説明

乾燥麹抽出物及びこれを用いた口腔用組成物

【課題】ステインを予防および除去するための食品および口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】乾燥麹抽出物であって、該乾燥麹抽出物は、麹エキスおよび非齲蝕性賦形剤を含む混合物の乾燥物を含み、該乾燥麹抽出物は、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性を有する、乾燥麹抽出物。この乾燥麹抽出物の製造方法であって、麹を0℃〜25℃の水と30分間〜3時間にわたって混合する工程;該混合物から抽出液を分取する工程;該抽出液と非齲蝕性賦形剤とを混合して抽出液賦形剤混合物を得る工程;および該抽出液賦形剤混合物を乾燥して乾燥麹抽出物を得る工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の着色汚れ(ステインともいう)を予防および除去するための食品および口腔用組成物に関する。本発明は特に、酵素活性のある、歯牙美白用の食品および口腔用組成物に関する。本発明はさらに、酵素を用いた食品および米麹を用いた食品および口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ステインとは、歯面に付着または沈着した汚れである。ステインには様々な原因がある。ステインの内因性の原因の例としては、先天性異常、テトラサイクリン、フッ素過剰摂取、老化などが挙げられる。ステインの外因性の原因の例としては、金属、洗口剤、タバコ、食品(お茶、ワインなど)などが挙げられる。
【0003】
なかでも食品由来のステインは、歯の表面を覆う唾液由来のタンパク質、多糖類、糖タンパク質などからなる膜(ペリクルともいう)に、紅茶や緑茶、コーヒー、ワイン等の食品に含まれるタンニン(ポリフェノールの重合体)などのポリフェノール、タバコのタール、金属イオンなどの色素が、疎水結合的な結合、酸化重合などにより複合して吸着するために生じると考えられている。
【0004】
歯垢は歯ブラシなどでの丁寧なブラッシングにより除去可能であるが、ステインは強固な着色であり、ブラッシングのみでは除去することが困難である。そのため、歯垢とは異なるものであることが公知である。
【0005】
歯の着色汚れ除去には色素と膜(ペリクル)との2つのターゲットがあり、酵素を利用してステインを除去する方法で従来あるものは、次のように大別できる:
(1)色素そのものを分解する酵素を用いる方法;および
(2)歯表面を覆う膜(ペリクル)を分解除去する酵素を用いる方法。
【0006】
(1)の方法の例としては、タンナーゼ(タンニン分解酵素ともいう)を使用する方法(特許文献1〜4)が公知であり、(2)の方法の例としてはプロテアーゼを使用する方法(パパインについて例えば特許文献5、アクチニジンについて例えば特許文献6)、溶菌酵素(リゾチーム)、βグルカナーゼ、ムタナーゼ、リパーゼ、デキストラナーゼ、グルコシダーゼなどを使用する方法(特許文献7)などが公知である。
【0007】
さらに、上記とは別に、麹または麹由来酵素を含む口腔用組成物が知られている(特許文献8〜10)。
【0008】
先行技術はいずれも精製した酵素製剤を用いた歯牙美白用剤である。酵素製剤は高価であり多量に配合することができない。
【0009】
また、色素分解に関する酵素とペリクル分解に関する酵素は、単独で使用するよりも併用するほうがより高い歯牙美白効果を得られることは知られていなかった。
【0010】
麹またはアスペルギルスオリゼから産生される酵素を添加した口腔用組成物はあるものの、麹菌や麹そのものを含有するものはなく、酵素精製工程を必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−308429号公報
【特許文献2】特表2003−508589号公報
【特許文献3】特表2001−509539号公報
【特許文献4】特表2001−509535号公報
【特許文献5】特許第2628666号公報
【特許文献6】特表2009−515957号公報
【特許文献7】特開2001−181163号公報
【特許文献8】特開2006−219441号公報
【特許文献9】特開平4−316512号公報
【特許文献10】特表2009−521508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、ステインを予防および除去するための食品および口腔用組成物を提供すること、およびその製造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特殊な方法で製造した乾燥麹抽出物を使用することにより、齲蝕性に対する悪影響がほとんどなくかつステイン予防効果およびステイン除去効果を発揮する食品および組成物が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0014】
食事由来ステイン撃退のストラテジーとしては、ステインの除去が考えられる。ステインの除去のためには、既に歯面に付いた着色汚れを分解する。すなわち、酵素で、ステインの土台であるペリクルを特異的に分解する。ペリクルの分解に使用され得る酵素としては次の表1に示す酵素が考えられる。
【0015】
【表1】

【0016】
表1に示されるいずれの酵素も、エナメル質は分解しない。
【0017】
他方、ステインの予防に関しては、歯に付く前の、着色の原因になる色素を分解することが考えられる。これに関しては、タンナーゼ(tannase;タンニンアシルヒドロラーゼ(Tannin acylhydrolase),EC 3.1.1.20、pH5.0〜5.5、最適温度40℃)が有用であると考えられる。タンナーゼは、食品中の主要な色素成分タンニンを特異的に分解する酵素であり、エナメル質は分解しない。タンナーゼは、食品添加物として茶飲料の濁り防止に使用されている。茶飲料のにごりは通常タンニンであり、タンナーゼによりタンニンが分解され、濁りが防止されるからである。麹カビであるAspergillus oryzaeはタンナーゼを産生することができる。
【0018】
すなわち、本願発明においては、全体像として、ステイン除去に関連する酵素とステイン予防に関連する酵素との両方を含む食品で日常的にステイン対策をすることにより、ステインの除去とステインの予防とを行うことができる。このような防止メカニズムとしては、連続使用しても歯に対する安全性が高く、デイリーケアに適したメカニズムが考えられる。
【0019】
本発明者らは、まず、候補原料として麹を考えた。麹カビの産生する酵素としては、(1)ペリクルの分解に作用する酵素として、プロテアーゼ、アミラーゼ等があり;(2)色素成分の分解に作用する酵素としてタンナーゼがある。
【0020】
以上のことから麹をステインの除去・予防のための有力な原料候補として検討したところ、特殊な方法で乾燥麹抽出物を製造することにより、本発明の目的に合致した食品および口腔用組成物を製造できることがわかった。
【0021】
本発明においては、色素分解に関わる酵素(例えば、タンナーゼ)とペリクルを分解する酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ)の両方が酵素活性を維持したままの状態で含まれる食品素材を利用する。本発明の食品の例としては、乾燥麹抽出物を配合した、ガム、キャンディ(例えば、ソフトキャンディおよびキャラメル)およびタブレットが挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下の乾燥麹抽出物、食品、口腔用組成物および方法などが提供される:
(項目1) 乾燥麹抽出物であって、
該乾燥麹抽出物は、麹抽出物および非齲蝕性賦形剤を含む混合物の乾燥物を含み、
該乾燥麹抽出物は、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性を有する、乾燥麹抽出物。
【0023】
(項目2) 前記非齲蝕性賦形剤が、糖アルコールおよび非齲蝕性糖類からなる群より選択される、項目1に記載の乾燥麹抽出物。
【0024】
(項目3) 前記乾燥麹抽出物中の糖アルコールの含量および非齲蝕性糖類の含量の合計が20重量%〜95重量%である、項目2に記載の乾燥麹抽出物。
【0025】
(項目4) 前記乾燥麹抽出物の水分量が0.001重量%〜5重量%である、項目1〜3のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0026】
(項目5) 前記乾燥麹抽出物中の齲蝕性糖類の含量が20重量%以下である、項目1〜4のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0027】
(項目6) プロテアーゼ活性が500U/g以上である、項目1〜5のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0028】
(項目7) タンナーゼ活性が50U/g以上である、項目1〜6のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0029】
(項目8) 前記非齲蝕性賦形剤が、難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、ラクチトール、還元パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールまたはマンニトールからなる群より選択される、項目1〜7のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0030】
(項目9) 前記乾燥麹抽出物が、米麹から製造される、項目1〜8のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【0031】
(項目10) 項目1〜9のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である、食品。
【0032】
(項目11) 舌苔除去用である、項目10に記載の食品。
【0033】
(項目12) ガム、キャンディまたはタブレットである、項目10または11に記載の食品。
【0034】
(項目13) プロテアーゼ活性が100U/g以上である、項目10〜12のいずれか1項に記載の食品。
【0035】
(項目14) タンナーゼ活性が10U/g以上である、項目10〜13のいずれか1項に記載の食品。
【0036】
(項目15) 項目1〜9のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である、口腔用組成物。
【0037】
(項目16) 歯磨剤または洗口剤である、項目15に記載の口腔用組成物。
【0038】
(項目17) トローチ剤またはゲル剤である、項目15に記載の口腔用組成物。
【0039】
(項目18) プロテアーゼ活性が50U/g以上である、項目15〜17のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【0040】
(項目19) タンナーゼ活性が5U/g以上である、項目15〜18のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【0041】
(項目20) 項目1に記載の乾燥麹抽出物の製造方法であって、
麹を0℃〜25℃の水と30分間〜3時間にわたって混合する工程;
該混合物から抽出液を分取する工程;
該抽出液と非齲蝕性賦形剤とを混合して抽出液賦形剤混合物を得る工程;および
該抽出液賦形剤混合物を乾燥して乾燥麹抽出物を得る工程
を包含する、方法。
【0042】
(項目21) 前記非齲蝕性賦形剤が糖アルコールまたは非齲蝕性糖類である、項目20に記載の方法。
【0043】
(項目22) 前記麹が米麹である、項目20または21に記載の方法。
【0044】
(項目23) 前記乾燥が凍結乾燥またはスプレードライである、項目20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明の食品および口腔用組成物によれば、歯の着色汚れの除去と、沈着予防とを1つの食品または口腔用組成物で行うことができる。本発明の食品および口腔用組成物は、齲蝕性の糖類の含有量が低いので、使用することによって口腔内の齲蝕に悪影響を及ぼすことがないかまたはほとんど及ぼさない。本発明の食品および口腔用組成物はまた、歯の着色汚れの除去および沈着予防に加えて、舌苔および口臭の除去にも効果を発揮し得る。
【0046】
本発明の麹エキスは、精製した酵素の複数の組み合わせよりも、安価であり、かつ容易に調製される。
【0047】
本発明の麹エキスを用いた食品および口腔用組成物は、酵素製剤を用いた食品および口腔用組成物よりも嗜好性が高い。また、食経験のある素材を原料として用いているため、安全であり、日常的に継続して使用でき、効果の実感が高まる。
【0048】
さらに、本発明の食品および口腔用組成物は、水や道具が必要なく、誰でも簡単に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、米麹からの乾燥麹抽出物の製造フローの概要を示す。
【図2】図2は、ハイドロキシアパタイト(Hap)パウダーを用いた場合のインビトロでの乾燥米麹抽出物の効果を示すグラフである。
【図3】図3は、ハイドロキシアパタイト(Hap)ディスクを用いた場合のインビトロでの乾燥米麹抽出物の効果を示す写真である。
【図4】図4は、実施例1Aのペリクル分解効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0051】
(1.乾燥麹抽出物の材料)
本明細書中では、用語「麹エキス」とは、麹を水及び/又はアルコールで抽出することによって得られた抽出物をいう。
【0052】
本明細書中では、「凍結」とは、対象物(例えば、麹エキス)が約0℃以下で固化することをいう。麹エキスは、当該分野で公知の方法および装置によって凍結され得る。麹エキスは、例えば、麹エキスを冷凍庫に入れることによって、またはドライアイス、液体窒素などを麹エキス中に投入することによって凍結され得る。凍結された麹エキスの最終到達品温は、好ましくは約−5℃以下、より好ましくは約−10℃以下、さらに好ましくは約−15℃以下、さらにより好ましくは約−20℃以下、さらにより好ましくは約−30℃以下、なおさらに好ましくは約−40℃以下である。麹エキスは好ましくは、凍結処理開始から約3時間以内に、より好ましくは約1時間以内に、さらに好ましくは約30分間以内に完全に固化される。
【0053】
本明細書中では、「濃縮」とは、対象物(例えば、麹エキス)中の水分を減少させることをいう。麹エキスは好ましくは、濃縮処理後の麹エキスの重さを基準として濃縮処理後の麹エキス中の水分が約90重量%以下になるように、より好ましくは約80重量%以下になるように、さらに好ましくは約70重量%以下になるように、さらにより好ましくは約60重量%以下になるように、さらにより好ましくは約50重量%以下になるように、さらにより好ましくは約40重量%以下になるように、さらにより好ましくは約30重量%以下になるように、なおさらにより好ましくは約20重量%以下になるように、特に好ましくは約10重量%以下になるように、最も好ましくは約5重量%以下になるように濃縮される。麹エキスは、当該分野で公知の方法および装置を用いて濃縮され得る。濃縮の間、麹エキスは、麹エキスの品温が好ましくは約50℃以下、より好ましくは約40℃以下、さらに好ましくは約30℃以下に保たれる。
【0054】
本明細書中では、「乾燥」とは、対象物(例えば、麹エキス)中の水分を実質的に除去することをいう。乾燥後の麹エキスは、乾燥処理後の麹エキスの重さを基準として乾燥処理後の麹エキス中に好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約4重量%以下、さらに好ましくは約3重量%以下、さらにより好ましくは約2重量%以下、さらにより好ましくは約1重量%以下の水分を含む。麹エキスは、当該分野で公知の方法および装置を用いて乾燥され得る。乾燥の間、麹エキスは、麹エキスの品温が好ましくは約50℃以下、より好ましくは約40℃以下、さらに好ましくは約30℃以下に保たれる。
【0055】
本明細書中では、「凍結乾燥」とは、対象物(例えば、麹エキス)を凍結させ、真空下で凍結状態のまま水分を直接昇華させて実質的に脱水することをいう。凍結乾燥後の麹エキスは、凍結乾燥処理後の麹エキスの重さを基準として凍結乾燥処理後の麹エキス中に好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約4重量%以下、さらに好ましくは約3重量%以下、さらにより好ましくは約2重量%以下、さらにより好ましくは約1重量%以下の水分を含む。麹エキスは、当該分野で公知の方法および装置を用いて凍結乾燥され得る。凍結乾燥の間、麹エキスは、麹エキスの品温が好ましくは約50℃以下、より好ましくは約40℃以下、さらに好ましくは約30℃以下に保たれる。
【0056】
麹エキスは好ましくは、麹エキスに含まれる酵素の構造を損なうことなく処理される。本発明において麹エキスに含まれる酵素とは、プロテアーゼ、タンナーゼなどをいう。本発明の乾燥麹抽出物を製造するにあたり、これらの酵素の活性ができるだけ損なわれないことが望ましい。
【0057】
(1.1 麹)
本明細書中では、用語「麹」とは、穀物にコウジカビを繁殖させたものをいう。本明細書中では、用語「米麹」とは、白米にコウジカビを繁殖させたものをいう。1989年(平成元年)11月22日に、国税庁告示第8号「清酒の製法品質表示基準を定める件においては、「米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいう。以下同じ)が、15%以上のものに限るものとする。」と定められている。
【0058】
(1.1.1 コウジカビ)
本明細書中では、用語「コウジカビ」とは、従来麹を製造するために使用されてきたカビをいう。コウジカビは好ましくは、Aspergillus属、Monascus属、Rhizopus属およびMucor属のカビのうち、穀物に繁殖させて麹として利用され得るカビである。本発明で使用され得るコウジカビは、好ましくは、食用可能なコウジカビであって、かつタンパク質分解活性を有する物質およびタンニン分解活性を有する物質を分泌し得るコウジカビである。本発明で使用され得るコウジカビは、従来麹の調製に使用されてきたコウジカビであることが好ましい。コウジカビは自然界の常在真菌である。コウジカビはデンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する性質が強く、また種によっては効果的に脂肪を分解吸収するので、古くから酒、味噌、醤油、鰹節などの発酵食品の製造に利用されている。発酵食品の製造においては従来、コウジカビを米、米ぬか、麦、大豆などに繁殖させて継代培養したものが利用されている。これを種麹(たねこうじ)と呼び、麹製造に利用される。
【0059】
形状による種麹の分類としては、粒状種麹および粉状種麹に分けられる。粒状種麹とは、麹菌胞子が多量に着生した米を乾燥させたものをいう。粉状種麹とは、上記より胞子だけを回収したものをいう。
【0060】
本発明で使用され得るコウジカビの例としては、A.oryzae、A.sojae、A.tamarii、A.awamori、A.kawachii、A.saitoi、A.glaucus、A.niger、A.japonics、Monascus purpureru、Monascus anka、RhizopusおよびMucorが挙げられる。本発明で使用されるコウジカビは、市販の任意のコウジカビであり得る。本発明で使用されるコウジカビは、好ましくはA.oryzaeまたはA.kawachiiであり、最も好ましくはA.oryzaeである。
【0061】
これらのコウジカビは、胞子の色によって別の名称で呼ばれることがある。例えば、A.oryzae、A.sojae、およびA.tamariiは、麹の胞子着生が進むと黄色がかった緑色の胞子を形成することから黄麹菌と呼ばれる。黄麹菌は味噌、醤油および清酒の製造に用いられ、近年では焼酎に使用するメーカーもある。なお、通常の醸造食品の製造工程で麹として用いられる段階では、麹の外見は白色であり、黄色または緑色がはっきり確認できるまで胞子の着生を進めることは稀である。黄麹菌の中には白菌と呼ばれるアルビノ個体のA.oryzaeもある。A.kawachiiの中には、胞子着生が進むと茶褐色を呈するものがあり、白麹菌とも呼ばれる。さらに、A.awamoriは、黒褐色の胞子を形成し、黒麹菌とも呼ばれる。黒麹菌は、従来、沖縄で泡盛の製造に用いられてきた菌種で、近年では焼酎だけでなく、その機能性から様々な食品にも使用されている。黒麹菌はクエン酸を生成することが特徴であり、温暖な地域において仕込み時の雑菌汚染防止に役立つ。種々の種麹は、種麹専門メーカーから製造販売されている。
【0062】
(1.1.2 穀物)
麹の製造に使用される穀物原料としては、コウジカビが繁殖し得る任意の穀物が使用され得る。麹の製造に使用される穀物原料の例としては、米、麦(例えば、小麦、大麦、ライ麦など)、豆(例えば、大豆、緑豆、空豆、小豆など)、蕎麦などが挙げられる。穀物としては米を使用することが好ましい。穀物は、未精白のもの(例えば、玄米)であってもよく、精白したものであってもよく、精白によって得られる糠またはふすまであってもよい。例えば穀物原料として米を使用する場合、米の精白度合いは、約70以上、約80%以上、約90%以上であり得、精白度合いは約91%以下、約85%以下、約75%以下などであり得る。例えば、穀物原料として大麦を使用する場合、大麦の精白度合いは、約85〜88%であり得る。
【0063】
(1.1.3 麹の製造方法)
麹は、当該分野で公知の方法によって製造され得る。例えば、穀物(例えば米)を水に浸漬して水切りした後またはそのままで蒸した後、所定の温度(例えば、約30℃〜約60℃)に冷ました後、コウジカビを混合する。混合物を所定の温度(例えば、約30℃〜約60℃)においてインキュベートすることにより、穀物にコウジカビが繁殖する。
【0064】
インキュベートする温度は、好ましくは約20℃以上であり、さらに好ましくは約25℃以上であり、特に好ましくは約30℃以上であり、最も好ましくは約35℃以上である。インキュベートする温度は、好ましくは約70℃以下であり、さらに好ましくは約65℃以下であり、特に好ましくは約60℃以下であり、最も好ましくは約55℃以下である。もちろん、コウジカビの至適培養条件によってインキュベートする温度を調整し得る。
【0065】
さらに、穀物にコウジカビを繁殖させる段階と、繁殖したコウジカビからプロテアーゼなどの酵素を菌体外に分泌させる段階とでインキュベートする温度を変更してもよい。
【0066】
インキュベートの時間は、穀物へのコウジカビの繁殖具合によって適切に調整され得る。例えば、穀物が蒸し米の場合、インキュベート時間は好ましくは約3時間以上であり、より好ましくは約5時間以上であり、さらに好ましくは約10時間以上であり、特に好ましくは約15時間以上であり、最も好ましくは約20時間以上である。例えば、穀物が蒸し米の場合、インキュベート時間は好ましくは約72時間以下であり、より好ましくは約60時間以下であり、さらに好ましくは約48時間以下であり、特に好ましくは約46時間以下であり、最も好ましくは約44時間以下である。
【0067】
例えば、穀物が蒸し豆の場合、インキュベート時間は好ましくは約3時間以上であり、より好ましくは約5時間以上であり、さらに好ましくは約10時間以上であり、特に好ましくは約15時間以上であり、最も好ましくは約20時間以上である。例えば、穀物が蒸し豆の場合、インキュベート時間は好ましくは約5日間以下であり、より好ましくは約4日間以下であり、さらに好ましくは約3日間以下であり、特に好ましくは約72時間以下であり、最も好ましくは約60時間以下である。
【0068】
例えば、穀物が蒸し麦の場合、インキュベート時間は好ましくは約3時間以上であり、より好ましくは約5時間以上であり、さらに好ましくは約10時間以上であり、特に好ましくは約15時間以上であり、最も好ましくは約20時間以上である。例えば、穀物が蒸し麦の場合、インキュベート時間は好ましくは約5日間以下であり、より好ましくは約4日間以下であり、さらに好ましくは約3日間以下であり、特に好ましくは約72時間以下であり、最も好ましくは約64時間以下である。
【0069】
麹の一般的な従来の製造方法を以下の表2にまとめる。本発明においては、従来の製造方法で作製される任意の麹を使用し得る。
【0070】
【表2】

【0071】
(1.2 賦形剤)
乾燥麹抽出物の製造のためには、麹エキスはそのままでは乾燥しにくいので、乾燥を促進し、乾燥後の品質を安定させるために賦形剤を使用することが好ましい。賦形剤は、非齲蝕性の物質であることが好ましく、非齲蝕性糖質であることがより好ましい。乾燥麹抽出物の製造に使用され得る賦形剤は、好ましくは非齲蝕性糖類または糖アルコールである。使用され得る非齲蝕性糖類の例としては、難消化性デキストリン、パラチノースおよびトレハロースが挙げられる。使用され得る糖アルコールの例としては、還元パラチノース(パラチニットともいう)、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどが挙げられる。賦形剤は、好ましくは、難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、ラクチトール、還元パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールからなる群より選択される。これらの賦形剤は非齲蝕性の物質であり、喫食しても口腔内で酸を生じず、齲蝕の原因を作らない。
【0072】
難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維であり、食物繊維高含有デキストリンともよばれる。本発明において使用され得る難消化性デキストリンは、当該分野で入手可能な任意の難消化性デキストリンであり得る。例えば、難消化性デキストリンは、加熱処理したデンプンをアミラーゼで加水分解し、未分解物より難消化性成分を分取して脱塩、脱色して調製され得る。難消化性デキストリンは、例えば、特開平2−145169号公報、特開平2−154664号公報などに記載の方法に従って調製されたものであってもよい。難消化性デキストリンはまた、松谷化学工業株式会社製パインファイバー、ファイバーソル等であってもよい。(難消化性デキストリンの分子量は安定していないと考えられるので、削除しました)
例えば、ラクチトールの味質は甘味があるが、異味はない。
【0073】
還元パラチノースの味質はショ糖に似ており、異味(異常な味)は全くない。また、還元パラチノースは、賦形剤として還元パラチノースのみを用いてキャンディを製造しても、べとつかないキャンディとなるという特徴を有する。
【0074】
パラチノースの味質はショ糖に似ており、異味は全くない。また、パラチノースは、以下の特徴を有する:非齲蝕性である;体内で穏やかに消化吸収されてエネルギーとなり、血糖値もインシュリン分泌も急激に変化させない;酸に強いおよび味質の優れた低甘味素材である。
【0075】
マルチトールの味質はショ糖に比べてやや「ぼやけた感じ」であり、ごくわずかに喉を刺激する異味がある。マルチトールは、ショ糖と同等に非吸湿性である。
【0076】
エリスリトールは特有な甘味を有し、甘味の発現が早い。エリスリトールは溶解時の吸熱作用が極めて高い(−43cal/g)ため冷涼感が大きい。エリスリトールは、他の糖アルコールと比較して下痢しにくいという特徴も有する。
【0077】
ソルビトールの味質はショ糖に比べて「ぼやけた感じ」であり、わずかに喉を刺激する異味がある。ソルビトールは浸透性、保湿性および日持ち効果に優れている。
【0078】
キシリトールは特有な甘味を有する。キシリトールもまた、溶解時の吸熱作用が極めて高い(−37cal/g)ため冷涼感が大きい。キシリトールは、エリスリトールよりも味質が良いと評価されている。キシリトールはまた、他の糖アルコールよりも唾液の分泌を促す効果が強い。
【0079】
賦形剤として通常使用されるショ糖、ブドウ糖、乳糖などの糖類は、使用しないことが好ましい。これらの糖類は喫食されると口腔内で酸を生成して口腔内のpHを下げて齲蝕の原因となるからである。
【0080】
(1.3 他の材料)
乾燥麹抽出物の製造においては、ステインおよび齲蝕を促進することがない限り、粉末化において通常使用される任意の材料が使用され得る。本発明の乾燥麹抽出物は、ステイン除去作用、ステイン防止作用および齲蝕防止に悪影響を与えない限り、必要に応じて、ステイン除去作用またはステイン防止作用に有用な他の成分を含み得る。ステイン除去作用またはステイン防止作用に有用な他の成分の例としては、有機酸が挙げられる。
【0081】
(2.乾燥麹抽出物の製造方法)
本発明の乾燥麹抽出物の製造方法は、該麹を0℃〜25℃の水と30分間〜3時間にわたって混合する工程;該混合物から抽出液を分取する工程;該抽出液と非齲蝕性賦形剤(例えば、糖アルコールまたは非齲蝕性糖類)とを混合して抽出液賦形剤混合物(例えば、抽出液糖アルコール混合物または抽出液非齲蝕性糖類混合物)を得る工程;および該抽出液賦形剤混合物(例えば、抽出液糖アルコール混合物または抽出液非齲蝕性糖類混合物)を乾燥して乾燥麹抽出物を得る工程を包含し得る。
【0082】
本発明の乾燥麹抽出物の製造方法について以下でより詳細に説明する。
【0083】
麹と水とを混合することにより、麹中の酵素が水中に抽出される。本発明の方法で使用される麹は市販のものでもよく、上記で説明したように培養されたものでもよい。麹は、米麹、麦麹および大豆麹からなる群より選択され得る。麹は米麹であることが好ましい。水は、軟水、中間水および硬水のいずれであってもよい。硬水とは、硬度20°以上の水をいい、中間水とは、硬度10°以上20°未満の水をいい、軟水とは、硬度10°未満の水をいう。水は、好ましくは軟水または中間水であり、より好ましくは軟水である。水はまた、イオン交換水、地下水、井戸水、水道水、蒸留水、滅菌水などであり得る。
【0084】
麹と混合される水の量は、麹の重量の好ましくは約1倍以上であり、さらに好ましくは約2倍以上であり、さらに好ましくは約2.5倍以上である。麹と混合される水の量は、麹の重量の好ましくは約10倍以下であり、さらに好ましくは約5倍以下であり、さらに好ましくは約4倍以下である。
【0085】
抽出時の混合物の温度は、好ましくは約0℃以上であり、より好ましくは約5℃以上であり、さらに好ましくは約7℃以上であり、最も好ましくは約10℃以上である。混合物の温度は例えば、約15℃以上、約20℃以上などであり得る。混合物の温度は好ましくは約50℃以下であり、さらに好ましくは約40℃以下であり、特に好ましくは約30℃以下であり、最も好ましくは約25℃以下である。抽出時の混合物の温度が高すぎると麹中の酵素が失活してしまう場合がある。
【0086】
抽出時間は、好ましくは約10分間以上であり、より好ましくは約20分間以上であり、さらに好ましくは約30分間以上であり、さらにより好ましくは約40分間以上であり、特に好ましくは約50分間以上であり、最も好ましくは約1時間以上である。抽出時間は、好ましくは約6時間以下であり、より好ましくは約5時間以下であり、さらに好ましくは約4時間以下であり、特に好ましくは約3時間以下であり、最も好ましくは約2〜2.5時間である。抽出時間が約1時間もあれば抽出される酵素量はほぼ飽和するので抽出時間をそれ以上に長くしても作業効率が低下する。抽出時間が長すぎると、麹が吸水し歩留まりが下がる場合がある。そのため、抽出時間は適度に短いことが好ましい。この抽出工程においては、抽出によって得られる抽出液のBrix糖度が約5〜約7になるように抽出時間が調整されることが好ましい。Brix糖度は、Brix計によって測定され得る。抽出効率を向上させるために抽出時には攪拌を行うことが好ましい。攪拌は、麹がつぶれないようにゆっくり間欠的に行うことが好ましい。この抽出工程は、抽出タンク中で攪拌しながら行われ得る。
【0087】
抽出後、混合物から抽出液が分取される。分離は当該分野で公知の方法に従って行われえる。分離の方法の例としては、濾過、遠心分離などが挙げられる。メッシュによる濾過が好ましい。特定の実施形態では、混合物を最終的に60メッシュで濾過することが好ましい。この工程では、払い出しポンプ、分離網などが使用され得る。濾過は常圧下で行われてもよく、減圧濾過が行われてもよい。このとき得られた抽出液を「麹エキス」ともいう。麹として米麹を使用した場合、得られる麹エキスは米麹エキスである。麹として麦麹を使用した場合、得られる麹エキスは麦麹エキスである。麹として豆麹を使用した場合、得られる麹エキスは豆麹エキスである。麹エキスは、好ましくは米麹エキスである。特定の実施形態では、得られる麹エキスの収量は、使用した水の65重量%以上となる。
【0088】
次いで、得られた抽出液と賦形剤(例えば、糖アルコールまたは非齲蝕性糖類)とを混合して抽出液賦形剤混合物(例えば、抽出液糖アルコール混合物または抽出液非齲蝕性糖類混合物)が得られる。ここで、賦形剤は抽出液中に溶解される。賦形剤を溶解する際の混合物の温度は好ましくは約0℃以上であり、より好ましくは約5℃以上であり、さらに好ましくは約7℃以上であり、最も好ましくは約10℃以上である。混合物の温度は例えば、約15℃以上、約20℃以上などであり得る。混合物の温度は好ましくは約50℃以下であり、さらに好ましくは約40℃以下であり、特に好ましくは約30℃以下であり、最も好ましくは約25℃以下である。抽出に用いた麹の重量を100重量部としたとき、混合される賦形剤の量は、好ましくは約10重量部以上であり、より好ましくは約20重量部以上であり、さらに好ましくは約30重量部以上であり、特に好ましくは約40重量部以上であり、最も好ましくは約50重量部以上である。抽出に用いた麹の重量を100重量部としたとき、混合される賦形剤の量は、好ましくは約100重量部以下であり、より好ましくは約90重量部以下であり、さらに好ましくは約80重量部以下であり、特に好ましくは約70重量部以下であり、最も好ましくは約60重量部以下である。
【0089】
次いで、この抽出液賦形剤混合物を乾燥(好ましくは凍結乾燥またはスプレードライ)して乾燥麹抽出物を得る。乾燥は、麹エキス中の酵素の活性が残存するような乾燥方法である。このような乾燥方法は当業者に公知である。乾燥は、凍結乾燥またはスプレードライであることが好ましく、スプレードライであることがより好ましい。スプレードライは凍結乾燥よりも生産性が高く低コストであるという利点を有する。得られた乾燥麹抽出物は、必要に応じてシフターなどにかけられて適切な粒径の粉末にされ得る。乾燥麹抽出物は、例えば、50メッシュパスであることが好ましい。
【0090】
(3.乾燥麹抽出物)
本発明の乾燥麹抽出物は、麹エキスおよび非齲蝕性賦形剤を含む混合物の乾燥物を含み、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性を有する。
【0091】
本明細書中では、用語「乾燥麹抽出物」とは、麹エキスを乾燥したものをいう。乾燥麹抽出物は好ましくは粉末化される。本発明の乾燥麹抽出物は、酵素活性を充分残存させるように粉末化されるため、酵素活性が高い。さらに、従来の粉末は齲蝕性糖類を賦形剤として粉末化されるために齲蝕性糖類の含量が高いが、本発明の乾燥麹抽出物は、賦形剤として非齲蝕性賦形剤(好ましくは糖アルコールまたは非齲蝕性糖類)を使用しているため、齲蝕性糖類の含量が低い。そのため、本発明の乾燥麹抽出物は齲蝕性が低い。
【0092】
本発明の乾燥麹抽出物のプロテアーゼ活性は、好ましくは約50U/g以上であり、より好ましくは約100U/g以上であり、さらにより好ましくは約200U/g以上であり、特に好ましくは約300U/g以上であり、最も好ましくは約350U/g以上である。本発明の乾燥麹抽出物のプロテアーゼ活性は、好ましくは約5000U/g以下であり、より好ましくは約3000U/g以下であり、さらにより好ましくは約2000U/g以下であり、特に好ましくは約1500U/g以下であり、最も好ましくは約1000U/g以下である。
【0093】
本発明の乾燥麹抽出物の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約700U/g以上であり、より好ましくは約1400U/g以上であり、さらにより好ましくは約2800U/g以上であり、特に好ましくは約4200U/g以上であり、最も好ましくは約4900U/g以上である。本発明の乾燥麹抽出物の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約70000U/g以下であり、より好ましくは約42000U/g以下であり、さらにより好ましくは約28000U/g以下であり、特に好ましくは約21000U/g以下であり、最も好ましくは約14000U/g以下である。
【0094】
本発明の乾燥麹抽出物のタンナーゼ活性は、好ましくは約50U/g以上であり、より好ましくは約200U/g以上であり、さらにより好ましくは約300U/g以上であり、特に好ましくは約400U/g以上であり、最も好ましくは約500U/g以上である。本発明の乾燥麹抽出物のタンナーゼ活性は、好ましくは約50000U/g以下であり、より好ましくは約20000U/g以下であり、さらにより好ましくは約10000U/g以下であり、特に好ましくは約5000U/g以下であり、最も好ましくは約2000U/g以下である。
【0095】
本発明の乾燥麹抽出物の齲蝕性糖類の含量は、約50重量%以下であり、好ましくは約40重量%以下であり、より好ましくは約30重量%以下であり、さらに好ましくは約25重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
【0096】
本発明の乾燥麹抽出物のブドウ糖の含量は、約30重量%以下であり、好ましくは約25重量%以下であり、より好ましくは約20重量%以下であり、さらに好ましくは約15重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0097】
本発明の乾燥麹抽出物のデンプンの含量は、約30重量%以下であり、好ましくは約25重量%以下であり、より好ましくは約20重量%以下であり、さらに好ましくは約15重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0098】
本発明の乾燥麹抽出物の製造においては、麹が水またはアルコールによって比較的低温で短時間抽出される。そのため、麹から抽出液への糖の抽出量が少ない。そのため、得られる麹液パウダー中の糖の含有量も少ない。他方、日本酒製造の分野では、「麹エキス」として、「米麹に水を加えて55℃前後で糖化させた後、これを濾過して得られる液で、酵母などを培養するときの培地として用いられる。麹汁ともいう。」というものが公知である。しかし、この従来の日本酒製造の分野で用いられる麹エキスは、例えば麹1リットルに対して4リットルの温水を加え、55℃前後で通常約6時間以上の長時間にわたって糖化を行うため、麹エキス中に多量の糖(例えば、ブドウ糖、デンプン)を含む。このような従来の製造方法で得られる麹エキスを原料にして乾燥麹抽出物を製造すると、乾燥麹抽出物中の糖の含有量が高くなりすぎる。乾燥麹抽出物中の糖の含有量が高すぎると口腔内で齲蝕の原因になるため好ましくない。
【0099】
乾燥麹抽出物の齲蝕性糖類の含量について言及する場合、この「齲蝕性糖類」とは、乾燥麹抽出物中に存在する糖であって、齲蝕性の糖をいう。麹エキス中に含まれる齲蝕性糖類は主にブドウ糖などの単糖類および二糖類である。そのため、本明細書中で齲蝕性糖類の含量といった場合、齲蝕性の単糖類および二糖類の含量をいう。この場合の「糖」には糖アルコールは含まれない。乾燥麹抽出物中のブドウ糖の量は、ムタロターゼ・グルコースオキシターゼ法によって測定され得る。乾燥麹抽出物中の齲蝕性糖類の含量は、還元糖を定量することによって測定され得る。還元糖の定量は公知の方法で測定できる。
【0100】
乾燥麹抽出物中では、麹エキスは、麹エキスおよび非齲蝕性賦形剤を含む混合物の乾燥物として含まれている。
【0101】
乾燥麹抽出物中の水分量は、少ないことが好ましいが、現実的には0にすることは難しい。そのため、乾燥麹抽出物中の水分量の下限は、例えば、約0.001重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上などであり得る。乾燥麹抽出物中の水分量は、好ましくは約5重量%以下であり、より好ましくは約4重量%以下であり、さらに好ましくは約3重量%以下であり、特に好ましくは約2重量%以下であり、最も好ましくは約1重量%以下である。
【0102】
乾燥麹抽出物中の糖アルコールの含量および非齲蝕性糖類の含量の合計は、好ましくは約40重量%以上であり、より好ましくは約50重量%以上であり、さらに好ましくは約60重量%以上であり、特に好ましくは約70重量%以上であり、最も好ましくは約80重量%以上である。乾燥麹抽出物中の糖アルコールの含量および非齲蝕性糖類の含量の合計は、好ましくは約99重量%以下であり、より好ましくは約97重量%以下であり、さらに好ましくは約95重量%以下であり、特に好ましくは約90重量%以下であり、最も好ましくは約85重量%以下である。
【0103】
(4.乾燥麹抽出物を含む食品)
本発明の食品は、本発明の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である。
【0104】
本発明の食品は、乾燥麹抽出物を含む。本発明の食品の例としては、ガム、キャンディおよびタブレットが挙げられる。本発明の食品は、好ましくはガム、キャンディまたはタブレットである。キャンディの例としては、ハードキャンディ、ソフトキャンディおよびキャラメルが挙げられる。
【0105】
本発明の食品は、乾燥麹抽出物中に含まれる酵素を徐放し得る形態であることが好ましい。本発明の食品は、通常の摂取の仕方で、口腔内に約1分間以上滞留することが好ましい。本発明の食品は、より好ましくは、約3分間以上、さらに好ましくは約5分間以上、特に好ましくは約7分間以上、最も好ましくは約10分間以上滞留する食品である。このように長時間滞留できる形態の食品は、すぐに口腔内を通過してしまう形態の食品(例えば、ジュース)と比較して、乾燥麹抽出物が口腔内に存在する時間を長期化させ得るという利点を有する。滞留時間が短すぎる場合には、ステイン除去効果またはステイン防止効果が得られにくい。
【0106】
ガムが口腔内に存在する時間は、ガムの大きさおよび原料にも依存するが、喫食者の喫食方法にも大きく依存する。そのため、ガムの包装などには、口腔内で充分な時間(例えば、約1分間以上、約3分間以上、約5分間以上、約7分間以上、約10分間以上)にわたって噛むことが好ましいことについての表示があることが好ましい。
【0107】
ガムとは、ガムベースを含む食品をいう。ガムベースの例としては、チクル、酢酸ビニール、エステルガム、ポリイソブチレンおよびスチレンブタジエンラバーが挙げられる。ガムの例としては、板ガムおよび風船ガムのようなチューインガムが挙げられる。本発明のガムは、齲蝕性の糖類を含まないかまたは含んだとしてもごく少量であることが好ましい。ガムに使用される原料の例としては、以下が挙げられる:ガムベース、ゼラチン、香料および着色料。ガムもまた、糖アルコールまたは非齲蝕性糖類を含み得る。糖アルコールまたは非齲蝕性糖類は、より好ましくは難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、ラクチトール、還元パラチノース、パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールから選択される。ガムの配合は当該分野で公知の配合に従い得る。ガムは、有効成分を口腔内に長時間にわたって滞留させることが可能であることから、タブレット同様に本発明の食品として好適である。
【0108】
キャンディおよびタブレットが口腔内で溶け始めてから溶け終わるまでにかかる時間は、キャンディおよびタブレットの大きさおよび原料、ならびに喫食者の喫食方法に依存する。当業者は、キャンディおよびタブレットが溶け始めてから溶け終わるまでの所望の時間を達成するに適切なキャンディおよびタブレットを任意に設計し、製造し得る。
【0109】
本明細書では、「タブレット」とは、タブレット材料を一定の形状に圧縮して製造したものをいう。このようなタブレットは、その製法にちなんで、圧縮錠剤ともいわれる。本明細書中では、タブレットは、食品用途のタブレットであっても、医薬品用途のタブレット(すなわち、錠剤)であってもよい。食品用途のタブレットの例としては、錠菓と呼ばれる菓子としてのタブレットおよび健康食品(例えば、サプリメント)としてのタブレットが挙げられる。本明細書では、タブレットの中でも特に、中心部に空洞のあるものをトローチという。
【0110】
タブレットに使用される原料の例としては、以下が挙げられる:難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、などの非齲蝕性糖類;還元パラチノース、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどの糖アルコール;炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、粉末セルロース、乳化剤、香料および着色料。タブレットは、乾燥麹抽出物に加えて、賦形剤を含むことが好ましい。賦形剤の例としては、上記の非齲蝕性糖類および糖アルコールが挙げられる。賦形剤は好ましくは糖アルコールまたは非齲蝕性糖類を含み、より好ましくは糖アルコールまたは非齲蝕性糖であり、さらに好ましくは難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、ラクチトール、還元パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールから選択される。これらの賦形剤は、味質が優れている、または工業的適性が優れているという特徴を有する。
【0111】
本明細書中では用語「キャンディ」とは、糖または糖アルコールを主原料とし、糖または糖アルコールおよび水を煮詰める工程を含む方法によって製造される固形食品をいう。キャンディは、ソフトキャンディとハードキャンディとに分類される。キャンディの硬さは、キャンディの材料および煮上げ温度によって影響を受ける。
【0112】
ソフトキャンディの例としては、キャラメル、ヌガーおよびマシュマロが挙げられる。
【0113】
ハードキャンディの例としては、ドロップ、バタースカッチ、タフィ、ブリットル(例えば、ピーナッツブリトル)およびベッコウ飴が挙げられる。糖として主に砂糖および水あめを用いた場合について例示すると、ドロップの代表的な煮上げ温度は約145℃である。糖として主に砂糖および水あめを用いた場合について例示すると、バタースカッチの代表的な煮上げ温度は約145℃であり、バター約4重量%〜約6重量%などを含む。糖として主に砂糖および水あめを用いた場合について例示すると、ピーナッツブリトルの代表的な煮上げ温度は約146℃であり、ピーナッツ、重曹などを含む。糖として主に砂糖および水あめを用いた場合について例示すると、ベッコウ飴の代表的な煮上げ温度は約150℃〜160℃である。代表的な砂糖水あめ固形分比は砂糖40〜60:水あめ40〜60であり、乳製品、油脂などを含む。
【0114】
本発明のキャンディにおいては、齲蝕性の糖類を原料に含まないかまたは含んだとしてもごく少量であることが好ましい。キャンディに使用される原料の例としては、以下が挙げられる:小麦粉、食塩、寒天、ゼラチン、ピーナッツ、ショートニング、バター、酸味料、香料および着色料。糖アルコールまたは非齲蝕性糖類は、より好ましくはラクチトール、還元パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールから選択される。キャンディの配合は当該分野で公知の配合に従い得る。キャンディは、有効成分を口腔内に長時間にわたって滞留させることが可能であることから、タブレット同様に本発明の食品として好適である。
【0115】
本発明の食品は、歯および唾液と乾燥麹抽出物中の酵素(例えば、プロテアーゼおよびタンナーゼ)とが長時間にわたって接触すると考えられる点から、ガム、キャンディ、タブレットのような形態であることが好ましい。
【0116】
本発明の食品は、ステイン除去作用およびステイン予防作用に悪影響を及ぼさず齲蝕性を生じない限り、乾燥麹抽出物以外に、その食品が通常含有する任意の成分を含み得る。このような成分の例として、食物繊維などの賦形剤;甘味料;香料;着色料;酸味料;pH調整剤などが挙げられる。
【0117】
本発明の食品中で、乾燥麹抽出物は均一に分散していてもよいし、局在していてもよい。例えば、食品がキャンディである場合、乾燥麹抽出物を、キャンディのセンターとして使用してもよく、またはキャンディ中に均一に分散させてもよい。
【0118】
本発明の食品は、任意の形状を取り得る。本発明の食品は、均質な塊状であってもよいし、2層または3層の構造をとる形状であってもよい。
【0119】
本発明の食品がガム、キャンディまたはタブレットである場合、その大きさ、溶解速度および崩壊速度を調節することによって、乾燥麹抽出物の作用の持続時間を制御することが可能である。
【0120】
本発明の食品はまた、糖衣錠の形態であってもよい。この場合、素錠に乾燥麹抽出物のインヒビターを含み、そして糖衣層に乾燥麹抽出物を含んでいることが好ましい。この食品は、糖衣錠を製造する当業者に公知の方法に従って調製され得る。糖衣層は例えば、「たこがけ」といわれる方法で手作業で行われてもよく、ドラジェといわれる方法で行われてもよい。
【0121】
糖衣錠の場合、糖衣錠の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.2g以上であり、最も好ましくは約0.5g以上である。糖衣錠の場合、糖衣錠の重量は、好ましくは約10g以下であり、より好ましくは約8g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。糖衣錠中の素錠の重量は、好ましくは約0.005g以上であり、より好ましくは約0.01g以上であり、最も好ましくは約0.1g以上である。糖衣錠中の素錠の重量は、好ましくは約1.5g以下であり、より好ましくは約1.0g以下であり、最も好ましくは約0.5g以下である。糖衣錠中の糖衣層の重量は、好ましくは約0.001g以上であり、より好ましくは約0.01g以上であり、最も好ましくは約0.05g以上である。糖衣錠中の糖衣層の重量は、好ましくは約1.0g以下であり、より好ましくは約0.5g以下であり、最も好ましくは約0.3g以下である。
【0122】
本発明の食品がガムである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.2g以上であり、最も好ましくは約0.5g以上である。本発明の食品がガム、キャンディまたはタブレットである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約10g以下であり、より好ましくは約8g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
【0123】
本発明の食品がキャンディである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.2g以上であり、最も好ましくは約0.5g以上である。本発明の食品がガム、キャンディまたはタブレットである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約10g以下であり、より好ましくは約8g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
【0124】
本発明の食品がタブレットである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.2g以上であり、最も好ましくは約0.5g以上である。本発明の食品がガム、キャンディまたはタブレットである場合、本発明の食品の重量は、好ましくは約10g以下であり、より好ましくは約8g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
【0125】
本発明の食品がガム、キャンディまたはタブレットである場合、1回に1粒ずつ舐めてもよく、1回に複数個(例えば、2個〜10個)舐めてもよい。1回に複数個を舐める場合、いっぺんに複数個を口に入れて舐めてもよく、1個ずつ順々に複数個を舐めてもよい。
【0126】
本発明の食品中に含まれる乾燥麹抽出物の量は、その食品を摂取することによってステイン除去作用またはステイン防止作用が得られる限り、任意の量であり得る。このような量は、当業者によって容易に決定され得る。本発明の食品中に含まれる乾燥麹抽出物の量は、食品の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.05重量%以上、さらに好ましくは約0.1重量%以上、さらにより好ましくは約0.5重量%以上、さらにより好ましくは約1重量%以上、さらにより好ましくは約5重量%以上である。食品中の乾燥麹抽出物の量は、食品の重量を基準として、例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上などであり得る。食品中の乾燥麹抽出物の量の上限は特にないが、食品の重量を基準として、例えば、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下などであり得る。
【0127】
本発明の食品のプロテアーゼ活性は、好ましくは約5U/g以上であり、より好ましくは約10U/g以上であり、さらにより好ましくは約20U/g以上であり、特に好ましくは約30U/g以上であり、最も好ましくは約50U/g以上である。本発明の食品のプロテアーゼ活性は、好ましくは約500U/g以下であり、より好ましくは約400U/g以下であり、さらにより好ましくは約300U/g以下であり、特に好ましくは約200U/g以下であり、最も好ましくは約100U/g以下である。
【0128】
本発明の食品の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約70U/g以上であり、より好ましくは約140U/g以上であり、さらにより好ましくは約280U/g以上であり、特に好ましくは約420U/g以上であり、最も好ましくは約700U/g以上である。本発明の食品の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約7000U/g以下であり、より好ましくは約5600U/g以下であり、さらにより好ましくは約4200U/g以下であり、特に好ましくは約2800U/g以下であり、最も好ましくは約1400U/g以下である。
【0129】
本発明の食品のタンナーゼ活性は、好ましくは約10U/g以上であり、より好ましくは約40U/g以上であり、さらにより好ましくは約60U/g以上であり、特に好ましくは約80U/g以上であり、最も好ましくは約100U/g以上である。本発明の食品のタンナーゼ活性は、好ましくは約10000U/g以下であり、より好ましくは約4000U/g以下であり、さらにより好ましくは約2000U/g以下であり、特に好ましくは約1000U/g以下であり、最も好ましくは約400U/g以下である。
【0130】
本発明の食品中の齲蝕性糖類の含量は、約0.5重量%以下であり、好ましくは約0.3重量%以下であり、より好ましくは約0.2重量%以下であり、さらに好ましくは約0.1重量%以下であり、最も好ましくは約0.05重量%以下である。
【0131】
本発明の食品は、人間および人間以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウマ、ウシなど)のいずれにも使用され得る。本発明の食品は人間用であることが好ましい。本発明の食品を動物用に用いる場合、動物は、好ましくはペットであり、より好ましくはイヌまたはネコであり、最も好ましくはイヌである。本発明の食品が動物用である場合、本発明の食品は、ペット用チューインガムである。ペット用チューインガムの組成および製造方法は、ペット用チューインガムの分野の当業者に公知である。
【0132】
本発明の食品は、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。本発明の食品は好ましくは、乾燥麹抽出物のステイン除去作用またはステイン防止作用を実質的に損なわない方法で製造される。例えば、乾燥麹抽出物をキャンディに含有させる場合、通常の方法に従ってキャンディの材料を煮詰めた後、この煮詰めた材料を冷却する途中で、好ましくは約60℃以下、より好ましくは約50℃以下、さらにより好ましくは約40℃以下になった時点で、乾燥麹抽出物をキャンディの材料に添加する。例えば、本発明のキャンディは、国際公開第2007/105661号パンフレットに記載の方法に従って製造され得る。
【0133】
本発明の食品は、ステイン除去作用、ステイン防止作用および齲蝕防止に悪影響を与えない限り、必要に応じて、ステイン除去作用またはステイン防止作用に有用な他の成分を含み得る。
【0134】
本発明のガム、キャンディまたはタブレットはまた、ステイン除去作用、ステイン防止作用および齲蝕防止に悪影響を与えない限り、必要に応じて、ガム、キャンディおよびタブレットに通常含まれる添加剤を含み得る。添加物の例としては、結合剤、pH調整剤、香料、甘味料、着色料、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤などが挙げられる。これらの添加剤は当該分野で周知である。ガム、キャンディまたはタブレットが食品用途である場合、このような添加剤は、例えば、食品添加物公定書に記載される。ガム、キャンディまたはタブレットが医薬品用途である場合、このような添加剤は、例えば、日本薬局方に記載される。
【0135】
用語「結合剤」とは、本明細書中で用いられる場合、成分粉末の混合物に結合力を与え安定なタブレットまたは顆粒を製造するために用いられる添加剤をいう。本発明のタブレットは、必ずしも結合剤を含む必要はないが、タブレットの硬度が不十分である場合に添加することができる。結合剤は、好ましくはセルロース、アラビアガム、ゼラチンなどである。結合剤はタブレットに含まれる物質間を結合することによってタブレットの硬度を向上させる。特定の物質のみを用いて打錠して得られるタブレットの硬度は、その物質の結合剤としての特性の指標である。硬度が高いほど結合力が強い。
【0136】
(5.乾燥麹抽出物を含む食品の製造方法)
本発明の食品は、従来の食品製造に用いられている手法および設備をそのまま利用して製造することができる。例えば、食品がタブレットの場合、タブレット材料(例えば、水溶性糖類と他の成分と)を混合して直接打錠する方法、タブレット材料を別々にまたは混合して湿式または乾式で顆粒化した後に打錠する方法などが採用できる。
【0137】
1つの実施形態では、本発明のタブレットは、粉末状のタブレット材料を混合し、直接打錠することによって製造されることが好ましい。
【0138】
別の実施形態では、本発明のタブレットは、顆粒状のタブレット材料を混合した後に打錠することによって製造されることが好ましい。
【0139】
乾燥麹抽出物の粒子の大きさは任意であるが、好ましくは平均直径約50μm以上であり、より好ましくは約75μm以上であり、最も好ましくは約90μm以上である。乾燥麹抽出物の粒子の大きさは好ましくは平均直径約500μm以下であり、より好ましくは約350μm以下であり、最も好ましくは約250μm以下である。平均直径は、重量平均での直径である。
【0140】
(6.乾燥麹抽出物を含む食品の喫食方法)
本発明の食品の摂取量、摂取頻度および摂取期間は、摂取者の状態、摂取者の嗜好などに応じて決められる。
【0141】
本発明のガムの摂取量は、好ましくは1回あたり、約0.1g以上であり、より好ましくは約0.2g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、さらにより好ましくは約1g以上である。本発明のガムの摂取量に特に上限はないが、例えば、1回あたり、約1000g以下、約750g以下、約500g以下、約250g以下、約100g以下、約50g以下、約40g以下、約30g以下、約20g以下、約10g以下、約7.5g以下、約5g以下、約4g以下、約3g以下、約2g以下、約1g以下などである。
【0142】
本発明のキャンディの摂取量は、好ましくは1回あたり、約0.1g以上であり、より好ましくは約0.2g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、さらにより好ましくは約1g以上である。本発明のキャンディの摂取量に特に上限はないが、例えば、1回あたり、約1000g以下、約750g以下、約500g以下、約250g以下、約100g以下、約50g以下、約40g以下、約30g以下、約20g以下、約10g以下、約7.5g以下、約5g以下、約4g以下、約3g以下、約2g以下、約1g以下などである。
【0143】
本発明のタブレットの摂取量は、好ましくは1回あたり、約0.1g以上であり、より好ましくは約0.2g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、さらにより好ましくは約1g以上である。本発明のタブレットの摂取量に特に上限はないが、例えば、1回あたり、約1000g以下、約750g以下、約500g以下、約250g以下、約100g以下、約50g以下、約40g以下、約30g以下、約20g以下、約10g以下、約7.5g以下、約5g以下、約4g以下、約3g以下、約2g以下、約1g以下などである。
【0144】
本発明のタブレットの摂取頻度は、任意に設定され得る。例えば、1週間に1回以上、1週間に2回以上、1週間に3回以上、1週間に4回以上、1週間に5回以上、1週間に6回以上、1週間に7回以上、1日1回以上、1日2回以上、1日3回以上などであり得る。本発明のタブレットの摂取頻度に上限はなく、例えば、1日3回以下、1日2回以下、1日1回以下、1週間に7回以下、1週間に6回以下、1週間に5回以下、1週間に4回以下、1週間に3回以下、1週間に2回以下、1週間に1回以下などであり得る。
【0145】
本発明の食品の摂取のタイミングは、食前であっても食後であっても食間であってもよいが、食後が好ましい。食前とは、食事の直前から食事を取る約30分前までをいい、食後とは、食事の直後から食事を取った約30分後までをいい、食間とは、食事を取ってから約2時間以上経過した後から次の食事まで約2時間以上前の時間をいう。
【0146】
本発明の食品の摂取期間は、任意に決定され得る。本発明の食品は、好ましくは約1日以上、より好ましくは約3日間以上、最も好ましくは約5日間以上摂取され得る。本発明の食品は、好ましくは約1ヶ月以下、より好ましくは約2週間以下、最も好ましくは約10日間以下摂取され得る。必要な場合、本発明の食品は、ほぼ永続的に摂取されてもよい。
【0147】
本発明の食品は、摂取の際に嚥下せずに口腔内に滞留させることが好ましい。本発明の食品を口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約10秒間以上、より好ましくは約1分間以上、さらに好ましくは約3分間以上である。本発明のタブレットを口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約30分間以下、より好ましくは約20分間以下、さらに好ましくは約10分間以下である。滞留時間が短すぎる場合には、ステイン除去効果またはステイン防止効果が得られにくい。本発明の食品は、噛まずに最後まで舐められることが好ましい。
【0148】
(7.乾燥麹抽出物を含む口腔用組成物)
本発明の口腔用組成物は、本発明の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である。
【0149】
本発明の口腔用組成物は、好ましくは歯磨剤または洗口剤である。
【0150】
本発明の口腔用組成物は、好ましくはトローチ剤またはゲル剤である。
【0151】
口腔用組成物が歯磨剤、洗口剤およびゲル剤などのように口腔内でほとんど薄められることなくそのままの濃度で作用するような形態で使用される場合には、本発明の口腔用組成物中の乾燥麹抽出物の量は、口腔用組成物の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.05重量%以上、さらに好ましくは約0.1重量%以上、さらにより好ましくは約0.5重量%以上、さらにより好ましくは約1重量%以上、さらにより好ましくは約5重量%以上であり;口腔用組成物中の乾燥麹抽出物の量は、食品の重量を基準として、例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上などであり得る。そのままの濃度で作用するような形態で使用される場合の本発明の口腔用組成物中の乾燥麹抽出物の量の上限は特にないが、食品の重量を基準として、例えば、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下などであり得る。口腔用組成物が口腔内で薄められて使用されることが意図される組成物である場合、その希釈倍率を考慮して、成分が配合される。例えば、約20倍に希釈されることが意図される口腔用組成物の場合、20倍の濃度で配合される。
【0152】
本発明の口腔用組成物がトローチ剤である場合、本発明の口腔用組成物の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.2g以上であり、最も好ましくは約0.5g以上である。本発明の口腔用組成物がトローチ剤である場合、本発明の口腔用組成物の重量は、好ましくは約10g以下であり、より好ましくは約8g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
【0153】
本発明の口腔用組成物がトローチ剤である場合、1回に1粒ずつ舐めてもよく、1回に複数個(例えば、2個〜10個)舐めてもよい。1回に複数個を舐める場合、いっぺんに複数個を口に入れて舐めてもよく、1個ずつ順々に複数個を舐めてもよい。
【0154】
本発明の口腔用組成物のプロテアーゼ活性は、好ましくは約2.5U/g以上であり、より好ましくは約5U/g以上であり、さらにより好ましくは約10U/g以上であり、特に好ましくは約15U/g以上であり、最も好ましくは約25U/g以上である。本発明の口腔用組成物のプロテアーゼ活性は、好ましくは約250U/g以下であり、より好ましくは約200U/g以下であり、さらにより好ましくは約150U/g以下であり、特に好ましくは約100U/g以下であり、最も好ましくは約50U/g以下である。
【0155】
本発明の口腔用組成物の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約35U/g以上であり、より好ましくは約70U/g以上であり、さらにより好ましくは約140U/g以上であり、特に好ましくは約210U/g以上であり、最も好ましくは約350U/g以上である。本発明の口腔用組成物の酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは約3500U/g以下であり、より好ましくは約2800U/g以下であり、さらにより好ましくは約2100U/g以下であり、特に好ましくは約1400U/g以下であり、最も好ましくは約700U/g以下である。
【0156】
本発明の口腔用組成物のタンナーゼ活性は、好ましくは約5U/g以上であり、より好ましくは約20U/g以上であり、さらにより好ましくは約30U/g以上であり、特に好ましくは約40U/g以上であり、最も好ましくは約50U/g以上である。本発明の食品のタンナーゼ活性は、好ましくは約5000U/g以下であり、より好ましくは約2000U/g以下であり、さらにより好ましくは約1000U/g以下であり、特に好ましくは約500U/g以下であり、最も好ましくは約200U/g以下である。
【0157】
本発明の口腔用組成物中の齲蝕性糖類の含量は、約0.5重量%以下であり、好ましくは約0.3重量%以下であり、より好ましくは約0.2重量%以下であり、さらに好ましくは約0.1重量%以下であり、最も好ましくは約0.05重量%以下である。
【0158】
本発明の口腔用組成物は、人間および人間以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウマ、ウシなど)に使用され得る。本発明の口腔用組成物を動物用に用いる場合、動物は、好ましくはペットであり、より好ましくはイヌまたはネコであり、最も好ましくはイヌである。
【0159】
(8.乾燥麹抽出物を含む口腔用組成物の製造方法)
本発明の口腔用組成物は、当該分野で公知の方法に従って製造され得る。本発明の口腔用組成物は好ましくは、乾燥麹抽出物のステイン除去作用またはステイン防止作用を実質的に損なわない方法で製造される。例えば、乾燥麹抽出物を歯磨剤、洗口剤、ゲル剤またはトローチ剤に含有させる場合、歯磨剤、洗口剤およびゲル剤のそれぞれの材料に乾燥麹抽出物を混合することによって製造され得る。
【0160】
(9.口腔用組成物の使用方法)
特定の実施形態では、本発明の口腔用組成物は以下のように使用され得る。まず、本発明の口腔用組成物が所望の歯面(例えば、初期齲蝕の部分または健全な部分)に適用される。この組成物は、ローラー、ブラシなどのような器具を用いて歯面に塗りこまれることが好ましい。この組成物を適用している間およびその後、唾液と接触してもよく、適用された乾燥麹抽出物中の酵素がなるべく流出しないように、唾液との接触を減らすための手段を講じてもよい。唾液との接触を減らすための手段を講じる時間は、これらの組成物を適用しはじめてから約5分間以上続けることが好ましく、約10分間以上続けることがより好ましく、約15分間以上続けることが最も好ましい。唾液との接触を減らすための手段を講じる時間に特に上限はないが、例えば、これらの組成物を適用しはじめてから約1時間以下、約45分間以下、約30分間以下、約25分間以下、約20分間以下などであり得る。唾液との接触を減らすための手段を講じることにより、ステイン除去作用および/またはステイン防止作用が顕著に促進され得る。
【0161】
本発明の口腔用組成物は、口腔内に投与する際、ある程度の時間にわたって口腔内に滞留させることが好ましい。本発明の口腔用組成物を口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約1分間以上、より好ましくは、約2分間以上である。さらに好ましくは約3分間以上であり、特に好ましくは約5分間以上である。1つの好ましい実施形態では約10分間以上であり、さらに好ましい実施形態では約15分間以上である。本発明の組成物を口腔内に滞留させる時間に特に上限はなく、例えば約1時間以下、約50分間以下、約40分間以下、約30分間以下、約20分間以下などであり得る。滞留時間が短すぎる場合には、ステイン除去効果およびステイン防止効果が得られにくい。
【0162】
食品以外の口腔用組成物の形態としては、例えば、歯磨剤、洗口剤(マウスウオッシュともいう)、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、ペースト、軟膏等が挙げられ、医薬組成物の剤型としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。またこれらの液剤を不織布などに含浸させた拭取り布のような形態のものや綿棒のような形態を用いることも可能である。
【0163】
本発明の口腔用組成物は、通常、容器に入れて、または包装されて販売される。この容器は、プラスチックなどの通常使用される容器であり得る。この包装は、紙、プラスチック、セロハンなどの通常使用される包装であり得る。この容器または包装には、本発明の口腔用組成物の摂取量、摂取タイミング、摂取方法(例えば、ガムの場合、「2粒を約20分間以上かみ続けることが好ましい」)などについての指示が記載されていることが好ましい。あるいは、このような指示が記載された指示書が挿入されていてもよい。
【0164】
(10.測定方法)
各種酵素活性は以下の方法に従って測定され得る。ペリクル分解効果、ペリクル沈着抑制効果などの方法も以下に記載する。
【0165】
本発明の乾燥麹抽出物、食品および口腔用組成物中に含まれる酵素の活性は、当該分野で公知の方法によって測定され得る。例えば、本発明の食品および口腔用組成物がキャンディのような固体の場合、酵素活性の測定のために、本発明の食品および口腔用組成物は、粉砕され、適切な緩衝液に溶解されて酵素活性が測定される。本発明の食品および口腔用組成物の粉砕時に、過度の熱をかけて酵素を失活させないように注意する。本発明の食品および口腔用組成物の溶解時の緩衝液の温度は約4℃であることが好ましい。種々の酵素についての活性測定法はそれぞれ公知である。本発明の食品および口腔用組成物に添加する前の酵素と本発明の食品および口腔用組成物中の酵素とについて同じ方法を用いれば適切な任意の方法を用い得る。
【0166】
(10.1 プロテアーゼ活性の測定方法)
本発明の乾燥麹抽出物、食品および口腔用組成物中のプロテアーゼ活性は、好ましくは、Megazyme製のPROTAZYME AK TABLETSを用いて製造業者の推奨する方法に従って測定したエンドプロテアーゼの活性である。この測定方法では、カゼインに対して全ての活性な全てのエンドプロテアーゼの活性を測定することができる。このようなプロテアーゼの例は、パパイン、プロテイナーゼK、トリプシン、ウシ膵臓プロテアーゼ、サブチリシンA、Bacillus subtilisプロテアーゼおよびAspergillus nigerプロテアーゼである。
【0167】
(10.2 タンナーゼ活性測定方法)
タンナーゼの活性は、参考文献;http://www.kikkoman.co.jp/bio/j/rinsyou/pdf/65_tah.pdfおよびhttp://www.kikkoman.co.jp/bio/j/skakou/items/skakou01.htmlを参照して測定することができる。
【0168】
タンナーゼの活性については、30℃、pH5.5の環境下で1分間に1μmolのタンニン酸中のエステル結合を加水分解する活性を1単位(1U)とする。
【0169】
(10.2.1 試薬の調製)
以下の手順で試薬を調製する:
・Reagent A:クエン酸バッファー
クエン酸10.5gに蒸留水800 mlを加えて溶かす。1NのNaOHでpH5.5に調整した後、1000mlにフィルアップする。
・Reagent B:基質溶液(タンニン酸溶液)
タンニン酸175mgをReagent A 50mlに溶かす。完全には溶解せず、懸濁液になる。ろ過せずに、使用前によく振ってから使う。
・Reagent C:エタノール水溶液
エタノール900mlに蒸留水95mlを加える。
・サンプル:酵素溶液
氷冷したReagent Aでサンプルを使用直前に溶かす。正確に測定するには2.6〜2.9 U/mlとなるように調整しておくのが好ましい。
【0170】
(10.2.2 測定)
(10.2.2.1)15ml容のチューブ又はふたのできる試験管を用意する;
(10.2.2.2)Reagent B 1.0mlをチューブに入れる;
(10.2.2.3)チューブにふたをして、30℃で5分間インキュベートする;
(10.2.2.4)サンプル250μlをチューブに添加してよく攪拌する。ブランクにはサンプルの代わりにReagent Aを添加する;
(10.2.2.5)チューブにふたをして、30℃で15分間インキュベートする;
(10.2.2.6)チューブにReagent C 5.0mlを添加して攪拌する;
(10.2.2.7)別のチューブにそれぞれの溶液を250μl入れる;
(10.2.2.8)そのチューブへReagent C 5.0mlを添加する;
(10.2.2.9)よく攪拌して、310nmでの吸収を測定する。
【0171】
(10.2.3 酵素活性の計算)
Volume activity (U/ml)
=[(A−A)×20.3×1.0×1.04×df]/(0.71×0.25ml×15min)
;ブランクの吸光度 A;サンプルの吸光度 df;dilution factor
20.3;Reagent B 1.0ml当たりのタンニン酸量(μmol)
0.71;このassay条件下で、20.3μmolのタンニン酸の加水分解が完了した時の吸光度の変化
1.04;Iibuchiらの方法による適正化係数。
【0172】
(10.3 酵素活性測定方法:国税庁所定分析法)
(10.3.1)酸性プロテアーゼ
(10.3.1.1)酸性プロテアーゼ
1−1.試薬
(1)マッキルベイン緩衝液(pH3.0)
A液:M/5 リン酸二ナトリウム溶液
リン酸二ナトリウム(NaHPO・12HO)71.63gを水に溶かして1リットルとする。
B液:M/10 クエン酸溶液
クエン酸(C・HO)21gを水に溶かして1リットルとする。
【0173】
A液4ml、B液16mlの割合で混合すればほぼ所定のpHになる。pHが正しく3.0にならない場合はA液又はB液を用いて調整する。
【0174】
(2)カゼイン溶液
カゼイン2gを取り、10倍に薄めた乳酸5mlを加え、更に水を約50ml加えて完全に白濁状に溶解するまで金網上で加熱しながらかき混ぜる。
【0175】
一度沸騰させてから冷却し,これにpH3.0のマッキルベイン緩衝液20mlを加え、更に水を加えて全容を100mlとする。
【0176】
(3)2M/5トリクロール酢酸溶液(TCA溶液)
トリクロール酢酸65.4gを水に溶かして1リットルとする。
【0177】
(4)フェノール試薬(フォリン・チオカルト−試薬)
市販品を5倍に希釈して使用する。
【0178】
(5)2M/5炭酸ナトリウム溶液
炭酸ナトリウム42.4gを水に溶かして1リットルとする。
【0179】
(6)チロシン標準溶液
L−チロシン(特級)10.0mgを取り、1N塩酸1mlを加えて全容を100mlとし、これを原液とする。
【0180】
測定に際しては、原液に水を加えてチロシン20〜100μg/mlの標準溶液系列を作る。
【0181】
(7)検量線の作成
上記各検液に炭酸ナトリウム溶液5mlとフェノール試薬1mlを加えて、40℃で30分間発色を行う。チロシンを含まない液を対照として厚さ10mmのセルで660nmにおける吸光度を測定し、検量線を作成する。
【0182】
1−2.酵素液の調製
固体こうじ10gに塩化ナトリウム溶液50mlを加え,低温室(5℃以下)で一夜、又は室温(15〜20℃)で3時間時々振り混ぜながら浸出した後ろ過する。そのろ液10mlを透析膜に入れ、M/100酢酸緩衝液に対して低温で一夜透析した後、水で20mlにし酵素液とする。
【0183】
1−3.試験操作
カゼイン溶液1.5mlにpH3.0のマッキルベイン緩衝液1.0mlを加え、40℃に予熱しておく。これに酵素液0.5mlを加え、40℃で60分間反応させた後、TCA溶液3mlを加えて反応を停止させ沈殿をろ別する。
【0184】
そのろ液1mlに炭酸ナトリウム溶液5mlとフェノール試薬1mlを加えて40℃で30分間の発色を行い、660nmの吸光度を測定する。
【0185】
別に対照として酵素液をTCA溶液の添加直前に加えて、以下上記と同様の操作を行い吸光度を測定する。
【0186】
試験液と対照液との吸光度の差Eを求める。但し、Eが0.3以上になると酵素力とEとが直線関係よりはずれるので、Eが0.3以下になるように酵素液を希釈しなければならない。
【0187】
得られたEから検量線により生成チロシン量(yμg)を求める。
【0188】
1−4.活性の表示
酸性プロテアーゼ活性は、40℃で60分間に1μgのチロシン相当量の呈色を示す活性を1単位とする。
【0189】
こうじ1gの酸性プロテアーゼ活性は次式によって求められる:
【0190】
【数1】

【0191】
(注)酵素液は透析しないものを用いてもよい。その場合は抽出率を50/10として計算する。
【0192】
(10.3.2)グルコアミラーゼ
3−1.試薬
(1)M/5酢酸緩衝液(pH5.0)
A液:M/5 酢酸
氷酢酸11.55mlを水で1リットルにする。
B液:M/5 酢酸ナトリウム溶液
酢酸ナトリウム(CHCOONa・3HO)27.21gを水に溶かして1リットルとする。
【0193】
A液及びB液を調製し、A液5.9ml、B液14.1mlの割合で混合する。pHが正しく5.0にならない場合はA液又はB液を用いて調整する。
【0194】
(2)塩化ナトリウム溶液
塩化ナトリウム5gを水に溶かし、これに上記緩衝液50mlを加えて水で1リットルにする。
(注)黒こうじ系固体こうじ(以下「しょうちゅうこうじ」という)の場合は、緩衝液500 mlを加える。
【0195】
(3)M/100酢酸緩衝液(pH5.0)
M/5酢酸緩衝液(pH5.0)50mlを水で希釈し、1リットルとした後、pH5.0に調整する。
【0196】
(4)デンプン溶液
可溶性デンプン2gを精ひょうして取り、適当量の熱水を加えてよくかき混ぜ1〜2分間沸騰させた後、冷却して水を加え100mlとする。
【0197】
(5)1N水酸化ナトリウム溶液
水酸化ナトリウム4gを水に溶かして100mlとする。
【0198】
(6)1N塩酸溶液
濃塩酸8.8mlに水を加えて100mlにする。
【0199】
1N水酸化ナトリウム溶液と、1N塩酸溶液を等量混ぜたときほぼ中和できるように濃度を調整する。
【0200】
3−2.酵素液の調製
固体こうじ10gに塩化ナトリウム溶液50mlを加え,低温室(5℃以下)で一夜、又は室温(15〜20℃)で3時間時々振り混ぜながら浸出した後ろ過する。そのろ液10mlを透析膜に入れ、M/100酢酸緩衝液に対して低温で一夜透析した後、水で20mlにし酵素液とする。
【0201】
3−3.試験操作
(1)酵素反応
デンプン溶液1mlにM/5酢酸緩衝液0.2mlを加え、40℃で5分間予熱する。これに酵素液0.1mlを加え、40℃で20分間反応させ、1N水酸化ナトリウム溶液0.1mlを添加して反応を停止する。その後30分間放置し、1N塩酸溶液0.1mlを加えて中和する。
【0202】
別に対照として、デンプン溶液1mlにM/5酢酸緩衝液0.2mlを加え、40℃で5分間予熱し、1N水酸化ナトリウム溶液0.1mlを加えた後に酵素液0.1mlを添加し、以下上記と同様に操作する。
【0203】
(2)ブドウ糖の定量
反応液中に生成したブドウ糖量(μg)は3−4により測定する。
【0204】
3−4 ブドウ糖
3−4−1 試薬
M/10トリス・リン酸緩衝液(pH7.3):
トリスヒドロキシメチルアミノメタンを12.11g取り、水約900mlに溶かし、リン酸でpH7.3に調節後水で1lとする。
色素溶液:
4−アミノアンチピリン81mg、フェノールを500mg、トリトンX−100〔ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル〕100mgをそれぞれ取り、M/10トリス・リン酸緩衝液(pH7.3)に溶解し200mlとする。
酵素溶液:
ブドウ糖酸化酵素800単位、パーオキシダーゼ2000単位をとりM/10トリス・リン酸緩衝液(pH7.3)に溶解し200mlとする。
ブドウ糖定量試薬:
色素溶液及び酵素溶液を等量混和する。調製後は冷蔵庫中に保存すれば、約3週間安定である。
ブドウ糖標準溶液:
無水結晶ブドウ糖(特級)0.5gを精ひょうし、1gの安息香酸と共に溶解し1lとする。本液は1ml中に500μgのブドウ糖を含む。
【0205】
3−4−2 試験操作
ブドウ糖定量試薬3mlを試験管に取り、ブドウ糖として10〜100μgを含む検体0.1mlを添加・混和後、40℃で40分間反応させる。反応終了後、室温まで放冷し120分以内に505nmにおける吸光度(E)を測定する。
【0206】
別に検体の代わりに水を用いた対照試験を行い、対照の吸光度(E)を測定する。又ブドウ糖標準液を用いて同様に操作し吸光度(E)を測定し、検体中のブドウ糖を次式によって求める。
【0207】
【数2】

【0208】
(注)
1:ブドウ糖酸化酵素の1単位はpH5.1、35℃の条件で1分間に1μMのβ型ブドウ糖を酸化する力価。
2:パーオキシダーゼの1単位はpH6.0、20℃の条件で、20秒間にピロガロールから1mgのプルブロガリンを生成する力価。
【0209】
3−5.活性の表示
グルコアミラーゼ活性は、可溶性デンプンから40℃で60分間に1mgのブドウ糖を生成する活性を1単位とする。こうじ1gのグルコアミラーゼ活性は次式によって求める。
【0210】
【数3】

【0211】
(注)
1:α−アミラーゼの影響を除くため、デンプンの分解率を10%以下(生成ブドウ糖が約2mg以下)とする。
2:α−アミラーゼ活性が200単位/ml以下の酵素液を用いる。
【0212】
(10.3.3)α−アミラーゼ
3−1.試薬
(1)M/5酢酸緩衝液(pH5.0)
A液:M/5 酢酸
氷酢酸11.55mlを水で1リットルにする。
B液:M/5 酢酸ナトリウム溶液
酢酸ナトリウム(CHCOONa・3HO)27.21gを水に溶かして1リットルとする。
【0213】
A液及びB液を調製し、A液5.9ml、B液14.1mlの割合で混合する。pHが正しく5.0にならない場合はA液又はB液を用いて調整する。
【0214】
(2)塩化ナトリウム溶液
塩化ナトリウム5gを水に溶かし、これに上記緩衝液50mlを加えて水で1リットルにする。
【0215】
(3)ヨウ素溶液
ヨウ素0.0317gにヨウ化カリウム0.1g,10%塩酸50mlを加え、水に溶かして1lとする。
【0216】
(4)デンプン溶液
可溶性デンプン1gを取り,211−4−1に倣って溶かした後,上記緩衝液20mlを加えてpH5.0に調整し,更に水を加えて100mlとする。
【0217】
3−2.酵素液の調製
固体こうじ10gに塩化ナトリウム溶液50mlを加え,低温室(5℃以下)で一夜、又は室温(15〜20℃)で3時間時々振り混ぜながら浸出した後ろ過する。そのろ液10mlを透析膜に入れ、M/100酢酸緩衝液に対して低温で一夜透析した後、水で20mlにし酵素液とする。
【0218】
3−3.試験操作
デンプン溶液2mlを試験管に取り,40℃で5分間予熱する。酵素液0.1mlを加えて反応を開始し,反応液中よりその0.1mlずつをピペットで経時的(0.5分あるいは1分おき)に,あらかじめヨウ素溶液10mlを入れた試験管に取り,よく混合し,生じた色を25℃に保ちながら,厚さ10mmのセルを通して670nmで比色し,透過率T%を測定する。
【0219】
比色の際の対照液には,水2mlに酵素液0.1mlを混ぜたものから0.1mlを取り出し,10mlのヨウ素溶液に加えたものを用いる。
【0220】
これら一連のT%の値の中から66%に相当する反応時間を見出してこれをt分とする。
【0221】
3−4.活性の表示
α−アミラーゼ活性は,40℃で30分間に分解される1%可溶性デンプン量(ml)として表示する。こうじ1gのα−アミラーゼ活性は次式によって求める。
【0222】
【数4】

【0223】
(注)
1:これに使用する可溶性デンプンは,211−5−1によりデンプン溶液を調製し,その2mlに水0.1mlを混合したものから0.1mlをとり,10mlのヨウ素溶液に加え,生じた色を厚さ10mmのセルを通して670nmで比色し、透過率T%が18〜20にならなければならない。
【0224】
この条件に合わないデンプンの場合には,以下の換算式を用いる。反応時間をt分間とし,反応前のヨウ素呈色をT%,反応後のヨウ素呈色をT%としたとき
【0225】
【数5】

【0226】
2:酵素反応を5分間行った後のT%が80以上の場合は酵素液を適当に薄める。
【0227】
(10.4 ペリクル分解効果の評価)
(10.4.1 ハイドロキシアパタイト(Hap)パウダーでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0228】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0229】
3)Hapパウダー10mgを2ml容チューブに計りとる。
【0230】
4)Hapパウダー入りチューブに唾液1mlを添加し、ボルテックス(十分に攪拌)する。ネガティブコントロールに生理食塩水1mlを添加し、同じようにボルテックスする。
【0231】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0232】
6)インキュベーターから取り出し、13,000rpm、5分間遠心して、上清(唾液)を取り除く。
【0233】
7)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0234】
8)13,000 rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0235】
9)7)、8)(=洗浄工程)を繰り返す。
【0236】
10)酵素液等、効果を確認したい物質の溶解液をチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで20分間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液、Aspergillus属由来精製酵素(例;天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」)水溶液をいずれもタンパク質消化力100U/mlで供した。
【0237】
11)インキュベーターから取り出し、13,000rpm、5分間遠心して、上清(酵素液)を取り除く。
【0238】
12)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0239】
13)13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く(洗浄)。
【0240】
14)生理食塩水100μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0241】
15)超音波処理(15min)してから、13,000rpm、5min遠心して、上清をタンパク定量する。
【0242】
16)(タンパク定量)市販の試薬Bio−Rad Protein assay(Bio−Rad社)を用いる。γ−グロブリン(2.0 mg/ml)を生理食塩水と、0.1N NaOHの等量混合物で希釈し、0、25、50、100、150、200μg/mlになるように調整する。
【0243】
17)96ウェルプレートに、11)の上清、12)のγ−グロブリン希釈液をそれぞれ10μl入れ、そこへ蒸留水で5倍希釈したProtein assay試薬200μlを添加して、5分間以上(60分間以内)反応させる。
【0244】
18)プレートリーダーにより、595 nm吸光度を測定し、γ−グロブリンで検量線を作成の上、15)上清中のタンパク質濃度を算出する。
【0245】
19)(評価基準)18)のタンパク質濃度に上清の体積をかけて、Hapパウダーへのタンパク質付着量とする。唾液処理のみ、酵素処理等をおこなっていないHapパウダー(ポジティブコントロール)には、このとき40(μg/10mg Hapパウダー)程度のタンパク質の付着が見られる。
【0246】
検出されたタンパク質の量が多いほどペリクル除去効果が低く、少ないほど効果が高いと評価し、結果を次のように記号化した:
×:ペリクル分解効果なし(ポジティブコントロールと同程度のタンパク質量)
△:ペリクル分解効果弱い
○:ペリクル分解効果あり
◎:ペリクル分解効果強い(ネガティブコントロールと同程度のタンパク質量)。
【0247】
(10.4.2 Hapディスクでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0248】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0249】
3)Hapディスクを、2ml容チューブに1枚ずつ入れる。
【0250】
4)Hapディスク入りチューブに唾液1mlを添加し、ネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。
【0251】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0252】
6)インキュベーターから取り出し、唾液(または生理食塩水)を取り除く。
【0253】
7)チューブに生理食塩水200μlを入れて軽くすすぎ、生理食塩水を除く。同様の操作をもう一度繰り返す。
【0254】
8)酵素液等、効果を確認したい物質の溶解液をチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで20分間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液、Aspergillus属由来精製酵素(例:天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」)水溶液を、いずれもタンパク質消化力100U/mlで供した。
【0255】
9)インキュベーターから取り出し、酵素液を除去する。
【0256】
10)生理食塩水200μlを添加して、軽くすすぎ、除去する。
【0257】
11)CBB(Coomassie Brilliant Blue R−250 Staining Solution、Bio−Rad社製)でHapディスク表面についたタンパク質を染色する。
【0258】
12)(染色)Hapディスクの入ったチューブにCBB溶液100 μlを添加し、そのまま2時間以上放置する。
【0259】
13)余分なCBB溶液を生理食塩水ですすぎ落とす。
【0260】
14)脱色液(40%MeOH、10%酢酸)を1ml程度チューブへ入れ、軽くゆすぐ。5分間程度おいてから脱色液を取り除き、新しい脱色液を入れ、同様の操作をおこなう。
【0261】
15)チューブからディスクを取り出し、デジタルカメラで写真撮影する。その時に画像補正用カラーチャートCasMatch(株式会社ベアーメディック)を写りこませるようにする。
【0262】
16)(画像処理)写真中のキャスマッチを使って補正し、その後Lab値を確認する(Adobe Photoshop使用)。L値(明るさ)大きいほど明るい。a値(赤→緑の指標)。b値(黄→青の指標)。CBB染色の場合はb値が大きく変化すると予想される。
【0263】
17)(評価基準)ΔEを求める。ΔEが小さいほうが白い状態からの変化が小さい=ペリクル除去効果が高いと評価できる。
【0264】
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔL=CBB染色後のL値−初期L値 Δa、Δbについても同様に算出する。ΔE値が小さいほど被試験面へのタンパク質の付着量が少ない、すなわちペリクル分解効果が高いと評価し、結果を次のように記号化した。
×:ペリクル分解効果なし(ポジティブコントロールと同程度の着色)
△:ペリクル分解効果弱い
○:ペリクル分解効果あり
◎:ペリクル分解効果強い(ネガティブコントロールと同程度の着色)。
【0265】
(10.4.3 牛歯エナメル切片での試験(基本的にHapディスクと同じ))
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0266】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0267】
3)牛歯エナメル切片(#800程度のサンドペーパーで研磨)を50ml容チューブに2片ずつ入れる。
【0268】
4)牛歯切片入りチューブに唾液4mlを入れ、切片が浸っていることを確認する。
【0269】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0270】
6)あとの操作はHapディスクの場合と同じ。洗浄に用いる生理食塩水や脱色液の量は適宜調整し増やす。
【0271】
(10.5 紅茶変性ペリクル分解効果の評価)
(10.5.1 Hapパウダーでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0272】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0273】
3)Hapパウダー10mgを2ml容チューブに計りとる。
【0274】
4)Hapパウダー入りチューブに唾液1mlを添加し、ボルテックス(十分に攪拌)する。ネガティブコントロールに生理食塩水1mlを添加し、同じようにボルテックスする。
【0275】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0276】
6)インキュベーターから取り出し、13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0277】
7)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0278】
8)13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0279】
9)紅茶(ティーパック1袋に対し、熱湯100ml、5分間抽出後、37℃程度まで冷却)1mlをチューブに添加し、タッピングしてパウダーを分散させる。ネガティブコントロールにも同じように紅茶を添加する。
【0280】
10)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、9のチューブを入れて強めに振とうしながら、1時間インキュベートする。
【0281】
11)インキュベーターから取り出し、13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0282】
12)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0283】
13)13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0284】
14)酵素液等、効果を確認したい物質の溶解液をチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで20分間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液、Aspergillus属由来精製酵素(例;天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」、キッコーマン「タンナーゼKT05」)水溶液をいずれもタンパク質消化力100U/ml、タンナーゼ活性14.8U/mlで供した。
【0285】
15)インキュベーターから取り出し、13,000 rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0286】
16)生理食塩水100μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0287】
17)超音波処理(15分間)してから、13,000rpm、5分間遠心して、上清をタンパク定量する。
【0288】
18)上清にも色がついており、正常な定量が出来ない可能性もあるので、サンプルブランクもとっておく。上清10μl+蒸留水200μlで96ウェルプレートで595nm吸光度測定する。
【0289】
19)(紅茶濃度確認)96ウェルプレートに上清50μlを入れ、さらに蒸留水125μlを加え、計150μlにする。420nm吸光度測定する。または、405、450、430nmでも可。
【0290】
20)(評価基準)検出されたタンパク質の量が多いほどペリクル除去効果が低く、少ないほど効果が高いと評価した。また、紅茶色素の量は吸光度が高いほど多くすなわち変性ペリクル分解効果が低い、吸光度が低いほど少なくすなわち変性ペリクル分解効果が高いと評価した。二つの結果を合せて次のように記号化した。
×:紅茶変性ペリクル分解効果なし(ポジティブコントロールと同程度の着色およびタンパク質量)
△:紅茶変性ペリクル分解効果弱い
○:紅茶変性ペリクル分解効果あり
◎:紅茶変性ペリクル分解効果強い(ネガティブコントロールと同程度の着色およびタンパク質量)。
【0291】
(10.5.2 Hapディスクでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0292】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0293】
3)Hapディスクを、2ml容チューブに1枚ずつ入れる。
【0294】
4)Hapディスク入りチューブに唾液1mlを添加し、ネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。
【0295】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0296】
6)インキュベーターから取り出し、唾液(または生理食塩水)を取り除く。
【0297】
7)チューブに生理食塩水200μlを入れて軽くすすぎ、生理食塩水を除く。同様の操作をもう一度繰り返す。
【0298】
8)紅茶(ティーパック1袋に対し、熱湯100ml、5分間抽出後、37℃程度まで冷却)1mlをチューブに添加する。
【0299】
9)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、8のチューブを入れて強めに振とうしながら、1時間インキュベートする。
【0300】
10)インキュベーターから取り出し、紅茶液を取り除く。
【0301】
11)酵素液等、効果を確認したい物質の溶解液をチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで20分間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液Aspergillus属由来精製酵素(例;天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」、キッコーマン「タンナーゼKT05」)水溶液を、いずれもタンパク質消化力100U/ml、タンナーゼ活性14.8U/mlで供した。
【0302】
12)インキュベーターから取り出し、酵素液を除去する。
【0303】
13)生理食塩水200μlを添加して、軽くすすぎ、除去する。
【0304】
14)チューブからディスクを取り出し、デジタルカメラで写真撮影する。その時にCasMatchを写りこませるようにする。
【0305】
15)(画像処理)写真中のCasMatchを使って補正し、その後Lab値を確認する(Adobe Photoshop使用)。L値(明るさ)大きいほど明るい。a値(赤→緑の指標)。b値(黄→青の指標)。紅茶染色の場合はa値が大きく変化すると予想される。
【0306】
16)(評価基準)ΔEを求める。ΔEが小さいほうが白い状態からの変化が小さい=ペリクル除去効果が高いと評価できる。
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔL=紅茶染色酵素反応後のL値−初期(紅茶染色前)L値
Δa、Δbについても同様に算出する。
ΔE値が小さいほど被試験面への紅茶変性タンパク質の付着量が少ない、すなわち紅茶変性ペリクル分解効果が高いと評価し、結果を次のように記号化した。
×:紅茶変性ペリクル分解効果なし(ポジティブコントロールと同程度の着色)
△:紅茶変性ペリクル分解効果弱い
○:紅茶変性ペリクル分解効果あり
◎:紅茶変性ペリクル分解効果強い(ネガティブコントロールと同程度の着色)
(10.5.3 牛歯エナメル切片での試験(基本的にHapディスクと同じ))
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0307】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0308】
3)牛歯エナメル切片を50ml容チューブに2片ずつ入れる。
【0309】
4)牛歯切片入りチューブに唾液4 mlを入れ、切片が浸っていることを確認する。
【0310】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0311】
6)あとの操作はHapディスクの場合と同じ。酵素液の量や洗浄に用いる生理食塩水の量は適宜調整し増やす。
【0312】
(10.6 ペリクルへの紅茶沈着抑制効果の評価)
(10.6.1 Hapパウダーでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0313】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0314】
3)Hapパウダー10mgを2ml容チューブに計りとる。
【0315】
4)Hapパウダー入りチューブに唾液1mlを添加し、ボルテックス(十分に攪拌)する。ネガティブコントロールに生理食塩水1mlを添加し、同じようにボルテックスする。
【0316】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0317】
6)インキュベーターから取り出し、13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0318】
7)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0319】
8)13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0320】
9)紅茶(ティーパック1袋に対し、熱湯100ml、5分間抽出後、37℃程度まで冷却)に酵素等、効果を確認したい物質を溶解(分散)させチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで1時間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロール、ネガティブコントロールには紅茶を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液、Aspergillus属由来精製酵素(例;天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」、キッコーマン「タンナーゼKT05」)水溶液をいずれもタンパク質消化力100U/ml、タンナーゼ活性14.8U/mlで供した。
【0321】
10)インキュベーターから取り出し、13,000 rpm、5分間遠心して、紅茶酵素液を取り除く。
【0322】
11)生理食塩水200μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0323】
12)13,000rpm、5分間遠心して、上清を取り除く。
【0324】
13)生理食塩水100μlを添加して、タッピングして生理食塩水中にパウダーを分散させる。
【0325】
14)超音波処理(15分間)してから、13,000rpm、5分間遠心して、上清をタンパク定量する。
【0326】
15)上清にも色がついており、正常な定量が出来ない可能性もあるので、サンプルブランクもとっておく。上清10μl+蒸留水200μlで96ウェルプレートで595 nm吸光度測定する。
【0327】
16)(紅茶濃度確認)96ウェルプレートに上清50μlを入れ、さらに蒸留水125μlを加え、計150μlにする。420nm吸光度測定する。または、405、450、430nmでも可。
【0328】
17)検出されたタンパク質の量が多いほどペリクル除去効果が低く、少ないほど効果が高いと評価した。また、紅茶色素の量は吸光度が高いほど多くすなわちペリクルへの紅茶沈着量が低い、吸光度が低いほど少なくすなわちペリクルへの紅茶沈着抑制効果が高いと評価した。二つの結果を合せて次のように記号化した:
×:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果なし(ポジティブコントロールと同程度の着色とタンパク質量)
△:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果弱い
○:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果あり
◎:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果強い(ネガティブコントロールと同程度の着色とタンパク質量)。
【0329】
(10.6.2 Hapディスクでの試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0330】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0331】
3)Hapディスクを、2ml容チューブに1枚ずつ入れる。
【0332】
4)Hapディスク入りチューブに唾液1mlを添加し、ネガティブコントロールには生理食塩水を添加する。
【0333】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0334】
6)インキュベーターから取り出し、唾液(または生理食塩水)を取り除く。
【0335】
7)チューブに生理食塩水200μlを入れて軽くすすぎ、生理食塩水を除く。同様の操作をもう一度繰り返す。
【0336】
8)紅茶(ティーパック1袋に対し、熱湯100ml、5分間抽出後、37℃程度まで冷却)に酵素等、効果を確認したい物質を溶解(分散)させチューブに添加し、37℃のシェーキングインキュベーターで1時間強めに振とうしながらインキュベートする。ポジティブコントロール、ネガティブコントロールには紅茶を添加する。*乾燥米麹抽出物A水溶液、Aspergillus属由来精製酵素(例;天野エンザイム「プロテアーゼMアマノSD」、キッコーマン「タンナーゼKT05」)水溶液をいずれもタンパク質消化力100U/ml、タンナーゼ活性14.8U/mlで供した。
【0337】
9)インキュベーターから取り出し、紅茶酵素液を取り除く。
【0338】
10)チューブに生理食塩水200μlを入れて軽くすすぎ、生理食塩水を除く。同様の操作をもう一度繰り返す。
【0339】
11)チューブからディスクを取り出し、デジタルカメラで写真撮影する。その時にCasMatchを写りこませるようにする。
【0340】
12)(画像処理)写真中のCasMatchを使って補正し、その後Lab値を確認する(Adobe Photoshop使用)。L値(明るさ)大きいほど明るい。a値(赤→緑の指標)。b値(黄→青の指標)。紅茶染色の場合はa値が大きく変化すると予想される。
【0341】
13)(評価基準)ΔEを求める。ΔEが小さいほうが白い状態からの変化が小さい=ペリクルへの紅茶沈着抑制効果が高いと評価できる。
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔL=紅茶染色酵素反応後のL値−初期(紅茶染色前)L値
Δa、Δbについても同様に算出する。
ΔE値が小さいほど被試験面への紅茶変性タンパク質の付着量が少ない、すなわちペリクルへの紅茶沈着抑制効果が高いと評価し、結果を次のように記号化した。
×:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果なし(ポジティブコントロールと同程度の着色)
△:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果弱い
○:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果あり
◎:ペリクルへの紅茶沈着抑制効果強い(ネガティブコントロールと同程度の着色)。
【0342】
(10.6.3 牛歯エナメル切片での試験)
1)唾液採取用チューブ(SARSTEDT社製サリベットシリーズ、サリキッズシリーズ、サリソフトシリーズ等が使用できる。ここではサリベット51.1534を使用)を用いて、唾液を採取する。
【0343】
2)2500rpm、4分間遠心して、チューブに集まった唾液を一度、合一する。
【0344】
3)牛歯エナメル切片を50ml容チューブに2片ずつ入れる。
【0345】
4)牛歯切片入りチューブに唾液4mlを入れ、切片が浸っていることを確認する。
【0346】
5)シェーキングインキュベーターを37℃に加温し、4のチューブを入れて強めに振とうしながら、一晩(16時間)インキュベートする。
【0347】
6)あとの操作はHapディスクの場合と同じ。酵素液の量や洗浄に用いる生理食塩水の量は適宜調整し増やす。
【実施例】
【0348】
(製造実施例1:乾燥米麹抽出物の製造方法)
市販の米麹(株式会社コーセーフーズ社製商品名甘酒用乾燥米麹)に対してその重量に対して3倍量の重量のイオン交換水を室温(約20℃)で混合し、抽出タンク中で2時間攪拌した。攪拌の際には麹がつぶれないようにゆっくり間欠的に攪拌した。払い出しポンプおよび分離網を用いて混合物を固液分離し、最終的に60メッシュの抽出液を得た。この抽出液のBrix糖度を測定したところ、Brix5であった。この抽出液の収量は、使用したイオン交換水の重量の約65重量%であった。次いで、この抽出液を攪拌タンクに入れて、原料麹の重量の0.5倍の重量の難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製ファイバーソル2)を添加して室温(約20℃)で混合して溶解させて混合液を得た。混合液をスプレードライにより乾燥し、シフターにかけることにより、50メッシュパスの乾燥麹抽出物を得た。製造実施例1で製造された乾燥麹抽出物を便宜上Aと呼ぶ。この米麹からの乾燥麹抽出物の製造フローの概要を図1に示す。
【0349】
(製造比較例1:乾燥米麹抽出物の製造方法)
市販の米麹(株式会社コーセーフーズ社製商品名焼酎用乾燥米麹)を用いたこと以外は製造実施例1と同じ方法で乾燥米麹抽出物を得た。製造比較例1で製造された乾燥麹抽出物を便宜上Bと呼ぶ。
【0350】
(製造比較例2:乾燥米麹抽出物の製造方法)
市販の米麹(株式会社コーセーフーズ社製商品名焼酎用乾燥米麹)を用いたこと以外は製造実施例1と同じ方法で乾燥米麹抽出物を得た。製造比較例2で製造された乾燥麹抽出物をCと呼ぶ。
【0351】
(製造比較例3:乾燥米麹抽出物の製造方法)
市販の米麹(株式会社コーセーフーズ社製商品名焼酎用乾燥米麹)を用いたこと以外は製造実施例1と同じ方法で乾燥米麹抽出物を得た。製造比較例3で製造された乾燥麹抽出物を便宜上Dと呼ぶ。
【0352】
(製造比較例4:米麹凍結粉砕パウダー)
製造実施例1で使用したのと同じ市販の米麹(株式会社コーセーフーズ社製商品名甘酒用乾燥米麹)を凍結乾燥した後粉砕することにより米麹凍結粉砕パウダーを得た。
【0353】
(製造実施例1などで製造された乾燥米麹抽出物の成分分析値)
製造実施例1および製造比較例1〜4で製造された乾燥米麹抽出物の成分を分析した。結果を以下の表3に示す。
【0354】
【表3】

【0355】
(測定例1:製造実施例1で製造した乾燥米麹抽出物および他のパウダーの各種酵素活性の測定)
製造実施例1に記載の方法に従って作製した乾燥米麹抽出物、製造比較例1〜3に記載の方法に従って作製した乾燥米麹抽出物、製造比較例4に記載の方法に従って作製した米麹凍結粉砕パウダーおよび市販のタンナーゼ(キッコーマン製、タンナーゼKT05(食添))の各種酵素活性を、本願明細書の「10.測定方法」中に記載の方法に従って測定した。結果を以下の表4および表5に示す。
【0356】
【表4】

【0357】
【表5】

【0358】
この結果、本発明の乾燥米麹抽出物は、非常に高いタンナーゼ活性および酸性プロテアーゼ活性を有することが確認された。
【0359】
(測定例2:in vitroでの米麹の効果(HapパウダーおよびHapディスク))
製造例1において作製した乾燥米麹抽出物A(米麹水抽出物の凍結粉砕品;酸性プロテアーゼ 5547U/g、α−アミラーゼ 606U/g、グルコアミラーゼ147U/g、タンナーゼ 1430U/g)を使用して、本明細書中の「10.4.ペリクル分解効果の評価」に従ってペリクル分解効果検証試験を行った。
【0360】
ハイドロキシアパタイト(Hap)パウダーおよびHap焼成ディスクを一晩(16時間)唾液中で振とうし、その後、以下の3種の液に浸漬して、37℃で20分間振とうした。Hapパウダーに残存したタンパク質を物理的に落としてその量を定量した。Hapディスクはタンパク質をCBBで染色してからデジタルカメラで撮影し、画像解析を行い、白色化を評価した。
【0361】
<試験液>
試験液として以下のものを用いた:
(1)生理食塩水(PBS)、(2)乾燥米麹抽出物A液(プロテアーゼ濃度100U/ml)、(3)アクチニジン液(プロテアーゼ濃度100U/ml)。なお、ネガティブコントロールとして唾液ではなく生理食塩水に浸漬した後タンパク質付着量を測定し、その付着量を各実験でのタンパク質付着量から差し引いた。結果を以下の表6及び図2に示す。その結果、乾燥米麹抽出物A液で処理したときに最もペリクルが除去できた。
【0362】
【表6】

【0363】
Hapディスクを用いた場合のインビトロでの乾燥米麹抽出物Aの効果についての結果を図3に示す。この結果、PBSを使用した場合に最もタンパク質付着量が多く、乾燥米麹抽出物Aを用いた場合に最もタンパク質付着量が少ないことが確認された。
【0364】
(実施例1A:ペリクル分解効果の確認)
ハイドロキシアパタイトパウダーを用いて、本明細書中の「10.4 ペリクル分解効果の評価」に基づいてペリクル分解効果を確認するための実験を行った。
【0365】
結果を以下の表7A及び図4に示す。図4は、ハイドロキシアパタイトパウダーを用いて検証した結果を示す。
【0366】
【表7A】

【0367】
この結果、本発明の製造実施例の乾燥麹抽出物が顕著なペリクル分解効果を有することが確認された。このペリクル分解効果は、プロテアーゼ活性が同じ精製された市販のプロテアーゼよりも優れている。
【0368】
(実施例1B:ペリクル分解効果の確認)
牛歯エナメル切片を用いて、本明細書中の「10.4 ペリクル分解効果の評価」に基づいてペリクル分解効果を確認するための実験を行う。
【0369】
結果を以下の表7Bに示す。
【0370】
【表7B】

【0371】
この結果、本発明の製造実施例の乾燥麹抽出物が顕著なペリクル分解効果を有することが確認される。
【0372】
(実施例2:紅茶変性ペリクル分解効果についての確認)
ハイドロキシアパタイトパウダーおよび牛歯エナメル切片を用いて、本明細書中の「10.5 紅茶変性ペリクル分解効果の評価」に基づいてペリクル分解効果を確認するための実験を行う。
【0373】
結果を以下の表8に示す:
【0374】
【表8】

【0375】
この結果、本発明の乾燥麹抽出物が優れた紅茶沈着抑制効果を発揮することが確認される。この紅茶変性ペリクル分解効果は、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性が同じ、精製された市販のプロテアーゼとタンナーゼとの組み合わせよりも優れている。
【0376】
(実施例3:紅茶沈着抑制効果についての確認)
ハイドロキシアパタイトパウダーおよび牛歯エナメル切片を用いて、本明細書中の「10.5 ペリクルへの紅茶沈着抑制効果の評価」に基づいて紅茶沈着抑制効果を確認するための実験を行う。
【0377】
結果を以下の表9に示す:
【0378】
【表9】

【0379】
この結果、本発明の乾燥麹抽出物が優れた紅茶沈着抑制効果を発揮することが確認される。この紅茶沈着抑制効果は、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性が同じ、精製された市販のプロテアーゼとタンナーゼとの組み合わせよりも優れている。
【0380】
(実施例4:乾燥米麹抽出物を含むガムの製造)
ガムベース25重量部、パラチノース72重量部、還元みずあめ2重量部および製造実施例1で製造した乾燥米麹抽出物Aの1重量部を混練した後、成型し板ガムを調製した。得られた板ガムの重量は2.0gであった。この板ガムの齲蝕性糖類の含量は0.15重量%であり、非齲蝕性糖類の含量は74.8重量%であった。
【0381】
コントロールとして、製造実施例1の乾燥米麹抽出物Aの代わりに製造比較例1〜4のいずれかで製造した乾燥米麹抽出物を使用した板ガムも調製した。
【0382】
(実施例5:乾燥米麹抽出物を含むタブレットの製造)
還元パラチノース99重量部および製造実施例1で製造した乾燥米麹抽出物Aの1重量部を混合した後、直径13mmの円形の打錠型を用い、吸い込み深度12mm、中心部打錠圧2tの条件でこの混合物を打錠した。得られた打錠品(すなわち、タブレット)1粒の重量は1.0gであった。このタブレットの齲蝕性糖類の含量は0.15重量%であり、非齲蝕性糖類の含量は99.8重量%であった。
【0383】
コントロールとして、製造実施例1の乾燥米麹抽出物Aの代わりに製造比較例1〜4のいずれかで製造した乾燥米麹抽出物を使用したタブレットも調製した。
【0384】
(実施例6:乾燥米麹抽出物の嗜好面での優位性の確認)
5名のパネラーに、実施例4または5で製造した乾燥米麹抽出物A1%配合ガム、タブレットおよび米麹凍結粉砕パウダー1%配合ガム、タブレットについて、試食させ、嗜好面での評価を行う。評価基準は下記のとおり設定し、5名の平均を示す。結果を以下の表10に示す。
【0385】
◎…麹・デンプンの味は全くしない
○…麹・デンプンの味が少しする
△…麹・デンプンの味がかなりする
×…麹・デンプンの味しかしない
【0386】
【表10】

【0387】
(実施例7:乾燥米麹抽出物の使用感での優位性の確認)
5名のパネラーに、実施例4または5で製造した乾燥米麹抽出物1%配合ガム、タブレットおよび米麹凍結粉砕パウダー1%配合ガム、タブレットについて、試食させ、使用感の面での評価を行う。評価基準は下記のとおり設定し、5名の平均を示す。結果を以下の表11に示す。
【0388】
◎…不快なざらつき・ねばつきは全くない
○…不快なざらつき・ねばつきが少しある
△…不快なざらつき・ねばつきがかなりある
×…ざらつき・ねばつきがひどくて食べられない
【0389】
【表11】

【0390】
(実施例8:乾燥米麹抽出物による歯の白色化効果についてヒトの体感の確認)
5名の被験者に、実施例4または5で製造した乾燥米麹抽出物1%配合ガムまたは乾燥米麹抽出物非配合ガムを朝、昼、夜の毎食後、2粒20分間摂取させるのを10日間継続する。また、この期間中、紅茶を1日3回摂取させる。終了後に継続摂取前と比較した時の自身の歯の色の変化について下記の基準で評価させ、5名の平均を示す。結果を以下の表12に示す。
【0391】
◎…継続摂取前よりも明らかに白くなったと感じる
○…継続摂取前よりもすこし白くなったと感じる
△…継続摂取前とほとんど変わらないと感じる
×…継続摂取前より白さが失われたと感じる
【0392】
【表12】

【0393】
(実施例9:乾燥米麹抽出物による歯の白色化効果についてヒト口腔内写真による確認)
5名の被験者に、実施例4または5で製造した乾燥米麹抽出物1%配合ガムまたは乾燥米麹抽出物非配合ガムを朝、昼、夜の毎食後、2粒20分間摂取させ、これを10日間継続する。また、この期間中、紅茶を1日3回摂取させる。継続摂取の前後で口腔内の写真を撮影し、歯の色調をAdobe PhotoshopによりLab表色系で評価する。ΔEを下記の式により算出する。
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
このときΔL=(10日間継続摂取後L値)−(継続摂取前L値)
ΔaおよびΔbについても同様に算出する。期間中、ΔEは紅茶の継続摂取のために上昇するが、被験食に白色化効果があれば、上昇度合いは小さくなると予想される。ΔEの値から、下記の段階に評価を分類する。結果を以下の表13に示す。
【0394】
◎…ΔE<0.1
○…0.1≦ΔE<1
△…1≦ΔE<10
×…10≦ΔE
【0395】
【表13】

【0396】
(実施例10:舌苔除去効果および口臭抑制効果の測定)
実施例4または5で製造した乾燥米麹抽出物1%配合タブレットまたは乾燥米麹抽出物非配合タブレットの舌苔除去効果を、舌苔除去を必要とする以外は健康な被験者5名について、以下の方法で評価する:
(1)まず、対象者の舌背を写真撮影し、視診によって舌苔評点を評価する:
(i)写真撮影方法
リングフラッシュ(14RDX、YUZO社)を装着したデジタルカメラ(FinePix S602、フジフィルム社)を用いて対象者の舌背を撮影する。この方法では、影のない写真が撮影される。被写体の横に色調補正用カラーチャート(CasMatch、大日本印刷社)を並べて撮影し、これを用いて写真の輝度を補正する。
【0397】
(ii)視診による評価方法
視診による舌苔量の評価は、森谷ら(森谷俊樹、岸光男、相澤文恵他著「舌苔スコアによる口臭スクリーニングの有効性に関する研究」,口腔衛生会誌52:12−21,2002)に記載の方法に舌苔の厚みを加味して行う。すなわち、写真撮影した舌背を4つのエリアに分割し、各エリアの舌苔付着量を(舌苔付着面積評点)×(舌苔厚さ評点)として評価し、これらの合計を舌苔評点とすることにより行う。評価は、3名の評価者の平均値である。舌苔付着面積評点および舌苔厚さ評点は、ともに0〜3の4段階とする。
【0398】
1)舌背を4つのエリアに分割する;
2)各エリアに付着した舌苔の面積と厚さより舌苔の付着量を評価する
舌苔の付着量=(舌苔付着面積評点)×(舌苔厚さ評点);
3)各エリアの評点の合計を舌苔評点とする。
【0399】
舌苔付着面積評点の基準は、以下の通りである:
【0400】
【表14】

【0401】
舌苔厚さ評点の基準は、以下の通りである:
【0402】
【表15】

【0403】
(2)被験者に上記タブレット1粒を噛み砕かずかつ嚥下しないように舐めさせる。その結果、舐めるのに約7分間かかる。
【0404】
(3)なめ終わった後、直ちに(1)と同様の方法で舌背の写真を撮影し、視診により舌苔評点を評価する。
【0405】
(4)各被験者について(1)および(3)の舌苔評点を比較する。舌苔除去効果についての結果を以下の表16に示す。
【0406】
さらに、舌苔除去効果の評価の際に、口臭除去効果についても、以下の方法で測定する。揮発性硫化物(volatile sulfur compounds;VSC)として、HSおよびCHSHに着目した。HSおよびCHSHは、口臭に対する寄与度が高いからである。
【0407】
詳細には、タブレットを摂取する前、タブレット1粒を噛み砕かずかつ嚥下しないように舐めさせた(その結果、舐めるのに約7分間かかる)後、20分後およびその後さらにもう1粒のタブレットを噛み砕かずかつ嚥下しないように舐めさせた後、20分後に、オーラルクロマ(アビリット社)を使用してHSおよびCHSHの濃度を測定する。対象者に、1回の深呼吸後、10mlシリンジを口気が漏れない様くわえたまま、30秒間安静に鼻呼吸する様に指示する。その後10mlの口気を採取し、そのうちの5mlをオーラルクロマ(アビリット社)に注入する。オーラルクロマに接続したパーソナルコンピューターの専用解析ソフトにより、口気10ml中の重量(ng/10ml)としてHSおよびCHSHの濃度を算出する。この評価を、舌苔除去を必要とする以外は健康な被験者5名について行う。口臭抑制効果についての結果を以下の表17に示す。
【0408】
【表16】

【0409】
【表17】

【0410】
この結果、本発明の乾燥米麹抽出物が、ステイン予防効果および除去効果だけでなく、舌苔除去効果および口臭抑制効果も有することが確認される。
【0411】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0412】
本発明の食品および口腔用組成物は、歯の着色汚れの除去と沈着予防とに役立つ。本発明の食品および口腔用組成物は、齲蝕性の糖類の含有量が極めて低いので、使用することによって口腔内の齲蝕に悪影響を及ぼすことがないかまたはほとんど及ぼさない。
【0413】
本発明の乾燥麹抽出物は、精製した酵素の複数の組み合わせよりも安価であり、かつ容易に調製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥麹抽出物であって、
該乾燥麹抽出物は、麹抽出物および非齲蝕性賦形剤を含む混合物の乾燥物を含み、
該乾燥麹抽出物は、プロテアーゼ活性およびタンナーゼ活性を有する、乾燥麹抽出物。
【請求項2】
前記非齲蝕性賦形剤が、糖アルコールおよび非齲蝕性糖類からなる群より選択される、請求項1に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項3】
前記乾燥麹抽出物中の糖アルコールの含量および非齲蝕性糖類の含量の合計が20重量%〜95重量%である、請求項2に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項4】
前記乾燥麹抽出物の水分量が0.001重量%〜5重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項5】
前記乾燥麹抽出物中の齲蝕性糖類の含量が20重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項6】
プロテアーゼ活性が500U/g以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項7】
タンナーゼ活性が50U/g以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項8】
前記非齲蝕性賦形剤が、難消化性デキストリン、パラチノース、トレハロース、ラクチトール、還元パラチノース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールまたはマンニトールからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項9】
前記乾燥麹抽出物が、米麹から製造される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である、食品。
【請求項11】
舌苔除去用である、請求項10に記載の食品。
【請求項12】
ガム、キャンディまたはタブレットである、請求項10または11に記載の食品。
【請求項13】
プロテアーゼ活性が100U/g以上である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の食品。
【請求項14】
タンナーゼ活性が10U/g以上である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の食品。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の乾燥麹抽出物を含み、齲蝕性糖類の含量が0.5重量%以下である、口腔用組成物。
【請求項16】
歯磨剤または洗口剤である、請求項15に記載の口腔用組成物。
【請求項17】
トローチ剤またはゲル剤である、請求項15に記載の口腔用組成物。
【請求項18】
プロテアーゼ活性が50U/g以上である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項19】
タンナーゼ活性が5U/g以上である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の乾燥麹抽出物の製造方法であって、
麹を0℃〜25℃の水と30分間〜3時間にわたって混合する工程;
該混合物から抽出液を分取する工程;
該抽出液と非齲蝕性賦形剤とを混合して抽出液賦形剤混合物を得る工程;および
該抽出液賦形剤混合物を乾燥して乾燥麹抽出物を得る工程
を包含する、方法。
【請求項21】
前記非齲蝕性賦形剤が糖アルコールまたは非齲蝕性糖類である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記麹が米麹である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥が凍結乾燥またはスプレードライである、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162491(P2011−162491A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28248(P2010−28248)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】