、図示右側部分に1個のカム50を設けておき、このカム50に係合するピン60を、図3及び図4に示すように、各背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41に各1個設けてある。このようにすれば、座部クッション枠30の支持台20に対する組み付けを、座部クッション枠30の方向性を気にすることなく行えるから有利である。
【0026】
勿論、背当てリンク40側にカム50を設けておき、このカム50に係合するピン60を座部クッション枠30側に設けて実施しても良いことは言うまでもない。
【0027】
さて、以上のように構成した乗物用転換座席100においては、図11及び図12に示した最良形態におけるような作用を発揮する。これらの最良形態では、背当てリンク40側、つまりこの背当てリンク40と同期して揺動する転換軸41にピン60を設けておき、このピン60に係合するカム50を座部クッション枠30側に設けるようにしてある。
【0028】
図11の(a)〜(c)は、図12の(b)の状態にあった各背当てリンク40及び座部クッション枠30が、図12の(a)の状態へと変化する途中の様子が、(a)〜(c)の順で示してある。すなわち、図12の(b)の状態にあった各背当てリンク40に力を入れて、この背当てリンク40を使用者が起こしたときには、図11の(a)に示した状態になる。なお、このときには、後述する最良形態では、図11の(a)に示してある座部クッション枠30の左側部分を他方よりも重く形成してあるため、座部クッション枠30の左側部分が図示左側に傾動して、ここに取り付けてある着脱ピン31bが支持台20のストッパ22に当接して停止したままとなっている。
【0029】
この図11の(a)に示した状態になったときには、背当てリンク40側のピン60がカム50のカム溝51内に入り込もうとしているのであるが、カム溝51の開口端は、図6の(b)にも示すように、カム溝51の他の部分に比して大きく開口しているから、各部分の組み付け状態等に少しズレがあったとしても、背当てリンク40側のピン60はカム50のカム溝51内に確実に入り込む。
【0030】
次に、背当てリンク40がさらに揺動されて、図11の(b)に示した状態になると、この背当てリンク40に一体化してあるピン60は、カム50のカム溝51の中程まで侵入する。このとき、ピン60はカム50を下方に押し下げ始めることになり、座部クッション枠30を図示時計方向に傾動させ始めることになる。また、カム溝51の幅は既に狭くなってきているし、ピン60がカム50のカム溝51を図示下方に押し下げながら侵入することにより、座部クッション枠30が支持台20に対してガタ付くことはない。
【0031】
背当てリンク40がさらに揺動されて、図11の(c)に示した状態になると、固定ピン31aがストッパ22上に当接し、座部クッション枠30の傾動は完了する。このとき、背当てリンク40側のピン60は、カム50のカム溝51内に係合したままであるから、座部クッション枠30が不用意にガタ付くことはない。なお、背当てリンク40は、座部クッション枠30側に設けてある固定ピン31a及びストッパ22上に未だ当接していない。
【0032】
最後に、図12の(a)に示す状態になるのであるが、このときには、座部クッション枠30の傾動は完了しており、揺動してきた背当てリンク40は、支持台20側のストッパ22上に当接するとともに、その押え溝43によって座部クッション枠30側の固定ピン31a(既にストッパ22上に当接している)を上方から押さえ込むことになる。
【0033】
つまり、背当てリンク40が、既にストッパ22に当接している、つまり振動しにくい状態になっている固定ピン31aを押さえ込むのであるから、浮いた状態にあるものに当接するのとは異なって、衝撃音の発生を極力抑制することができる。勿論、ストッパ22は弾性材料からなっているから、図11の(c)で示した固定ピン31aとの当接時も、図12の(a)で示した背当てリンク40との当接時も、いずれの場合も衝撃音の発生を極力抑制することができる。
【0034】
以上の結果、本発明に係る乗物用転換座席100では、その転換操作時において、背当てリンク40の揺動に基づく衝撃音の発生を極力抑制することができることは勿論、座部クッション枠30の傾動によっても衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0035】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の乗物用転換座席100について、
「座部クッション枠30の、中心線70の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分にカム50を取り付けるようにしたこと」
である。
【0036】
すなわち、この請求項2に係る乗物用転換座席100では、その座部クッション枠30の重量が中心線70の両側で異なっているものであり、その軽い側の部分に前述したカム50が設けてある。なお、このカム50を設けた後も、これを取り付けた部分は、反対側より軽いものである。
【0037】
以上のように構成するとどうなるかは、図11の(a)〜(c)、及び図12の(a)〜(b)に示してある。例えば、図12の(a)に示した状態から図12の(b)に示した状態へと座席転換を行うために、各背当てリンク40を引き起こした場合、まず、図11の(a)に示したようになる。
【0038】
つまり、図11の(c)、同(b)を経て、図11の(a)に示したように、各背当てリンク40を引き起こすと、それまでの各部における係合や押圧は解除されるから、座部クッション枠30の重い側の部分(図11では図示左方部分)が自重によって下がり、その側面に取り付けてあった着脱ピン31bが、支持台20側の弾性材料からなるストッパ22に当接する。
【0039】
さらに、背当てリンク40を倒して行けば、背当てリンク40側の押さえ溝43が着脱ピン31b上に係合して当該着脱ピン31bをストッパ22上に押さえ付けるのであるが、このときまでには、上述したように着脱ピン31bがストッパ22上に既に当接しているのであるから、衝撃音の発生を極力抑制することができる。そして、座部クッション枠30は、最終的に図12の(b)の状態となるのである。
【0040】
換言すれば、この請求項2の乗物用転換座席100は、その座部クッション枠30の一部を重くすることにより、この座部クッション枠30における係合や押圧が解除されたときに、その重い側の部分が自重により傾動して、この部分に設けてある着脱ピン31bが支持台20側のストッパ22に当接するから、浮いたままの状態の着脱ピン31bに背当てリンク40が当接するようなことはなく、衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0041】
従って、この請求項2の乗物用転換座席100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、座部クッション30枠の一方側を重くするという簡単な構造で、転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0042】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の乗物用転換座席100について、
「座部クッション枠30の側面の、中心線70の両側に位置する部分に、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧される固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けて、着脱ピン31bのみを取り外すことにより、座部クッション枠30及び座部クッション30aを支持台20から取り外せるようにしたこと」
である。
【0043】
すなわち、この請求項3に係る乗物用転換座席100では、図5及び図6に示すように、座部クッション枠30の側面に固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けたものであり、具体的には、図5の(a)に示すように、座部クッション枠30の側面の、中心線70の図示右側に位置する部分に固定ピン31aを、また中心線70の図示左側に位置する部分に着脱ピン31bを設けたものである。これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、図12の(a)及び(b)に示すように、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧されるものである。
【0044】
固定ピン31aは、文字通り座部クッション枠30の側面に固定的に設けられるものであるが、着脱ピン31bは、図5の(a)及び(b)に示すように、固定ピン31aとは反対側にピン取付部31cを設けておいて、このピン取付部31cに対して着脱できるようにしたものである。つまり、固定ピン31aは外せないが、着脱ピン31bは、例えばピン取付部31cに螺着され、ドライバー等の工具を使用すればこのピン取付部31cから簡単に取り外せるものなのである。
【0045】
ところで、座部クッション枠30の両側であって中心線70上には、図5及び図6に示すように、係合部33が形成してあり、この係合部33は、図4に示した支持台20側の支持突起21上に係合される。つまり、この座部クッション枠30は支持台20の支持突起21上に傾動自在に載置されているだけであり、上記固定ピン31a及び着脱ピン31b以外では支持台20側に係合する部分がないのである。
【0046】
この乗物用転換座席100においては、その座部クッション枠30上の座部クッション30aが汚れたため、これを洗浄したい場合がある。この洗浄作業は、座部クッション30aを支持台20に組み込んだまま行うことも可能ではあるが、この請求項3の乗物用転換座席100では、この座部クッション枠30を座部クッション30aとともに支持台20から外すことができるから、そのメンテナンスが容易に行えるのである。このことは、座部クッション30aを交換するときにも同様である。
【0047】
この座部クッション枠30を外すには、次のようにする。すなわち、図12の(a)に示すように、まず各背当てリンク40を固定ピン31a側に当接させておいて着脱ピン31bの周囲に邪魔者がない状態にしておき、この状態で着脱ピン31bをピン取付部31cから外すのである。次に、図12の(b)に示すように、各背当てリンク40を反対側に倒して、それまで押さえていた固定ピン31aを自由にすれば、背当てリンク40と座部クッション枠30とを関連付けていたものが無くなるから、座部クッション枠30を座部クッション30aとともに、図示右上方向に引き抜けば、当該座部クッション枠30の取り外しは完了する。
【0048】
従って、この請求項3の乗物用転換座席100は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、座部クッション枠30を簡単に外せることができて、座部クッション30aの洗浄や交換等のメンテナンスが簡単に行えるのである。
【発明の効果】
【0049】
以上、説明した通り、本発明においては、
「乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えた乗物用転換座席100であって、
座部クッション枠30の側面であって、当該座部クッション枠30の中心線70からずらせた部分に、少なくとも1つのカム50またはピン60を設けるとともに、この少なくとも1つのカム50またはピン60が係合するピン60またはカム50を、背当てリンク40側に設けて、
この背当てリンク40を一方側から他方側に揺動させる間に、ピン60がカム50のカム溝51に係合していき、座部クッション枠30を一方側から他方側に傾斜させるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、座部クッション枠30を傾動するものとして使用者が安楽姿勢を取ることができるようにし、かつ転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができる転換座席100を提供することができるのである。
【0050】
また、請求項2に係る乗物用転換座席100においては、
「座部クッション枠30の、中心線70の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分にカム50を取り付けるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、上記請求項1の乗物用転換座席100と同様な効果を発揮する他、簡単な構造で転換操作時に衝撃音の発生を極力抑制することができるのである。
【0051】
さらに、請求項3に係る乗物用転換座席100では、
「座部クッション枠30の側面の、中心線70の両側に位置する部分に、背当てリンク40の押さえ溝43によって支持台20側に押圧される固定ピン31a及び着脱ピン31bを取り付けて、着脱ピン31bのみを取り外すことにより、座部クッション枠30及び座部クッション30aを支持台20から取り外せるようにしたこと」
のその構成上の特徴があり、これにより、上記請求項1または2の乗物用転換座席100と同様な効果を発揮する他、座部クッション枠30を簡単に外すことができ、座部クッション30aの洗浄や交換等のメンテナンスが簡単に行えるものとなっているのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である乗物用転換座席100について説明するが、この最良形態の乗物用転換座席100は、上記各請求項の発明全てを含むものである。
【0053】
図1及び図2には、本最良形態に係る乗物用転換座席100が示してあるが、この乗物用転換座席100は、乗物の車室内に固定される左右の基台10上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台20と、これらの支持台20間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠30と、各支持台20に揺動可能に組み付けた背当てリンク40とを備えたものである。
【0054】
基台10としては、これが設置させるべき乗物の床面上の状態に応じて、図1の図示左方に示したような形態のものが採用されることもあるが、少なくとも、図1の図示右側に示した基台10が採用される。この右側の基台10内には、図1及び図4に示すように、後述する背当てリンク40の傾動操作を補助するためのスプリング11が収納されるものである。このスプリング11が引張スプリングである場合、背当てリンク40の揺動操作時には、スプリング11の引張力により背当てリンク40の揺動操作が補助されるとともに、背当てリンク40が次に説明するストッパ22に当接する際の衝撃をも緩和する。
【0055】
支持台20は、図4の(a)及び(b)に示したように、側面形状が「ゴンドラ型」になっており、左右にアーム部が立ち上がっていて、このアーム部の上面に、弾性材料からなるストッパ22が取り付けてあり、このストッパ22によって、背当てリンク40、固定ピン31a、及び着脱ピン31bを弾発的に受け止るようになっている。勿論、これらの支持台20は、図1にも示したように、一つの背当て40aに対して左右2つが使用されるものであり、これら2つの支持台20は、後述する背当てリンク40と一体的に揺動する転換軸41によって連結されるものである。
【0056】
また、この支持台20の中心には支持突起21が突出形成してあり、この支持突起21上には、後述する座部クッション枠30の両側に形成してある係合部33が係合されることになる。
【0057】
座部クッション枠30は、図5〜図9に示したように、平枠形状に形成したものであり、その上に人が座ることになる柔らかい座部クッション30aが取り付けられるものである。この座部クッション枠30の上面には、図5の(a)及び(b)に示したように、爪32が形成してあり、この爪32を利用することにより、座部クッション枠30上に対する座部クッション30aの一体化が簡単にできるようにしてある。
【0058】
また、この座部クッション枠30については、図5の(a)に示したように、その左右側部上面であって中心線70と交差する部分に、前述した支持台20側の支持突起21が係合することになる係合部33が、それぞれ形成してある。
【0059】
そして、この座部クッション枠30の左右両側面には、図5及び図6に示したように、固定ピン31a及び着脱ピン31bが設けてあり、これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、座部クッション枠30の中心線70に対して同じ距離で前後に配置してある。固定ピン31aは、座部クッション枠30の側面に、溶接等の手段によって一体化したものであるが、着脱ピン31bは、図5及び図6の各(a)や図10に示したように、座部クッション枠30の側面にピン取付部31cを取り付けておいて、このピン取付部31cに文字通り着脱されるものである。
【0060】
勿論、これらの固定ピン31a及び着脱ピン31bは、図8の(a)にも示したように、それぞれ座部クッション枠30の同じ側に取り付けられるものであり、例えば、着脱ピン31bを外して図12の(b)に示したよう状態としたときに、座部クッション枠30及びこれと一体的な座部クッション30aを、図12の(b)の図示右上方向へ簡単に引き出すことができるものである。
【0061】
背当てリンク40は、所謂「平行リンク」を構成するものであり、その上端には、図2中の仮想線にて示したように、背当て40aが取り付けられるものである。つまり、この平行リンクである背当てリンク40によって支持台20側に連結される背当て40aは、背当てリンク40が揺動された側とは反対に常に傾斜することになるものであり、人がその前面に凭れ掛かったときに、上体について安楽姿勢が採れるようになっている。
【0062】
また、この背当てリンク40は、図1にも示したように、左右の各支持台20に組み付けられるものであり、これによって背当て40aの両側を支持するものである。本最良形態では、図2にも示したように、これらの一対の背当てリンク40に、各支持台20の内側に配置される転換軸41を中心軸41aを介して組み付け、この転換軸41と背当てリンク40とが一体的に揺動するようにしてある。この転換軸41には、図4に示したように、スプリングアーム42が一体的に設けてあり、このスプリングアーム42は上述した基台10内にて揺動するようにしてある。そして、このスプリングアーム42にはスプリング11が連結してあって、このスプリング11の作用によって背当てリンク40の揺動操作が行い易くなるようにしてある。
【0063】
さらに、これら各背当てリンク40には、図4の(a)にて示したように、その中央部分の外側面に押え溝43が形成してある。この押え溝43は、図12に示したように、座部クッション枠30側の固定ピン31aまたは着脱ピン31bを支持台20側に確実に押圧するようにするものであり、転換後に傾動完了した座部クッション枠30の位置を固定するものである。
【0064】
そして、上述した座部クッション枠30の側面下部には、図2、図6の(b)、図7、図9、図11、及び図12に示したように、カム50が一体的に取り付けてある。このカム50は、本最良形態の場合、前述した固定ピン31aと同じ側に一個だけ取り付けてあり、そのカム溝51は、着脱ピン31b側に向けて開口している。このカム溝51は、図6の(b)にも示したように、入り口部分が大きく、中に入るに従って後述するピン60の直径程度の幅となるようにしてある。
【0065】
上記のカム50のカム溝51にはピン60が係合するのであるが、このピン60は、図2及び図4に示したように、上述した背当てリンク40と一体的に揺動する転換軸41に取り付けてある。本最良形態では、カム50は一個であるが、このピン60については、図4の(a)にて示したように、両方の転換軸41についてそれぞれ取り付けてある。このようにしたのは、座部クッション枠30を図9に示したのとは反対にして各支持台20に組み込んだときにも、カム50に係合するピン60が存在するようにするためである。
【0066】
(その他の実施例)
上述した最良形態では、カム50を座部クッション枠30の側面に一個だけ取り付けた例を示しているが、このカム50は、中心線70の前後にそれぞれ取り付けて実施してもよいものである。この場合には、各カム50のカム溝51は向き合うようにするとともに、ピン60を各背当てリンク40側に設けておかなければならないが、座部クッション枠30がその中心線70の両側において同じ重量である場合に有効である。何故なら、当該乗物用転換座席100をどちらに転換する場合においても、必ずカム50とピン60との係合によって座部クッション枠30の傾動が行えるからである。
【0067】
また、背当てリンク40の押え溝43によって押圧される固定ピン31aは、これを着脱ピン31bに代えて実施してもよい。そうすれば、全てが着脱ピン31bとなってこれを座部クッション枠30側から簡単に外せるから、座部クッション30aが設けてある座部クッション枠30の各支持台20からの取り外しが簡単に行えるからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る乗物用転換座席を構成する基台と支持台、及び背当てリンクとの関係を示す分解斜視図である。
【図2】同乗物用転換座席の支持台に対する、背当てリンク、転換軸、カム及びピンの各位置関係を示す部分拡大斜視図である。
【図3】図2に示したものの見る方向を変えて示すもので、(a)は部分正面図、(b)は座部クッション枠及び座部クッションを取り外した状態の部分平面図である。
【図4】同乗物用転換座席を構成している基台、支持台、スプリング、及び背当てリンクの位置関係を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】同乗物用転換座席を構成している座部クッション枠を示すもので、(a)は部分平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。
【図6】同座部クッション枠の端部分を拡大して示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】同座部クッション枠の端部分を示すもので、(a)は一方側部分の斜視図、(b)は他方側部分の斜視図である。
【図8】座部クッションを取り付けた座部クッション枠を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】座部クッションを取り付けた座部クッション枠の部分破断側面図である。
【図10】図8の(a)中の1−1線に沿ってみた部分縦断面図である。
【図11】背当てリンクを支持台に対して揺動させたときの状態を示すもので、(a)は背当てリンクが直立した状態の側面図、(b)はカムのカム溝にピンが係合したときの状態の側面図、(c)は座部クッション枠の傾動が完了したときの側面図である。
【図12】背当てリンクを支持台に対して揺動させたときの状態を示すもので、(a)は背当てリンクが右側に完全に揺動された状態の側面図、(b)は背当てリンクが左側に完全に揺動された状態の側面図である。
【図13】従来の技術を示す概略側面図である。
【図14】従来の別の技術を示す概略側面図である。
【図15】従来のさらに別の技術を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0069】
100 乗物用転換座席
10 基台
11 スプリング
20 支持台
21 支持突起
22 ストッパ
30 座部クッション枠
30a 座部クッション
31a 固定ピン
31b 着脱ピン
31c ピン取付部
32 爪
33 係合部
40 背当てリンク
40a 背当て
41 転換軸
41a 中心軸
42 スプリングアーム
43 押え溝
50 カム
51 カム溝
60 ピン
70 中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の車室内に固定される左右の基台上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台と、これらの支持台間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠と、前記各支持台に揺動可能に組み付けた背当てリンクとを備えた乗物用転換座席であって、
前記座部クッション枠の側面であって、当該座部クッション枠の中心線からずらせた部分に、少なくとも1つのカムまたはピンを設けるとともに、この少なくとも1つのカムまたはピンが係合するピンまたはカムを、前記背当てリンク側に設けて、
この背当てリンクを一方側から他方側に揺動させる間に、前記ピンが前記カムのカム溝に係合していき、前記座部クッション枠を一方側から他方側に傾斜させるようにしたことを特徴とする乗物用転換座席。
【請求項2】
前記座部クッション枠の、前記中心線の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分に前記カムを取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用転換座席。
【請求項3】
前記座部クッション枠の側面の、前記中心線の両側に位置する部分に、前記背当てリンクの押さえ溝によって前記支持台側に押圧される固定ピン及び着脱ピンを取り付けて、着脱ピンのみを取り外すことにより、前記座部クッション枠及び座部クッションを前記支持台から取り外せるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用転換座席。
【請求項1】
乗物の車室内に固定される左右の基台上にそれぞれ取り付けられる左右の支持台と、これらの支持台間に橋架状態で傾動可能に組み付けられる1つの座部クッション枠と、前記各支持台に揺動可能に組み付けた背当てリンクとを備えた乗物用転換座席であって、
前記座部クッション枠の側面であって、当該座部クッション枠の中心線からずらせた部分に、少なくとも1つのカムまたはピンを設けるとともに、この少なくとも1つのカムまたはピンが係合するピンまたはカムを、前記背当てリンク側に設けて、
この背当てリンクを一方側から他方側に揺動させる間に、前記ピンが前記カムのカム溝に係合していき、前記座部クッション枠を一方側から他方側に傾斜させるようにしたことを特徴とする乗物用転換座席。
【請求項2】
前記座部クッション枠の、前記中心線の一方側部分を他方側部分よりも重く構成するとともに、前記他方側部分に前記カムを取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用転換座席。
【請求項3】
前記座部クッション枠の側面の、前記中心線の両側に位置する部分に、前記背当てリンクの押さえ溝によって前記支持台側に押圧される固定ピン及び着脱ピンを取り付けて、着脱ピンのみを取り外すことにより、前記座部クッション枠及び座部クッションを前記支持台から取り外せるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用転換座席。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−24144(P2008−24144A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198549(P2006−198549)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000003517)天龍工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000003517)天龍工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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