説明

乳入り飲料、及び乳入り飲料のミルク感の向上方法

【課題】低カロリーや低糖化に対応でき、かつ、ミルク感に優れた乳入り飲料を提供すること。
【解決手段】本発明に係る乳入り飲料は、キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分と、を含む。乳脂肪分の含有量は、0.6質量%以下であることが好ましい。無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比は、0.40以上であることが好ましい。糖類の含有量は、2.5g/100mL以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳入り飲料、並びに乳入り飲料のミルク感の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向が高まるにつれ、カロリー及び糖類の摂取を控える傾向がある。このため、市場では、低カロリー、低糖飲料の存在感が増しており、この傾向は乳入り飲料でも例外でない。しかし、カロリー及び糖類を元来乳が有しているため、乳入り飲料で低カロリー、低糖を実現するためには、乳の使用量を制限せざるを得ず、その結果、ミルク感を担保することが困難になる。
【0003】
そこで、乳入り飲料に対して、スクラロース(特許文献1)又は還元性単糖(特許文献2)を配合してミルク感を向上することが、従来、行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42021号公報
【特許文献2】特開平9−205990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低カロリーや低糖化に対応でき、かつミルク感に優れた乳入り飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、キシリトール及び還元デキストリンの併用が、乳入り飲料のミルク感を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1) キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分と、を含む乳入り飲料。
【0008】
(2) 乳脂肪分の含有量が0.6質量%以下である(1)記載の乳入り飲料。
【0009】
(3) 無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比が0.40以上である(1)又は(2)記載の乳入り飲料。
【0010】
(4) キシリトールの含有量に対する前記デキストリン成分の含有量の質量比が1.5以下である(1)から(3)いずれか記載の乳入り飲料。
【0011】
(5) キシリトールの含有量に対する前記デキストリン成分の含有量の質量比が1.0以下である(4)記載の乳入り飲料。
【0012】
(6) 前記デキストリン成分は、還元デキストリンからなる(1)から(5)いずれか記載の乳入り飲料。
【0013】
(7) キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを乳入り飲料に配合することで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法。
【0014】
(8) キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法。
【0015】
(9) キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料の濃厚感を向上する方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低カロリーかつ非糖類であるキシリトール及び還元デキストリンを併用することで、乳入り飲料のミルク感が向上する。これにより、本発明の乳入り飲料は、低カロリーや低糖化に対応することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらが本発明を限定するものではない。
【0018】
本発明に係る乳入り飲料は、キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分と、を含む。本明細書における乳入り飲料とは、乳分を原料として使用し、好ましくは加熱殺菌工程を経て製造される飲料を指し、好ましくは容器詰された飲料である。かかる乳入り飲料には、コーヒー分を含む乳入りコーヒー飲料、紅茶分を含む乳入り紅茶飲料、フルーツ牛乳、ココア、スープ等が含まれる。
【0019】
本明細書において乳分とは、飲料にミルク風味やミルク感を付与するために添加する成分を指し、主に乳(例えば、牛乳、羊乳、山羊乳)及び乳製品のことをいう。例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料等が挙げられ、乳製品としては、クリーム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳等が挙げられる。風味の面から、牛乳が望ましい。また、発酵乳や乳酸菌飲料も乳として挙げられる。
【0020】
本発明では、還元デキストリンとともにキシリトールを用いることで、乳入り飲料のミルク感、濃厚感、及びおいしさが向上する。また、キシリトールとともに、還元デキストリンを含むデキストリン成分を用いることで、乳入り飲料の濃厚感が向上する。これらの効果は、キシリトール以外の糖アルコール(例えば、エリスリトール、マルチトール)、スクラロース、アセスルファムK等の糖質甘味料や、非還元デキストリンでは実現困難である点で、予測し得ないものである。なお、本明細書において、ミルク感の向上は、ミルク感の良さが向上することを意味し、ミルク感の強さが増強することではない。
【0021】
このように、本発明は、キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを乳入り飲料に配合することで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法を提供する。なお、本発明におけるミルク感とは、乳の風味を指し、乳特有の呈味、香りのことを指す。
【0022】
キシリトール及びデキストリン成分によりミルク感が向上することから、本発明の乳入り飲料は、乳脂肪分を多量に配合しなくとも、優れたミルク感を呈することができる。そこで、低カロリーの観点で、乳脂肪分の含有量は、乳入り飲料に対し、0.6質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、0.4質量%以下である。ただし、本発明の乳入り飲料は、これに限られず、敢えて0.6質量%超の乳脂肪分を含んでもよい。また、本発明の乳入り飲料は、所望のミルク感の強さに応じ、特に限定されないが、0.1質量%以上の乳脂肪分を含んでよい。
【0023】
ミルク感を向上する観点から、無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比は0.40以上であることが好ましく、より好ましくは0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上である。また、無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比は、所望の低カロリーの程度に応じ、特に限定されないが、5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、3以下、2以下である。乳脂肪分及び無脂乳固形分の含有量は、常法により測定される。
【0024】
本明細書において、デキストリン成分は、還元デキストリンを少なくとも一部に含んでいればよく、非還元デキストリンを更に含んでいてもよい。還元デキストリンは還元デキストリンよりも、キシリトールと併用されたときのミルク感及びおいしさの向上効果が高い。このため、デキストリン成分における還元デキストリンの配合量の割合は、所望のミルク感及びおいしさに応じて高いことが好ましく、具体的には、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、100質量%(つまり、デキストリン成分が還元デキストリンからなる)である。デキストリン成分の含有量は、常法により測定される。
【0025】
キシリトールがデキストリン成分に対して過小であると、Bxに対して乳入り飲料の濃厚感が十分に得られにくい。このため、キシリトールの含有量に対するデキストリン成分の含有量の質量比は、1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下である。キシリトールの含有量は、HPLCを用いた常法により測定される。
【0026】
このように、本発明は、キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料の濃厚感を向上する方法を提供する。なお、本発明における濃厚感とは、味の厚み、ボディ感、コクと表現されるものを指す。
【0027】
Bxに対する乳入り飲料の濃厚感、ミルク感、おいしさをより向上する観点では、キシリトールの含有量に対するデキストリン成分の含有量の質量比が1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.67以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.25以下である。上記比率は、これらの範囲から、デキストリン成分における還元デキストリンの配合量の割合に応じて、適宜設定されてよい。つまり、上記割合が高ければ、上記比率は低くてよく、上記割合が低ければ、上記比率は高くてよい。
【0028】
このように、本発明は、キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法を提供する。
【0029】
キシリトールに対するデキストリン成分の比を低めるためには、キシリトールをそれなりの量で配合する必要がある。しかし、キシリトールは、甘味が強すぎず、また官能性に変化を与えるプロファイルがデキストリン成分と異なる(キシリトールは早く、デキストリン成分は遅い)ため、ある程度の量で配合されても、乳入り飲料の官能性を損ないにくい点で有利である。つまり、スクラロース等のキシリトールより甘味度が高い甘味料は、多量に配合すると、甘味が強すぎて乳入り飲料の官能性を損なってしまうおそれがある。また、エリスリトール等の官能性変化が遅い甘味料は、多量に配合すると、デキストリン成分による官能性変化と重複した変化を生じ、乳入り飲料の官能性がやはり低下してしまうおそれがある。
【0030】
なお、キシリトールに対するデキストリン成分の比率が過小であると、乳入り飲料の濃厚感が十分に得られない場合がある。このため、特に限定されないが、キシリトールの含有量に対するデキストリン成分の含有量の質量比は、0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上である。
【0031】
キシリトール及びデキストリン成分の含有量の総量は、過小であると、ミルク感が不十分になりやすく、過大であるとフレーバーリリースが悪くなり、味気なくなったり、甘すぎたり、緩下性が問題になったりする。このため、特に限定されないが、乳入り飲料における上記総量の下限は、0.01質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%であり、上限は、5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.0質量%である。
【0032】
本発明の乳入り飲料は、上記成分に加えて、甘味料、香料、ミネラル類、栄養成分等のほか、製剤化において配合される賦形剤(水を含む)、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤等の従来公知の任意成分を更に含んでもよい。
【0033】
甘味料としては、例えば、ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチン等が挙げられる。
【0034】
本発明の乳入り飲料は、上記各成分を用いる点を除き、従来周知の方法に従って製造することができる。つまり、上記各成分を混合し、レトルト殺菌、ホットパック、無菌充填等で加熱殺菌すればよい。乳入り飲料の容器としては、特に限定されないが、缶、ペットボトル、ガラス瓶、紙容器等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
<実施例1〜3>
乳として全粉乳を0.4質量%、乳タンパク質を0.4質量%、47%生クリームを0.7質量%、キシリトール(甘味度1)及び還元デキストリンを表1の量となるように、60℃の純水に溶解させ、アセスルファムK(甘味度200)にて甘味度を揃え、純水にて総量を最終1000mLに調整した後、缶に充填して加熱殺菌を行うことで、乳入り飲料を得た。なお、いずれの乳入り飲料でも、乳脂肪分の含有量は0.40質量%、無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比は0.63であった。
【0036】
【表1】

【0037】
得られた乳入り飲料を、濃厚感、ミルク感、おいしさの各項目について、5人のパネリストに順位付けさせた。その順位の平均値及び標準偏差を表2〜4に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示されるように、ミルク感は、還元デキストリン及びキシリトールの双方を含む実施例1〜3の方が、還元デキストリンのみを含む比較例2よりも高かった。また、実施例1、2、3の順にミルク感が高かったことから、キシリトールの含有量に対する還元デキストリンの含有量の比を減らすことで、乳入り飲料のミルク感を向上できることが分かった。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示されるように、おいしさは、還元デキストリン及びキシリトールの双方を含む実施例1〜3の方が、還元デキストリンのみを含む比較例2よりも高かった。また、実施例1、2、3の順においしさが高かったことから、キシリトールの含有量に対する還元デキストリンの含有量の比を減らすことで、乳入り飲料のおいしさを向上できることが分かった。
【0042】
【表4】

【0043】
表4に示されるように、濃厚感は、還元デキストリン及びキシリトールの双方を含む実施例1〜3の方が、キシリトールのみを含む比較例1及び還元デキストリンのみを含む比較例2のいずれよりも高かった。また、実施例1、2、3の順に濃厚感が高かったことから、キシリトールの含有量に対する還元デキストリンの含有量の比を減らすことで、乳入り飲料の濃厚感を向上できることが分かった。
【0044】
また、キシリトールの代わりに、エリスリトール(甘味度がキシリトールの0.75倍)を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で、乳入り飲料を製造した(比較例3)。実施例1の飲料と、比較例3の飲料とについて、ミルク感、おいしさ及び濃厚感を評価した結果を、表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
表5に示されるように、還元デキストリンを含むデキストリン成分との併用による、ミルク感、おいしさ及び濃厚感の向上効果は、キシリトールに特有のものであり、エリスリトールでは十分に得られないことが分かった。
【0047】
<実施例4〜7>
乳脂肪分と無脂肪固形分との質量比を表6に示すように変更した点を除き、実施例2と同様の手順で、乳入り飲料を製造した。また、各乳入り飲料を、実施例1と同様の基準で、ミルク感の良さによって順位付けした。
【0048】
【表6】

【0049】
表6に示されるように、無脂肪固形分に対する乳脂肪分の比率が高い実施例6及び7、5、4の順に、ミルク感が良かった。なお、ミルク感の良さは、ミルク感の強さとは明確に異なる概念であり、無脂肪固形分に対する乳脂肪分の比率が高いことで、ミルク感の強さが高まることは予想できるが、ミルク感の良さが向上することは予想できなかったことである。
【0050】
<実施例8>
還元デキストリンの一部をマルトデキストリン(非還元デキストリン)に置き換えた(還元デキストリン/デキストリン成分(質量比)=0.5)点を除き、実施例1と同様の手順で乳入り飲料を製造した。また、各乳入り飲料を、実施例1と同様の基準で、ミルク感の良さ、おいしさ及び濃厚感によって順位付けした。この結果を表7に示す。
【0051】
【表7】

【0052】
表7に示されるように、デキストリン成分は、還元デキストリンを少なくとも一部に含む限り、非還元デキストリンを併せて含んでも、キシリトールとの併用によるミルク感、おいしさ、及び濃厚感の向上効果を奏することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分と、を含む乳入り飲料。
【請求項2】
乳脂肪分の含有量が0.6質量%以下である請求項1記載の乳入り飲料。
【請求項3】
無脂乳固形分の含有量に対する乳脂肪分の含有量の質量比が0.40以上である請求項1又は2記載の乳入り飲料。
【請求項4】
キシリトールの含有量に対する前記デキストリン成分の含有量の質量比が1.5以下である請求項1から3いずれか記載の乳入り飲料。
【請求項5】
キシリトールの含有量に対する前記デキストリン成分の含有量の質量比が1.0以下である請求項4記載の乳入り飲料。
【請求項6】
前記デキストリン成分は、還元デキストリンからなる請求項1から5いずれか記載の乳入り飲料。
【請求項7】
キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを乳入り飲料に配合することで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法。
【請求項8】
キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料のミルク感を向上する方法。
【請求項9】
キシリトールと、還元デキストリンを含むデキストリン成分とを含む乳入り飲料について、キシリトールの含有量に対する、還元デキストリンを含むデキストリン成分の含有量の比を減らすことで、乳入り飲料の濃厚感を向上する方法。

【公開番号】特開2013−94131(P2013−94131A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240565(P2011−240565)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【Fターム(参考)】