説明

事故予防支援配送配車方法及びシステム

【課題】
過去の事故を風化させず、その教訓を毎回の作業に活かすことで事故を予防する、事故予防支援配送配車方法及びシステムの提供。
【解決手段】
過去の事故の履歴を記録した事故履歴マスター121及び事故の予防対策を記録した作業注意事項マスター122を有する事故データベース手段120並びに配送配車データベース手段110を一元管理するサーバ100と、サーバ100が接続されたネットワーク200と、ネットワーク200に接続され、必要に応じて自動的にサーバ100のデータベースを検索して、受注した配送作業を入力する受注データ入力手段401には関連する事故履歴を表示させ、配送作業指示書及び作業注意指示書印刷発行手段402には予想される事故の予防対策を印刷させ、各種データベース検索及び表示手段403にはサーバ100の各データベースにアクセスさせるクライアント端末310と、を具備する特徴。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故予防支援配送配車方法及びシステムに関し、詳しくは、特に運送会社の配送作業中における事故の予防を支援するために、過去の事故の履歴及び再発防止対策をデータベース化し、配送作業ごとに共通の項目を持つ過去の配送作業の事故をデータベースから自動的に検索し、配送作業指示書と併せて作業注意指示書を担当配送乗務員に書面にて発行する、事故予防支援配送配車方法及びその実施に直接使用するシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
配送作業中に発生する事故の中には、過去に経験した事故、クレーム、トラブル、などの教訓が十分に活かせていれば未然に防げたであろうものが少なからず存在する。しかしながら、過去の事故の再発防止対策や過去の事例から今後予想され得る全ての事故の予防対策にまで思考を水平展開し、これらを関係者全員に周知徹底し、各自が在職中長期間に亘って記憶に留め、かつ危機意識を常時持ち続けながら学習効果を高め、さらに毎日の通常業務に励む事は、非常に困難である。その上、事故、クレーム、トラブル、ヒヤリハットの要因は、配送乗務員の不注意や過労、車輌自体の欠陥や運転不慣れ、道路事情、気象、作業マニュアルの不都合や不合理性、作業現場事情、時間帯、相手側の無理な要望(例えば納期や作業仕様)等、多岐に渡る。
【0003】
また、配送乗務員、車両、荷主、積荷の品名、積込先及び納入先、などの組み合わせが毎日の配送作業ごとに異なり、さらに配送乗務員が早期退職してしまう場合もあるので、前任者が体験した事故の経験、記憶、教訓などが後任者に完全に引き継がれることや学習の機会は期待できない。しかも、積荷が化学品や薬剤や爆発の危険や人体及び環境破壊につながるものは、一旦事故発生により社会問題を提起しかねないし、積込、運搬、積み替え、荷降ろしのはいずれの作業においても細心の注意が要請される。
【0004】
さらに、大規模な企業が全国規模や世界規模で事業を展開するなど、関係者が各地に点在する場合、関係者同士が相互に通信する手段はあっても、事故に関する経験や危機意識の共有はますます困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、事故再発防止の現実的な方法としては、事故が起きるたびにその全てについて記録を事故データベースに登録するとともに、配送作業を行う配送乗務員、配送する積荷の荷主である得意先、配送する積荷を積み込む積込先、又は配送する積荷を納入する納入先、など共通の項目(条件や環境や背景も含む)を持つような同種の事故を分類整理し予防するための作業注意事項を検討した上でこれも事故データベースに登録し、事故データベースは整合性を保つために一元的に管理して関係者全員で共有し、新たな配送作業を開始する前に、事故データベースから共通の項目を持つような同種の過去の配送作業から予想される事故を検索し、事故予防に係る具体的な対策を事前に配送乗務員に伝えることにより、せめて作業完了までの時間だけでも事故予防に関する危機意識を配送乗務員に喚起することが必要となる。
【0006】
ここにおいて、本発明の解決すべき主要な目的は、次に示すとおりである。
【0007】
即ち、本発明の第1の目的は、過去の事故の履歴及び予防対策をデータベース化して一元管理する、事故予防支援配送配車方法及びシステムを提供せんとするものである。
【0008】
本発明の第2の目的は、配送配車作業において、作業員や配送乗務員が事故を意識していなくても、過去の事故の履歴及び予防対策のデータベースが常時活用可能な、事故予防支援配送配車管理方法及びシステムを提供せんとするものである。
【0009】
本発明の第3の目的は、配送作業ごとに配送乗務員に対して配送作業指示書とともに作業注意事項指示書をも印刷発行することで、予想され得る事故に対する注意を配送作業開始前に自動的に喚起する、事故予防支援配送配車方法及びシステムを提供せんとするものである。
【0010】
本発明の第4の目的は、配送作業ごとに配送乗務員に対して作業注意事項指示書に連動したその指示内容とともに場所情報を持つカーナビゲーションシステムを通じて、予想され得る事故に対する注意を過密スケジュール等にて他の前後の配送作業と勘違いや誤った思い込みや忘却のないよう配送作業に当って自動的に絶対に事故を起こさせないために念入りに再喚起する、事故予防支援配送配車方法及びシステムを提供せんとするものである。
【0011】
本発明の他の目的は、明細書、図面、特に特許請求の範囲の各請求項の記載から自ずと明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
まず、本発明方法においては、配送配車管理情報と過去の事故の履歴と再発防止対策を全て、サーバ上に予めデータベース化しておき、またこれらのデータベースには新しいデータを逐一又は定期的に追加更新しながら、配送作業ごとに、その配送作業と共通の項目を持つ過去の事故を自動的にネットワークを介して検索し、それら過去の事故の再発防止対策をまとめた書面である作業注意事項指示書として担当配送乗務員に配送作業指示書と同時にクライアント端末で印刷発行する、という特徴的構成手法を講じる。
【0013】
一方、本発明システムにおいては、配送配車を管理する配送配車データベース手段と、過去の事故の履歴と再発防止対策とを管理する事故データベース手段と、これらのデータベース手段を一元管理するサーバと、サーバが接続された任意のネットワークと、このネットワークに接続されて配送配車管理を行うとともに特定の配送作業について共通の項目を持つ過去の事故の再発防止対策を自動的に検索し、配送作業指示書と作業注意指示書を担当配送乗務員に印刷発行するクライアント端末と、を具備する、という特徴的構成手段を講じる。
【0014】
さらに、具体的詳細に述べると、当該課題の解決では、本発明が次に列挙する上位概念から下位概念に亙る新規な特徴的構成手法または手段を採用することにより、前記目的を達成するよう為される。
【0015】
即ち、本発明システムの第1の特徴は、配送配車管理データベース手段及び事故データベース手段を具備するサーバと、当該サーバに接続されたネットワークと、当該ネットワークに接続され、配送作業受注受付入力手段、指示書印刷発行手段及びデータベース検索閲覧手段を具備するクライアント端末と、を具備してなる事故予防支援配送配車管理システムであって、当該配送作業受注受付入力手段は、当該配送配車管理データベース手段に配送作業受注受付内容を入力する際に自動的に当該事故データベース手段から当該入力中の配送作業受注受付内容と共通の項目を持つ過去の配送作業で起きた事故を検索してその閲覧を促すことによって配送作業受注受付担当者に事故予防の注意を喚起するよう機能構成され、当該指示書印刷発行手段は、それぞれの配送作業についてその指示書を印刷発行する際に自動的に前記事故データベース手段から当該配送作業に含まれる項目に係る作業注意事項を検索してその内容を作業注意指示書として前記配送作業指示書と併せて印刷発行することによって書面にて配送乗務員に事故予防の注意を喚起するよう機能構成され、当該データベース検索閲覧手段は、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段から検察閲覧可能として、前記配送作業受注受付担当者又は前記配送乗務員のみならず前記クライアント端末の操作を許可された全ての関係者が自発的に事故予防意識を向上可能に機能構成されてなる、事故予防支援配送配車管理システムの構成採用にある。
【0016】
本発明システムの第2の特徴は、上記本発明システムの第1の特徴における前記配送配車管理データベース手段が、受注した配送作業に基く配車管理に係る配送作業履歴マスターと、配送作業に使用する全車輌に係る配送車輌管理マスターと、配送作業に従事する配送乗務員に係る配送乗務員管理マスターと、を具備してなり、当該配送作業管理マスターは、過去、現在及び未来の配送作業のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成され、当該配送車輌管理マスターは、配送作業に使用される配送車輌のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成され、当該配送乗務員管理マスターは、配送作業に携わる配送乗務員のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成されてなる、事故予防支援配送配車管理システムの構成採用にある。
【0017】
本発明システムの第3の特徴は、上記本発明システムの第1又は2の特徴における前記事故データベース手段が、過去の事故の履歴が記録されている事故履歴マスターと、今後の事故を予防するための注意事項が記録されている作業注意事項マスターと、を具備してなり、当該事故履歴マスターは、過去の事故の履歴に係るデータの一切を逐一的に永久的に蓄積するよう機能構成され、当該作業注意事項マスターは、当該事故履歴マスターの内容から事故の予防に係る作業注意事項を抽出した上で、重複するデータを削除し、それぞれの作業注意事項について発送乗務員、運送車輌、運送経路、得意先、積込先又は納入先に分類して関連付けることで、作業注意指示書作成時の検索に最適化されたデータ構造に機能構成されてなる、事故予防支援配送配車管理システムの構成採用にある。
【0018】
本発明システムの第4の特徴は、上記本発明システムの第1、2又は3の特徴における前記ネットワークが、インターネット接続機能付き携帯電話端末を接続可能にシステム構成され、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段は、当該インターネット接続機能付き携帯電話端末から検索閲覧可能として、配送作業中に事故が起きた際に当該作業中の配送乗務員の当該インターネット接続機能付き携帯電話端末から前記各データベースにアクセスすることによって、現場における事故後初期対策を閲覧可能に機能構成されてなる、事故予防支援配送配車管理システムの構成採用にある。
【0019】
本発明システムの第5の特徴は、上記本発明システムの第1、2、3又は4の特徴における前記ネットワークが、通信機能付きカーナビゲーションシステムに接続可能にシステム構成され、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段は、配送作業のそれぞれについて、作業注意指示書作成時に当該作業注意指示書の内容とともに関連する場所情報を自動的に当該配送作業の担当車輌に搭載された当該通信機能付きカーナビゲーションシステムに選択的にアップロード可能に機能構成され、当該通信機能付きカーナビゲーションシステムは、配送作業を実行中の配送乗務員に向けて現在実行中の配送作業に係る作業注意事項を指示書の食い違いや指示内容の勘違いや錯誤や忘却のないよう再度喚起するため自動選択的に表示又は音声出力可能に機能構成されてなる、事故予防支援配送配車管理システムの構成採用にある。
【0020】
一方、本発明方法の第1の特徴は、サーバ、当該サーバが接続されたネットワーク及び当該ネットワークに接続されたクライアント端末を用いて、配送作業、配送車輌及び配送乗務員に係る一切のデータを配送配車管理データベース手段で管理するとともに、過去の事故記録データ及び事故予防対策データを事故データベース手段で管理する事故予防支援配送配車管理方法であって、配送受注受付入力時には、配送受注受付入力手段が、入力された配送作業の少なくとも1つの項目が前記事故データベース手段に記録されていれば自動的に強調表示することで配送作業受注受付担当者に事故予防の注意を喚起し、配送作業開始前には、指示書印刷発行手段が、前記配送配車管理データベース手段に基く配送作業指示書と、前記事故データベース手段に基く作業注意指示書と、を配送乗務員に自動的に印刷発行することで当該配送乗務員の事故予防の注意を喚起し、その他常時、データベース検索閲覧手段が、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段にアクセス可能で、当該データベース検索閲覧手段の操作を許可された全ての関係者に事故予防の注意を喚起してなる、事故予防支援配送配車管理方法の構成採用にある。
【0021】
本発明方法の第2の特徴は、上記本発明方法の第1の特徴における前記配送作業開始前には、前記指示書印刷発行手段が、印刷発行する前記作業注意指示書の内容とともに関連した場所情報を担当する配送乗務員の車輌に搭載された通信機能付きカーナビゲーションシステムに送信し、配送作業実行中には、当該カーナビゲーションシステムが現在実行中の配送作業の指示書の内容及び関連する場所情報を自動的に表示又は音声出力することで、配送乗務員の事故予防の注意をさらに喚起してなる、事故予防支援配送配車管理方法の構成採用にある。
【0022】
本発明方法の第3の特徴は、上記本発明方法の第1又は2の特徴における配送作業実行中に事故が起きた場合、担当する配送乗務員の携帯する、ネットワーク接続機能付き携帯電話端末が、前記ネットワークを介して前記配送配車管理データベース手段にアクセスし、当該配送作業の事故現場にて当該配送乗務員が取るべき行動をまとめた事故対応マニュアルを表示することで、事故後の被害を最小限に抑えて二次災害を予防するよう配送乗務員の行動を指示してなる、事故予防支援配送配車管理方法の構成採用にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、過去の事故に関する記憶やその対策に関するノウハウが、時間の経過とともに風化したり人員の入れ替わりとともに失われたりせずに全てデータベース手段に系統的に蓄積され、さらにこのデータベース手段が配送配車システムと密に融合しているために、関係者が事故を意識していない場合でも必要な場面で必要なデータが自動選択的に表示又は印刷等出力されることによって、マンネリ化を防ぎつつ関係者各自の事故予防の注意が効果的に喚起され、事故の発生を防止する効果を有する。
【0024】
また、本発明システムの使用を許可された関係者には、意識的に事故の履歴及び対策を効果的に学ぶことが可能となり、例えば新人研修への効果的な応用が可能となる。
【0025】
さらに、事故データベース手段120の内容が、ネットワーク200を介して通信機能付きカーナビゲーションシステム320や携帯電話端末300からでもアクセス可能なので、事業所から離れている配送実行中の車輌からでもデータベースの内容が利用可能となり、万が一の事故発生時においてもその初期段階で現場にいる配送乗務員による迅速かつ効果的な対応が可能となり、更なる二次災害の予防につながる効果を有する。
【0026】
なお、本発明方法及びシステムは既に出願人会社において非公開にて試験した結果、導入前と比較して配送作業時の事故発生率を大幅に減少させることが実証された。
【0027】
本発明の適用範囲は必ずしも運送会社の事故予防支援配送配車システムに限らず、複数の要因によって事故が起き得るいかなる分野にでも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき、添付図面を参照しつつ、システム例及びこれに対応する方法例を順に挙げて説明する。
【0029】
(方法例)
図1は、本発明の事故データベース手段120に含まれる事故履歴マスター121及び作業注意事項マスター122における新規データの追加または既存データの更新にかかわる作業手順を説明するためのフローチャート(α、太線)と、そのフローチャートのそれぞれの段階で利用可能なデータとその流れ(β、細線)である。
【0030】
(配送作業受注受付)
まず、配送作業を受注する(ST101)。このとき配送配車管理データベース手段110と事故データベース手段120はサーバ100(図2参照)に格納されてすでに存在するが、本発明方法が初めて使用される際などには、配送配車管理データベース手段110及び事故データベース手段120の内容が空であっても良い。
【0031】
荷主より発送作業を受注すると、配送作業受注受付担当者は配送配車管理プログラムをネットワークに接続されたクライアント端末上で操作し、荷主、積荷の種類、積込先、納入先、などの一切の項目を入力する。入力された配送作業データは、配送配車管理データベース手段110に記録される(ST102)。
【0032】
このとき、配送配車管理プログラムは自動的に事故履歴マスター121にアクセスし、入力中の配送作業と共通する項目を持つ事故履歴を検索し、そのような事故の記録があれば、配送配車管理プログラムの入力中の画面上にその事故と共通する項目を事故履歴を意味する例えば赤丸マークなどで強調表示することで、まずは配送作業受注受付担当者に注意を喚起する。
【0033】
このように注意を喚起された配送作業受注受付担当者は自発的に、事故履歴のマークが表示された項目の番号から辿るなどして、その表示の基となる事故履歴マスター121を同じクライアント端末の画面上でさらに詳しく検索閲覧することが出来る。例えば、荷主、積込先、納入先、積荷の種類、担当事業所、作業マニュアルなどの項目から検索を行える。その結果次第では配送配車作業に配送乗務員や配送車輌の変更など適当な変更を加えても良い。
【0034】
さらに、事故履歴マスター121の検索の結果、過去の事故の再発防止の為に配送会社以外の、例えば荷主、積込先、納入先などに協力を要請している場合、配送作業受注受付担当者は要請事項の進捗状況などをその場で確認しても良い。
【0035】
次に、クライアント端末の常時待機状態(ST103)を説明する。この状態は、主に配送配車受注受付入力(ST102)中でも配送作業の前(ST104)に各種指示書の印刷発行中でもなく、配送作業受注受付担当者や配送作業乗務員以外にも、クライアント端末の使用を許可された関係者全員、例えば配送会社の全社員が、自発的にクライアント端末を使用できる状態である。したがって、図1では便宜上配送作業受注受付入力(ST102)と配送作業前の各種指示書の印刷発行(ST104)との間に配置したが必ずしもこのとおりとは限らず、特に一つの事業所に複数のクライアント端末が存在する場合は、配送配車受注受付入力(ST102)又は配送作業前指示書印刷発行(ST104)に携わっていないクライアント端末は全て常時待機状態(ST103)にあることになる。
【0036】
常時待機状態(ST103)のクライアント端末からは、配送配車管理データベース手段110や事故データベース手段120に自由にアクセス可能で、クライアント端末の使用を許可された関係者なら誰もが、例えば過去の事故の実例の記録を自発的に勉強することが可能となり、先述したように前任者である配送乗務員に突然の早期退職などがあっても、後任者における知識やノウハウの断絶を防ぐことが可能となり、例えば新人研修への応用も効果的である。
【0037】
(配送乗務員に注意喚起・配送作業前)
次に、配送作業前指示書印刷発行(ST104)の段階を説明する。受注した作業を実際に行う配送乗務員には、その作業の都度、クライアント端末310(図2参照)から出力される配送作業指示書が発行され、当該配送乗務員の管理者から手渡される。このとき、配送作業指示書は配送配車管理データベース手段110の内容に基いて自動的に印刷発行される。配送作業指示書には、配送乗務員、運送車輌、運送経路、積荷の種類、積荷の荷主、積荷の積込先及び納付先などの項目が記載されている。なお、一度の配送、即ち事業所を出発してから次に戻るまでに、複数の配送作業を連続して又は並行して行うことは別段珍しいことではない。
【0038】
また、配送作業指示書と併せて、作業注意指示書も配送乗務員に手渡される。こちらは、事故データベース手段120内の作業注意事項マスター122の内容に基いて自動的に印刷発行される。作業注意指示書には、その配送乗務員が担当する配送業務に特化した注意事項が、配送乗務員、積荷の種類、運送車輌、運送経路、時象、気象、積荷の荷主、積荷の積込先及び納付先などの項目に分類されて書かれている。その他にも、当該配送乗務員が個人的な癖や気質として注意するべきことや乗務する個々の車輌の属性、個性、事故歴や得意先の特性や要望事項、積込先や積み降ろし先の事情、特殊環境、等が併せて記載されても良い。
【0039】
ベテラン配送乗務員が普段から覚えていることであっても、このように配送作業開始直前に再度書面で確認することにより、事故予防の注意が改めて効果的に喚起されると同時に、その理解をより深めることが出来るという優れた効果を生む。
【0040】
なお、配送に使用する車輌に通信機能付きカーナビゲーションシステム320が搭載されている場合は、配送作業指示書及び作業注意指示書の内容とともに関連する運送経路や場所情報も併せて、当該通信機能付きカーナビゲーションシステム320に送信しても良い。この送信は、作業注意指示書の印刷発行と同時に自動的に行われる。
【0041】
次に、配送作業実行中(ST105)の段階を説明する。車輌に通信機能付きカーナビゲーションシステム320が搭載されていない場合は、配送乗務員は配送作業指示書及び作業注意指示書の内容に忠実に配送作業を行う。車輌に通信機能付きカーナビゲーションシステム320が搭載されており、前述のとおり各種指示書の内容が送信されている場合は、配送乗務員は運転の最中に書面を手に取ることなく各種指示書の内容を随時確認可能となる。なお、確認の方法は画面上の視覚表示よりも音声を使用することで事故の可能性のさらなる低減が期待できる。
【0042】
さらに、前記通信機能付きカーナビゲーションシステム320を併用することには、他の前後する同日配送作業等との勘違いや思い違いや錯誤による思い入れや忘却などを防ぐ意味もある。即ち、一度に複数の配送作業を連続又は並行して実行していても、時刻と場所によって異なる配送作業を識別可能であり、したがってその瞬間に気を付けるべき作業注意事項を優先的に確認可能となり、さらなる安全確保が期待できる。
また、不注意や不幸な偶然が重なった結果、万が一、間違った配送作業指示書又は作業注意指示書が配送乗務員に手渡されていたとしても、正しい情報が通信機能付きカーナビゲーションシステム320に送信されているので、一度事業所に戻ったり携帯電話端末300で確認することなく、配送作業を遂行できる。
【0043】
(事故発生)
次に、上記のような数々の工夫にもかかわらず、配送作業中に事故が発生してしまった場合(ST106)を説明する。
なお、図1では便宜上、配送作業実行中(ST105)の段階と事故発生(ST106)の段階とを矢印で結んだが、これは事故発生の可能性を示しただけであって、必ずしも事故の発生を予定しているわけではないことは言うまでもない。
【0044】
(事故対応)
事故発生時(ST106)、配送乗務員は携帯電話などを用いて速やかに事業所に連絡をすることはもちろんのこと、現場にいる関係者として、事故後初期の対策を講じる責任が求められる。しかし、事故直後対策マニュアルを書面にして用意したとしても、配送車輌の状態如何によっては使用不可能となる可能性もあり、また事業所から携帯電話端末300の音声にて指示を仰いだとしても、説明に図面を必要とする場合も考えられる。そこで、携帯電話端末300のネットワーク接続機能を用い、また、予めサーバ100(図2参照)に接続可能に設定しておくことによって、膨大な事故後対策資料から現在実行していた配送作業に特化した情報のみを自動的に検索して、画像付きの文章として効率よく配送乗務員に伝達可能となる。
【0045】
なお、図1には示さなかったが、配送作業実行中(ST105)と通信機能付きカーナビゲーションシステム320との組み合わせ、及び事故対応中(ST107)とネットワーク接続機能付き携帯電話端末300との組み合わせは、あくまでも主な使用を想定しているだけであって決して排他的ではなく、配送作業実行中(ST105)にネットワーク接続機能付き携帯電話端末300を使っても良いし、反対に事故対応中(ST107)に通信機能付きカーナビゲーションシステム320を使っても何ら問題は無く、またいずれの場合にも配送作業指示書及び作業注意指示書も使えることは言うまでも無い。
【0046】
(事故報告)
事故の処理が完了した後、当事者である配送作業員はその事故について事業所に対して報告する。これは、本発明の目的でもあるように、過去の事故の記録を活かして事故予防対策につなげるためである。
【0047】
なお、実際に事故が発生した場合はもちろん、あるいは事故にまでは至らなくてもいわゆるヒヤリハットや不具合が発生したりした場合でも、これらの情報は全て、当事者の所属事業所が報告を受ける(ST108)。その他、事故などが発生する以前に、過去の体験や学習等から作業の安全性や効率を向上させる新しい改善提案などが報告されても良い。
【0048】
次に、事故の報告を受けた事業所は、適切な事後処理を行うのと並行して、カスタマーサービス部や営業部と連携するなどして事故が起きた配送作業に係る積荷の荷主に対する対応を行い、さらに事故の再発防止に向けた対策を検討する。このとき、顧客である荷主や積込先や納入先(以下、荷主等)との信頼関係を保つべく、荷主等と新たな改善策や取り決めを作っても良い。
【0049】
(事故履歴マスター入力)
事故に関する情報及び再発防止対策のデータは、安全管理指導部が一元管理した上で事故履歴マスター121に入力する(ST109)。起きた事実に関する内容は事故履歴マスター121に基本的には永久的に保存することが望ましい。
【0050】
事故履歴マスター121は、事故予防支援配送配車システムのサーバ100に格納されており、ネットワーク200(図2参照)を介してこのサーバ100にアクセスする全事業所の各クライアント端末310で事故履歴マスター121に入力された重大事故情報が共有される。
【0051】
(作業注意事項マスター入力)
さらに、定期的に安全委員会を開き、作業注意事項マスター122の入力内容を検討する。作業注意事項マスター122には、事故及び顧客からのクレームやトラブルについて、運送経路、作業条件や環境や背景等の各種人的、物的、自然現象要因に起因して水平展開するべき事項や拡大傾向性がありうる事項、同様の現場にて短期間に発生した事項などを入力する。
【0052】
また、顧客である荷主等が行う、例えば「安全強化キャンペーン」などといった類の期間テーマがあれば、その期間に応じて作業注意事項マスター122にデータの追加・削除を行う。
【0053】
なお、安全委員会は必要に応じて随時開いても構わない。
【0054】
情報の錯乱を防ぐために、事故履歴マスター121及び作業注意事項マスター122は、例えば安全管理指導部部長などの責任者を立て、同じ人物が全てのデータ内容の最終決定を行うことが望ましいが、本発明システムの機能として、非常時などに限り各クライアント端末310からもデータ内容を編集可能とするなどしても良い。
【0055】
安全委員会で決定された内容を作業注意事項マスター122に追加・更新する(ST110)。なお、作業注意事項マスター122はサーバ100で一元管理されているので、追加・更新された内容はネットワーク200を介したクライアント端末310での閲覧に即座に反映される。
【0056】
安全委員会で決定された内容は、特に顧客と直接連絡を取る機会の多いカスタマーサービス部や営業部に対して周知徹底するために、回覧などを行ってもよい。
【0057】
(システム例)
図2は、本最良実施形態例システムの全体図であり、本最良実施形態例システムが具備する各装置の動作を説明するためのものである。
【0058】
サーバ100には配送配車管理データベース手段110と事故データベース手段120とが格納されている。また、事故データベース手段には事故履歴マスター121と作業注意事項マスター122とが含まれる。これらのデータベース手段は、サーバにおいて一元管理されている。
【0059】
サーバ100はネットワーク200に接続されており、またネットワーク200にはクライアント端末310が接続されている。なお、クライアント端末の数に制限は特に無い。
【0060】
具体的には、例えばサーバ100を本社に設置し、全国の各事業所にクライアント端末310を設置することで、本社と各事業所とで全ての情報を共有することが出来る。
【0061】
配送配車管理データベース手段110は、本社又は各事業所に所属登録する受注に伴う各車輌の過去、現在、未来における運行情報(車輌自体の種類や延べ走行距離や特性、荷主、積荷の種類、積込先、納入先、運送経路、金額、量、日付、時刻、配送乗務員、気象、受注番号等の一切の情報)により配車管理、休車管理(事故修理、定期点検を含む)等を行い、経理処理や日報処理とも共有してなる。又、事故履歴マスター120を通して各配送乗務員の特質や適性や年齢を評価し人事異動や配置転換等の労務管理をも共有し得る。
【0062】
それぞれのクライアント端末310は、各事業所が受注した配送作業に係る情報を配送配車管理データベース手段110に入力する受注受付入力手段401と、受注した配送作業を実行する際に各事業所で担当配送乗務員に配送作業指示書と作業注意指示書とを書面にして発行する配送作業指示書及び作業注意指示書印刷発行手段402と、受注データ入力中や受注データ確認中に各種データベースを検索及び表示する各社データベース検索閲覧手段403と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の最良実施形態例を示す、配送作業の受注から積荷降ろしまで及び事故発生から事故履歴マスター及び作業注意事項マスターの更新作業までに係るフローチャートである。
【図2】本発明の最良実施形態例を示す、事故予防支援配送配車システムの全体図である。
【符号の説明】
【0064】
ST101 発送作業受注
ST102 発送作業受注受付入力
ST103 常時待機状態
ST104 配送作業前指示書印刷発行
ST105 配送作業実行中
ST106 事故発生
ST107 事故対応中
ST108 事故報告
ST109 事故履歴マスター入力
ST110 作業注意事項マスター入力
100 サーバ
110 配送配車管理データベース手段
120 事故データベース手段
121 事故履歴マスター
122 作業注意事項マスター
200 ネットワーク
300 ネットワーク接続機能付き携帯電話端末
310 クライアント端末
320 通信機能付きカーナビゲーションシステム
401 配送作業受注受付入力手段
402 指示書印刷発行手段
403 各種データベース検索閲覧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配送配車管理データベース手段及び事故データベース手段を具備するサーバと、
当該サーバに接続されたネットワークと、
当該ネットワークに接続され、配送作業受注受付入力手段、指示書印刷発行手段及びデータベース検索閲覧手段を具備するクライアント端末と、
を具備してなる事故予防支援配送配車管理システムであって、
当該配送作業受注受付入力手段は、当該配送配車管理データベース手段に配送作業受注受付内容を入力する際に自動的に当該事故データベース手段から当該入力中の配送作業受注受付内容と共通の項目を持つ過去の配送作業で起きた事故を検索してその閲覧を促すことによって配送作業受注受付担当者に事故予防の注意を喚起するよう機能構成され、
当該指示書印刷発行手段は、それぞれの配送作業についてその指示書を印刷発行する際に自動的に前記事故データベース手段から当該配送作業に含まれる項目に係る作業注意事項を検索してその内容を作業注意指示書として前記配送作業指示書と併せて印刷発行することによって書面にて配送乗務員に事故予防の注意を喚起するよう機能構成され、
当該データベース検索閲覧手段は、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段から検察閲覧可能として、前記配送作業受注受付担当者又は前記配送乗務員のみならず前記クライアント端末の操作を許可された全ての関係者が自発的に事故予防意識を向上可能に機能構成される、
ことを特徴とする、事故予防支援配送配車管理システム。
【請求項2】
前記配送配車管理データベース手段は、
受注した配送作業に基く配車管理に係る配送作業履歴マスターと、配送作業に使用する全車輌に係る配送車輌管理マスターと、配送作業に従事する配送乗務員に係る配送乗務員管理マスターと、を具備してなり、
当該配送作業管理マスターは、過去、現在及び未来の配送作業のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成され、
当該配送車輌管理マスターは、配送作業に使用される配送車輌のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成され、
当該配送乗務員管理マスターは、配送作業に携わる配送乗務員のそれぞれに関する一切のデータを蓄積するよう機能構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の事故予防支援配送配車管理システム。
【請求項3】
前記事故データベース手段は、
過去の事故の履歴が記録されている事故履歴マスターと、今後の事故を予防するための注意事項が記録されている作業注意事項マスターと、を具備してなり、
当該事故履歴マスターは、過去の事故の履歴に係るデータの一切を逐一的に永久的に蓄積するよう機能構成され、
当該作業注意事項マスターは、当該事故履歴マスターの内容から事故の予防に係る作業注意事項を抽出した上で、重複するデータを削除し、それぞれの作業注意事項について発送乗務員、運送車輌、運送経路、得意先、積込先又は納入先に分類して関連付けることで、作業注意指示書作成時の検索に最適化されたデータ構造に機能構成される、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の事故予防支援配送配車管理システム。
【請求項4】
前記ネットワークは、インターネット接続機能付き携帯電話端末を接続可能にシステム構成され、
前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段は、当該インターネット接続機能付き携帯電話端末から検索閲覧可能として、
配送作業中に事故が起きた際に当該作業中の配送乗務員の当該インターネット接続機能付き携帯電話端末から前記各データベースにアクセスすることによって、現場における事故後初期対策を閲覧可能に機能構成される、
ことを特徴とする、請求項1,2又は3に記載の事故予防支援配送配車管理システム。

【請求項5】
前記ネットワークは、通信機能付きカーナビゲーションシステムに接続可能にシステム構成され、
前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段は、配送作業のそれぞれについて、作業注意指示書作成時に当該作業注意指示書の内容とともに関連する場所情報を自動的に当該配送作業の担当車輌に搭載された当該通信機能付きカーナビゲーションシステムに選択的にアップロード可能に機能構成され、
当該通信機能付きカーナビゲーションシステムは、配送作業を実行中の配送乗務員に向けて現在実行中の配送作業に係る作業注意事項を指示書の食い違いや指示内容の勘違いや錯誤や忘却のないよう再度喚起するため自動選択的に表示又は音声出力可能に機能構成される、
ことを特徴とする、請求項1,2,3又は4に記載の事故予防支援配送配車管理システム。
【請求項6】
サーバ、当該サーバが接続されたネットワーク及び当該ネットワークに接続されたクライアント端末を用いて、
配送作業、配送車輌及び配送乗務員に係る一切のデータを配送配車管理データベース手段で管理するとともに、過去の事故記録データ及び事故予防対策データを事故データベース手段で管理する事故予防支援配送配車管理方法であって、
配送受注受付入力時には、配送受注受付入力手段が、入力された配送作業の少なくとも1つの項目が前記事故データベース手段に記録されていれば自動的に強調表示することで配送作業受注受付担当者に事故予防の注意を喚起し、
配送作業開始前には、指示書印刷発行手段が、前記配送配車管理データベース手段に基く配送作業指示書と、前記事故データベース手段に基く作業注意指示書と、を配送乗務員に自動的に印刷発行することで当該配送乗務員の事故予防の注意を喚起し、
その他常時、データベース検索閲覧手段が、前記配送配車管理データベース手段及び前記事故データベース手段にアクセス可能で、当該データベース検索閲覧手段の操作を許可された全ての関係者に事故予防の注意を喚起する、
ことを特徴とする、事故予防支援配送配車管理方法。
【請求項7】
前記配送作業開始前には、前記指示書印刷発行手段が、印刷発行する前記作業注意指示書の内容とともに関連した場所情報を担当する配送乗務員の車輌に搭載された通信機能付きカーナビゲーションシステムに送信し、
配送作業実行中には、当該カーナビゲーションシステムが現在実行中の配送作業の指示書の内容及び関連する場所情報を自動的に表示又は音声出力することで、配送乗務員の事故予防の注意をさらに喚起する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の事故予防支援配送配車管理方法。
【請求項8】
配送作業実行中に事故が起きた場合、担当する配送乗務員の携帯する、ネットワーク接続機能付き携帯電話端末は、前記ネットワークを介して前記配送配車管理データベース手段にアクセスし、当該配送作業の事故現場にて当該配送乗務員が取るべき行動をまとめた事故対応マニュアルを表示することで、事故後の被害を最小限に抑えて二次災害を予防するよう配送乗務員の行動を指示する、
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の事故予防支援配送配車管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−172364(P2007−172364A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370340(P2005−370340)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(300059430)株式会社日輪 (1)
【復代理人】
【識別番号】100106895
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 洋一